特許第5862820号(P5862820)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5862820
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】ボアホール観測システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   G01N21/954 Z
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2015-133175(P2015-133175)
(22)【出願日】2015年7月2日
【審査請求日】2015年9月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510054854
【氏名又は名称】株式会社ボア
(74)【代理人】
【識別番号】100094525
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 健二
(74)【代理人】
【識別番号】100094514
【弁理士】
【氏名又は名称】林 恒徳
(74)【代理人】
【識別番号】100106356
【弁理士】
【氏名又は名称】松枝 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 孝幸
【審査官】 森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−137856(JP,U)
【文献】 特開平11−14914(JP,A)
【文献】 特開平8−68620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84−21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボアホールに挿入され、ボアホール内の孔壁面を撮影する撮像装置と該撮像装置により撮像された画像を記録する記録媒体を有するプローブと、
前記プローブと連結し、前記プローブをボアホール内に吊り下げるワイヤと、
地上で前記ワイヤを引張し、前記プローブがボアホール内を一定速度で昇降するように動作させ且つ前記プローブの移動距離を検出するウインチと、
前記プローブの撮像開始タイミングに合わせてウインチを作動させ、前記ウインチから前記プローブの移動距離情報を通信により取得する制御装置とを備え、
前記制御装置は、測定終了後、地上に引き上げられた前記プローブから取り出された前記記録媒体から、前記記録媒体に記録された画像データを読み出し、該画像データを前記ワイヤの移動距離情報と対応付けて記録することを特徴とするボアホール観測システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記制御装置は、撮像開始前に前記プローブと無線通信し、前記プローブに前記撮像開始タイミング及び撮像時間を指示し、
前記プローブは、前記撮像開始タイミングが到来すると、撮像を開始し、前記撮像開始タイミングから前記撮像時間が経過すると、撮像を停止することを特徴とするボアホール観測システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記制御装置は、撮像開始前に前記ウインチと無線通信し、前記撮像開始タイミングと同時に、前記ウインチに動作開始を指示し、
前記ウインチは、前記動作開始の指示により、動作を開始するとともに、所定時間間隔毎に前記プローブの移動距離情報を前記制御装置に送信することを特徴とするボアホール観測システム。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御装置は、前記撮像開始タイミングから前記撮像時間が経過すると、前記ウインチに動作停止を指示し、
前記ウインチは、前記動作停止の指示により、動作を停止するとともに、前記プローブの移動距離情報の送信を停止することを特徴とするボアホール観測システム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記制御装置は、前記画像データの撮像時刻に関連する時間情報と、前記移動距離情報の検出時刻に関連する時間情報とに基づいて、前記画像データと前記移動距離情報とを対応付けることを特徴とするボアホール観測システム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記プローブは、細長形状のプローブの一方の端部側に撮像装置が内蔵され、他方の端部にワイヤ取付部が設けられ、前記プローブは、前記ワイヤ取付部に取り付けられたワイヤにより撮像面が下向きとなるように吊り下げられた状態で撮像することを特徴とするボアホール観測システム。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかにおいて、
