(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転体の回転軸の外周面に突設された円盤状のスラストカラーを、前記スラストカラーの両側に配設された一対の軸受部によって支持し、且つ、前記軸受部は、前記回転軸の円周方向に配列されて前記スラストカラーの側面に隙間を介して対向している複数の軸受パッドと、前記軸受パッドの背面側に配設された複数の上レベリングプレートと複数の下レベリングプレートとを有して成る前記軸受パッドのレベリング機構とを備えた構成であるスラスト軸受装置において、
前記下レベリングプレートの背面に油圧ジャッキをそれぞれ設置して、前記スラストカラーから前記隙間の油膜を介して前記軸受パッドへかかるスラスト荷重を、前記上レベリングプレート及び前記下レベリングプレートを介して、前記油圧ジャッキで受ける構成とし、
前記複数の軸受パッドのうちの2つの軸受パッドの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段によって得られる前記の2つの軸受パッドの検出温度と設定温度とを比較し、その結果、前記検出温度の何れか一方又は両方が設定温度以上であると判定した場合には、前記検出温度の差を算出して、この検出温度差と設定温度差とを比較し、その結果、前記検出温度差が前記設定温度差以上であると判定した場合には、前記油圧ジャッキのストロークを調整することによって前記複数の軸受パッドの傾斜調整を行う一方、前記検出温度差が前記設定温度差以上ではないと判定した場合には、前記油圧ジャッキのストロークを調整することによって前記複数の軸受パッドの位置を調整することにより、前記隙間を全体的に広くするように制御する油圧ジャッキ制御手段と、
を備えた
ことを特徴とするスラスト軸受装置。
【背景技術】
【0002】
図10及び
図11に示すように、蒸気タービンやガスタービンのロータの回転軸1には、スラスト軸受装置2が設けられている。回転軸1は水平に設けられており、この回転軸1の外周面1aには、円盤状のスラストカラー3が、回転軸1の径方向に突設されている。スラスト軸受装置2は一対の軸受部4を有しており、これらの軸受部4を、回転軸1の軸方向(水平方向:以下、単に軸方向と称する)におけるスラストカラー3の両側に配設することにより、スラストカラー3の側面3aを支持している。即ち、
図10に矢印A,Bで示すような軸方向の荷重(スラスト荷重)を、両側の軸受部4で受ける。
【0003】
軸受部4は、何れも
図12に示すような構成となっている。即ち、軸受部4は、ハウジング11に設けられた複数の軸受パッド12と、複数のピラー13と、複数の上レべリングプレート14と、複数の下レべリングプレート15と、複数の給油片16とを有して成るものである。
【0004】
軸受パッド12は、回転軸1の円周方向(以下、単に円周方向と称する)に等間隔に配列され(
図3を参照)、且つ、表面12aが軸方向を向いており、軸受パッド12の表面12aとスラストカラー3の側面3aとの間の隙間(以下、単に隙間と称する)を介して、スラストカラー3の側面3aに対向している。ピラー13は、軸受パッド12の背面12b側にそれぞれ配設され、円周方向に等間隔に配列されている。軸受パッド12は、背面12bに形成された凸部12cがピラー13の表面13aに当接しており、この凸部12cを支点として傾斜可能になっている。
【0005】
上レべリングプレート14と下レべリングプレート15は、軸受パッド12のレべリング機構を構成している。
【0006】
上レべリングプレート14は、ピラー13の背面13b側にそれぞれ配設され、円周方向に等間隔に配列されている。ピラー13の背面13bには凸部13cが形成されている一方、上レべリングプレート14の表面14aには凹部14bが形成されており、これらの凸部13cと凹部14bが嵌合している。従って、上レべリングプレート14は、凹部14b(凸部13c)を支点として傾斜可能になっている。
【0007】
下レべリングプレート15は、円周方向(
