特許第5863039号(P5863039)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 川崎化成工業株式会社の特許一覧

特許58630399,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物、その製造法及びその重合物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863039
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物、その製造法及びその重合物
(51)【国際特許分類】
   C07C 69/54 20060101AFI20160202BHJP
   C08F 20/30 20060101ALI20160202BHJP
   C07C 67/14 20060101ALN20160202BHJP
【FI】
   C07C69/54 ZCSP
   C08F20/30
   !C07C67/14
【請求項の数】5
【全頁数】37
(21)【出願番号】特願2012-105418(P2012-105418)
(22)【出願日】2012年5月2日
(65)【公開番号】特開2013-234127(P2013-234127A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000199795
【氏名又は名称】川崎化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152928
【弁理士】
【氏名又は名称】草部 光司
(72)【発明者】
【氏名】沼田 繁明
(72)【発明者】
【氏名】山田 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】横山 修司
(72)【発明者】
【氏名】長澤 勇希
【審査官】 三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−169156(JP,A)
【文献】 特開2010−018746(JP,A)
【文献】 特開2007−204438(JP,A)
【文献】 特開2009−040811(JP,A)
【文献】 特開2008−001641(JP,A)
【文献】 特開2008−024694(JP,A)
【文献】 特開平06−220131(JP,A)
【文献】 特開2002−020433(JP,A)
【文献】 特開2003−064025(JP,A)
【文献】 特開平05−170702(JP,A)
【文献】 特開2010−241932(JP,A)
【文献】 特開2009−138090(JP,A)
【文献】 特開2012−251052(JP,A)
【文献】 特開2013−234128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 69/54
C08F 20/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物。
【化1】

(一般式(1)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【請求項2】
一般式(2)で示される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を(メタ)アクリロイル化することよりなる、請求項1に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の製造方法。
【化2】

(一般式(2)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【請求項3】
請求項1に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物及びラジカル重合開始剤からなる重合性組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物、当該9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物以外のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤からなる重合性組成物。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の重合性組成物を重合してなる重合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物、その製造法、及び該9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を重合してなる重合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光学分野においてガラス代替材料としてプラスチックが盛んに用いられている。例えば、ポリカーボネートやポリメチルメタクリレート等がよく知られている。これらのプラスチック材料は、軽量性、安全性、意匠性を有している反面、屈折率は無機ガラスより低いため、分厚くなりやすいという欠点がある。そこで、近年、高屈折率を有するプラスチック材料に対する要望が高くなってきている。特に、高屈折率プラスチック材料の光学用物品への進出は著しく、液晶ディスプレイ用パネル、カラーフィルター、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、TFT用のプリズムレンズシート、非球面レンズ、光ディスク、ホログラム、光ファイバー、光道波路等への検討が盛んに行われている。
【0003】
プラスチックの屈折率とその原料となるモノマーの屈折率には正の相関関係にあり、高屈折率のプラスチックを得るためにはそのプラスチックを構成するモノマーが高屈折率であることが必要である。
【0004】
モノマーの屈折率を高くする方法としては、分子構造中にハロゲン原子(フッ素を除く)や硫黄原子を導入することが既に広く知られている。例えば、ハロゲン原子の有する高い固有屈折率を利用し、ビフェニル環にハロゲン原子を導入した高屈折率重合体が報告されている(特許文献1)。しかし、ハロゲン化することによって、得られた重合体の耐光性が著しく劣化し、また、高比重であるという欠点があった。
【0005】
また、ハロゲン以外に高い固有屈折率を有する硫黄原子を有する単量体組成物も報告されている(特許文献2)。しかし、硫黄原子を有するモノマー組成物は高い屈折率、優れた耐衝撃性を有するものの、同様に得られた重合体の耐光性が著しく劣り、また、硫黄特有の不快臭を発する等の問題があった。さらに、硫黄原子を有するモノマー組成物を用いたプラスチックが廃棄物として処理されるとき、有害なガスや硫黄化合物を生じることが懸念される。
【0006】
一方、アクリレートモノマーの屈折率を高くする方法として、従来から芳香族化合物を導入することがしられており、それらの芳香環としては、ビスフェノールA環、ビフェニル環及びフルオレン環等が用いられている。これら高屈折率芳香族アクリレートを用いる方法としては、一官能性の主剤であるモノアクリレート化合物、たとえばベンジルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、o−フェニルフェノキシエチルアクリレート等に対して、これら高屈折率芳香族化合物の二官能性アクリレートを屈折率向上のための添加剤として使用するのが一般的である。これらの高屈折率芳香族化合物の二官能性アクリレートを使用する場合、芳香環に直接アクリロイル基を導入すると骨格が剛直すぎて、主剤モノマーに対する溶解性が悪く、また、芳香族化合物の二官能性アクリレートの融点が高いため取扱にくいという欠点がある。そのため、芳香環とアクリロイル基の間にエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを介在(以下、EO介在型二官能性アクリレートと称する。)させることにより、主剤モノマーとの溶解度を改善したり、融点を低下させることにより扱いやすくした化合物を用いるのが一般的である。取扱いという点では、室温で低粘度の液状であることが好ましい。
【0007】
しかし、これらEO介在型二官能性アクリレートにおいて、芳香族化合物としてビスフェノールA環やビフェニル環を用いた場合、骨格にハロゲン原子や硫黄原子を含まないモノマーでは屈折率が1.55を超えるものを得ることは困難であり、かつ、ビフェニル環を有するEO介在型二官能性アクリレートは室温で固体であり、液状で得られることはほとんどない。また、ビスフェノールA骨格を有するアルキレンオキサイド介在型二官能性アクリレートは室温で液状であるのは好都合であるが、それらの屈折率が低く1.55を超えることはない。一方、フルオレン環を有するEO介在型二官能性アクリレートが知られており、このフルオレン環を有するEO介在型二官能性アクリレートは1.615という高い屈折率を有し、室温で液状であるという点で優れているが、液状であっても粘度が非常に高く室温では流動性が著しく乏しいため、添加時に加温して粘度を下げて使用しなければいけないという大きな欠点を有していた(特許文献3,4,5、6)。
【0008】
また、多環芳香族であるナフタレン環やアントラセン環、さらには1,4−ジヒドロアントラセン環にエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを介在してアクリロイル基を導入したEO介在型二官能性アクリレート化合物について報告がなされている。しかしながら、得られたナフタレン環、アントラセン環および、1,4−ジヒドロアントラセン環を含むEO介在型二官能性アクリレートは、室温では固体であった(特許文献7、8、9、10、11、12、13、14)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平05−170702号公報
