(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記静止部が、筒状のケーシングと、前記ケーシングの端部に前記回転軸との隙間を封止するように設けられたヘッドと、前記ヘッドに固定されて前記回転軸を径方向に受けるジャーナル軸受とを有し、
前記拘束部材は、前記ジャーナル軸受に設けられて前記ヘッドへの固定用に用いられるネジ穴に螺合されるボルトを有することを特徴とする請求項1に記載の回転機械の治具。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第一実施形態)
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第一実施形態に係る回転機械の治具を使用する遠心圧縮機の構成について説明する。
図1は、第一実施形態に係る遠心圧縮機1の構成を示す概略断面図である。
【0020】
遠心圧縮機1は、
図1に示すように、軸線Lに沿って配されたロータ2(回転部)と、このロータ2を収容するケーシング3(静止部)と、ロータ2とケーシング3との間の隙間に設けられた一対のドライガスシール4と、を備えるものである。
【0021】
(ロータ)
ロータ2は、
図1に示すように、不図示のモータ等によって駆動側端部が回転駆動される回転軸21と、この回転軸21の軸方向中央部に所定間隔で固定された複数のインペラ22と、回転軸21の反駆動側端部すなわち駆動側端部と反対側の端部に固定された円盤状のスラストカラー23と、を有している。
【0022】
(ケーシング)
ケーシング3は、
図1に示すように、略円筒形状を有し両端が開口されたケーシング本体31と、このケーシング本体31の両端開口部にそれぞれ設けられた一対のヘッド32と、このヘッド32の軸方向端部を覆って設けられたエンドカバー33と、ヘッド32の内周面に固定されたスラスト軸受34と、同じくヘッド32の内周面に固定された一対のジャーナル軸受35と、ケーシング本体31の内周面に固定された複数のダイヤフラム36と、を有している。
【0023】
ヘッド32は、ケーシング本体31の両端開口を封止する役割を果たすものである。一対のヘッド32は、駆動側の端部開口に設けられる駆動側ヘッド321と、反駆動側の端部開口に設けられる反駆動側ヘッド322と、を備えるものである。
【0024】
駆動側ヘッド321は、
図1に示すように、リング状の部材であって、その外径はケーシング本体31の内径と略等しく、その内径は回転軸21の外径より若干大きく形成されている。そして、この駆動側ヘッド321には、その一端面から軸方向に突出して中空の突出部321aが設けられている。このように構成される駆動側ヘッド321は、その突出部321aを外側に向けた状態で、ケーシング本体31における駆動側の端部開口31Aに嵌合される。そしてこの時、駆動側ヘッド321とこれに挿通される回転軸21との間には、若干の隙間が形成される。
【0025】
エンドカバー33は、駆動側ヘッド321を密封する役割を果たすものである。このエンドカバー33は、
図1に示すように、円盤状の蓋部材であって、駆動側ヘッド321の突出部321aの先端に、その開口を覆うように取り付けられている。これにより、突出部321aの内部空洞は密封された状態となっている。
【0026】
反駆動側ヘッド322は、
図1に示すように、駆動側ヘッド321と同様にリング状の部材であって、その外径はケーシング本体31の内径と略等しく、その内径は回転軸21の外径より若干大きく形成されている。このように構成される反駆動側ヘッド322は、ケーシング本体31における反駆動側の端部開口31Bに嵌合される。そしてこの時、反駆動側ヘッド322とこれに挿通される回転軸21との間にも、若干の隙間が形成される。
【0027】
スラスト軸受34は、回転軸21を軸方向に受ける役割を果たすものである。すなわち、このスラスト軸受34は、
図1に示すように、回転軸21の反駆動側端部に固定されたスラストカラー23を、軸周りには回転可能に且つ軸方向には僅かに移動可能な状態で支持している。
【0028】
一対のジャーナル軸受35は、回転軸21を径方向に受ける役割を果たすものである。このジャーナル軸受35は、
図3に示すように、環状の軸受箱351と、この軸受箱351の内部に収容されて周方向に所定間隔で配置された複数の軸受パッド352と、を有している。このように構成される一対のジャーナル軸受35は、軸受パッド352が回転軸21の周面に当接することにより、回転軸21の軸方向両端部を、軸周りに回転可能にそれぞれ支持している。
