特許第5862858号(P5862858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 第一精工株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000002
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000003
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000004
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000005
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000006
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000007
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000008
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000009
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000010
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000011
  • 特許5862858-コネクタ装置 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862858
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/639 20060101AFI20160202BHJP
   H01R 12/79 20110101ALI20160202BHJP
【FI】
   H01R13/639 Z
   H01R12/79
【請求項の数】2
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-171683(P2011-171683)
(22)【出願日】2011年8月5日
(65)【公開番号】特開2013-37839(P2013-37839A)
(43)【公開日】2013年2月21日
【審査請求日】2014年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】592028846
【氏名又は名称】第一精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083909
【弁理士】
【氏名又は名称】神原 貞昭
(72)【発明者】
【氏名】満野 孝輔
【審査官】 石川 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−040295(JP,A)
【文献】 特開2010−153209(JP,A)
【文献】 特開2010−027511(JP,A)
【文献】 特開2011−108500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/79
H01R 13/639
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状部材差込み部が設けられたハウジングと、
該ハウジングに配列配置されて設けられ、配線板状部材が上記ハウジングに上記板状部材差込み部を通じて差し込まれたとき、該配線板状部材における複数の接触端子部に接触接続される複数のコンタクトと、
上記ハウジングに取り付けられて、上記配線板状部材が上記ハウジングに上記板状部材差込み部を通じて差し込まれたとき、上記複数のコンタクトが上記複数の接触端子部に接触接続された状態を維持すべく上記配線板状部材に対する係止を行う係止状態と上記係止を解除する係止解除状態とを選択的にとる係合部材と、
を備えて成り、
上記係合部材が、上記ハウジングに上記板状部材差込み部を通じて差し込まれた上記配線板状部材を係止する係止部と該係止部に上記配線板状部材に対する係止を解除させるべく操作される操作部とを一体形成されたものとして備え、上記ハウジングに取り付けられたとき、上記複数のコンタクトの配列方向に沿って伸びるものとされて、上記複数のコンタクトの配列方向における両端部に夫々設けられた一対の回動軸が上記ハウジングにより支持されて全体が上記ハウジングに対して回動可能に配され、
上記係合部材が上記ハウジングに取り付けられたもとで、上記一対の回動軸を結ぶ仮想回動軸線を境にして、上記係合部材における上記ハウジングの上記板状部材差込み部が設けられた第1の端面部側に上記操作部が設けられるとともに、上記係合部材における上記ハウジングの上記第1の端面部に対向する第2の端面部側に上記係止部が設けられ、
上記操作部に、上記係止部に向かう方向に折り返、上記係合部材が上記ハウジングに取り付けられたもとで上記ハウジングに当接して位置規制される折返し弾性部が設けられ、
上記係合部材が上記ハウジングに取り付けられたもとで、上記折返し弾性部が、上記係合部材を上記仮想回動軸線を回動中心軸として回動させるように付勢して上記係止部に上記配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態をとらせ、上記操作部が、操作されたとき上記係止部に上記配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態を解除させること、
を特徴とするコネクタ装置。
【請求項2】
上記一対の回動軸の夫々が、上記ハウジングに固定された軸受け金具に係合することを特徴とする請求項1記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の特許請求の範囲に記載された発明は、フレキシブル印刷配線基板(FPC)やフレキシブル平板状ケーブル(FFC)等の配線板状部材が装着されるもとで、装着された配線板状部材に設けられた接触端子部に接触接続されるコンタクトと、装着された配線板状部材に対する係止及び係止解除を行う係合部材と、を備えたコネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の電子機器に実装される比較的小型なフレキシブル印刷配線基板やフレキシブル平板状ケーブル等の配線板状部材は、種々の電気部品が取り付けられる主配線基板との連結が、当該主配線基板に電気的接続がなされて固定されるコネクタ装置が用いられて行われることが多いものとされる。このような配線板状部材の主配線基板との連結にあたって用いられるコネクタ装置は、配線板状部材に設けられた接触端子部に接触接続される導電性のコンタクトを有していて、そのコンタクトを介して、配線板状部材に設けられた接触端子部を主配線基板に設けられた配線端子に電気的に接続する。
【0003】
従来提案されている、例えば、フレキシブル印刷配線基板とされる配線板状部材の主配線基板との連結に用いられるコネクタ装置であって第1の類型に属するものは、配線板状部材が差し込まれる差込み部を形成するものとされて主配線基板に配される、例えば、絶縁材料によって形成されたハウジングを有している。そして、そのハウジング内に配列配置されて設けられて主配線基板に設けられた配線端子に接続され、配線板状部材が差込み部を通じてハウジングに差し込まれるとき、その配線板状部材に設けられた複数の接触端子部に夫々対応するものとなる複数のコンタクトと、ハウジングに対して回動可能に設けられたアクチュエータとを備えている。
