(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投影レンズと、光源と、前記光源から放射された光が入射するように前記光源の放射方向に配置され、前記光源から入射する光を前記投影レンズの光軸寄りに集光させて前記投影レンズを透過させて所定配光パターンを形成するように構成された反射面と、前記投影レンズの後側焦点又はその近傍かつ前記光源よりも前記投影レンズ寄りの位置に配置され、前記光源からの光の一部を遮光するシェード部と、を備えた複数の光学系と、
前記複数の光学系それぞれのシェード部を含む可動シェードと、
前記可動シェードを、前記複数の光学系それぞれの前記投影レンズに対して、灯具光軸に対し平行な方向に延びる回転軸を中心に揺動可能に支持する支持手段と、
前記可動シェードを移動後の任意の位置に固定する固定手段と、を備えており、
前記複数の光学系それぞれの投影レンズ、光源及び反射面は、車両側に固定されており、
前記回転軸から前記複数の光学系それぞれの光軸までの距離の比率が、前記複数の光学系それぞれの投影レンズの後側焦点と投影レンズとの距離の比率と等しいことを特徴とする車両用灯具ユニット。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態として、一つの可動シェード13を移動させることで、複数のダイレクトプロジェクション光学系10A〜10Dの光軸調整を同時に実施することが可能な車両用灯具ユニット10について説明する。
【0020】
本実施形態の車両用灯具ユニット10は、車両用前照灯(ヘッドランプ)であり、自動車等の車両の前面の左右両側に配置されている。左側と右側の車両用灯具ユニット10は左右対称で同様の構成である。以下左側に配置された車両用灯具ユニット10を中心に説明する。
【0021】
図1は車両用灯具ユニット10の斜視図、
図2は分解斜視図、
図3は正面図、
図4は上面図、
図5はレンズを省略した車両用灯具ユニット10の斜視図である。
図6は、車両用灯具ユニット10により仮想鉛直スクリーン上に形成される合成配光パターンの例である。
【0022】
図1〜
図5に示すように、車両用灯具ユニット10は、複数のレンズ11(11a〜11d)、複数の光源12(12a〜12d)、可動シェード13、ガイド部材14、ガイド固定ネジ15、上下調整ネジ16、左右調整ネジ17、ブラケット18、レンズホルダー19等を備えている。
【0023】
図4に示すように、レンズ11(11a〜11d)は、焦点距離fが同一のレンズである。レンズ11(11a〜11d)の後側の光学原点F
11a〜F
11d(後側焦点に相当)は、灯具光軸AXに直交する同一の鉛直面内に位置している。レンズ11(11a〜11d)は、正面視で水平方向に所定間隔をおいて配置されている(
図3参照)。レンズ11(11a〜11d)は、ブラケット18を介してハウジングや車体フレーム等の車両側に固定されている。なお、レンズ11aは、光源12aから放出された光を平行光とする焦点を持ったレンズであり、レンズ11b〜11dは、光源12b〜12dから放出された光に広がりを持たせるような焦点を持たないレンズである。
【0024】
本発明で示す基準点とは、光源12aから放出された光を平行光とするようなレンズ11aを用いる際には、焦点位置を指し、また、光源12b〜12dから放出された光に広がりを持たせるような焦点を持たないレンズ11b〜11dを用いる際には、設計上、レンズから意図する配光が形成できるような光源位置を指す。
【0025】
以下、レンズ11a〜11dの光軸をAX
1〜AX
4と称する。光軸AX
1〜AX
4は、灯具光軸AXに対して平行で、灯具光軸AXと同様、車両前後方向に延びている。
【0026】
図2〜
図4に示すように、第1レンズ11aは、ブラケット18の前面18aにネジ止め固定されたレンズホルダー19に保持されて、第1光源12aの前方かつ光軸AX
1上に配置されている。第1レンズ11aは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。第1レンズ11aの出射面形状は、その光学原点F
11aから放射されて当該第1レンズ11aを透過する光を平行光として前方に照射するレンズ面とされている。
【0027】
第2レンズ11bは、ブラケット18の前面18aにネジ止め固定されたレンズホルダー19に保持されて、第2光源12bの前方かつ光軸AX
2上に配置されている。第2レンズ11bは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。第2レンズ11bの出射面形状は、水平断面においては、その光学原点F
11bから放射されて当該第2レンズ11bの入射面に入射する光線を、左右両側に拡散する拡散光として前方に照射し、鉛直断面においては、その光学原点F
11bから放射されて当該第2レンズ11bの入射面に入射する光線を、光軸AX
2から鉛直方向に離れるに従い、鉛直下方に偏向する光として前方に照射するレンズ面とされている。
【0028】
第3レンズ11cは、ブラケット18の前面18aにネジ止め固定されたレンズホルダー19に保持されて、第3光源12cの前方かつ光軸AX
3上に配置されている。第3レンズ11cは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。第3レンズ11cの出射面形状は、水平断面においては、その光学原点F
11cから放射されて当該第3レンズ11cの入射面に入射する光線を、左右両側に拡散する拡散光(第2レンズ11bより拡散の程度が大きい)として前方に照射し、鉛直断面においては、その光学原点F
11cから放射されて当該第3レンズ11cの入射面に入射する光線が、光軸AX
3から鉛直方向に離れるに従い、鉛直下方に偏向する光(第2レンズ11bより偏向の程度が大きい)として前方に照射するレンズ面とされている。
【0029】
第4レンズ11dは、ブラケット18の前面18aにネジ止め固定されたレンズホルダー19に保持されて、第4光源12dの前方かつ光軸AX
4上に配置されている。第4レンズ11dは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。第4レンズ11dの出射面形状は、水平断面においては、その光学原点F
11dから放射されて当該第4レンズ11dの入射面に入射する光線を、左右両側に拡散する拡散光(第3レンズ11cより拡散の程度が大きい)として前方に照射し、鉛直断面においては、その光学原点F
11dから放射されて当該第4レンズ11dの入射面に入射する光線が、光軸AX
4から鉛直方向に離れるに従い、鉛直下方に偏向する光(第3レンズ11cより偏向の程度が大きい)として前方に照射するレンズ面とされている。
【0030】
なお、レンズ11(11a〜11d)は、透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)を、金型に注入し、冷却、固化させることで一体成形してもよいし、個々の部品として成形してもよい。また、レンズ11(11a〜11d)の材質は、光源12(12a〜12d)から放射される光(可視光)を屈折させて所望の配光を形成できるものであればよく、透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)以外の、例えば、ガラスであってもよい。
【0031】
図2〜
図4に示すように、光源12(12a〜12d)は、灯具光軸AXに直交する同一の鉛直面(本実施形態では、ブラケット18の前面18a)内において水平方向に所定間隔をおいて一列に配置されている。光源12(12a〜12d)は、ブラケット18を介してハウジングや車体フレーム等の車両側に固定されている。
【0032】
第1光源12aは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、その発光面を第1レンズ11aに向けた状態でブラケット18の前面18aに固定された金属製の基板Ka上に実装されて、光軸AX
1上(第1レンズ11aの後側の光学原点F
11a又はその近傍)に配置されている。第1光源12aは、その長辺が水平かつ光軸AX
1に対して対称となるように配置されている。
【0033】
第2光源12bは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、その発光面を第2レンズ11bに向けた状態でブラケット18の前面18aに固定された金属製の基板Kb上に実装されて、光軸AX
2上(第2レンズ11bの後側の光学原点F
11b又はその近傍)に配置されている。第2光源12bは、その長辺が水平かつ光軸AX
2に対して対称となるように配置されている。
【0034】
第3光源12cは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、その発光面を第3レンズ11cに向けた状態でブラケット18の前面18aに固定された金属製の基板Kc上に実装されて、光軸AX
3上(第3レンズ11cの後側の光学原点F
11c又はその近傍)に配置されている。第3光源12cは、その長辺が水平かつ光軸AX
3に対して対称となるように配置されている。
【0035】
第4光源12dは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、その発光面を第4レンズ11dに向けた状態でブラケット18の前面18aに固定された金属製の基板Kd上に実装されて、光軸AX
4上(第4レンズ11dの後側の光学原点F