【0029】
複数のダイヤフラム36は、ケーシング本体31の内部にガスの流路を形成する役割を果たすものである。これらダイヤフラム36は、
図1に示すように、その内周面が所定形状に形成されており、ケーシング本体31の内周面であってインペラ22に対向する位置に、相隣接した状態でそれぞれ固定されている。これにより、ケーシング本体31の内部には、ダイヤフラム36の内周面とインペラ22とによってガス流路5が形成されている。
【0030】
(ドライガスシール)
図1に示す前記ドライガスシール4は、ヘッド32と回転軸21との間に形成される隙間からガスが外部へ漏れ出すのを防止する役割を果たすものである。ここで、
図2は、ドライガスシール4の構造を示す概略断面図である。ドライガスシール4は、回転軸21と一体的に回転する駆動系ユニット41と、ヘッド32に固定された静止系ユニット42と、を備えるものである。
【0031】
駆動系ユニット41は、
図2に示すように、回転軸21の外周面に固定されてその軸方向一端部に凹部411aが形成されたスリーブ411と、このスリーブ411の凹部411aに固定された固定された回転環412と、回転環412とスリーブ411との間をシールするOリング413と、を有している。ここで、
図2に詳細は示さないが、回転環412のシール面412aすなわち駆動系ユニット41側の端面には、螺旋状の溝が形成されている。
【0032】
一般的に静止系ユニット42は、
図2に示すように、ヘッド32の内周面に固定されて凹溝421aが形成されたリテーナ421と、このリテーナ421の凹溝421aに一端が取り付けられたコイルバネ422と、このコイルバネ422の他端にディスク423を介して取り付けられた静止環424と、静止環424とディスク423との間をシールするOリング425と、リテーナ421に固定されてスリーブ411との間の隙間をシールするラビリンス426と、を有している。
【0033】
このように構成されるドライガスシール4によれば、回転軸21の回転が停止している時は、
図2に詳細は示さないが、コイルバネ422の付勢力により、静止環424のシール面424aすなわち静止系ユニット42側の端面が、回転環412のシール面412aに接触する。
【0034】
一方、回転軸21が回転し始めると、遠心圧縮機1の内部のガスが、回転環412のシール面412aに形成された螺旋状の溝(不図示)の内部に導入され、その動圧効果によって、静止環424はコイルバネ422の付勢力に抗して凹溝421aへ没入する方向へ移動する。これにより、
図2に示すように、回転環412と静止環424との間に微小なシール隙間7が生じてシールをする。このように、ドライガスシール4はシール隙間7を微小にすることで、大部分のガスが外部へ漏れ出すことを防止している。
【0035】
次に、本発明の第一実施形態に係る遠心圧縮機1の輸送方法について説明する。遠心圧縮機1の輸送に際しては、
図1に示すように、ロータ2の軸方向一端部に固定用治具10を装着する。まず、この固定用治具10の構成について説明する。
【0036】
(固定用治具)
図1に示す前記固定用治具10は、ロータ2をケーシング3に固定する役割を果たすものである。ここで、
図3は、
図1において固定用治具10の周辺を拡大した概略断面図である。固定用治具10は、回転軸21の駆動側端部に当接して径方向に延びるプレート11と、このプレート11の延在方向中央部に設けられた締付部材12と、この締付部材12を挟んでプレート11の延在方向両端部にそれぞれ設けられた一対の拘束部材13と、を有している。
【0037】
図4は、プレート11の外観を示す図であって、(a)は表面側から見た概略斜視図、(b)は裏面側から見た概略斜視図である。プレート11は、略矩形形状を有する板状の部材である。
図4(b)に示すように、プレート11の裏面11Bであって長手方向中央部には、略円柱形状のボス部111が突出して設けられている。そして、このボス部111を貫通して表面11Aの側へ達するようにして、前記締付部材12を挿通させるための第一ボルト挿通穴112が形成されている。また、プレート11の長手方向両端部を貫通して、前記拘束部材13を挿通させるための第二ボルト挿通穴113がそれぞれ形成されている。このように構成されるプレート11は、
図3に示すように、そのボス部111を回転軸21の駆動側端部に当接させた状態で配置される。
【0038】
締付部材12は、プレート11を回転軸21に締め付けて両者を一体化する役割を果たすものである。