【0004】
斯かる従来の第1の類型に属するコネクタ装置に備えられるアクチュエータは、複数のコンタクトの夫々に係合し、回動せしめられたとき複数のコンタクトの夫々における作動部を変位させて、複数のコンタクトに、差込み部を通じてハウジングに差し込まれた配線板状部材に設けられた複数の接触端子部に夫々接触接続された状態、もしくは、複数の接触端子部との接触接続から解放された状態をとらせるもの、または、差込み部を通じてハウジングに差し込まれた配線板状部材に当接し、回動せしめられたとき、配線板状部材を押圧して当該配線板状部材に設けられた複数の接触端子部を複数のコンタクトに夫々接触接続された状態におく、もしくは、配線板状部材に対する押圧を解除して当該配線板状部材に設けられた複数の接触端子部を複数のコンタクトとの接触接続から解放された状態におくものとされる。そして、複数のコンタクトと配線板状部材に設けられた複数の接触端子部とが相互接触接続されることにより、配線板状部材が主配線基板との電気的接続状態におかれる。
【0005】
さらに、従来提案されている配線板状部材の主配線基板との連結に用いられるコネクタ装置であって第2の類型に属するものは、上述のようなハウジングを有し、上述のような複数のコンタクトを備えているが、ハウジングに対して回動可能に設けられるアクチュエータは備えていない。斯かる従来の第2の類型に属するコネクタ装置にあっては、配線板状部材が差込み部を通じてハウジングに差し込まれたとき、自動的に、ハウジング内に設けられた複数のコンタクトが、差し込まれた配線板状部材に設けられた複数の接触端子部に夫々接触接続され、配線板状部材が差込み部を通じてハウジングに適正に差し込まれるだけで、配線板状部材が主配線基板との電気的接続状態におかれる。
【0006】
このような従来提案されているコネクタ装置にあっては、ハウジングに対して回動可能に設けられるアクチュエータを備えたもの及び斯かるアクチュエータを備えていないもののいずれの場合にも、例えば、フレキシブル印刷配線基板とされる配線板状部材が、主配線基板に配されたハウジングに差込み部を通じて差し込まれて、ハウジングに配された複数のコンタクトが、ハウジングに差し込まれた配線板状部材における複数の接触端子部に夫々接触接続され、それにより、配線板状部材が主配線基板との電気的接続状態におかれるにあたり、配線板状部材がハウジングから不所望に抜脱するような事態が回避されなくてはならない。当然のことながら、ハウジングに配された複数のコンタクトがハウジングに差し込まれた配線板状部材における複数の接触端子部に夫々接触接続された状態が適正に維持されるためには、ハウジングに差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材が、その状態を安定に維持することができ、ハウジングから不所望に抜脱されるような事態をまねかないものとされることが必要とされるのである。
【0007】
そのため、上述のような、ハウジングを有し、複数のコンタクトとハウジングに対して回動可能とされるアクチュエータとを備えた第1の類型に属するコネクタ装置であって、ハウジングに差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材に係合して、当該配線板状部材のハウジングからの不所望な抜脱の阻止に関与する係止手段を備えたものが従来提案されている(例えば、特許文献1参照。)。また、上述のような、ハウジングを有し、複数のコンタクトを備えているが、ハウジングに対して回動可能とされるアクチュエータは備えていない第2の類型に属するコネクタ装置であって、ハウジングに差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材に係合して、当該配線板状部材のハウジングからの不所望な抜脱を阻止する係止手段を備えたものも従来提案されている(例えば、特許文献2)。
【0008】
特許文献1に示されるコネクタ装置(フレキシブル基板用コネクタ)にあっては、ハウジング(2) における複数のコンタクト(6) の配列方向の両端側壁(5) に一対の補強金具(20)が夫々取り付けられており、各補強金具には、ハウジングに差込み部(開口部(3))を通じて差し込まれた配線板状部材(フレキシブル基板(30)) に当接して配線板状部材にそれを押し上げる方向の押圧力を作用させる、もしくは、ハウジングに差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材における係合部(係合孔又は切欠き部(32)) に係合する状態をとる係止手段(弾性支持片(25)) が形成されている。そして、ハウジングに対して回動可能に設けられたアクチュエータ(加圧部材(12)) が、ハウジングに対して起き上がった位置からハウジングに対して伏した位置へと回動されるとき、ハウジングに差し込まれた配線板状部材が、アクチュエータによって、補強金具に形成された係止手段とは反対側から当該係止手段に向かって押圧される。
【0009】
それにより、ハウジングに差し込まれた配線板状部材が、アクチュエータと補強金具に形成された係止手段とによって押圧挟持されることにより係止され、もしくは、補強金具に形成された係止手段が配線板状部材における係合部に係合することにより係止される。それにより、ハウジングに差し込まれた配線板状部材のハウジングからの不所望な抜脱が阻止される。
【0010】
その後、アクチュエータが、ハウジングに対して伏した位置からハウジングに対して起き上がった位置へと回動されたとき、ハウジングに差し込まれた配線板状部材がアクチュエータにより押圧されなくなり、配線板状部材がアクチュエータと補強金具に形成された係止手段とによって押圧挟持された状態、もしくは、補強金具に形成された係止手段が配線板状部材における係合部に係合した状態が解除される。それにより、ハウジングに差し込まれた配線板状部材がハウジングから抜脱され得る状態におかれる。
【0011】
また、特許文献2に示されるコネクタ装置(コネクタ)にあっては、ハウジング(11)における複数のコンタクト(第1端子(51)及び第2端子(61)) の配列方向の両側部(16) に一対の取付用補助金具(ネイル(81)) が夫々取り付けられている。各取付用補強金具には、ハウジングに差込み部(挿入口(33)) を通じて差し込まれた配線板状部材(平板状ケーブル(101))を係止する状態をとる係止手段(ケーブル保持部(83)) が形成されており、係止手段は、配線板状部材における係合部(凹部(114))に係合する掛止部(83c) と掛止部を支持する腕部(83b)とを有して形成されている。
【0012】
さらに、ハウジングにおける両側部には、一対の係止解除手段(掛止解除部(21))が一体的に形成されて備えられている。各係止解除手段には、ハウジングにおける上部(15) の外方に突出する操作部(23)が移動可能に設けられており、操作部の下方端部は、取付用補強金具における係止手段が有する掛止部を支持した腕部に当接する作用部(23a)を成すものとされている。
【0013】
そして、配線板状部材がハウジングに差込み部を通じて差し込まれると、ハウジングに取り付けられた取付用補助金具における係止手段が有する腕部により支持された掛止部が、ハウジングに差し込まれた配線板状部材に設けられた係合部(凹部(114)) にその下方から係合して、配線板状部材を係止する。それにより、ハウジングに差し込まれた配線板状部材のハウジングからの不所望な抜脱が阻止される。
