【実施例1】
【0055】
本発明の複線区間における切保安装置および踏切制御切替装置に係る実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図1は、踏切制御切替装置50,60を導入した複線区間における切保安装置40の概要構成図であり、図中で踏切8と斜交する二点鎖線は踏切障害物検知装置35が障害物を検知する検知ビーム等をイメージしたものである。
図2は、複線区間における切保安装置40のうち下り側に導入された踏切制御切替装置50に係る回路図と接続図であり、
図3は、複線区間における切保安装置40のうち上り側に導入された踏切制御切替装置60に係る回路図と接続図であり、
図4は切替回路部66及び出力形成部67における各リレーの動作に係るタイムチャートであり、
図5は、複線区間における切保安装置40のうち踏切制御装置31を中心とした制御部分に係るブロック図であり、
図6(a)は、踏切障害物検知装置35に係るリレー信号等の入出力状態を示すブロック図である。
【0056】
この踏切保安装置40は(
図1参照)、既述した従来の踏切保安装置37(
図16参照)に対して上り側の線路10には踏切制御切替装置50を設置するとともに下り側の線路10には踏切制御切替装置60を設置することにより、既述した理想的な状態(
図19参照)と同等の状態を終止点用踏切制御子の追加なしで実現したものである。
具体的には(
図1参照)、既述したように、鉄道の複線区間において下り側と上り側との両線路10,10を横切る踏切8の両側に分かれて、下り側の線路10については踏切8より起点側で遠めの所に下り始動点ADCが設定されるとともに踏切8より終点側で近めの所に下り終止点BDCが設定されており、上り側の線路10については踏切8より終点側で遠めの所に上り始動点CDCが設定されるとともに踏切8より起点側で近めの所に上り終止点DDCが設定されている、ということが前提になっている。
【0057】
また、既述したように、下り始動点ADCに係る列車検知を行う閉電路形の始動点用踏切制御子21と、下り終止点BDCに係る列車検知を行う開電路形の終止点用踏切制御子22と、上り始動点CDCに係る列車検知を行う閉電路形の始動点用踏切制御子23と、上り終止点DDCに係る列車検知を行う開電路形の終止点用踏切制御子24と、複線区間における踏切制御装置31と、踏切障害物検知装置35と、図示しない電源装置を具えていることも前提となっており、踏切制御装置31は、始動点用踏切制御子21,23での列車検知結果を始動Rリレーの接点出力にて受けるとともに、終止点用踏切制御子22,24での列車検知結果を終止Rリレーの接点出力にて受けて、それらの列車検知結果に基づき、下り始動点ADCと下り終止点BDCとに亘る下りの踏切制御区間に下り列車が進入してから進出するまで踏切警報を発するとともに、上り始動点CDCと上り終止点DDCとに亘る上りの踏切制御区間に上り列車が進入してから進出するまでも踏切警報を発する。
【0058】
ここでは、踏切8に係る下り始動点ADC及び上り始動点CDCへの列車到来に応じて列車在線と上り下りを判別して列車運転方向指示を出す列車方向判別手段が、踏切制御装置31に内蔵されているものとする。この列車方向判別手段は、既述したように、下り列車が下りの踏切制御区間に進入してから進出するまでの間は下りSRリレー(下りの列車運転方向指示)を無励磁状態(有意な状態)にするが、それ以外のときは下りSRリレー(下りの列車運転方向指示)を励磁状態(無意な状態)にする。また、上り列車が上りの踏切制御区間に進入してから進出するまでの間は上りSRリレー(上りの列車運転方向指示)を無励磁状態(有意な状態)にするが、それ以外のときは上りSRリレー(上りの列車運転方向指示)を励磁状態(無意な状態)にするようになっている。
【0059】
さらに、既述したように、踏切障害物検知装置35は、感応部にて踏切8に係る障害物検知を行うとともに、下りSRリレーを警報認容条件とし且つ下り側マスク条件を警報抑制条件として警報が認容されているときであって、而も上りSRリレーを警報認容条件とし且つ上り側マスク条件を警報抑制条件として警報が認容されているときに限って、感応部での障害物検知結果に応じて、予め設定された所定時間の緩動性の条件も満たされると、発報部から警報を発するようになっている。
【0060】
このように従来踏切保安装置の構成要素をほぼそのまま引き継いだうえで、この踏切保安装置40は(
図1参照)、上り側の線路10に踏切制御切替装置50を設置するに先だって下り始動点ADCと踏切8との間に下り拡張点BBDCを設定しておくとともに、下り側の線路10に踏切制御切替装置60を設置するに先だって上り始動点CDCと踏切8との間に上り拡張点DDDCを設定しておくことも、前提となっている。下り拡張点BBDCも上り拡張点DDDCも、障検マスク区間を列車の踏切通過後から踏切到達前へ拡張するためのものなので、終止点BDC,DDCと同様に踏切横断物等による誤作動を避けながらも、障検マスク区間の拡張を踏切8の近くにとどめて過大拡張を避けるために、踏切8から例えば20〜30m程の近くに設定される。
【0061】
踏切制御切替装置50と踏切制御切替装置60は、同一構造のもので良いが、別体のものであって接続先が異なるので、別の符号を付して説明する。既述した接続線A1,B1(第1接続線)や,新たな接続線A2,B2(第2接続線)についても、区別する必要がないときにはその符号を踏襲するが、踏切制御切替装置50,60の何れの側のものかを区別するときには、踏切制御切替装置50の側のものは接続線A1d,B1d(第1接続線)や接続線A2d,B2d(第2接続線)とし、踏切制御切替装置60の側のものは接続線A1u,B1u(第1接続線)や接続線A2u,B2u(第2接続線)とする。
【0062】
すなわち、この踏切保安装置40は、踏切制御切替装置50と下り側の線路10との接続のために(
図1,
図2参照)、下り終止点BDCの所で下り側の線路10の接続線取付箇所15に一端を溶接等にて接続された一対の接続線A1d,B1d(第1接続線)と、下り拡張点BBDCの所で下り側の線路10の接続線取付箇所15aに一端を溶接等にて接続された一対の接続線A2d,B2d(第2接続線)とを具えている。
また、踏切制御切替装置60と上り側の線路10との接続のために(
図1,
図3参照)、上り終止点DDCの所で上り側の線路10の接続線取付箇所14に一端を溶接等にて接続された一対の接続線A1u,B1u(第1接続線)と、上り拡張点DDDCの所で上り側の線路10の接続線取付箇所14aに一端を溶接等にて接続された一対の接続線A2u,B2u(第2接続線)とを具えている。
【0063】
第1接続線としての接続線A1d,B1dと接続線A1u,B1uは何れも基本的には既存の第1接続線A1,B1と同様の絶縁被覆電線で良く長さも同じで良い。これに対し、第2接続線としての接続線A2d,B2dと接続線A2u,B2uは、何れも、材質面ではやはり既存の第1接続線A1,B1と同様の絶縁被覆電線で良いが、踏切制御切替装置50,60も踏切器具箱内に収納しようとすると第1接続線A1,B1よりも長くなりがちで、例えば第1接続線A1d,B1d,A1u,B1uが好ましいとされる15m以下になっていると、踏切道の幅員やレールまでのアプローチの長さなど合わせると50mを超えることになって、第2接続線A2d,B2d,A2u,B2uのインダクタンスが増加するので、第2接続線A2d,B2d,A2u,B2uにはコンデンサを直列に介挿接続して増加インダクタンスの影響を相殺することにより、第1接続線A1d,B1d,A1u,B1uと第2接続線A2d,B2d,A2u,B2uのインピーダンス特性をなるべく近づけておくのが望ましい。
【0064】
踏切制御切替装置50は(
図2参照)、切替制御部55と切替回路部56と出力形成部57とそれらを内蔵する筐体とを具えている。切替制御部55と切替回路部56と出力形成部57は、ここでは何れもリレー回路からなるものを示したが、外部との接続条件や入出力条件に適合していれば、電子回路など他の回路からなるものであっても良い。踏切制御切替装置50の筐体には、外部接続のために、接続線A1d,B1dに対する接続手段としての第1接続端子51と、接続線A2d,B2dに対する接続手段としての第2接続端子52と、終止点用踏切制御子22に対する接続手段としての接続端子53,54と、列車方向判別手段を含んだ踏切制御装置31に対する接続手段としての接続端子54a,54bと、踏切障害物検知装置35に対する接続手段としての接続端子54cとが装備されている。
【0065】