図5は、締付部材12の外観を示す概略側面図である。締付部材12は、いわゆる六角ボルトであって、プレート11の第一ボルト挿通穴112より若干小径であって周面に雄ネジ121aが切られた軸部121と、この軸部121の一端部に設けられて前記ボルト挿通穴より大径の頭部122と、を有している。このように構成される締付部材12は、
図3に示すように、軸部121がプレート11の第一ボルト挿通穴112に挿通されるとともに、頭部122がプレート11に当接する位置まで、回転軸21の駆動側端部に設けられた第一ネジ穴211に対して軸部121が螺合される。この第一ネジ穴211は、図に詳細は示さないが、回転軸21の駆動側端部にカップリングと呼ばれる配管継手を装着する場合に、油圧を掛ける治具の取り付け用に予め設けられたものである。
【0039】
一対の拘束部材13は、一体化されたプレート11及び回転軸21をケーシング3に対して移動不能に拘束する役割を果たすものである。この拘束部材13は、
図3に示すように、長尺な固定ボルト131と、この固定ボルト131に螺合されたロックナット132と、同じく固定ボルト131に螺合された一対の六角ナット133と、を有している。
【0040】
図6は、固定ボルト131の外観を示す概略側面図である。固定ボルト131は、頭部を持たないいわゆるスタッドボルトであって、プレート11の第二ボルト挿通穴113より若干小径の軸部134を有している。そして、この軸部134の長手方向両端部には、所定長さに渡って雄ネジ134aがそれぞれ切られている。このように構成される固定ボルト131は、
図3に示すように、プレート11の第二ボルト挿通穴113に挿通されるとともに、その先端側の雄ネジ134aが、ジャーナル軸受35を構成する軸受箱351に設けられた第二ネジ穴351aに対して所定深さまで螺合される。ここで、固定ボルト131のうちプレート11から軸方向外側へ突出した部分は、駆動側ヘッド321に設けられた突出部321aの内部に位置している。尚、軸受箱351の第二ネジ穴351aは、ジャーナル軸受35を駆動側ヘッド321に固定するために予め設けられたものであり、軸受箱351には固定ボルト131が螺合されるもの以外にも複数の他の第二ネジ穴351aが設けられている。
【0041】
ロックナット132は、固定ボルト131の緩みを防止する役割を果たすものである。
図7は、ロックナット132を示す図であって、(a)は概略平面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。ロックナット132は、平面視略円形の外形を有し、その中心部を貫通して内周面に雌ネジが切られた第三ネジ穴132aが形成されている。また、ロックナット132の外周面には、周方向に90°間隔で4個のスパナ装着溝132bがそれぞれ形成されている。このスパナ装着溝132bは、ロックナット132の締め付け時に使用する六角棒スパナの先端を嵌合させるための溝である。このように構成されるロックナット132は、
図3に示すように、固定ボルト131におけるプレート11より軸方向内側の位置に螺合される。
【0042】
一対の六角ナット133は、固定ボルト131の第二ネジ穴351aへの螺合深さを調整する役割を果たすものである。これら一対の六角ナット133は、いわゆるダブルナットを構成し、互いに軸方向への引っ張り力が作用することでネジの緩みが生じにくくなっている。このように構成される一対の六角ナット133は、
図3に示すように、固定ボルト131におけるプレート11より軸方向外側の位置に、互いに密着した状態でそれぞれ螺合される。
【0043】
(固定用治具の装着手順及びその作用効果)
次に、第一実施形態に係る固定用治具10をロータ2の軸方向一端部に装着する手順、及びその作用効果について
図3を用いて説明する。固定用治具10の使用者は、まず、一対の固定ボルト131をジャーナル軸受35に取り付ける。すなわち使用者は、一対の固定ボルト131の長手方向一端部を、ジャーナル軸受35の軸受箱351に設けられた第二ネジ穴351aに対し、所定深さまでそれぞれ螺合させる。
【0044】
ここで、ジャーナル軸受35の第二ネジ穴351aは、前述のようにジャーナル軸受35を駆動側ヘッド321に固定するために予め設けられたものである。従って、この既設の第二ネジ穴351aを利用して固定ボルト131をジャーナル軸受35に取り付けることにより、固定ボルト131を螺合させるために軸受箱351に第二ネジ穴351aを新たに設ける場合と比較して、構造の簡略化を図るとともに作業の効率化を図ることができるという利点がある。
【0045】