【0014】
その後、ハウジングに一体的に形成された係止解除手段に移動可能に設けられた操作部が、ハウジング内に押し込まれるように押圧操作されると、操作部の下方端部が形成する作用部が、それが当接する取付用補強金具における係止手段が有する掛止部を支持した腕部を下方に押圧移動させる。それにより、腕部により支持された掛止部が、配線板状部材における係合部に係合しなくなって配線板状部材を係止する状態を解除し、その結果、ハウジングに差し込まれた配線板状部材がハウジングから抜脱され得る状態におかれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2003−100370号公報(段落0013〜0022,図1〜10)
【特許文献2】特開2010−33978号公報(段落0058〜0067,図1,5,6,11,14,17,19)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述のような、ハウジングに差し込まれたフレキシブル印刷配線基板等の配線板状部材のハウジングからの不所望な抜脱の阻止に関与する係止手段を備えた、配線板状部材の主配線基板との連結に用いられるコネクタ装置として従来提案されているものにあっては、係止手段の配線板状部材に対する係止への関与がハウジングに対して回動可能とされたアクチュエータの回動操作に連動して行われる状態、あるいは、ハウジングに取り付けられた取付用補強金具に形成された係止手段による配線板状部材に対する係止解除が、ハウジングに一体的に形成された係止解除手段に移動可能に設けられた操作部が押圧操作されることにより行われる状態がとられる。
【0017】
そして、係止手段の配線板状部材に対する係止への関与がハウジングに対して回動可能とされたアクチュエータの回動操作に連動して行われる状態がとられる従来のコネクタ装置の場合には、ハウジングに対して回動可能とされたアクチュエータを備えることが不可欠とされ、そのことが、コネクタ装置の製造コストを嵩ませる要因となる。それに加えて、係止手段を配線板状部材に対する係止あるいは係止解除に関与させるにあたっては、アクチュエータをハウジングに対して回動させる操作が不可欠とされ、斯かる操作を行うための不所望なスペースをコネクタ装置の周囲に設けることが必要とされる。
【0018】
また、ハウジングに取り付けられた取付用補強金具に形成された係止手段による配線板状部材に対する係止解除が、ハウジングに一体的に形成された係止解除手段に移動可能に設けられた操作部が押圧操作されることにより行われる状態がとられる従来のコネクタ装置の場合には、係止手段が取付用補強金具に形成されるのに対して、係止解除手段がハウジングに一体的に形成されるので、ハウジングにおける複数のコンタクトの配列方向の両側部に夫々取り付けられる一対の取付用補強金具及びハウジングの両方についての構成の複雑化がまねかれてしまう。さらに、取付用補強金具は金属材料によって形成され、また、ハウジングは通常絶縁材料によって形成されるので、係止手段が金属材料製とされ、一方、係止解除手段に移動可能に設けられた操作部は絶縁材料製とされることになり、その結果、ハウジングに一体的に形成された係止解除手段に移動可能に設けられた操作部が、取付用補強金具に形成される係止手段に比して耐久性において劣るものとなることが考えられる。
【0019】
斯かる点に鑑み、本願の特許請求の範囲に記載された発明は、フレキシブル印刷配線基板やフレキシブル平板状ケーブル等とされる配線板状部材の他の配線基板との連結に用いられる、板状部材差込み部が設けられたハウジングとハウジングに配列配置されて設けられる複数のコンタクトとを備えたコネクタ装置であって、ハウジングに対して回動可能とされるアクチュエータ等が不要とされ、さらには、ハウジングに取り付けられる取付用補助金具等とハウジングとに夫々係止手段と係止解除手段とを設ける必要がなく、それにより、構成の簡略化と部品点数の減少とによる製造コストの低減を図ることができ、しかも、配線板状部材に対する係止及び係止の解除を行う手段の耐久性を向上させることができるもとで、ハウジングに板状部材差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材に対するハウジングからの不所望な抜脱を阻止するための係止及びその係止の解除を、確実かつ容易に行えることになるものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本願の特許請求の範囲における請求項1及び請求項2のいずれかに記載された発明(以下、本発明という。)に係るコネクタ装置は、板状部材差込み部が設けられたハウジングと、ハウジングに配列配置されて設けられ、配線板状部材がハウジングに板状部材差込み部を通じて差し込まれたとき、配線板状部材における複数の接触端子部に接触接続される複数のコンタクトと、ハウジングに取り付けられて、配線板状部材がハウジングに板状部材差込み部を通じて差し込まれたとき、複数のコンタクトが複数の接触端子部に接触接続された状態を維持すべく配線板状部材に対する係止を行う係止状態とその係止を解除する係止解除状態とを選択的にとる係合部材とを備えて成り、係合部材が、ハウジングに板状部材差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材を係止する係止部と係止部に配線板状部材に対する係止を解除させるべく操作される操作部とを一体形成されたものとして備え、ハウジングに取り付けられたとき、複数のコンタクトの配列方向に沿って伸びるものとされて、複数のコンタクトの配列方向における両端部に夫々設けられた一対の回動軸がハウジングにより支持されて全体がハウジングに対して回動可能に配され、係合部材がハウジングに取り付けられたもとで、一対の回動軸を結ぶ仮想回動軸線を境にして、係合部材におけるハウジングの板状部材差込み部が設けられた第1の端面部側に操作部が設けられるとともに、係合部材におけるハウジングの第1の端面部に対向する第2の端面部側に係止部が設けられ、操作部に、係止部に向かう方向に折り返、係合部材がハウジングに取り付けられたもとでハウジングに当接して位置規制される折返し弾性部が設けられ、係合部材がハウジングに取り付けられたもとで、折返し弾性部が、係合部材を仮想回動軸線を回動中心軸として回動させるように付勢して係止部に配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態をとらせ、操作部が、操作されたとき係止部に配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態を解除させることを特徴とするものとされる。
【0021】
上述のような本発明に係るコネクタ装置にあっては、配線板状部材がハウジングにそれに設けられた板状部材差込み部を通じて差し込まれると、ハウジングに配列配置された複数のコンタクトが、差し込まれた配線板状部材における複数の接触端子部に接触接続されるとともに、ハウジングに取り付けられた係合部材が、ハウジング内に差し込まれた配線板状部材を係止し、配線板状部材のハウジングからの不所望な抜脱を阻止する。そして、係合部材が配線板状部材を係止したもとで、その係合部材に所定の操作が加えられると、配線板状部材を係止した係合部材が、配線板状部材に対する係止を解除して、配線板状部材のハウジングからの抜脱を可能とする。
【0022】
