特許第5863141号(P5863141)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ライフリングの特許一覧

<>
  • 特許5863141-タッチパネル操作用シール 図000003
  • 特許5863141-タッチパネル操作用シール 図000004
  • 特許5863141-タッチパネル操作用シール 図000005
  • 特許5863141-タッチパネル操作用シール 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863141
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】タッチパネル操作用シール
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/03 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   G06F3/03 400F
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-505670(P2015-505670)
(86)(22)【出願日】2014年3月17日
(86)【国際出願番号】KR2014002219
(87)【国際公開番号】WO2014142624
(87)【国際公開日】20140918
【審査請求日】2014年12月11日
(31)【優先権主張番号】特願2013-53515(P2013-53515)
(32)【優先日】2013年3月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504033670
【氏名又は名称】株式会社ライフリング
(74)【代理人】
【識別番号】100078776
【弁理士】
【氏名又は名称】安形 雄三
(74)【代理人】
【識別番号】100121887
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 好章
(74)【代理人】
【識別番号】100200333
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 真二
(72)【発明者】
【氏名】川和田 和彦
(72)【発明者】
【氏名】梶谷 二朗
【審査官】 遠藤 尊志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−251271(JP,A)
【文献】 特開2010−280911(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/046703(WO,A1)
【文献】 特開2013−239140(JP,A)
【文献】 特開2012−138061(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/03
G06F 3/039
G06F 3/041−3/047
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性シリコーンゴム層及び前記導電性シリコーンゴム層の一方に形成された接着剤層から成るタッチパネル操作用シールにおいて、前記導電性シリコーンゴム層のもう一方の片面に、表面加工用塗装料を塗装することによる表面加工が施され、前記導電性シリコーンゴム層の硬さは、ショアA硬度が、20°〜80°であり、且つ前記導電性シリコーンゴム層の体積抵抗率が2〜500Ω・cmであることを特徴とするタッチパネル操作用シール。
【請求項2】
前記導電性シリコーンゴム層が、改質されている請求項1に記載のタッチパネル操作用シール。
【請求項3】
前記導電性シリコーンゴム層は、更に塗料が塗装されている請求項1又は2に記載のタッチパネル操作用シール。
【請求項4】
前記塗料は、シリコーン用塗料である請求項3に記載のタッチパネル操作用シール。
【請求項5】
前記導電性シリコーンゴム層は、前記導電性シリコーンゴム層100重量部に対し、40〜50重量部のカーボンブラックを含有させて成る請求項1乃至4のいずれか1項に記載のタッチパネル操作用シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あらゆるタッチパネル方式にて使用可能なタッチパネル操作用シールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、タッチパネルは、銀行など金融機関のATM、自動販売機(特に鉄道駅やレストランなどの自動券売機)のような不特定多数が扱う公共性の高いものをはじめ、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、デジタルオーディオプレーヤー、携帯ゲーム機、コピー機、ファクシミリ、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータなどのデジタル情報機器を中心に多方面で使用されている。
