(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一つの実施形態である、監視する領域に侵入した不審者を検知して警報を発する警備システムを、図を参照しつつ説明する。この警備システムは、監視する領域をセキュリティ性の高い第1監視エリアと、第1監視エリアよりセキュリティ性の低い第2監視エリアとに分けて不審物体の進入を監視する。この警備システムは、第2監視エリア内に進入した人物が許可者であるか非許可者であるかを判別し、各人物を個別に追跡する。そして、許可者については不審者と判定せず、非許可者については、さらにその非許可者の行動に基づいて不審者か否かを判定する。一方、一旦許可者と判定した人物が、その後に非許可者であると判明した場合、追跡データに基づき、その人物が非許可者であるとして過去にさかのぼって行動を解析し、その人物が不審者か否かを再判定する。これにより、警備システムは、許可者と一旦誤って判定された不審者であっても遡及判定により的確に検出できる。
なお、本実施形態では、不特定人物による進入を許容しない進入規制区域にあたる戸建家屋の建物を第1監視エリアの例とし、第1監視エリアよりセキュリティ性が低く、不特定人物による進入を一定の制限の下で許容する戸建家屋の建物の周囲の敷地を第2監視エリア(以下、第2監視エリアを単に監視エリアと呼ぶ)の例として説明する。
【0011】
図1は、一つの実施形態に係る警備システム1の全体システム構成を示す図である。
図1に示すように、警備システム1は、家屋の周囲に設置され、監視エリアである敷地内の少なくとも一部分を監視対象とする少なくとも1台のセンサ端末2と、各センサ端末2と通信回線を通じて接続され、屋外に設置される監視端末3と、監視端末3と接続され、家屋内に設置される操作表示器4とを有する。
また警備システム1には、ユーザなど、特定の人物が所持する無線タグ5が含まれる。無線タグ5は、センサ端末2と無線通信可能となっている。そして無線タグ5は、センサ端末2から質問信号を受信すると、内蔵するメモリに記憶された識別コード(以下、タグ識別コードと称する)を返信する。
【0012】
センサ端末2は、監視エリア内に侵入した人物を検知するとともに、無線タグ5を検知し、その検知結果を監視端末3へ通知する。監視端末3は、センサ端末2からの検知結果に基づいて、監視エリア内に進入した人物が不審者か否かを判定する。そして監視端末3は、監視エリア内に進入した人物が不審者であると判定すると、公衆通信回線を介して接続された監視センタ装置6へ、不審者が検知されたことを示す異常通報を行う。
【0013】
操作表示器4は、タッチパネルディスプレイを有し、利用者が操作コマンドを入力するための操作ボタンを表示する。そしてその操作ボタンの何れかをユーザが押下することにより、その操作ボタンに割り当てられた所定の操作信号を監視端末3へ出力する。また、操作表示器4は、操作ボタンによる操作に従って、何れかのセンサ端末2のカメラにより撮像された画像を選択的に監視端末3から受け取って表示してもよい。
【0014】
無線タグ5は、警備システム1が設置された建物の住人などのユーザ毎に割り当てられたタグ識別コードを記憶し、各ユーザに所持される。なお、タグ識別コードは、全てのユーザで共通のコードとしてもよい。無線タグ5は、バッテリを内蔵し、センサ端末2から質問信号を受信すると、タグ識別コードを含む応答信号を送出する。センサ端末2はタグ識別コードにより建物の住人などのユーザとそれ以外の人物とを識別する。本実施形態では、無線タグ5を所持する人物を許可者と呼ぶ。一方、無線タグ5を所持しない人物は非許可者と呼ぶ。なお、無線タグ5は、周期的あるいは所定のタイミングで能動的にセンサ端末2へタグ識別コードを含む信号を送出するいわゆるアクティブ型タグで構成してもよい。
【0015】
図2は、警備システム1が設置された建物の外周に設定された監視エリアの一例を示す図である。監視エリアは、戸建家屋の建物の周囲の少なくとも一部に設定される。この例では、監視エリア200は、建物210の外周の一部に接する敷地全体に設定されている。監視エリア200は、複数の部分エリアに区分され、例えば、建物敷地にあたる監視エリア200への入口(敷地入口220)と建物210への入口230とをつなぐ領域である入場エリア201と、入場エリア201以外の領域である常監視エリア202の2種類に区分される。そして監視エリア200全体を監視できるように、建物210の外周には、センサ端末2がそれぞれ設置される。また、監視端末3も建物210の外周に設置され、操作表示器4は建物210の内部に設置される。なお、敷地入口220は、監視エリア200への入場口となる門や門扉に相当するが、敷地境界に塀など物理的な入場規制がない場合には、通常ユーザや訪問者が敷地内に入る際に通る通用口となる。また、建物210への入口230は、例えば建物の玄関扉に相当する。
【0016】
入場エリア201は、敷地入口220から建物210の入口230までの通路を含む領域に設定される。入場エリア201には、許可者だけでなく、非許可者も立ち入ることができる。すなわち、入場エリア201において非許可者が検知されても、それだけでは不審者と判断されない。
【0017】
常監視エリア202は、許可者以外の人物の立ち入りを禁止する領域である。そのため、常監視エリア202に非許可者が立ち入ると、警備システム1は、原則としてその非許可者を不審者と判定する。
【0018】
また、監視エリア200の外周の監視外のエリアは、敷地外エリアとされ、監視エリア200と区別される。さらに、建物210に相当するエリアは屋内エリアとされ、監視エリア200及び敷地外エリアと区別される。この屋内エリアは、原則として許可者のみが進入できるエリアであり、非許可者が進入すると不審者と判定される。ただし、監視端末3により、入場を許可する操作、例えば、監視解除操作または玄関の解錠操作が行われた後は、非許可者が進入しても不審者と判定されない。
なお、
図2に示した例では、監視エリアは、敷地内のうちの建物の外周の一部領域のみに設定されているが、監視エリアは建物の外周全域に設定されていてもよい。
【0019】