前記プローブは、細長形状のプローブの一方の端部側に撮像装置が内蔵され、他方の端部にワイヤ取付部が設けられるとともに前記一方の端部にもワイヤ取付部が設けられ、前記プローブは、前記一方の端部に設けられたワイヤ取付部に取り付けられたワイヤにより撮像面が上向きとなるように吊り下げられた状態で撮像することを特徴とするボアホール観測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置を内蔵するプローブをボアホール内に挿入して、ボアホール内の孔壁面を撮影するボアホール観測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ボアホールによる地質調査では、ボアホールを掘削し、ボアホール内にプローブと称される観測装置を挿入して、そのプローブに内蔵される撮像装置により、ボアホール内の孔壁面を撮影し、孔壁面の亀裂、破砕、空隙、クラックの有無、及びその走行・傾斜などの地盤状態の観測が行われる。
【0003】
プローブの撮像装置は、広角レンズや凸面鏡によって映し出された孔壁360度の画像を撮影することができる。プローブは、鉛直方向に掘削されたボアホールの開口部から挿入し、電信ケーブルによりつり下げられ、ウインチによって電信ケーブルの長さを調節することで、プローブを降下又は上昇させ、深さ方向の全長にわたって孔壁面の画像を撮影する。撮影された画像データは、撮像装置と電信ケーブルを介して接続する地上のコンピュータ装置に送られ、保存される。
【0004】
ボアホール内でのプローブの深さ位置(深度)は、電信ケーブルの長さの変化を検出する深度センサにより計測される。深度センサは、ワイヤの移動により回転する回転体、回転体の回転数をカウントするカウンタなどの要素から構成される地上設置される外付け装置であって、電信ケーブルの長さを調節するウインチや、電信ケーブルを下向きに垂らす滑車部分など、電信ケーブルが移動する部分に配置され、電信ケーブルの移動速度及び移動距離を求めることで深度を検出する。
【0005】
一方、深度センサを用いることで、システム全体の複雑化、コストアップとなるため、深度センサを用いずに、プローブの深度を検出する手法が提案されている(特許文献1、特許文献2)。特に、特許文献2においては、プローブを電信ケーブルで吊り下げず、非電信性のワイヤで吊り下げる構成であるため、画像データはリアルタイムに送信されずにプローブ内に蓄積される。従って、画像データは、深度センサでリアルタイムに計測されるプローブの深度と関連付けられないため、外付けの深度センサを用いずに、プローブで撮影された画像から深度を検出する手法を採用することで、撮影された画像データの解析処理により深度を演算し、画像データが撮影された深さ位置を特定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−112175号公報
【特許文献2】特開2012−235435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、画像データをリアルタイムに地上のコンピュータ装置に送信せずに、プローブ内で蓄積し、観測終了後の画像解析により画像の深度を特定することを可能とする特許文献2の提案は、システム全体の簡易化を可能とするものの、プローブ自体が複雑化し、コストアップ要因となる。
【0008】
プローブを非電信性のワイヤで吊り下げ、画像をプローブ内で蓄積する構成は、電信ケーブルで吊り下げる場合と比較して、そのプローブとワイヤの連結構造が単純であり(電気的な接続が不要で、機構としての連結のみで足りるため)、この利点を活かした更なる機能向上が望まれている。
【0009】
そこで、本発明の目的は、ボアホール内に非電信性のワイヤで吊り下げられたプローブで撮影するボアホール観測システムにおいて、外付けの深度センサにより検出されるプローブの深度により、撮像された画像の深さ位置を特定することができるボアホール観測システムを提供することにある。
【0010】
また、本発明の別の目的は、ボアホール内に非電信性のワイヤで吊り下げられたプローブで撮影するボアホール観測システムにおいて、非電信性のワイヤでプローブを吊り下げる構造を利用した新規な観測方法及びそのための構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明のボアホール観測システムは、ボアホールに挿入され、ボアホール内の孔壁面を撮影する撮像装置と該撮像装置により撮像された画像を記録する記録媒体を有するプローブと、プローブと連結し、プローブをボアホール内に吊り下げるワイヤと、地上でワイヤを引張し、プローブがボアホール内を一定速度で昇降するように動作させ且つプローブの移動距離を検出するウインチと、プローブの撮像開始タイミングに合わせてウインチを作動させ、ウインチからプローブの移動距離情報を通信により取得する制御装置とを備え、制御装置は、測定終了後、地上に引き上げられたプローブから取り出された記録媒体から、記録媒体に記録された画像データを読み出し、該画像データを前記ワイヤの移動距離情報と対応付けて記録することを特徴とする。
【0012】
