【実施例1】
【0018】
本発明の薬品類収納装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、(a)が天板等の上部を外して庫部30を露出させた薬品類収納装置10の平面図、(b)が薬品類収納装置10の全体正面図、(c)が底板等の下部を外して庫部30を露出させた薬品類収納装置10の底面図である。
【0019】
また、
図2は、一個分の収納容器20とそれに対応する部分の庫部30とを示し、(a)が側面図、(b)が底面図である。さらに、
図3は、偏心カム50の構造を示し、(a)が偏心カム本体の底面図、(b)がモータ40の回転軸41に取り付けられた偏心カムの底面図である。さらに、
図4は、ロック機構60の構造を示し、(a)がロック機構の主要部材の底面図、(b)が庫部30の内部の支持板33の下面に取り付けられたロック機構の底面図である。
【0020】
薬品類収納装置10は(
図1参照)、筐体のうち手を掛けやすい中央の大部分が庫部30になっており、その上方に本例では制御装置80などの電装部が内蔵されている。
庫部30は、格子状に区切られて、多段多列(図では17段6列)の引出枠を成しており、引出枠それぞれの内面が摩擦抵抗の小さい円滑面に仕上げられているので、それぞれの収納容器20を個々に前方へ引出可能な状態さらには押出や押込も可能な状態で縦横に並べて保持するものとなっている。引出枠には一つずつ後述の開駆動機構40+50とロック機構60も付設されているが、それらは、筐体内で収納容器20の後方に配置され、庫部30の非視認部32の支持板33に装着されているので、正面からは見えない。庫部30の前面のうち収納容器20それぞれに対応した視認部31(図では右隣の露出部分)には、後述する導光部材90の出射端91が露出していて視認可能になっている。後述するロック一括解除機構70〜74の操作部材70も筐体前面の視認部に配されている。
【0021】
収納容器20は(
図1,
図2参照)、薬品類を収容して引出させるよう奥行きの長い上面解放の箱状体であり、透明な又は不透明なプラスチック等で安価に量産しうるものである。収納容器20の前面には、手動で引き出すときに指先を掛ける把手22が突出形成されており、収納容器20の後端には、後述するロック機構60の係合部63に対応した係合部21が形成されている。この例では、収納容器20の後面の凹部に平板状の係合部21の一端が突き出ている構造を図示したが、係合部21は、係合部63との協動により選択的に係合部63と係合したり離れたりできる構造のものであれば良く、例えば、アングル材や,キノコ状部材,カギ状部材などでも良く、植設や突設されたものでも良い。図示は割愛したが、収納容器20が奥まで完全に押し込まれた閉状態にあるのか或いは多少なりとも前方へ引き出された開状態にあるのかを検出する収納確認センサも、収納容器20それぞれに対応させて、庫部30の支持板33等に配設されている。
【0022】
開駆動機構40+50は(
図1,
図2参照)、収納容器20の後方の支持板33の上面に取り付けられた市販の扁平タイプの電動モータ40と、モータ40の回転軸41のうち支持板33を貫通して支持板33の下方へ突き出した部分に支持板33の下方で取着された偏心カム50と、図示しないホール素子や或いはプッシュスイッチ等からなる原点センサとを具えている。偏心カム50の本体部には(
図3(a)参照)、モータ40の回転軸41を嵌合させる回転中心孔51が貫通形成されており、偏心カム50の本体部は、回転中心孔51を基準とした半径が小径部52から中径部53さらには大径部54へと漸増変化するものとなっている。そして、開駆動機構40+50は、偏心カム50が原点位置に停止しているときには(
図2(b),
図3(a)参照)、偏心カム50の小径部52を収納容器20に向けていて、収納容器20を閉状態まで十分に押し込むのを許容するが、その原点停止状態からモータ40の回転軸41が回転すると(
図3(b)参照)、それに随伴して偏心カム50が回転し、偏心カム50の中径部53さらには大径部54が前方の収納容器20の後端面を後押して収納容器20を前進させるようになっている。
【0023】
ロック機構60の本体部には(
図2(b),