【特許文献2】特開2002−20433号公報
【特許文献4】特開2003−064025号公報
【特許文献5】特開2004−083855号公報
【特許文献6】特開平06−220131号公報
【特許文献7】特開2008−001641号公報
【特許文献8】特開2008−024694号公報
【特許文献9】特開2007−204438号公報
【特許文献10】特開2008−169156号公報
【特許文献11】特開2009−040811号公報
【特許文献12】特開2010−018746号公報
【特許文献13】特開2010−254585号公報
【特許文献14】特開2010−275236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、多環芳香族EO介在型二官能性(メタ)アクリレート化合物であって、室温で液状であり、かつ、UV照射して得られた重合物の屈折率が高い(メタ)アクリレート化合物の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、多環芳香族EO介在型二官能性(メタ)アクリレート化合物の構造と性状に関して鋭意検討した結果、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が、室温で液状であり、かつ、UV照射により容易に重合すること、さらに、得られた重合物が高い屈折率を有していることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
以下、発明の内容を詳述する。
第1発明では、一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
(一般式(1)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【0015】
第二発明では、一般式(2)で示される9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を(メタ)アクリロイル化することよりなる、第一発明に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の製造方法を提供する。
【0016】
【化2】
【0017】
(一般式(2)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【0018】
第三発明では、第一発明に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物とラジカル重合開始剤からなる重合性組成物を提供する。
【0019】
第四発明では、第一発明に記載の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物と、当該9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物以外のラジカル重合性モノマー及びラジカル重合開始剤からなる重合性組成物を提供する。
【0020】
第五発明では、第三発明または第四発明に記載の重合性組成物を重合してなる重合物を提供する。
【0021】
本発明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートまたはメタクリレートを表し、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイルまたはメタクリロイルを、(メタ)アクリルとは、アクリルまたはメタクリル表す。また、本発明において、アルキレンオキシとは、下記構造で示される2価基を示し、たとえば、エチレンオキシ基、2−メチルエチレンオキシ基(プロピレンオキシ基と称する場合もある。)、2−エチルエチレンオキシ基(ブチレンオキシ基と称する場合もある。)等が挙げられる。
【0022】
【化3】
【0023】
(一般式(3)中、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、*は結合手を示す。)
【0024】
また、1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン骨格における置換基の位置番号は、下記のように付する。
【0025】
【化4】
【発明の効果】
【0026】
本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は室温で液状である、新規な化合物であり、かつ、UV(紫外)光の照射により容易に重合する。また、重合により得られた重合物は高い屈折率を示す工業的に有用な化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
<化合物>
本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は下記一般式(1)で示される化合物である。
【0028】
【化5】
【0029】
(一般式(1)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【0030】
一般式(1)中,Xで表わされるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、アルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル、n−ブチル基等が挙げられる。
【0031】
一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の具体例としては、例えば次のものが挙げられる。
【0032】
すなわち、Xが水素原子の場合は、例えば9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0033】
又、Xがアルキル基の場合は、6−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0034】
さらに、5−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0035】
また、6−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0036】
さらにまた、5−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0037】
Xがハロゲン原子の場合は、例えば6−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)プロポキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0038】
これらの化合物のうち、下記に示す構造式を有する、9,10−ビス[2−(アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン(構造式1−1)、9,10−ビス[2−(メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン(構造式1−2)が合成容易でありかつ得られる生成物の屈折率が高いことから特に好ましい。
【0039】
【化6】
【0040】
[製造方法]
一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、工業的に入手が容易な1,4−ナフトキノン化合物とシクロペンタジエン化合物とのディールス・アルダー反応物を水素化して得られる1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物(下記一般式(4)の化合物)をアルカリ存在下、アルキレンオキシド又はハロゲノアルカノールと反応させる第1反応(アルキレンオキシドとの反応を第1−1反応と称し、ハロゲノアルカノールとの反応を第1−2反応と称す。)と、第1−1反応又は第1−2反応で得られる、一般式(2)に示す9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を(メタ)アクリロイル化する第2反応とにより得ることができる。
【0041】
【化7】
【0042】
(第1−1反応式中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【0043】
【化8】
【0044】
(第1−2反応式中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【0045】
【化9】
【0046】
(第2反応式中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【0047】
上記、第1−1反応式、第1−2反応式及び第2反応式における各Xで表されるハロゲン原子及びアルキル基の具体例は、いずれも式(1)におけるXと同じである。
【0048】
第1−1反応又は第1−2反応において原料として用いられる1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物は、1,4−ナフトキノン化合物とシクロペンタジエン化合物とのディールス・アルダー反応物である1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物を水素化して得られる。
【0049】
