(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862953
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】印刷文書に情報を埋め込むための基板蛍光マスク
(51)【国際特許分類】
B42D 25/387 20140101AFI20160202BHJP
D21H 21/48 20060101ALI20160202BHJP
D21H 21/30 20060101ALI20160202BHJP
D21H 21/28 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
B42D15/10 387
D21H21/48
D21H21/30
D21H21/28 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-129066(P2012-129066)
(22)【出願日】2012年6月6日
(62)【分割の表示】特願2007-122478(P2007-122478)の分割
【原出願日】2007年5月7日
(65)【公開番号】特開2012-176627(P2012-176627A)
(43)【公開日】2012年9月13日
【審査請求日】2012年7月6日
(31)【優先権主張番号】11/382,897
(32)【優先日】2006年5月11日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(72)【発明者】
【氏名】ラジャ バラ
(72)【発明者】
【氏名】ライナー エシュバッハ
【審査官】
砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭54−159004(JP,A)
【文献】
特開平2−194989(JP,A)
【文献】
実開昭55−159154(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/00−25/485
B41M 3/14
D21H 11/00−27/42
G07D 7/00− 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的増白剤を含む蛍光基板と、
第1の非蛍光色素混合物による前記蛍光基板の上の条件等色の画像であって、該第1の非蛍光色素混合物は、紫外線光の下で抑制された放射蛍光を示す、前記画像と、
前記画像に空間的に実質的に近接する、第2の非蛍光色素混合物による条件等色の背景であって、該第2の非蛍光色素混合物は、前記第1の色素混合物と通常の照明の下でカラー一致し、紫外線光の下で非類似の放射蛍光を有し、該第2の非蛍光色素混合物は、紫外線光の下で前記基板から蛍光放出される光を抑制しないように構成され、もって紫外線光の下での前記蛍光基板に対する前記第1の色素混合物と前記第2の色素混合物との間のコントラストが、認証マークとしての反射を与える前記背景と、
を含むことを特徴とする、蛍光マーク・インジケータ。
【請求項2】
光学的増白剤を含む蛍光基板と、
第1の非蛍光色素混合物による前記蛍光基板の上の条件等色の画像と、
前記画像に空間的に実質的に近接して前記基板の上に印刷された、第2の、異なる非蛍光色素混合物による条件等色の背景であって、該第2の非蛍光色素混合物は、前記第1の色素混合物と通常の照明の下でカラー一致し、紫外線光の下で非類似の放射蛍光を有する、前記背景と、
を具備し、
前記第1の色素混合物及び前記第2の色素混合物の一方は、紫外線光の下で抑制された放射蛍光の特性を提供し、前記第1の色素混合物及び前記第2の色素混合物の他方は、紫外線光の下で前記基板から蛍光放出される光を抑制しないように構成され、もって紫外線光の下での前記蛍光基板に対する前記第1の色素混合物と前記第2の色素混合物との間のコントラストが、認証マークとしての反射を与える前記背景と、
を含むことを特徴とする、蛍光マーク・インジケータ。
【請求項3】
蛍光マークを生成するためのシステムであって、
光学的増白剤を含む蛍光基板と、
デジタル・カラー印刷システムであって、
紫外線光の下で抑制された放射蛍光の特性を示す、第1の色素混合物と、
紫外線光の下で前記基板から蛍光放出される光を抑制しないとともに、前記第1の色素混合物と通常の照明の下でカラー一致する、第2の色素混合物と、
を含む前記デジタル・カラー印刷システムと、