図4参照)、収納容器20の後方の支持板33に植設された支軸66を挿通させる滑節孔61が形成されており、ロック機構60は支軸66によって回転自在に支持されるようになっている。また、ロック機構60の本体部は、滑節孔61から収納容器20に向けて第1従動部62が延びており、その先端に係合部63が形成されている。この例では、鈎状の係合部63を図示したが、係合部63は、第1従動部62の揺動に応じて、収納容器20の係合部21と係合したり離れたりできる構造のものであれば他の形状でも良く、例えば、フック状や,ループ状などであっても良い。さらに、滑節孔61から係合部63に至る部分部材として、上述した第1従動部62に加えて、それに両端部が連結された第2従動部64も設けられており、これらの従動部62,64を連ねた形状は比較的剛で変形の少ない三角形状・台形状になっている。一方、ロック機構60の本体部のうち滑節孔61の近傍から延びて先端が連結されることなく自由になっている弾性変形部65は、容易に弾性変形する部分となっている。
【0024】
このようなロック機構60の本体部は、支持板33への装着に際して、回転中心孔51の所が支軸66によって軸支されるとともに、やはり支持板33に植設された留具67によって弾性変形部65の先端近傍部分が揺動を阻止される状態で、支持板33に取り付けられる(
図2(b)参照)。そのため、第1従動部62と第2従動部64とのうち何れか一方または双方が留具67に向けて押されると、弾性変形部65が弾性変形して曲がることにより、従動部62,64及び係合部63が揺動して留具67に近づき(
図4(b)参照)、その押す作用がなくなると、弾性変形部65の弾撥力によって、係合部63等が元の位置に戻るものとなっている(
図2(b),
図4(a)参照)。
【0025】
また(
図2(b)参照)、偏心カム50が原点位置に停止しているとき、収納容器20は上述したように偏心カム50の小径部52と向き合っているのに対し、ロック機構60は第1従動部62を偏心カム50の中径部53と対峙させており、偏心カム50が原点停止状態から回転すると、収納容器20より先に、ロック機構60の第1従動部62が偏心カム50の大径部54によって留具67の方へ押されるようになっている。そのため、ロック機構60は、配設先の収納容器20に対応する配設先の偏心カム50が配設先の収納容器20の押込を許容する状態で停止しているときには、配設先の収納容器20に係合して配設先の収納容器20の前方引出を阻止するが、配設先の偏心カム50が回転動作を行うと、配設先の偏心カム50が配設先の収納容器20を後押しする前に、配設先の偏心カム50に押されて弾性変形することにより配設先の収納容器20から外れて、配設先の収納容器20の前方引出を許容するものとなっている。
【0026】
ロック一括解除機構70〜74は(
図1参照)、筐体前面のうち手の届く所に配置されていて手動操作にて所定角度以内で双方向に軸回転する部分を露出させている操作部材70と、操作部材70から筐体内部に延びていて操作部材70の軸回転運動を伝える伝動部材71と、横に並んだ多列の収納容器20の総てに及ぶ横長の部材を主体としていて伝動部材71の軸回転運動を往復運動に変換する伝動部材72と、多列の収納容器20の各列毎に設けられていて何れも伝動部材72の往復運動を揺動に変換する多数の伝動部材73と、やはり多列の収納容器20の各列毎に設けられた多数の伝動部材74とを具えたものである。伝動部材74は(
図2(b)参照)、何れも、縦に並んだ多段の収納容器20の総てに及ぶ縦長の部材を主体としたものであって、伝動部材73の揺動を所定角度以内の双方向軸回転運動に変換するようになっている。
【0027】
そのため、一カ所の操作部材70を手動で軸回転させると、それに応じて総ての伝動部材74が軸回転する。また、伝動部材74は、各段の総ての収納容器20の後方で各ロック機構60の第1従動部62と第2従動部64との間隙に遊挿されていて、定常状態である操作部材70の非操作状態では、ロック機構60と何ら干渉しないが、手動でロックを一括解除するために操作部材70が回転操作されたときには、軸回転して揺動部でロック機構60の第2従動部64を留具67の方へ押すようになっている。上述したように、第2従動部64を押されたロック機構60では、弾性変形部65が弾性変形させられて、第1従動部62と係合部63が揺動するため、係合部63が収納容器20の係合部21から外れる。このような伝動部材71〜74は、操作部材70の集中操作に応じて、総ての収納容器20を一括で前方引出許容状態にするものとなっている。なお、この例の操作部材70には、権限のない者の操作を防止するために鍵がかけられるようになっている。
【0028】