11d又はその近傍)に配置されている。第4光源12dは、その長辺が水平かつ光軸AX
4に対して対称となるように配置されている。
【0036】
光源12(12a〜12d)の発熱は、ブラケット18の放熱フィン18bから放熱される。ブラケット18は、アルミ合金等の熱伝導性に優れた材質製であるため、効率のよい放熱が可能となる。なお、光源12(12a〜12d)が実装された基板Ka〜Kdとブラケット18の前面18aとの間に、熱伝導グリス等の熱伝導部材を介在させるのが好ましい。このようにすれば、放熱性能をさらに向上させることが可能となる。
【0037】
なお、光源12(12a〜12d)は、矩形発光部(矩形発光面)を持つ光源であればよく、その構造は特に問わない。例えば、光源12(12a〜12d)は、LED素子と蛍光体とを組み合わせた構造の光源であってもよいし、LD素子と蛍光体とを組み合わせた構造の光源であってもよい。
【0038】
図2〜
図5に示すように、可動シェード13は、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材である。
【0039】
可動シェード13は、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において(鉛直面に沿って)、レンズ11(11a〜11d)に対して鉛直方向及び/又は水平方向に移動可能に支持されている。
【0040】
本実施形態では、可動シェード13は、ガイド部材14により次のように支持されている(本発明の支持手段に相当)。
【0041】
図2に示すように、ガイド部材14は、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って水平方向に延びた水平部14aと水平部14aの両端から鉛直方向に延びた二本の鉛直部14bとを備えている。
【0042】
ガイド部材14のフランジ部に形成された水平方向に延びるガイド穴14cには、ブラケット18の前面18aにネジ止め固定されたガイド固定ネジ15の軸部が挿入されている。これにより、ガイド部材14は、ガイド穴14cに案内されて、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において水平方向に移動可能とされている。
【0043】
可動シェード13の両端は、二本の鉛直部14bの互いに対向する側の面に形成された鉛直方向に延びるガイド溝14dに挿入されている。これにより、可動シェード13は、ガイド溝14dに案内されて、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に移動可能とされている。
【0044】
図3、
図5に示すように、可動シェード13は、第1シェード部13a、第2シェード部13b、第3シェード部13c、第4シェード部13dを含んでいる。可動シェード13(13a〜13d)は、例えば、アルミダイカスト等の材料を、金型に注入し、冷却、固化させることで、一体的に構成されている。
【0045】
第1シェード部13aは、第1光源12aからの光の一部を遮光する遮光部材である。第1シェード部13aは、例えば、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材で、可動シェード13が上記のように支持された状態で第1光源12aの前方近傍に配置されて、第1光源12aの発光面の下部を覆っている。第1シェード部13aの上端縁は、Z型の段差部13a1を含んでいる。第1レンズ11aの光学原点F
11aは、第1シェード部13aの上端縁近傍に位置している。なお、第1レンズ11aの光学原点F
11aは、第1シェード部13aの上端縁近傍であればよく、例えば、第1光源12aの長辺近傍に位置していてもよい。
【0046】
第2シェード部13bは、第2光源12bからの光の一部を遮光する遮光部材である。第2シェード部13bは、例えば、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材で、可動シェード13が上記のように支持された状態で第2光源12bの前方近傍に配置されて、第2光源12bの発光面の下部を覆っている。第2シェード部13bの上端縁は、水平に延びている。なお、第2シェード部13bの上端縁にも、Z型の段差部を設けてもよい。第2レンズ11bの光学原点F
11bは、第2シェード部13bの上端縁近傍に位置している。なお、第2レンズ11bの光学原点F
11bは、第2シェード部13bの上端縁近傍であればよく、例えば、第2光源12bの長辺近傍に位置していてもよい。
【0047】
第3シェード部13cは、第3光源12cからの光の一部を遮光する遮光部材である。第3シェード部13cは、例えば、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材で、可動シェード13が上記のように支持された状態で第3光源12cの前方近傍に配置されて、第3光源12cの発光面の下部を覆っている。第3シェード部13cの上端縁は、水平に延びている。なお、第3シェード部13cの上端縁にも、Z型の段差部を設けてもよい。第3レンズ11cの光学原点F
11cは、第3シェード部13cの上端縁近傍に位置している。なお、第3レンズ11cの光学原点F
11cは、第3シェード部13bの上端縁近傍であればよく、例えば、第3光源12cの長辺近傍に位置していてもよい。
【0048】
第4シェード部13dは、第4光源12dからの光の一部を遮光する遮光部材である。第4シェード部13dは、例えば、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材で、可動シェード13が上記のように支持された状態で第4光源12dの前方近傍に配置されて、第4光源12dの発光面の下部を覆っている。第4シェード部13dの上端縁は、水平に延びている。なお、第4シェード部13dの上端縁にも、Z型の段差部を設けてもよい。第4レンズ11dの光学原点F
11dは、第4シェード部13dの上端縁近傍に位置している。なお、第4レンズ11dの光学原点F
11dは、第4シェード部13dの上端縁近傍であればよく、例えば、第4光源12dの長辺近傍に位置していてもよい。
【0049】
各シェード部13a〜13cは、互いに連結されて、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の一つの可動シェード13を構成している。
【0050】
上記構成の第1レンズ11a、第1光源12a及び可動シェード13(第1シェード部13a)は、第1ダイレクトプロジェクション光学系10Aを構成している。第1ダイレクトプロジェクション光学系10Aによれば、第1光源12aから放射された光は、第1レンズ11aを透過して平行光として前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、すれ違いビーム用配光パターンの中央付近を照射する部分配光パターンP1を形成する(
図6参照)。
【0051】
第1光源12aから放射された光が第1レンズ11aを透過して平行光として前方に照射されるため、部分配光パターンP1は、集光性の高い(スポット的な)高照度のパターンとなる。
【0052】
また、第1シェード部13aで下部が覆われた第1光源12aの発光面の光源像が、第1レンズ11aの作用により前方へ反転投影される形となるため、部分配光パターンP1は、第1シェード部13aの上端縁により規定されるZ型の段差部を含むカットオフラインCL1をその上端縁に含むパターンとなる。
【0053】
このカットオフラインCL1は、水平方向に延びる自車線側カットオフラインCL1
L、水平方向に延びる対向車線側カットオフラインCL1
R、両カットオフラインCL1
L、CL1
Rを連結する斜め(例えば45°)カットオフラインCL1
Sを含んでいる。
【0054】
上記構成の第2レンズ11b、第2光源12b及び可動シェード13(第2シェード部13b)は、第2ダイレクトプロジェクション光学系10Bを構成している。第2ダイレクトプロジェクション光学系10Bによれば、第2光源12bから放射された光は、第2レンズ11bを透過して、水平断面においては、左右両側に拡散する拡散光として、鉛直断面においては、鉛直下方に偏向する光として前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)に、部分配光パターンP1より水平方向及び鉛直方向に拡散された部分配光パターンP2を形成する(
図6参照)。
【0055】
部分配光パターンP2は、水平方向及び鉛直方向に拡散されている分、部分配光パターンP1と比べ、水平方向及び鉛直方向に大きくかつ照度が低いパターンとなる。
【0056】
また、第2シェード部13aで下部が覆われた第2光源12bの発光面の光源像が、第2レンズ11bの作用により前方へ反転投影される形となるため、部分配光パターンP2は、第2シェード部13aの上端縁により規定される水平方向に延びるカットオフラインCL2をその上端縁に含むパターンとなる。
【0057】
上記構成の第3レンズ11c、第3光源12c及び可動シェード13(第3シェード部13c)は、第3ダイレクトプロジェクション光学系10Cを構成している。第3ダイレクトプロジェクション光学系10Cによれば、第3光源12cから放射された光は、第3レンズ11cを透過して、水平断面においては、左右両側に拡散する拡散光として、鉛直断面においては、鉛直下方に偏向する光として前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)に、部分配光パターンP2より水平方向及び鉛直方向に拡散された部分配光パターンP3を形成する(