1,4−ナフトキノン化合物と、シクロペンタジエン化合物とのディールス・アルダー反応は従来公知の方法で行うことができる。例えば、特開平6-312950号公報の工程1に記載の方法により合成できる。
【0050】
第1反応の原料である1,4−ナフトキノン化合物としては、例えば次のような化合物が挙げられる。すなわち、1,4−ナフトキノン、6−メチル−1,4−ナフトキノン、6−エチル−1,4−ナフトキノン、5−メチル−1,4−ナフトキノン、5−エチル−1,4−ナフトキノン、6−クロロ−1,4−ナフトキノン、5−クロロ−1,4−ナフトキノン、6−ブロモ−1,4−ナフトキノン、5−ブロモ−1,4−ナフトキノン等が挙げられる。
【0051】
シクロペンタジエン化合物としては、シクロペンタジエン、1−メチルシクロペンタジエン、2−メチルシクロペンタジエン、5−メチルシクロペンタジエン等を挙げることができる。これらは単独であるいは組み合わせて使用することもできる。また、シクロペンタジエン化合物は、対応するジシクロペンタジエン化合物を加熱し、シクロペンタジエン化合物に分解して用いてもよい。
【0052】
例えば、ジシクロペンタジエンを150℃以上に加熱すると熱分解して、シクロペンタジエンとなる。これを冷却することにより、シクロペンタジエンを単離することができる。メチルシクロペンタジエンも同様にして、メチルジシクロペンタジエンを熱分解して得ることができる。このようにして得たシクロペンタジエンあるいはメチルシクロペンタジエンは、室温で徐々に再び二量化するため、すぐに次の反応に用いることが好ましい。シクロペンタジエンあるいはメチルシクロペンタジエンをナフトキノン化合物と混合すると発熱を伴って、ディールス・アルダー反応を起こし、環状付加物を生成する。メチルシクロペンタジエンがメチル基の置換位置の異なる異性体の混合物となっているものの場合は、ディールス・アルダー反応物がシクロペンタジエンを用いた時に比べ、低融点物となる場合が多いが、以下の接触水素化反応、第1反応、第2反応において、ほぼ同様の反応操作で行うことができ、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を合成することができる。
【0053】
次に、接触水素化について説明する。上記反応で得られる1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物は、接触水素化触媒の存在下、容易に2、3位の二重結合を接触水素化することができる。触媒としては炭素−炭素二重結合の接触水素化反応に一般的に使用される触媒が使用可能であり、例えば、パラジウム担持活性炭、ラネーニッケル、ラネーコバルト、酸化白金、白金担持活性炭、ニッケル珪藻土、銅クロマイトなどの不均一系触媒;又はクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、白金−スズ錯体、第三級ホスフィン−コバルトカルボニル錯体などの均一系触媒を挙げることができる。当該接触水素化反応は水素ガスの存在下に行う。使用する触媒の種類によっては常圧で行うことも可能であるが、加圧下で行うことが反応速度が大である場合が多いため望ましい。加圧下で行う場合には、30MPa以下、好ましくは20MPa以下、更に好ましくは10MPa以下であるのが、反応装置、操作性等の面で工業的に有利である。
【0054】
1,4−ナフトキノン化合物とシクロペンタジエン化合物とのディールス・アルダー反応物を接触水素化して得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物としては、例えば、次のような化合物が挙げられる。すなわち、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−エチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−エチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−クロロ−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−クロロ−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−ブロモ−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−ブロモ−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−メチル−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−メチル−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−エチル−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−エチル−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−クロロ−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−クロロ−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−ブロモ−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−ブロモ−1−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−メチル−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−メチル−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−エチル−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−エチル−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−クロロ−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−クロロ−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−ブロモ−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−ブロモ−2−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−メチル−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−メチル−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−エチル−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−エチル−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−クロロ−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−クロロ−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、6−ブロモ−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン、5−ブロモ−11−メチル−1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン等である。
【0055】
第1−1反応において使用されるアルキレンオキシドとしては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられる。
【0056】
第1−1反応において使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、通常はそれらの水溶液が使用される。
【0057】
第1−1反応の溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルフォルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒が挙げられる。
【0058】
第1−1反応において、アルキレンオキシドは1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物に対して、好ましくは2モル倍以上15モル倍未満、より好ましくは4モル倍以上10モル倍未満添加する。2モル倍未満では、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物が未反応で残り、15モル倍以上では、生成物の溶解度が高くなりすぎ、収率が低下する。
【0059】
第1−1反応において、アルカリは1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物に対して、2モル倍以上、3モル倍未満添加する。2モル倍未満では、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物が未反応で残留し、3モル倍以上加えても、収率は上がらない。
【0060】
第1−1反応において、反応温度は好ましくは0℃以上60℃未満、より好ましくは10℃以上40℃未満である。0℃未満では反応に時間がかかりすぎ、60℃以上では不純物が多くなり収率が低下する。
【0061】
