【実施例1】
【0029】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において従来例に係るセーバソー101と同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。また本明細書においては、前後左右、上下の方向は図中に示す方向であるとして説明する。
【0030】
図1は、本発明の実施例に係るセーバソー1の全体を示す断面図である。本実施例においては
図7で説明した従来のセーバソー101に対して変更した部分は、主にプランジャ20の取り付け構造であって、プランジャ20を第1レシプロプレート18の揺動軸部18aよりも前方側と後方側の2箇所において軸受部材(第1軸受メタル19、第2軸受メタル28)を介してガイドスリーブ13にて保持させるように構成した点である。本実施例においては、ギヤカバー6の内周側においてプランジャ20が前後方向に往復動するが、往復動するプランジャ20の保持するためと、スイングカットのためにプランジャ20をスイングさせる略円筒形のガイドスリーブ13が設けられる。ガイドスリーブ13は、プランジャ20の外側であってギヤカバー6の内側に設けられる。ガイドスリーブ13は第1レシプロプレート18の前方側から後方側まで連続した筒状の一つの部品として、例えば鋼材等の一体成型で製造されるものであって、前後方向の前端付近には後述する軸ボルト12を通す為のネジ穴(図示せず)が、中央付近には第1レシプロプレート18をガイドスリーブ13内に挿入可能な上下方向に開けられたくり抜き穴13bが、軸方向の後端付近には軸方向に延びる長穴13cが形成される。第1軸受メタル19及び第2軸受メタル28は円筒形の金属部材、例えば潤滑油を含浸した鉄系の焼結材であって、ガイドスリーブ13とプランジャ20の間に配置され、これらを滑らかにすべらすことで、摩擦によるエネルギーの損失を防ぎ、発熱を減らす役割を担う。インナカバー5及びギヤカバー6は例えばアルミニウム合金等の金属によって製造される。
【0031】
ガイドスリーブ13の前方側の内周部分には第1軸受メタル19が設けられる。第1軸受メタル19は、前後方向に所定の長さを有する円筒形の部材であって、ガイドスリーブ13側に固定され、内径側においてプランジャ20と摺動する、いわゆる内径摺動型である。第1軸受メタル19の軸方向の長さは、球状部18bの前後方向のストロークとほぼ同じまたは近い程度の長さとして、十分な摺動面積を有するようにすると良い。第2軸受メタル28は、プランジャ20の後端付近であって、揺動軸部18aの一部と球状部18bを貫通させる貫通穴20bの後方側に配置される。
【0032】
第2軸受メタル2の内周側はプランジャ20に対して相対移動ができないように固定され、外周側においてガイドスリーブ13の内周面と摺動する、いわゆる外径摺動型である。本実施例では従来のセーバソー101を極力変更しないで本発明の構成を実現するため、ガイドスリーブ13は従来のものをそのまま使用するようにした。従って、従来のプランジャ120とは形状を変更して、プランジャ20には第2軸受メタル2を装着するための細径部20e(
図2で後述)が形成され、さらに第2軸受メタル28がプランジャ20から抜け落ちないように押さえ部材29にて固定する。
【0033】
(揺動切断機構部)
ガイドスリーブ13にはその軸方向に延びる長穴13cが形成される。長穴13cとプランジャ20にはローラシャフト21が貫通する。長穴13cとプランジャ20とを貫通するローラシャフト21の両端には後述するスイングローラが回動可能に取付けられ、ローラシャフト21とスイングローラは長穴13cをガイドとしてプランジャ20と一体に往復運動できるよう設けられる。長穴13cの高さはローラシャフト21の軸径より僅かに大きく形成されており、プランジャ20の周方向の回転を、ローラシャフト21を介してガイドスリーブ13により抑制し、ブレード27の倒れを防止するようにしている。
【0034】
(プランジャ両端支持機構部)
ガイドスリーブ13の前方内部には第1軸受メタル19が圧入されており、第1軸受メタル19を貫通してプランジャ20が往復動可能に取付けられる。プランジャ20の後端にはガイドスリーブ13の内周と摺動する第2軸受メタル28が固定され、プランジャ20と第2軸受メタル28は一体として同時に往復運動する。プランジャ20と第2軸受メタル28及び押さえ部材29にはローラシャフト21が貫通しており、ローラシャフト21は第2軸受メタル28の径方向の回り止めを兼ねている。押さえ部材29はローラシャフト21とプランジャ20の内径により固定され、第2軸受メタル28の往復運動方向の抜け止めとなる。プランジャ20には軸方向と直角に貫通穴20b(後述の
