特許 5862929 制流体設置方法及び設置装置

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】特許公報(B2)

(11)【特許番号】5862929

(24)【登録日】2016年1月8日

(45)【発行日】2016年2月16日

(54)【発明の名称】制流体設置方法及び設置装置

(51)【国際特許分類】

   F16L 55/00 20060101AFI20160202BHJP

   F16L 41/06 20060101ALN20160202BHJP

【ＦＩ】

   F16L55/00 C

   !F16L41/06

【請求項の数】5

【全頁数】14

(21)【出願番号】特願2011-174226(P2011-174226)

(22)【出願日】2011年8月9日

(65)【公開番号】特開2013-36568(P2013-36568A)

(43)【公開日】2013年2月21日

【審査請求日】2014年7月3日

(73)【特許権者】

【識別番号】000105556

【氏名又は名称】コスモ工機株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100098729

【弁理士】

【氏名又は名称】重信 和男

(74)【代理人】

【識別番号】100116757

【弁理士】

【氏名又は名称】清水 英雄

(74)【代理人】

【識別番号】100123216

【弁理士】

【氏名又は名称】高木 祐一

(74)【代理人】

【識別番号】100163212

【弁理士】

【氏名又は名称】溝渕 良一

(74)【代理人】

【識別番号】100148161

【弁理士】

【氏名又は名称】秋庭 英樹

(74)【代理人】

【識別番号】100156535

【弁理士】

【氏名又は名称】堅田 多恵子

(72)【発明者】

【氏名】中里 謙介

【審査官】 杉山 豊博

(56)【参考文献】

【文献】 特開平０３−２７２３９１（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開２００４−２４５３９７（ＪＰ，Ａ）

【文献】 特開平１１−２８７３８５（ＪＰ，Ａ）

(58)【調査した分野】（Int.Cl.，ＤＢ名）

Ｆ１６Ｌ ５５／００

Ｆ１６Ｌ ４１／０６

(57)【特許請求の範囲】

【請求項1】

流体管に対し筐体を密封状に取付け、該筐体内においてカッタ部材で前記流体管を不断流状態で切断し、弁板の周側部及び下部に前記筐体の内周部を密封するシール部材を有し流体の流れを制する制流体を前記流体管の切断面間に挿入、設置する制流体設置方法であって、
前記流体管は、平面状の切断面に切断され、
前記流体管の切断面間の離間幅は、前記制流体の厚さよりも幅広で、かつ前記筐体内で流体圧を受けて傾斜する前記制流体を前記切断面により支持して前記シール部材による密封状態を維持する寸法であることを特徴とする制流体設置方法。

【請求項2】

前記制流体は、前記切断面の下端側に支持されることを特徴とする請求項１に記載の制流体設置方法。

【請求項3】

前記制流体は、前記シール部材より内側の前記弁板が前記切断面により支持されることを特徴とする請求項１または２に記載の制流体設置方法。

【請求項4】

前記切断面は、前記流体管の管軸直交方向に平面状に形成されることを特徴とする請求項１ないし３のいずれかに記載の制流体設置方法。

【請求項5】

流体管と、該流体管に対し密封状に取付けられた筐体と、弁板の周側部及び下部に前記筐体の内周部を密封するシール部材を有し該筐体内に設置され流体の流れを制する制流体と、からなる制流体設置装置であって、
前記流体管は、平面状の端面を有し、
前記筐体内における前記流体管の端面間の離間幅は、前記制流体の厚さよりも幅広で、かつ前記筐体内で流体圧を受けて傾斜する前記制流体を前記端面により支持して前記シール部材による密封状態を維持する寸法であることを特徴とする制流体設置装置。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、流体管に対し密封状に取付けられた筐体内において、カッタ部材で流体管を不断流状態で切断し、前記筐体内に流体の流れを制する制流体を設置する制流体設置方法及び設置装置に関する。

【背景技術】

【0002】

従来の制流体設置方法及び設置装置では、筐体内の流体管を切除した後の空隙箇所に制流体を設置し、この制流体で筐体内の流体を遮断若しくは流量調整等の制御をしている（例えば、特許文献１参照）。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開２００４−２４５３９７号公報（第９頁、第８図）