第1−1反応で得られる9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物としては、たとえば次の化合物が挙げられる。すなわち、9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,6−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6,11−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、1,5−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、2,5−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5,11−ジメチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−エチル−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−エチル−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0062】
さらに、6−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−クロロ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−クロロ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、6−ブロモ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−1−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−2−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシプロポキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン、5−ブロモ−11−メチル−9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン等が挙げられる。
【0063】
次に、第1−2反応について説明する。第1−2反応において使用されるハロゲノアルカノールとしては、たとえば、1−ブロモ−2−エタノール、1−クロロ−2−エタノール、1−ブロモ−2−プロパノール、1−クロロ−2−プロパノール、1−ブロモ−2−ブタノール、1−クロロ−2−ブタノール等が挙げられる。
【0064】
第1−2反応において使用されるアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等が挙げられ、通常はそれらの水溶液が使用される。
【0065】
第1−2反応において、ハロゲノアルカノールは1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物に対して好ましくは2モル倍以上4モル倍未満、より好ましくは2.5モル倍以上3.5モル倍未満添加する。2モル倍未満では、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物が未反応で残り、4モル倍以上では、生成物の溶解度が高くなりすぎ、収率が低下する。
【0066】
第1−2反応において、アルカリは1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物に対して、2モル倍以上、5モル倍未満添加する。2モル倍未満では、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン化合物が未反応で残留し、5モル倍以上加えても、収率は上がらない。
【0067】
第1−2反応において、反応温度は好ましくは40℃以上130℃未満、より好ましくは60℃以上100℃未満である。40℃未満では反応に時間がかかりすぎ、130℃以上では不純物が多くなり収率が低下する。
【0068】
反応時間は、反応温度によるが、通常2時間以上12時間未満である。
【0069】
第1−2反応で得られる9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の具体例は、第1−1反応で得られる化合物の具体例と同様である。
【0070】
次に、第2反応について説明する。一般式(2)に示す9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を(メタ)アクリロイル化することによって、一般式(1)に示す9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を得ることができる。
【0071】
【化10】
【0072】
(一般式(1)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを示し、Rは水素原子又はメチル基を示し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【0073】
【化11】
【0074】
(一般式(2)中、R、R、R、R及びRは互いに同一であっても異なっていてもよく、水素原子又はメチル基を示し、Rは水素原子,メチル基又はエチル基の何れかを表し、Xは水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基のいずれかを示す。)
【0075】
第2反応の原料である、一般式(2)に示す1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン骨格を有するジオール化合物は、第1-1反応、又は第1−2反応によって得られた化合物である。
【0076】
第2反応で用いられる(メタ)アクリロイル化剤としては、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが用いられる。ハロゲン化(メタ)アクリロイルとしては、塩化アクリロイル、塩化メタクリロイル、臭化アクリロイル又は臭化メタクリロイルが挙げられる。その中でも特に塩化アクリロイル又は塩化メタクリロイルが収率よく目的物が得られるため好ましい。
【0077】
第2反応におけるハロゲン化(メタ)アクリロイルの添加量は9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物1モルに対して、通常2.0モル倍以上4.0モル倍未満、好ましくは2.2モル倍以上3モル倍未満である。2.0モル倍未満の場合は、原料の9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が未反応のまま残ってしまい、一方、4.0モル倍以上の場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが一部重合し、得られた9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物の純度が低下してしまい、いずれも好ましくない。
【0078】
第2反応で用いられる塩基はアルカリ又は有機塩基が挙げられる。アルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムが好ましく、水酸化ナトリウムがより好ましい。有機塩基としては、ピリジン、α−ピコリン,γ−ピコリン、トリエチルアミン,トリブチルアミン,ジエチルアミン、ジブチルアミン、エチルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。中でも、トリエチルアミンが反応し易いことからより好ましい。
【0079】
第2反応で用いる塩基の添加量は、9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物1モルに対して、通常1.5モル倍以上3モル倍未満である。塩基の使用量が1.5モル未満の場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルの滴下中に水層のpHが酸性になり、選択率が低下する場合がある。一方、塩基の使用量が3モル倍以上の場合は、ハロゲン化(メタ)アクリロイルが分解する場合があり好ましくない。
【0080】
第2反応は、通常は溶媒の存在下で行なう。溶媒の種類は特に制限されないが、塩基が有機塩基の場合は、ベンゼン、トルエン、o−キシレン等の芳香族系溶媒、塩化メチレン、ジクロロエタン、ジクロロエチレンのようなハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−i−ブチルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n−メチルピロリドンのようなアミド系溶媒が好適に用いられる。
【0081】
塩基がアルカリの場合は、水溶性溶媒が好ましく、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン系溶媒、、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサンのようなエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノールのようなアルコール系溶媒、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドのようなアミド系溶媒が好適に用いられる。
【0082】