斯かるもとで、係合部材は、ハウジングに板状部材差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材を係止する係止部と係止部に配線板状部材に対する係止を解除させるべく操作される操作部とを一体形成されたものとして備えていて、ハウジングに取り付けられたとき、複数のコンタクトの配列方向に沿って伸びるものとされて、複数のコンタクトの配列方向における両端部に夫々設けられた一対の回動軸がハウジングにより支持されて全体がハウジングに対して回動可能に配され、係合部材がハウジングに取り付けられたもとで、一対の回動軸を結ぶ仮想回動軸線を境にして、係合部材におけるハウジングの板状部材差込み部が設けられた第1の端面部側に操作部が設けられるとともに、係合部材におけるハウジングの第1の端面部に対向する第2の端面部側に係止部が設けられ、操作部に、係止部に向かう方向に折り返、係合部材がハウジングに取り付けられたもとでハウジングに当接して位置規制される折返し弾性部が設けられる。
【0023】
そして、係合部材がハウジングに取り付けられたもとで、折返し弾性部が、係合部材を仮想回動軸線を回動中心軸として回動させるように付勢して係止部に配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態をとらせ、操作部が、操作されたとき係止部に配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態を解除させる。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係るコネクタ装置においては、上述のように、ハウジングにそれに設けられた板状部材差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材に対しての、ハウジングに取り付けられた係合部材による、配線板状部材のハウジングからの不所望な抜脱を阻止するための係止、及び、配線板状部材のハウジングからの抜脱を可能とするための係止の解除を行うにあたり、例えば、ハウジングに対して回動可能とされるアクチュエータ等が不要とされ、さらには、ハウジングに取り付けられる取付用補助金具等とハウジングとに夫々係止手段と係止解除手段とを設けることが必要とされず、構成の簡略化と部品点数の減少とによる製造コストの低減を図ることができ、しかも、配線板状部材に対する係止及び係止の解除を行う手段の耐久性を向上させることができる。
【0025】
また、ハウジングに差し込まれた配線板状部材に対する係止及び係止の解除を行う係合部材が、ハウジングに板状部材差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材を係止する係止部と係止部に配線板状部材に対する係止を解除させるべく操作される操作部とを一体形成されたものとして備えていて、ハウジングに取り付けられたとき、複数のコンタクトの配列方向に沿って伸びるものとされて、操作部に、係止部に向かう方向に折り返、係合部材がハウジングに取り付けられたもとでハウジングに当接して位置規制される折返し弾性部が設けられる。そして、係合部材がハウジングに取り付けられたもとで、折返し弾性部が、係合部材を仮想回動軸線を回動中心軸として回動させるように付勢して係止部に配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態をとらせ、操作部が、操作されたとき係止部に配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態を解除させる。従って、係合部材は、配線板状部材を係止する係止部と係止部による配線板状部材に対する係止を解除する操作部とを含む全体が一体に形成される、簡単で容易に得ることができる構成を有していることになる。
【0026】
そして、このような本発明に係るコネクタ装置にあっては、配線板状部材をハウジングにそれに設けられた板状部材差込み部を通じて差し込むだけで、配線板状部材に対しての係合部材の係止部による係止を行うことができ、それとともに、配線板状部材に対しての係止部による係止の解除を、係合部材の複数のコンタクトの配列方向における両端部の一方から他方に亙って伸びている操作部に、例えば、押圧操作とされる変位操作を加えるだけで行うことができるので、配線板状部材についての係合部材による係止及び係止解除を極めて簡単な操作によって行うことができるとともに、斯かる操作のために部材の周囲に不所望なスペースを設けることが必要とされない。しかも、操作部が、係合部材の複数のコンタクトの配列方向における両端部の一方から他方に亙って伸びていることにより、係止部に配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態を解除させるための操作部に対する操作が、極めて行い易いものとされる。
【0027】
さらに、本発明に係るコネクタ装置にあっては、係合部材が、ハウジングに取り付けられたとき複数のコンタクトの配列方向における両端部に夫々設けられた一対の回動軸がハウジングにより支持されて全体がハウジングに対して回動可能に配され、係合部材がハウジングに取り付けられたもとで、一対の回動軸を結ぶ仮想回動軸線を境にして、係合部材におけるハウジング板状部材差込み部が設けられた第1の端面部側に操作部が設けられるとともに、係合部材におけるハウジング第1の端面部に対向する第2の端面部側に係止部が設けられている。それにより、斯かる係合部材にあっては、係止部が、ハウジングに板状部材差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材に設けられた係合部に係合しているもとで、操作部に、例えば、押圧操作とされる変位操作が加えられると、操作部と係止部とが一対の回動軸を結ぶ仮想回動軸線を回動中心軸として同方向に回動し、係止部が配線板状部材に設けられた係合部との係合を解除する。その結果、係止部に配線板状部材に設けられた係合部に係合する状態を解除させる動作が、極めて簡単な構成のもとに確実に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明に係るコネクタ装置の一例をそれに装着されるフレキシブル印刷配線基板と共に示す、コネクタ装置の一例の正面側から見た斜視図である。
図2】本発明に係るコネクタ装置の一例をそれに装着されるフレキシブル印刷配線基板と共に示す、コネクタ装置の一例の背面側から見た斜視図である。
図3】本発明に係るコネクタ装置の一例を示す平面図である。
図4】本発明に係るコネクタ装置の一例を示す正面図である。
図5】本発明に係るコネクタ装置の一例を示す底面図である。
図6】本発明に係るコネクタ装置の一例が備える係合部材及び軸受け金具を示す斜視図である。
図7図4におけるVII −VII 線断面を示す断面図である。
図8】本発明に係るコネクタ装置の一例が備えるハウジングに対するフレキシブル印刷配線基板の差込みの開始直前の状態を示す断面図である。
図9】本発明に係るコネクタ装置の一例が備えるハウジングに対するフレキシブル印刷配線基板の差込みが開始された状態を示す断面図である。
図10】本発明に係るコネクタ装置の一例が備える係合部材が、コネクタ装置の一例が備えるハウジングに差し込まれたフレキシブル印刷配線基板を係止した状態を示す断面図である。
図11】本発明に係るコネクタ装置の一例が備える係合部材が、コネクタ装置の一例が備えるハウジングに差し込まれたフレキシブル印刷配線基板に対する係止を解除した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明を実施するための形態は、以下に述べられる本発明についての実施例をもって説明される。