そのうち接続端子51は踏切器具箱内配線41と配線端子盤28を介して接続線A1d,B1dの他端に接続されていて下り終止点BDCに係る下り側の線路10の接続線取付箇所15へ照査用発振信号を送出する際の仲介を行うようになっており、接続端子52は踏切器具箱内配線42と配線端子盤28を介して接続線A2d,B2dの他端に接続されていて下り拡張点BBDCに係る下り側の線路10の接続線取付箇所15aへ照査用発振信号を送出する際の仲介を行うようになっており、接続端子53は踏切器具箱内配線27を介して終止点用踏切制御子22の制御子内配線AA,BBに接続されていて照査用発振信号を入力するようになっている。
【0066】
また、接続端子54は踏切器具箱内配線43を介して終止点用踏切制御子22のリレー出力BPRを入力するのを仲介するようになっており、接続端子54aは踏切器具箱内配線44を介して出力形成部57のリレー出力BPPRを踏切制御装置31へ送出する際の仲介を行うようになっており、これに対応して、踏切制御装置31は、終止点用踏切制御子22からそのリレー出力BPRを直接的に入力するのでなく、その代わりとして、介在する踏切制御切替装置50の出力形成部57等でリレー出力BPRを処理して出来たリレー出力BPPRを入力するものとなっている(
図2,
図5参照)。この出力BPPRが踏切制御装置31において、踏切警報を停止するための踏切警報終止条件となる。
【0067】
さらに(
図2参照)、接続端子54bは踏切器具箱内配線45を介して踏切制御装置31から下りSRリレー(下りの列車運転方向指示)を入力するのを仲介するようになっている。また、接続端子54cは踏切器具箱内配線46を介して出力形成部57の下マスクRリレーの出力を踏切障害物検知装置35へ踏切障害物検知の下り側マスクとして送出する際の仲介を行うようになっており、これに対応して、踏切障害物検知装置35は(
図6(a)参照)、マスク条件のうちの下り側マスクとして、終止点用踏切制御子22からそのリレー出力BPRを直接的に入力するのでなく、その代わりに、介在する踏切制御切替装置50の出力形成部57等でリレー出力BPRを処理して出来た下マスクRリレー出力を入力するものとなっている。
【0068】
このような踏切制御切替装置50の外部接続を前提として、装置50の内部の切替制御部55と切替回路部56と出力形成部57は、以下のようになっている(
図2参照)。
切替制御部55は、例えば下切替Rリレーを主体としたリレー回路で具現化されており、踏切制御装置31から入力した既述の下りSRリレーの接点と後述の下マスクRリレーの接点とで構成されている。そして、切替制御部55の主体の下切替Rリレーは、下りの踏切制御区間に列車が在線していないときには、下マスクRリレーが無励磁(落下)状態であることを前提として、無励磁(落下)状態になっているが、下り列車が下りの踏切制御区間に進入したときに踏切制御装置31からの下りSRリレーの無励磁(落下)接点が構成することにより励磁(動作)状態となる。それから、下マスクRリレーが励磁(動作)状態になると、回路が絶たれて下切替Rリレーが無励磁(落下)状態となる。その間は、下切替Rリレーは励磁(動作)状態を継続する。
【0069】
切替回路部56は、これも切替制御部55と同様にリレー回路で具現化されていて、接続端子51と接続端子53とを筐体内で接続する分岐配線a1,b1と、この分岐配線a1,b1に介挿して直列接続された下切替Rリレーの無励磁(落下)接点と、接続端子52と接続端子53とを筐体内で接続する分岐配線a2,b2と、この分岐配線a2,b2に介挿して直列接続された下切替Rリレーの励磁(動作)接点と、後者の分岐配線a2,b2のうち下切替Rリレーの励磁接点より接続線A2d,B2d寄りの部分に介挿して直列接続された可変容量部56a(第2調整部)とを具えている。可変容量部56aは、単一のバリアブルコンデンサでも良く、複数のコンデンサの組み合わせ回路からなるものでも良いが、コンデンサの開放故障時のインピーダンスの変化を最小限に抑えるには、複数のコンデンサを並列に接続して回路を構成することが、稼動性の維持・向上につながる。更に並列接続の場合、例えば固定容量のコンデンサと可変容量のコンデンサとを接続して大容量の確保と容量値の安定と可変範囲の適度な限定とを図るのも良い。
【0070】
そして、切替回路部56は、下切替Rリレーが励磁されていない第1切替状態では、分岐配線a1,b1ひいては終止点用踏切制御子22と第1接続線A1d,B1dとを接続させる一方、分岐配線a2,b2ひいては終止点用踏切制御子22と第2接続線A2d,B2dとを切断するようになっている。また、切替回路部56は、下切替Rリレーが励磁されている第2切替状態では、分岐配線a1,b1ひいては終止点用踏切制御子22と第1接続線A1d,B1dとを切断する一方、分岐配線a2,b2ひいては終止点用踏切制御子22と第2接続線A2d,B2dとを接続させるようになっている。
【0071】
そのため、踏切制御切替装置50を介して間接的に第1接続線A1d,B1dと第2接続線A2d,B2dとに接続される終止点用踏切制御子22は、踏切制御切替装置50の切替状態に依存して第1接続線A1d,B1dと第2接続線A2d,B2dとのうち何れか一方に対して択一的に接続され延いては接続線取付箇所15,15aの何れか一方の所で線路10に接続されるようになっている。そして、終止点用踏切制御子22は、第1切替状態では下り拡張点BBDCに係る列車検知を行わないで下り終止点BDCに係る列車検知を行い、第2切替状態では下り終止点BDCに係る列車検知を行わないで下り拡張点BBDCに係る列車検知を行うものとなっている。
【0072】
また、上述した構成の切替制御部55は、列車方向判別手段の判別結果として下りSRリレーの接点出力を踏切制御装置31から入力していて、それに基づいて、下り始動点ADCへの列車到来時には先ず切替回路部56に第2切替状態をとらせることにより終止点用踏切制御子22に下り拡張点BBDCに係る列車検知を行わせ、その後の下り拡張点BBDCへの列車進行時には切替回路部56に第1切替状態をとらせることにより終止点用踏切制御子22に下り終止点BDCに係る列車検知を行わせるものとなっている。
【0073】
出力形成部57は、下マスクRリレーを主体とした下マスクRリレー回路と、終止整形リレーBPPRを主体とした終止整形リレー回路とに大別される。
それらのうち、終止整形リレー回路は、常態では励磁されない上記の終止整形リレーBPPRと、上述した下切替Rリレーの接点出力と、終止点用踏切制御子22の検出結果であるリレー出力BPRの接点とで構成されている。
また、下マスクRリレー回路は、常態では励磁されない上記の下マスクRリレーと、列車方向判別手段の判別結果である下りの列車運転方向指示として踏切制御装置31から入力した下りSRリレーの接点出力と、終止点用踏切制御子22の検出結果であるリレー出力BPRの接点とで構成されている。
【0074】
そして、下マスクRリレー回路では、下り列車が下り始動点ADCに到来して下りSRリレーの無励磁(落下)接点が構成され、それから更に下り列車が進行して下り拡張点BBDCの列車検知長の区間に進入してリレー出力BPRの励磁(動作)接点が構成されると、下マスクRリレーが励磁(動作)状態になる。すると、上述したように下切替Rリレーが無励磁(落下)状態に戻り更にそれに伴う切替回路部56の切替による終止点用踏切制御子22の列車検知位置の下り拡張点BBDCから下り終止点BDCへの遷移によって一旦はリレー出力BPRが無励磁(落下)状態に戻るが、下マスクRリレーは自己保持機能にて励磁(動作)状態を維持する。
【0075】
そして、それから更に下り列車が進行して下り終止点BDCの列車検知長の区間に進入してリレー出力BPRの励磁(動作)接点が再び構成され、その後に下り列車が下り終止点BDCの列車検知長の区間から完全に抜け出てリレー出力BPRが励磁されなくなると、先に下りSRが励磁(動作)状態に戻っている(下りSRが励磁状態になるのは、下り列車の最先頭が下り終止点BDCの列車検知長の区間に到達した時点である(
図6(b)参照))ので、下マスクRリレーが無励磁(落下)状態になる。
このような下マスクRリレーは、下り拡張点BBDCへの列車進入と下り終止点BDCからの列車進出とに亘る障検マスク区間に対応した信号を生成するものとなっている。
【0076】
さらに、下マスクRリレー回路が、その信号を、下マスクRリレーの接点出力にて、接続端子54cと踏切器具箱内配線46を介して、踏切障害物検知の下り側マスク条件として、踏切障害物検知装置35に送出するようになっている。
そのため、踏切障害物検知装置35は、その内部構成は従来のままでも、外部入力の変更によって、下り列車に係る障検マスク区間が、踏切8の通過先の部分しか占めていなかった狭い旧区間から、踏切8を区間内に収めた広い新区間に拡張されたものとなっている。
【0077】