図3は、センサ端末2の概略構成図である。センサ端末2は、センサ21、タグリーダ22、カメラ23、宅内通信部24、スピーカ25、記憶部26及びセンサ処理部27を有する。
【0020】
センサ21は、監視エリア内に存在する人物の位置を周期的に検知する人体検知センサである。センサ21として、例えば、レーザ測距センサを利用できる。レーザ測距センサは、予め設定された走査範囲(例えば、180°)にわたって水平方向に所定の角度ステップ(例えば、0.25°単位)で、例えば約870nmの波長を持つ近赤外線のパルスレーザを投光し、そのレーザの反射光を検出する。そして、レーザ測距センサは、例えばTime-of-Flight法により、レーザを反射した物体までの距離を測定する。センサ21は、一定の周期(例えば、200msec)で走査範囲全体を走査し、その走査範囲内の各方位における、レーザが反射された点までの距離を測定し、測定された距離をパルスレーザを投光した方位と対応付けた測距データをセンサ処理部27へ通知する。
なお、センサ21は、レーザを水平及び垂直方向に2次元に走査し、走査方位と測定距離からなる3次元データを得るように構成してもよい。また、測距方法に関しては、公知の様々な方法を採用すればよく、例えば、位相差方式、三角測量方式などが利用できる。
【0021】
タグリーダ22は、監視エリア内に進入した人物を識別するための情報を取得する人体識別センサの一例である。
タグリーダ22は、例えば、900MHz帯又は2.4GHz帯の周波数で無線タグ5と通信する。タグリーダ22は、信号の送出方向について指向性を有するアンテナを備える。タグリーダ22のアンテナとして、例えば、複数の小さいアンテナを備え、各アンテナから送出する電波の位相を調整して合成波の進行方向を制御するアダプティブアレイアンテナを利用することができる。タグリーダ22は、予め設定された検知範囲(例えば、180°)にわたって水平方向に所定の角度ステップ(例えば、5°単位)で、質問信号を送出する。そして、タグリーダ22は、質問信号に応答した無線タグ5から応答信号を受信すると、その応答信号を解析して、応答信号に含まれるタグ識別コードを抽出する。そして、タグリーダ22は、抽出したタグ識別コードを質問信号を送出した方位と対応付けたタグデータをセンサ処理部27へ通知する。なお、タグリーダ22は、一定の周期(例えば、200msec)で検知範囲全体を走査し、その周期毎にタグデータをセンサ処理部27へ通知する。
なお、タグリーダ22は、信号の受信方向について指向性を有するアンテナを備えてもよいし、送信及び受信方向の両方に指向性を有するアンテナを備えてもよい。また、タグリーダ22を三つ配置して三点測量方式を用いることにより無線タグ5の位置を特定することもできる。
【0022】
なお、本実施形態では、タグリーダ22の検知範囲が、同じセンサ端末2のセンサ21の走査範囲に含まれる監視エリアと略同一範囲となり、監視エリア内の任意の位置に対する、タグデータにおける方位と測距データにおける方位が同じになるようにタグリーダ22とセンサ21は設置されるものとする。
【0023】
カメラ23は、所定の周期(例えば、200msec)で監視エリア内の所定領域を撮影し、その所定領域の画像を生成する。そしてカメラ23は生成した画像をセンサ処理部27へ渡す。所定領域は、例えば、同じセンサ端末2のセンサ21の走査範囲に含まれる監視エリアを撮影可能なように設定される。例えば、
図2の例では、各センサ端末2が有するカメラ23は、約180°の画角を有するものが用いられる。
【0024】
宅内通信部24は、センサ端末2と監視端末3とを通信可能に接続する。そのために、宅内通信部24は、例えば、センサ端末2と監視端末3とが、特定小電力無線通信などの所定の無線通信方式に従って接続されている場合、その無線通信用インターフェース回路を有する。あるいは、宅内通信部24は、センサ端末2と監視端末3とを接続する通信回線を終端するインターフェース回路を有してもよい。
【0025】
スピーカ25は、センサ処理部27から受け取った音声データを音声信号として出力する。
【0026】
記憶部26は、例えば、不揮発性の半導体メモリなどを有し、センサ端末2で利用される各種の情報及びプログラムを記憶する。
【0027】
記憶部26は、監視エリア全体の範囲、監視エリア内の各部分エリア(入場エリア、常監視エリア)の範囲、監視エリアの外から監視エリアへの入口、すなわち敷地外から敷地内へ入場するための敷地入口の位置、屋内エリアとの境界の位置及び建物の入口の位置を表すマップ情報を記憶するマップ情報記憶手段として機能する。
例えば、記憶部26は、
図2に示された監視エリア200の情報を、監視エリア200の左下の角の位置を原点とする2次元座標系で表されたマップ情報として保有する。監視エリア200は、外辺の座標により敷地外エリアとの境界が規定され、内辺の座標により建物との境界が規定される。そして、外辺で囲まれた領域のうち、建物との境界となる内辺で囲まれた領域を除いた領域を、監視エリア200の範囲とする。
また、入場エリア201、常監視エリア202など、監視エリア200内の各部分エリアの範囲を表す情報は、それら部分エリアの境界線で囲まれた領域として規定する。また、敷地入口220の位置は、監視エリア200を示すマップ上で、敷地入口220と隣接する所定幅の領域として規定し、同様に、建物の入口230の位置は入口230と隣接する一定幅の領域として規定する。
【0028】
また、記憶部26は、センサ処理部27が、センサ21による測距データから監視エリア内で検知された人物の位置を算出するために必要な情報として、監視エリア内のセンサ端末2の設置位置を表す座標、センサ21の走査範囲の基準方向(例えば、走査範囲の中心方向)、監視エリアに人がいない状態で測定されたセンサ21による基準測定データなどを記憶する。
さらに、記憶部26は、センサ処理部27が、監視エリア内で検知した人物とタグリーダ22により検知されたタグ識別コードとを対応付けるために必要な情報として、タグリーダ22の検知範囲の基準方向(例えば、検知範囲の中心方向)、ユーザが持つ予め登録された無線タグ5のタグ識別コード(以下、ユーザ識別コードと称する)などを記憶する。