前記デジタル・カラー印刷システムを用いて前記基板の上に印刷された条件等色の背景に対する条件等色の画像であって、前記画像は前記第1の色素混合物及び前記第2の色素混合物の一方を含み、前記背景は前記第1の色素混合物及び前記第2の色素混合物の他方を含み、相互に空間的に近接して配置され、紫外線光の下で印刷されたカラー画像が観察されるときに、紫外線光の下での前記蛍光基板に対する前記第1の色素混合物と前記第2の色素混合物との間のコントラストが、認証マークとしての反射を与える、前記画像と、を含むことを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
種々の実施例における本発明は、全体的に、基板、そして、特に、種々のプリンタ及び静電グラフィック印刷エンジンで広く利用される殆どの紙基板、に見出される蛍光の有用な操作に関連する。より詳細には、ここで与えられる教示は、蛍光すかしの少なくとも1つの実現に関連する。
【背景技術】
【0002】
文書の偽造、非合法的変更、及び/又は、複製の検知を提供する方法であって、最も好ましくは、文書のセキュリティを与え、デジタル的に生成された文書のためにも適用可能なやり方で提供する方法を持つことが望ましい。そのような解決法が、システムのオーバーヘッド要求に最小の影響しか与えず、デジタル処理及び印刷環境において最小の記憶容量の要求しか与えないことが望ましい。更に、この解決法が、印刷装置への物理的な修正無しに、そして、高いコストの特別な材料及び媒体への必要性無しに得られることが強く望まれる。
【0003】
透かしは、デジタル文書におけるセキュリティを確実にするために広く用いられる方法である。コスト、脆弱さ、堅固さ、等における異なったトレードオフを伴った多くの透かしへのアプローチが存在する。1つのアプローチは、通常の照明の下では不可視的だが、UV照明の下で暴露される、透かしを符号化するために、紫外線(UV)インク・レンダリングを用いることである。紙幣でしばしば用いられる従来的なアプローチは、特別の紫外線(UV)蛍光インクで透かしをレンダー(render)し、その後、標準UVランプを用いて、提出された文書における透かしの存在又は不存在を識別することである。このアプローチの1つの例は、Winnik他に対する特許文献1(米国特許第5,286,286号)(ここに、その全体の教示が参照として取り込まれる)に発見できる。しかし、これらのインクは、採用するにはコストが高く、従って一般的に、オフセット印刷のシナリオにおいてのみ経済的に実現可能であり、従って、長い印刷操業(long print runs)においてのみ真に利用可能である。更に、これらの材料は、コスト、入手可能性、又は、物理的/化学的特性のいずれかに起因して、しばしば、固体インク・プリンタのような標準の電子写真又は他の非衝撃印刷システムに取り込むことが困難である。これは次に、1つの例として償還可能なクーポン(redeemable coupons)のためのような、可変のデータ印刷アレンジメントにおけるそれらの使用を阻む。
【0004】
デジタル透かしによってコピー制御が提供される文書を提供するために採用される他のアプローチには、例として、Knoxに対する特許文献2(米国特許第5,734,752号)が含まれる。ここでは、デジタル的に再製可能な文書に透かし
を生成するための方法であって、
(1)文書上でのグレイ画像の再製に適した第1の確率的スクリーン・パターンを生成し、
(2)前記第1のパターンに関連する少なくとも1つの確率的スクリーン記述を導出し、
(3)前記第1の確率的スクリーンを含む文書を生成し、
(4)組み合わされた1つあるいはそれより多い確率的なスクリーンを含む第2の文書を生成することによって、
第1の及び第2の文書を、重ね合わせ関係に配置することによって、双方の文書を一緒に観察することを可能とするステップを含み、
各文書上の前記第1の確率的パターンの間の相関が、前記第1のスクリーンが使用される文書内のどこでも発生し、導出された確率的なスクリーンが発生する領域では相関が発生せず、その中に配置された、導出された確率的スクリーンを使用している画像が可視的になる、
観察されたときに実質的に不可視的な透かしを生成するための方法が説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,286,286号公報
【特許文献2】米国特許第5,734,752号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の実施例には、
光学的増白剤(brightening agent)を含む基板、
前記基板の上(upon)に画像を生成するための前記基板の上(upon)の色素層(colorant layer)、
