(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5862980
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】温度調節される電池
(51)【国際特許分類】
H01M 10/617 20140101AFI20160202BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20160202BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20160202BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20160202BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20160202BHJP
H01M 10/6557 20140101ALI20160202BHJP
H01M 2/10 20060101ALI20160202BHJP
B60L 11/18 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
H01M10/617
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6555
H01M10/6556
H01M10/6557
H01M2/10 S
B60L11/18 Z
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-535523(P2013-535523)
(86)(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公表番号】特表2014-500580(P2014-500580A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】IB2011002149
(87)【国際公開番号】WO2012056276
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2014年9月4日
(31)【優先権主張番号】01814/10
(32)【優先日】2010年10月29日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】515239892
【氏名又は名称】オブリスト テクノロジーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】特許業務法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オプリスト,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ブッシュ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】オプリスト,オリヴァー
【審査官】
小宮 慎司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−015957(JP,A)
【文献】
特開2004−031364(JP,A)
【文献】
特開2009−134901(JP,A)
【文献】
特開2008−130489(JP,A)
【文献】
特開2003−346924(JP,A)
【文献】
特開2009−211829(JP,A)
【文献】
特開2001−060466(JP,A)
【文献】
特開2008−265470(JP,A)
【文献】
特開2008−251304(JP,A)
【文献】
特開2009−170369(JP,A)
【文献】
特開2006−253149(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0136406(US,A1)
【文献】
米国特許第06304444(US,B1)
【文献】
韓国公開特許第10−2005−0069075(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/52 − 10/667
H01M 2/10
B60L 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度調節される電池において、特に車両を駆動するためのエネルギー源としての電池であり、多数の互いに電気的に接続され、かつ互いに対して平行に組み合わせられた平板状電池セル(17)を有し、前記電池セル間に配置され、かつ断熱された電池筐体(3)内の複数の電池室(9〜12)に分配されたスペーサ(18)とともに電池セルパック(16)を形成する電池において、前記電池セル(17)と接触する易流動性の第1の熱媒が、前記電池筐体(3)に封入されており、前記第1の熱媒は、前記電池筐体(3)に封入された熱伝導エリア(22、23)によって流路系に封入されている第2の熱媒のうちの少なくとも1つと熱交換を行い、前記