さらに、記憶部26は、センサ端末2の識別コードを記憶する。そして、記憶部26は、記憶されている情報及びプログラムをセンサ処理部27へ出力する。あるいは、記憶部26は、センサ処理部27から受け取った情報を記憶する。
【0029】
センサ処理部27は、少なくとも一つのプロセッサ及びその周辺回路を有する。そして、センサ処理部27は、センサ端末2の各部を制御する。また、センサ処理部27は、カメラ23により撮影された画像を宅内通信部24を介して監視端末3へ送信する。また、センサ処理部27は、警告メッセージなどの音声データを監視端末3から受信すると、その音声データをスピーカ25へ伝達する。
【0030】
また、センサ処理部27は、センサ21から受け取った一周期分の測距データに基づいて、監視エリア内にいる人物を検知するとともに、検知した人物とタグリーダ22により検知された無線タグ5とを対応付ける。そのために、センサ処理部27は、そのプロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールとして、移動体検出手段271と、同一人物判定手段272と、権限識別手段273と、を有する。
【0031】
移動体検出手段271は、センサ21から受け取った測距データを記憶部26に記憶されている基準測定データと比較し、所定以上の距離変化が生じている方向(走査方位)を抽出し、所定以上の連続性(例えば、一般的な人のサイズ)を持った距離変化方向群を、監視エリアに進入した人物として検出する。そして、移動体検出手段271は、記憶部26に記憶されているマップ情報と、そのセンサ端末2の設置位置座標及びセンサ21の走査範囲の基準方向と、検出した人物に係る代表測距データ(例えば、距離変化方向群の中心の走査方位及び測定距離とする)とから、監視エリア内の人物の位置(すなわち、マップ情報上の位置座標)を算出する。なお、このような位置の算出は、単なる座標系の変換演算により行えるので、その詳細は省略する。また、移動体検出手段271は、各人物の位置座標を、マップ情報に含まれる各部分エリアの範囲と比較して、その人物の位置がどの部分エリアに含まれるかを判別する。なお、移動体検出手段271は、複数の距離変化方向群が抽出された場合、各距離変化方向群毎に人物か否かを判別し、その人物の位置を算出するとともに、その人物の位置がどの部分エリアに含まれるかを判別する。
【0032】
同一人物判定手段272は、現走査で検出された人物が前回の走査で検出された人物か否かを判定する。前回の走査で検出された人物か否かの判定には、例えば、公知の様々なトラッキング処理の何れかを利用することができる。例えば、現走査で検出された着目人物の位置と、1走査前に検知された何れかの人物の位置との距離が、人の移動可能速度から推定される所定距離以下であれば、同一人物判定手段272は、着目人物はその1走査前に検知された人物と同一人物であると判定する。さらに、現走査で検出された着目人物の距離変化方向群のサイズと、1走査前に検知された何れかの人物の距離変化方向群のサイズとの差が所定以下であることを同一人物の判定条件としてもよい。
現走査における着目人物と1走査前に検知された何れかの人物が同一人物と判定された場合、同一人物判定手段272は、その同一人物と判定された人物に1走査前に割り当てられていた人識別コードをその着目人物に割り当てる。一方、現走査における着目人物と1走査前に検知された何れの人物とも同一人物と判定されなかった場合、同一人物判定手段272は、着目人物は監視エリアに新たに進入した人物と判定し、新たな人識別コードを着目人物に割り当てる。
【0033】
権限識別手段273は、タグリーダ22から受信したタグ識別コードに基づいて、着目人物が無線タグ5と対応するか否か、つまり許可者であるか非許可者であるかを判定する。
権限識別手段273は、移動体検出手段271が人物を検出したときにタグリーダ22からタグデータを受信したか否かを判定する。そして、タグデータを受信していない場合、着目人物は無線タグ5と対応しないと判別し、タグデータを受信している場合、さらに、受信したタグ識別コードが記憶部26に予め登録されたユーザ識別コードの何れかと一致するか否かを判定する。そして、何れのユーザ識別コードとも一致しない場合、着目人物は無線タグ5と対応しないと判別し、何れかのユーザ識別コードと一致する場合、さらに、着目人物の代表測距データの走査方位と、そのタグデータにおける方位の差が所定値(例えば、5°)以下であるか否かを判定する。そして、着目人物の代表測距データの走査方位と、そのタグデータにおける方位の差が所定値以下である場合、着目人物は無線タグ5と対応すると判別する。
なお、権限識別手段273は、着目人物の代表測距データの走査方位と、そのタグデータにおける方位の差が所定値以下であるか否かを判定するのではなく、タグデータにおける方位が着目人物についての距離変化方向群の範囲内にあるか否かを判定することにより、着目人物が無線タグ5と対応するか否かを判別してもよい。
【0034】
センサ処理部27は、移動体検出手段271が人物を検出した場合、その人物の人識別コードと、検出した時刻を表す時刻情報と、検出した位置及びその位置の部分エリアを表す位置情報と、その人物が無線タグ5と対応するか否かを表すタグリンク情報と、タグ識別コードとを、センサ検知情報としてセンサ端末2の識別コードとともに宅内通信部24を介して監視端末3へ送信する。なお、タグリンク情報は、検出した人物が無線タグ5と対応する場合、タグリンク有となり、検出した人物が無線タグ5と対応しない場合、タグリンク無となる。
【0035】
図4は、センサ処理部27による人物検出処理の動作を示すフローチャートである。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶部26に記憶されているプログラムに基づき主にセンサ処理部27によりセンサ端末2の各部と協働して実行される。
図4に示すフローチャートは、センサ21から測距データを受け取ったタイミングで実行される。
【0036】