を備える蛍光マーク・インジケータ(indicator)が開示される。
色素層は、その特性として、基板蛍光を高抑圧する性質、及び、通常の照明下での紙基板に対する低コントラストの性質を持ち、これによって、適切に紫外線光源に暴露された、結果として得られる基板画像は、蛍光マークとしてはっきりわかる、認識可能なパターンを生じることになる。
【0007】
本願の実施例には更に、
光学的増白剤を含む紙基板、及び、
前記紙基板の上に画像として印刷された第1の色素混合物、
比較的高い、基板の蛍光を抑圧する性質を与える第1の色素混合物、
を備える蛍光マーク・インジケータが開示される。
【0008】
このマーク・インジケータは、
実質的に、前記印刷された第1の色素混合物と空間的に近接して、前記紙基板の上の画像として印刷された第2の色素混合物であって、当該第2の色素混合物が、比較的低い、基板の蛍光を抑圧する性質、及び、前記第1の色素混合物に対する低コントラストの性質を与えるものであり、それにより、適切に紫外線光源に暴露された、結果として得られる色素パターン化された紙基板が、蛍光マークとしてはっきりわかる、識別可能な画像を生じるものである、
を更に備える。
【0009】
本願の実施例には、更に、
光学的増白剤を含む紙基板を備える蛍光マークを生成するためのシステム、及びデジタル・カラー印刷システムが開示される。
【0010】
デジタル・カラー印刷システムは更に、
紫外線光の下で基板蛍光を強く吸収する性質を呈する少なくとも1つの第1の色素混合物、及び、
紫外線光の下で基板蛍光をあまり吸収しない性質、及び、少なくとも1つの第1の色素混合物と比較した場合に、通常の照明の下で低コントラストの性質を呈する少なくとも1つの第2の色素混合物、
を備える。
【0011】
本システムは更に、デジタル・カラー印刷システムで紙基板の上に印刷されたカラー画像であって、当該カラー画像が、互いに空間的に近接して配置された少なくとも前記第1の色素混合物、及び、第2の色素混合物を含むものであり、印刷されたカラー画像が、紫外線光の下で観察されるときに、少なくとも2つの色素パターンの当該空間的配置が蛍光マークを暴露するもの、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】基板及びその上のパッチ(patch)からの、結果としての観察可能な光を概略的に示す。
【
図2】固体の(solid)黄色の色素、蛍光基板、及び、拡散反射鏡に対する、波長の関数としての、正規化された発光及び反射のグラフを示す。
【
図3】例示的な英数字文字のレンダリングに適用された際の、本願に示される原理的教示の説明を与える。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本願の開示の全体的な理解のために、図面への参照が為される。図面中においては、同一の要素を指定するために類似の参照番号が使用される。本願の開示の説明において、説明中で以下の用語が用いられている。
【0014】
用語「データ」は、ここでは、情報を示すか、又は、情報を含む、物理的信号を意味する。自然の光(physical light)のパターン、又は、当該自然の光を表わすデータの集合としての「画像」は、文字、言葉、及び、テキスト、並びに、グラフィックスのような他の特徴を含み得る。「デジタル画像」は、その意味が広がって、デジタルデータの集合によって表わされる画像を意味する。画像は、「セグメント」に分割され得る。この「セグメント」の各々は、それ自身、画像である。画像のセグメントは、最大で全体の画像であり、当該全体の画像を含む、如何なるサイズでもあり得る。ここで使用される用語「画像オブジェクト」、又は「オブジェクト」は、当該技術分野で、一般的に、用語「セグメント」と均等であると考慮されていると信じられ、ここでは相互交換可能に採用される。1つの用語又は他の用語が、他の用語より狭い、又は広いと思われる場合には、ここに提供される教示、及び、添付の請求項は、より広く判断される定義的な用語に向けられる(用語が、請求項自体の中でそれとは反対の意義に特別に限定される場合を除いて)。
【0015】