図6参照)。
【0058】
部分配光パターンP3は、水平方向及び鉛直方向に拡散されている分、部分配光パターンP2と比べ、水平方向及び鉛直方向に大きくかつ照度が低いパターンとなる。
【0059】
また、第3シェード部13aで下部が覆われた第3光源12cの発光面の光源像が、第3レンズ11cの作用により前方へ反転投影される形となるため、部分配光パターンP3は、第3シェード部13dの上端縁により規定される水平方向に延びるカットオフラインCL3をその上端縁に含むパターンとなる。
【0060】
上記構成の第4レンズ11d、第4光源12d及び可動シェード13(第4シェード部13d)は、第4ダイレクトプロジェクション光学系10Dを構成している。第4ダイレクトプロジェクション光学系10Dによれば、第4光源12dから放射された光は、第4レンズ11dを透過して、水平断面においては、左右両側に拡散する拡散光として、鉛直断面においては、鉛直下方に偏向する光として前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)に、部分配光パターンP3より水平方向及び鉛直方向に拡散された部分配光パターンP4を形成する(
図6参照)。
【0061】
部分配光パターンP4は、水平方向及び鉛直方向に拡散されている分、部分配光パターンP3と比べ、水平方向及び鉛直方向に大きくかつ照度が低いパターンとなる。
【0062】
また、第4シェード部13aで下部が覆われた第4光源12dの発光面の光源像が、第4レンズ11dの作用により前方へ反転投影される形となるため、部分配光パターンP4は、第4シェード部13dの上端縁により規定される水平方向に延びるカットオフラインCL4をその上端縁に含むパターンとなる。
【0063】
上記各部分配光パターンP1〜P4は
図6に示すように重畳される。これにより、部分配光パターンP1の照度が最も高く、部分配光パターンP2、P3、P4、P5の順に照度が低くなる遠方視認性に優れた合成配光パターン(すれ違いビーム用配光パターン)が形成される。
【0064】
図5に示すように、可動シェード13(13a〜13d)は、上下調整ネジ16及び/又は左右調整ネジ17の螺合量を調整することで、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向及び/又は水平方向に移動し、移動後の任意の位置へ固定される。
【0065】
上下調整ネジ16は、鉛直軸を中心に同一位置で回転するネジで、ガイド部材14(水平部14a)に保持されている。上下調整ネジ16は、可動シェード13の水平方向の略中央部(フランジ部)に螺合している。上下調整ネジ16は、可動シェード13を移動後の任意の位置へ固定するため、比較的きつく可動シェード13に螺合している(本発明の固定手段に相当)。
【0066】
上下調整ネジ16の可動シェード13に対する螺合量を調整すると、可動シェード13(13a〜13d)は、ガイド溝14dに案内されて、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に移動し、移動後の任意の位置へ固定される。
【0067】
左右調整ネジ17は、水平軸を中心に同一位置で回転するネジで、ブラケット18に保持されている。左右調整ネジ17は、可動シェード13のフランジ部に螺合している。左右調整ネジ17は、可動シェード13を移動後の任意の位置へ固定するため、比較的きつく可動シェード13に螺合している(本発明の固定手段に相当)。
【0068】
左右調整ネジ17の可動シェード13に対する螺合量を調整すると、ガイド部材14(及びこれに保持された可動シェード13)は、ガイド穴14cに案内されて、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において水平方向に移動し、移動後の任意の位置へ固定される。
【0069】
可動シェード13を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向及び/又は水平方向に移動させると、可動シェード13(13a〜13d)の上端縁とレンズ11(11a〜11d)の後側の光学原点F
11a〜F
11dとの相対的な位置関係が変化する。この相対的な位置関係の変化に応じて、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で次のように移動する。
【0070】
例えば、可動シェード13(13a〜13d)を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直上方へ移動させると、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で鉛直下方へ移動する。例えば、レンズ11(11a〜11d)の焦点距離fが10[mm]の場合、可動シェード13(13a〜13d)を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直上方へ0.35[mm]移動させると、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で鉛直下方へ2.0[deg]移動する。
【0071】
一方、可動シェード13(13a〜13d)を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直下方へ移動させると、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で鉛直上方へ移動する。例えば、レンズ11(11a〜11d)の焦点距離fが10[mm]の場合、可動シェード13(13a〜13d)を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直下方へ0.35[mm]移動させると、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で鉛直上方へ2.0[deg]移動する。
【0072】
一方、可動シェード13(13a〜13d)を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において水平方向(右方向)へ移動させると、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で水平方向(左方向)へ移動する。例えば、レンズ11(11a〜11d)の焦点距離fが10[mm]の場合、可動シェード13(13a〜13d)を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において水平方向(右方向)へ0.35[mm]移動させると、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で水平方向(左方向)へ2.0[deg]移動する。
【0073】
一方、可動シェード13(13a〜13d)を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において水平方向(左方向)へ移動させると、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で水平方向(右方向)へ移動する。例えば、レンズ11(11a〜11d)の焦点距離fが10[mm]の場合、可動シェード13(13a〜13d)を灯具光軸AXに直交する鉛直面内において水平方向(左方向)へ0.35[mm]移動させると、部分配光パターンP1〜P4は、仮想鉛直スクリーン上で水平方向(右方向)へ2.0[deg]移動する。
【0074】
従って、上下調整ネジ16及び左右調整ネジ17の螺合量を調整し、可動シェード13(13a〜13d)を、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向及び/又は水平方向に移動させて、移動後の任意の位置へ固定することで、光軸調整することが可能となる。
【0076】
本比較例(従来例)の車両用灯具ユニット(図示せず)は、車両用灯具ユニット10と比べ、可動シェード13の代わりに固定シェードを用いている点、及び、支点を中心に車両用灯具ユニット全体を傾動させることで光軸調整する構造を備えている点が相違する。それ以外、車両用灯具ユニット10と同様の構成である。
【0077】
比較例の車両用灯具ユニット(光軸方向寸法:100[mm])全体を、支点を中心に傾動させて光軸調整したところ(光軸調整角度:2.0[deg])、光軸調整前後で、比較例の車両用灯具ユニット端部(支点から一番遠い部分)が、水平方向に3.5[mm]移動した(移動量:3.5[mm])。
【0078】
これに対して、本実施形態の車両用灯具ユニット10において、上記比較例と同じ角度光軸調整した。但し、レンズ11(11a〜11d)の焦点距離f=10[mm]とした。この場合、光軸調整前後で、レンズ13(13a〜13d)は移動せず(移動量:0[mm])、可動シェード13が、水平方向に0.35[mm]移動した。
【0079】