出力形成部57の終止整形リレー回路では、下切替Rリレーが無励磁(落下)状態に戻っているときに限って、終止点用踏切制御子22のリレー出力BPRが励磁(動作)状態になると、それに応じて終止整形リレーBPPRも励磁(動作)状態になるようになっている。そのため、終止整形リレーBPPRは、下り拡張点BBDCに係る列車検知結果を無視して、下り終止点BDCに係る列車検知結果だけを伝えるものとなる。また、終止点用踏切制御子22のリレー出力BPRそのものでなく終止整形リレーBPPRの接点出力を終止Rリレー出力として入力する踏切制御装置31は、その内部構成は従来のままでも、不都合なく、下り始動点ADCに係る列車検知結果と下り終止点BDCに係る列車検知結果とに基づいて踏切警報(警報R)を発し、また踏切警報を終止することができるものとなっている。
【0078】
なお、終止点用踏切制御子22には、製品により多少のばらつきがあるが、0.5〜0.7秒程度の緩放性(励磁されなくなってから落下するまでの遅れ)がある。また、この実施例の回路構成では、下切替Rリレーの動作が直接的に下マスクRリレーの状態によって規定されるとともに、下マスクRリレーの動作が終止整形リレーBPPR及び下りSRリレーを介して間接的に下切替Rリレーの状態によって規定され、相互依存の関係にあることから、緩放性や緩動性のない通常のリレーだけで構成すると、踏切制御切替装置50のリレー回路の動作状態が不安定になるので、それを回避するために、下切替Rリレーには終止点用踏切制御子22の緩放性より短い0.1秒程度の緩放性を持たせるとともに、終止整形リレーBPPRにはそれらより長い1秒程度の緩動性を持たせている。ちなみに、踏切障害物検知装置35において発報制御信号BZを生成する際の緩動性に係る所定時間は6秒程度に設定されている。
【0079】
踏切制御切替装置60は、上述したように上記の踏切制御切替装置50と同一構造のもので良いが、別体のものであって接続先が異なるうえ、別の符号を付して図示したので、繰り返しを厭わずに説明する。踏切制御切替装置60は(
図3参照)、やはり何れもリレー回路からなる切替制御部65と切替回路部66と出力形成部67と、それらを内蔵する筐体とを具えている。踏切制御切替装置60の筐体にも、外部接続のために、接続線A1u,B1uに対する接続手段と、接続線A2u,B2uに対する接続手段と、終止点用踏切制御子24に対する接続手段と、列車方向判別手段を含んだ踏切制御装置31に対する接続手段と、踏切障害物検知装置35に対する接続手段とが装備されている。
【0080】
各接続手段は、図示と符号を省いたが内外接続端子にて具現化されており、そのうち接続線A1u,B1uに対する接続手段は踏切器具箱内配線と配線端子盤28を介して接続線A1u,B1uの他端に接続されていて上り終止点DDCに係る上り側の線路10の接続線取付箇所14へ照査用発振信号を送出する際の仲介を行うようになっており、接続線A2u,B2uに対する接続手段は踏切器具箱内配線と配線端子盤28を介して接続線A2u,B2uの他端に接続されていて上り拡張点DDDCに係る上り側の線路10の接続線取付箇所14aへ照査用発振信号を送出する際の仲介を行うようになっており、終止点用踏切制御子24に対する接続手段は、二つあって、そのうちの一つが踏切器具箱内配線を介して終止点用踏切制御子24の制御子内配線AA,BBに接続されていて照査用発振信号を入力するようになっている。
【0081】
また、終止点用踏切制御子24に対する接続手段のうち他の一つは、踏切器具箱内配線を介して終止点用踏切制御子24のリレー出力DPRを入力するのを仲介するようになっている。踏切制御装置31に対する接続手段も二つあり、そのうちの一つは、踏切器具箱内配線を介して出力形成部67のリレー出力DPPRを踏切制御装置31へ送出する際の仲介を行うようになっており、これに対応して、踏切制御装置31は、終止点用踏切制御子24からそのリレー出力DPRを直接的に入力するのでなく、その代わりとして、介在する踏切制御切替装置60の出力形成部67等でリレー出力DPRを処理して出来たリレー出力DPPRを入力するものとなっている(
図3,
図5参照)。この出力DPPRも踏切制御装置31において、踏切警報を停止するための踏切警報終止条件となる。
【0082】
さらに(
図3参照)、踏切制御装置31に対する接続手段の他の一つは、踏切器具箱内配線を介して踏切制御装置31から上りSRリレー(上りの列車運転方向指示)を入力するのを仲介するようになっている。また、踏切障害物検知装置35に対する接続手段は踏切器具箱内配線を介して出力形成部67の上マスクRリレーの出力を踏切障害物検知装置35へ踏切障害物検知の上り側マスクとして送出する際の仲介を行うようになっており、これに対応して、踏切障害物検知装置35は(
図6(a)参照)、マスク条件のうちの上り側マスクとして、終止点用踏切制御子24からそのリレー出力DPRを直接的に入力するのでなく、その代わりに、介在する踏切制御切替装置60の出力形成部67等でリレー出力DPRを処理して出来た上マスクRリレー出力を入力するものとなっている。
【0083】
このような踏切制御切替装置60の外部接続を前提として、装置60の内部の切替制御部65と切替回路部66と出力形成部67は、以下のようになっている(
図3参照)。
切替制御部65は、例えば上切替Rリレーを主体としたリレー回路で具現化されており、踏切制御装置31から入力した既述の上りSRリレーの接点と後述の上マスクRリレーの接点とで構成されている。そして、切替制御部65の主体の上切替Rリレーは、上りの踏切制御区間に列車が在線していないときには、上マスクRリレーが無励磁(落下)状態であることを前提として、無励磁(落下)状態になっているが、上り列車が上りの踏切制御区間に進入したときに踏切制御装置31からの上りSRリレーの無励磁(落下)接点が構成することにより励磁(動作)状態となる。それから、上マスクRリレーが励磁(動作)状態になると、回路が絶たれて上切替Rリレーが無励磁(落下)状態となる。その間は、上切替Rリレーは励磁(動作)状態を継続する。
【0084】
切替回路部66は、これも切替制御部65と同様にリレー回路で具現化されていて、接続線A1u,B1uに対する接続手段と終止点用踏切制御子24の制御子内配線AA,BBに対する接続手段とを筐体内で接続する分岐配線a1,b1と、この分岐配線a1,b1に介挿して直列接続された上切替Rリレーの無励磁(落下)接点と、接続線A2u,B2uに対する接続手段と終止点用踏切制御子24の制御子内配線AA,BBに対する接続手段とを筐体内で接続する分岐配線a2,b2と、この分岐配線a2,b2に介挿して直列接続された上切替Rリレーの励磁(動作)接点と、後者の分岐配線a2,b2のうち上切替Rリレーの励磁接点より接続線A2u,B2u寄りの部分に介挿して直列接続された可変容量部66a(第2調整部)とを具えている。可変容量部66aは、上述した可変容量部56aと同様、単一のバリアブルコンデンサからなるものでも良く、複数のコンデンサの組み合わせ回路からなるものでも良い。
【0085】
そして、切替回路部66は、上切替Rリレーが励磁されていない第1切替状態では、分岐配線a1,b1ひいては終止点用踏切制御子24と第1接続線A1u,B1uとを接続させる一方、分岐配線a2,b2ひいては終止点用踏切制御子24と第2接続線A2u,B2uとを切断するようになっている。また、切替回路部66は、上切替Rリレーが励磁されている第2切替状態では、分岐配線a1,b1ひいては終止点用踏切制御子24と第1接続線A1u,B1uとを切断する一方、分岐配線a2,b2ひいては終止点用踏切制御子24と第2接続線A2u,B2uとを接続させるようになっている。
【0086】
そのため、踏切制御切替装置60を介して間接的に第1接続線A1u,B1uと第2接続線A2u,B2uとに接続される終止点用踏切制御子24は、踏切制御切替装置60の切替状態に依存して第1接続線A1u,B1uと第2接続線A2u,B2uとのうち何れか一方に対して択一的に接続され延いては接続線取付箇所14,14aの何れか一方の所で線路10に接続されるようになっている。そして、終止点用踏切制御子24は、第1切替状態では上り拡張点DDDCに係る列車検知を行わないで上り終止点DDCに係る列車検知を行い、第2切替状態では上り終止点DDCに係る列車検知を行わないで上り拡張点DDDCに係る列車検知を行うものとなっている。
【0087】
また、上述した構成の切替制御部65は、列車方向判別手段の判別結果として上りSRリレーの接点出力を踏切制御装置31から入力していて、それに基づいて、上り始動点CDCへの列車到来時には先ず切替回路部66に第2切替状態をとらせることにより終止点用踏切制御子24に上り拡張点DDDCに係る列車検知を行わせ(