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

しかしながら、特許文献１にあっては、筐体に設置された制流体が、流体圧に耐え切れず筐体内で動いてしまい流体を制することができない虞が生じるばかりか、筐体内で受ける流体圧に対抗するべく、制流体の外面にリブを設ける等その構造強度を高めるために制流体の製作コストや設置手間を要するという問題がある。

【0005】

本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、制流体が筐体内で移動せず安定した制流状態を維持できるとともに、制流体自体の構造強度を過度に高めず筐体内に設置し易い制流体設置方法及び設置装置を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

前記課題を解決するために、本発明の制流体設置方法は、
流体管に対し筐体を密封状に取付け、該筐体内においてカッタ部材で前記流体管を不断流状態で切断し、弁板の周側部及び下部に前記筐体の内周部を密封するシール部材を有し流体の流れを制する制流体を前記流体管の切断面間に挿入、設置する制流体設置方法であって、
前記流体管は、平面状の切断面に切断され、
前記流体管の切断面間の離間幅は、前記制流体の厚さよりも幅広で、かつ前記筐体内で流体圧を受けて傾斜する前記制流体を前記切断面により支持して前記シール部材による密封状態を維持する寸法であることを特徴としている。
この特徴によれば、制流体が筐体内で流体圧を受けても、この制流体に近接した流体管の切断面に支持され、且つ流体管を介して筐体にも伝わり分散支持されるため、安定した制流状態を維持できるばかりか、制流体自体の構造強度を過度に高める必要が無く筐体内に設置し易い。

【0007】

本発明の制流体設置方法は、
前記制流体は、前記切断面の下端側に支持されることを特徴としている。
この特徴によれば、制流体は流体管の切断面の下端側で支持されるので、安定した制流状態を維持できる。

【0008】

本発明の制流体設置方法は、
前記制流体は、前記シール部材より内側の前記弁板が前記切断面により支持されることを特徴としている。
この特徴によれば、制流体は、シール部材より内側の弁板が切断面により支持されるので、流体圧を受ける制流体に対抗して確実に支持できる。

【0009】

本発明の制流体設置方法は、
前記切断面は、前記流体管の管軸直交方向に平面状に形成されることを特徴としている。
この特徴によれば、切断面は、流体管の管軸直交方向に平面状に形成されるので、容易に切断できる。

【0010】

本発明の制流体設置装置は、
流体管と、該流体管に対し密封状に取付けられた筐体と、弁板の周側部及び下部に前記筐体の内周部を密封するシール部材を有し該筐体内に設置され流体の流れを制する制流体と、からなる制流体設置装置であって、
前記流体管は、平面状の端面を有し、
前記筐体内における前記流体管の端面間の離間幅は、前記制流体の厚さよりも幅広で、かつ前記筐体内で流体圧を受けて傾斜する前記制流体を前記端面により支持して前記シール部材による密封状態を維持する寸法であることを特徴としている。
この特徴によれば、制流体が筐体内で流体圧を受けても、この制流体に近接した流体管の端面に支持され、且つ流体管を介して筐体にも伝わり分散支持されるため、制流体の構造強度を過度に高めずともよく、筐体内で移動せず安定した制流状態を維持できる制流体が設置された制流体設置装置を軽量化・小型化して提供できる。

