特許第5863040号(P5863040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5863040-水中浮遊式採泥装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863040
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】水中浮遊式採泥装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20160202BHJP
   G01N 1/08 20060101ALI20160202BHJP
   E02D 1/04 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   G01N1/04 U
   G01N1/08 E
   E02D1/04
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-116745(P2012-116745)
(22)【出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2013-242265(P2013-242265A)
(43)【公開日】2013年12月5日
【審査請求日】2015年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000121844
【氏名又は名称】応用地質株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078961
【弁理士】
【氏名又は名称】茂見 穰
(72)【発明者】
【氏名】川村 貞夫
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 正
(72)【発明者】
【氏名】三井 厚司
(72)【発明者】
【氏名】松田 慎思
【審査官】 土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭52−055684(JP,A)
【文献】 実開昭61−067542(JP,U)
【文献】 特開平05−058385(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/156867(WO,A1)
【文献】 特開昭61−207945(JP,A)
【文献】 実開昭60−021952(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0300219(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44、33/48〜33/98、E02D1/00〜1/08
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部を内蔵する密閉構造の耐水圧筐体と、該耐水圧筐体の上方に配置された浮体と、前記耐水圧筐体から下方に延びる着脱自在の採泥管を具備すると共に、前記耐水圧筐体の周囲に左右の水平方向スラスタと垂直方向スラスタが配設された構造をなし、前記浮体により装置全体を中性浮力とし且つ採泥管が常に下向きを維持するように構造的安定性を持たせ、前記垂直方向スラスタと前記水平方向スラスタにより水中で3次元的な位置移動を可能とし、前記垂直方向スラスタの推進力により前記採泥管の底質地盤への貫入及び底質地盤からの引き抜きを行うことで不攪乱柱状に底質試料を採取するようにしたことを特徴とする水中浮遊式採泥装置。
【請求項2】
前記水平方向スラスタは、前記耐水圧筐体から左右方向に突設した左右のスラスタ保持部材に取り付けられ、前記垂直方向スラスタは、前記耐水圧筐体から前後方向に突設した前後のスラスタ保持部材に取り付けられている請求項1記載の水中浮遊式採泥装置。
【請求項3】
前記採泥管は長さ方向に開閉可能な半割型式であって、該採泥管の基端側が前記耐水圧筐体の下部のジョイント部に着脱自在で、該ジョイント部内には逆止弁として機能する球体が収容されており、前記採泥管の先端側にはシューが取り付けられている請求項1又は2記載の水中浮遊式採泥装置。