次に使用者は、一対の固定ボルト131の長手方向他端側から、ロックナット132を所定の深さまでそれぞれ螺合させる。次に使用者は、一対の固定ボルト131にプレート11を取り付ける。すなわち使用者は、一対の固定ボルト131を、ボス部111を回転軸21の側に向けたプレート11の第二ボルト挿通穴113にそれぞれ挿通させる。そして使用者は、プレート11のボス部111を回転軸21の駆動側端部に当接させる。
【0046】
次に使用者は、締付部材12を用いてプレート11を回転軸21に固定する。すなわち使用者は、プレート11の長手方向中央部に設けられた第一ボルト挿通穴112に対し、締付部材12をその軸部121の側から挿通させ、この軸部121の先端部を回転軸21の第一ネジ穴211に螺合させる。そして、この締付部材12を締め付けて頭部122でプレート11を押圧することにより、プレート11を回転軸21に固定する。これにより、プレート11とロータ2とが一体化される。
【0047】
ここで、回転軸21の第一ネジ穴211は、前述のように回転軸21にカップリングを装着する際に使用する治具を取り付け用に予め設けられたものである。従って、この既設の第一ネジ穴211を利用してプレート11を回転軸21に固定することにより、締付部材12を螺合させるために回転軸21に第一ネジ穴211を新たに設ける場合と比較して、構造の簡略化を図るとともに作業の効率化を図ることができるという利点がある。
【0048】
次に使用者は、固定ボルト131に対して一対の六角ナット133をそれぞれ螺合させる。すなわち使用者は、プレート11の表面11Aから突出した固定ボルト131の長手方向他端部に、一対の六角ナット133を順に螺合させる。そして、これら六角ナット133を締め付けることにより、第二ネジ穴351aの更に深い位置まで固定ボルト131を螺合させる。そうすると、一対の固定ボルト131の移動に伴って、プレート11及びそれに一体化されたロータ2が軸方向内側へ移動する。これにより、
図1に示すように回転軸21の反駆動側端部に固定されたスラストカラー23が、スラスト軸受34に押し付けられる。これにより、回転軸21を含むロータ2は、軸方向へ移動不能に拘束される。
【0049】
またこの時、回転軸21の駆動側端部は、2本の固定ボルト131によってジャーナル軸受35に固定されることによって回転不能に拘束されるとともに、回転軸21の反駆動側端部は、スラストカラー23とスラスト軸受34との間に作用する摩擦力によって回転不能に拘束される。これにより、ロータ2全体が回転不能に拘束される。
【0050】
次に使用者は、ロックナット132を締め付ける。すなわち使用者は、
図7に示すロックナット132のスパナ装着溝132bに六角棒スパナ(不図示)の一端部を嵌合させ、この六角棒スパナを適宜操作することにより、
図3に示すように固定ボルト131に沿ってロックナット132をプレート11の側へ移動させる。これにより、六角ナット133によるプレート11の締め付けがより確実なものとなり、振動等によって六角ナット133に緩みが生じるのを防止することができる。
【0051】
最後に使用者は、
図3に示すように、駆動側ヘッド321の突出部321aの先端にエンドカバー33を取り付けた後、突出部321aの内部に窒素(不図示)を充填する。これにより、遠心圧縮機1を長期に渡って輸送する際に、内部の防水性が保たれる。ここで、前述のように固定用治具10はその全体が突出部321aの内部に納まっているため、エンドカバー33には固定用治具10との干渉を回避するための穴や切欠きを設ける必要がない。従って、当該穴や切欠きを介して突出部321aの内部に充填した窒素が外部へ漏れ出すことを防止することができる。
【0052】
このように、第一実施形態に係る固定用治具10によれば、一個の治具だけによってロータ2をケーシング3に対して軸方向及び回転方向の両方向へ移動不能に拘束することができる。これにより、遠心圧縮機1を輸送する際に、最小限の治具構成により、輸送時の振動によってロータ2がケーシング3に対してガタつくことを防止することができるので、遠心圧縮機1の安全且つ確実な輸送が可能となる。特に、本実施形態のように遠心圧縮機1がドライガスシール4を有する場合、輸送時の振動によって
図2に示す回転環412と静止環424とが擦れ合い、回転環412のシール面412aに形成された螺旋状の溝(不図示)が傷付くことにより、ドライガスシール4のシール性能が損なわれやすい。しかし、第一実施形態の固定用治具10を用いて回転環412と静止環424との擦れ合いを防止することによって、ドライガスシール4のシール性能が低下する問題を未然に防止することができる。
