特許第5862923号(P5862923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862923
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】ガスケット
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/06 20060101AFI20160202BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   F16J15/06 P
   F16J15/10 Y
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2011-100653(P2011-100653)
(22)【出願日】2011年4月28日
(65)【公開番号】特開2012-233502(P2012-233502A)
(43)【公開日】2012年11月29日
【審査請求日】2014年3月6日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107320
【弁理士】
【氏名又は名称】高塚 一郎
(72)【発明者】
【氏名】古賀 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】蔵野 慶宏
【審査官】 竹村 秀康
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−056704(JP,A)
【文献】 特開2001−108106(JP,A)
【文献】 特開2010−112401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J15/00 −15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2部材(A)、(B)の間隙を密封するガスケットであって、前記2部材(A)、(B)に密封接触する環状シール部(1)と、前記環状シール部(1)の少なくとも一方の周面に、前記環状シール部(1)が前記2部材(A)、(B)間で圧縮されることにより、前記2部材(A)、(B)と接する滑り防止部(2)とをゴム状弾性材により一体成形すると共に、
前記滑り防止部(2)の前記2部材(A)、(B)と接する面に粘着剤層(21)を設け、前記両粘着剤層(21)、(21)間の距離は、前記環状シール部(1)の自由状態(前記2部材(A)、(B)間で圧縮される前)の厚みよりも小さく設定され、前記環状シール部(1)が前記2部材(A)、(B)間で一定量圧縮されることにより、適正なシール面圧を得る為の圧縮量が確保できると共に、前記環状シール部(1)が過大に圧縮される際には、前記滑り防止部(2)が前記2部材(A)、(B)と接することにより、前記環状シール部(1)の過大圧縮を阻止出来ると共に、粘着剤層(21)が前記2部材(A)、(B)と接して粘着一体化することを特徴とするガスケット。
【請求項2】
前記粘着剤層(21)の表面には、ガスケットが前記2部材(A)、(B)間に配置されるまで、離型フィルム(211)が配置されていることを特徴とする請求項1記載のガスケット。
【請求項3】
前記環状シール部(1)の断面形状が、略円形状を呈していることを特徴とする請求項1または2記載のガスケット
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットに関するものである。
特に、燃料電池用として好適に用いられるガスケットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの分野で、装置の小型化、低コスト化が要求されており、特に燃料電池においては、この傾向が強く、燃料電池に用いられるガスケットに対しても、小型化、低コスト化が強く要求されている。
この為、燃料電池セルの各構成要素間のシールに、ゴム状弾性材単体からなるガスケットを用いるものが提案された。(特許文献1)
【0003】
しかし、このガスケットは、幅広い薄板形状であり、シール性能が不十分であると共に、スペースをとる為小型化を阻害していた。
特に、この種従来のガスケットにおいては、シール性能の低下を補う為に、相手部材に溝加工を施す必要が有る為、製造コストが嵩む問題を惹起した。
【0004】
また、相手部材であるセパレータ等に溝加工を施さない状態で、ゴム状弾性材単体からなるガスケットを用いた場合は、組立て性や位置決め(ハンドリング)が悪いばかりでなく、反応ガス等の被密封流体の圧力により、ガスケットの取り付け位置がずれる等の変位を招来し、ガスケットの密封機能の低下をもたらした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−226220号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上の点に鑑みて、ゴム状弾性材単体からなるガスケットにおいて、相手部材に溝加工を施す事無く、良好な密封機能を維持できると共に、組立て性や位置決め(ハンドリング)が良好なガスケットを提供すことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明にあっては、2部材の間隙を密封するガスケットであって、前記2部材に密封接触する環状シール部と、前記環状シール部の少なくとも一方の周面に、前記環状シール部が前記2部材間で圧縮されることにより、前記2部材と接する滑り防止部とをゴム状弾性材により一体成形すると共に、前記滑り防止部の前記2部材と接する面に粘着剤層を設け、前記両粘着剤層間の距離は、前記環状シール部の自由状態(前記2部材間で圧縮される前)の厚みよりも小さく設定され、前記環状シール部が前記2部材間で一定量圧縮されることにより、適正なシール面圧を得る為の圧縮量が確保できると共に、前記環状シール部が過大に圧縮される際には、前記滑り防止部が前記2部材と接することにより、前記環状シール部の過大圧縮を阻止出来ると共に、粘着剤層が前記2部材と接して粘着一体化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、以下に記載されるような効果を奏する。