【実施例】
【0030】
図1(斜視図)及び図2(斜視図)は、本発明に係るコネクタ装置の一例をそれに装着されるフレキシブル印刷配線基板と共に示し、図3(平面図),図4(正面図)及び図5(底面図)は、本発明に係るコネクタ装置の一例を示す。
【0031】
図1図5において、本発明に係るコネクタ装置の一例を成すコネクタ装置10は、合成樹脂等の絶縁材料によって形成されたハウジング11を備えている。ハウジング11には、その正面側端面部11aに板状部材差込み部12が設けられており、板状部材差込み部12からハウジング11の内部へと板状部材収容空間が伸びている。
【0032】
ハウジング11は、例えば、図示されていない主配線基板に配され、それにより、コネクタ装置10の全体が主配線基板に取り付けられたものとされる。その際、ハウジング11における正面側端面部11aとそれに対向する背面側端面部11bとに挟まれた一対の対向外面部のうちの一方が主配線基板に対接する外面部とされて他方が開放された外面部とされる。以下においては、主配線基板に対接するハウジングの一外面部を下方外面部11cといい、それに対向するハウジングの他の外面部を上方外面部11dという。そして、正面側端面部11aに設けられた板状部材差込み部12を通じて、例えば、フレキシブル印刷配線基板13が、配線板状部材を成すものとして、ハウジング11に差し込まれる。
【0033】
ハウジング11には、その内部において、各々が弾性導電材料で形成された複数のコンタクト14が、ハウジング11の長手方向に沿って配列配置されて設けられている。複数のコンタクト14は、配線板状部材を成すフレキシブル印刷配線基板13に配列配置された複数の接触端子部16に接触接続される信号用コンタクトとして設けられているが、他のフレキシブル印刷配線基板における複数の信号接続端子部及び接地接続部に接触接続される信号用及び接地用コンタクトとして用いられてもよい。
【0034】
図2図3及び図5、さらには、図4における VII−VII 線断面をあらわす図7に示されるように、複数のコンタクト14の夫々は、ハウジング11の背面側端面部11b側においてハウジング11に固定される固定部17と、固定部17からハウジング11の内部へとハウジング11の正面側端面部11aに向かって対を成して伸びる下方ビーム部18及び上方ビーム部19と、固定部17からハウジング11の背面側端面部11bの外部へと伸びる接続端子部20とを有している。下方ビーム部18の先端部分には接点部18aが形成されており、また、上方ビーム部19の先端部分には接点部19aが形成されている。接続端子部20は、ハウジング11が配された主配線基板に設けられた配線端子に、例えば、半田付けにより接続される。そして、複数のコンタクト14は、例えば、ハウジング11の背面側端面部11b側から板状部材差込み部12に向けてハウジング11の内部へと押圧挿入される。
【0035】
このようなもとで、ハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれるフレキシブル印刷配線基板13は、それにおける複数の接触端子部16がハウジング11に配列配置された複数のコンタクト14に夫々対応する位置をとる状態におかれる。そして、複数のコンタクト14の夫々における上方ビーム部19の先端部分に形成された接点部19aが、ハウジング11に差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16のうちの対応するものに接触接続される。それにより、ハウジング11に差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16が、複数のコンタクト14を介して、ハウジング11が配された主配線基板に設けられた配線端子に連結される。
【0036】
また、コネクタ装置10は、ハウジング11に取り付けられて、フレキシブル印刷配線基板13がハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれたとき、複数のコンタクト14の夫々における上方ビーム部19の先端部分に形成された接点部19aが、ハウジング11に差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16のうちの対応するものに接触接続された状態を維持すべく、フレキシブル印刷配線基板13に対する係止を行う係止状態とその係止を解除する係止解除状態とを選択的にとる係合部材25を備えている。ハウジング11に取り付けられた係合部材25は、その全体がハウジング11の長手方向、即ち、複数のコンタクト14の配列方向に沿って伸びるものとされていて、その長手方向を複数のコンタクト14の配列方向としている。そして、係合部材25における複数のコンタクト14の配列方向の両端部には、一対の回動軸26A及び26Bが夫々設けられていて、これらの回動軸26A及び26Bは、ハウジング11における複数のコンタクト14の配列方向の両端部に配された軸受け金具27A及び27Bによって夫々回動可能に支持されている。それにより、係合部材25の全体がハウジング11に対して回動可能に取り付けられたものとされている。
【0037】
係合部材25は、例えば、弾性金属板材に打抜き屈曲加工が施されて得られるものとされ、図6(斜視図)に示されるように、ハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13を係止する一対の係止部30A及び30Bと、係止部30A及び30Bの夫々にフレキシブル印刷配線基板13に対する係止を解除する状態をとらせるべく操作される操作部31とを、一体形成されたものとして備えている。一対の係止部30A及び30Bは、係合部材25おける長手方向の両端部に夫々配されており、回動軸26A及び26Bの夫々から突出する短冊状の板状体を成している。係止部30Aの開放端部は、先端部分32Aとされており、また、係止部30Bの開放端部は、先端部分32Bとされている。操作部31は、係合部材25における長手方向の両端部の一方から他方に亙って伸びて広がる平板状体を成していて、その長手方向を係合部材25の長手方向としている。そして、係合部材25は、回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を境にして、一対の係止部30A及び30Bが、係合部材25がハウジング11に取り付けられたときハウジング11における背面側端面部11b側となるように位置するとともに、操作部31が、係合部材25がハウジング11に取り付けられたときハウジング11における正面側端面部11aとなるように位置するものとされている。
【0038】
一対の係止部30A及び30Bは、ハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13に設けられた一対の切欠き係合部33A及び33Bに夫々係合する状態をとり、操作部31は、例えば、押圧操作とされる操作が加えられたとき、一対の係止部30A及び30Bに、回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を回動中心軸とする回動変位を生じさせて、フレキシブル印刷配線基板13に設けられた一対の切欠き係合部33A及び33Bに係合した状態を解除させる。
【0039】