【請求項4】
前記耐水圧筐体に音響測位システムのトランスポンダ、水中カメラ、及び高度計が取り付けられている請求項1乃至3のいずれかに記載の水中浮遊式採泥装置。
【請求項5】
請求項1記載の水中浮遊式採泥装置と、遠隔操縦装置及び信号処理装置、スラスタ駆動用電源を備えた支援船とを組み合わせ、該支援船と、前記耐水圧筐体内の制御部とが中性浮力ケーブルで接続され、スラスタ駆動のための電力供給及び各種信号の送受を前記中性浮力ケーブルを用いて行うように構成した水中浮遊式採泥システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋や河川・湖沼などの底に堆積している泥や砂などの底質試料を、遠隔操縦により不攪乱柱状に採取するための装置に関し、更に詳しく述べると、装置全体を中性浮力とし且つ採泥管が常に下向きを維持するように構造的に安定性を持たせ、水平方向スラスタと垂直方向スラスタにより水中を自由に浮遊移動できるようにし、所望の地点で垂直方向スラスタの推進力を利用して採泥管を底質地盤に貫入させ底質試料を採取する水中浮遊式採泥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水底の堆積物を鉛直方向柱状に採取するには、一般に投下式の採泥装置が用いられている。これは、水上の採泥用ボートなどからウインチ機構で採泥装置を吊降ろし、所定の高さから自由落下させて採泥管を底質地盤に貫入させた後、引き上げることで、堆積している泥や砂などの底質試料を採取する技術である(特許文献1参照)。しかし、このような自由落下式の採泥装置は、長い採泥管の上部に重錘が位置する構造のため、バランスが悪く、採泥管が底質地盤に対して傾いて貫入する恐れがある。
【0003】
その他、水底固定式の採泥装置もある。これは、採泥装置本体が着底足を備えた支持枠で支えられる構造であり、採泥装置全体を水底に降下させると、まず支持枠が着底し、その後、採泥装置本体が、その自重により自由落下して堆積物中に貫入するように構成されている(特許文献2参照)。しかし、このような水底固定式の採泥装置は、装置全体が大型化し重くなる問題があり、そのため機動性に欠け作業効率が悪い欠点がある。また、採泥装置本体の自由落下の距離を長くとることができないため、底質地盤へ深く貫入させることが難しい。
【0004】
更に、いずれにしても上記のような従来技術では、重力を利用して単純に採泥管を底質地盤に打ち込む方式であるため、水底に礫などが堆積していると、採泥管を底質地盤中に貫入できないこともある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−285133号公報
【特許文献2】特公平3−27060号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、装置全体を小型化・軽量化でき、そのため可搬性に優れ、採泥管を底質地盤中に鉛直方向に必要な深さまで、しかも水底に礫などが堆積していても確実に貫入でき、水底に堆積している泥や砂などの底質試料を不攪乱柱状に採取できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、制御部を内蔵する密閉構造の耐水圧筐体と、該耐水圧筐体の上方に配置された浮体と、前記耐水圧筐体から下方に延びる着脱自在の採泥管を具備すると共に、前記耐水圧筐体の周囲に左右の水平方向スラスタと垂直方向スラスタが配設された構造をなし、前記浮体により装置全体を中性浮力とし且つ採泥管が常に下向きを維持するように構造的安定性を持たせ、前記垂直方向スラスタと前記水平方向スラスタにより水中で3次元的な位置移動を可能とし、前記垂直方向スラスタの推進力により前記採泥管の底質地盤への貫入及び底質地盤からの引き抜きを行うことで不攪乱柱状に底質試料を採取するようにしたことを特徴とする水中浮遊式採泥装置である。なお、本明細書において『前後左右上下』とは、装置が水中に投入され浮遊している採泥作業中の姿勢を基準とした方向を意味している。
【0008】
例えば、水平方向スラスタを前記耐水圧筐体から左右方向に突設した左右のスラスタ保持部材に取り付け、垂直方向スラスタを前記耐水圧筐体から前後方向に突設した前後のスラスタ保持部材に取り付ける構造とする。