センサ21から測距データを受け取ると、移動体検出手段271は、受け取った測距データを基準測定データと比較し、監視エリアに人物が存在するか否かを判定する(ステップS401)。監視エリアに人物が存在しない場合、センサ処理部27は、一連のステップを終了する。一方、監視エリアに人物が存在する場合、センサ処理部27は、処理をステップS402に移す。なお、ステップS402〜S412の処理は、検出された人物毎に実行される。ステップS402において、移動体検出手段271は、着目人物の位置を算出するとともに、その着目人物の位置がどの部分エリアに含まれるかを判別する(ステップS402)。
【0037】
次に、同一人物判定手段272は、現走査で検出された着目人物が、前回の走査で検出された人物か否かを判定する(ステップS403)。同一人物判定手段272は、着目人物が前回の走査で検出された人物である場合(ステップS404のYes)、着目人物に、前回の走査で既に割り当てられていた人識別コードを割り当てる(ステップS405)。一方、同一人物判定手段272は、着目人物が前回の走査で検出された人物でない場合(ステップS404のNo)、着目人物に新たな人識別コードを割り当てる(ステップS406)。
【0038】
次に、権限識別手段273は、タグリーダ22からタグデータを受信したか否かを判定する(ステップS407)。タグデータを受信している場合、権限識別手段273は、タグ識別コードが記憶部26に予め登録されたユーザ識別コードの何れかと一致するか否かを判定する(ステップS408)。何れかのユーザ識別コードと一致する場合、権限識別手段273は、着目人物の検出方位と、検出された無線タグ5の検知方位の差が所定値以下であるか否かを判定する(ステップS409)。着目人物の検出方位と、検出された無線タグ5の検知方位の差が所定値以下である場合、権限識別手段273は、着目人物は無線タグ5と対応する、つまり許可者であると判別する(ステップS410)。一方、タグデータを受信していない場合、何れのユーザ識別コードとも一致しない場合、または検出された人物の代表測距データの走査方位と、そのタグデータにおける方位の差が所定値より大きい場合、権限識別手段273は、着目人物は無線タグ5と対応しない、つまり非許可者であると判別する(ステップS411)。
【0039】
次に、センサ処理部27は、人識別コードと、時刻情報と、位置情報と、タグリンク情報と、タグ識別コードとを、センサ端末2の識別コードとともに監視端末3へ送信する(ステップS412)。センサ処理部27は、検出した全ての人物についてステップS401〜S412の処理が完了すると、一連のステップを終了する。
【0040】
図5は、監視端末3の概略構成図である。監視端末3は、宅内通信部31、センタ通信部32、記憶部33及び監視処理部34を有する。
【0041】
宅内通信部31は、監視端末3とセンサ端末2とを通信可能に接続する。そのために、宅内通信部31は、例えば、監視端末3とセンサ端末2とが、特定小電力無線通信などの所定の無線通信方式に従って接続されている場合、その無線通信用インターフェース回路を有する。あるいは、宅内通信部31は、監視端末3とセンサ端末2とを接続する通信回線を終端するインターフェース回路を有してもよい。
そして宅内通信部31は、監視処理部34より出力された制御信号、音声データなどをセンサ端末2へ送信する。また宅内通信部31は、センサ端末2が検出した人物についての人識別コード、時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コード、または画像信号などをセンサ端末2から受信し、監視処理部34へ渡す。
【0042】
センタ通信部32は、監視端末3を公衆通信回線に接続するためのインターフェース回路を有する。そしてセンタ通信部32は、例えば、監視センタ装置6へ不審者が検知されたことを通報する場合、監視処理部34の制御に従って、監視端末3と監視センタ装置6間の接続処理を行う。そしてセンタ通信部32は、監視端末3と監視センタ装置6間で接続が確立された後、監視処理部34から受け取った、警備システム1または警備システム1が設置された建物の識別コードと、不審者が検知されたことを示す異常通報信号を公衆通信回線を介して監視センタ装置6へ送信する。またセンタ通信部32は、センサ端末2により撮像された画像も、公衆通信回線を介して監視センタ装置6へ送信してもよい。センタ通信部32は、上記のような各種情報の通報が終わると、監視端末3と監視センタ装置6間の接続を開放する処理を行う。
【0043】
記憶部33は、例えば、不揮発性の半導体メモリなどを有し、監視端末3で利用される各種の情報及びプログラムを記憶する。記憶部33は、センサ端末2の記憶部26と同様に、マップ情報記憶手段として機能し、監視エリアのマップ情報を記憶する。
さらに、記憶部33は、監視端末3と接続された各センサ端末2の識別コード、監視エリア内における各センサ端末2の設置位置を表す座標などを記憶する。
さらに記憶部33は、監視エリア内で検知された人物が存在する場合、その人物について設定された追跡データを記憶する。なお、追跡データの詳細については後述する。
さらに、記憶部33は、各センサ端末2から受信した画像を記憶してもよい。そして記憶部33は、記憶されている情報及びプログラムを監視処理部34へ出力する。あるいは、記憶部33は、監視処理部34から受け取った情報を記憶する。
【0044】
監視処理部34は、少なくとも一つのプロセッサ及びその周辺回路を有する。また監視処理部34は、タイマ回路を有する。そして、監視処理部34は、監視端末3の各部を制御する。また、監視処理部34は、各センサ端末2から受け取った情報に基づいて、監視エリア内にいる人物が不審者か否かを判定し、各種の警告処理を実行する。そのために、監視処理部34は、そのプロセッサ上で動作するソフトウェアにより実装される機能モジュールとして、位置追跡手段341と、イベント検出手段342と、判定手段343と、を有する。
【0045】
位置追跡手段341は、宅内通信部31を介してセンサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受信すると、その人物に対する追跡データを記憶部33に記録してその人物の位置を追跡する。
図6に追跡データの例を示す。