また、本発明のボアホール観測システムは、上記システムにおいて、プローブは、細長形状のプローブの一方の端部側に撮像装置が内蔵され、他方の端部にワイヤ取付部が設けられるとともに一方の端部にもワイヤ取付部が設けられ、プローブは、前記一方の端部に設けられたワイヤ取付部に取り付けられたワイヤにより撮像面が上向きとなるように吊り下げられた状態で撮像することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ボアホール内に非電信性のワイヤで吊り下げられたプローブで孔内壁面を撮影するボアホール観測システムにおいて、外付けの深度センサで計測されたプローブの深度を、プローブで撮影した画像データと関連付けることができ、撮影された画像の深さ位置を特定することができる。
【0014】
また、本発明によれば、撮像装置の撮像面を上に向けた状態でプローブをワイヤで吊り下げ、プローブを上昇させながら撮影を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態におけるボアホール観測システムの構成例を示す図である。
図2】プローブ11の外観構成を示す模式図である。
図3】撮像面が上向きに配置されたプローブ11を含むボアホール観測システムの構成例を示す図である。
図4】プローブ11の内部構成を示す模式図である。
図5】制御装置15の観測時の処理フローチャートである。
図6】プローブ11の観測時の処理フローチャートである。
図7】ウインチ13の観測時の処理フローチャートである。
図8】制御装置15の観測終了後の処理のフローチャートである。
図9】時間情報同士が対応する画像データと深度情報との組み合わせを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、かかる実施の形態例が、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態におけるボアホール観測システムの構成例を示す図である。本実施の形態のボアホール観測システムは、ボアホールに挿入され且つ撮像面を下向きとしてボアホール内の孔壁面を撮影するプローブ11と、該プローブ11と連結し且つプローブ11をボアホール内に吊り下げる非電信性のワイヤ12と、地上でワイヤ12を引張し且つプローブ11の長さを調節するとともにワイヤ12の移動速度(昇降速度)又は移動距離(昇降距離)を検知してプローブ11の深さ位置(深度)を検知する深度センサ14を備えたウインチ13と、ウインチ13の深度センサ14により検知される深度を取得して記録するコンピュータ装置である制御装置15とを備える。
【0018】
ウインチ13から延びるワイヤ12は、三脚支柱に取り付けられた滑車を介して、ボアホール内に垂れ下がり、その先端に、プローブ11が連結している。ウインチ13は、内蔵電動モータによりワイヤ12が巻き付いているドラムを回転させ、深度センサ14が、ウインチ13の一部にウインチ13と一体的に取り付けられる。深度センサ14は、ウインチ13から繰り出される(又はウインチ13に巻き取られる)ワイヤ12の移動によって回転する回転体と、その回転体の回転数をカウントするカウンタ(パルスエンコーダ又はロータリエンコーダなど)と計時装置とを有し、ワイヤ12の移動距離(深さ位置)さらには移動速度を測定する。ウインチ13は、深度センサ14により測定されるワイヤ12の移動速度の情報を取得し、ワイヤ12の移動速度が一定になるように、フィードバック制御など既知の制御方式により、ドラムの回転速度が制御される。ワイヤ12の移動速度を定速制御することにより、ボアホール内を均一にムラなく撮影することができる。
【0019】
図2は、プローブ11の外観構成を示す模式図である。図2(a)において、プローブ11は、金属製(例えばステンレス鋼製)の円筒体110であって、その一方の端面(後端面)に、ワイヤ12を連結するための連結金具111が取り付けられ、ワイヤ12により吊り下げられる。連結金具111が設けられる後端部は、蓋体113を形成し、円筒体110の後端部は開口可能になっており、蓋体113を開けると、円筒体110の後端部内部には、取り外し可能な記録媒体や電源スイッチなどのスイッチ類及びスイッチランプなどが格納される空間が形成されている。
【0020】
円筒体110のもう一方の端面側(先端側)には、撮影用の窓となる、例えばアクリルガラスなどで形成される透明円筒部114が設けられ、透明円筒部114からの撮影が可能に鉛直下向きに配置されたカメラは、降下しながら、撮像面を下向きとして、この透明円筒部114を通して孔壁面の画像を撮影する。
【0021】
円筒体110の金属製先端部112は、アタッチメントが取り付け可能に加工(例えばねじ切り加工)されており、ワイヤ12を連結可能な連結金具を備えた取り外し可能なアタッチメント115が取り付け可能である。後述するように、円筒体110の先端側にワイヤ12を連結し、カメラが鉛直上向きになるように吊すことで、プローブ11を上昇させながら、撮像面を上向きとして、孔壁面の撮影が可能となる。図2(b)は、円筒体110の先端側にも連結金具111が取り付けられた構成例を示す。