【0053】
(変形例)
尚、本実施形態では、1本の固定ボルト131に対して2個の六角ナット133を螺合させることによってダブルナットを構成したが、六角ナット133は1個だけにすることも可能である。また、本実施形態では固定ボルト131にロックナット132を螺合させたが、ロックナット132は本発明に必須の構成ではなく、ロックナット132の無い構成とすることも可能である。また、本実施形態では回転軸21の反駆動側端部はスラスト軸受34によって支持されるため、固定用治具10は回転軸21の駆動側端部のみに装着した。しかし、遠心圧縮機1がスラスト軸受34を持たない場合、回転軸21の駆動側端部と反駆動側端部の両側に固定用治具10を装着することにより、ロータ2を軸方向及び回転方向の両方向へ移動不能に拘束してもよい。
【0054】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る回転機械の治具を使用する遠心圧縮機の構成について説明する。
図8は、第二実施形態に係る遠心圧縮機50の構成を示す概略断面図である。本実施形態の遠心圧縮機50は、
図1に示す第一実施形態の遠心圧縮機1と比較すると、固定用治具10が回転軸21の反駆動側端部に装着されている点、及び回転軸21の駆動側端部に一対の補助治具51が設けられている点が異なっている。それ以外の構成は、第一実施形態と同じであるため、
図1と同じ符号をロータ2の駆動側端部に補助治具51が設けられている点が異なっている。それ以外の構成は、第一実施形態と同じであるため、
図8では
図1では同じ符号を付し、ここでは説明を省略する。
【0055】
図8に示すように、第二実施形態の固定用治具10も、第一実施形態と同様に、プレート11と、締付部材12と、一対の拘束部材13とを有している。しかし、本実施形態では、プレート11が回転軸21の反駆動側端部に当接して設けられ、締付部材12が回転軸21の反駆動側端部に螺合されることにより、プレート11とロータ2とを一体化している。そして、一対の拘束部材13は、一体化されたプレート11及びロータ2を反駆動側ヘッド322に対して拘束する点において、ジャーナル軸受35に対して拘束する第一実施形態とは異なっている。
【0056】
このような構成によれば、回転軸21の反駆動側端部に固定用治具10を装着すると、回転軸21の反駆動側端部に固定されたスラスト軸受34が、スラストカラー23がスラスト軸受34に押し付けられる。これにより、回転軸21の反駆動側端部は、固定用治具10及びスラスト軸受34の両方により、軸方向及び回転方向の両方向へ移動不能に拘束される。しかし、本実施形態では、回転軸21の駆動側端部が固定用治具10によって拘束される第一実施形態と異なり、回転軸21の駆動側端部が何ら拘束を受けない自由端となっている。従って、本実施形態では、回転軸21の拘束をより確かなものとするため、回転軸21の駆動側端部を一対の補助治具51によって拘束している。
【0057】
補助治具51は、
図8に示すように、軸部511と、軸部511の長手方向両端部に設けられた一対の押圧部512と、軸部511の長さを調整可能な調整部513と、を有している。そして、一対の押圧部512は、軸部511と逆側の面に、テフロン(登録商標)シート514がそれぞれ貼り付けられている。
【0058】
そして、このように構成される一対の補助治具51は、
図8に示すように、ケーシング本体31と回転軸21との間にそれぞれ設置される。すなわち、一対の補助治具51は、調整部513を介して軸部511の長さが適宜調整されることにより、一方の押圧部512が回転軸21の周面を押圧し、他方の押圧部512がケーシング本体31の内周面31aを押圧するようにしてそれぞれ設置される。これにより、回転軸21の駆動側端部は、一対の補助治具51から押圧力を受けることにより、軸方向及び回転方向の両方向へ移動不能に拘束される。
【0059】
尚、補助治具51の構成や個数は本実施形態に限定されず、適宜設計変更が可能である。また、補助治具51は本発明に必須の構成ではないが、本実施形態のように回転軸21の駆動側端部を補助治具51で拘束した方が、回転軸21の全体をより確実に拘束することができるので好適である。
【0060】
尚、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ、或いは動作手順等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。