図6に示すように、追跡データは、人識別コード601毎に管理され、時刻602、位置(エリア)603、タグリンク情報604、タグ識別コード605、許可フラグ606及びイベント情報607が含まれる。なお、便宜上、
図6の各欄においてその内容を表す文言が示されているが、実際には、その文言に対応するコードが記憶部33に記憶されている。
位置追跡手段341は、新たに受信した人識別コードが既に追跡データに記録されている場合、受信した時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コードを、それぞれその人識別コードにおける直前の情報が記録された行の次の行の時刻602、位置603、タグリンク情報604、タグ識別コード605の欄に記録する。一方、位置追跡手段341は、新たに受信した人識別コードがまだ追跡データに記録されていない場合、その人識別コードを追跡データに新たに追加し、受信した時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コードを、それぞれ追加した人識別コードの先頭行の時刻602、位置603、タグリンク情報604、タグ識別コード605の欄に記録する。
【0046】
イベント検出手段342は、位置追跡手段341が追跡データを更新したとき、後述するタイマが満了したとき、または一定期間毎に、追跡データに基づいて、監視エリア内における人物の行動に応じたイベントの発生を検出する行動検出手段である。イベント検出手段342は、イベントの発生を検出すると、検出したイベントの識別コードを追跡データ中のイベント情報607に記録する。
【0047】
判定手段343は、イベント検出手段342が検出した各イベントに対応する処理を実行し、監視エリア内に不審者が存在するか否かを判定する。
【0048】
図7は、監視処理部34による追跡データに基づく処理の動作を示すフローチャートである。なお、以下に説明する動作のフローは、予め記憶部33に記憶されているプログラムに基づき主に監視処理部34により監視端末3の各部と協働して実行される。
図7に示すフローチャートは、センサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受け取ったタイミングで実行される。
【0049】
位置追跡手段341は、センサ端末2から監視エリア内に存在する人物についての情報を受信すると、受信した人識別コードが既に追跡データに記録されているか否かを判別する(ステップS701)。位置追跡手段341は、受信した人識別コードが既に追跡データに記録されている場合、その人識別コードにおける直前の情報が記録された行の次の行の各欄に受信した時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コードを記録する(ステップS702)。一方、位置追跡手段341は、受信した人識別コードがまだ追跡データに記録されていない場合、その人識別コードを追跡データに新たに追加し、追加した人識別コードの先頭行の各欄に受信した時刻情報、位置情報、タグリンク情報、タグ識別コードを記録する(ステップS703)。
【0050】
ステップS702又はステップS703において位置追跡手段341が追跡データを更新して人物の位置を追跡すると、イベント検出手段342は、追跡データに基づいて各イベントが発生したか否かを判定する(ステップS704)。イベント検出手段342は、イベントの発生を検出しなかった場合、一連のステップを終了する。一方、イベント検出手段342は、イベントの発生を検出した場合、検出したイベントの識別コードを追跡データのイベント情報に記録する(ステップS705)。次に、判定手段343は、イベント検出手段342が検出したイベントに対応する処理を実行し(ステップS706)、一連のステップを終了する。
【0051】
以下、各イベントについて説明する。発生するイベントには、入場イベント、退場イベント、滞留イベント、移動イベント、入館イベント、退館イベント及び権限変化イベントがある。
【0052】
入場イベントは、新たな人物が敷地外エリアから監視エリアに進入したことを表すイベントである。
イベント検出手段342は、
図6に示す追跡データに新たな人識別コードが追加され、そのときの人物の位置603が敷地外エリアとの境界の近傍である場合、入場イベントが発生したと判断する。
【0053】
判定手段343は、入場イベントの発生が検出されたとき、その人物が許可者である場合、監視エリアへの進入を許可する。一方、その人物が非許可者であり、敷地入口以外から進入している場合は、入場エリアか常監視エリアかに関わらず、不正に敷地内に入ってきた不審者と判定する。また、その人物が非許可者であり、敷地入口から進入しているときは直ちには不審者と判定せずに、その人物が不審者か否かの判定を保留し、その後の追跡で特定の不審行動が検出されるまで入場エリアへの進入を一時許可する。具体的には、その人物による入場エリア内での滞留行為を所定の許可時間だけ許容する。この許可時間は、入場エリア内において人物が何らかの不審な行為(例えば、ピッキング、覗き、ガラス破り)等を実行する可能性があると推定される時間であり、一時的に誤って進入し、直ぐに引き返したり、配達などの一時的な作業のために要する時間よりも長く設定される。例えば、この許可時間は、30秒に設定される。この許可時間をどのように設定するかは、監視エリアの広さ、監視目的等に応じて適宜最適化される。
このように、敷地入口から入ってきた人物を不審者と判定する判定基準を敷地入口以外から入ってきた人物を不審者と判定する判定基準より厳格にすることで、配達者、訪問者など、無線タグ5を所持しない人物が正当な事情により敷地入口から入ってきた場合に、そのような人物を不審者と判定することによる誤報の発生を防止できる。一方で、敷地入口から入ってきた無線タグを所持しない明らかな不審者を早期検出、通報することができる。
【0054】
図8は、判定手段343により実行される、入場イベント発生時の処理の動作を示すフローチャートである。