図4の左側の部分を参照)、その後の上り拡張点DDDCへの列車進行時には切替回路部66に第1切替状態をとらせることにより終止点用踏切制御子24に上り終止点DDCに係る列車検知を行わせるものとなっている(
図4の中間の部分を参照)。
【0088】
出力形成部67は(
図3参照)、上マスクRリレーを主体とした上マスクRリレー回路と、終止整形リレーDPPRを主体とした終止整形リレー回路とに大別される。
それらのうち、終止整形リレー回路は、常態では励磁されない上記の終止整形リレーDPPRと、上述した上切替Rリレーの接点出力と、終止点用踏切制御子24の検出結果であるリレー出力DPRの接点とで構成されている。
また、上マスクRリレー回路は、常態では励磁されない上記の上マスクRリレーと、列車方向判別手段の判別結果である上りの列車運転方向指示として踏切制御装置31から入力した上りSRリレーの接点出力と、終止点用踏切制御子24の検出結果であるリレー出力DPRの接点とで構成されている。
【0089】
そして、上マスクRリレー回路では、上り列車が上り始動点CDCに到来して上りSRリレーの無励磁(落下)接点が構成され(
図4の左側の部分を参照)、それから更に上り列車が進行して上り拡張点DDDCの列車検知長の区間に進入してリレー出力DPRの励磁(動作)接点が構成されると、上マスクRリレーが励磁(動作)状態になる(
図4の中間の部分を参照)。上マスクRリレーが励磁(動作)状態になると上述したように上切替Rリレーが無励磁(落下)状態に戻り更にそれに伴う切替回路部66の切替による終止点用踏切制御子24の列車検知位置の上り拡張点DDDCから上り終止点DDCへの遷移によって一旦はリレー出力DPRが無励磁(落下)状態に戻るが、上マスクRリレーは自己保持機能にて励磁(動作)状態を維持する。
【0090】
そして、それから更に上り列車が進行して上り終止点DDCの列車検知長の区間に進入してリレー出力DPRの励磁(動作)接点が再び構成され、その後に上り列車が上り終止点DDCの列車検知長の区間から完全に抜け出てリレー出力DPRが励磁されなくなると(
図4の右側の部分を参照)、先に上りSRが励磁(動作)状態に戻っている(上りSRが励磁状態になるのは、上り列車の最先頭が上り終止点DDCの列車検知長の区間に到達した時点である)ので、上マスクRリレーが無励磁(落下)状態になる。
このような上マスクRリレーは、上り拡張点DDDCへの列車進入と上り終止点DDCからの列車進出とに亘る障検マスク区間に対応した信号を生成するものとなっている。
【0091】
さらに、上マスクRリレー回路が、その信号を、上マスクRリレーの接点出力にて、踏切障害物検知の上り側マスク条件として、踏切障害物検知装置35に送出するようになっている。そのため、踏切障害物検知装置35は、その内部構成は従来のままでも、外部入力の変更によって、上り列車に係る障検マスク区間が、踏切8の通過先の部分しか占めていなかった狭い旧区間から、踏切8を区間内に収めた広い新区間に拡張されたものとなっている。
【0092】
出力形成部67の終止整形リレー回路では、上切替Rリレーが無励磁(落下)状態に戻っているときに限って、終止点用踏切制御子24のリレー出力DPRが励磁(動作)状態になると、それに応じて終止整形リレーDPPRも励磁(動作)状態になるようになっている。そのため、終止整形リレーDPPRは、上り拡張点DDDCに係る列車検知結果を無視して、上り終止点DDCに係る列車検知結果だけを伝えるものとなる。また、終止点用踏切制御子24のリレー出力DPRそのものでなく終止整形リレーDPPRの接点出力を終止Rリレー出力として入力する踏切制御装置31は、その内部構成は従来のままでも、不都合なく、上り始動点CDCに係る列車検知結果と上り終止点DDCに係る列車検知結果とに基づいて踏切警報(警報R)を発することができるものとなっている。
【0093】
なお、終止点用踏切制御子24にも、上述した終止点用踏切制御子22と同様、0.5〜0.7秒程度の緩放性がある。また、この実施例の回路構成では、上切替Rリレーの動作が直接的に上マスクRリレーの状態によって規定されるとともに、上マスクRリレーの動作が終止整形リレーDPPR及び上りSRリレーを介して間接的に上切替Rリレーの状態によって規定され、相互依存の関係にあることから、やはり緩放性や緩動性のない通常のリレーだけで構成すると、踏切制御切替装置60のリレー回路の動作状態が不安定になるので、それを回避するために、上切替Rリレーには終止点用踏切制御子24の緩放性より短い0.1秒程度の緩放性を持たせるとともに、終止整形リレーDPPRにはそれらより長い1秒程度の緩動性を持たせている。
【0094】
この実施例1の踏切制御切替装置50,60及びそれを導入した踏切保安装置40について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図6(b)〜(e)は、下り列車が来たときの列車検知と踏切障害物検知とに係るリレー信号等のタイムチャートである。
【0095】
複線区間の線路10に対して新たに踏切保安装置40を設置する場合は上述した構成通りに踏切制御子21,22,23,24や,踏切制御装置31,警報灯32,踏切遮断機33,踏切障害物検知装置35,踏切制御切替装置50,60の配設とそれらに係る配線を行えば良く、既設の複線区間における踏切保安装置37に踏切制御切替装置50,60を追加して踏切保安装置37を踏切保安装置40にする場合は踏切制御切替装置50,60を追加してからそれに係る配線を変更すれば良いが、何れの場合も、設置が済んだら運用を開始する前に、第1接続線A1,B1と第2接続線A2,B2との長さの相違に基づく接続線切替時のインピーダンス変化に起因する照査用発振信号の不所望な変動を解消するために、照査用発振信号のレベル調整を行う。
【0096】
この踏切制御切替装置50,60の切替回路部56,66では、終止点BDC,DDCに係る接続線A1,B1に接続された分岐配線a1,b1には可変容量部56a,66a(第2調整部)が無く、拡張点BBDC,DDDCに係る接続線A2,B2に接続された分岐配線a2,b2の側にだけ可変容量部56a,66a(第2調整部)が組み込まれているので、例えばレベル調整の間だけ下りSRリレーや上りSRリレーの模擬信号を外部から接続端子54b等を介して切替制御部55,65に送り込むといったことにより、先ず切替回路部56,66に第1切替状態をとらせて接続線A1,B1に照査用発振信号を送出しながら終止点用踏切制御子22,24の調整器25a(第1調整部)にて終止点BDC,DDCに係る照査用発振信号のレベル調整を済ませ、次に切替回路部56,66に第2切替状態をとらせて接続線A2,B2に照査用発振信号を送出しながら切替回路部56,66の可変容量部56a,66a(第2調整部)にて拡張点BBDC,DDDCに係る照査用発振信号のレベル調整も行って、第1,第2切替状態における照査用発振信号のレベルを一致させる。
【0097】
こうして、簡便に、終止点BDC,DDCでも拡張点BBDC,DDDCでも列車検知が的確に行える状態になるので、踏切保安装置40を稼動させる。
上述したように踏切制御装置31が終止Rリレーとして終止点用踏切制御子22のリレー出力BPRや終止点用踏切制御子24のリレーDPRの代わりに入力するようになった終止整形リレーBPPR,DPPRは、やはり上述したように出力形成部57,67によって拡張点BBDC,DDDCに係る列車検知結果を含まないように処理されて、終止点BDC,DDCに係る列車検知結果だけを含んでいるため、踏切制御切替装置50,60が導入されていても、踏切制御装置31による踏切警報の制御等は現行通り行われる。
【0098】
そこで、踏切制御切替装置50,60の導入によって拡張されるマスク条件とそれを入力する踏切障害物検知装置35の動作について説明する。向きは反対になるが、上り側でも下り側でも、同様の動作になるので、以下、既述した従来例(
図18(b)〜(e)参照)と同様、複線区間の下り側を具体例にして詳述する(
図6(b)〜(e)参照)。
【0099】
下り列車が下り側の線路10を走行して来て下り始動点ADCの列車検知長の区間に進入すると(
図6(b)左側部分を参照)、それまで励磁されて無意状態だった下りSRリレーが励磁されなくなって有意状態になり、それに応じて切替制御部55の下切替Rリレーも無励磁状態から励磁状態になり、更にそれに応じて切替制御部55が第2切替状態をとるので、終止点用踏切制御子22は下り拡張点BBDCに係る列車検知を行う。
もっとも、その時点では未だ下り列車が下り拡張点BBDCに到達していないことから、終止点用踏切制御子22のリレー出力BPRが励磁されず無意状態になっているので、下マスクRリレーも励磁されず無意状態のままであり(
図6(c)左側部分を参照)、踏切障害物検知装置35は踏切8に対して障害物の検知と検知時の警報出力を行う。