(メタ)アクリロイル化反応に要する時間は、特に限定されないが、塩基が有機塩基である場合は通常0.1時間以上4時間未満、特に0.4時間以上1.0時間未満の範囲が好ましく、塩基がアルカリである場合は、通常0.1時間以上2時間未満、特に0.2時間以上0.5時間未満が好ましい。
【0083】
このようにして得られた9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、室温で液状であり、かつ流動性があり、取り扱いが容易な物質である。
【0084】
得られた化合物の同定は、H−NMRスペクトル、IRスペクトルを用いて行い、相当する9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物又はその前駆体9,10−ビス(2−ヒドロキシアルコキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物であることを確認した。
【0085】
[重合性組成物]
かくして得られた9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、ラジカル重合により、重合物とすることができる。本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物のラジカル重合を促進するためには、ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。
【0086】
このようなラジカル重合開始剤には、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤とがある。
【0087】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2−イソプロピルチオキサントン、2−t−ブチルアントラキノン等が挙げられる。実際の工業製品としてはBASF社製のイルガキュア651、イルガキュア184、ダロキュア1173、イルガキュア907、イルガキュア369、ダロキュアTPO、イルガキュア819が挙げられる(イルガキュア、ダロキュアはBASF社の登録商標)。
【0088】
そして、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物とラジカル重合開始剤を混合することによりラジカル重合性組成物とすることができる。
【0089】
本発明の光ラジカル重合性組成物において、上記の9,10−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を単独で用いて、重合物とすることもできるが、当該9,10−ビス[2−(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物以外の公知のラジカル重合性モノマーを加えて共重合性の光ラジカル重合性組成物として共重合させることも出来る。
【0090】
共重合させるラジカル重合性モノマーとして、例えば、テトラエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートポリエステルアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、ポリオールアクリレート、ポリエーテルアクリレート、シリコーン樹脂アクリレート、イミドアクリレートさらには、スチレン、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、フェニルアクリレート、フェニルメタクリレート、p−トリルアクリレート、p−トリルメタクリレート、m−トリルアクリレート、m−トリルメタクリレート、o−トリルアクリレート、o−トリルメタクリレート、2−フェノキシエチルアクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、ビフェニル−4−イル−アクリレート、ビフェニル−4−イル−メタクリレート、4−フェノキシフェニルアクリレート、4−フェノキシフェニルメタクリレート、2−フェノキシフェニルアクリレート、2−フェノキシフェニルメタクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−2−イルオキシ)エチルメタクリレート等が挙げられる。
【0091】
これらのラジカル重合性モノマーと本発明の9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物とを共重合することにより、9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物のラジカル重合性モノマーを用いない場合に比べ、得られる重合物の屈折率向上のほか、耐熱性、耐溶剤性、硬度、あるいは酸素非透過性などを高めることができる。
【0092】
また、2−(ビフェニル−4−イルオキシ)エチルアクリレート、2−(ビフェニル−4−イルオキシ)エチルメタクリレート等のビフェニル系アクリレート、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アクリロイルオキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス[4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス{4−[2−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ−プロポキシ)−エトキシ]フェニル}フルオレン、9,9−ビス[4−(3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシ)プロポキシ−3−メチルフェニル]フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレンのグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等のフルオレン系アクリレート等の屈折率の高いラジカル重合性モノマーと共重合させることもできる。
【0093】
光ラジカル重合開始剤の添加濃度は、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物および必要に応じて併用されるラジカル重合性化合物の合計重量に対して0.1〜5重量%の範囲から選ばれ、好ましくは0.5〜2重量%である。0.1重量%より少ないと重合速度が遅く、5重量%より多いと重合物の物性が悪化するので好ましくない。
【0094】
また、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は熱ラジカル重合開始剤を用いて重合物となす事も出来る。
【0095】
熱ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物等のどちらでも使用可能である。有機過酸化物としては、例えばt− ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t− ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,6−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート類等のパーオキシ エステル類、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ) −3,3,6− トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、 ラウロイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド 類等を挙げることができる。またアゾ系化合物の開始剤 としては、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリルや、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビ (シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾニトリル類を挙げることができる。
【0096】
本発明の重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、希釈剤、着色剤、有機又は無機の充填剤、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、増粘剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤、可塑剤等の各種樹脂添加剤を配合してもよい。
【0097】
[重合方法]
当該ラジカル重合性組成物の重合はフィルム状で行うことも出来るし、塊状に硬化させることも可能である。フィルム状に重合させる場合は、液状の当該重合性組成物をたとえばポリエステルフィルムなどの基材に、たとえばバーコーターなどを用いて膜厚5〜300ミクロンになるように塗布する。本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、薄膜だけでなく厚膜においても容易に重合させることができる。
【0098】