図12の左右方向)において隣り合う上レべリングプレート14の間に配設され、円周方向に等間隔に配列されている。円周方向における上レべリングプレート14の端部14cと、円周方向における下レべリングプレート15の端部15aは、互いに軸方向に重なり合って当接している。下レべリングプレート15の背面15bには凹部15cが形成されている一方、ハウジング11の裏蓋11aには凸部16が形成されており、これらの凹部15cと凸部16が嵌合している。従って、下レべリングプレート15は、凹部15c(凸部16)を支点として傾斜可能になっている。
【0008】
給油片16は、円周方向において隣り合う軸受パッド12の間に配設され、円周方向に等間隔に配列されている。給油片16には給油孔16aが形成されており、潤滑油供給系統(図示省略)から給油片16に供給される潤滑油が、給油孔16aから噴出して軸受パッド12の表面12aに供給される。その結果、隙間には、潤滑油の膜(以下、単に油膜と称する)が形成される。従って、スラスト荷重は、スラストカラー3から、隙間の油膜を介して、軸受パッド12にかかる。
【0009】
図10に一点鎖線で示すように、回転軸1が撓みや熱変形などによって傾斜し、これにともなってスラストカラー3が傾斜した場合、レべリング機構がなければ、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)が不均一になり、各軸受パッド12のスラスト荷重の分担が不均一になる。即ち、隙間が狭くなって油膜が薄くなった軸受パッド12では、スラスト荷重の分担が大きくなり、隙間が広くなって油膜が厚くなった軸受パッド12では、スラスト荷重の分担が小さくなる。
【0010】
これに対して、スラスト軸受装置2には上レべリングプレート14と下レべリングプレート15とで構成されたレべリング機構を備えているため、軸受パッド12をスラストカラー3の傾斜に追従させる(即ちスラストカラー3の傾斜に応じて軸受パッド12の軸方向の位置を調整する)ことにより(傾斜調整)、隙間を調整することができる。このため、スラストカラー3が傾斜しても、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)を均一して、各軸受パッド12のスラスト荷重の分担を均一にすることができる。
【0011】
例えば、
図12において、中央の軸受パッド12で隙間が狭くなって油膜が薄くなり、スラスト荷重の分担が大きくなった場合、この大きな分担荷重に押されて中央の軸受パッド12は、その背面12b側のピラー13及び上レべリングプレート14とともに矢印Cの如くスラストカラー3から離れる方向に移動する。一方、上レべリングプレート14の端部14cと下レべリングプレート15の端部15aが当接しているため、中央の軸受パッド12の隣りの軸受パッド12は、その背面12b側の上レべリングプレート14及びピラー13とともに矢印Dの如くスラストカラー3に近づく方向に移動する。また、この隣りの軸受パッド12の隙間も狭ければ(油膜が薄ければ)、この隣りの軸受パッド12はスラストカラー3から離れ、更にその隣の軸受パッド12(図示せず)がスラストカラー3に近づく。このようなレべリング機構の動作が円周方向の全体に亘って生じる。
【0012】
即ち、レべリング機構の働きにより、スラストカラー3の傾斜によって隙間が狭くなった軸受パッド12はスラストカラー3から離れる方向に移動させて当該隙間を広げ、スラストカラー3の傾斜によって隙間が広くなった軸受パッド12はスラストカラー3に近づく方向に移動させて当該隙間を狭める。かくして、軸受パッド12がスラストカラー3の傾斜に追従し、円周方向の各位置における隙間が均一になって、各軸受パッド12のスラスト荷重の分担が均一になる。
【0013】
なお、上レべリングプレートと下レべリングプレートとで構成されたレべリング機構が装備されているスラスト軸受装置が開示されている先行技術文献としては、下記の特許文献1,2がある。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