導光部材90は、収納容器20それぞれに対応して設けられており、何れも、上述したように出射端91が庫部30の視認部31に配置されているが(
図1(b)参照)、導光に適した透明な細長い部材からなり(
図2参照)、出射端91以外すなわち導光部分と入射端92は庫部30の内部の非視認部32に収まっている。導光部材90は、例えばプラスチックから射出成型にて安価に量産することができ、庫部30のうち収納容器20の引出枠に装着されて、収納容器20に沿って前後に延び、入射端92が後方の電子回路基板45の所に来る。電子回路基板45も、収納容器20それぞれに対応して設けられ、支持板33の脇に取り付けられて、庫部30の内部の非視認部32のうち後方部分に配置されたものとなっている。それぞれの電子回路基板45には、モータ駆動回路と検出回路と発光駆動回路と発光部材46,47が搭載されている。
【0029】
モータ駆動回路は制御装置80の制御に従ってモータ40を作動させる電子回路(電気回路)であり、検出回路は偏心カム50の回転状態や収納容器20の押込状態などを検出して制御装置80に信号送出する電子回路であり、発光駆動回路は制御装置80の制御に従って発光部材46,47を発光させる電子回路である。この例では、緑色のLEDからなる発光部材46に加えて、赤色のLEDからなる発光部材47が設けられている。発光部材46,47が近接配置されるとともに、その近傍に導光部材90の入射端92が設置されているので、発光部材46の緑色光も発光部材47の赤色光も一本の導光部材90によって庫部30の視認部31へ送られるようになっているうえ、電子回路基板45や導光部材90の交換時に配線の遣り直しが不要なものとなっている。
【0030】
この実施例1の薬品類収納装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図5〜
図7は、収納容器20の自動押出の動作を時系列で示しており、(a),(b)何れも収納容器20一個分に対応する機構部分の底面図である。
また、
図8は、収納容器20の手動押込の動作を時系列で示しており、(a),(b)何れも収納容器一個分に対応する機構部分の底面図である。
さらに、
図9は、収納容器20の一括ロック解除と手動引出の動作を示しており、(a),(b)何れも収納容器20一個分に対応する機構部分の底面図である。
【0031】
使用に先立って、それぞれの収納容器20には医薬品や医療材料などの薬品類が種類毎に分類して収容される。医薬品としては(特許文献2参照)、PTP包装剤やアンプル更には溶解剤などが典型例であり、医療材料としては骨補綴材や手術用具などが挙げられる。このような薬品類を分類収納した収納容器20は、何れも、庫部30の各引出枠に押し込み挿入され、その位置が手動操作等にて制御装置80に入力され薬品マスターファイル等に記憶される。これで準備が調うが、この段階では(
図1,
図5(a)参照)、収納容器20が総て押し込まれて奥まで後退した閉状態になっていて、収納容器20の係合部21とロック機構60の係合部63とが係わり合っているので、収納容器20はどれもロックされて引き出せない状態になっている。また、発光部材46,47が何れも消灯しているので、導光部材90の出射端91は光らないでスタンバイ状態を示す。
【0032】
その状態で、制御装置80に処方箋データや調剤指示データが図示しない通信や入力操作にて届けられると、その中から薬品コードが抽出され、それが薬品類払出情報とされる。さらに、その薬品類払出情報に基づき、制御装置80によって、薬品マスターファイルの検索等が行われて、取出対象の薬品類を収納している収納容器20が選択されるとともに、それに対応する開駆動機構40+50と発光部材46,47が作動させられる。何らかの催促条件や異常状態が検知されるまでは通常動作として、モータ40の回転軸41ひいては偏心カム50が一回転するとともに、発光部材46が点灯するので、庫部30の視認部31で該当する視認部31が緑色に光るとともに、対象の収納容器20が偏心カム50によって前方へ押し出されて開く。
【0033】
選択されて取出対象となった収納容器20の自動開動作を詳述すると、初期状態では(
図5(a)参照)、偏心カム50が収納容器20もロック機構60も押しておらず、両係合部21,63が即ち収納容器20の係合部21とロック機構60の係合部63とが係合していて収納容器20が引き出せない状態で閉まっているが、偏心カム50が回転し始めると早々にロック機構60の第1従動部62に当接し(