係合部材25における操作部31には、その長手方向の両端部に、係止部30A及び30Bに向かう方向に折り返一対の折返し弾性部が夫々設けられており、これらの一対の折返し弾性部は、短冊状の板状体を成す弾性片部34A及び34Bを夫々形成している。弾性片部34A及び34Bの夫々は、係合部材25がハウジング11に取り付けられたもとにあっては、ハウジング11における正面側端面部11a側に設けられた受け部36(図8図11)に当接して、位置規制される。
【0040】
なお、図6に示されるように、ハウジング11における複数のコンタクト14の配列方向の両端部に配されて、係合部材25における回動軸26A及び26Bを夫々支持する軸受け金具27A及び27Bには、回動軸26A及び26Bが夫々貫通する透孔35A及び35Bが夫々形成されている。
【0041】
上述のように構成される係合部材25がハウジング11に取り付けられるにあたっては、先ず、係合部材25における回動軸26Aに、それが軸受け金具27Aに形成された透孔35Aを貫通するものとされて、軸受け金具27Aが装着され、また、係合部材25における回動軸26Bに、それが軸受け金具27Bに形成された透孔35Bを貫通するものとされて、軸受け金具27Bが装着される。続いて、係合部材25における回動軸26Aに装着された軸受け金具27A及び係合部材25における回動軸26Bに装着された軸受け金具27Bが、係合部材25を伴い、係合部材25における操作部31の長手方向の両端部に夫々設けられた弾性片部34A及び34Bを下方に向けて、ハウジング11における複数のコンタクト14の配列方向の両端部に設けられた軸受け金具取付部に夫々ハウジング11の上方から圧入されて固定される。
【0042】
それにより、係合部材25における回動軸26A及び26Bが、ハウジング11における複数のコンタクト14の配列方向の両端部に配された軸受け金具27A及び27Bによって夫々回動可能に支持され、係合部材25の全体がハウジング11に対して回動可能に取り付けられた状態が得られる。このとき、係合部材25における操作部31の長手方向の両端部に夫々設けられた弾性片部34A及び34Bの各々は、図8図11に示されるように、ハウジング11における正面側端面部11a側に設けられた受け部36にその上方から当接して位置規制される。それに伴い、弾性片部34A及び34Bの夫々の弾性力が、係合部材25を回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を回動中心軸として回動させて係止部30A及び30Bを押し下げるように作用し、係止部30A及び30Bは、それらの先端部分32A及び32Bの夫々がハウジング11の正面側端面部11aに設けられた板状部材差込み部12からハウジング11の内部へと伸びる板状部材収容空間内となる位置に配される状態におかれる。
【0043】
係合部材25における弾性片部34A及び34Bが夫々当接する一対の受け部36は、ハウジング11における複数のコンタクト14の配列方向における両端部に設けられており、それらの間に位置することになるハウジング11の他の部分より肉厚が大とされていて、弾性片部34A及び34Bからの弾性力を受けて変形等を生じることがないものとされている。一対の受け部36の間に位置するハウジング11の他の部分は、その内側に複数のコンタクト14が配されており、コネクタ装置10の厚み方向の寸法をできるだけ小とすべく、肉厚の低減が図られている。
【0044】
なお、ハウジング11におけるその内側に複数のコンタクト14が配された部分についての必要な強度を確保できるのであれば、一対の受け部36をハウジング11における長手方向の両端部に夫々設け、それらを肉厚が大なるものとすることは必ずしも必要ではなく、例えば、操作部31に、弾性片部34A及び34Bに代えて、その長手方向に沿って伸びる折返し弾性部を設け、ハウジング11に、一対の受け部36に代えて、操作部31に設けられた折返し弾性部に対する受け部を、肉厚が格別に大なるものとされることなく、ハウジング11の長手方向に沿って伸びるものとして設けてもよい。
【0045】
このようにして、係合部材25がハウジング11に取り付けられたもとで、フレキシブル印刷配線基板13がハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれるにあたっては、先ず、図8に示されるように、フレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16が配列配置された部分の先端部が、ハウジング11の正面側端面部11aに設けられた板状部材差込み部12に対向する位置に配される。そして、フレキシブル印刷配線基板13は、それにおける複数の接触端子部16がコネクタ装置10のハウジング11に配列配置された複数のコンタクト14に夫々対応する位置をとる状態におかれる。
【0046】
このとき、コネクタ装置10のハウジング11における係合部材25に備えられた係止部30Bが配された端部においては、図8に詳細に示されるように、係合部材25における弾性片部34Bが受け部36にその上方から当接していて、係合部材25における係止部30Bの先端部分32Bが、ハウジング11の正面側端面部11aに設けられた板状部材差込み部12からハウジング11の内部へと伸びる板状部材収容空間内に配されている。
【0047】
同様に、コネクタ装置10のハウジング11における係合部材25に備えられた係止部30Aが配された端部においても、係合部材25における弾性片部34Aが受け部36にその上方から当接していて、係合部材25における係止部30Aの先端部分32Aが、ハウジング11の正面側端面部11aに設けられた板状部材差込み部12からハウジング11の内部へと伸びる板状部材収容空間内に配されている。
【0048】
その後、フレキシブル印刷配線基板13は、コネクタ装置10のハウジング11に、その正面側端面部11aに設けられた板状部材差込み部12を通じて差し込まれる。その際には、先ず、図9に示されるように、フレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16が配列配置された部分を挟む一対の端縁部37A及び37Bのうちの端縁部37Bが、板状部材差込み部12からハウジング11の内部へと伸びる板状部材収容空間内に配された係合部材25における係止部30Bの先端部分32Bに当接して、それを押し上げる。それとともに、フレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16が配列配置された部分を挟む一対の端縁部37A及び37Bのうちの端縁部37Aが、板状部材差込み部12からハウジング11の内部へと伸びる板状部材収容空間内に配された係合部材25における係止部30Aの先端部分32Aに当接して、それを押し上げる。それにより、係合部材25は、操作部31に設けられた弾性片部34A及び34Bの弾性力に抗して、回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を回動中心軸として図9において左回りとなる向きに回動し、弾性片部34A及び34Bの夫々を受け部36に向けて押圧する。
【0049】
続いて、フレキシブル印刷配線基板13における端縁部37A及び37Bは、フレキシブル印刷配線基板13のハウジング11に対する差込み移動に伴って、夫々、係止部30Aの先端部分32A及び係止部30Bの先端部分32Bを通過する。それに伴い、係合部材25が、操作部31に設けられた弾性片部34A及び34Bの弾性復元力により、回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を回動中心軸として、元の位置に戻るべく、図9において右回りとなる向きに回動し、係止部30A及び30Bの夫々を押し下げる。