【0100】
そして、下り列車が進行して下り拡張点BBDCの列車検知長の区間に進入すると(
図6(c)中央部分を参照)、リレーBPRが励磁されて有意状態になり、それに応じて下マスクRリレーも励磁されて有意状態になるので、踏切障害物検知装置35では踏切障害物検知の下り側マスクが働く。
また、下マスクRリレーの励磁に応じて切替制御部55の下切替Rリレーも励磁状態から無励磁状態になり、更にそれに応じて切替回路部56が第1切替状態をとるので、終止点用踏切制御子22は下り終止点BDCに係る列車検知を行う。
【0101】
それから、下り列車が更に進行して踏切8に差し掛かると(
図6(d)中央部分を参照)、その下り列車に感応して踏切障害物検知装置35では障害物感応信号SSが不感状態から有感状態になるが、踏切障害物検知装置35では既に下り側マスクが効いているため、発報制御信号BZが無意(無警報状態)のまま変わらないので、誤報は出ない。
但し、ここでいう、不感状態、有感状態とは、当該列車のみに対する不感状態、有感状態であり踏切障害物検知としては、踏切警報が開始後、あるいは踏切警報が開始してから更に数秒(踏切により指定する)後から、マスク条件が成立するの間、有感状態となり、踏切道に滞留する障害物を検知する。
その後、下り列車が下り終止点BDCへ進行して(
図6(b)中央部分を参照)、終止点用踏切制御子22のリレーBPRが励磁されて有意状態になると、緩動性に基づき少し遅れて終止整形リレーBPPRが励磁されて有意状態になり、それに応じて踏切制御装置31によって下りSRリレーが励磁されて無意状態に戻るが、下マスクRリレーは有意な励磁状態のままなので(
図6(c)中央部分を参照)、やはり誤報は出ない。
【0102】
そして、更に下り列車が走行して踏切8を完全に通り抜けると(
図6(d)中央右寄り部分を参照)、踏切障害物検知装置35では障害物感応信号SSが有感状態から不感状態に戻るが、依然として、下マスクRリレーが有意な励磁状態のままなので(
図6(c)中央右寄り部分を参照)、踏切障害物検知装置35から誤報が出ることはない。
それから、下り列車が走行して下り終止点BDCの列車検知長の区間をも完全に抜けると(
図6(c)右側部分を参照)、終止点用踏切制御子22のリレーBPRが励磁されなくなって無意状態になり、これに応じて終止整形リレーBPPRと共に下マスクRリレーも励磁されなくなって無意状態になり、踏切保安装置40の全体が列車非在線状態に戻る。
【0103】
このような下り側の踏切障害物検知発報マスク動作は、列車の走行方向を上り側にするとともに、対応するリレーや信号を置き換えれば、そのまま成り立つので、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、踏切制御切替装置50,60を導入した踏切保安装置40では、障検マスク区間が踏切道を挟んでその両側に位置する拡張点BBDC,DDDCと終止点BDC,DDCとに亘る区間に拡張されて、踏切8が障検マスク区間内に完全に収まるため、下り列車の最先頭が踏切8に差し掛かってから下り列車の最後尾が踏切8を抜け出すまでの時間tが、列車の高速走行に対応して短い場合はもちろん(
図6(d)参照)、列車の低速走行に対応して長い場合でも(
図6(e)参照)、踏切障害物検知装置35が踏切通過中の列車を検知して誤報が出るという虞は、全くない。
【0104】
上述した構成より明らかなように、障検マスク区間の拡張のために追加導入されたものが、拡張点用踏切制御子22a,24aでなく、それより遙かに簡素で安価な踏切制御切替装置50,60及び接続線にとどまるため、コストアップは小さい。
【実施例2】
【0105】
本発明の単線区間における踏切保安装置および踏切制御切替装置に係る実施例2について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。
図7は、踏切制御切替装置84を導入した単線区間における踏切保安装置80の概要構成図であり、図中で踏切8と斜交する二点鎖線は踏切障害物検知装置35が障害物を検知する検知ビーム等をイメージしたものである。
図8は、踏切制御切替装置84に係る回路図と接続図であり、
図9は、踏切制御装置34を中心とした制御部分に係るブロック図であり、
図11(a)は、踏切障害物検知装置35に係るリレー信号等の入出力状態を示すブロック図である。
【0106】
この踏切保安装置80は(
図7,
図8参照)、鉄道の単線区間の線路10に設けられた踏切8に係る踏切警報を行うために設けられたものであり、踏切8の起点側の下り始動点ADCの所で線路10に接続線を介して接続された閉電路形の始動点用踏切制御子21と、踏切8の終点側の上り始動点CDCの所で線路10に接続線を介して接続された閉電路形の始動点用踏切制御子23と、始動点用踏切制御子21の接続先の下り始動点ADCと踏切8との間に設定された本来あるべき理想的な上り終止点の所(ここでは、上検知点DDCと呼ぶ)で線路10の接続線取付箇所14に溶接にて一端部を接続された第1接続線A1,B1と、始動点用踏切制御子23の接続先の上り始動点CDCと踏切8との間に設定された本来あるべき理想的な下り終止点の所(ここでは、下検知点DDDCと呼ぶ)で線路10の接続線取付箇所15に溶接にて一端部を接続された第2接続線A2,B2とを備えている。
【0107】
また、踏切保安装置80は、線路10に接続線を介して接続されると線路10の接続線取付箇所に係る列車検知を行う開電路形の終止点用踏切制御子24と、始動点用踏切制御子21での列車検知結果を示す下始動Rリレーの出力と始動点用踏切制御子23での列車検知結果を示す上始動Rリレーの出力と終止点用踏切制御子24での列車検知結果を示す出力リレー(ここでは、出力リレーの名称をDPPRリレーと呼ぶ)の出力とを入力してそれらに基づき踏切警報制御を行って列車運転方向を判別するとともに列車運転方向に応じて上りSRリレーで上りSRを出力したり下りSRリレーで下りSRを出力する単線区間における踏切制御装置34と、それらを組み合わせた結果である警報Rリレーの出力に応動するスピーカや,警報灯32,踏切遮断機33と、線路10に係る障害物検知を行うとともに上記列車運転方向指示およびマスク条件による警報認容時には障害物検知結果に応じて警報を発する踏切障害物検知装置35と、例えば金属製箱体からなる筐体にて一ユニットに纏められた踏切制御切替装置84も備えている。
【0108】
これらのうち、接続線A1,B1と接続線A2,B2は、接続先の線路10が単線のため同じものになっている点は別として、上述したものと同じで良く、上述したように長さが相違する。また、終止点用踏切制御子24は、既述した終止点用踏切制御子22と同一構成のもので良く、踏切制御装置34と踏切障害物検知装置35も既述したものと同じで良いので、これらの詳細な説明は繰り返しとなるので割愛する。
踏切制御切替装置84は、新たに導入されたものなので以下詳述するが、これは、上述した一の筐体に加えて、その筐体に何れも内蔵されている切替制御部85と切替回路部86と出力形成部87とを具えている。
【0109】
踏切制御切替装置84の筐体には内外接続用の接続端子が幾つか設けられており、それらは、踏切制御切替装置84と外部との接続のために、第1接続線A1,B1に対する接続手段と、第2接続線A2,B2に対する接続手段と、終止点用踏切制御子24に対する接続手段と、踏切制御装置34に対する接続手段と、踏切障害物検知装置35に対する接続手段などに割り振られている。それらの接続端子へ直に外部配線を接続しても良いが、踏切器具箱内配線や配線端子盤28の端子など介して接続されることが多い。
【0110】
切替制御部85は、例えば、上述した切替制御部55とそっくりで下切替Rリレーを主体とした下切替側リレー回路と、やはり上述した切替制御部65とそっくりで上切替Rリレーを主体とした上切替側リレー回路とを、並設する形で具現化されている。違いは、下マスクRリレーや上マスクRリレーに代えて一に統合されたマスクRリレーの接点出力を入力するようになっている点である。なお、設置先が単線区間の線路10であるため、下りSRリレーと上りSRリレーが同時期に無励磁状態(有意状態)になることがないので、下切替Rリレーと上切替Rリレーも同時に励磁されて有意状態になることはない。
【0111】
切替制御部85のうち下切替側リレー回路の部分は、踏切制御装置34から入力した既述の下りSRリレーの接点と、出力形成部87のマスクRリレーの接点とで構成されている。そして、主体の下切替Rリレーは、下りの踏切制御区間に列車が在線していないときには、マスクRリレーが無励磁(落下)状態であることを前提として、無励磁(落下)状態になっているが、下り列車が下りの踏切制御区間に進入したときに踏切制御装置34からの下りSRリレーの無励磁(落下)接点が構成することにより励磁(動作)状態となる。それから、マスクRリレーが励磁(動作)状態になると、回路が絶たれて下切替Rリレーが無励磁(落下)状態に遷移するようになっている。その間は、下切替Rリレーは励磁(動作)状態を継続する。