上記比較例から明らかなように、本実施形態によれば、比較例の車両用灯具ユニットと比べ、可動部の移動量を小さくすることが可能となる(比較例:3.5[mm]、本実施形態:0.35[mm])。従って、本実施形態によれば、可動部の移動スペースの省スペース化が可能となる。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両用灯具ユニット全体を傾動させて光軸調整する従来とは異なり、複数のダイレクトプロジェクション光学系10A〜10D全体を傾動させることなく、可動シェード13のみを移動させて光軸調整することが可能となる。従って、光軸調整に際してレンズ11(11a〜11d)が全く移動せず(移動量:0[mm])、見栄えに全く影響を及ぼさない車両用灯具ユニット10を実現することが可能となる。
【0081】
また、本実施形態によれば、光軸調整に際してレンズ11(11a〜11d)が全く移動しないため(移動量:0[mm])、従来必要とされていた車両用灯具ユニットの投影レンズの移動スペースを省略することが可能となる。
【0082】
また、本実施形態によれば、一つの可動シェード13を移動させるだけで、複数のダイレクトプロジェクション光学系10A〜10Dの光軸調整を同時に実施することが可能となる。
【0084】
上記実施形態では、4つのダイレクトプロジェクション光学系10A〜10Dを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ダイレクトプロジェクション光学系は、2〜3又は5つ以上であってもよい。
【0085】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態として、一つの可動シェード23を揺動させることで、複数のダイレクトプロジェクション光学系20A〜20Dの光軸調整を同時に行うことが可能な車両用灯具ユニット20について説明する。
【0086】
本実施形態の車両用灯具ユニット20は、第1実施形態の車両用灯具ユニット10と比べ、主に、揺動可能に支持された可動シェード23を用いている点、及び、焦点距離が異なるレンズ21(21a〜21d)を用いている点が相違する。以下、第1実施形態の車両用灯具ユニット10との相違点を中心に説明する。
【0087】
本実施形態の車両用灯具ユニット20は、車両用前照灯(ヘッドランプ)であり、自動車等の車両の前面の左右両側に配置されている。左側と右側の車両用灯具ユニット20は左右対称で同様の構成である。以下左側に配置された車両用灯具ユニット20を中心に説明する。
【0088】
図7は車両用灯具ユニット20の斜視図、
図8は分解斜視図、
図9は正面図、
図10は上面図、
図11はレンズを省略した車両用灯具ユニット20の斜視図である。
図12は、車両用灯具ユニット20により仮想鉛直スクリーン上に形成される合成配光パターンの例である。
【0089】
図7〜
図11に示すように、車両用灯具ユニット20は、複数のレンズ21(21a〜21d)、複数の光源22(22a〜22d)、可動シェード23、可動シェード固定ネジ24、上下調整ネジ25、ブラケット26、レンズホルダー27等を備えている。
図9、
図10に示すように、車両用灯具ユニット20は、前面レンズ90とハウジング91とを組み合わせて構成される灯室92内に配置されている。
【0090】
図10に示すように、レンズ21(21a〜21d)は、焦点距離が異なる投影レンズである。レンズ21(21a〜21d)の焦点距離は、次の式を満たしている。
【0091】
[数1]
第1レンズ21aの焦点距離f1:第2レンズ21bの焦点距離f2:第3レンズ21cの焦点距離f3:第4レンズ21dの焦点距離f4=4:3:2:1
レンズ21(21a〜21d)の後側の光学原点F
21a〜F
21d(後側焦点に相当)は、灯具光軸AXに直交する同一の鉛直面内に位置している。レンズ21(21a〜21d)は、正面視で水平に対して斜め方向に所定間隔をおいて配置されている(
図9参照)。レンズ21(21a〜21d)は、ブラケット26を介してハウジングや車体フレーム等の車両側に固定されている。
【0092】
以下、レンズ21a〜21dの光軸をAX
1〜AX
4と称する。光軸AX
1〜AX
4は、灯具光軸AXに対して平行で、灯具光軸AXと同様、車両前後方向に延びている。
【0093】
図8〜
図10に示すように、第1レンズ21aは、ブラケット26の前面26aにネジ止め固定されたレンズホルダー27に保持されて、第1光源22aの前方かつ光軸AX
1上に配置されている。第1レンズ21aは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。第1レンズ21aの出射面形状は、その光学原点F
21aから放射されて当該第1レンズ21aを透過する光を平行光として前方に照射するレンズ面とされている。
【0094】
第2レンズ21bは、ブラケット26の前面26aにネジ止め固定されたレンズホルダー27に保持されて、第2光源22bの前方かつ光軸AX
2上に配置されている。第2レンズ21bは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。第2レンズ21bの出射面形状は、水平断面においては、その光学原点F
21bから放射されて当該第2レンズ21bの入射面に入射する光線を、左右両側に拡散する拡散光として前方に照射し、鉛直断面においては、その光学原点F
21bから放射されて当該第2レンズ21bの入射面に入射する光線を、光軸AX
2から鉛直方向に離れるに従い、鉛直下方に偏向する光として前方に照射するレンズ面とされている。
【0095】
第3レンズ21cは、ブラケット26の前面26aにネジ止め固定されたレンズホルダー27に保持されて、第3光源22cの前方かつ光軸AX
3上に配置されている。第3レンズ21cは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。第3レンズ21cの出射面形状は、水平断面においては、その光学原点F
21cから放射されて当該第3レンズ21cの入射面に入射する光線を、左右両側に拡散する拡散光(第2レンズ21bより拡散の程度が大きい)として前方に照射し、鉛直断面においては、その光学原点F
21cから放射されて当該第3レンズ21cの入射面に入射する光線を、光軸AX
3から鉛直方向に離れるに従い、鉛直下方に偏向する光(第2レンズ21bより偏向の程度が大きい)として前方に照射するレンズ面とされている。
【0096】
第4レンズ21dは、ブラケット26の前面26aにネジ止め固定されたレンズホルダー27に保持されて、第4光源22dの前方かつ光軸AX
4上に配置されている。第4レンズ21dは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。第4レンズ21dの出射面形状は、水平断面においては、その光学原点F
21dから放射されて当該第4レンズ21dの入射面に入射する光線を、左右両側に拡散する拡散光(第3レンズ21cより拡散の程度が大きい)として前方に照射し、鉛直断面においては、その光学原点F
21dから放射されて当該第4レンズ21dの入射面に入射する光線を、光軸AX
4から鉛直方向に離れるに従い、鉛直下方に偏向する光(第3レンズ21cより偏向の程度が大きい)として前方に照射するレンズ面とされている。
【0097】
なお、レンズ21(21a〜21d)は、透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)を、金型に注入し、冷却、固化させることで一体成形してもよいし、個々の部品として成形してもよい。また、レンズ21(21a〜21d)の材質は、光源22(22a〜22d)から放射される光(可視光)を屈折させて所望の配光を形成できるものであればよく、透明樹脂(アクリルやポリカーボネイト等)以外の、例えば、ガラスであってもよい。
【0098】
図8〜
図10に示すように、光源22(22a〜22d)は、灯具光軸AXに直交する同一の鉛直面(本実施形態では、ブラケット26の前面26a)内において水平に対して斜め方向に(本実施形態では、灯具光軸AXに直交する同一の鉛直面内において水平に対して斜め方向に延びかつ可動シェード23の回転軸24aを通る直線L
sに沿って)、次の式を満たすように配置されている。
【0099】
[数2]
可動シェード23の回転軸24aから第1光源22a(光軸AX
1)までの距離L1:可動シェード23の回転軸2aから第2光源22b(光軸AX
2)までの距離L2:可動シェード23の回転軸24aから第3光源22c(光軸AX
3)までの距離L3:可動シェード23の回転軸24aから第4光源22d(光軸AX
4)までの距離L4=第1レンズ21aの焦点距離f1:第2レンズ21bの焦点距離f2:第3レンズ21cの焦点距離f3:第4レンズ21dの焦点距離f4=4:3:2:1
このように、可動シェード23の回転軸24aから各光源22a〜22d(各光軸AX
1〜AX
4)までの距離の比率は、レンズ21a〜21dの焦点距離の比率と等しい。
【0100】
光源22(22a〜22d)は、ブラケット26を介してハウジングや車体フレーム等の車両側に固定されている。
【0101】
第1光源22aは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、その発光面を第1レンズ21aに向けた状態でブラケット26の前面26aに固定された金属製の基板Ka上に実装されて、光軸AX
1上(第1レンズ21aの後側の光学原点F
21a又はその近傍)に配置されている。第1光源22aは、その長辺が水平かつ光軸AX
1に対して対称となるように配置されている。
【0102】
第2光源22bは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、その発光面を第2レンズ21bに向けた状態でブラケット26の前面26aに固定された金属製の基板Kb上に実装されて、光軸AX