判定手段343は、入場イベントの発生が検出されると、追跡データにおけるタグリンク情報がリンク有かリンク無かにより、監視エリア内に新たに進入した人物が許可者であるか否かを判定する(ステップS801)。その人物が許可者である場合、判定手段343は、その人物の入場エリア内への進入を許可し(ステップS802)、一連のステップを終了する。一方、その人物が非許可者である場合、判定手段343は、追跡データにおけるその人物の位置が敷地入口の近傍か否かにより、その人物が敷地入口から進入したか否かを判定する(ステップS803)。
その人物が敷地入口以外から進入している場合、判定手段343は、その人物を不審者と判定し、監視エリア内への侵入があったことを表す外周侵入異常を、操作表示器4を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置6へ通報し(ステップS804)、一連のステップを終了する。なお、このとき、判定手段343は、警告メッセージの音声データをセンサ端末2へ送信して、スピーカ25から出力させてもよい。また、不審者と判定した人物が、さらに建物内へ侵入するおそれもあるため、監視処理部34は、その不審者を継続して追跡する。
一方、その人物が敷地入口から進入している場合、判定手段343は、その人物が不審者か否かの判定を保留し、追跡データにおいてその人物の許可フラグをONに設定して入場エリア内への進入を一時許可する(ステップS805)。この場合、判定手段343は、入場エリアへの進入を一時許可した非許可者を継続して追跡する。そのために、判定手段343は、許可時間が経過した後にその人物が入場エリア内に残っているか否かを確認するためのタイマを起動し(ステップS806)、一連のステップを終了する。この許可時間の計時は、敷地入口から進入した人物ごとに行う。
【0055】
上述した入場エリアへの進入の一時許可は、各人物毎に設定される。そのため、一時許可された人物が入場エリア内に既に存在する場合であっても、他の人物が敷地入口以外から入場エリアに進入すると、その人物は不審者と判定され、外周侵入異常が通知される。一方、一時許可された人物が既に入場エリア内に存在する場合に、他の人物が敷地入口から進入したときは、その人物に対しても別個に一時許可が設定され、その人物に対する許可時間を計時するタイマが新たに起動される。
【0056】
退場イベントは、人物が監視エリアから敷地外エリアへ退場したことを表すイベントである。
イベント検出手段342は、
図6に示す追跡データに記録された人物についての情報がセンサ端末2から一定期間連続して通知されず、その人物の最後の位置603が敷地外との境界の近傍である場合、退場イベントが発生したと判断する。この一定期間は、例えば、センサ端末2のセンサ21における1走査、あるいは複数走査に相当する期間とすることができる。
【0057】
判定手段343は、退場イベントの発生が検出されると、その人物についての追跡処理を終了する。つまり、判定手段343は、追跡データからその人物(人識別コード)についての情報を削除する。なお、その人物についての情報は、ユーザが確認できるように一定時間保持してから削除してもよい。また、その人物が不審者と判定されていた場合、不審者が検知されたことを監視装置で確認して復旧信号が入力されるまで、その人物についての情報は削除しないようにしてもよい。
【0058】
滞留イベントは、入場エリアへの進入を一時許可した非許可者が入場エリア内に滞在している時間が許可時間を越えたことを表すイベントである。
イベント検出手段342は、
図6に示す追跡データの許可フラグ606がONに設定された人物について計時中のタイマが許可時間を計時完了したとき、その人物について滞留イベントが発生したと判断する。
【0059】
判定手段343は、滞留イベントの発生が検出されると、その人物は何らかの不審な行為を実行するために進入した不審者と判定する。そして、判定手段343は、外周侵入異常を、操作表示器4を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置6へ通報する。
【0060】
移動イベントは、人物が入場エリアから常監視エリアに移動したことを表すイベントである。
イベント検出手段342は、
図6に示す追跡データにおいて、位置603が入場エリア内の位置から常監視エリア内の位置に変化した人物がいる場合、移動イベントが発生したと判断する。
【0061】
判定手段343は、移動イベントの発生が検出されると、追跡データのタグリンク情報604がリンク有かリンク無かにより、その人物が許可者か非許可者かを判定する。そして、判定手段343は、その人物が許可者の場合、特に処理を行わない。一方、その人物が非許可者の場合、さらに許可フラグ606がONであるか否かにより、その人物が入場エリアへの進入を一時許可した非許可者か否かを判定する。その人物が入場エリアへの進入を一時許可した非許可者でない場合、既にその人物は不審者と判定して、外周侵入異常を通知しているので、特に処理を行わない。一方、その人物が入場エリアへの進入を一時許可した非許可者の場合、その人物は、空き巣、潜伏等の目的で不正に侵入してきた不審者と判定する。そして、判定手段343は、外周侵入異常を、操作表示器4を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置6へ通報する。
【0062】
入館イベントは、人物が監視エリアから屋内エリア(建物)へ移動したことを表すイベントである。
イベント検出手段342は、
図6に示す追跡データに記録されている人物についての情報がセンサ端末2から一定期間連続して通知されず、その人物の最後の位置603が建物との境界の近傍である場合、入館イベントが発生したと判断する。この一定期間は、例えば、センサ端末2のセンサ21における1走査、あるいは複数走査に相当する期間とすることができる。
【0063】
判定手段343は、入館イベントの発生が検出されると、追跡データのタグリンク情報604がリンク有かリンク無かにより、その人物が許可者か非許可者かを判定する。そして、判定手段343は、その人物が許可者の場合、特に処理を行わない。一方、その人物が非許可者の場合、その人物は、空き巣等の目的で不正に建物に侵入した不審者と判定する。そして、判定手段343は、建物内への侵入があったことを表す建物侵入異常を、操作表示器4を介して建物内に在室するユーザに通知するとともに、監視センタ装置6へ通報する。