<実施の形態例1>
図1〜
図5に基づき、本発明の実施の形態例1に係るスラスト軸受装置22Aについて説明する。
【0029】
図1及び
図2に示すように、蒸気タービンやガスタービンのロータの回転軸21には、本実施の形態例1のスラスト軸受装置22Aが設けられている。回転軸21は水平に設けられており、この回転軸21の外周面21aには、円盤状のスラストカラー23が、回転軸21の径方向に突設されている。スラスト軸受装置22Aは一対の軸受部24を有しており、これらの軸受部24を、回転軸21の軸方向(水平方向:以下、単に軸方向と称する)におけるスラストカラー23の両側に配設することにより、スラストカラー23の側面23aを支持している。即ち、
図1に矢印H,Iで示すような軸方向の荷重(スラスト荷重)を、両側の軸受部24で受ける。
【0030】
そして、本実施の形態例1のスラスト軸受装置22Aでは、軸受部24の背面に油圧ジャッキ31が設けられている。
【0031】
図3〜
図5に基づき、軸受部24の構成について詳細に説明する。なお、軸受部24は何れも
図3〜
図5に示すような構成になっているため、ここでは一方の軸受部24の構成について説明し、他方の軸受部24の構成については説明を省略する。
【0032】
軸受部24の基本的な構成は、従来の軸受部4(
図11)と同様である。即ち、
図3〜
図5に示すように、軸受部24は、ハウジング41に設けられた複数(図示例では8個)の軸受パッド32と、複数(図示例では8個)のピラー33と、複数(図示例では8個)の上レべリングプレート34と、複数(図示例では8個)の下レべリングプレート35と、複数(図示例では8個)の給油片36と、複数(図示例では8個)の油圧ジャッキ31とを有して成るものである。
【0033】
軸受パッド32は、回転軸21の円周方向(以下、単に円周方向と称する)に等間隔に配列され(
図3)、且つ、表面32aが軸方向を向いており、軸受パッド32の表面32aとスラストカラー23の側面23aとの間の隙間(以下、単に隙間と称する)を介して、スラストカラー23の側面23aに対向している。ピラー33は、軸受パッド32の背面32b側にそれぞれ配設され、円周方向に等間隔に配列されている。軸受パッド32は、背面32bに形成された凸部32cがピラー33の表面33aに当接しており、この凸部32cを支点として傾斜可能になっている。
【0034】
上レべリングプレート34と下レべリングプレート35は、軸受パッド32のレべリング機構を構成している。
【0035】
上レべリングプレート34は、ピラー33の背面33b側にそれぞれ配設され、円周方向に等間隔に配列されている。ピラー33の背面33bには凸部33cが形成されている一方、上レべリングプレート34の表面34aには凹部34bが形成されており、こらの凸部33cと凹部34bが嵌合している。従って、上レべリングプレート34は、凹部34b(凸部33c)を支点として傾斜可能になっている。
なお、本実施の形態例1ではピラー33を設けているが、これに限定するものでなく、ピラー33は設けず、軸受パッド32の凸部32cを、直接、上レべリングプレート34の表面34aに当接させた構造にしてもよい。
【0036】
下レべリングプレート35は、円周方向において隣り合う上レべリングプレート34の間に配設され、円周方向に等間隔に配列されている。円周方向における上レべリングプレート34の端部34cと、円周方向における下レべリングプレート35の端部35aは、互いに軸方向に重なりあって当接している。
【0037】
そして、油圧ジャッキ31は、下レべリングプレート35の背面35bにそれぞれ配設され、軸受パッド32のそれぞれに対応している。油圧ジャッキ31は、本体部(シリンダ部)31aがハウジング41の裏蓋41aに固定され、ロッド31bの伸縮方向が軸方向になるように配設されている。ロッド31bの先端面31b−1は、下レべリングプレート35の背面35bに当接している。従って、下レべリングプレート35は、ロッド31bの先端面31b−1を支点として傾斜可能になっている。また、スラストカラー23から軸受パッド32にかかるスラスト荷重は、ピラー33、上レべリングプレート34及び下レべリングプレート35を介して、油圧ジャッキ31で受ける。