【0050】
そして、フレキシブル印刷配線基板13がハウジング11内における予め設定された正規の差込み位置に到達したもとにおいては、図10に示されるように、係合部材25における係止部30Bの先端部分32Bが、フレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Bに係合してフレキシブル印刷配線基板13を係止する。それとともに、係合部材25における係止部30Aの先端部分32Aが、フレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Aに係合してフレキシブル印刷配線基板13を係止する。その結果、フレキシブル印刷配線基板13が係合部材25における係止部30A及び30Bによって係止された状態が得られる。
【0051】
斯かる際、係止部30Bの先端部分32Bは、フレキシブル印刷配線基板13における端縁部37Bに乗り上げた状態からフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Bに落ち込む状態に移行して、切欠き係合部33Bを通じてハウジング11に当接し、また、係止部30Aの先端部分32Aも、フレキシブル印刷配線基板13における端縁部37Aに乗り上げた状態からフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Aに落ち込む状態に移行して、切欠き係合部33Aを通じてハウジング11に当接する。それにより、係止部30Aの先端部分32A及び係止部30Bの先端部分32Bの夫々がハウジング11に当接することによるクリック音及びクリック感が得られることになり、斯かるクリック音及びクリック感によって、フレキシブル印刷配線基板13がハウジング11内における予め設定された正規の位置に到達したことを確認することができる。
【0052】
また、ハウジング11内における正規の差込み位置に到達して、係合部材25における係止部30A及び30Bによって係止されたフレキシブル印刷配線基板13に、それをハウジング11から引き抜く方向の外力が作用するときには、フレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Aが係止部30Aの先端部分32Aを押圧してハウジング11に押し付ける役割を果たし、また、フレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Bが係止部30Bの先端部分32Bを押圧してハウジング11に押し付ける役割を果たす。それにより、フレキシブル印刷配線基板13にそれをハウジング11から引き抜く方向の外力が作用するもとにあっても、係止部30Aの先端部分32Aがフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Aから外れてしまう事態が阻止されるとともに、係止部30Bの先端部分32Bがフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Bから外れてしまう事態が阻止されて、フレキシブル印刷配線基板13が係合部材25における係止部30A及び30Bによって係止された状態が維持される。
【0053】
このようにして、フレキシブル印刷配線基板13がハウジング11への板状部材差込み部12を通じての差込を完了してハウジング11内における正規の差込み位置をとるもとにおいては、ハウジング11に配列配置された複数のコンタクト14が、各々の上方ビーム部19の先端部分に形成された接点部19aをハウジング11に差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16に夫々弾性当接させて、複数の接触端子部16に夫々接触接続された状態におかれる。それにより、ハウジング11に差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16が、複数のコンタクト14を介して、ハウジング11が配された主配線基板に設けられた配線端子に連結される。斯かる状態は、フレキシブル印刷配線基板13がハウジング11に板状部材差込み部12を通じて適正に差し込まれるだけで得られる。
【0054】
その後、図11に示されるように、係合部材25における操作部31にそれをフレキシブル印刷配線基板13に向けて押し下げる押圧操作が加えられると、係合部材25が、操作部31に設けられた弾性片部34A及び34Bの弾性力に抗して、回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を回動中心軸として、図11において左回りとなる向きに回動する。それにより、図11に示されるように、係合部材25における係止部30Bが上方に変位せしめられ、係止部30Bの先端部分32Bが、フレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Bとの係合を解除して、その切欠き係合部33Bから外れる。それとともに、係合部材25における係止部30Aも上方に変位せしめられ、係止部30Aの先端部分32Aが、フレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33Aとの係合を解除して、その切欠き係合部33Aから外れる。
【0055】
その結果、フレキシブル印刷配線基板13が、係合部材25における係止部30A及び30Bによる係止状態から開放され、ハウジング11から適正に抜脱され得る状態におかれる。
【0056】
そして、係合部材25における操作部31に押圧操作が加えられなくなると、係合部材25は、操作部31に設けられた弾性片部34A及び34Bの弾性復元力によって、回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を回動中心軸として、係止部30A及び30Bを下方に変位させる向きに回動し、元の位置に戻る。
【0057】
なお、上述の例にあっては、フレキシブル印刷配線基板13が一対の切欠き係合部33A及び33Bが設けられたものとされているが、フレキシブル印刷配線基板13は、一対の切欠き係合部33A及び33Bに代えて、一対の係合孔が設けられたものとされてもよく、斯かる場合にも、上述と同様にして、係合部材25における係止部30A及び30Bと操作部31とによるフレキシブル印刷配線基板13に対する係止及び係止の解除が行われる。
【0058】
上述のようなコネクタ装置10が用いられてそれにおけるハウジング11に配線板状部材を成すフレキシブル印刷配線基板13が差し込まれるもとにあっては、フレキシブル印刷配線基板13をコネクタ装置10におけるハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込むだけで、ハウジング11に差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13における複数の接触端子部16が、複数のコンタクト14を介して、ハウジング11が配された主配線基板に設けられた信号端子部に連結されるとともに、ハウジング11に差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13が、係合部材25によって適正に係止され、フレキシブル印刷配線基板13のハウジング11からの不所望な抜脱が阻止される状態を得ることができる。