【0009】
前記採泥管は、長さ方向に開閉可能な半割型式とし、該採泥管の基端側が前記耐水圧筐体下部のジョイント部に着脱自在で、該ジョイント部内に逆止弁として機能する球体が収容されており、前記採泥管の先端側にはシューが取り付けられている構造とする。前記耐水圧筐体には音響測位システムのトランスポンダ、水中カメラ、及び高度計が取り付けられている構成が好ましい。
【0010】
ここで、遠隔操縦装置及び信号処理装置、スラスタ駆動用電源を備えた支援船を用い、該支援船と、前記耐水圧筐体内の制御部とが中性浮力ケーブルで接続され、スラスタ駆動のための電力供給及び各種信号の送受を前記中性浮力ケーブルを用いて行うように採泥システムを構成するのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る水中浮遊式採泥装置は、装置全体を中性浮力として水中浮遊する方式であるため、水平方向スラスタと垂直方向スラスタの推進力によって所望の採泥地点に移動できる。そして、垂直方向スラスタで発生する推進力によって採泥管を底質地盤中に鉛直方向に貫入させることができ、貫入後は、垂直方向スラスタによる逆方向の推進力によって引き抜くことができ、これによって底質堆積物を不攪乱柱状に採取することができる。また、水底に礫などが堆積していて垂直方向スラスタの推進力のみでは貫入困難な場合であっても、水平方向スラスタで採泥管を中心軸の回りに回転させることによって、該採泥管を確実に底質地盤中に貫入させることができる。更に、貫入後、採泥管を引き抜き難くなった場合でも、水平方向スラスタで採泥管を回転させることで、内部に底質試料を収容した採泥管を底質地盤から引き抜くことが可能となる。これによって、必要とする不攪乱柱状の底質試料を確実に採取することが可能となる。
【0012】
本発明に係る水中浮遊式採泥装置は、採泥管の貫入力に垂直方向スラスタで発生する推進力を利用しており、重力による自然落下を利用するものではないので、重錘が不要となる分、装置全体を小型化・軽量化でき、そのため可搬性に優れ、作業者が1人でも投入・回収することが可能となり、運用コスト・時間的コストを抑えることができる。
【0013】
この水中浮遊式採泥装置は、水上の支援船から遠隔操縦される方式であり、各スラスタへの必要な駆動電力を支援船からケーブルで供給できるので、採泥装置内に動力源を備えている必要がなく、その点でも軽量化を図ることができる。また、水中カメラなどを装備することで、底質地盤の状況を確認しながら採泥作業を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る水中浮遊式採泥装置の一実施例を示す説明図。
図2】本発明に係る水中浮遊式採泥装置の他の実施例を示す説明図。
図3】本発明に係る水中浮遊式採泥装置の使用状態の一例を示す説明図。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明に係る水中浮遊式採泥装置の一実施例を示す説明図である。この採泥装置は、スラスタ駆動などのための制御部を内蔵する耐水圧筐体10の上部に浮体12が設置され、前記耐水圧筐体10の下方に採泥管14が鉛直下方に延びるように着脱自在に設けられると共に、前記耐水圧筐体10の左右に水平方向スラスタ16が、また前後に垂直方向スラスタ18が配設されている構造である。この構造で、水中では装置全体が中性浮力となり、且つ前記採泥管14が常に下向きを維持するように構造的な安定性を持たせている。ここで耐水圧筐体10は密閉円筒状であって、その内部に制御部などを含めて必要な電子機器等が収容され、該耐水圧容器10から電源ライン及び信号線などのための中性浮力ケーブル20が引き出される。そして、前記水平方向スラスタ16と垂直方向スラスタ18とにより、水中での自由な3次元的な位置移動が可能となり、前記垂直方向スラスタ18の推進力を利用して前記採泥管14の底質地盤中への貫入及び引き抜きを行い、不攪乱柱状に泥や砂などの底質試料を採取するように構成されている。
【0016】