【0003】
一般的に、タッチパネルには、抵抗膜、音響パルス、超音波表面弾性波、赤外遮光、投影型静電容量、電磁誘導、画像認識等の方式が採用されている。タッチパネルの基本原理は、いずれの方式においても、操作者の手指や先端に導電若しくは誘電加工を施したタッチペンなどといった導電(誘電)体で、タッチパネルの表面に圧力を加えてやることにより、触れられた画面位置の情報を感知して外部へ情報信号として出力する。
【0004】
しかしながら、操作者の手指によりタッチパネルを操作した場合、タッチペンの使用時と比べ、ピンポイント操作はしやすいが、力の加減により、手指とパネルとの接触状態が変化して位置がずれたり、操作者の手指の皮脂や汗によって、タッチパネル表面が汚れ、それにより操作性が劣化したりといった問題があった。また、従来のタッチペンは、手指により操作する場合に比べ、タッチパネル表面の汚れがつきにくいものの、ペンの先が尖っているものが多く、使い込むうちにタッチパネル表面が傷つき、タッチパネル表面自体や操作性が劣化するなどといった問題があった。
【0005】
上記のような欠点を解消したタッチペンとして、例えば、特開2009−259062号公報(特許文献1)には指サック型のタッチペンが、特開2012−252525号公報(特許文献2)には従来のタッチペンの先端を軟化させたタッチペンがそれぞれ開示されている。
【0006】
ここで、特許文献1に係るタッチペン100は、図1に示すように、指サック型の治具101と、該治具101の先端に取り付けられたペン先部102から成り、指に嵌めて使用する。特許文献1に係るタッチペンの場合、指に常時装着することにより、手指を使用した感覚で使用可能であり、且つペン先部が丸くなっているため、タッチパネル表面は傷つきにくい。しかしながらペン先部の形状が限られること、また原理としては従来のタッチペン式を採用しているため、タッチパネルへのピンポイント操作が、例えば高齢者や身体障がい者などにとっては困難である、といった問題があった。
【0007】
また、特許文献2に係るタッチペンも同様に、タッチパネルへのピンポイント操作が、例えば高齢者や身体障がい者などにとっては、困難なものである。そして、特許文献2に係るタッチペンは、先端部が軟化されているものの、基本的にシリコーンエラストマー基材に金属メッキを施して成る物であるため、製造コストがかかってしまうといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−259062号公報
【特許文献2】特開2012−252525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上の事情に鑑み、本発明の目的は、あらゆるタッチパネル方式にて使用可能である、指先貼り付け型のタッチパネル操作用シールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るタッチパネル操作用シールの上記目的は、導電性シリコーンゴム層及び前記導電性シリコーンゴム層の一方に形成された接着剤層から成るタッチパネル操作用シールにおいて、前記導電性シリコーンゴム層のもう一方の片面に、表面加工用塗装料を塗装することによる表面加工が施され、前記導電性シリコーンゴム層の硬さは、ショアA硬度が、20°〜80°であり、且つ前記導電性シリコーンゴム層の体積抵抗率が2〜500Ω・cmであることにより効果的に達成される。
【0011】
更に、本発明は、前記導電性シリコーンゴム層が、改質されていることにより、或いは前記導電性シリコーンゴム層は、更に塗料が塗装されていることにより、或いは前記塗料は、シリコーン用塗料であることにより、或いは前記導電性シリコーンゴム層は、前記導電性シリコーンゴム層100重量部に対し、40〜50重量部のカーボンブラックを含有させて成ることにより、より効果的に達成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るタッチパネル操作用シールにおいては、手指で操作する場合の利点を踏まえつつ、且つ該操作による皮脂、汚れの付着の防止が可能になった。
【0013】
また、シール方式を採用しているため、用途に合せて形状を変化させることが可能である。
【0014】
また、導電性シリコーンゴム層においては、その表面を加工しているので、従来の導電性シリコーンゴムのみの場合よりも、円滑な情報入力、書き込み等の円滑な操作が可能になった。
【0015】
また、タッチパネルのピンポイント操作が困難な、例えば高齢者や身体障がい者でも、ピンポイント操作が可能になった。
【0016】
また、抵抗膜、音響パルス、超音波表面弾性波、赤外遮光、投影型静電容量、電磁誘導、画像認識等の方式にとらわれることなくあらゆる方式のタッチパネルにて使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】特許文献1に係る指サック型タッチペンの概略図である。
