特許第5863428号(P5863428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5863428電子内視鏡スコープ、ホワイトバランス調整方法、電子内視鏡システム、ホワイトバランス調整治具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863428
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】電子内視鏡スコープ、ホワイトバランス調整方法、電子内視鏡システム、ホワイトバランス調整治具
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/04 20060101AFI20160202BHJP
   A61B 1/00 20060101ALI20160202BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20160202BHJP
   H04N 9/04 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   A61B1/04 372
   A61B1/00 300B
   G02B23/24 B
   H04N9/04 B
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-266050(P2011-266050)
(22)【出願日】2011年12月5日
(65)【公開番号】特開2013-116277(P2013-116277A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年10月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【弁理士】
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】秋野 縁
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−276976(JP,A)
【文献】 特開2000−139833(JP,A)
【文献】 特開平08−240777(JP,A)
【文献】 特開2008−301966(JP,A)
【文献】 特開2009−130681(JP,A)
【文献】 特開昭63−244011(JP,A)
【文献】 特開2009−017457(JP,A)
【文献】 特開平11−298792(JP,A)
【文献】 特開2004−321478(JP,A)
【文献】 特表2008−526360(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00− 1/32
G02B 23/24−23/26
H04N 9/04− 9/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端に設けられた第1の撮像素子と、
前記挿入部の側面に設けられた第2の撮像素子と、
前記第1の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第1のホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値と、前記第2の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第2のホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値との差分を、観察時におけるホワイトバランス用の補正値として記憶するメモリと
を備えることを特徴とする電子内視鏡スコープ。
【請求項2】
前記第2の撮像素子は、前記挿入部の湾曲部に設けられることを特徴とする請求項1に記載の電子内視鏡スコープ。
【請求項3】
請求項1に係る電子内視鏡スコープのホワイトバランス調整方法であって、
前記第1の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第3のホワイトバランス調整を施し、
前記第3のホワイトバランス調整後の前記第1の撮像素子の映像信号のゲイン値と、前記メモリに記憶された前記補正値との差分を、観察時における前記第2の撮像素子の映像信号のゲイン値として算出することを特徴とするホワイトバランス調整方法。
【請求項4】
挿入部の先端に設けられた第1の撮像素子と、
前記挿入部の側面に設けられた第2の撮像素子と、