【0038】
油圧ジャッキ31へ作動油を供給する油圧系統は、
図5に示すように油圧ポンプ53と、作動油52を貯留しているタンク51と、供給ライン(配管)55及びその分岐ライン(配管)55aと、リリーフバルブ54とを備えた構成になっている。供給ライン55の下流側は複数(図示例では8つ)の分岐ライン55aに分岐され、供給ライン55の上流側は油圧ポンプ53の吐出側に接続されている。分岐ライン55aの下流側は油圧ジャッキ31にそれぞれ接続されている。油圧ポンプ53の吸い込み側はタンク51内に延びている。従って、油圧ポンプ53が作動すると、タンク51内の作動油52が、供給ライン55及び分岐ライン55aを介して、油圧ジャッキ31にそれぞれ供給される。
【0039】
図3及び
図4に示すように、給油片36は、円周方向において隣り合う軸受パッド32の間に配設され、円周方向に等間隔に配列されている。給油片36には給油孔36aが形成されており、潤滑油供給系統(図示省略)から給油片36に供給される潤滑油が、給油孔36aから噴出して軸受パッド32の表面32aに供給される。その結果、隙間には、潤滑油の膜(以下、単に油膜と称する)が形成される。従って、スラスト荷重は、スラストカラー23から、隙間の油膜を介して、軸受パッド32にかかる。
【0040】
図1に一点鎖線で示すように、回転軸21が撓みや熱変形などによって傾斜し、これにともなってスラストカラー23が傾斜した場合、レべリング機構がなければ、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)が不均一になり、各軸受パッド32のスラスト荷重の分担が不均一になる。即ち、隙間が狭くなって油膜が薄くなった軸受パッド32では、スラスト荷重の分担が大きくなり、隙間が広くなって油膜が厚くなった軸受パッド32では、スラスト荷重の分担が小さくなる。
【0041】
これに対して、スラスト軸受装置22Aには上レべリングプレート34と下レべリングプレート15とで構成されたレべリング機構を備えているため、軸受パッド32をスラストカラー23の傾斜に追従させる(即ちスラストカラー23の傾斜に応じて軸受パッド12の軸方向の位置を調整する)ことにより(傾斜調整)、隙間を調整することができる。。このため、スラストカラー23が傾斜しても、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)を均一にして、各軸受パッド12のスラスト荷重の分担を均一にすることができる。
【0042】
例えば、
図4において、中央の軸受パッド32で隙間が狭くなって油膜が薄くなり、スラスト荷重の分担が大きくなった場合、この大きな分担荷重に押されて中央の軸受パッド32は、その背面32b側のピラー33及び上レべリングプレート34とともに矢印Jの如くスラストカラー23から離れる方向に移動する。一方、上レべリングプレート34の端部34cと下レべリングプレート35の端部35aが当接しているため、中央の軸受パッド32の隣りの軸受パッド32は、その背面32b側の上レべリングプレート34及びピラー33とともに矢印Kの如くスラストカラー23に近づく方向に移動する。また、この隣りの軸受パッド32の隙間も狭ければ(油膜が薄ければ)、この隣りの軸受パッド32はスラストカラー23から離れ、更にその隣の軸受パッド32(図示せず)がスラストカラー23に近づく。このようなレべリング機構の動作が円周方向の全体に亘って生じる。
【0043】