この実施例では、左右両方の水平方向スラスタ16は、耐水圧筐体10の側面から水平方向に且つ中心軸に対して180度対称的に延びるアーム状の左右のスラスタ保持部材22の先端にそれぞれ取り付けられている。また前後両方の垂直方向スラスタ18は、耐水圧筐体10の側面から前後方向に延びるアーム状の前後のスラスタ保持部材24の先端にそれぞれ取り付けられている。これらのスラスタは、いずれもプロペラを備え、該プロペラの正転・逆転を制御可能な型式である。従って、水平方向スラスタ16を用いると、前進・後退、旋回、及び採泥管軸を中心とするその場での回転が可能であり、垂直方向スラスタ18を用いると上昇・下降が可能となる。
【0017】
採泥管14は、長さ方向に開閉可能な半割型式(スプリットバーレル)であって、該採泥管14の基端側が前記耐水圧筐体10の下部のジョイント部26に対して着脱自在である。該ジョイント部26は、逆円錐状に上部が大径で下部が小径の筒状をなし、その内部には逆止弁として機能するゴム球28が収容されており、ゴム球28の上方の管壁には排水口30が開口している。ここでゴム球28は、試料採取時に採泥管16に栓をし内部の試料を保持する機能を果たす。また、前記採泥管16の先端側にはシュー32が取り付けられている。このシューは、キャッチャー(脱落防止機構)付きとすることもできる。キャッチャー付きシューは、砂や礫など試料が脱落しやすい底質での使用に有効である。
【0018】
なお、前記耐水圧筐体10には音響測位システムのトランスポンダ40が装備されている。また、該耐水圧筐体10の側部には水中カメラ42及び超音波高度計44が装備されており、更に前記耐水圧筐体10の下部には採泥深さの限界を検知するリミットスイッチ46が設けられている。ここで音響測位システムは、SSBL(Super Short Baseline)の手法などを利用し採泥装置の位置を求めるものである。水中カメラ42は採泥地点近傍の底質地盤の状況などを確認するためなどに用いられ、超音波高度計44は底質地盤表面からの高さを計測するためのものである。
【0019】
図2は、本発明に係る水中浮遊式採泥装置の他の実施例を示す説明図であり、Aは正面図、Bは側面図である。各部の形状は異なっているが基本的な構成や機能は図1と同様であり、説明を簡略化するため、対応する部材には同一符号を付す。
【0020】
制御部を内蔵する耐水圧筐体10の上部に浮体12が設置され、前記耐水圧筐体10の下方に採泥管14が着脱自在に設けられている。前記耐水圧筐体10には左右に水平方向スラスタ16が、また前後に各2個合計4個の垂直方向スラスタ18が配設されている。ここで耐水圧筐体10は密閉箱型であって、その内部に制御部などを含めて必要な電子機器等が収容され、前記耐水圧容器10から電源ライン及び信号線などの中性浮力ケーブル(図示するのを省略)が水密的に引き出される。これによって、装置全体が中性浮力となり且つ前記採泥管14が常に下向きを維持するように構造的な安定性を持たせている。そして、水平方向スラスタ16と垂直方向スラスタ18とにより、水中での3次元的な位置移動を可能とし、前記垂直方向スラスタ18の推進力を利用して前記採泥管14の底質地盤中への貫入及び引き抜きを行い、それによって不攪乱柱状に泥や砂などの底質試料を採取する。
【0021】
この実施例では、水平方向スラスタ16は、耐水圧筐体10の両側面近傍に位置するようにスラスタ保持部材22によって取り付けられ、また垂直方向スラスタ18も、耐水圧筐体10の前後面近傍に位置するようにスラスタ保持部材24によって取り付けられている。垂直方向スラスタ18は、耐水圧筐体10の前面に2個並置され、後面にも2個並置されている。これらのスラスタは、いずれもプロペラを備え、該プロペラの正転・逆転を制御可能な型式である。従って、水平方向スラスタ16を用いると、前進・後退、旋回、及びその場での回転が可能であり、垂直方向スラスタ18を用いると上昇・下降が可能となる。採泥管の構造は,前記図1の実施例と同様であってよい。その他、音響測位システムのトランスポンダ40、水中カメラ42及び超音波高度計44など、必要な装置が装備されている。なお、耐水圧容器10内に収容される制御部として、方位センサや加速度センサなどが含まれていてもよく、必要なセンサ類を搭載すると、垂直方向スラスタによって採泥装置の姿勢制御を積極的に行うことができる。