前記第1の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第1のホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値と、前記第2の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第2のホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値との差分を、観察時におけるホワイトバランス用の補正値として記憶するメモリとを備える電子内視鏡スコープと、
前記第1の撮像素子に対向する底部と、前記第2の撮像素子に対向する壁部とを備える前記電子内視鏡スコープのホワイトバランス調整治具と
を備えることを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項5】
挿入部の先端に設けられた第1の撮像素子と、前記挿入部の側面に設けられた第2の撮像素子とを備える電子内視鏡スコープのホワイトバランス調整治具であって、
前記ホワイトバランス調整治具は、前記第1の撮像素子に対向する円形状の底部と、
前記底部と一体的に形成された筒状部材において、前記第2の撮像素子が対向する壁部を有し、前記筒状部材の前記壁部とは反対側の面切り欠かれていることを特徴とするホワイトバランス調整治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子内視鏡スコープ、ホワイトバランス調整方法、電子内視鏡システムおよびホワイトバランス調整治具に関する。
【背景技術】
【0002】
小腸や大腸等の消化器を観察する電子内視鏡では、観察時の見落としを防ぐと共に、観察時間を短くするために、1度で360°を観察可能であることが望ましい。そこで、電子内視鏡スコープに複数の撮像素子を設けることにより、複数の撮像素子により同時に観察可能な電子内視鏡システムの開発が進められている。
【0003】
一般に、電子内視鏡システムにおいては、被写体から得られた映像信号に対して行うホワイトバランスの実行には、撮像素子を覆う筒状の治具を用い、撮影画像が白くなるように調整する。このホワイトバランス調整を、2つの撮像部を有する複眼カメラにおいてそれぞれ実行する例が提案されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−130681号公報
【特許文献2】特開昭63−244011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2つの撮像部が同じ光軸方向を向き、撮像素子との距離が近い場合には上述の治具でもホワイトバランスの実行が可能であるが、2つの撮像素子の距離が離れている場合には、ホワイトバランス調整治具に2つの撮像素子が収まらなくなるため、各撮像素子に対してそれぞれホワイトバランス調整する必要がある。また、各撮像素子に対するホワイトバランス調整治具が必要となる。
【0006】
したがって、本発明は、複数の撮像素子を1度でホワイトバランス調整可能な電子内視鏡スコープ、ホワイトバランス調整方法、電子内視鏡及びシステムホワイトバランス調整治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明に係る電子内視鏡スコープは、挿入部の先端に設けられた第1の撮像素子と、挿入部の側面に設けられた第2の撮像素子と、第1の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第1のホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値と、第2の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第2のホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値との差分を、観察時におけるホワイトバランス用の補正値として記憶するメモリとを備えることを特徴とする。
【0008】
この電子内視鏡スコープでは、本発明に係るホワイトバランス調整治具により、挿入部の先端と側面に設けられた各撮像素子の出荷時及び観察時におけるホワイトバランス調整が、ホワイトバランス調整治具に1度挿入しただけで実行される。
【0009】
この電子内視鏡スコープにおいて、広範囲を1度で観察可能とするためには、第2の撮像素子は、挿入部の湾曲部に設けられることが好ましい。
【0010】
本発明に係るホワイトバランス調整方法は、本発明に係る電子内視鏡スコープのホワイトバランス調整方法であって、第1の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第3のホワイトバランス調整を施し、第3のホワイトバランス調整後の第1の撮像素子の映像信号のゲイン値と、メモリに記憶された補正値との差分を、観察時における第2の撮像素子の映像信号のゲイン値として算出することを特徴とする。
【0011】
この方法により、本発明に係る電子内視鏡スコープの観察時におけるホワイトバランス調整が、1度で実行される。