【図面の簡単な説明】

【0011】

【図1】実施例１における流体管に筐体が取り付けられた状態を示す一部断面側面図である。

【図2】（ａ）は、カッタ部材の平面図であり、（ｂ）は、カッタ部材の正面図である。

【図3】流体管の上方にカッタ部材が配置された状態を示す側面断面図である。

【図4】図３と同じく正面断面図である。

【図5】筐体内に制流体を挿入配置した状態を示す側面断面図である。

【図6】図５と同じく正面断面図である。

【図7】制流体の設置終了後の状態を示す側面断面図である。

【図8】実施例２における制流体の設置終了後の状態を示す側面断面図である。

【図9】変形例における制流体の設置終了後の状態を示す側面断面図である。

【発明を実施するための形態】

【0012】

本発明に係る制流体設置方法及び設置装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。

【実施例1】

【0013】

実施例１に係る制流体設置方法及び設置装置につき、図１から図７を参照して説明する。図１に示すように、本実施例の流体管１は、略円筒形状に形成された高密度ポリエチレン等の樹脂製管から成り、略水平方向に延設され、内部には流体としての上水が流れている。この流体管１は、例えば、図５及び図７に示すように、制流体１１を設置するための筐体２が所定箇所に密封状に取り付けられるようになっている。この筐体２内で流体管１を後述するカッタ部材５２により切断するとともに（図２（ａ）、（ｂ）ないし図４参照）、筐体２内に挿入配置された制流体１１を設置することで（図５ないし図７参照）、流体の流路を遮断可能となっている。

【0014】

尚、流体管１の材質は高密度ポリエチレンに限らずその他ポリオレフィン樹脂等であってもよいし、若しくは鋳鉄等の金属製であってもよい。また、本実施例では流体管１内の流体は上水であるが、流体管１の内部を流れる流体は必ずしも上水に限らず、例えば工業用水や下水等であってもよいし、また気体や気液混合状態の流体が流れる流体管であっても構わない。

【0015】

図１に示すように、流体管１の外周面１ａに固定に取り付けられる筐体２は、流体管１に対して上方から配設され、流体管１の外周の上側を被覆する第１ケース３と、流体管１に対して下方から配設され、流体管１の外周の下側を被覆する第２ケース４と、から構成されている。これら第１ケース３及び第２ケース４は、鋳鉄等の金属材により構成されている。

【0016】

また、第１ケース３は、流体管１の管軸方向に向けて流体管１の外周面１ａの略半周に亘り当接する当接部３ａを管軸方向に沿って一対に備えている。各当接部３ａの流体管１の外周面１ａに対向する内壁には、第１ケース３の周方向の略全長に沿って流体管１の外周面１ａに当接する止水部材２０ａが、流体管１の管軸方向に沿って一対設けられている。

【0017】

第１ケース３の当接部３ａ，３ａ間の上部には、流体管１の管軸と略直交するように、流体管１における管軸方向に沿って上方に向けて分岐口３ｇが形成されている。分岐口３ｇ内は、垂直方向に向けて貫通形成されており、分岐口３ｇの上端部には、上フランジ３ｉが形成されている。更に、第１ケース３における流体管１の管軸方向側の両端部には、流体管１の外径方向に向けて突出形成したフランジ３ｎが筐体２において正面視で略半円弧形状をなすように第１ケース３の周方向に亘って延設されている。

【0018】

図１及び図４に示すように、第１ケース３内での流体管１における管軸直交方向の両側部には、制流体１１を筐体２内に挿入し易い様に下方に向けて傾斜をなす平坦面３ｊが、第１ケース３の下端部にかけて形成されている。また、第１ケース３には、当接部３ａに連続して流体管１の外径方向に向けて対向する一対のフランジ３ｃ，３ｃが流体管１の管軸方向に沿って突出形成されている。

【0019】

第２ケース４には、第１ケース３と略同一の流体管１における管軸方向の幅寸法を有し、流体管１の下部における外周面１ａに当接する当接部４ａを備えている。当接部４ａの流体管１の外周面１ａに対向する内壁には、第２ケース４の周方向の略全長に沿って流体管１の外周面１ａに当接する止水部材２０ｃが、流体管１の管軸方向に沿って一対設けられている。更に、第２ケース４における流体管１の管軸方向側の両端部には、流体管１の外径方向に向けて突出形成したフランジ４ｎが筐体２において正面視で略半円弧形状をなすように第２ケース４の周方向に亘って延設されている。

【0020】

図１及び図３に示すように、第２ケース４内での流体管１における管軸直交方向の両側部には、制流体１１を筐体２内に挿入し易い様に下方に向けて傾斜をなす平坦面４ｊが、第２ケース４の上端部から下部にかけて形成されている。更に、この平坦面４ｊは、第２ケース４の内底部に水平を成して延設されている。この第２ケース４の内底部にて延設される平坦面４ｊには、後述するように制流体１１が配置されるようになっている。