2上(第2レンズ21bの後側の光学原点F
21b又はその近傍)に配置されている。第2光源22bは、その長辺が水平かつ光軸AX
2に対して対称となるように配置されている。
【0103】
第3光源22cは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、その発光面を第3レンズ21cに向けた状態でブラケット26の前面26aに固定された金属製の基板Kc上に実装されて、光軸AX
3上(第3レンズ21cの後側の光学原点F
21c又はその近傍)に配置されている。第3光源22cは、その長辺が水平かつ光軸AX
3に対して対称となるように配置されている。
【0104】
第4光源22dは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、その発光面を第4レンズ21dに向けた状態でブラケット26の前面26aに固定された金属製の基板Kd上に実装されて、光軸AX
4上(第4レンズ21dの後側の光学原点F
21d又はその近傍)に配置されている。第4光源22dは、その長辺が水平かつ光軸AX
4に対して対称となるように配置されている。
【0105】
光源22(22a〜22d)の発熱は、ブラケット26の放熱フィン26bから放熱される。ブラケット26は、アルミ合金等の熱伝導性に優れた材質製であるため、効率のよい放熱が可能となる。なお、光源22(22a〜22d)が実装された基板Ka〜Kdとブラケット26の前面26aとの間に、熱伝導グリス等の熱伝導部材を介在させるのが好ましい。このようにすれば、放熱性能をさらに向上させることが可能となる。
【0106】
なお、光源22(22a〜22d)は、矩形発光部(矩形発光面)を持つ光源であればよく、その構造は特に問わない。例えば、光源22(22a〜22d)は、LED素子と蛍光体とを組み合わせた構造の光源であってもよいし、LD素子と蛍光体とを組み合わせた構造の光源であってもよい。
【0107】
図8〜
図11に示すように、可動シェード23は、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材である。
【0108】
可動シェード23は、その基端部(回転軸24a)を中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において(鉛直面に沿って)、レンズ21(21a〜21d)に対して鉛直方向に揺動可能に支持されている。
【0109】
本実施形態では、可動シェード23は、可動シェード固定ネジ24により次のように支持されている(本発明の支持手段に相当)。
【0110】
図8に示すように、可動シェード23の基端部に形成された開口23gには、ブラケット26の前面26aに固定された可動シェード固定ネジ24の軸部24aが挿入されている。これにより、可動シェード23は、その軸部24a(回転軸24a)を中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に揺動可能とされている。可動シェード固定ネジ24の軸部24a(回転軸24a)は、灯具光軸AXに対して平行で、灯具光軸AXと同様、車両前後方向に延びている。
【0111】
図9、
図11に示すように、可動シェード23は、第1シェード部23a、第2シェード部23b、第3シェード部23c、第4シェード部23dを含んでいる。可動シェード23(23a〜23d)は、例えば、アルミダイカスト等の材料を、金型に注入し、冷却、固化させることで、一体的に構成されている。
【0112】
第1シェード部23aは、第1光源22aからの光の一部を遮光する遮光部材である。第2シェード部23aは、例えば、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材で、可動シェード23が上記のように支持された状態で第1光源22aの前方近傍に配置されて、第1光源22aの発光面の下部を覆っている。第1シェード部23aの上端縁は、Z型の段差部23a1を含んでいる。第1レンズ21aの光学原点F
21aは、第1シェード部23aの上端縁近傍に位置している。なお、第1レンズ21aの光学原点F
21aは、第1シェード部23aの上端縁近傍であればよく、例えば、第1光源22aの長辺近傍に位置していてもよい。
【0113】
第2シェード部23bは、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材で、可動シェード23が上記のように支持された状態で第2光源22bの前方近傍に配置されて、第2光源22bの発光面の下部を覆っている。第2シェード部23bの上端縁は、水平に延びている。なお、第2シェード部23bの上端縁にも、Z型の段差部を設けてもよい。第2レンズ21bの光学原点F
21bは、第2シェード部23bの上端縁近傍に位置している。なお、第2レンズ21bの光学原点F
21bは、第2シェード部23bの上端縁近傍であればよく、例えば、第2光源22bの長辺近傍に位置していてもよい。
【0114】
第3シェード部23cは、第3光源12cからの光の一部を遮光する遮光部材である。第3シェード部23cは、例えば、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材で、可動シェード23が上記のように支持された状態で第3光源22cの前方近傍に配置されて、第3光源22cの発光面の下部を覆っている。第3シェード部23cの上端縁は、水平に延びている。なお、第3シェード部23cの上端縁にも、Z型の段差部を設けてもよい。第3レンズ21cの光学原点F
21cは、第3シェード部23cの上端縁近傍に位置している。なお、第3レンズ21cの光学原点F
21cは、第3シェード部23bの上端縁近傍であればよく、例えば、第3光源22cの長辺近傍に位置していてもよい。
【0115】
第4シェード部23dは、第4光源22dからの光の一部を遮光する遮光部材である。第4シェード部23aは、例えば、灯具光軸AXに直交する鉛直面に沿って延びる細長板状の遮光部材で、可動シェード23が上記のように支持された状態で第4光源22dの前方近傍に配置されて、第4光源22dの発光面の下部を覆っている。第4シェード部23dの上端縁は、水平に延びている。なお、第4シェード部23dの上端縁にも、Z型の段差部を設けてもよい。第4レンズ21dの光学原点F
21dは、第4シェード部23dの上端縁近傍に位置している。なお、第4レンズ21dの光学原点F
21dは、第4シェード部23dの上端縁近傍であればよく、例えば、第4光源22dの長辺近傍に位置していてもよい。
【0116】
各シェード部23a〜23cは、斜め方向に延びる連結部23eにより連結されて、一つの可動シェード23を構成している。
【0117】
上記構成の第1レンズ21a、第1光源22a及び可動シェード23(第1シェード部23a)は、第1ダイレクトプロジェクション光学系20Aを構成している。第1ダイレクトプロジェクション光学系20Aによれば、第1光源22aから放射された光は、第1レンズ21aを透過して平行光として前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、すれ違いビーム用配光パターンの中央付近を照射する部分配光パターンP5を形成する(
図12参照)。
【0118】
第1レンズ21aは他のレンズ21b〜21dと比べ焦点距離が長くより小さな光源像を投影することが可能であるため、部分配光パターンP5は、最も集光した(スポット的な)高照度のパターンとなる。
【0119】
また、第1シェード部23aで下部が覆われた第1光源22aの発光面の光源像が、第1レンズ21aの作用により前方へ反転投影される形となるため、部分配光パターンP5は、第1シェード部23aの上端縁により規定されるZ型の段差部を含むカットオフラインCL5をその上端縁に含むパターンとなる。
【0120】
このカットオフラインCL5は、水平方向に延びる自車線側カットオフラインCL5
L、水平方向に延びる対向車線側カットオフラインCL5
R、両カットオフラインCL5
L、CL5
Rを連結する斜め(例えば45°)カットオフラインCL5
Sを含んでいる。
【0121】
上記構成の第2レンズ21b、第2光源22b及び可動シェード23(第2シェード部23b)は、第2ダイレクトプロジェクション光学系20Bを構成している。第2ダイレクトプロジェクション光学系20Bによれば、第2光源22bから放射された光は、第2レンズ21bを透過して、水平断面においては、左右両側に拡散する拡散光として、鉛直断面においては、鉛直下方に偏向する光として前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)に、部分配光パターンP5より水平方向及び鉛直方向に拡散された部分配光パターンP6を形成する(
図12参照)。
【0122】
第2レンズ21bは第1レンズ21aと比べ焦点距離が短い分、部分配光パターンP6は、部分配光パターンP5よりも水平方向及び鉛直方向に大きくかつ照度が低いパターンとなる。
【0123】
また、第2シェード部23aで下部が覆われた第2光源22bの発光面の光源像が、第2レンズ21bの作用により前方へ反転投影される形となるため、部分配光パターンP6は、第2シェード部23aの上端縁により規定される水平方向に延びるカットオフラインCL6をその上端縁に含むパターンとなる。
【0124】