【0059】
そして、コネクタ装置10にあっては、フレキシブル印刷配線基板13がハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれたもとで、ハウジング11に取り付けられた係合部材25による、フレキシブル印刷配線基板13に対するハウジング11からの不所望な抜脱を阻止するための係止、及び、フレキシブル印刷配線基板13のハウジング11からの抜脱を可能とするための係止の解除を行うにあたり、ハウジング11に対して回動可能とされるアクチュエータ等が不要とされ、さらには、ハウジング11に取り付けられる取付用補助金具等とハウジング11とに夫々係止手段と係止解除手段とを設けることが必要とされず、構成の簡略化と部品点数の減少とによる製造コストの低減を図ることができ、しかも、フレキシブル印刷配線基板13に対する係止及び係止の解除を行う係合部材25を、耐久性の向上が図られたものとすることができる。
【0060】
また、ハウジング11に差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13に対する係止及び係止の解除を行う係合部材25が、ハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13を係止する係止部30A及び30Bと、係止部30A及び30Bにフレキシブル印刷配線基板13に対する係止を解除させるべく操作される操作部31と、を一体形成されたものとして備えていて、ハウジング11に取り付けられたもとで複数のコンタクト14の配列方向に沿って伸びるものとされ、係止部30A及び30Bが、ハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33A及び33Bに夫々係合する状態をとり、また、操作部31が、係合部材25の複数のコンタクト14の配列方向における両端部の一方から他方に亙って伸びていて、操作されるとき、係止部30A及び30Bにフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33A及び33Bに夫々係合する状態を解除させる。従って、係合部材25は、係止部30A及び30Bと操作部31とを含む全体が一体に形成される、簡単で容易に得ることができる構成を有していることになる。
【0061】
そして、このようなコネクタ装置10にあっては、フレキシブル印刷配線基板13をハウジング11にそれに設けられた板状部材差込み部12を通じて差し込むだけで、フレキシブル印刷配線基板13に対しての係合部材25における係止部30A及び30Bによる係止を行うことができ、それとともに、フレキシブル印刷配線基板13に対しての係止部30A及び30Bによる係止の解除を、係合部材25における複数のコンタクト14の配列方向における両端部の一方から他方に亙って伸びている操作部31に、例えば、押圧操作とされる変位操作を加えるだけで行うことができるので、フレキシブル印刷配線基板13についての係合部材25による係止及び係止の解除を極めて簡単な操作によって行うことができるとともに、斯かる操作のために部材の周囲に不所望なスペースを設けることが必要とされない。しかも、係合部材25における操作部31が、係合部材25の複数のコンタクト14の配列方向における両端部の一方から他方に亙って伸びていることにより、係止部30A及び30Bにフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33A及び33Bに夫々係合する状態を解除させるための操作部31に対する操作が、極めて行い易いものとされる
【0062】
さらに、コネクタ装置10にあっては、係合部材25が、ハウジング11に取り付けられたとき複数のコンタクト14の配列方向における両端部となる部分に、一対の回動軸26A及び26Bが夫々設けられていて、ハウジング11への取り付けが、一対の回動軸26A及び26Bがハウジング11により支持されて、ハウジング11に対して回動可能とされることによりなされ、ハウジング11に取り付けられたもとで、回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を境にして、ハウジング11における板状部材差込み部12が設けられた正面側端面部11a側に操作部31が設けられており、また、ハウジング11における正面側端面部11aに対向する背面側端面部11b側に係止部30A及び30Bが設けられている。それにより、斯かる係合部材25にあっては、係止部30A及び30Bが、ハウジング11に板状部材差込み部12を通じて差し込まれたフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33A及び33Bに夫々係合しているもとで、操作部31に、例えば、押圧操作とされる変位操作が加えられると、操作部31と係止部30A及び30Bとが回動軸26Aと回動軸26Bとを結ぶ仮想回動軸線を回動中心軸として同方向に回動し、係止部30A及び30Bがフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33A及び33Bとの係合を解除する。その結果、係止部30A及び30Bにフレキシブル印刷配線基板13に設けられた切欠き係合部33A及び33Bとの係合を解除させる動作が、極めて簡単な構成のもとに確実に行われる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のような本発明に係るコネクタ装置は、例えば、フレキシブル印刷配線基板等とされる配線板状部材の主配線基板との連結に用いられる、板状部材差込み部が設けられたハウジングと、ハウジングに配列配置されて設けられる複数のコンタクトと、ハウジングに設けられ、配線板状部材がハウジングに差し込まれたとき、配線板状部材に対する係止状態と係止解除状態とを選択的にとる係合部材とを備えたコネクタ装置であって、構成の簡略化と部品点数の減少とによる製造コストの低減を図ることができ、しかも、配線板状部材に対する係止及び係止の解除を行う手段の耐久性を向上させることができるもとで、ハウジングに板状部材差込み部を通じて差し込まれた配線板状部材に対するハウジングからの不所望な抜脱を阻止するための係止及びその係止の解除を、確実かつ容易に行えることになるものとして、様々な電子機器等に広く適用され得るものである。
【符号の説明】
【0064】
10・・・コネクタ装置, 11・・・ハウジング, 11a・・・正面側端面部, 11b・・・背面側端面部, 11c・・・下方外面部, 11d・・・上方外面部, 12・・・板状部材差込み部, 13・・・フレキシブル印刷配線基板, 14・・・コンタクト, 16・・・接触端子部, 17・・・(コンタクト14の)固定部, 18・・・下方ビーム部, 18a,19a・・・接点部, 19・・・上方ビーム部, 20・・・接続端子部, 25・・・係合部材, 26A,26B・・・回動軸, 27A,27B・・・軸受け金具, 30A,30B・・・係止部, 31・・・操作部, 32A・・・(係止部30Aの)先端部分, 32B・・・(係止部30Bの)先端部分, 33A,33B・・・切欠き係合部, 34A,34B・・・弾性片部, 35A,35B・・・透孔, 36・・・受け部, 37A,37B・・・端縁部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11