【0021】

また、図１及び図４に示すように、第２ケース４には、当接部４ａに連続して流体管１の外径方向に向けて対向する一対のフランジ４ｃ，４ｃが流体管１の管軸方向に沿って突出形成されている。

【0022】

このように第１ケース３と第２ケース４とから構成される筐体２は、本実施例においては、筐体２における流体管１の管軸方向側の端部である各フランジ３ｎ，４ｎに取り付けられる樹脂材から構成された本発明の規制部としての取付部材２２によって流体管１に対して移動不能に固定されるようになっている。尚、各フランジ３ｎ，４ｎに取り付けられる取付部材２２は同一構成につき、フランジ３ｎに取り付けられる取付部材２２についてのみ説明する。

【0023】

図１に示すように、取付部材２２は、流体管１の外径と略同一の内径を有する略半円弧形状に形成されている。この取付部材２２は、内部に電流が流れることで発熱する電熱線２２ｂが取付部材２２の周方向の略全長に亘って配設された融着部２２ａを有している。電熱線２２ｂの各端部は、外部電源と電気的に接続可能に取付部材２２の外面に設けた接続部（図示略）に接続されている。更に、取付部材２２には、フランジ３ｎと略同一形状の嵌合空間２２ｅが形成されている。

【0024】

図３及び図４に示すように、カッタ部材５２は、流体管１側の端部に下方に向けて開口した筒状体５３を備えている。図２（ａ）、（ｂ）に示すように、この筒状体５３は、管軸直交方向に略平面状に延びる幅広部５３ｄが流体管１の外径よりも大寸で、且つ管軸方向に延びる幅狭部が流体管１の外径よりも小寸に偏平した平面視略小判状に形成されている。この筒状体５３の流体管１側の端部には、流体管１を切断するための刃部５３ａが形成されている。また、筒状体５３の壁面には、筒状体５３の壁面を貫通する流通孔５３ｂが無数に形成されている。

【0025】

また、筒状体５３の内部には、下方に開口した開口部５３ｃが形成されている。この開口部５３ｃ内には、筒状体５３内を軸部材５１の軸方向に移動可能な、ガイド板５４が配置されている。このガイド板５４は、開口部５３ｃと略同一形状に形成されているとともに、カッタ部材５２の側方を向く外周面は、筒状体５３の内周面と摺接する垂直面に形成されている。

【0026】

更に、ガイド板５４の下端部は、流体管１の外周面１ａに当接する水平面に形成されており、刃部５３ａよりも流体管１に向けて僅かに突出して配置されている。ガイド板５４の上端部には、筒状体５３内をカッタ部材５２の上方まで貫通するガイド棒５５が立設されており、このガイド棒５５の周囲には、ガイド板５４を流体管１に向けて付勢するコイルバネ５６が配置されている。

【0027】

このため、ガイド板５４が開口部５３ｃ内を軸部材５１の軸方向に移動することによって、カッタ部材５２は、開口部５３ｃの内周面をガイド板５４の垂直面にガイドされながらガイド板５４に対して軸部材５１の軸方向に相対移動するようになっている（図４参照）。

【0028】

このように構成された筐体２及びカッタ部材５２を用いて流体管１を切断するには、先ず、図１に示すように、第１ケース３において、取付部材２２の嵌合空間２２ｅをフランジ３ｎに対して凹凸嵌合させる。更に、取付部材２２とフランジ３ｎとを係止ピン２１によって係止することで、取付部材２２をフランジ３ｎに対して相対移動不能に取り付ける。以下、第２ケース４のフランジ４ｎにおいても同様に取付部材２２の取り付けを行う。

【0029】

次に、図１に示すように、取付部材２２を取り付けた第１ケース３を流体管１の上部に配設する。そして、フランジ３ｃ，４ｃ間に止水部材２４を配した状態で第２ケース４を流体管１に対して下方から配設する。更に、第１ケース３のフランジ３ｃ，３ｃと第２ケース４のフランジ４ｃ，４ｃとをそれぞれ対向させるとともに、対向した各フランジ３ｃ，４ｃをボルト・ナット２５により緊締することで、筐体２を流体管１に対して仮固定する。