【0022】
図3は、撮像面が上向きに配置されたプローブ11を含むボアホール観測システムの構成例を示す図である。プローブ11は、アタッチメント115の連結金具によりワイヤ12により吊り下げられ、ボアホール11の最底位置から上方向に引き上げられながら、撮像を行うことで、ボアホールの底側から上方向に撮像を行うことができる。カメラの撮像面及び照明を下向きにして撮像する場合に、ボアホールの孔壁面の割れ目部分などで照明が届かずに撮像できない箇所が生じる。このとき、図3に示すように、カメラの撮像面及び照明を上向きにして撮像することにより、別の角度からの撮像が可能となり、カメラの撮像面及び照明を下向きにして撮像する場合に照明が届かずに撮像できない部分を撮像することができ、両方の撮像を行うことで、ボアホール内をより詳細に撮像することができるようになる。
【0023】
図4は、プローブ11の内部構成を示す模式図であり、図4(a)は、プローブ11の内部構成の概略を示し、図4(a)において、カメラ30は、透明円筒部114から孔壁面を撮影可能な位置(例えば、図示されるように、透明円筒部114の縁近辺)に配置され、円筒体110の中心軸上のカメラ30の周囲には照明部32が配置される。照明部32は、カメラ30のレンズ外周部に取り付けられて、透明円筒部114を通じて斜め前方所定範囲の孔壁面を照らす。カメラ30の前方斜め方向の孔壁面を撮影するために、好ましくは、カメラ30には、広角レンズが取り付けられる。照明部32は、好ましくは、LEDであり、全周にわたって均等な光量を照射する。
【0024】
蓋体113を開けた内部には、記録媒体431、スイッチ432、スイッチランプ433が設けられ、さらに、円筒体110内部には、三次元方位センサ31、制御部50、バッテリ42が内蔵される。
【0025】
図4(b)は、制御部50の機能ブロックを示す。図4(b)において、カメラ30は、アナログ方式またはデジタル方式の小型カメラである。孔壁面の画像解析の為に視野角度120度以上の広角レンズを使用する。照明部32は、孔壁を照らすための照明手段であり、例えばLEDライトで構成される。
【0026】
3次元方位センサ31は、プローブ11の方位を測定する。画像解析のため、またはスキャン画像生成の為に方位情報が必要となる。その方位情報を3次元方位センサ31によって取得する。カメラインターフェース部33は、アナログ方式のカメラ30の場合、アナログ信号をデジタルデータに変換するA/D変換部を有する。カメラ30で撮像された画像データがこのカメラインターフェース部33を経て画像3原色RGBの形式に変換される。
【0027】
3次元方位センサ制御部34は、カメラ30のフレーム同期信号に従い、3次元方位センサ31に対して、方位情報データを出力するよう命令し、3次元方位センサ31からの方位情報データが入力される。
【0028】
照明制御部35は、照明の明るさを制御する回路部であり、周囲の明るさに応じて照度を自動調整する。制御CPU36は、ソフトウェアを実行するハードウェアである。制御ソフトウェア37は、制御CPU36のハードウェア環境において本発明の装置の動作全体を制御するために組み込まれるソフトウェアである。具体的には、以下の主な機能によって実現される。
【0029】
1)ユーザスイッチの状態を入力し所要動作を起動させ、ランプ類の点灯、消灯または点滅によって本装置の動作状況をユーザに知らせる。
2)記録媒体インターフェース(IF)部を経て記録媒体とのデータのやり取りを行う。
3)画像データの入力及び記録媒体への転送を行う。
4)方位データの入力及び記録媒体への転送を行う。
5)照明の明るさを調整する。
6)カメラを動作させるための設定を行う。
7)ビデオエンコーダを動作させる為の設定を行う。
【0030】
メモリ部は、CPU用メモリ381及び画像用メモリ382を有する。CPU用メモリ381は、制御ソフトウェアの動作またはデータ格納のためのメモリであり、画像用メモリ382は、画像データを一時的に格納するためのメモリである。
【0031】
記録媒体インターフェース部39は、制御CPU36が送ったデータをまとめてファイリング可能なフォーマットの形式で記録媒体431へ転送する部分であり、通常は専用コントローラICまたはCPUのハードウェアによって実現する。
【0032】
ビデオエンコーダ40は、カメラ30で撮像した映像をアナログモニター上に可視化する為の部分である。専用ビデオエンコーダICで実現する。バッテリ42は、2次電池で構成され、プローブ11に電力を供給する。
【0033】
ユーザインターフェース部43は、記録媒体431、ユーザスイッチ432及びスイッチランプ433を有して構成される。記録媒体431は、USBメモリまたはSDカードである。ユーザスイッチ432は、電源スイッチ、記録動作開始または終了ボタン及びタイマ設定スイッチで構成される。
【0034】