図2参照)が設けられる。第1レシプロプレート18の揺動軸部18aは、プランジャ20を貫通して先端の球状部18bが貫通穴20bの内部にわずかな隙間で転動可能に係合しており、セカンドシャフト9の回転運動をプランジャ20の往復運動に変換する。
【0035】
ここで
図2を用いて、プランジャ20、第2軸受メタル28、押さえ部材29の形状を説明する。
図2はこれらの分解斜視図である。従来のプランジャ120に比べるとプランジャ20の揺動軸部18aを貫通させる貫通穴20b付近、及びそれよりも前方側の形状は同じである。プランジャ20の前方側にはブレードホルダ23が設けられ、ブレードホルダ23にはブレード27を装着及び取り外すための揺動可能なノブ24が形成される。プランジャ20の貫通穴20bが形成される太径部20cの前方側には、第1軸受メタル19と摺動する摺動面20dが形成される。一方、プランジャ20の太径部20cの後方側には、第2軸受メタル20を保持するための細径部20eが形成される。細径部20eには、後方側から第2軸受メタル28が挿入され、その後方側から押さえ部材29により抜け止めがされる。第2軸受メタル28は円筒形であって、外周面が摺動面28cとなる。
【0036】
押さえ部材29の後端側には円盤状のフランジ部29bが形成され、フランジ部29bの外径は第2軸受メタル20の内径よりも大きく、外径とほぼ同じか若しくはやや小さい程度に形成される。押さえ部材29は例えば金属製または高分子樹脂製の成型部品であって、フランジ部29bの前方側にはプランジャ20の内径側に挿入される円筒部29cが接続される。プランジャ20の細径部20eには、ローラシャフト21(
図1参照)を貫通させるための貫通穴20aが形成され、第2軸受メタル20と押さえ部材29の対応部分に貫通穴28a、29aが形成される。そしてローラシャフト21を貫通穴28a、20a、29aに貫通させることにより、第2軸受メタル20と押さえ部材29がプランジャ20から軸方向後方に抜けないように保持される。また、ローラシャフト21が各部材を貫通していることから第2軸受メタル28がプランジャ20に対して軸方向を中心に回転しないように固定される。
【0037】
再び
図1に戻る。プランジャ20の後端側に第2軸受メタル28が設けられることによってプランジャ20の前後方向の往復移動は、揺動軸部18a及びくり抜き穴13bの前方側において第1軸受メタル19にて内径摺動し、揺動軸部18a及びくり抜き穴13bの後方側において第2軸受メタル28にて外径摺動する。この際、第2軸受メタル28の外周側の一部においてくり抜き穴13bの位置と重複する部分があるので、摺動性を上げるためにガイドスリーブ13の第2軸受メタル28との接触部分付近を研磨しておくと良い。ガイドスリーブ13の後端付近の左右側部には方形貫通穴13aが形成され、インナカバー5を貫通して回動可能に取付けられたチェンジシャフト15が方形貫通穴13aを貫通するように配置される。
【0038】
図3は
図1のセーバソー1の部分拡大図であって、
図1の状態からプランジャ20が後方側に移動した状態を示す部分断面図である。
図1の状態では第1レシプロプレート18の揺動軸部18aが前方側に最も傾いている状態であって、プランジャ20が最も前方に移動した状態を示しているが、
図3に示す状態では第1レシプロプレート18の揺動軸部18aが後方側に最も傾いている状態であって、プランジャ20が最も後方に移動した状態を示している。本実施例では、第2軸受メタル28は外径摺動型であってプランジャ20側に取り付けられるため、プランジャ20の貫通穴20bより後方の長さを短く構成できる。仮に第2軸受メタル28をガイドスリーブ13側に取り付けて内径摺動型にするとプランジャ20の貫通穴20bより後方の長さを長く構成しないと第2軸受メタル28と摺動しない部分が生じてしまう。また、プランジャ20の後端付近の長さを長くすることは、それに伴ってガイドスリーブ13の前後長さも長くしなければならないため、セーバソー1全体の大きさが大きくなってしまう。
【0039】
本実施例ではプランジャ20側に第2軸受メタル28を固定するように構成したので、従来のプランジャ20と同じ長さで構成しつつ良好な摺動特性が実現できる。また、本実施例では従来のガイドスリーブ13をそのまま用いることができるので、
図2で示すプランジャ20の形状を変更して、第2軸受メタル28及び押さえ部材29を追加するだけで本発明が実現できるので、製造コストの上昇を抑えることが可能になる。さらに、プランジャ20の後端付近に第2軸受メタル28という金属製の質量体を設けており、この質量体は鉄系の比較的重い部材であるため往復動するプランジャ20のマスを増大させることによりブレード27による切断性能を向上させることができる。