このようにして調製した塗布膜に活性エネルギー線を照射することにより重合させることができる。用いられる光源としては、使用する光ラジカル重合開始剤によって異なるが、250〜500nmの波長の活性エネルギー線が用いられる。したがって、上記の波長の活性エネルギー線を照射できる光源として、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、UV−LED、青色LED、白色LED等の光源が使用可能である。また、太陽光線を使用することもできる。特に、本発明の9,10−ビス[(メタ)アクリロイルオキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、UV硬化装置として最も広く用いられている光源である高圧水銀ランプ(波長366nm)をもちいて重合させることができることから、工業的に非常に有用な化合物である。
【0099】
紫外線や可視光線等の活性エネルギー線による光ラジカル重合は、硬化が速く、効率よく透明性の高い重合物を得ることができるので、特に本発明の化合物を光学用途に用いる場合は、光ラジカル重合によることが好ましい。
【0100】
光ラジカル重合の判定は、タック・フリーテスト(指触テスト)に基づいて行った。すなわち、光照射によりフィルム表面の光ラジカル重合性組成物のタック(べたつき)が取れるまでの時間を硬化時間とした。
【0101】
[重合物]
このようにして得られた、9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を重合させて得られるフィルム、シートもしくは塊状物は、高い屈折率を示し、またその構造から、高い耐熱性、高硬度、高光沢性等が期待できる工業的に有用なものである。
【0102】
下記の実施例により本発明を例示するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。特記しない限り、すべての部および百分率は重量基準である。
【実施例】
【0103】
生成物の確認は下記の機器による測定により行った。
(1)融点:ゲレンキャンプ社製の融点測定装置、型式MFB−595(JIS K0064に準拠)
(2)屈折率:アッベ屈折率計:エルマー社製、形式ER−7MW−H
(3)赤外線(IR)分光光度計:日本分光社製、型式IR−810
(4)核磁気共鳴装置(NMR):日本電子社製、型式GSX、FTNMRSpectorometer
(5)粘度: CBC社製、VISCOMATE、VM−10A
【0104】
「合成例1」1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンの合成
ジシクロペンタジエン120g(和光純薬製)を、容積が300mlのナス型フラスコとフリードリッヒ冷却管を備えた蒸留装置に仕込み、185℃のオイルバス中で加熱することにより熱分解して溜出してくるシクロペンタジエン(溜出温度40℃)を塩化メチレン60g(和光純薬製)の入った容積が200mlのナスフラスコで捕集した。捕集するナスフラスコはドライアイス・アセトンで冷却しながら行った。上記の方法で捕集したシクロペンタジエン64gの塩化メチレン溶液を容積が500mlの四口フラスコに移し入れ、ドライアイス・アセトンで−60℃に冷却した。別容器で1,4−ナフトキノン128g(川崎化成工業製)と塩化メチレン200g(和光純薬製)のスラリーを調製し、当該スラリーを15分掛けてシクロペンタジエン64gの塩化メチレン溶液に攪拌しながら添加した。添加終了後、ドライアイス・アセトンの冷却を止めると、発熱反応により内温が45℃まで上昇した。内温が下降するまで撹拌を続け、内温が下がり始めたらバス温度を35℃に調整し、30分間さらに攪拌した。その後、反応液を容積が1Lのナス型フラスコに移し、これにメタノール300ml(和光純薬製)を加えた後、反応液中の塩化メチレン250gを50℃に加熱して溜去し、結晶を晶析させた。析出した結晶を吸引濾過し、得られた結晶をメタノール50mlで三回洗浄した。得られた結晶は白色で、収量は170gであった。この結晶を同定したところ、1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンであった。原料1,4−ナフトキノンに対する収率は94モル%であった。
【0105】
「合成例2」1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンの合成
合成例1と同様にして得られた1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン70gを容積が300mlのガラス製オートクレーブに量り取り、溶媒としてオルソキシレン150g(和光純薬製)、水添触媒として5%パラジウムカーボン(Pd/C)1gを加え、0.2MpaGの条件下で水素を供給し、水素化反応させた。反応終了後、Pd/Cを濾過し、反応液を減圧濃縮し、オルソキシレン130gを溜去させ、メタノール50gを加え晶析させた。析出した結晶を吸引濾過し、メタノール50mlで洗浄・乾燥し、白色結晶60gを得た。この結晶を同定したところ、1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンであった。1,4,4a,9a−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する収率は85モル%であった。
【0106】
(1)融点:116−117℃
(2)IR(KBr,cm−1):2980,2960,2880,1670,1590,14 78,1452,1322,1302,1262,1168,1050,998,900,820,757,730,540
(3)H−NMR(CDCl,400MHz):δ=1.11−1.21(2H,m),1.41−1.46(1H,m),1.46−1.54(2H,m),1.58−1.65(1H,m),3.03(2H,s),3.20(2H,s),7.72−7.80(2H,m),8.08−8.16(2H,m).
【0107】
「合成例3」 9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成(第1−2反応)
攪拌機、温度計付きの500mlの三口フラスコに窒素雰囲気下、合成例2と同様にして得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン11.3g(50ミリモル),脱気水70gを加えた。次いで、水酸化ナトリウム(200ミリモル)の脱気水30g溶液を加えた。白いスラリーが薄赤くなったので、内温55℃で1時間加熱した。真っ赤な溶液となるので室温まで冷却し、1−ブロモ−2−エタノール19.0g(150ミリモル)のジメチルアセトアミド50g溶液を加えた。内温60℃で5時間加熱し、その後放置冷却したところ結晶が多量析出した。該結晶を吸引濾過し、水、さらにメタノールで洗い、乾燥して9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの白い粉10.2g(32.2ミリモル)を得た。原料1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する収率は64モル%であった。
【0108】
(1) 融点:163−164℃
(2) 屈折率:n=1.614
(3) IR(KBr,cm−1): 3490,3400,2930,2875,1654,1610,1460,1388,1346,1312,1280,1178,1090,1077,1046,1033,072,902,773,759.
(4)H−NMR(CDCl,400MHz):δ=1.32−1.40(m,2H),1.60−1.66(m,1H),1.75−1.82(m,1H),1.98−2.08(m,2H),2.28(bs,2H),3.75(s,2H),3.99−4.07(m,4H),4.10−4.17(m,2H),4.21−4.27(m,2H),7.39−7.46(m,2H),8.04−8.12(m、2H)
【0109】
「合成例4」9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成(第1−1反応)
攪拌機、温度計付きの300mlの三口フラスコ中に窒素雰囲気下、合成例2と同様にして得られた1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオン11.3g(50ミリモル)、ジメチルアセトアミド80g加え無色溶液とし、水酸化ナトリウム4.80g(120ミリモル)の脱気水30g溶液を加え、内温55℃で30分加熱した。ついで、生じた赤い溶液にブチレンオキシド2g(300ミリモル)加え、内温60℃で8時間加熱した。生じた赤黒い溶液を冷却したのち、10%硫酸水溶液を加え,液のpHを微酸性にしたところ、薄カーキ色の水あめ状物が沈んだので、上澄みを捨てたのち、水あめ状物をよく水洗いした。その後、ヘキサン100ml中で保存した。次第に結晶化が進行したので、生成した結晶を吸引濾過・乾燥し9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの白色粉末10.5g(28.4ミリモル)を得た。原料1,2,3,4,4a,9a−ヘキサヒドロ−1,4−メタノアントラセン−9,10−ジオンに対する単離収率は57モル%であった。
【0110】
(1)融点:135−136℃
(2)屈折率:n=1.587
(3)IR(KBr,cm−1): 3500,3425,2975,2947,2880,1612,1460,1350,1312,1282,1180,1128,1090,1050,1017,978,954,914,764.
(4)H−NMR(CDCl,400MHz):δ=1.05(t,J=8Hz,6H),1.31−1.39(m,2H),1.60−1.70(m,5H),1.74−1.81(m,1H),1.98−2.08(m,2H),2.57(d,J=9Hz,2H),3.74(s,2H),3.90−4.12(m,6H),7.40−7.47(m,2H),8.02−8.09(m,2H).