【0030】

このとき、各止水部材２０ａ，２０ｃは、止水部材２０ａの周方向の両端部が止水部材２０ｃの周方向の両端部に密接することで、各止水部材２０ａ，２０ｃが環状に形成されるとともに、流体管１の外周面１ａと当接部３ａ，３ａとの間を密封する。また、図４及び図６に示すように、平坦面３ｊ，４ｊ間は、突起や段差等の非連続面を有さない連続面として構成される。

【0031】

各フランジ３ｎ，４ｎに取り付けられている取付部材２２の融着部２２ａは、流体管１の外周面１ａに、流体管１の周方向の略全長に亘って当接する。次に、図示しない外部電源に接続されている電源ケーブルをフランジ３ｎ，４ｎに取り付けられている各取付部材２２の接続部に接続し、前記外部電源から所定時間電力を供給する。電力供給された電熱線２２ｂが高温に発熱することで、樹脂材からなる融着部２２ａと流体管１の外周面１ａとを加熱し次第に溶融する。

【0032】

溶融された融着部２２ａと流体管１の外周面１ａとは、互いに混ぜ合わされ、電熱線２２ｂによる発熱を停止し常温に下がることで一体化して凝固し、筐体２が流体管１に対して相対移動が規制された状態で固定される。すなわち取付部材２２は、本発明の規制部を構成している。以上により流体管１への筐体２の取り付けを終了する。

【0033】

次いで、図３及び図４に示すように、分岐口３ｇの上フランジ３ｉに、内部に作業弁３６及び切断装置５０を配設した上部ケース３５を密封状に接続する。切断装置５０は、図示しない駆動手段に接続され分岐口３ｇ内を流体管１に向け軸方向に進行する軸部材５１と、軸部材５１の下端部に接続された前述のカッタ部材５２と、から主として構成されている。このうち、上部ケース３５には、図示しない空気抜きのための空気弁及び注水のための注水弁が設けられている。

【0034】

このように構成された切断装置５０は、前記注水弁を介し注水することで筐体２及び上部ケース３５内の空気を水で置換した後に、軸部材５１を介してカッタ部材５２を流体管１に向けて進行させ、流体管１の上端部における外周面１ａにガイド板５４の下端部を当接させる。

【0035】

そして、継続してカッタ部材５２が軸部材５１の軸方向に進行されることで、カッタ部材５２は、ガイド板５４によって流体管１の外周面１ａに対して継続して押圧させることで、ガイド板５４の下端部と流体管１の外周面１ａとの間で生じている摩擦力により、カッタ部材５２が流体管１を切断するための位置固定を行う。

【0036】

以降、ガイド板５４、更にカッタ部材５２が進行されることで、コイルバネ５６から付勢力を受けながら流体管１の外周面１ａに当接した位置で留まる。この間、筒状体５３は、その内周面をガイド板の垂直面に摺接させながら刃部５３ａにより順次流体管１を下方に向けて不断流状態で切断していく。

【0037】

このとき、流体管１は、カッタ部材５２が上方から下方に向けて流体管１を切断していくことでカッタ部材５２から押圧力を受けるが、カッタ部材５２の筒状体５３は、前述した幅狭部が流体管１の外径よりも小寸に偏平しており、流体管１における管軸方向の切断領域が小さいため、カッタ部材５２からの押圧力によって弾性復元可能な範囲で一時的に変形するものの、恒久的な変形が防止されている。

【0038】

また、流体管１の切断が進行していくにつれて、流通孔５３ｂが流体管１内に配置されていく。このため、カッタ部材５２により切断中の流体管１内に流通孔５３ｂにより流体の流路が確保されるようになっているため、流体管１内を流れる流体の一部が流通孔５３ｂを介して筒状体５３内を通過して流下していき、流体が筒状体５３に当接することで生じる乱流と、筒状体５３が流体から受ける流体圧とを、小さく抑えることができる。