【0012】
本発明に係る電子内視鏡システムは、挿入部の先端に設けられた第1の撮像素子と、挿入部の側面に設けられた第2の撮像素子と、第1の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第1のホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値と、第2の撮像素子から読みだされる映像信号に対して第2のホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値との差分を、観察時におけるホワイトバランス用の補正値として記憶するメモリとを備える電子内視鏡スコープと、第1の撮像素子に対向する底部と、第2の撮像素子に対向する壁部とを備える電子内視鏡スコープのホワイトバランス調整治具と、を備えることを特徴とする。
【0013】
この電子内視鏡システムでは、生産時及び観察時におけるホワイトバランス調整が、1度で実行される。
【0014】
本発明に係るホワイトバランス調整治具は、挿入部の先端に設けられた第1の撮像素子と、挿入部の側面に設けられた第2の撮像素子とを備える電子内視鏡スコープのホワイトバランス調整治具であって、ホワイトバランス調整治具は、第1の撮像素子に対向する底部と、第2の撮像素子に対向する壁部とを備えることを特徴とする。
【0015】
この構成により、本発明に係る電子内視鏡スコープの各撮像素子のホワイトバランス調整が1度で実行される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数の撮像素子を1度でホワイトバランス調整可能な電子内視鏡スコープ、ホワイトバランス調整方法、電子内視鏡システム及びホワイトバランス調整治具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る電子内視鏡スコープを備える電子内視鏡システムの構成と回路構成を示す説明図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子内視鏡スコープがホワイトバランス調整治具に挿入された状態を説明する説明図である。
図3】電子内視鏡スコープの湾曲部を説明する説明図である。
図4】本発明の実施形態に係るホワイトバランス調整治具を示す斜視図である。
図5】出荷時におけるホワイトバランス調整処理のフローチャートである。
図6】観察時におけるホワイトバランス調整処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る電子内視鏡スコープ10を備える電子内視鏡システムの構成と回路構成を模式的に示した図であり、図2は電子内視鏡スコープ10がホワイトバランス調整治具50に挿入された状態を説明する説明図であり、図3は電子内視鏡スコープ10の湾曲部11cを説明する説明図であり、図4はホワイトバランス調整治具50を示す模式的な斜視図である。
【0020】
図1に示すように、電子内視鏡システムは、被写体の撮影に用いられる電子内視鏡スコープ10と、電子内視鏡スコープ10から送られる映像信号を処理するためのプロセッサ20と、被写体画像等を表示するモニタ40と、図2、4に示すホワイトバランス調整治具50を備える。電子内視鏡スコープ10は、プロセッサ20に着脱自在に取付けられ、使用される。プロセッサ20にはモニタ40が接続され、プロセッサ20の側面には、オペレータが指示信号等を入力するためのフロントパネルFPを備える。
【0021】
プロセッサ20は、フロントパネルFPからの信号を受信し、プロセッサ20全体を制御するシステムコントローラ25と、電子内視鏡スコープ10から送られてくる映像信号を処理する前段信号処理回路21と、処理された映像信号を記憶する画像メモリ22と、モニタ40に被写体画像等を表示するための処理を行う後段映像信号処理回路23と、タイミングコントローラ24と、光源29を備える。タイミングコントローラ24では、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスがプロセッサ20内の各回路及び後述の電子内視鏡スコープ10のコネクタ部18(図2参照)に設けられた第1及び第2のドライバ信号処理回路14、15に出力される。
【0022】
光源29は、システムコントローラ25によって制御される電源26から電力が供給される。光源29から照射された照射光は、集光レンズ30を介して、集光レンズ30の前方に配置された絞り31によって光量が調整される。絞り31はモータ28の駆動によって開閉される。照射光は、超極細の光ファイバーの束からなり、電子内視鏡スコープ10に配設されるライトガイドLの入射端LcよりライトガイドLに入射する。モータ28は、前段信号処理回路21の制御信号により制御されるドライバ27によって駆動され、これにより、絞り31が所定量だけ開閉する。