【0111】
<合成実施例>
「実施例1」9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの200mlの三口フラスコ中に、窒素雰囲気下、合成例3と同様にして得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン6.32g(20ミリモル)、塩化メチレン30g、塩化アクリロイル4.50g(50ミリモル)を加えた。得られた白いスラリー液に氷水中、トリエチルアミン4.04g(40ミリモル)の塩化メチレン溶液を加えたところ、すぐにゾル状化した。室温で3時間攪拌し、その後、水8gを加え、2層とし、さらに塩化メチレン層を水14gで洗った。ついで、塩化メチレン層にアセトン25gを加え、シリカゲルカラムを通した。流出液の色は無色となった。流出液を濃縮し、無色の水あめ状物の9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン4.20g(10ミリモル)を得た。原料の9,10−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンに対する9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの単離収率は50モル%であった。このものの融点は、得られた水あめ状物をメタノール中分散し、冷媒のドライアイス/アセトン中固化させて、室温に戻し、この途中で融解する温度を持って融点とした。
【0112】
(1)融点:−32℃、室温液状
(2)屈折率:n=1.573
(3)IR(neat,cm−1): 2960,2880,1730,1642,1460,1412,1349,1302,1278,1200,1176,1096,1060,976,812,775..
(4)H−NMR(CDCl,400MHz):δ=1.32−1.41(m,2H),1.62−1.67(m,1H),1.76−1.82(m,1H),1.98−2.08(m,2H),3.73(s,2H),4.23−4.32(m,2H),4.32−4.41(m,2H),4.52−4.61(m,4H),5.88(d,J=9Hz,2H),6.20(dd,J=17Hz,J=9Hz,2H),6.46(d,J=17Hz,2H),7.37−7.46(m,2H),8.04−8.13(m,2H).
(5)粘度: 425mPa・s/70℃、590mPa・s/60℃、710mPa・s/50℃
【0113】
「実施例2」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの200mlの三口フラスコ中に、窒素雰囲気下、合成例3と同様にして得られた9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン 6.32g(20ミリモル)、塩化メチレン30g、塩化メタクリロイル5.20g(50ミリモル)を加えた。得られた白いスラリー液に氷水中、トリエチルアミン4.04g(40ミリモル)の塩化メチレン8g溶液を加えた。すぐにゾル状化したので、室温で3時間攪拌した。その後、水10gを加え、2層とし、さらに塩化メチレン層を水10gで洗った。塩化メチレン層にアセトン25gを加え、シリカゲルカラムを通した。流出液の色は無色となった。濃縮し、無色の水あめ状物4.98g(11ミリモル)を得た。原料の9,10−ビス[(2−ヒドロキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンに対する9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの単離収率は55モル%であった。このものの融点は、得られた水あめ状物をメタノール中分散し、冷媒のドライアイス/アセトン中固化させて、室温に戻し、この途中で融解する温度を持って融点とした。
【0114】
(1)融点:−31℃、室温液状
(2)屈折率:n=1.564
(3)IR:(neat,cm−1): 2970,2880,1723,1641,1458,1380,1350,1322,1300,1170,1092,1044,950,772.
(4)H−NMR(CDCl,400MHz):δ=1.32−1.39(m,2H),1.60−1.66(m,1H),1.76−1.82(m,1H),1.97(s,6H),1.99−2.04(m,2H),3.74(s,2H),4.24−4.31(m,2H),4.32−4.41(m,2H),4.46−4.58(m,4H),5.61(s,2H),6.16(s,2H),7.35−7.45(m,2H),8.05−8.11(m,2H).
(5)粘度: 800mPa・s/60℃
【0115】
「実施例3」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの合成
攪拌機、温度計付きの200mlの三口フラスコ中に、窒素雰囲気下、合成例4と同様にして得られた9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン3.70g(10ミリモル)、塩化メチレン20g、塩化メタクリロイル2.60g(25ミリモル)を加えた。得られた白いスラリー液に氷水中、トリエチルアミン2.02g(20ミリモル)の塩化メチレン5g溶液を加えた。一旦溶けて、すぐにゾル状化したので、室温で3時間攪拌した。その後、水14gを加え、2層とし、さらに塩化メチレン層を水14gで洗った。塩化メチレン層にメタノール60gを加え、シリカゲルカラムを通した。流出液の色は薄黄色となった。濃縮し、薄黄色の水あめ状物3.6g(7.1ミリモル)を得た。原料9,10−ビス(2−ヒドロキシブトキシ)−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンに対する9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)ブトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの単離収率は71モル%であった。このものの融点は、得られた水あめ状物をメタノール中分散し、冷媒のドライアイス/アセトン中固化させて、室温に戻し、この途中で融解する温度を持って融点とした。
【0116】
(1)融点:−44℃、室温液状
(2)屈折率:n=1.553
(3)IR(neat、cm−1): 2980,2950,2880,1720,1640,1460,1350,1300,1170,1091,1050,770.
(4)H−NMR(CDCl,400MHz): δ=1.03(t,J=8Hz,6H),1.30−1.37(m,2H),1.56−1.61(m,1H),1.74−1.79(m,1H).1.91−2.05(m,7H),3.69(s,2H),4.07−4.26(m,4H),5.21−5.32(m,2H),5.56(s,1H),5.59(s,1H),6.14(s,1H),6.17(s,1H),7.33−7.41(m,2H),8.01−8.10(m,2H).