プローブ11の電源が入ると、画像入力及び画像出力の処理と共に動作開始ボタン、またはタイマ設定スイッチの状態を受付けて処理する。タイマが設定された場合、動作開始ボタンが押された時刻から経過時間を計測し、設定された時刻に達するとデータ記録動作モードに入って所定情報の記録媒体431への格納が実行される。タイマ設定がない場合、動作開始ボタンが押されると直ちに上記の記録動作が実施される。記録動作は動作終了ボタン(回路上、開始ボタンと同一でも構わない)が押されるまで継続する。
【0035】
通信部44は、無線通信規格(例えばBluetooth(登録商標))に準拠した通信回路であって、制御装置15の通信部と無線通信を行う。
【0036】
プローブ11の電源が入ると、カメラ30で撮像された画像信号がカメラインターフェース部33に入力される。アナログ方式のカメラの場合、A/D変換部を経てアナログ信号がデジタルの画像データに変換される。画像データを、カメラインターフェース部33にて画像3原色フォーマットに変換し、画像水平ライン同期信号及び画像フレーム同期信号と共に画像メモリ部382へ送る。
【0037】
制御CPU36は、画像フレーム同期信号に従い、内蔵された3次元方位センサ31に方位データ出力コマンドを出す。その方位センサ31からの方位データを受信すると直ちに取り入れて、画像データ更にはその撮像時刻にかかる時間情報とともに画像用メモリ382に保存する。
【0038】
カメラインターフェース部33より出力された画像3原色データをフレーム毎に画像用メモリ382に保存し、ビデオエンコーダ40に出力する。
【0039】
図5乃至図8は、本実施の形態におけるボアホール観測装置の処理フローチャートであって、図5は制御装置15の観測時の処理、図6はプローブ11の観測時の処理、図7はウインチ13の観測時の処理、図8は制御装置15の観測終了後の処理のフローチャートである。
【0040】
図5において、制御装置15は無線通信機能(例えば、Bluetooth(登録商標))を有し、その無線通信機能により、プローブ11との通信接続処理を開始する(S101)。無線接続に成功すると(S102)、制御装置15は、オペレータからの撮像開始タイミング及び撮像時間の入力を受け付けると(S103)、それらをプローブ11に転送する(S104)。撮像開始タイミングは、撮像準備作業のための時間を確保するために、現在時刻よりも遅いタイミングが設定され、撮像開始時刻として設定されてもよいし、「○○分後」のような時間カウント情報であってもよい。撮像時間は、撮像開始タイミングから撮像を続ける時間であって、撮像終了時刻として設定されてもよいし、「○○分」のように設定される。撮像終了時刻が設定された場合は、撮像開始時刻との差分が撮像時間となる。
【0041】
プローブ11から、撮像開始タイミングと撮像時間の正常受信メッセージを受信し(S105)、続いて、プローブ11から、撮像設定完了メッセージを受信すると(S106)、プローブ11との通信接続を切断する(S107)。撮像設定完了メッセージに関して、プローブ11は、撮像開始タイミングと撮像時間の情報を制御装置15から受信すると、プロ−ブ11の時計機能により、撮像開始時刻と撮像時間を設定し、設定完了により、制御装置15に撮像設定完了メッセージを送信する。プローブ11、制御装置15は、それぞれ時計機能を内蔵しているが、あらかじめそれぞれの時刻を一致させておく。
【0042】
制御装置15は、続いて、ウインチ13との通信接続処理を開始する(S108)。無線接続に成功すると(S109)、制御装置15は、撮像開始タイミングが来るのを待機する(S110)。撮像開始タイミングが来るまでの間、作業者は、プローブ11をボアホールの撮像開始位置に移動させて、撮像準備を行う。撮像開始タイミングが来るのを待機する。S110において、撮像開始タイミングとなると、制御装置15は、ウインチ13に動作開始指示メッセージを送信し(S111)、ウインチ13は、該メッセージに応答し、動作開始する。すなわち、ワイヤ12が巻かれているドラムを定速で回転させてプローブ11を移動させ、さらに、その移動量からプローブ11の深度を深度センサ14で検出して、検出した深度情報を制御装置15に送信する。深度検出は所定時間間隔で行われ、検出時に制御装置15に送信される。
【0043】
制御装置15は、ウインチ13からの深度情報(移動距離情報)を受信する毎に、深度情報とその深度情報検出時の時間情報(受信時刻でよい)とともに内部記録装置に記録する(S112)。これにより、制御装置15は、撮像時間中におけるプローブ11の深さ位置(深度情報)とその時間情報(時刻)を取得することができる。ウインチ13が時計機能を有している場合は、ウインチ13が深度情報とその時間情報を制御装置15に送信する構成であってもよい。その場合、プローブ11、制御装置15及びウインチ13それぞれの時刻を一致させておく。
【0044】
制御装置15は、撮像時間に達した時(S113)、ウインチ13に動作停止指示メッセージを送信し(S114)、ウインチ13の動作を停止させる。その後、ウインチ13との通信接続を遮断する(S115)。
【0045】