上記構成の第3レンズ21c、第3光源22c及び可動シェード23(第3シェード部23c)は、第3ダイレクトプロジェクション光学系20Cを構成している。第3ダイレクトプロジェクション光学系20Cによれば、第3光源22cから放射された光は、第3レンズ21cを透過して、水平断面においては、左右両側に拡散する拡散光として、鉛直断面においては、鉛直下方に偏向する光として前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)に、部分配光パターンP6より水平方向及び鉛直方向に拡散された部分配光パターンP7を形成する(
図12参照)。
【0125】
第3レンズ21cは第2レンズ21bと比べ焦点距離が短い分、部分配光パターンP7は、部分配光パターンP6よりも水平方向及び鉛直方向に大きくかつ照度が低いパターンとなる。
【0126】
また、第3シェード部23aで下部が覆われた第3光源22cの発光面の光源像が、第3レンズ21cの作用により前方へ反転投影される形となるため、部分配光パターンP7は、第3シェード部23dの上端縁により規定される水平方向に延びるカットオフラインCL7をその上端縁に含むパターンとなる。
【0127】
上記構成の第4レンズ21d、第4光源22d及び可動シェード23(第4シェード部23d)は、第4ダイレクトプロジェクション光学系20Dを構成している。第4ダイレクトプロジェクション光学系20Dによれば、第4光源22dから放射された光は、第4レンズ21dを透過して、水平断面においては、左右両側に拡散する拡散光として、鉛直断面においては、鉛直下方に偏向する光として前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)に、部分配光パターンP7より水平方向及び鉛直方向に拡散された部分配光パターンP8を形成する(
図12参照)。
【0128】
第4レンズ21dは第3レンズ21cと比べ焦点距離が短い分、部分配光パターンP8は、部分配光パターンP7よりも水平方向及び鉛直方向に大きくかつ照度が低いパターンとなる。
【0129】
また、第4シェード部23aで下部が覆われた第4光源22dの発光面の光源像が、第4レンズ21dの作用により前方へ反転投影される形となるため、部分配光パターンP8は、第4シェード部23dの上端縁により規定される水平方向に延びるカットオフラインCL8をその上端縁に含むパターンとなる。
【0130】
上記各部分配光パターンP5〜P8は
図12に示すように重畳される。すなわち、複数の光学系20A〜20Bのうち焦点距離が最も長い投影レンズ21aを含む光学系20Aは最も集光した配光パターンP5を形成し、それ以外の光学系20B〜20Dは投影レンズの焦点距離が短くなるに従って、水平方向の広がりが広い配光パターンP6〜P8を形成する。これにより、中心(部分配光パターンP5)の照度が最も高く、周辺に向かうにつれ水平方向の広がりが広くかつ照度が低くなる遠方視認性に優れた合成配光パターン(すれ違いビーム用配光パターン)が形成される。
【0131】
図9に示すように、可動シェード23(23a〜23d)は、上下調整ネジ25の螺合量を調整することで、回転軸24aを中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に揺動し、移動後の任意の位置へ固定される。
【0132】
上下調整ネジ25は、鉛直軸を中心に同一位置で回転するネジで、ハウジング91に保持されている。上下調整ネジ25は、可動シェード23の先端部に形成された開口23fに挿入されてこれに固定されたフランジ部29に螺合している。上下調整ネジ25は、可動シェード23を移動後の任意の位置へ固定するため、比較的きつくフランジ部29に螺合している(本発明の固定手段に相当)。
【0133】
上下調整ネジ25の可動シェード23に対する螺合量を調整すると、可動シェード23(23a〜23d)は、回転軸24aを中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に揺動し、移動後の任意の位置へ固定される。
【0134】
可動シェード23を、回転軸24aを中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に微小角度θ揺動させた場合、可動シェード23(23a〜23d)の鉛直方向の移動量h1〜h4は次の式で表される。
【0135】
[数3]
第1シェード部23aのうち第1光源22a(光軸AX
1)に対応する部分の鉛直方向の移動量h1=L1×sinθ=4×L4×sinθ
第2シェード部23bのうち第2光源22b(光軸AX
2)に対応する部分の鉛直方向の移動量h2=L2×sinθ=3×L4×sinθ
第3シェード部23cのうち第3光源22c(光軸AX
3)に対応する部分の鉛直方向の移動量h3=L3×sinθ=2×L4×sinθ
第4シェード部23dのうち第4光源22d(光軸AX
4)に対応する部分の鉛直方向の移動量h4=L4×sinθ
ここで、レンズ21(21a〜21d)の光軸変化の割合は次の式で表される。
【0136】
[数4]
h1/f1=4×L4×sinθ/(4×f4)=L4×sinθ/f4
h2/f2=3×L4×sinθ/(3×f4)=L4×sinθ/f4
h3/f3=2×L4×sinθ/(2×f4)=L4×sinθ/f4
h4/f4=L4×sinθ/f4
以上のように、可動シェード23の回転軸24aから各光源22a〜22d(各光軸AX
1〜AX
4)までの距離の比率が、レンズ21a〜21dの焦点距離の比率と等しいため(距離L1:距離L2:距離L3:距離L4=焦点距離f1:焦点距離f2:焦点距離f3:焦点距離f4=4:3:2:1)、可動シェード23を、回転軸24aを中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に微小角度θ揺動させても、レンズ21(21a〜21d)の光軸変化の割合が等しくなる(h1=h2=h3=h4)。すなわち、各配光パターンP5〜P8の各カットオフラインCL5〜CL8の仮想鉛直スクリーン上での移動方向及び移動量が等しくなる。
【0137】
従って、上下調整ネジ25の螺合量を調整し、可動シェード23(23a〜23d)を、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において回転軸24aを中心に鉛直方向に揺動させて、移動後の任意の位置へ固定することで、光軸調整することが可能となる。
【0139】
本比較例(従来例)の車両用灯具ユニット(図示せず)は、車両用灯具ユニット20と比べ、可動シェード23の代わりに固定シェードを用いている点、及び、支点を中心に車両用灯具ユニット全体を傾動させることで光軸調整する構造を備えている点が相違する。それ以外、車両用灯具ユニット20と同様の構成である。
【0140】
比較例の車両用灯具ユニット(光軸方向寸法:45[mm])全体を、支点を中心に傾動させて光軸調整したところ(光軸調整角度:2.0[deg])、光軸調整前後で、比較例の車両用灯具ユニット端部(支点から一番遠い部分)が、鉛直方向に1.6[mm]移動した(移動量:1.6[mm])。
【0141】
これに対して、本実施形態の車両用灯具ユニット20において、上記比較例と同じ角度光軸調整した。但し、f1=10[mm]、f2=7.5[mm]、f3=5.0[mm]、f4=2.5[mm]、L1=10[mm]、L2=75[mm]、L3=50[mm]、L4=25[mm]、可動シェード23の長手方向長さ=120[mm]とした。この場合、光軸調整前後で、レンズ21(21a〜21d)は移動せず(移動量:0[mm])、可動シェード13の端部(回転軸24aから一番遠い部分)が、鉛直方向に0.42[mm]移動した。可動シェード23の回転角度θは0.2[deg]であった。
【0142】
上記比較例から明らかなように、本実施形態によれば、比較例の車両用灯具ユニットと比べ、可動部の移動量を小さくすることが可能となる(比較例:1.6[mm]、本実施形態:0.42[mm])。従って、本実施形態によれば、可動部の移動スペースの省スペース化が可能となる。
【0143】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両用灯具ユニット全体を傾動させて光軸調整する従来とは異なり、複数のダイレクトプロジェクション光学系20A〜20D全体を傾動させることなく、可動シェード23のみを揺動させて光軸調整することが可能となる。従って、光軸調整に際してレンズ21(21a〜21d)が全く移動せず(移動量:0[mm])、見栄えに全く影響を及ぼさない車両用灯具ユニット20を実現することが可能となる。
【0144】
また、本実施形態によれば、光軸調整に際してレンズ21(21a〜21d)が全く移動しないため(移動量:0[mm])、従来必要とされていた車両用灯具ユニットの投影レンズの移動スペースを省略することが可能となる。
【0145】
また、本実施形態によれば、一つの可動シェード23を移動させるだけで、複数のダイレクトプロジェクション光学系20A〜20Dの光軸調整を同時に実施することが可能となる。
【0147】
上記実施形態では、4つのダイレクトプロジェクション光学系20A〜20Dを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、ダイレクトプロジェクション光学系は、2〜3又は5つ以上であってもよい。