自然な光を表わすデータからなるデジタル画像において、データの各要素は、「ピクセル」と呼ばれ得る。これは、本技術分野における一般的な用法であり、画の要素を意味する。各ピクセルは、位置及び値を持つ。各ピクセル値は、画像の「2進形式」におけるビット、画像の「グレイ・スケール形式」におけるグレイ・スケール値、又は、画像の「カラー座標の形式」におけるカラー空間座標の組であり、2進の形式、グレイ・スケールの形式、及び、カラー座標の形式のそれぞれは、画像を定義する2次元配列である。オペレーションが、画像の一部に関連するデータのアイテムにおいて作動するときに、オペレーションは「画像処理」を実行する。「コントラスト」は、アイテム(items)、データ・ポイント、等の間の視覚的差異を表わすために用いられる。それは、カラー差、又は、輝度差、又は、その双方として測定され得る。デジタル印刷システムは、画像データを受容し、その画像データを、基板の上にレンダリングするために適した装置アレンジメントである。
【0016】
以下の説明を明確にするという目的のために、以下の用語の定義がここに与えられる:
色素(Colorant):基礎的減色(fundamental subtractive)C、M、Y、K、プライマリ(primaries)、(シアン、マゼンタ、黄色、及び黒)の1つ。これは、液体インク、固体インク、染料、又は静電複写トナー、としての調合(formulation)で実現され得る。
色素混合物(Colorant mixture):C、M、Y、K色素の特定の組合せ。
蛍光マーク:通常の光の下で比較的解読できないが、なお、UV光の下では解読可能であるという性質を持つ、画像に埋め込まれた透かし。
【0017】
セキュリティ・マークとして、特に、偽造回避のための技術として採用された紫外線光源との組合せにおける蛍光材料インクの利用に関して、印刷業界における、確立された理解が存在する。例えば、Berlerに対する米国特許第3,611,430号、Wachtelに対する第4,186,020号、及び、Liu他に対する第5,256,192号、を参照頂きたい(これらのそれぞれの全体が、その教示について、ここに参照によって取り込まれる)。しかし、同じ利点を与える一方、特にデジタル印刷環境においてより少ない複雑さとコストしか持たず、更に、広く用いられる消耗品のみを用いるような技術へのアプローチに対する、長年に亘るニーズが残る。以下においては、紫外線光の下で観察可能な明確な画像をレンダー(render)するために、如何にして、紙基板に発見される蛍光特性が、その上に与えられるトナーによって適切にマスクされ得る一方、それにも関わらず、通常の照明の下での観察者の注意の喚起を逃れ得るかに関する教示が与えられる。
【0018】
図1は、如何にして、観察者10の肉眼が、裸の紙基板20の反射特性、対、同じ基板20の上に配置された適切に選択された色素又は色素混合物30のパッチ25の反射特性に応答するかを示す。破線の矢印40として示される記号「I」は、光源50から発せられる入射光を表わす。破線の矢印60として示される記号「R」は、通常の反射を表わす一方、実線の矢印70として示される記号「F」は、光源50からの入射光のUV成分によって惹起された、基板20から放射された蛍光を表わす。
【0019】
図1から分かるように、入射光40は、それが、基板20の開放された(open)領域に当たるときに、通常の光反射と放射された蛍光の双方の量(amounts)を与える。しかし、入射光40が、適切に選択された
、配置された色素混合物30のパッチ25に当たるときに、選択された色素又は色素混合物に依存して、通常の反射60の場合に比して、顕著に、より少なく放射された蛍光70が存在し得る。顕著に、より少なく放射された蛍光を与える、適切に選択された色素30の1つの例は、静電複写、インク・ジェット、及び、ワックス(wax)ベースの印刷装置で採用されるような、黄色のトナーである。しかし、その替わりに、基板20の放射された蛍光を左程強く抑圧しないものをレンダーするために、他の色素又は色素混合物、例えば、シアン又はマゼンタ色素のようなもの、が選択され得る。
【0020】
図2は、光波長.対.正規化された発光/反射のグラフを与える。このスペクトラム・データは、一般的な基板を、純粋なUV光で照射された光ブースに配置し、反射された放射(radiance)を、Photoresearch PR705分光放射計で測定することによって得られた。参考として、本図は、非蛍光の硫酸バリウム拡散反射器(non-fluorescent barium-sulfate diffuse reflector)からのスペクトラル放射をも含
む。蛍光スペクトラムが、そのエネルギーの殆どを、より短い(又は「青の」)波長に有することが明らかにわかる。