【0064】
退館イベントは、人物が屋内エリア(建物)から退出して監視エリアへ進入したことを表すイベントである。
イベント検出手段342は、
図6に示す追跡データに新たに人識別コードが追加され、そのときの人物の位置603が屋内エリアとの境界の近傍である場合、退館イベントが発生したと判断する。
【0065】
建物から退出した人物が非許可者である場合、訪問者が退館しようとしていること、または建物の住人などのユーザが無線タグ5を忘れて出てきたことが想定される。そこで、判定手段343は、退館イベントの発生が検出された場合、入場イベントの発生を検出したときと同様に、その人物が許可者であるときは入場エリアへの進入を許可し、その人物が非許可者であるときは、その人物に対して許可フラグを設定し、入場エリアでの滞在を所定の許可時間だけ一時許可する。
【0066】
権限変化イベントは、人物の権限が許可者から非許可者に変化したことを表すイベントである。
例えば、入場エリア内の敷地入口付近に無線タグ5が落ちていた場合、または無線タグ5を保持して敷地外にいるユーザとセンサ端末2との間の位置に非許可者が進入した場合等、無線タグ5を保持しない人物が入場エリアに進入したにも関わらず、無線タグ5と対応する許可者であると誤って判定される場合がある。その場合、その人物が入場エリア内で移動すれば、その人物とその無線タグ5は対応しなくなり、改めて非許可者と判定される可能性は高い。しかし、その人物が敷地入口以外から進入していた場合、または一定時間以上入場エリア内に存在し続けた場合でも、その時点でその人物が非許可者と判定されていなければ不審者と判定されない。また、その人物が常監視エリア内へ一度進入してから入場エリアに戻ってきているような場合も不審者と判定されない。
そこで、イベント検出手段342は、
図6に示す追跡データに記録された人物についてタグリンク情報604がリンク有からリンク無に変化した場合、つまりその人物が許可者から非許可者に変化した場合、権限変化イベントが発生したと判断する。つまり、イベント検出手段342は、許可者から非許可者に変化した人物を検出する状態変化検出手段の一例でもある。なお、イベント検出手段342は、タグリンク情報604がリンク有であった人物について、所定回数以上連続してタグリンク情報604がリンク無である場合に、権限変化イベントが発生したと判断する。この所定回数は、その人物が非許可者であることがタグリーダ22及び権限識別手段273の誤判定によるものでないとみなせる回数に設定され、例えば、タグリーダ22が200msec周期で検知範囲全体を走査している場合には5回(1秒間)とすることができる。あるいは、所定回数は1回としてもよい。
【0067】
判定手段343は、権限変化イベントの発生が検出されると、その着目人物が非許可者であるとして、追跡データ内の着目人物についての全ての情報、つまり着目人物が監視エリアに進入した時点からの情報に基づいて着目人物が不審者であるか否かを再判定する。判定手段343は、
図6に示す追跡データから、着目人物が監視エリアに進入した時点からの情報を順次読み出す。そして、読み出した情報内のイベント情報607に入場イベント、退館イベントまたは移動イベントが記録されている場合、これらのイベントが非許可者により発生したものとして各イベントに対応する処理を実行する。
【0068】
図9は、判定手段343により実行される、権限変化イベント発生時の処理の動作を示すフローチャートである。
判定手段343は、まず、追跡データから着目人物が監視エリアに進入した時点から現在までの情報を読み出す(ステップS901)。次に、判定手段343は、読み出した情報内のイベント情報に入場イベント、退館イベントまたは移動イベントが記録されているか否かを判別する(ステップS902)。読み出した情報内のイベント情報に入場イベント、退館イベントまたは移動イベントが記録されている場合、判定手段343は、各イベント検出時の非許可者に対する処理を実行する(ステップS903)。
【0069】
例えば、読み出した情報内のイベント情報に入場イベントが記録されている場合、判定手段343は、読み出した情報内の着目人物が入場エリアに進入した時点の位置が敷地入口の近傍か否かにより、着目人物が敷地入口から進入したか否かを判別する。そして、着目人物が敷地入口以外から進入していた場合、着目人物を不審者と判定して外周侵入異常を通知する。一方、着目人物が敷地入口から進入していた場合は、入場イベントが記録された時刻に許可時間を加えた時刻より後に着目人物が入場エリア内の位置に存在したことが記録されているか否かにより、着目人物が許可時間経過後も入場エリア内に残っていたか否かを判別する。そして、着目人物が許可時間経過後も入場エリア内に残っていた場合(すなわち滞留イベントが発生していた場合)、判定手段343は、着目人物を不審者と判定して外周侵入異常を通知する。なお、入場イベントが記録された時刻からまだ許可時間が経過していないときは、許可時間の残存時間に限ってタイマを起動し、そのタイマが計時完了したときに着目人物について滞留イベントが発生したとして着目人物を不審者と判定してもよい。
同様に、読み出した情報内のイベント情報に退館イベントが記録されている場合、判定手段343は、退館イベントが記録された時点から許可時間経過後に着目人物が入場エリア内に残っていたか否かを判別し、許可時間経過後も着目人物が入場エリア内に残っていた場合、着目人物を不審者と判定して外周侵入異常を通知する。
また、読み出した情報内のイベント情報に移動イベントが記録されている場合、判定手段343は、着目人物を不審者と判定して外周侵入異常を通知する。
【0070】
次に、判定手段343は、ステップS901で追跡データから読み出した情報について全てのイベント情報を確認したか否かを判別し(ステップS904)、まだ確認していないイベント情報がある場合、処理をステップS902に戻して、ステップS902からS904までの処理を繰り返す。全てのイベント情報について処理が完了すると、判定手段343は、一連のステップを終了する。