図5(b)参照)、回転によって偏心カム50が収納容器20に当接するまでには(
図6(a)参照)、偏心カム50がロック機構60の第1従動部62ひいては係合部63を十分に押し動かすので、係合部63が係合部21から外れて両係合部21,63のロックが解除される。
【0034】
さらに偏心カム50の回転に連れて、収納容器20が偏心カム50の中径部53に後押しされて前進を始め(
図6(b)参照)、偏心カム50の大径部54に後押しされて収納容器20がもっと前進し(
図7(a)参照)、偏心カム50が一回転を終えて原点位置に停止するまでには(
図7(b)参照)、偏心カム50の大径部54の過ぎ去ったロック機構60が弾性変形部65の弾撥力によって元に戻るが、収納容器20が前進済みなので、両係合部21,63が係合することはなく、収納容器20がロックされないので手動で好きなだけ引き出すことができる。なお、偏心カム50の回転動作や収納容器20の前進に不具合の生じたことが検出されたときには、発光部材46が消灯して発光部材47が点灯するので、庫部30の視認部31で該当する視認部31が赤色に光るため、動作不良のエラー状態であることを視認することができる。正常動作時は緑色のままである。
【0035】
こうして、取出対象の収納容器20が一目瞭然になるとともに口を開けるので、調剤者は、その開口から収納容器20の前板に指を掛けて或いは把手22を摘んで収納容器20を作業しやすいところまで引き出す。それから、所望の薬品類を取り出し、その後、やはり手で押して収納容器20を後退させる。収納容器20が押し込まれて後退すると(
図8(a)参照)、途中で両係合部21,63が干渉するが、この例では係合部63が一時的に逃げることにより、収納容器20の後退が途中で妨げられることなく継続され、収納容器20が完全に奥まで押し込まれると(
図8(b)参照)、両係合部21,63が再び係合して、収納容器20がロックされて引き出せない状態に戻る。
【0036】
そして、その状態の検出に応じて、制御装置80によって払出作業の履歴データが蓄積されるとともに、発光部材46が消灯して導光部材90の出射端91から光が消えるので、スタンバイ状態になったことが分かる。
なお、前進して開いた取出対象の収納容器20を戻さないでおくと、導光部材90の出射端91の発光状態が、所定時間の経過後に緑色の点灯から緑色の点滅に変わって調剤者に対して薬品類の取出が催促され、さらに時間が経過してタイムアップするとエラー状態と判別されて緑色の点滅から赤色の点滅に変わる。
【0037】
また、停電等によって制御装置80やモータ40が動作不能になった場合、それでも緊急に薬品類を取り揃えなければならないときには、収納容器20の選択と引出の作業も人手で行うが、その際には、それに先だち、やはり人手で、鍵を用いて操作部材70の解錠を行ってから、操作部材70を手動操作してロック解除側へ回転させる。そうすると、伝動部材71〜73の伝動により、各列の伝動部材74が一斉に軸回転してロック機構60の第2従動部64を弾性変形部65及び留具67の方へ押すので(
図9(a)参照)、それに随伴してロック機構60の係合部63が揺動し、それによって両係合部21,63のロックが解除され、総ての収納容器20が引出可能な状態になる。そのため、調剤者は、所望の収納容器20を選択して前方へ引き出し(
図9(b)参照)、その中から必要な薬品類を取り出すことができる。薬品類を取り揃えた後は、操作部材70をロック側へ回転させてから操作部材70に鍵をかけるとともに、開けた収納容器20を総て押し戻す。
【0038】
[その他]
上記実施例では、収納容器20の形状やサイズが総て同じであったが、異なっていてもいても良い。操作部材70及び伝動部材71〜74による一括ロック解除が可能であれば、水平と垂直の縦横配置である必要もない。
上記実施例では、ロック機構60が一回転して原点に戻るようになっていたが、これも必須でなく、例えば軸対象形を採用して半回転毎に原点に戻るようにしても良い。
【0039】
上記実施例では、薬品類収納装置10として床置式・固定式のものを図示したが、薬品類収納装置10は、キャスターの付いた手押カートや、レールに載った搬送式・移動式のものであっても良い。
上記実施例では、多数の収納容器20のうち薬品類払出情報に基づく複数の収納容器20が一斉に押し出されるようになっていたが、各収納容器20に付されたバーコードの読取などに応じて個々に押し出されるようにしても良い。