図2】本発明に係るタッチパネル操作用シールの断面構造を示す概略図である。
図3】本発明に係るタッチパネル操作用シールを操作者の手指に貼り付けたときの態様を示す概略図である。
図4】本発明に係るタッチパネル操作用シールにおける種々の形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るタッチパネル操作用シールについて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図2は、本発明に係るタッチパネル操作用シールの断面構造を示す概略図である。本発明に係るタッチパネル操作用シール1は、導電性シリコーンゴム層2及び該導電性シリコーンゴム層2上に設けられた接着剤層3から成り、前記導電性シリコーンゴム層2のもう一方の表面には、表面加工層2’が設けられている。
【0020】
先ず、導電性シリコーンゴム層2について説明する。
【0021】
導電性シリコーンゴム層2を成す導電性シリコーンゴムは、基本的にはシリコーンゴムに、カーボンブラックを混合したものを使用する。ここで前記シリコーンゴムの原料となるシリコーン樹脂については、特に構造式などの限定はなく、また付加重合型、縮合反応型のいずれかで良い。なお、シリコーンゴム形成については、加硫剤を用いて前記シリコーン樹脂を硬化させても良い。
【0022】
カーボンブラックについては、シリコーンゴム成型前、即ちシリコーン樹脂を付加重合縮合反応、又は加硫剤を添加することにより硬化させる前に、該シリコーン樹脂と混合させる。カーボンブラックの配合量については、導電性シリコーンゴム層2を100重量部としたとき、40〜50重量部のカーボンブラックを含有させることが望ましく、ショアA硬度(硬さ)にして20°〜80°になるようにするのが好ましい。ここで、ショアA硬度とは、JIS K 6253に基づき、デュロメータA型を使用して測定した硬度であり、主にゴムの硬度測定に使用されるものである。更に、ショアA硬度(硬さ)にして20°〜80°の場合、導電性シリコーンゴム層2の体積抵抗率は、2〜500Ω・cmに調節することが好ましい。なお、前記導電性シリコーンゴム層2のショアA硬度が20°未満であると、後述する表面加工との兼ね合いもあるが、タッチパネル操作用シール1と、タッチパネル表面との間で固着する可能性が高い。また、ショアA硬度が80°以上であると、後述する表面加工との兼ね合いもあるが、耐磨耗性や摺動性、例えばタッチパネル表面が傷つき、操作性に影響が出る。
【0023】
前記導電性シリコーンゴムの製造については公知技術により製造可能である。更に、前記ゴム製造の後、前記導電性シリコーンゴムを改質する。ここで言う改質とは、前記導電性シリコーンゴム層2に、後述する表面加工層2’及び接着剤層3を設けたり、染料を塗布させるためである。この改質を行わない場合は、所望のタッチパネル操作用シールが製造できなくなる。なお、この改質については燃焼化学蒸着法などの公知技術(例えば、特許第4058438号公報、特許第4033478号公報を参照のこと)に依れば良い。
【0024】
また、導電性シリコーンゴム層2には表面加工層2’が施されている(設けられている)。ここで言う表面加工とは、本発明に係るタッチパネル操作用シールの使用時における摺動性や耐磨耗性、導電性シリコーンゴム層と、タッチパネル表面との固着防止における剥離性や離型性を向上させるために使用する。なお、表面加工層2’は、導電性シリコーンゴム層2の表面に表面加工用塗装料を塗装する形をる。そして、該塗装料には、先に述べた摺動性、耐磨耗性、剥離性、離型性を保持しつつ、導電性シリコーンゴムの導電性をも保持しなくてはならないため、導電性フッ素樹脂、導電性ポリチオフェン系ポリマーを主成分とした樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、アクリル樹脂等が望ましい。ちなみに、図2において、表面加工層2’を記載の都合上層構造としているが、上述の摺動性等の性状を保持できれば、層構造にこだわる必要は無い。

【0025】
以上に述べた態様でも導電性シリコーンゴム層2は成立するが、導電性シリコーンゴム層2に塗料を使用して、着色しても良い。この場合の塗料は、一般的なシリコーン用塗料を使用する。なお、導電性シリコーンゴムの着色については、導電性シリコーンゴム成型後に該導電性シリコーンゴムの表面を塗装すれば良い。後述の実施例にて詳述するが、前記塗装については、表面加工層2’を形成する前に塗装(表面塗装)を施す。
【0026】
また、導電性シリコーンゴム層2には、劣化防止剤、軟化剤、難燃剤等の添加剤が適宜添加可能である。
【0027】
次に、接着剤層3について説明する。
【0028】
接着剤層3は、使用者に対する感電等を防ぐため、絶縁性のものが好ましい。接着剤層3に使用する材料としては、シアノアクリレート系接着剤、アクリル樹脂系接着剤、ポリビニルアルコール系、ゴム又はラテックス系、シリコーン系接着剤等が使用可能である。