【0148】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態として、一つの可動シェード33を揺動させることで、複数のプロジェクタ光学系30A、30Bの光軸調整を同時に行うことが可能な車両用灯具ユニット30について説明する。
【0149】
本実施形態の車両用灯具ユニット30は、第2実施形態の車両用灯具ユニット20と比べ、主に、プロジェクタ光学系を用いている点が相違する。以下、第2実施形態の車両用灯具ユニット20との相違点を中心に説明する。
【0150】
本実施形態の車両用灯具ユニット30は、車両用前照灯(ヘッドランプ)であり、自動車等の車両の前面の左右両側に配置されている。左側と右側の車両用灯具ユニット30は左右対称で同様の構成である。以下左側に配置された車両用灯具ユニット30を中心に説明する。
【0151】
図13は車両用灯具ユニット30の斜視図、
図14は分解斜視図、
図15は正面図、
図16は上面図である。
図17(a)は車両用灯具ユニット30を、光軸AX
1を含む鉛直断面で切断した断面図、
図17(b)は車両用灯具ユニット30を、光軸AX
2を含む鉛直断面で切断した断面図である。
図18は、車両用灯具ユニット30により仮想鉛直スクリーン上に形成される合成配光パターンの例である。
【0152】
図13〜
図17に示すように、車両用灯具ユニット30は、複数のレンズ31a、31b、複数の光源32a、32b、可動シェード33、可動シェード固定ネジ34、上下調整ネジ35、ブラケット36、レンズホルダー37、複数の反射面38a、38b等を備えている。
図15、
図16に示すように、車両用灯具ユニット30は、前面レンズ93とハウジング94とを組み合わせて構成される灯室95内に配置されている。
【0153】
図16に示すように、レンズ31a、31bは、焦点距離が異なる投影レンズである。レンズ31a、31bの焦点距離は、次の式を満たしている。
【0154】
[数5]
第1レンズ31aの焦点距離f1:第2レンズ31bの焦点距離f2=2:1
レンズ31a、31bの後側の光学原点F
31a、F
31b(後側焦点に相当)は、灯具光軸AXに直交する同一の鉛直面内に位置している。レンズ31a、31bは、正面視で水平に対して斜め方向に所定間隔をおいて配置されている(
図15参照)。レンズ31a、31bは、ブラケット36を介してハウジングや車体フレーム等の車両側に固定されている。
【0155】
以下、レンズ31a、31bの光軸をAX
1、AX
2と称する。光軸AX
1、AX
2は、灯具光軸AXに対して平行で、灯具光軸AXと同様、車両前後方向に延びている。
【0156】
図14〜
図16に示すように、第1レンズ31aは、ブラケット36にネジ止め固定されたレンズホルダー37に保持されて、光軸AX
1上に配置されている。第1レンズ31aは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。
【0157】
第2レンズ31bは、ブラケット36にネジ止め固定されたレンズホルダー37に保持されて、光軸AX
2上に配置されている。第2レンズ31bは、例えば、車両前方側表面(出射面)が凸面で車両後方側表面(入射面)が平面の投影レンズである。
【0158】
レンズ31a、31bは、次の式を満たすように配置されている。
【0159】
[数6]
可動シェード33の回転軸34aから光軸AX
1までの距離L1:可動シェード33の回転軸34aから光軸AX
2までの距離L2=第1レンズ31aの焦点距離f1:第2レンズ31bの焦点距離f2=2:1
このように、可動シェード33の回転軸34aから各光源32a、32b(各光軸AX
1、AX
2)までの距離の比率は、レンズ31a、31bの焦点距離の比率と等しい。
【0160】
光源32a、32bは、ブラケット36を介してハウジングや車体フレーム等の車両側に固定されている。
【0161】
第1光源32aは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、第1レンズ31aの後側焦点F
31aより後方側かつ光軸AX
1近傍に、その発光面を上向き(又は斜め後方上向き)にした状態でブラケット36に固定されている。第1光源32aは、その長辺が光軸AX
1に直交しかつ光軸AX
1に対して対称となるように配置されている。
【0162】
図14、
図17(b)に示すように、第2光源32bは、矩形発光部を持つ半導体発光素子(例えば、1mm角の発光面×4の矩形発光部を持つLED等の光源モジュール)で、第2レンズ31bの後側焦点F
31bより後方側かつ光軸AX
2近傍に、その発光面を上向き(又は斜め後方上向き)にした状態でブラケット36に固定されている。第2光源32bは、その長辺が光軸AX
2に直交しかつ光軸AX
2に対して対称となるように配置されている。
【0163】
光源32a、32bの発熱は、ブラケット36の放熱フィン36bから放熱される。ブラケット36は、アルミ合金等の熱伝導性に優れた材質製であるため、効率のよい放熱が可能となる。なお、光源32a、32bが実装された基板Ka、Kbとブラケット36との間に、熱伝導グリス等の熱伝導部材を介在させるのが好ましい。このようにすれば、放熱性能をさらに向上させることが可能となる。
【0164】
なお、光源32a、32bは、矩形発光部(矩形発光面)を持つ光源であればよく、その構造は特に問わない。例えば、光源32a、32bは、LED素子と蛍光体とを組み合わせた構造の光源であってもよいし、LD素子と蛍光体とを組み合わせた構造の光源であってもよい。
【0165】
第1反射面38a、第2反射面38bは、ブラケット36を介してハウジングや車体フレーム等の車両側に固定されている。
【0166】
第1反射面38aは、第1光源32aから入射する光を第1レンズ31aの光軸AX
1寄りに集光させて第1レンズ31aを透過させて所定配光パターンを形成するように構成された反射面である。具体的には、第1反射面38aは、
図16、
図17(a)に示すように、第1焦点F1
38aが第1光源32a近傍に設定され、第2焦点F2
38aが第1レンズ31aの後側焦点F
31a近傍に設定された回転楕円系の反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)で、第1光源32aから放射された光が入射するように第1光源32aの放射方向(第1光源32aの上方)に配置されている。第1反射面38aは、第1光源32aから略上向きに放射される光が入射するように、第1光源32aの側方(
図17(a)中、車両後方側の側方)から第1レンズ31aに向かって延びて、第1光源32aの上方を覆っている。
【0167】
第2反射面38bは、第2光源32bから入射する光を第2レンズ31bの光軸AX
2寄りに集光させて第2レンズ31bを透過させて所定配光パターンを形成するように構成された反射面である。具体的には、第1反射面38bは、
図16、
図17(b)に示すように、第1焦点F1
38bが第2光源32b近傍に設定され、第2焦点F2
38bが第2レンズ31bの後側焦点F
31b近傍に設定された回転楕円系の反射面(回転楕円面又はこれに類する自由曲面等)で、第2光源32bから放射された光が入射するように第2光源32bの放射方向(第2光源32bの上方)に配置されている。第2反射面38bは、第2光源32bから略上向きに放射される光が入射するように、第2光源32bの側方(
図17(b)中、車両後方側の側方)から第2レンズ31bに向かって延びて、第2光源32bの上方を覆っている。
【0168】
図14、
図15に示すように、可動シェード33は、灯具光軸AXに直交する方向に延びる細長形状の遮光部材である。
【0169】
可動シェード33は、その基端部(回転軸34a)を中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において(鉛直面に沿って)、レンズ31a、31bに対して鉛直方向に揺動可能に支持されている。
【0170】
本実施形態では、可動シェード33は、可動シェード固定ネジ34により次のように支持されている(本発明の支持手段に相当)。
【0171】
図14に示すように、可動シェード33の基端部に形成された開口33gには、ブラケット36に固定された可動シェード固定ネジ34の軸部34aが挿入されている。これにより、可動シェード33は、その軸部34a(回転軸34a)を中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に揺動可能とされている。可動シェード固定ネジ34の軸部34a(回転軸34a)は、灯具光軸AXに対して平行で、灯具光軸AXと同様、車両前後方向に延びている。
【0172】
図14、
図15に示すように、可動シェード33は、第1シェード部33a、第2シェード部33bを含んでいる。可動シェード33(33a〜33d)は、例えば、アルミダイカスト等の材料を、金型に注入し、冷却、固化させることで、一体的に構成されている。
【0173】
第1シェード部33aは、第1光源32aからの光の一部を遮光する遮光部材で、可動シェード33が上記のように支持された状態で第1レンズ31aの後側焦点F
31a近傍に配置されている(
図17(a)参照)。第1レンズ31aの後側焦点F
31aは、第1シェード部33aの上端縁近傍に位置している。第1シェード部33aの上端縁は、Z型の段差部33a1を含んでいる(
図14参照)。
【0174】
第2シェード部33bは、第2光源32bからの光の一部を遮光する遮光部材で、可動シェード33が上記のように支持された状態で第2レンズ31bの後側焦点F
31b近傍に配置されている(