【0022】
図3は、本発明に係る水中浮遊式採泥装置の使用状態の一例を示している。ここでは、図1に示す実施例の採泥装置を用いて説明する。遠隔操縦装置及び信号処理装置、電源などを備えた支援船60と水中浮遊式採泥装置62の耐水圧筐体10の内部の制御部とが中性浮力ケーブル20で接続され、スラスタ駆動のための電力供給及び各種信号の送受を前記ケーブル20を用いて行うように構成する。また、支援船60から水中に音響測位システムの送受波器62が吊り下げられ、水流や波などで動かないように船側に固定される。
【0023】
採泥装置を搭載した支援船60を採泥地点近くへ移動し、採泥装置64を水中へ投入する。採泥装置64は、重錘を備えておらず軽量化されているため、作業員1人でも持ち上げて水中に投入できる。水中に投入された採泥装置64は、装置全体が中性浮力を呈し構造的安定性を有しているので、特にスラスタを駆動しなくても、常に採泥管14が鉛直下向きとなって水中を浮遊する状態を維持する。その状態で、支援船60から供給される電力で、水平方向スラスタ16を駆動することで前進・後退、旋回、回転ができ、垂直方向スラスタ18を駆動することで上昇・下降ができる。移動した採泥装置の位置は、音響測位システムで常時観測される。水底の状況は、水中カメラ42で観察できるし、水底からの高さは超音波高度計44で把握できる。
【0024】
所定の採泥地点に達したなら、底質地盤64に採泥管14を貫入させる。水底よりもかなり上方から垂直方向スラスタ18を駆動し、勢いを付けて採泥管14を底質地盤に打ち込む方法を採用してもよい。あるいは、水底近傍で垂直方向スラスタ18を駆動して採泥管14を底質地盤66にゆっくりと圧入する方法でもよい。水底に礫などが堆積している場合には、水平方向スラスタ16の一方を正回転、他方を逆回転させて、採泥管14に中心軸の回りに回転力を付与すると、礫を避けて採泥管14を底質地盤に圧入することもできる。貫入深さは超音波高度計44で把握できるし、貫入限界はリミットスイッチ46でも検知できる。
【0025】
貫入が進むと、採泥管16内に、水底に堆積している泥・砂などが進入していき、採泥管14内の水はゴム球28を押し上げ、隙間から上昇して排水口30から排水される(図1参照)。これによって、底質試料は不攪乱の状態で柱状に採泥管14内に入り込むことになる。
【0026】
その後、採泥装置64を引き上げる。引上げには、垂直方向スラスタ18を逆向きに駆動する。そのままでは引上げが困難な場合は、水平方向スラスタ16の一方を正回転、他方を逆回転させ、採泥管14を中心軸の回りで回転させることで摩擦抵抗を下げ、垂直方向スラスタ18の推進力で上昇させる。そして、採泥装置64を支援船60上に引き上げる。採泥管14をジョイント部26から取り外し、新たな採泥管を装着すれば、直ちに次の採取活動が可能となる。採泥管14は開閉可能な半割型式なので、内部に充填された底質試料を不攪乱状態のまま容易に取り出すことができる。
【0027】
本発明において、水平方向スラスタや垂直方向スラスタの設置個数や設置位置、設置状況などは、使用状態などに応じて適宜変更してよい。垂直方向スラスタは、耐水圧筐体の上部に1個のみ設置することもできるが、実施例に示すように複数個対称的に設置する方がよい。図1の実施例のように、アーム状のスラスタ保持部材を用いて耐水圧筐体から離れた位置にスラスタを配置すると、比較的大きな口径のスラスタを取り付けることが容易なため、少数のスラスタで大きな推進力が得られる利点が生じる。逆に図2のように短いスラスタ保持部材を用いると、装置全体を小型化でき、搬送や保管が容易となり、船上での準備作業などの際に破損し難くなる利点がある。スラスタの口径が小さく、大きな推進力が得られない場合には、複数のスラスタを並置することで解決できる。また図2に示すように、垂直方向スラスタを前後左右に配置すると、前後の垂直方向スラスタでピッチ角を、左右の垂直方向スラスタでロール角を調整でき、何らかの不具合などが生じてバランスが崩れ採泥管が傾いても、容易に鉛直下向きに姿勢を修正することができる。
【符号の説明】
【0028】
10 耐水圧筐体
12 浮体
14 採泥管
16 水平方向スラスタ
18 垂直方向スラスタ
図1
図2
図3