【0117】
実施例1〜3の結果から、本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、室温で低粘性の液状物であり、かつ高い屈折率を持つ化合物であることが分かる。高屈折のアクリレート化合物は、一般的に室温で固体であるか、高粘度の松脂状の化合物である場合が多い。高屈折率化合物として知られているフルオレン骨格を有する二官能性(メタ)アクリレートは、十万から百万mPa・sの粘度を有する。例えば、特開2008−024637号公報の段落番号[0014]に記載のように、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンの粘度は、50℃で約十数万mPa・sである。一方、本発明の化合物では、実施例1で分かるように、50℃で710mPa・sと流動性のある液体であることから、高屈折率化合物であるにもかかわらず、取扱いやすい化合物であるといえる。
【0118】
<熱重合実施例>
「実施例4」9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの熱重合
温度計、攪拌機つきの200ml三口フラスコに、窒素雰囲気下、実施例1と同様にして得られた9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン2.0gを仕込み、ついでトルエン6g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを20mg添加した。内温を106℃に保ち加熱したところ、5分後大量に白い沈殿が生じた。さらに5分間加熱し、冷却して白色のスラリーをえた。メタノール50mlを投入し、十分攪拌し、吸引ろ過、乾燥し、1.60gの白い粉末状の重合物を得た。単離収率は80モル%であった。モノマーである9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンは液状であるが、熱重合して得られた粉末を250℃に加熱したが、融解しなかった。また、9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンを良く溶解するトルエン、アセトン、ジメチルアセトアミドにも全く溶解しなかった。IRを測定したところ、1730cm−1のCO伸縮振動は1738cm−1に長波長側に移動しており、二重結合の消失が示唆された。
【0119】
「実施例5」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの熱重合
温度計、攪拌機つきの200ml三口フラスコに、窒素雰囲気下、実施例2と同様にして得られた9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン2.0gを仕込み、ついでトルエン6g加え、重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリルを20mg添加した。内温を106℃に保ち加熱したところ、5分後大量に白い沈殿が生じた。さらに5分間加熱し、冷却して白色のスラリーをえた。メタノール50mlを投入し、十分攪拌し、吸引ろ過、乾燥し、1.48gの白い粉末状の重合物を得た。単離収率は74モル%であった。モノマーである9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンは液状であるが、熱重合して得られた粉末は250℃に加熱したが、融解しなかった。また、9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンを良く溶解するトルエン、アセトン、ジメチルアセトアミドにも全く溶解しなかった。IRを測定したところ、1720cm−1のCO伸縮振動は1730cm−1に長波長側に移動しており、二重結合の消失が示唆された。
【0120】
<光重合実施例>
「実施例6」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンの光重合
モノマーとして実施例2と同様にして得られた9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン100重量部に、開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン(BASF社製、商品名:イルガキュア369)を3重量部加え、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン)表面に、膜厚200ミクロンになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外LED(波長:365nm,照射強度:550mw/cm)を照射した。5分光照射後、9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンが重合した平滑なフィルムが得られた。
【0121】
得られたフィルムのIRスペクトルを想定したところ、アクリロイル基のカルボニル基に起因する1720cm−1の吸収が1730cm−1にシフトしており、二重結合の消失が示唆された。さらに、このフィルムの屈折率を測定したところ、1.585(n)であり、モノマーの屈折率の1.564(n)より高くなっており、重合していることが確認された。
【0122】
「実施例7」9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの光重合
モノマーとして、実施例2と同様にして得られた9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン50重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート50重量部加え、さらに開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン(BASF社製、商品名:イルガキュア369)を3重量部加え、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン)表面に、膜厚200ミクロンになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外LED(波長:365nm,照射強度:550mw/cm)を照射した。5分光照射後、モノマー混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0123】
得られたフィルムの屈折率を測定したところ、1.545(n)であり、トリメチロールプロパントリアクリレートの重合物の屈折率1.512より遥かに高く、また、光照射前の9,10−ビス[(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの1:1混合物の屈折率の1.518より高くなっており、重合していることが確認された。
【0124】
「実施例8」
9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの光重合
モノマーとして、実施例1と同様にして得られた9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン46重量部に、トリメチロールプロパントリアクリレート54重量部加え、さらに開始剤として2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタン−1−オン(BASF社製、商品名:イルガキュア369)を3重量部加え、均一な光ラジカル重合性組成物とした。この光ラジカル重合性組成物を、バーコーターによってポリエステルフィルム(東レ社製、商品名:ルミラー、膜厚100ミクロン)表面に、膜厚50ミクロンになるように塗布した。ついで、窒素雰囲気下、紫外LED(波長:365nm,照射強度:550mw/cm)を照射した。5分光照射後、モノマー混合物が重合した平滑なフィルムが得られた。
【0125】
得られたフィルムの屈折率を測定したところ、1.540(n)であり、トリメチロールプロパントリアクリレートの重合物の屈折率1.512より遥かに高く、また、光照射前の9,10−ビス[(2−アクリロイルオキシ)エトキシ]−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセンとトリメチロールプロパントリアクリレートとの混合物の屈折率の1.521より高くなっており、重合していることが確認された。
【0126】
実施例4〜8で明らかなように、本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物は、熱でも光でもラジカル重合可能であり、光ラジカル重合では、もっとも一般的な光源である高圧水銀ランプで重合可能であり、かつ、得られた重合物は屈折率が高く、工業的に有用な化合物であることがわかる。また、トリメチロールプロパントリアクリレートのような一般的な重合性化合物と本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物を共重合させることにより、重合物の屈折率を高めることができることから、本発明の9,10−ビス{[2−(メタ)アクリロイルオキシ]アルコキシ}−1,2,3,4−テトラヒドロ−1,4−メタノアントラセン化合物が工業的に有用な化合物であることが分かる。