【0112】
また、切替制御部85のうち上切替側リレー回路の部分は、踏切制御装置34から入力した既述の上りSRリレーの接点と、出力形成部87のマスクRリレーの接点とで構成されている。そして、主体の上切替Rリレーは、上りの踏切制御区間に列車が在線していないときには、マスクRリレーが無励磁(落下)状態であることを前提として、無励磁(落下)状態になっているが、上り列車が上りの踏切制御区間に進入したときに踏切制御装置34からの上りSRリレーの無励磁(落下)接点が構成することにより励磁(動作)状態となる。それから、マスクRリレーが励磁(動作)状態になると、回路が絶たれて上切替Rリレーが無励磁(落下)状態に遷移するようになっている。その間は、上切替Rリレーは励磁(動作)状態を継続する。
【0113】
切替回路部86は、これもリレー回路で具現化されていて、上述した切替回路部56,66を重ね合わせて接続したような回路になっている。すなわち、切替回路部86は、これも切替制御部55と同様にリレー回路で具現化されていて、終止点用踏切制御子24の制御子内配線AA,BBと接続線A1,B1とを筐体内で接続する分岐配線a1,b1と、下切替Rリレーの無励磁(落下)接点と上切替Rリレーの励磁(動作)接点とを並列接続してから分岐配線a1に介挿して直列接続した二接点接続回路と、下切替Rリレーの無励磁(落下)接点と上切替Rリレーの励磁(動作)接点とを並列接続してから分岐配線b1に介挿して直列接続した二接点接続回路とを具えている。
【0114】
さらに、切替回路部86は、終止点用踏切制御子24の制御子内配線AA,BBと接続線A2,B2とを筐体内で接続する分岐配線a2,b2と、上切替Rリレーの無励磁(落下)接点と下切替Rリレーの励磁(動作)接点とを並列接続してから分岐配線a2に介挿して直列接続した二接点接続回路と、上切替Rリレーの無励磁(落下)接点と下切替Rリレーの励磁(動作)接点とを並列接続してから分岐配線b2に介挿して直列接続した二接点接続回路と、分岐配線a2,b2に介挿して直列接続された可変容量部56a(第2調整部)も具えている。可変容量部56aは、上述したものと同じで良い。
【0115】
そして、切替回路部86は、上切替Rリレーが励磁されずに下切替Rリレーが励磁されている第1切替状態では、分岐配線a1,b1ひいては終止点用踏切制御子22と第1接続線A1,B1とを接続させる一方、分岐配線a2,b2ひいては終止点用踏切制御子22と第2接続線A2,B2とを切断するようになっている。また、切替回路部86は、下切替Rリレーが励磁されずに上切替Rリレーが励磁されている第2切替状態では、分岐配線a1,b1ひいては終止点用踏切制御子22と第1接続線A1,B1とを切断する一方、分岐配線a2,b2ひいては終止点用踏切制御子22と第2接続線A2,B2とを接続させるようになっている。
【0116】
そのため、踏切制御切替装置84を介して間接的に第1接続線A1,B1と第2接続線A2,B2とに接続される終止点用踏切制御子24は、踏切制御切替装置84の切替状態に依存して第1接続線A1,B1と第2接続線A2,B2とのうち何れか一方に対して択一的に接続され延いては接続線取付箇所14,15の何れか一方の所で線路10に接続されるようになっている。そして、終止点用踏切制御子24は、第1切替状態では下検知点DDDC(本来あるべき理想的な下り終止点の所DDDC)に係る列車検知を行わないで上検知点DDC(本来あるべき理想的な上り終止点の所DDC)に係る列車検知を行い、第2切替状態では上検知点DDC(本来あるべき理想的な上り終止点の所DDC)に係る列車検知を行わないで下検知点DDDC(本来あるべき理想的な下り終止点の所DDDC)に係る列車検知を行うものとなっている。
【0117】
また、上述した構成の切替制御部85は、列車方向判別手段の判別結果として上りSRリレーの接点出力を踏切制御装置34から入力していて、それに基づいて、上り始動点CDCへの列車到来時には先ず切替回路部86に第2切替状態をとらせることにより終止点用踏切制御子24に下検知点DDDCに係る列車検知を行わせ、その後の下検知点DDDCへの列車進行時には切替回路部86に第1切替状態をとらせることにより終止点用踏切制御子24に上検知点DDCに係る列車検知を行わせるものとなっている。
【0118】
さらに、切替制御部85は、列車方向判別手段の判別結果として下りSRリレーの接点出力を踏切制御装置34から入力していて、それに基づいて、下り始動点ADCへの列車到来時には先ず切替回路部86に第1切替状態をとらせることにより終止点用踏切制御子24に上検知点DDCに係る列車検知を行わせ、その後の上り終止点DDCへの列車進行時には切替回路部86に第2切替状態をとらせることにより終止点用踏切制御子24に下検知点DDDCに係る列車検知を行わせるものにもなっている。
【0119】
出力形成部87は、マスクRリレーを主体としたマスクRリレー回路と、終止整形リレー上DPPR及び下DPPRを主体とした終止整形リレー回路とに大別される。
それらのうち、終止整形リレー回路は、常態では励磁されない上記の終止整形リレー上DPPR及び下DPPRと、上述した上切替Rリレー及び下切替Rリレーの接点出力と、終止点用踏切制御子24の検出結果であるリレー出力DPRの接点とで構成されている。
また、マスクRリレー回路は、常態では励磁されない上記のマスクRリレーと、列車方向判別手段の判別結果である列車運転方向指示として踏切制御装置34から入力した下りSRリレーの接点出力および上りSRリレーの接点出力と、終止点用踏切制御子24の検出結果であるリレー出力DPRの接点とで構成されている。
【0120】
そして、マスクRリレー回路では、上り列車が上り始動点CDCに到来して上りSRリレーの無励磁(落下)接点が構成され、それから更に上り列車が進行して下検知点DDDCの列車検知長の区間に進入してリレー出力DPRの励磁(動作)接点が構成されると、マスクRリレーが励磁(動作)状態になる。マスクRリレーが励磁(動作)状態になると上述したように上切替Rリレーが無励磁(落下)状態に戻り更にそれに伴う切替回路部86の切替による終止点用踏切制御子24の列車検知位置の下検知点DDDCから上検知点DDCへの遷移によって一旦はリレー出力DPRが無励磁(落下)状態に戻るが、マスクRリレーは自己保持機能にて励磁(動作)状態を維持する。
【0121】
そして、それから更に上り列車が進行して上検知点DDCの列車検知長の区間に進入してリレー出力DPRの励磁(動作)接点が再び構成され、その後に上り列車が上検知点DDCの列車検知長の区間から完全に抜け出てリレー出力DPRが励磁されなくなると、先に上りSRが励磁(動作)状態に戻っている(上りSRが励磁状態になるのは、上り列車の最先頭が上検知点DDCの列車検知長の区間に到達した時点である)ので、マスクRリレーが無励磁(落下)状態になる。このようなマスクRリレーは、上り列車に関して、下り終止点BDCへの列車進入と上り終止点DDCからの列車進出とに亘る障検マスク区間に対応した信号を生成するものとなっている。
【0122】
また、マスクRリレー回路では、下り列車が下り始動点ADCに到来して下りSRリレーの無励磁(落下)接点が構成され、それから更に下り列車が進行して上検知点DDCの列車検知長の区間に進入してリレー出力DPRの励磁(動作)接点が構成されたときにも、マスクRリレーが励磁(動作)状態になる。すると、上述したように下切替Rリレーが無励磁(落下)状態に戻り更にそれに伴う切替回路部86の切替による終止点用踏切制御子24の列車検知位置の上検知点DDCから下検知点DDDCへの遷移によって一旦はリレー出力DPRが無励磁(落下)状態に戻るが、マスクRリレーは自己保持機能にて励磁(動作)状態を維持する。
【0123】
そして、それから更に下り列車が進行して下検知点DDDCの列車検知長の区間に進入してリレー出力DPRの励磁(動作)接点が再び構成され、その後に下り列車が下検知点DDDCの列車検知長の区間から完全に抜け出てリレー出力DPRが励磁されなくなると、先に下りSRが励磁(動作)状態に戻っている(下りSRが励磁状態になるのは、下り列車の最先頭が下検知点DDDCの列車検知長の区間に到達した時点である)ので、マスクRリレーが無励磁(落下)状態になる。このようなマスクRリレーは、下り列車に関して、上検知点DDCへの列車進入と下検知点DDDCからの列車進出とに亘る障検マスク区間に対応した信号を生成するものとなっている。
【0124】