【0039】

そして、図４に示すように、刃部５３ａによる流体管１の切断が完了することで切断された箇所は、流体管１から分断されて切片１ｂとなる。切片１ｂは、切片１ｂ自身の弾性復元力がはたらくことで、開口部５３ｃ内にて筒状体５３の内周面に密接し、この筒状体５３の内周面との間で生じる摩擦力によって、筒状体５３内に収容保持される。

【0040】

次に、軸部材５１を退行させ、切片１ｂを保持した状態のカッタ部材５２を筐体２内から上部ケース３５内に向けて移動させる。

【0041】

軸部材５１を上部ケース３５に向けて退行させることで筐体２内から切片１ｂを収容した後は、作業弁３６をスライド移動させることで筐体２を密封状に閉塞するとともに、上部ケース３５内からカッタ部材５２及び筐体２内から回収した切片１ｂを取り外して切断装置５０による流体管１の切断を終了する。

【0042】

筐体２内から切片１ｂが除去され残った流体管１の端面である切断面１ｃは、後述するように、筐体２内で流体圧を受けた制流体１１を支持可能に、制流体１１の外面に近接して離間する箇所に、筐体２内面よりも管軸方向に突出し、流体管１の管軸直交方向に全断面で平面状に形成されている。

【0043】

上部ケース３５内からカッタ部材５２及び切片１ｂを取り外した後は、図５及び図６に示すように、筐体２に制流体設置装置６０を取り付け、筐体２内に制流体１１を設置する。制流体設置装置６０は、流体管１と、この流体管１に密封状に取り付けられている筐体２と、軸部材５１の先端に固設され筐体２内に挿入配置され、流体の流れを制する制流体１１と、から主に構成されている。

【0044】

このうち、制流体１１は、弁板１３と、この弁板１３の上部に筐体２の内周面の全周に亘って密着可能な環状の環状シール部１６ａと、環状シール部１６ａから下方に向けて延設され、弁板１３の周側部及び下部に平坦面３ｊ，４ｊの全長に亘って密着可能なシール部１６ｂとから構成されており、筐体２内に設置されることで、流体管１の流路を遮断する遮断弁として機能する。

【0045】

このように構成された制流体１１を筐体２内に挿入配置するには、図５及び図６に示すように、作業弁３６をスライド移動させることで筐体２を開放し、筐体２内及び上部ケース３５内に流体を満たす。そして、前記注水弁を閉塞した後に、先端部５１ａに弁板１３上端の突出部１３ａを嵌合するとともにボルト１４により制流体１１が固設された軸部材５１を、筐体２内に向けて進行させていく。

【0046】

軸部材５１を筐体２内に向けて進出させていくことで、制流体１１の環状シール部１６ａを筐体２の内周面の全周に亘って密着させる。同時に、平坦面３ｊ，４ｊとシール部１６ｂとを密着させ、弁板１３と筐体２との間を密封状に保持することで筐体２内に制流体１１を挿入配置する。

【0047】

尚、流体管１の切断面１ｃは、制流体１１の外面から近接して離間する箇所に形成されているため、制流体１１は、流体管１の切断面１ｃと干渉すること無く筐体２内に設置される。

【0048】

更に尚、本実施例では、制流体１１を挟むように流体管１の上流側及び下流側にそれぞれ位置する両切断面１ｃ、１ｃいずれもが、制流体１１の外面から近接して離間する箇所に形成されているが、例えば、制流体１１の下流側に位置する切断面１ｃのみが、制流体１１の外面から近接して離間する箇所に形成され、制流体１１の上流側に位置する切断面１ｃが、制流体１１の外面から比較的遠く離間する箇所に形成されていてもよい。