【0023】
図2に示すように、電子内視鏡スコープ10は、操作者が握り、電子内視鏡スコープ10の動きを操作するための操作部17と、プロセッサ20に着脱自在に接続するためのコネクタ部18を備える。操作部17には被験者の体内に挿入される可撓性の管状の挿入部11の基端が連結されている。挿入部11は、可撓管部11f、湾曲部11c及び先端部11tが順に連結されて構成される。挿入部11の湾曲部11cは、操作者の操作部17の操作により、湾曲部11cが上下または左右方向に湾曲し、例えば図3に示すように、先端部11tが所望の方向に向けられる。
【0024】
ライトガイドLは、電子内視鏡スコープ10内において操作部17を介して挿入部11に達し、挿入部11において分岐して挿入部先端11a及び挿入部側面11bまで延設され、2つの端部La、Lbを有する。ライトガイドLにより伝達された照明光は、端部La、Lbから後述する第1及び第2の配光レンズ12a、13aを介して観察部位に向かって照射される。
【0025】
図3に示すように、挿入部11において、挿入部先端11aは第1の撮像部12を、挿入部先端11a以外の側面である挿入部側面11bは第2の撮像部13を備える。第2の撮像部13は、挿入部11の湾曲部11cに設けられる。湾曲部11cの湾曲により、第2の撮像部13は矢印Aで示す挿入方向(挿入部先端11a側)を向くようになり、第1の撮像部12は挿入方向と反対方向(操作部17側)を向くようになる。このように、湾曲部11cが所定方向に湾曲された場合には、挿入方向の前方と後方の両方を同時に観察することが可能となる。湾曲部11cを湾曲させずに使用する場合には、第1の撮像部12により挿入方向の前方側を、第2の撮像部13により第1の撮像部12の観察部位よりもやや後方であり、第1の撮像部12の観察部位に対して直交する部位を観察する。このように、本発明の実施形態に係る電子内視鏡スコープ10では、1つのスコープの挿入部11に、撮影方向の異なる撮像部12、13を備える構成となっている。
【0026】
図1に示すように、第1及び第2の撮像部12、13は、それぞれ、ライトガイドLにより導かれ、端部La、Lbにより出射された照射光を観察部位に配光するための拡散レンズである第1及び第2の配光レンズ12a、13aと、観察部位において反射した光を通過させる第1及び第2の対物レンズ12b、13bと、第1及び第2の撮像素子12c、13cとを備える。第1及び第2の撮像素子12c、13cは、例えばCCDやCMOS撮像素子等が使用される。また、本実施形態では、通常の観察時では主として第1の撮像素子12cにより挿入方向の前方側を観察するため、例えば、第1の撮像素子12cは130万画素、第2の撮像素子13cは30万画素程度の画素数に設定する。
【0027】
第1の撮像素子12cの駆動は第1のドライバ信号処理回路14から駆動信号により制御され、第2の撮像素子13cの駆動は第2のドライバ信号処理回路15から駆動信号により制御される。第1及び第2のドライバ信号処理回路14、15は、プロセッサ20のタイミングコントローラ24によって制御される。観察部位において反射した光は、第1及び第2の対物レンズ12b、13bを介して第1及び第2の撮像素子12c、13cの受光面に到達する。これにより観察部位の被写体像が第1及び第2の撮像素子12c、13cの受光面に形成される。第1及び第2の撮像素子12c、13cで発生した映像信号は、所定の方式に従って順次読み出され、第1及び第2のドライバ信号処理回路14、15へ送られる。
【0028】
第1のドライバ信号処理回路14では、第1の撮像素子12cから読みだされる映像信号に対して、A/D変換の後に第1のホワイトバランス調整等のプロセス処理が施される。第2のドライバ信号処理回路15では、第2の撮像素子13cから読みだされる映像信号に対して、A/D変換の後に第2のホワイトバランス調整等のプロセス処理が施される。プロセス処理が施された各映像信号は、プロセッサ20の前段信号処理回路21へ送られる。後述するように、ホワイトバランス調整後の映像信号のゲイン値の差分は、観察時におけるホワイトバランス用の補正値としてコネクタ部18(図2参照)に設けられたメモリ16に記憶される。ここで、ホワイトバランス調整は、R:G:Bの比が1:1:1となるようにR、G、Bのゲイン調整を行う調整である。
【0029】
図2、4に示すように、ホワイトバランス調整は、図4に示すホワイトバランス調整治具50を用いて、操作者がプロセッサ20のフロントパネルFPに設けられたスイッチを操作することにより実行される。
【0030】