中でもシアノアクリレート系接着剤が好ましい。シアノアクリレート系接着剤は、手術用瞬間接着剤として用いられる。なお、本発明に係るタッチパネル操作用シール手指等への仮接着性、再剥離性、完全接着性を検討する場合は、上述の接着剤を適宜選択すれば良い。また、接着剤層3については、接着剤の他、例えば絶縁性の両面テープや、上記の接着剤とポリマー基材(例えばポリプロピレン等)組み合わせて用いても可能である。なお、接着剤層3については、公知技術で作成可能である。
【0029】
そして、タッチパネル操作用シール1の厚さは全体としては、0.3〜10mmくらいである。また、導電性シリコーンゴム層2と、接着剤層3との間における厚さの比率は、先述のタッチパネル操作用シール1の厚さが、0.3〜10mmであるということを遵守すれば、適宜選択可能である。
【0030】
また、本発明に係るタッチパネル操作用シールを使用する際は、接着剤層3を操作手指Fに貼付して使用する(図3参照)。図3では、1本の操作手指Fに貼付した場合を示しているが、タッチパネルの大きさや操作用途に合せて、片手指全体、両手指に貼りつけて使用することが可能であり、また、貼付位置も適宜変化可能である。
【0031】
なお、図4に示すように、本発明に係るタッチパネル操作用シール1の平面及び立体形状は、抜き型等の従来技術により、用途に合せて楕円、円錐形、長方形や正方形などの四角形、三角形、瓢箪形状などに加工可能であり、またタッチパネルの寸法に合せた形状を適宜採用可能である。
【0032】
以上、本発明に係るタッチパネル操作用シールについて説明したが、本発明の実施形態はこの限りではなく、特許請求の範囲及び本明細書に記載の事項を逸脱しない限りは種々の態様が可能である。
【実施例】
【0033】
上記に述べた実施形態に関して、本発明に係るタッチパネル操作用シールの作成例(実施例)を次に示す。なお、必要に応じて図2に記載の図面及び符号を使用しながら説明する。
【0034】
先ず、下記表1に示す配合条件で導電性シリコーンゴム層2(図2参照)を成す導電性シリコーンゴムを製作した。ちなみに、下記表1において、シリコーン樹脂として信越シリコーン社製のゴムコンパンウンドタイプの液状シリコーンを用い、カーボンブラックについては、汎用性カーボンブラック材料を使用した。また、シリコーン樹脂を硬化させるための硬化剤(加硫剤)として、信越シリコーン社製(品名:C−8)のものを適量(触媒量)配合した。なお、導電性シリコーンゴムの作製に関しては常法に則って作製した。
【0035】
【表1】
【0036】
次に、上記配合条件で作成した導電性シリコーンゴムに対し、株式会社イトロ製の表面改質装置を用いて改質を行った後、シリコーン用塗料と、表面加工層2’を成す表面加工用塗装料とを順に塗布し、更に接着剤層3を形成した。
【0037】
ここで、前記シリコーン用塗料として、汎用シリコーン用塗料を用い、前記表面加工用塗装料として、導電性フッ素樹脂(PTFE)を主成分とした表面改質コーティング剤を用い、前記接着剤層として、3M社製CoTran(登録商標)フォームテープを用いた。ちなみに、塗布方法や接着剤層の形成については常法にて可能である。
【0038】
なお、本実施例に係るタッチパネル操作用シールは、全体の厚さを適宜400〜1000μm(0.4〜1mm)とした。
【0039】
そして、本実施例に係るタッチパネル操作用シールは、図4に示すような形状に適宜成型した。
【0040】
以上、本発明に係るタッチパネル操作用シールの製造実施例について説明したが、本発明の実施例はこの限りではなく、例えば上記製造例にて製品名や製造会社等を記載していないものに関しては、主成分が同じであれば様々な製造会社のものが使用可能であり、また特許請求の範囲及び本明細書に記載の事項を逸脱しない限りは種々の態様が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
タッチパネルの大きさや操作用途に合せて、適宜大きさや形状が選択可能であるため、携帯電話やタブレット携帯情報端末のタッチパネルの用途のみならず、銀行など金融機関のATM、自動販売機(特に鉄道駅やレストランなどの自動券売機)のような不特定多数が扱う公共性の高いものをはじめ、デジタルオーディオプレーヤー、携帯ゲーム機、コピー機、ファクシミリ、カーナビゲーション、パーソナルコンピュータなどのあらゆるタッチパネル方式を採用している機器に利用可能である。
【0042】
また、本発明に係るタッチパネル操作用シールは、通常の生活環境以外の環境下、例えば海水や淡水などの水中環境、寒冷環境(極地、寒冷地、冷凍倉庫内等)、灼熱環境、真空状態(宇宙)、防爆環境などといった環境下やロボット操作作業などで、前記環境下対応用作業服着用時の手袋、操作機器、操作用触手等に貼り付けて利用可能である。
【符号の説明】
【0043】
1 タッチパネル操作用シール
2 導電性シリコーンゴム層
2’ 表面加工層
3 接着剤層
100 タッチペン
101 治具
102 ペン先部
F 手指
図1
図2
図3
図4