【0049】

筐体２内に制流体１１を挿入配置した後は、筐体２の上フランジ３ｉに設けられている押圧ボルト９を螺入することで弁板１３の上端を下方に押圧保持し、上部ケース３５内の流体を排水した後、上部ケース３５に設けられた図示しない操作口から作業者が手を入れることで、軸部材５１の先端部５１ａから制流体１１を取り外す。最後に、上部ケース３５を筐体２から取り外した後、図７に示されるように、上フランジ３ｉ上に蓋体１７を配置し、蓋体１７下面の嵌合凹部１７ａを弁板１３上端の突出部１３ａに嵌合するとともに、蓋体１７と上フランジ３ｉとをボルト１８により緊締する。

【0050】

この蓋体１７と上フランジ３ｉとをボルト１８により緊締することで、制流体１１を蓋体１７と押圧ボルト９とによって下方に向けて押圧し、筐体２内周面と環状シール部１６ａ、平坦面３ｊ，４ｊとシール部１６ｂをより確実にそれぞれ密着させ、制流体１１を筐体２内において固定し、制流体１１の筐体２内への挿入配置を終了する。

【0051】

以上、本実施例における制流体１１の設置方法にあっては、不断流状態でカッタ部材５２で切断される流体管１の切断面１ｃは、筐体２内で流体圧を受けた制流体１１を支持可能に、制流体１１に近接する箇所に形成されることで、制流体１１が筐体２内で流体圧を受けても、この制流体１１に近接した流体管１の切断面１ｃに支持され、且つ流体管１を介して筐体２にも伝わり分散支持されるため、制流体１１が筐体２内で移動せず安定した制流状態を維持できるばかりか、制流体１１自体の構造強度を過度に高める必要が無く筐体２内に設置し易い。

【0052】

特に、流体管１の切断面１ｃが、管軸直交方向に全断面で切断された面であり、切断面１ｃが全面に亘り制流体１１の外面に近接しているため、流体圧を受けた制流体１１が例えば下端部など局所的に移動しようとしても、全面に亘り制流体１１の外面に近接する切断面１ｃにより確実に支持して移動を防止できる。

【0053】

更に、流体管１の上流側及び下流側の両切断面１ｃ，１ｃいずれもが、制流体１１の外面に近接しているため、例えば図７に示すように、制流体１１の弁板１３の先端である下端が流体圧により下流側に押圧され下流側を向くように、弁板１３が傾斜しようとする場合は、上流側及び下流側で近接する流体管１の両切断面１ｃ、１ｃにより、流体圧により傾斜しようとする弁板１３を挟持して支持するようになっている。より詳しくは、制流体１３の下流側で近接する切断面１ｃが、下流側に押圧された弁板１３の下端を当接支持するとともに、制流体１３の上流側で近接する切断面１ｃが、前記した弁板１３の傾斜により上流側に移動しようとする弁板１３の上端側を当接支持する。

【0054】

また、筐体２は、流体管１に対し相対移動を規制する規制部である取付部材２２を介して取付けられることで、流体管１が取付部材２２を介し筐体２との相対移動を規制されているため、流体管１に支持される制流体１１が、筐体２に対し移動することを防止できる。

【0055】

また、本実施例における制流体１１の設置装置にあっては、筐体２内における流体管１の端面である切断面１ｃは、筐体２内で流体圧を受けた制流体１１を支持可能に、制流体１１に近接する箇所に形成されていることで、制流体１１が筐体２内で流体圧を受けても、この制流体１１に近接した流体管１の切断面１ｃに支持され、且つ流体管１を介して筐体２にも伝わり分散支持されるため、制流体１１の構造強度を過度に高めずともよく、筐体２内で移動せず安定した制流状態を維持できる制流体１１が設置された制流体設置装置を軽量化・小型化して提供できる。

【実施例2】

【0056】

次に、実施例２に係る制流体の設置方法及び設置装置につき、図８を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成を省略する。

【0057】

図８に示されるように、流体管１の上流側及び下流側の両切断面１ｃ，１ｃ近傍の外周面１ａ，１ａに、筐体２内で流体圧を受けた制流体１１を支持する支持部材３０，３０が、周方向に亘り環状に設けられている。より詳しくは各支持部材３０は、特に図示しないが２以上の複数に分割可能であって流体管１の外周面に組み付けられるリング状に構成され、金属製若しくは上述の取付部材２２と同様に流体管１の外面に電熱融着される樹脂製の材料から成る。