上述したことと纏めると、マスクRリレーは、上り列車についても、下り列車についても、上検知点DDCと下検知点DDDCとに亘る障検マスク区間における列車在線に対応した信号を生成するものとなっている。さらに、マスクRリレー回路は、その信号を、マスクRリレーの接点出力にて、踏切障害物検知の上り側マスク条件および下り側マスク条件として、踏切障害物検知装置35に送出するようになっている。
そのため、踏切障害物検知装置35は、その内部構成は従来のままでも、外部入力の変更によって、下り列車についても、上り列車についても、障検マスク区間が、踏切8の通過先の部分しか占めていなかった狭い旧区間から、踏切8を区間内に収めた広い新区間に拡張されたものとなっている。
【0125】
出力形成部87の終止整形リレー回路では、上切替Rリレーが無励磁(落下)状態に戻っているときに限って、終止点用踏切制御子24のリレー出力DPRが励磁(動作)状態になると、それに応じて終止整形リレー上DPPRも励磁(動作)状態になるようになっている。そのため、終止整形リレー上DPPRは、下検知点DDDCに係る列車検知結果を無視して、上検知点DDCに係る列車検知結果だけを伝えるものとなる。また、終止点用踏切制御子24のリレー出力DPRそのものでなく終止整形リレー上DPPRの接点出力を上終止Rリレー出力として入力する踏切制御装置34は、その内部構成は従来のままでも、不都合なく、上り始動点CDCに係る列車検知結果と上検知点DDCに係る列車検知結果とに基づいて踏切警報(警報R)を発し、また踏切警報を終止することができるものとなっている。
【0126】
また、出力形成部87の終止整形リレー回路では、下切替Rリレーが無励磁(落下)状態に戻っているときに限って、終止点用踏切制御子24のリレー出力DPRが励磁(動作)状態になると、それに応じて終止整形リレー下DPPRも励磁(動作)状態になるようになっている。そのため、終止整形リレー下DPPRは、上検知点DDCに係る列車検知結果を無視して、下検知点DDDCに係る列車検知結果だけを伝えるものとなる。また、終止点用踏切制御子24のリレー出力DPRそのものでなく終止整形リレー下DPPRの接点出力を下終止Rリレー出力として入力する踏切制御装置34は、その内部構成は従来のままでも、不都合なく、下り始動点ADCに係る列車検知結果と下検知点DDDCに係る列車検知結果とに基づいて踏切警報(警報R)を発し、また踏切警報を終止することができるものとなっている。
【0127】
なお、終止整形リレー上DPPRの接点出力と終止整形リレー下DPPRの接点出力とが、踏切制御装置34において踏切警報を停止するための踏切警報終止条件となっており、
図9に示した踏切制御の具体例は、既述した
図14(a)の従来例と、入力部分が少し異なっているが、具体的には、従来例ではリレー出力DPRを入力していたリレー接点の接続が本実施例では終止整形リレー上DPPRのリレー接点と終止整形リレー下DPPRリレー接点とを直列接続したものになっているが、この程度の相違は踏切制御装置34の入力に係る接続変更の範疇に属するものであり、踏切制御装置34の改造には当たらない。終止整形リレー上DPPRのリレー接点と終止整形リレー下DPPRリレー接点との直列接続回路を踏切制御切替装置84に移設すれば、踏切制御装置34については入力接続の変更すら必要がなく、終止点用踏切制御子24の出力から外した配線を踏切制御切替装置84に接続し直すだけで済む。また、踏切制御切替装置84でも、踏切制御切替装置50,60と同様、終止点用踏切制御子24や,マスクRリレー,終止整形リレー上DPPR及び下DPPRには、上述したのと同様の緩放性や緩動性が付与されている。
【0128】
この実施例2の踏切制御切替装置84及びそれを導入した単線区間における踏切保安装置80について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。
図10は、踏切保安装置80の概略図であり、(a)が上り列車到来時の切替状態を示し、(b)が上り列車到来後進入時の切替状態を示している。また、
図11(b)〜(e)は、上り列車に対する列車検知と踏切障害物検知とに係るリレー信号等のタイムチャートである。さらに、
図12は、踏切保安装置80の概略図であり、(a)が下り列車到来時の切替状態を示し、(b)が下り列車到来後進入時の切替状態を示している。
【0129】
単線区間の線路10に対して新たに踏切保安装置80を設置する場合は上述した構成通りに踏切制御子21,23,24や,踏切制御装置34,警報灯32,踏切遮断機33,踏切障害物検知装置35,踏切制御切替装置84の配設とそれらに係る配線を行えば良く、既設の単線区間における踏切保安装置38に踏切制御切替装置84を追加して踏切保安装置38を踏切保安装置80にする場合は踏切制御切替装置84を追加してからそれに係る配線を変更すれば良いが、何れの場合も、設置が済んだら運用を開始する前に、上述したように模擬信号等で切替回路部86の接続状態を切り替えながら調整器25aや可変容量部56aを操作して照査用発振信号のレベル調整を行うことにより、第1接続線A1,B1と第2接続線A2,B2との長さの相違に基づく接続線切替時のインピーダンス変化に起因する照査用発振信号の不所望な変動を解消しておく。それから運用を開始する。
【0130】
踏切保安装置80の設置された単線の線路10を上り列車が終点側から踏切8に向かって走行して来て上り始動点CDCの列車検知長の区間の区間に進入すると(
図10(a)参照)、始動点用踏切制御子23が上り列車を検知して、始動点用踏切制御子23の上始動Rリレーが無励磁になる。すると、それまで励磁されて無意状態だった上りSRリレーが励磁されなくなって有意状態になり(
図11(b)の左側部分を参照)、それに応じて、上りの踏切制御区間の始点が踏切制御装置34によって確認されて踏切警報が開始されるとともに、踏切保安装置80の踏切制御切替装置84の切替制御部85では下切替Rリレーが無励磁状態のまま上切替Rリレーが無励磁状態から励磁状態になり、更にそれに応じて切替回路部86が第2切替状態をとるので、終止点用踏切制御子24は下検知点DDDCに係る列車検知を行う。
【0131】
線路10が単線で同時には下り列車が来ないうえ、この時点では未だ上り列車が下検知点DDDCにすら到達していないことから、始動点用踏切制御子21も終止点用踏切制御子24も列車を検知せず、始動点用踏切制御子21の下始動Rリレーは励磁状態を維持し、終止点用踏切制御子24の出力リレーDPRも励磁されず無意状態になっているので、マスクRリレーも励磁されず無意状態のままであり(
図11(c)左側部分を参照)、踏切障害物検知装置35は踏切8に対して障害物の検知と検知時の警報出力を行う。
【0132】
そして、上り列車が進行して下検知点DDDCの列車検知長の区間に進入すると(
図10(b)参照)、終止点用踏切制御子24によって上り列車が検知され、リレーDPRが励磁されて有意状態になり、それに応じてマスクRリレーも励磁されて有意状態になるので(
図11(c)中央部分を参照)、踏切障害物検知装置35では踏切障害物検知のマスクが働く。
また、マスクRリレーの励磁に応じて切替制御部85では上切替Rリレーが励磁状態から無励磁状態になり、更にそれに応じて切替回路部86が第1切替状態をとるので、終止点用踏切制御子24は上検知点DDCに係る列車検知ができる状態で待機することになる。
【0133】
それから、上り列車が更に進行して踏切8に差し掛かると(
図11(d)中央部分を参照)、その上り列車に感応して踏切障害物検知装置35では障害物感応信号SSが不感状態から有感状態になるが、踏切障害物検知装置35では既にマスクが効いているため、発報制御信号BZが無意(無警報状態)のまま変わらないので、誤報は出ない。
但し、ここでいう、不感状態、有感状態とは、当該列車のみに対する不感状態、有感状態であり踏切障害物検知としては、踏切警報が開始後、あるいは踏切警報が開始してから更に数秒(踏切により指定する)後から、マスク条件が成立するの間、有感状態となり、踏切道に滞留する障害物を検知する。
その後、上り列車が上検知点DDCへ進行して(
図11(b)右側部分を参照)、終止点用踏切制御子24のリレーDPRが励磁されて有意状態になると、緩動性に基づき少し遅れて終止整形リレー上DPPRが励磁されて有意状態になり、それに応じて踏切制御装置34によって上りSRリレーが励磁されて無意状態に戻るが、マスクRリレーは有意な励磁状態のままなので(
図11(c)中央部分を参照)、やはり誤報は出ない。
【0134】
そして、更に上り列車が走行して踏切8を完全に通り抜けると(
図11(d)中央右寄り部分を参照)、踏切障害物検知装置35では障害物感応信号SSが有感状態から不感状態に戻るが、依然として、マスクRリレーが有意な励磁状態のままなので(