第2の熱媒は、温度調節された熱交換を前記電池外部で行うために前記電池から導出された、少なくとも1つの供給経路および排出経路を有し、前記電池セル(17)において強制対流を行うために少なくとも1つのポンプ(21)が、前記電池筐体内に封入されており、前記ポンプは、流入側および流出側で前記第1の熱媒と流体接続を形成していることを特徴とし、電池セルパック(16)間に設けられた熱交換部スペース(7)を貫通して延在する前記電池外部で、温度調節された熱交換を行うための供給経路および排出経路を有する前記流路系が、垂直配向されており、前記第1の熱媒が充填されて、前記電池セルパック(16)のスペースと連通しており、前記スペースは、前記電池の基部の空隙によって前記電池セル間に設けられていることを特徴とし、強制対流を行うために、複数の小型ポンプ(21)が、前記熱交換部スペース(7)に配置され、従って前記熱交換部スペース(7)の上方区域内の前記電池セル(17)の間に配置されることを特徴とし、圧縮ガスが充填された圧力ポケット(19)が、電池セル(17)のそれぞれのパック(16)に配置され、その結果、当該電池室(9〜12)に配置された前記電池セル(17)が、前記ガスの圧力下で圧着固定の態様で前記電池室に保持されていることを特徴とし、前記電池セル(17)間の中間室が、前記電池セルと熱伝導が行われるように接触している金属製のスペーサ(18)により形成され、前記スペーサが垂直に延びる異形のリブを有する金属製シート(18)で構成されて、その結果、前記異形のリブは、近傍の電池セル(17)の面と熱伝導が行われるように接触していることを特徴とする、温度調節される電池。
【請求項2】
請求項1に記載の電池において、前記電池が、前記電池を密封するように嵌合することができるカバー(5)を有し、前記圧力ポケット(19)が、気密密閉の態様で閉じることができる充填接続部材(20)を有し、その結果、前記電池セルが電池室(9〜12)に圧着固定のない態様で挿入された後に前記圧力ポケット(19)が、圧締圧力下に置かれることを特徴とする、電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度調節される電池、特に、車両を駆動するためのエネルギー源としての電池に関する。温度調節される電池は、多数の平板状電池セルを有する。多数の平板状電池セルは、互いに電気的に接続されており、互いに対して平行に組み合わせられ、前記電池セル間に配置されたスペーサを備え、断熱された電池筐体内の複数の電池室に分配され、電池セルパックを形成する。電池セルと接触している易流動性の第1の熱媒が、電池筐体に封入されており、前記第1の熱媒は、少なくとも1つの第2の熱媒と熱交換を行い、電池筐体に封入された熱伝導エリアによって流路系に封入されている。前記第2の熱媒は、少なくとも1つの供給経路および排出経路を有し、電池外部で温度調節された熱交換を行うために、電池から導出されている。少なくとも1つのポンプが、電池セルにおいて強制対流を行うために、電池筐体内に封入されている。前記ポンプは、流入側および流出側で第1の熱媒と流体接続を形成している。
【0002】
ガス状の冷却媒体が通流するこの種の電池は、独国特許出願公開第10 2009 008 222号明細書に開示されている。国際公開第2010053689号パンフレットは、それぞれの事例において、前記電池の電池セル間に冷却液を収容するスペースを形成するためのスペーサとして、波形の断面を有する板体を提供することをさらに開示している。独国特許出願公開第102008061755号明細書および独国特許出願公開第102008027293号明細書は、それぞれの事例において、電池セルを固定する目的で、電池室に挿入された2つの電池セルの間に弾性圧縮可能な中間層を配置することを提案している。前記中間層は、不織布、発泡プラスチック材料または波形の金属製のスプリングシートで構成されており、その結果、電池室の境界をなす金属製の保持壁の間に、電池セルが圧縮可能な中間層とともに圧入された後に接触圧力が生じ、前記接触圧力は、熱伝導が行われるように前記保持壁と接触を維持し、蓄電セルが充放電される際に蓄電セルの横方向の膨張を補償する。従って、蓄電セルからは、電池室の金属製の壁に沿って熱を伝導させることによってしか電池の冷却された基板に熱放散することができない。電池セルから流動可能な熱媒への熱伝導を向上させる目的で、独国特許発明第44 19 281号明細書および欧州特許出願公開第1 271 084号明細書もまた、互いに平行に延び、冷却材が通流する複数の板体を電池内に設けることを開示している。
【0003】
本発明は、導入部分で言及された型の電池、すなわち電池セルへの熱供給または電池セルからの熱放散の大幅な改善が確実であり、その結果、温度分布が改善されてさらに均一になることで電池が最適作動温度に保たれ、従ってさらに高い負荷を受けることができ、耐用寿命が長い電池を発見するという目的に基づいている。
【0004】