【0058】

更に支持部材３０は、流体管１の切断面１ｃに略面一に形成され制流体１１の外面に近接する支持部３０ａと、この支持部３０ａに対抗する側に筐体２の内面に当接する当接部３０ｂと、を有している。

【0059】

このように構成された支持部材３０は、特に図示しないが、先ず流体管１の外周面１ａの所定箇所に組み付けられ、次に支持部材３０を組付けた流体管１に対し上述したように筐体２が設けられ、続いて筐体２内の流体管１が切断され制流体１１が設置される。

【0060】

このように、流体管１の切断面１ｃ近傍の外周面１ａに、筐体２内で流体圧を受ける制流体１１を支持可能な支持部材３０が設けられることで、流体管１の外周面１ａに設けた支持部材３０により、流体管１の切断面１ｃと併せて制流体１１を支持する支持領域を拡げることができる。

【0061】

また、支持部材３０は、筐体２の内面に当接する当接部３０ｂを有していることで、支持部材３０が、筐体２の内面に当接する当接部３０ｂを利用して制流体１１を支持するための反力を得ることで、流体圧を受ける制流体１１に対抗して確実に支持できる。

【0062】

尚、本発明の支持部材は、必ずしも流体管１の全周に亘りリング状に設けられるものに限られず、例えば、流体管１の下端部などの所定箇所のみに単数若しくは複数設けられてもよい。

【0063】

また本発明の支持部材３０は、筐体２の内面に当接する当接部３０ｂを有し、該当接部３０ｂから制流体１１を支持するための反力を得ることができれば、必ずしも流体管１に対し固定的に設けられること無く、例えば流体管１の外周に遊嵌されていてもよい。あるいは支持部材３０は、上述とは逆に、流体管１に対し固定的に設けられ、該流体管１から制流体１１を支持するための反力を得ることができれば、必ずしも筐体２に当接する当接部３０ｂを有さず、筐体２から離間していてもよい。

【0064】

以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。

【0065】

例えば、前記実施例では、制流体１１を弁板１３で主に構成し、筐体２内に設置することで流路を遮断する遮断弁として機能したが、例えば本発明の変形例として図９に示されるように、筐体２’内にシール材２６ａ，２６ｂを介して密封状に設置される弁箱２３と、この弁箱２３内で垂直方向を向く枢軸１５の回動操作によって上下動自在に枢支される弁本体２５と、から構成された制流体３１であってもよく、弁本体２５が弁箱２３内を上下することで流体管１の流路を任意の開度で開放若しくは遮断するゲート弁として機能させてもよい。あるいは制流体は、バタフライ弁、緊急遮断弁、あるいはプラグ等で構成されていてもよいし、流体管と該流体管から分岐する分岐管との流路を切換可能な切換弁で構成されていても構わない。

【0066】

また、前記実施例では、本発明の規制部として取付部材２２を流体管１に対し熱融着することで、筐体２を流体管１に対し相対移動を規制して取り付けたが、例えば、本発明の規制部として、筐体２に流体管１の内径側を向く刃部を有する係止体を複数配置し、該係止体を押圧することで刃部を流体管１の外周面１ａに食い込ませることで、筐体２を流体管１に対し相対移動を規制して取り付けるようにしてもよい。

【0067】

また、前記実施例では、既設の流体管１に対し密封状に取付けられた筐体２内において、カッタ部材５２で流体管１を不断流状態で切断し、筐体２内の制流体１１に近接する切断面１ｃを形成しているが、例えば、新設の流体管の端部に対し筐体を取り付け、該筐体内の流体管の端面を制流体に近接するように配し、前記流体管の端面により制流体を支持するようにしてもよい。

【符号の説明】

【0068】

１ 流体管
１ｃ 切断面（端面）
２ 筐体
１１ 制流体
２２ 取付部材（規制部）
３０ 支持部材
３０ａ 支持部
３０ｂ 当接部
３１ 制流体
５０ 切断装置
５２ カッタ部材
５３ 筒状体
６０ 制流体設置装置

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】