即ち、レべリング機構の働きにより、スラストカラー23の傾斜によって隙間が狭くなった軸受パッド32はスラストカラー23から離れる方向に移動させて当該隙間を広げ、スラストカラー23の傾斜によって隙間が広くなった軸受パッド32はスラストカラー23に近づく方向に移動させて当該隙間を狭める。かくして、軸受パッド32がスラストカラー23の傾斜に追従し、円周方向の各位置における隙間が均一になって、各軸受パッド32のスラスト荷重の分担が均一になる。
【0044】
そして、スラスト軸受装置22Aには油圧ジャッキ31も装備されているため、スラストカラー23の傾斜が大きい場合には、油圧ジャッキ31による軸受パッド32の傾斜調整を行うこともできる。
【0045】
即ち、スラストカラー23の傾斜によって隙間が狭くなった(油膜が薄くなった)軸受パッド32に対しては、当該軸受パッド32に対応する油圧ジャッキ31のロッド31bのストローク(以下、単にストロークと称する)を短くする(ロッド31bを縮退させる)ことにより、当該軸受パッド32の隙間を広くする(油膜を厚くする)ことができる。一方、スラストカラー23の傾斜によって隙間が広くなった(油膜が厚くなった)軸受パッド32に対しては、当該軸受パッド32に対応する油圧ジャッキ31のストロークを長くする(ロッド31bを伸長させる)ことにより、当該軸受パッド32の隙間を狭くする(油膜を薄くする)ことができる。かくして、軸受パッド32をスラストカラー23の傾斜に追従させる(即ちスラストカラー23の傾斜に応じて軸受パッド32の軸方向の位置を調整する)ことができる(傾斜調整)。
【0046】
このような油圧ジャッキ31による傾斜調整(隙間調整)は、例えば、作業員が
図5に示す油圧ジャッキ制御装置56に各油圧ジャッキ31の目標ストロークを設定(入力)し、油圧ジャッキ制御装置56が、各油圧ジャッキ31のストロークを前記目標ストロークとするように各油圧ジャッキ31を制御する。或いは、作業員が、各油圧ジャッキ31を直接操作して、各油圧ジャッキ31のストロークを調整してもよい。
【0047】
以上のように、本実施の形態例1のスラスト軸受装置22Aによれば、ロータの回転軸21の外周面21aに突設された円盤状のスラストカラー23を、スラストカラー23の両側に配設された一対の軸受部24によって支持し、且つ、軸受部24は、円周方向に配列されてスラストカラー23の側面23aに対向している複数の軸受パッド32と、軸受パッド32の背面32b側に配設された複数の上レべリングプレート34と複数の下レべリングプレート35とを有して成る軸受パッド32のレべリング機構とを備えた構成であるスラスト軸受装置22Aにおいて、下レべリングプレート34の背面35bに油圧ジャッキ31をそれぞれ設置して、スラストカラー23から軸受パッド32へかかるスラスト荷重を、上レべリングプレート34及び下レべリングプレート35を介して、油圧ジャッキ31で受ける構成としたことを特徴としているため、上レべリングプレート34と下レべリングプレート35とを有して成るレべリング機構によって各軸受パッド32の軸方向の位置を調整(即ち隙間調整)することができるだけでなく、油圧ジャッキ31のストロークを調整することによっても、各軸受パッド32の軸方向の位置を調整(即ち隙間調整)することができる。
このため、レべリング機構では対応できない程にスラストカラー23が大きく傾斜した場合でも、油圧ジャッキ31のストロークを調整して、各軸受パッド32の軸方向の位置を調整する(軸受パッド32をスラストカラー23の傾斜に追従させる)ことにより、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)を均一にして、各軸受パッド32のスラスト荷重の分担を均一することができる。即ち、スラストカラー23の傾斜が小さいときには、レべリング機構による軸受パッド32の傾斜調整(隙間調整)で対応し、スラストカラー23の傾斜が大きいときには、油圧ジャッキ31による軸受パッド32の傾斜調整(隙間調整)で対応することができるため、スラストカラー23の傾斜に対して幅広く適切に対応することができる。従って、軸受パッド32の焼損を確実に防止することができ、スラスト軸受装置22Aの健全性が向上する。