図4に示すように、本発明の実施形態に係るホワイトバランス調整治具50は、開口52bより矢印Aの方向に電子内視鏡スコープ10の挿入部11が挿入された際に、第1の撮像部12に対向する円形の底部51と、底部51に直交するように設けられた円筒状の側面52を備えた形状であり、側面52の一部を切り欠くことにより、第2の撮像部13に対向する面が他よりも突出した突出部(壁部)52aを構成している。ホワイトバランス調整治具50の内側は白色に塗られており、底部51、側面52及び突出部52aの内面は、ホワイトバランスの基準となる白色領域となっている。側面52の内径は電子内視鏡スコープ10の挿入部先端11aの径よりも一回り大きく設定されている。
【0031】
ホワイトバランス調整治具50内に挿入された電子内視鏡スコープ10の第1の撮像部12は、ホワイトバランス調整治具50の底部51の内面を利用して、また、第2の撮像部13はホワイトバランス調整治具50の突出部52aの内面を利用してホワイトバランス調整が実行される。ホワイトバランス値は、例えばR、Bゲイン値である。本実施形態では、ホワイトバランス調整において、第1及び第2のドライバ信号処理回路14、15において得られるR、G、B信号の比が1:1:1となるように、G信号を基準として、第1及び第2の撮像素子12c、13cから得られる各映像信号のR、Bゲイン値を調整する。
【0032】
第1の撮像素子12cから読みだされる映像信号に対してホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値と、第2の撮像素子13cから読みだされる映像信号に対してホワイトバランス調整が施された後の映像信号のゲイン値との差分は、観察時におけるホワイトバランス用の補正値として生産時(工場出荷時)に設定され、メモリ16に記憶される。
【0033】
観察時においては、上述のホワイトバランス調整治具50を用いて第1の撮像素子12cから読みだされる映像信号に対してのみ第1のドライバ信号処理回路14によってホワイトバランス調整が実行される。そして、ホワイトバランス調整で得られた第1の撮像素子12cの映像信号のゲイン値と、生産時に設定された補正値との差分が、観察時における第2の撮像素子13cの映像信号のゲイン値として算出される。この算出されたゲイン値を用いて、第2のドライバ信号処理回路15において、第2の撮像素子13cから読みだされた映像信号に対してホワイトバランス調整を実行する。
【0034】
電子内視鏡スコープ10の第1及び第2のドライバ信号処理回路14、15から出力されたデジタルの映像信号は、プロセッサ20内の前段信号処理回路21において所定の信号処理が施される。前段信号処理回路21、画像メモリ22及び後段映像信号処理回路23のタイミングは、タイミングコントローラ24からの同期信号に基づいて制御される。前段信号処理回路21で施される画像処理は、例えば、輪郭強調、ノイズリダクション、ガンマ補正、擬似色素散布処理、特定周波数強調、色変換等があげられる。
【0035】
後段映像信号処理回路23では、画像信号がアナログ信号に変換され、増幅処理、クランプ処理、ブランキング処理等のプロセス処理が施され、ビデオ信号ケーブル(図示せず)を介して例えばモニタ40に出力される。これにより観察部位の画像がモニタ40に映し出される。モニタ40の他に、例えばビデオプリンタやVCR等の装置に接続されても構わない。また、後段映像信号処理回路23における処理のタイミングは、タイミングコントローラ24からの同期信号に基づいて制御される。
【0036】
電子内視鏡スコープ10の操作部17のフリーズボタン(図示せず)が操作されると、画像メモリ22の画像データが保持され、後段映像信号処理回路23には、画像メモリ22に保持された画像データが繰り返し出力される。これにより、モニタ40には画像メモリ22に保持された画像が静止画像として表示される。また、電子内視鏡スコープ10が、アナログの画像信号を出力する場合には、前段信号処理回路21においてデコード処理、A/D変換処理が施され、以下同様の処理が行なわれる。
【0037】
次に、図5、6を参照して、本実施形態に係る電子内視鏡スコープ10のホワイトバランス調整方法について説明する。図5は出荷時におけるホワイトバランス調整処理のフローチャートであり、図6は観察時におけるホワイトバランス調整処理のフローチャートである。
【0038】
まず、図5を用いて出荷時におけるホワイトバランス調整処理を説明する。電子内視鏡スコープ10のコネクタ部18がプロセッサ20に接続され、例えば、フロントパネルFPにおいて所定のスイッチ操作がなされ、電子内視鏡スコープ10の挿入部11が開口部52bからホワイトバランス調整治具50に挿入されると、ホワイトバランス調整処理が開始される。なお、本ホワイトバランス調整処理に先立ち、電子内視鏡システムの電源は既にONになっており、光源29は点灯され、プロセッサ20や電子内視鏡スコープ10の制御も開始されているものとする。
【0039】