図6は、プローブ11の観測時の処理であって、プローブ11は、制御装置15の通信接続処理(図5のS101)に応答して、制御装置15との通信接続処理を開始する(S201)。無線接続に成功し(S202)、制御装置15から撮像開始タイミング及び撮像時間の情報を受信すると(S203)、その正常受信メッセージを制御装置15に送信する(S204)。続いて、プローブ11の内蔵時計機能により、受信した撮像開始タイミングと撮像時間に合わせたタイマ設定を行い(S205)、タイマ設定が完了すると、設定完了メッセージを制御装置15に送信する(S206)。その後、制御装置15との通信接続を切断し(S207)、撮像開始タイミングまで待機する。撮像開始タイミングになると(S208)、撮像を開始する(S209)。撮像は設定された撮像時間の期間続けられ、撮像された画像データは撮像された時間(時刻)の情報とともに、記録媒体431に記録する(S210)。撮像時間が終了すると(S211)、撮像を停止する(S212)。
【0046】
図7は、ウインチ13の観測時の処理であって、ウインチ13は、無線通信機能(例えば、Bluetooth(登録商標))を有し、その無線通信機能により、制御装置15の通信部と無線通信を行う。制御装置15の通信接続処理(図5のS108)に応答して、制御装置15との通信接続処理を開始する(S301)。無線接続に成功し(S302)、制御装置15から動作開始指示メッセージを受信すると(S303)、ワイヤ12が巻き付けられているドラムを定速回転させ(S304)、深度センサ14が所定時間間隔で検出する深度情報(移動距離情報)を制御装置15に送信する(S305)。そして、制御装置15から動作停止指示メッセージを受信すると(S306)、ドラムの回転及び深度情報の送信を停止し、動作を停止する(S307)。さらに、制御装置15との通信接続を切断する(S308)。
【0047】
図8は、制御装置15の観測終了後の処理のフローチャートであり、図9は、時間情報同士が対応する画像データと深度情報とを組み合わせを模式的に示す図である。観測(測定)終了後、作業者の操作により、ウインチ13のドラムを逆回転させてプローブ11をボアホール内から引き上げ、プローブ11内から記録媒体431が取り出される。記録媒体431は、制御装置15に接続される。制御装置15は、図9(a)に示される記録媒体431に記録されている画像データ及びその時間情報を読み出し(S401)、さらに、図9(b)に示される制御装置15の内部記録装置に記録されている深度情報及びその時間情報を読み出し(S402)、そして、図9(c)に示されるように、時間情報同士が対応する画像データと深度情報とを組み合わせたデータファイルを生成し、内部記録装置又は記録媒体431に記録する(S403)。これにより、画像データと深度情報とを関連付け、非電信性のワイヤに連結されたプローブで撮像された画像の深さ位置を特定することができる。
【0048】
制御装置15は、好ましくは、上記組み合わせたデータファイルを用いて、既知の画像解析処理により、孔壁を撮像した画像データから円周展開画像である展開画像データを生成する。または、プローブ11の制御部50の画像処理として、撮像された平面画像から円周展開画像が生成されてもよい。
【0049】
本発明は、以上の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る各種変形、修正を含む要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0050】
11:プローブ、12:ワイヤ、13:ウインチ、14:深度センサ、15:制御装置、30:カメラ、31:3次元方位センサ、32:照明部、33:カメラIF、34:方位センサ制御部、35:照明制御部、36:制御CPU、37:制御ソフトウェア、38:画像円周スキャン部、39:記録媒体IF、40:ビデオエンコーダ、42:バッテリ、43:ユーザIF、44:通信部、50:制御部、381:CPU用メモリ、382:画像用メモリ、431:記録媒体、432:スイッチ、433:ランプ
【要約】
【課題】ボアホール内に非電信性のワイヤで吊り下げられたプローブで撮影するボアホール観測システムにおいて、外付けの深度センサにより検出されるプローブの深度により、撮像された画像の深さ位置の特定を可能とする。
【解決手段】ボアホール観測システムは、ボアホールに挿入され、ボアホール内の孔壁面を撮影する撮像装置と該撮像装置により撮像された画像を記録する記録媒体を有するプローブと、プローブと連結し、プローブをボアホール内に吊り下げるワイヤと、地上でワイヤを引張し、プローブがボアホール内を一定速度で昇降するように動作させ且つプローブの移動距離を検出するウインチと、プローブの撮像開始タイミングに合わせてウインチを作動させ、ウインチからプローブの移動距離情報を通信により取得する制御装置とを備え、制御装置は、測定終了後、地上に引き上げられたプローブから取り出された記録媒体から、記録媒体に記録された画像データを読み出し、該画像データをワイヤの移動距離情報と対応付けて記録する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9