更には、スラストカラー23の傾斜に対応した傾斜調整だけでなく、油圧ジャッキ31によってエンドプレー(隙間)の調整を行うことも可能である。即ち、組み立て後(回転軸21にスラスト軸受装置22Aを取り付け後)でも、油圧ジャッキ31によって隙間調整を行うことができる。このため、蒸気タービンやガスタービンのロータを据付後に隙間調整が必要になった場合でも、容易に対応することができる。
また、軸受パッドの背面に直接、油圧ジャッキを設けることも考えられるが、この場合には、組み立て時(回転軸にスラスト軸受装置を取り付けるとき)から、油圧ジャッキに作動油を供給しないと、隙間調整が難しく、組み立て作業に手間がかかる。これに対して、本実施の形態例1のスラスト軸受装置22Aでは、下レべリングプレート35の背面35bに油圧ジャッキ31を設けることにより、上レべリングプレート34と下レべリングプレート35とを有して成るレべリング機構も備えた構成になっているため、油圧ジャッキ31に作動油を供給しなくても、組み立て作業が容易である。
【0048】
<実施の形態例2>
図6,
図7及び
図8に基づき、本発明の実施の形態例2に係るスラスト軸受装置22Bについて説明する。なお、本実施の形態例2のスラスト軸受装置22Bの全体構成の概要については上記実施の形態例1のスラスト軸受装置22A(
図1,
図2を参照)と同様であるため、ここでの図示及び説明は省略する。また、本実施の形態例2のスラスト軸受装置22Bにおいて上記実施の形態例1のスラスト軸受装置22A(
図1〜
図5を参照)と同様の部分については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0049】
図6及び
図7に示すように、本実施の形態例2のスラスト軸受装置22Bでは、2つの温度センサ61A,61B(温度検出手段)と、制御装置62(油圧ジャッキ制御手段)とを備えている。
【0050】
一方の温度センサ61Aは、軸受部24の最上部に配設された軸受パッド32(以下、この軸受パッドの符号を32Aとも表示する)に設置されている。他方の温度センサ61Bは、軸受部24の最下部に配設された軸受パッド32(以下、この軸受パッドの符号を32Bとも表示する)に設置されている。即ち、温度センサ61A,61Bは、回転軸21の径方向の両側に位置する(即ち互いに180℃回転対称の位置にある)2つの軸受パッド32A,32Bにそれぞれ設置されている。
全ての軸受パッド32において、スラストカラー23の傾斜によって最も温度が高くなる(即ち最も隙間が狭くなる)軸受パッド32と、最も温度が低くなる(即ち最も隙間が広くなる)軸受パッド32は、スラスト軸受装置22Bの設計段階で予測することができる。図示例の場合には、最上部の軸受パッド32Aと最下部の軸受パッド32Bが、スラストカラー23の傾斜によって最も温度が高くなる(最も隙間が狭くなる)軸受パッドと最も温度が低くなる(最も隙間が広くなる)軸受パッドであると予測されるため、これらの軸受パッド32A,32Bに温度センサ61A,61Bを設置している。
【0051】
温度センサ61Aでは、軸受パッド32Aの温度(メタル温度)T
1を検出して、この検出温度T
1の信号を制御装置62へ出力する。温度センサ61Bでは、軸受パッド32Bの温度(メタル温度)T
2を検出して、この検出温度T
2の信号を制御装置62へ出力する。
【0052】
制御装置62では、温度センサ61Aから入力する軸受パッド32Aの検出温度T
1と、温度センサ61Bから入力する軸受パッド32Bの検出温度T
2とに基づいて、隙間調整(傾斜調整又はエンドプレーの調整)を行う。この制御装置62の処理内容を、
図8のフローチャートに基づいて詳述する。なお、
図8の各ステップにはS1〜S8の符号を付した。制御装置62を起動すると、
図8にフローチャートに示す処理が、制御装置62によって繰り返し実行される。
【0053】
制御装置62では、ステップS1で処理を開始すると、まず、ステップS2において、温度センサ61Aから送られてくる軸受パッド32Aの検出温度T