図2から理解できるように、(ここでは、実線のラインによって表わされる)蛍光基板の放射を調べることによって、一般的な白基板20の正規化された放射が、約436ナノメータにピークを持つことが理解できる。OBA(光増白剤:optical brightening agents)は、白い紙の製造において、紙をより白くするために広く採用され、紙の「白さ」又は「明るさ」に対応する量として発見される。例えば、Stricklerに対する米国特許第5,371,126号、及び、Burkhardtに対する米国特許第6,773,549号を参照頂きたい(これらの文献はその教示全体が、ここに参照によって取り込まれる)。実際問題として、紙は現在、しばしば、その光沢の数値的な表示でマーケティングされている。現実的に、全てのゼログラフィック基板は、いくらかのOBAsの量を含む。実際、他の色付きの紙基板が、類似の特性であるが異なった量のOBAsを呈するものとして見出されたことが理解されるべきである。特に黄色の紙は、経験的に、多くの白い紙の基板に匹敵するものとして見出されてきた。
【0021】
蛍光基板との差別化において、(
図2の破線によって示される)固体の黄色の色素は、約492ナノメータ以下の範囲において、紙基板で蛍光を発する光の、非常に低い放射/反射を与える。要するに、蛍光を発する基板の上に配置された黄色の色素は、それが配置されたところにおいて、その基板の蛍光の発生をマスクする。参照ポイントとして、拡散反射器に対する応答(
図2において、破線で示される)に留意頂きたい。上述のように、他の色素に対する応答は、黄色の色素とは異なる。UVマスキング及び知覚される相対輝度特性についてのC,M,Y,及びK色素の概略の比較的品質の列挙が、以下の表に示される。
【0023】
既に注記し説明した教示は適切に採用されると、ここに説明されるように、汎用の消耗品だけを用いるUVベースの透かし技術を提供する。本技術は、以下の観察に基づく:
1)デジタル印刷で使用される汎用の基板は、蛍光を引き起こす光学的光沢剤(brightener)を含む。
2)標準の色素は、UVによって誘引される放射(emission)の有効なブロッカ(blocker)として作動し、黄色の色素を伴うと、通常、最も強い阻止剤(inhibitor)となる。
3)黄色の色素は、UVによって誘引される放射の強い阻止剤であることに加えて、通常の照明の下での非常に低い輝度コントラストをも呈する。
これは、黄色が可視スペクトラムの領域で吸収し、青が、知覚される輝度に大きくは貢献しないからである。
【0024】
ここに教示される本技術は、類似のR(通常の反射)を生み出す色素パターンを発見することによって旨く働き、それ故、通常の光の下で互いに識別することが困難である一方、非常に異なるF(放射された蛍光)を提供し、それ故、UV光の下では互いに高いコントラストを表示する。1つの例示的実施例において、これは、黄色の色素を、一般的な白蛍光基板の上に印刷された文書に埋め込まれる情報の理想的な候補にする。通常の照明の下で観察されたときに、黄色の透かしは、観察することが不可能でないまでも、観察が困難である、UV光の下で観察されるときに、黄色色素が、蛍光基板に対して高いコントラストを呈するという事実によって、透かしは暴露される。黄色色素が黄色の紙基板の上に印刷されるときに、この効果は更に大きい。本技術は、汎用の基板及び色素だけを用いるので、短期の/カスタマイズドされた、デジタル印刷環境において、セキュリティ・マーキングを保証するためのコスト効率的な方法である。更に、UV光源の広いバラエティが存在し、それらの多くは、安価で持ち運び可能であることによって、フィールドでの蛍光マークの検知を、容易かつ便利にする。
【0025】
ここに提案される技術が、特別なインクの付加によって蛍光放射が加えられる替わりに、基板からの蛍光放射が、黄色又はいくつかの他の色素又は色素混合物を用いて減算又は抑圧される点において、従来的なオフセット・アプローチから区別されることに留意いただきたい。その意味において、ここに説明される本技術は、現存する方法の論理的な「逆(inverse)」である。つまり、蛍光材料を文書の部分に加えるのではなく
むしろ、基板蛍光効果の選択的な抑圧又はマスキングが、替わりに採用されるのである。
【0026】
黄色の色素によって誘引されたコントラストを定量化するために、固体黄色.対.XEROX(登録商標)DocuColor12
TMプリンタで使用される単純な(plain)基板についての、いくつかの輝度測定が為された。2つの基板が選択された:基板1は、大量の光学増白剤(brightener)を含み、基板2は、非常に少ない光学増白剤を含む。輝度測定は、3つの輝度の下で為された:i)D50、ii)UV、iii)青フィルタを伴ったD50。後者は、黄色色素内の情報を抽出するために青チャンネルを用いる既知の実務を表現することが意図された。輝度比Ywhite/Yyellowは、黄色の色素によって呈されるコントラスト又はダイナミック・レンジの単純な測定として使用された。データは、以下のテーブルに要約されている。