図17(b)参照)。第2レンズ31bの後側焦点F
31bは、第2シェード部33bの上端縁近傍に位置している。第2シェード部33bの上端縁は、Z型の段差部33b1を含んでいる(
図14参照)。
【0175】
各シェード部33a、33bは連結されて、一つの可動シェード33を構成している。
【0176】
上記構成の第1レンズ31a、第1光源32a、第1反射面38a及び可動シェード33(第1シェード部33a)は、第1プロジェクタ光学系30Aを構成している。第1プロジェクタ光学系30Aによれば、第1光源32aから放射された光は、第1反射面38aで反射されて第1レンズ31aの後側焦点F
31a近傍で集光した後、第1レンズ31aを透過して前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)上に、すれ違いビーム用配光パターンの中央付近を照射する部分配光パターンP9を形成する(
図18参照)。
【0177】
第1レンズ31aは第2レンズ31bと比べ焦点距離が長くより小さな光源像を投影することが可能であるため、部分配光パターンP9は、最も集光した(スポット的な)高照度のパターンとなる。
【0178】
また、第1光源32aからの光の一部が第1シェード部33aで遮光されるため、部分配光パターンP9は、第1シェード部33aの上端縁により規定されるZ型の段差部を含むカットオフラインCL9をその上端縁に含むパターンとなる。
【0179】
このカットオフラインCL9は、水平方向に延びる自車線側カットオフラインCL9
L、水平方向に延びる対向車線側カットオフラインCL9
R、両カットオフラインCL9
L、CL9
Rを連結する斜め(例えば45°)カットオフラインCL9
Sを含んでいる。
【0180】
上記構成の第2レンズ31b、第2光源32b、第2反射面38b及び可動シェード33(第2シェード部33b)は、第2プロジェクタ光学系30Bを構成している。第2プロジェクタ光学系30Bによれば、第2光源32bから放射された光は、第2反射面38bで反射されて第2レンズ31bの後側焦点F
31b近傍で集光した後、第2レンズ31bを透過して前方に照射され、車両前面に正対した仮想鉛直スクリーン(車両前面から約25m前方に配置されている)に、部分配光パターンP9より水平方向及び鉛直方向に拡散された部分配光パターンP10を形成する(
図18参照)。
【0181】
第2レンズ31bは第1レンズ31aと比べ焦点距離が短い分、部分配光パターンP10は、部分配光パターンP9よりも水平方向及び鉛直方向に大きくかつ照度が低いパターンとなる。
【0182】
また、第2光源32bからの光の一部が第2シェード部33bで遮光されるため、部分配光パターンP10は、第2シェード部33bの上端縁により規定されるZ型の段差部を含むカットオフラインCL10をその上端縁に含むパターンとなる。
【0183】
このカットオフラインCL10は、水平方向に延びる自車線側カットオフラインCL10
L、水平方向に延びる対向車線側カットオフラインCL10
R、両カットオフラインCL10
L、CL10
Rを連結する斜め(例えば45°)カットオフラインCL10
Sを含んでいる。
【0184】
上記各部分配光パターンP9、P10は
図18に示すように重畳される。すなわち、複数の光学系30A、30Bのうち焦点距離が最も長い投影レンズ31aを含む光学系30Aは最も集光した配光パターンP9を形成し、それ以外の光学系30Bは水平方向の広がりが広い配光パターンP10を形成する。これにより、中心(部分配光パターンP9)の照度が最も高く、周辺に向かうにつれ水平方向の広がりが広くかつ照度が低くなる遠方視認性に優れた合成配光パターン(すれ違いビーム用配光パターン)が形成される。
【0185】
図15に示すように、可動シェード33(33a、33b)は、上下調整ネジ35の螺合量を調整することで、回転軸34aを中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に揺動し、移動後の任意の位置へ固定される。
【0186】
上下調整ネジ35は、鉛直軸を中心に同一位置で回転するネジで、ハウジング94に保持されている。上下調整ネジ35は、可動シェード33の先端部に形成された開口33fに挿入されてこれに固定されたフランジ部39に螺合している。上下調整ネジ35は、可動シェード33を移動後の任意の位置へ固定するため、比較的きつくフランジ部39に螺合している(本発明の固定手段に相当)。
【0187】
上下調整ネジ35の可動シェード33に対する螺合量を調整すると、可動シェード33(33a、33b)は、回転軸34aを中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に揺動し、移動後の任意の位置へ固定される。
【0188】
可動シェード33を、回転軸34aを中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に微小角度θ揺動させた場合、可動シェード33(33a、33b)の鉛直方向の移動量h1、h2は次の式で表される。
【0189】
[数7]
第1シェード部33aのうち光軸AX
1に対応する部分の鉛直方向の移動量h1=L1×sinθ=2×L2×sinθ
第2シェード部33bのうち光軸AX
2に対応する部分の鉛直方向の移動量h2=L2×sinθ
ここで、レンズ31a、31bの光軸変化の割合は次の式で表される。
【0190】
[数8]
h1/f1=2×L2×sinθ/(2×f2)=L2×sinθ/f2
h2/f2=L2×sinθ/f2
以上のように、可動シェード33の回転軸34aから各光源22a、22b(各光軸AX
1、AX
2)までの距離の比率が、レンズ31a、31bの焦点距離の比率と等しいため(距離L1:距離L2=焦点距離f1:焦点距離f2=2:1)、可動シェード33を、回転軸34aを中心に、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において鉛直方向に微小角度θ揺動させても、レンズ31a、31bの光軸変化の割合が等しくなる(h1=h2)。すなわち、各配光パターンP9、P10の各カットオフラインCL9、CL10の仮想鉛直スクリーン上での移動方向及び移動量が等しくなる。
【0191】
従って、上下調整ネジ35の螺合量を調整し、可動シェード33(33a、33b)を、灯具光軸AXに直交する鉛直面内において回転軸34aを中心に鉛直方向に揺動させて、移動後の任意の位置へ固定することで、光軸調整することが可能となる。
【0193】
本比較例(従来例)の車両用灯具ユニット(図示せず)は、車両用灯具ユニット30と比べ、可動シェード33の代わりに固定シェードを用いている点、及び、支点を中心に車両用灯具ユニット全体を傾動させることで光軸調整する構造を備えている点が相違する。それ以外、車両用灯具ユニット30と同様の構成である。
【0194】
比較例の車両用灯具ユニット(光軸方向寸法:105[mm])全体を、支点を中心に傾動させて光軸調整したところ(光軸調整角度:2.0[deg])、光軸調整前後で、比較例の車両用灯具ユニット端部(支点から一番遠い部分)が、鉛直方向に3.7[mm]移動した(移動量:3.7[mm])。
【0195】
これに対して、本実施形態の車両用灯具ユニット30において、上記比較例と同じ角度光軸調整した。但し、f1=30[mm]、f2=15[mm]、L1=100[mm]、L2=50[mm]、可動シェード33の長手方向長さ=125[mm]とした。この場合、光軸調整前後で、レンズ31a、31bは移動せず(移動量:0[mm])、可動シェード33の端部(回転軸34aから一番遠い部分)が、鉛直方向に0.44[mm]移動した。可動シェード33の回転角度θは0.2[deg]であった。
【0196】
上記比較例から明らかなように、本実施形態によれば、比較例の車両用灯具ユニットと比べ、可動部の移動量を小さくすることが可能となる(比較例:3.7[mm]、本実施形態:0.44[mm])。従って、本実施形態によれば、可動部の移動スペースの省スペース化が可能となる。
【0197】
以上説明したように、本実施形態によれば、車両用灯具ユニット全体を傾動させて光軸調整する従来とは異なり、複数のプロジェクタ光学系30A、30B全体を傾動させることなく、可動シェード33のみを揺動させて光軸調整することが可能となる。従って、光軸調整に際してレンズ31a、31bが全く移動せず(移動量:0[mm])、見栄えに全く影響を及ぼさない車両用灯具ユニット30を実現することが可能となる。
【0198】
また、本実施形態によれば、光軸調整に際してレンズ31a、31bが全く移動しないため(移動量:0[mm])、従来必要とされていた車両用灯具ユニットの投影レンズの移動スペースを省略することが可能となる。
【0199】
また、本実施形態によれば、一つの可動シェード33を移動させるだけで、複数のプロジェクタ光学系30A、30Bの光軸調整を同時に実施することが可能となる。
【0201】
上記実施形態では、2つのプロジェクタ光学系30A、30Bを用いた例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、プロジェクタ光学系は、3つ以上であってもよい。
【0202】
上記実施形態はあらゆる点で単なる例示にすぎない。これらの記載によって本発明は限定的に解釈されるものではない。本発明はその精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の様々な形で実施することができる。