本発明によれば、前記目的は、請求項1に記述されている特徴に基づいて達成される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題であり、図面を参照した以下の説明において明らかされる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】
図1は、本発明による電池の内部構造の、電池の基部に対して平行な細部およびカバーを持ち上げた状態の中心部の垂直断面図を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、電池セルパックが半分だけ挿入された開口電池および、まだ部分的に欠落している基板を示す平面図である。
【
図3】
図3は、一部が切り欠けされた説明図に基づく、
図1の電池の内部を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、内部熱交換管を横断して切り取った、
図1の電池を示す縦断面である。
【
図5】
図5は、熱交換管に対して平行に切り取った、
図1の電池を示す縦断面である。
【
図6】
図6は、電池パックを形成するために組み合わせられる前の、いくつかの板状の電池の構成部材を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
電池1は、桶状の筐体3を有し、この筐体は、内部絶縁層2を有しており、挿入された封帯6を用いて、筐体と嵌合し、かつ同様に絶縁層4を有するカバー5により気密密閉の態様で閉じられている。この場合、カバー5の下に残された隙間は、電池管理システムを配置するために使用することができる。
【0007】
図示された例示的な実施形態では、電池筐体3の内部スペースは、熱交換部スペース7を形成する中心部の二重壁8、および前記二重壁から横方向に分岐した2つの水平壁によって4つの電池室9〜12に分割されている。しかしながら、別の構成、例えば電池室が1つまたは2つだけで、1枚の二重壁が横方向に配置されている構成も同様に、本発明の範囲内で可能である。
【0008】
筐体基部13は、互いに対して平行に、かつ二重壁8に対して垂直に延びる基板リブ14が異形成形されており、前記リブ上に置かれた有孔板15に嵌合している。その結果、例えば4つの電池室9〜12は各電池室間で連通し、異形成形された筐体基部13に沿った二重壁8によって形成された熱交換部スペース7と連通している。
【0009】
電池セルパック16は、電池室9〜12に挿入されており、前記電池セルパックは、平板状電池セル17と、平板状電池セル間に配置された波形のリブ断面を有する金属製シート18とのポケット状の層状配列を備える。さらに、平板状圧力ポケット19は、圧縮ガスが充填されており、電池セルのサイズに適合し、各電池セルパック16に配置されている。その結果、当該電池室9〜12に配置された電池セル17は、ガスの圧力下で圧着固定の態様で、一様に前記電池室に保持される。圧力ポケット19は、この型の電池セルパック16が電池室9〜12に挿入されてはじめて充填されるので、電池セルパック16は特に簡単な態様で嵌合することができる。この目的を達成するために、圧力ポケット19はそれぞれ、上方向に自在に突出する充填ニップル20を有しており、 気密密閉の態様で閉じることができる。
【0010】
波形の金属製シート18は、アルミニウム合金で構成され、比較的薄肉のデザインであることが好ましい。 その結果、波形の金属製シートは圧力ポケット19の圧力下で変形し、良好な熱伝導を目的とする異形のリブを介して電池セルに緊密に当接する。
【0011】
電池セル17の間に配置された金属製シート18の異形のリブは、垂直方向に延びているので、シート間の近傍の電池セルと接触して、シートの数に相当する個数の、異形成形された筐体基部13に隣接する垂直な流路を形成する。従って、電池セル17に沿って延びるこれらの流路は、中心部の二重壁により形成された熱交換部スペース7と、筐体基部13によって流体接続を形成する。
【0012】
電池セル17の面と、この流体接続により電池セルと異形成形された金属製シートとの間に内包された液体との間で、特に効果的に熱交換を行うために、 複数の小型ポンプ21が、熱交換部スペース7の上方に互いに隣り合って一列に配置されている。液体熱媒、例えばトランス油は、熱交換部スペース7から出て、上昇する熱の方向に前記小型ポンプによって、汲み上げられ、その結果、前記液体熱媒は、異形成形された筐体基部13の幅方向に引き込まれ、従って電池セル17の下方区域から引き込まれる。この場合、上方に流れる熱媒は冷却コイル22と熱交換する。冷却コイルは、熱交換部スペース7内に配置され、電池外部に設けられた熱交換部に接続している。この場合、図解説明された例示的な実施形態に従って、互いに独立して別の熱媒とともに作動する、2つのシステムの冷却コイル22、23を熱交換部スペース7に設けることができる。例として冷却水が前記システムのうちの1つを通流し、空調システムの冷却材が前記システムの他の1つを通流する。この場合、1つの冷却システムは、例えば、電池の充電中に電池セルが過熱するのを防ぐために用いることができる。その結果、両方のシステムは電池の使用中にのみ用いられることになる。