【0028】
このデータ
からいくつかの観察が為され得る:
1)蛍光基板の上の黄色から得られたコントラストは、昼光からUV照明にスイッチするときに、ある数値からその10倍までの範囲で(order of magnitude)増加する。これは、黄色が、蛍光基板の上で有効な透かしとして振舞い、UV光が、「透かしキー」として使用され得ることを示唆する。
2)UV照明だけの下で、結果としてもたらされるコントラストにおいて基板蛍光は重要な役割を果たす。これは、テーブルの第2行で証明される。従って、基板は、提案された透かし工程における貢献者(contributor)である。即ち、もし、ユーザが非合法的に、間違ったタイプの基板の上に文書を再製するならば、透かしの可視性が影響され、そして、3)UVの下で蛍光基板によって実現されたコントラストは、標準青フィルタで実現されたものの約2倍である。これは、蛍光ベースのアプローチが、可視スペクトラムからのみのデータを用いる標準のアプローチに比して、遥かに、より有効であり得ることを示す。
【0029】
図3は、上に列挙された原理的教示のアプリケーションのための表現を与える。
図3において、色素混合−
2が選択され、パッチ(patch)領域33(この例では、英数字の「
0」に配列される)に与えられる。更に、色素混合−
1が選択され、ここでは、実質的に、空間的にパッチ領域33に近接して配列されて
いるパッチ領域32に色素混合−1が与えられ、パッチ領域33の周りの背景に影響を
与える。双方の色素混合−1と混合−2は、それぞれ、適切に選択された色素又は色素混合物31及び3
0を含む。
【0030】
各色素混合物3
0又は31は、単一のCMYK色素か、CMYK色素の何らかの混合物かのいずれかであり得る。しかし、それらは、双方とも、同じ同一の単一の色素又は色素混合物を含むものではない。実際、例えば、1つの実施例において、色素混合物31は、色素混合物30のために選択されるものに比して、より高い蛍光吸収を与えるように選択されることになる。しかし、好ましいアレンジメントにおいて、色素混合物30及び31は、互いを、通常の光の下における、それらの平均カラー又は輝度に近く一致させるために最も最適に選択される一方、同時に、それらの平均蛍光吸収において差別化させることになる。
【0031】
例えば、約50%のグレイスケールの色素混合物が、黒色素だけのハーフトーンと共に実現され得る。これは、次に、類似の、約50%のグレイスケールのグレイ色素混合物を生み出すために十分なシアンとマゼンタと混合された多量の黄色を含む色素混合物に対して一致される。しかし、所定の高いコントラストの黄色色素の分量を伴うと、この一致された混合物は、より高いUVの吸収、又は、天然の基板蛍光のより高い抑圧を与えることになる。従って、それ故、通常の観察証明の下では本当に殆ど同一の外観を持つ一方、それにも関わらず、UV証明の下では全く異なって見える、2つの色素混合物が実現され得る。
【0032】
更に、当業者によって理解されるであろうように、これは、通常の観察証明の下での2つの異なった色素混合物からの同じカラー応答を再製するための意図的な 条件等色(metamerism)の開発としてアプローチされ得る。混合物は、それらの平均蛍光吸収において十分に変化させるために最適化され、一方では、通常の室内照明の下では、近接した、条件等色的一致である。
【0033】
従って、上において、通常の光の下で比較的解読困難であるが、一方、UV光の下で解読可能である特性を持つ画像に埋め込まれる透かしが議論され、与えられた。この蛍光マークは、光学的増白剤を含む基板、及び、当該基板の上に画像として印刷された第1の色素混合物、を含む。色素混合物は、その特性として、紫外線光を高く吸収する性質、及び、低い紫外線光の吸収を呈する紙基板又は第2の色素混合物に対して、通常の照明の下での低い輝度コントラストの性質を持ち、第1の色素混合物に空間的に近接して印刷されることによって、結果として得られる、適切に紫外線源に暴露された印刷基板が、蛍光マークとして明らかな識別可能なパターンを生じるようにされる。
【符号の説明】
【0034】
10 観察者
20 紙基板
25 パッチ
30 色素又は色素混合物
31 色素又は色素混合物
32 色素又は色素混合物
33 パッチ(patch)領域
40 破線の矢印
50 光源
60 破線の矢印
70 実線の矢印