図11(c)中央右寄り部分を参照)、踏切障害物検知装置35から誤報が出ることはない。
それから、上り列車が走行して上検知点DDCの列車検知長の区間をも完全に抜けると(
図11(c)右側部分を参照)、終止点用踏切制御子24のリレーDPRが励磁されなくなって無意状態になり、これに応じて終止整形リレー上DPPRと共にマスクRリレーも励磁されなくなって無意状態になり、踏切保安装置80の全体が列車非在線状態に戻る。
【0135】
このような、終止点用踏切制御子24による列車検知位置の切替と踏切障害物検知発報マスク動作によって、踏切制御切替装置84を導入した踏切保安装置80では、上りの踏切制御区間が踏切道を挟んでその両側に位置する上り始動点CDCと上検知点DDCとに亘る区間に維持されるとともに、障検マスク区間が踏切道を挟んでその両側に位置する下検知点DDDCと上検知点DDCとに亘る区間に拡張されて、踏切8が障検マスク区間内に完全に収まるため、上り列車の最先頭が踏切8に差し掛かってから下り列車の最後尾が踏切8を抜け出すまでの時間tが、列車の高速走行に対応して短い場合はもちろん(
図11(d)参照)、列車の低速走行に対応して長い場合でも(
図11(e)参照)、踏切障害物検知装置35が踏切通過中の列車を検知して誤報が出るという虞は、全くない。障害物感応信号SSに緩動性を持たせる必要もなく、コストアップも小さい。
【0136】
上りと下りの列車が同じ線路10を逆向きに走行する単線区間に踏切保安装置80が適用されているので、多少重複するが、下り列車についても説明する。踏切保安装置80の設置された単線の線路10を下り列車が起点側から踏切8に向かって走行して来て下り始動点ADCの列車検知長の区間に進入すると(
図12(a)参照)、始動点用踏切制御子21が下り列車を検知して、始動点用踏切制御子21の下始動Rリレーが無励磁になる。すると、それまで励磁されて無意状態だった下りSRリレーが励磁されなくなって有意状態になり、それに応じて、下りの踏切制御区間の始点が踏切制御装置34によって確認されて踏切警報が開始されるとともに、踏切保安装置80の踏切制御切替装置84の切替制御部85では上切替Rリレーが無励磁状態のまま下切替Rリレーが無励磁状態から励磁状態になり、更にそれに応じて切替回路部86が第1切替状態をとるので、終止点用踏切制御子24は上検知点DDCに係る列車検知を行う。
【0137】
線路10が単線で同時には上り列車が来ないうえ、この時点では未だ下り列車が上検知点DDCにすら到達していないことから、始動点用踏切制御子23も終止点用踏切制御子24も列車を検知せず、始動点用踏切制御子23の始動Rリレーは励磁状態を維持し、終止点用踏切制御子24の出力リレーDPRも励磁されず無意状態になっているので、マスクRリレーも励磁されず無意状態のままであり、踏切障害物検知装置35は踏切8に対して障害物の検知と検知時の警報出力を行う。
【0138】
そして、下り列車が進行して上検知点DDCの列車検知長の区間に進入すると(
図12(b)参照)、終止点用踏切制御子24によって下り列車が検知され、リレーDPRが励磁されて有意状態になり、それに応じてマスクRリレーも励磁されて有意状態になるので、踏切障害物検知装置35では踏切障害物検知のマスクが働く。
また、マスクRリレーの励磁に応じて切替制御部85では下切替Rリレーが励磁状態から無励磁状態になり、更にそれに応じて切替回路部86が第2切替状態をとるので、終止点用踏切制御子24は下検知点DDDCに係る列車検知ができる状態で待機することになる。
【0139】
それから、下り列車が更に進行して踏切8に差し掛かると、その上り列車に感応して踏切障害物検知装置35では障害物感応信号SSが不感状態から有感状態になるが、踏切障害物検知装置35では既にマスクが効いているため、発報制御信号BZが無意(無警報状態)のまま変わらないので、誤報は出ない。
その後、上り列車が下検知点DDDCへ進行して、終止点用踏切制御子24のリレーDPRが励磁されて有意状態になると、緩動性に基づき少し遅れて終止整形リレー上DPPRが励磁されて有意状態になり、それに応じて踏切制御装置34によって下りSRリレーが励磁されて無意状態に戻るが、マスクRリレーは有意な励磁状態のままなので、やはり誤報は出ない。
【0140】
そして、更に下り列車が走行して踏切8を完全に通り抜けると、踏切障害物検知装置35では障害物感応信号SSが有感状態から不感状態に戻るが、依然として、マスクRリレーが有意な励磁状態のままなので、やはり踏切障害物検知装置35から誤報が出ることはない。
それから、下り列車が走行して下検知点DDDCの列車検知長の区間をも完全に抜けると、終止点用踏切制御子24のリレーDPRが励磁されなくなって無意状態になり、これに応じて終止整形リレー下DPPRと共にマスクRリレーも励磁されなくなって無意状態になり、踏切保安装置80の全体が列車非在線状態に戻る。
【0141】
このような、終止点用踏切制御子24による列車検知位置の切替と踏切障害物検知発報マスク動作によって、踏切制御切替装置84を導入した踏切保安装置80では、下りの踏切制御区間が踏切道を挟んでその両側に位置する下り始動点ADCと下検知点DDDCとに亘る区間に拡張されるとともに、障検マスク区間が踏切道を挟んでその両側に位置する下検知点DDDCと上検知点DDCとに亘る区間に拡張されて、上りのときと同じく踏切8が障検マスク区間内に完全に収まる。
このように踏切制御切替装置84を導入した踏切保安装置80にあっては、終止点用踏切制御子24が一台だけのままであっても、上りの踏切制御区間も下りの踏切制御区間も障検マスク区間も理想状態になる。
【0142】
[その他]
上記実施例では、切替制御部55,65,85や、切替回路部56,66,86、出力形成部57,67,87を、非同期式のリレー回路にて具体化したことから、回路動作の安定化のために、マスクRリレーや終止整形リレーに緩放性や緩動性を持たせたが、例えばデジタル回路やプログラマブルなマイクロプロセッサといった電子回路を採用して同期式の順序回路にて具体化しても良く、そうすれば、不所望なレーシング等の不安定現象の発現を容易に抑えることができるので、緩放性や緩動性は考慮すら必要ない。
【0143】
上記実施例では、可変容量部56aが、一つだけ設けられて、分岐配線a2,b2の何れかに介挿されていたが、可変容量部は、分岐配線a2,b2の双方に設けられていても良く、さらには分岐配線a1,b1の何れか一方または双方にだけ設けられていても良く、分岐配線a1,b1の何れか一方または双方と分岐配線a2,b2の何れか一方または双方とに設けられていても良い。コモンモードの雷サージに対する耐力を高めるためには、分岐配線a1,b1の両方に及び/又は分岐配線a2,b2の両方に同じ容量のコンデンサーを介挿し回線を平衡させるのがベターである。
【0144】
上記実施例1では、第1接続線A1,B1や第2接続線A2,B2を踏切制御切替装置50の筐体の接続端子51や接続端子52に接続するに際して、第1接続線A1,B1や第2接続線A2,B2を配線端子盤28の端子に一旦接続しておき、その配線端子盤28から踏切制御切替装置50までは踏切器具箱内配線41,42で延長するようになっていたが、踏切器具箱内への収納は必須でないので、また踏切器具箱内に収納する場合でも配線端子盤28の使用は必須でないので、第1接続線A1,B1や第2接続線A2,B2は接続端子51や接続端子52に直接接続しても良い。
【0145】
上記実施例2では、既存の踏切保安装置に踏切制御切替装置84を追加設置する場合の例として、下検知点DDDCには終止点用踏切制御子が接続されておらず、上検知点DDCが共用終止点とされて、そこの接続線取付箇所14に第1接続線A1,B1を介して終止点用踏切制御子24が接続されている踏切保安装置を更新して踏切保安装置80に改良する場合を述べたが、上検知点DDCには終止点用踏切制御子が接続されておらず、下検知点DDDCが共用終止点とされて、そこの接続線取付箇所15に接続線A2,B2を介して終止点用踏切制御子が接続されている踏切保安装置を更新して改良する場合も、接続線取付箇所14,15を入れ替えれば、ほぼ同様に行うことができる。
【0146】
上記実施例1では複線区間における上り側の線路10と下り側の線路10との双方に踏切制御切替装置50,60が設置されていたが、予算や工期などの都合によっては、それらのうち何れか片方だけを設置しても良く、他方は、遅れて設置しても良く、設置しないままにしても良い。そのように複数の線路のうち一部の線路にだけ踏切制御切替装置を設置した場合、設置した線路については本発明の効果を享受することができる。
上記実施例では、踏切8が第1種でそこに踏切遮断機33が設置されていたが、本発明の実施に踏切遮断機33は必須でないので、踏切8が第3種の場合は踏切遮断機33を省いても良い。