【0071】
なお、判定手段343は、さらに、追跡データから読み出した情報内のイベント情報に入館イベントが記録されている場合、その着目人物を不審者と判定して建物侵入異常を通知してもよい。
【0072】
これにより、無線タグ5を保持しない人物が許可者と一旦誤って判定された場合でも、その後その人物が非許可者と判定されれば、入場エリアへの進入時点にさかのぼって不審者か否かが再判定される。その人物が敷地入口から入場エリア内に進入していた場合、追跡データ上の入場エリアへの進入時点の情報では、その人物は不審者と判定されず、入場エリアへの進入が一時許可される。しかし、追跡データ上に、その人物が敷地入口以外から進入したり、入場エリア内に許可時間を越えて存在し続けたり、常監視エリアに移動したことが記録されている場合、その人物は不審者と判定され、外周侵入異常が通知される。
【0073】
なお、
図7に示すフローチャートのステップS704〜S706に示した、イベントの発生の検出処理及び検出したイベントに対応する処理は、位置追跡手段341が追跡データを更新したときだけでなく、一定期間毎に実行される。これは、退場イベントまたは入館イベントのように、人物が監視エリアから敷地外エリアまたは屋内エリアへ移動して、センサ端末2により検知できなくなった場合に対応する処理を実行するためである。なお、一定期間は、例えば、センサ端末2のセンサ21における1走査、あるいは複数走査に相当する期間とすることができる。さらに、上記の処理は、入場イベントで起動したタイマが満了したときにも実行される。これは、滞留イベントのように、監視エリア内の滞在を一時許可した非許可者が許可時間を越えて滞在する場合に、対応する処理を確実に実行するためである。
【0074】
以上説明してきたように、本発明の一つの実施形態に係る警備システムは、監視エリア内に進入した人物が許可者であるか非許可者であるかを判別し、各人物を個別に追跡する。そして、許可者については不審者と判定せず、非許可者については、さらにその非許可者の行動に基づいて不審者か否かを判定する。一方、この警備システムは、一旦許可者と判定した人物が、その後非許可者であると判明した場合、過去の追跡データに基づき、その人物が非許可者であるとして監視エリア内に進入した時点にさかのぼって行動を解析し、不審者か否かを再判定する。これにより、この警備システムは、監視エリアにおいて許可者と一旦誤って判定された不審者を的確に検出することができる。
【0075】
以上、本発明の好適な実施形態について説明してきたが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば、監視端末の判定手段は、入場イベントの発生が検出されたとき、非許可者が敷地入口から進入したか否かについて判別しないようにしてもよい。その場合、判定手段は、非許可者が敷地入口から進入しているか否かに関わらず、直ちには不審者と判定せずに一時的に入場を許容し、所定時間を越えて入場エリア内に滞在していた場合に不審者と判定する。そして、一旦許可者と判定した人物が、その後非許可者であると判明した場合も同様に、その人物が敷地入口以外から入場エリアに進入していても不審者と判定せず、所定時間を越えて入場エリア内に滞在していた場合に不審者と判定してもよい。
【0076】
また、警備システムにおいて、監視エリア内に常監視エリアを設定しないようにしてもよい。その場合、監視エリアの全範囲が入場エリアとなる。
【0077】
また、センサ端末は、監視エリア内の人物が許可者か非許可者かを判定するために、センサ端末が有するカメラにより撮影した画像に写った人物の顔を、予め登録されたユーザの顔と照合してもよい。その場合、センサ端末は、撮影した画像に写った人物の顔が、予め登録された何れかのユーザの顔と一致すると判定すると、その人物を許可者とする。一方、センサ端末は、撮影した画像に写った人物の顔が、予め登録された何れのユーザの顔とも一致しないと判定すると、その人物を非許可者とする。この変形例では、顔照合を行うために、例えば、公知の様々な顔照合処理の何れかを採用することができる。またこの場合、センサ端末は、タグリーダを有さなくてもよい。
また、センサ端末は、カメラにより撮像された画像と、監視エリア内に人物がいない場合に撮影され、予め記憶部に記憶された背景画像との背景差分により、またはカメラにより順次撮像された複数の画像間のフレーム間差分により、画像上の変化領域を抽出することで、人物を検出してもよい。この場合、センサ端末は、その変化領域内の少なくとも一点の監視エリア内の位置から人物の測距データを求める。
【0078】
また、各センサ端末が、監視端末の監視処理部における処理の一部を担うように構成されてもよい。例えば、各センサ端末のセンサ処理部が、監視エリア内に存在する人物の位置を追跡してもよいし、追跡データに基づいて各イベントの発生を検出し、各イベントに対応する処理を実行してもよい。
逆に、監視端末が、各センサ端末のセンサ処理部における処理の一部を担うように構成されてもよい。例えば、監視端末の監視処理部が、監視エリア内にいる人物の位置を算出してもよいし、順次検知した人物が同一人物か否かの判定を行ってもよいし、その人物が許可者か非許可者かを判定してもよい。
あるいは、センサ端末と監視端末とを一つの装置で構成してもよい。
【0079】
また、監視端末は、監視エリアに囲まれた建物の外周に限らず、他の場所に設置されていてもよい。あるいは、監視端末は、ユーザが携帯する端末であってもよい。この場合、例えば、監視エリア内の建物の外周または建物内には、中継装置が設置される。この中継装置は、各センサ端末と通信するためのインターフェース回路と、ユーザが携帯する監視端末と無線通信するための無線インターフェース回路とを有し、各センサ端末からの情報を中継して監視端末へ送信する。
また、監視エリアは、戸建家屋の敷地に限らず、オフィス、工場の敷地等であってもよく、その場合、屋内エリアは、例えば、オフィスの一室、工場の建物となる。
このように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。