1の信号と、温度センサ61Bから送られてくる軸受パッド32Bの検出温度T
2の信号とを入力する。一方、制御装置62には、設定温度T
0と設定温度差ΔT
0とが予め設定(入力)されている。
【0054】
エンドプレー(隙間)の調整が適切に行われている場合、スラストカラー23が傾斜しなければ、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)が均一であり、各軸受パッド32のスラスト荷重の分担が均一であるため、検出温度差T
1,T
2が設定温度T
0以上になることはない。また、スラストカラー23が傾斜しても、その傾斜が小さければ、上レべリングプレート14と下レべリングプレート15とで構成されるレべリング機構によって傾斜調整(隙間調整)が行われるため、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)がほぼ均一になり、各軸受パッド32のスラスト荷重の分担がほぼ均一になるため、検出温度差T
1,T
2が設定温度差T
0以上になることはない。
【0055】
一方、前記レべリング機構だけでは十分な傾斜調整(隙間調整)を行うことができない程に大きくスラストカラー23が傾斜したときには、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)が不均一になって各軸受パッド32のスラスト荷重の分担が不均一になり、メタル温度のバラツキが大きくなる。このため、検出温度T
1又は検出温度T
2が設定温度T
0以上になる。
即ち、スラストカラー23が軸方向の一方へ大きく傾斜した場合には、上の軸受パッド32Aの隙間は狭くなり、下の軸受パッド32Bの隙間は広くなるため、検出温度T
1は上昇して設定温度T
0以上になり、検出温度T
2は低下する。スラストカラー23が軸方向の他方へ大きく傾斜した場合には、下の軸受パッド32Bの隙間は狭くなり、上の軸受パッド32Aの隙間は広くなるため、検出温度T
2は上昇して設定温度T
0以上になり、検出温度T
1は低下する。
これらの場合、検出温度T
1と検出温度T
2の温度差ΔTは大きくなる。従って、温度差ΔTが設定温度差ΔT
0以上であれば、スラストカラー23が大きく傾斜したことが原因で軸受パッド温度が上昇したと推定することができる。
【0056】
また、エンドプレーの調節が適切ではなくて隙間が全体的に(即ち円周方向の何れの位置においても)狭すぎる場合には、スラストカラー23の傾斜が小さくても、また、隙間の狭さによってはスラストカラー23が傾斜していなくても、検出温度T
1又は検出温度T
2が設定温度T
0以上になること、或いは、検出温度T
1及び検出温度T
2が定温度T
0以上になることがある。
この場合、検出温度T
1と検出温度T
2の温度差ΔTは小さい。従って、温度差ΔTが設定温度差ΔT
0よりも小さければ、スラストカラー23が大きく傾斜したことが原因ではなく、エンドプレーの調節不足により隙間が全体的に狭すぎることが原因で軸受パッド温度が上昇したと推定することができる。
【0057】
そこで、まず、次のステップS3では、ステップS2で入力した検出温度T
1,T
2と、設定温度T
0とを比較し、検出温度T
1が設定温度T
0以上(T
1≧T
0)になったか否か、又は、検出温度T
2が設定温度T
0以上(T
2≧T
0)になったか否か、又は、検出温度T
1及び検出温度T
2が設定温度T
0以上(T
1≧T
0及びT
2≧T
0)になったか否かを判定する。
【0058】
ステップS3の判定結果がNOの場合、即ち検出温度T
1,T
2が何れも設定温度T
0以上ではない(T
1<T
0及びT
2<T
0)と判定した場合には、ステップS2へ戻って、再度、温度センサ61A,61Bから検出温度T
1,T
2の信号を入力する。
【0059】
一方、ステップS3の判定結果がYESの場合、即ち検出温度T
1と検出温度T
2の何れか一方又は両方が設定温度T