ステップS101では、第1の撮像素子12cから読みだされた映像信号は、ホワイトバランス調整治具50の底部51の内面を利用して、R、G、B信号の比が1:1:1となるようにG信号を基準としてR、Bゲイン値が調整されて、R、B調整ゲインデータR1、B1が得られる。ステップS102では、第2の撮像素子13cから読みだされた映像信号は、ホワイトバランス調整治具50の突出部52aの内面を利用して、R、G、B信号の比が1:1:1となるようにG信号を基準としてR、Bゲイン値が調整されて、R、B調整ゲインデータR2、B2が得られる。ステップS103では、R、B調整ゲインデータR1、B1とR、B調整ゲインデータR2、B2との差分を算出することにより、補正値Rd、Bdが得られる。ステップS104では、得られた補正値Rd、Bdを、観察時におけるホワイトバランス用の補正値としてメモリ16に記憶し、これによりホワイトバランス調整処理は終了する。
【0040】
次に、図6を用いて観察時におけるホワイトバランス調整処理を説明する。電子内視鏡スコープ10のコネクタ部18がプロセッサ20に接続され、例えば、フロントパネルFPにおいて所定のスイッチ操作がなされ、電子内視鏡スコープ10の挿入部11が開口部52bからホワイトバランス調整治具50に挿入されると、ホワイトバランス調整処理が開始される。なお、本ホワイトバランス調整処理に先立ち、電子内視鏡システムの電源は既にONになっており、光源29は点灯され、プロセッサ20や電子内視鏡スコープ10の制御も開始されているものとする。
【0041】
ステップS201では、第1の撮像素子12cから読みだされた映像信号は、ホワイトバランス調整治具50の底部51の内面を利用して、R、G、B信号の比が1:1:1となるようにG信号を基準としてR、Bゲイン値が調整されてR、B調整ゲインデータRn1、Bn1が得られる。ステップS202では、メモリ16に記憶された補正値Rd、Bdが読み出されて、R、B調整ゲインデータRn1、Bn1と補正値Rd、Bdとの差分が算出される。算出により得られた値は、観察時における第2の撮像素子13のR、B調整ゲインデータRn2、Bn2として用いられる。
【0042】
なお、観察時におけるホワイトバランス調整処理が終了すると、電子内視鏡スコープ10の通常の撮影動作が開始される。通常の撮影動作では、観察時におけるホワイトバランス調整処理により設定されたR、B調整ゲインデータRn1、Bn1と、R、B調整ゲインデータRn2、Bn2とに基づいて信号処理が施される。
【0043】
以上示したように、本発明の実施形態に係る電子内視鏡スコープ、ホワイトバランス調整方法、電子内視鏡システム及びホワイトバランス調整治具では、1つのスコープの挿入部に、撮影方向の異なる撮像部を備える構成となっている電子内視鏡スコープにおいて、2つの撮像素子が1度で1つのホワイトバランス調整治具の内面に収まる。このため、出荷時において、各撮像素子に対して別々にホワイトバランス調整することなく、また2つの治具を用いることなく、容易にかつ1度でホワイトバランス調整することが可能となる。
【0044】
また、出荷時にメモリに補正値を記憶し、観察時においてはメモリから補正値を読み出すことにより、スコープ挿入部先端にある第1の撮像素子のみホワイトバランス調整を実行すればよく、第2の撮像素子のホワイトバランス調整は必要ない。これにより、観察時におけるホワイトバランス調整が容易となる。また、出荷時とは異なる既存のホワイトバランス調整治具、例えば、本発明の実施形態に係るホワイトバランス調整治具のように一部が突出していない円筒形状の治具であり、第1の撮像素子のみが覆われる形状の治具を用いることも可能である。
【0045】
なお、本発明の実施形態に係るホワイトバランス調整治具は、側面の一部を切り欠いたような突出部を有する形状となっており、第2の撮像素子の対向する面は筒状とはなっていない。第2の撮像素子の存在する挿入部側面の全面を覆う形状とすると、ホワイトバランス調整治具の白色の内面が映り込む可能性があるため、第2の撮像素子が対向するホワイトバランス調整治具の突出部は部分的であることが好ましい。
【0046】
また、本発明の実施形態に係る電子内視鏡スコープ及びホワイトバランス調整方法では、補正値を2つの映像信号のゲイン値の差分としたが、補正値を2つの映像信号のゲイン値の比としてもかまわない。
【符号の説明】
【0047】
10 電子内視鏡スコープ
11 挿入部
11a 挿入部先端
11b 挿入部側面
12 第1の撮像部
12c 第1の撮像素子
13 第2の撮像部
13c 第2の撮像素子
16 メモリ
20 プロセッサ
21 前段信号処理回路
22 画像メモリ
23 後段映像信号処理回路
24 タイミングコントローラ
25 システムコントローラ
40 モニタ
50 ホワイトバランス調整治具
51 底部
52 側面
52a 突出部(壁部)
L ライトガイド
A 挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6