【0040】
図4は
図3のA−A部の断面図であって往復動軸保持部の構造を示す図である。フロントカバー26の内側には切粉、粉塵などをシールするシールスリーブ14が設けられ、シールスリーブ14にはギヤカバー6が収容される。ギヤカバー6の前方側のA−A断面付近には2個の軸ボルト12が側方から取付けられ、軸ボルト12の先端部にはガイドスリーブ13が軸ボルト12の軸心を中心としてわずかに揺動可能に取付けられる。ここで、ギヤカバー6の内周面とガイドスリーブ13の外周面との間には、実際には僅かな隙間が形成されており(
図4ではこの隙間は図示されていない)、この隙間の範囲内で上述のようにガイドスリーブ13が軸ボルト12の軸心を中心として揺動可能となっている。これはガイドスリーブ13の後端部に方形貫通穴13a(
図3参照)が形成され、インナカバー5を貫通して回動可能に取付けられたチェンジシャフト15の操作によってガイドスリーブ13の軸ボルト12を中心とした揺動を選択的に許容または抑止するためである。ガイドスリーブ13の内側には円筒形の第1軸受メタル19が設けられる。第1軸受メタル19は軸ボルト12の先端が当接する付近をカットすることにより部分的に平面を形成して、軸方向を中心に回転しないように、軸方向に移動しないように保持される。第1軸受メタルの内側には円筒形のプランジャ20が配置される。プランジャ20は第1軸受メタル19に対して軸方向(前後方向)に摺動するものである。
【0041】
図5は
図3のB−B部の断面図である。プランジャ20には、プランジャ20を貫通してローラシャフト21が取り付けられ、ローラシャフト21はプランジャ20と一体に前後方向に往復運動できる。さらに、ローラシャフト21の両端には、スイングローラ21aが揺動可能に取り付けられる。ギヤカバー6の内側には、2つの軌道面を有するガイドレール22が形成される。ガイドレール22はプランジャ20の軸方向(移動方向)に延びるように形成される。それぞれの軌道面は互いに平行に延び、その間隔はスイングローラ21aの外径より僅かに大きい。スイングローラ21aは、2つの軌道面により案内され、プランジャ20と一体に往復移動する。これらの構成によってプランジャ20の周方向の回転をローラシャフト21、2つのスイングローラ21aを介して2つの軌道面により抑制し、ブレード27の倒れ(移動方向を中心とした回転)を防止する。
【0042】
図6は、
図3のC−C部の断面図である。尚、
図4、
図5と異なり軸方向に垂直な断面を前方側からでなく後方側からみた図であるので、左右方向が逆になるので注意されたい。チェンジシャフト15の中央部には、図に示されるように、あたかも軸心を中心としてチェンジシャフトを直径方向に対称に一対で切り欠いたような凹部が形成されており、凹部を画成するチェンジシャフト15の部分は対称な一対の平面部15a、15bとなっている。チェンジレバー16によってチェンジシャフト15を回転させることにより、ガイドスリーブ13の揺動を選択的に許容または抑止することができる。
図5はガイドスリーブ13の揺動を許容した状態を示している。このことにより、ガイドスリーブ13の前方内部に第1軸受メタル19を介して支持されるプランジャ20の揺動を選択的に許容または抑止することができるように構成される。
【0043】
本発明によれば、プランジャ20の前後両端付近を軸受メタルで支持するのでブレや不快な振動を低減させて使い勝手を良くすることができると共に、摩擦や発熱が抑えられセーバソーの長寿命化が実現できる。また、プランジャの後端側に軸受メタルを固定したため、プランジャと一体化して同時に往復動させることで第2軸受メタル19を設ける事による本体の大型化を阻止することができる。さらに、プランジャ20の前後両端付近を軸受メタルで支持するようにしたため、前方側の軸受メタル(第1軸受メタル19)を従来よりも小型化することも可能である、その場合はセーバソーの小型化を実現できる。
【0044】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、本実施例ではセーバソーに適用した例を説明したが、ガイドスリーブとプランジャを有し、レシプロプレートにてプランジャを移動させる往復動運動工具であれば、その他の電動工具や動力工具においても適用できる。また、モータの回転運動をプランジャの往復運動に変換する運動変換手段は、上述の実施例に示した構造に限定されずに任意の運動変換手段を用いてもよい。