請求項1記載の発明のガスケットによれば、ゴム状弾性材単体からなるガスケットにおいて、相手部材に溝加工を施す事無く、良好な密封機能を維持できると共に、組立て性や位置決め(ハンドリング)が良好であると共に、ガスケットの取り付け位置がずれることを確実に阻止すると共に、相手部材との一体化が形成出来る為、部材の取り扱いが容易となる。
【0009】
更に、請求項記載の発明のガスケットによれば、ガスケット全体の剛性をより高める事が出来る為、組み立てまでの、組立て性や位置決め(ハンドリング)がより良好である。
【0010】
更に、請求項記載の発明のガスケットによれば、小スペースで良好な密封性能が発揮出来ると共に、成形が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るガスケットの縦断面図。
図2図1のガスケットの離型フィルムを取除いた縦断面図。
図3図2のガスケットが2部材間で圧縮された使用状態を示す部分拡図。
図4第1の参考形態図3と同様に示した図。
図5第2の参考形態図3と同様に示した図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1乃至図5に基づき発明を実施するための最良の形態について説明する。
【0013】
<第1実施形態>
図1乃至図3に示す様に、本発明の第1実施形態に係るガスケットは、相互に相対移動しない2部材である第1の部材Aと第2の部材B、例えば燃料電池セルの各構成要素間の間隙を密封するガスケットであって、この2部材A、Bに密封接触する環状シール部1と、この環状シール部1の少なくとも一方の周面に、本実施形態においては外周面側に、環状シール部1が2部材A、B間で圧縮されることにより、この2部材A、Bと接する滑り防止部2とをゴム状弾性材により一体成形した構成となっている。
【0014】
そして、この滑り防止部2は、断面形状が略円形状を呈している環状シール部1の外周面側に、連結部11を介して断面矩形の滑り防止部2が環状シール部1側と一体的に連結している。
更に、この滑り防止部2の2部材A、Bと接する面(図上上下面)に粘着剤層21、21を設ける構成としている。
この粘着剤層21はどちらか一方だけ(上方又は下方)に設ける態様としても良い。
【0015】
また、この両粘着剤層21、21間の距離は、環状シール部1の自由状態(2部材A、B間で圧縮される前)の厚みよりも小さく設定されている。
この事により、環状シール部1は、適正なシール面圧を得る為の圧縮量が確保できると共に、環状シール部1が過大に圧縮される際には、滑り防止部2が2部材A、Bと接することにより、環状シール部1の過大圧縮を阻止出来る。
【0016】
図3に示す様に、環状シール部1が、2部材A、B間で、一定量圧縮されることにより、粘着剤層21、21が、2部材A、Bと接して、ガスケット及び2部材A、Bが粘着一体化する。
この事により、ガスケットに圧力が作用したとしても、ガスケットの取り付け位置がずれることを確実に阻止出来ると共に、相手部材との一体化が形成出来る為、良好な密封機能が維持できるばかりでなく、部材の取り扱いが容易となる。
【0017】
更に、図1に示す様に、ガスケットが、2部材A、B間に組み込まれる前までは、粘着剤層21、21の表面には、離型フィルム211が配置されおり、組み込まれる前に、粘着剤層21、21の表面から離型フィルム211は取り除かれる。
この離型フィルム211の存在により、ガスケット全体の剛性をより高める事が出来る為、組み立てまでの、組立て性や位置決め(ハンドリング)がより良好である。
【0018】
また、環状シール部1の形状は、断面略円形としたが、略三角形状、楕円形、台形等でも良い。
【0019】
また、ゴム状弾性材製ガスケットの材質としては、ゴムまたはゴム状弾性を有する合成樹脂材料が適宜選択して用いられるが、その中でも、液状シリコーンゴム、液状フッ素ゴム、液状EPDM、液状ACM等の液状ゴムが好適に用いられる。
【0020】
また、粘着剤層21、21の材質としては、天然ゴム、SBR、ブチルゴム等のゴム系、
エマルジョンや溶剤タイプのアクリル系、ホットメルト系、シリコーン系等が用いられる。
【0021】
また、離型フィルム211の材質としては、フッ素樹脂フィルム、ポリメチルペンテン樹脂フィルム、離型コーティングを施したポリエステルフィルム等が用いられる。
【0022】
第1の参考形態
ついで、第1の参考形態図4に基づき説明する。
先に説明した第1実施形態と相違する点は、粘着剤層21、21の代わりに、滑り防止部2の2部材A、Bと接する面(図上上下面)に滑り防止突起22、22を設けた点である。
この事により、良好な密封機能を備えたガスケットをより安価に提供出来る。
【0023】
第2の参考形態
ついで、第2の参考形態図5に基づき説明する。
先に説明した第1実施形態と相違する点は、粘着剤層21、21の代わりに、滑り防止部2の2部材A、Bと接する面(図上上下面)に、係合突起23、23を設け、この係合突起23、23を2部材A、Bに設けた孔3、3と係合する構成としている。
この係合突起23、23及び孔3、3は、どちらか一方だけ(上方又は下方)に設ける態様としても良い。
また、孔3、3の代わりに、2部材A、Bに設けた溝であっても良い。

【0024】
また、本発明は上述の発明を実施するための最良の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなくその他種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【産業上の利用可能性】
【0025】
燃料電池用として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0026】
1 環状シール部
2 滑り防止部
3 孔
11 連結部
21 粘着層
22 滑り防止部
23 係合突起
211離型フィルム
図1
図2
図3
図4
図5