0以上(T
1≧T
0、又は、T
2≧T
0、又は、T
1≧T
0及びT
2≧T
0)であると判定した場合には、次のステップS4に進む。
【0060】
ステップS4では、ステップS2で入力した検出温度T
1と検出温度T
2との差ΔT(T
1−T2又はT
2−T
1)を算出する。即ち、この検出温度差ΔTは、検出温度T
1,T
2の何れか高い方から、検出温度T1,T2の何れか低い方を差し引いた値(換言すれば、検出温度T1,T2の差の絶対値)である。その後、次のステップS5へ進む。
【0061】
ステップS5では、ステップS4で算出した検出温度差ΔTと、設定温度差ΔT
0とを比較し、検出温度差ΔTが設定温度差ΔT
0以上(ΔT≧ΔT
0)であるか否かを判定する。
【0062】
ステップS5の判定結果がYESの場合、即ち検出温度差ΔTが設定温度差ΔT
0以上(ΔT≧ΔT
0)であると判定した場合には、次のステップS6へ進む。つまり、この場合には、スラストカラー23が大きく傾斜したことよって、各軸受パッド32のスラスト荷重の分担が不均一になったことが、軸受パッド温度が上昇した原因であると推定することができるため、ステップS6へ進んで傾斜調整を行う。
【0063】
即ち、ステップS6では、油圧ジャッキ31のストロークを調整することによって、軸受パッド3の傾斜調整(隙間調整)を行うことにより、軸受パッド32をスラストカラー23の傾斜に追従させる(即ちスラストカラー23の傾斜に応じて軸受パッド12の軸方向の位置を調整する)。
例えば、検出温度T
1が設定温度T
0以上(T
1≧T
0)になった場合(即ち検出温度T
1の方が検出温度T
2よりも高くなった場合)には、温度が高くなった軸受パッド32Aに近い方の油圧ジャッキ31のストロークは短くし、温度が低くなった軸受パッド32Bに近い方の油圧ジャッキ31のストロークは長くする。その結果、軸受パッド32Aやこれに近い方の軸受パッド32はスラストカラー23から離れ、軸受パッド32Bやこれに近い方の軸受パッド32はスラストカラー23に近づく。その結果、軸受パッド32がスラストカラー23の傾斜に追従するため、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)が均一になり、各軸受パッド32のスラスト荷重の分担が均一になる。
逆に、検出温度T
2が設定温度T
0以上(T
2≧T
0)になった場合(即ち検出温度T
2の方が検出温度T
1よりも高くなった場合)には、温度が高くなった軸受パッド32Bに近い方の油圧ジャッキ31のストロークは短くし、温度が低くなった軸受パッド32Aに近い方の油圧ジャッキ31のストロークは長くする。その結果、軸受パッド32Bやこれに近い方の軸受パッド32はスラストカラー23から離れ、軸受パッド32Aやこれに近い方の軸受パッド32はスラストカラー23に近づく。その結果、軸受パッド32がスラストカラー23の傾斜に追従するため、円周方向の各位置における隙間(油膜の厚さ)が均一になり、各軸受パッド32のスラスト荷重の分担が均一になる。
【0064】
なお、このときの各油圧ジャッキ31のストローク調整量は、制御装置62に予め設定(入力)しておく。例えば、検出温度T
1,T
2の大きさに応じて各油圧ジャッキ31のストローク調整量を設定するようにしてもよい。或いは、制御装置62に予め設定温度差ΔT
0よりも小さな設定温度差ΔT
01を設定(入力)しておき、検出温度差ΔTが設定温度差ΔT
01以下になるまで、各油圧ジャッキ31のストロークを調整(短く又は長く)するようにしてもよい。
【0065】
一方、ステップS5の判定結果がNOの場合、即ち検出温度差ΔTが設定温度差ΔT
0以上ではない(ΔT<ΔT
0)と判定した場合には、次のステップS7へ進む。つまり、この場合には、エンドプレーの調節が適切ではなくて隙間が全体的に狭すぎることが、軸受パッド温度が上昇した原因であると推定することができるため、ステップS7へ進んでエンドプレーの調整を行う。
【0066】
ステップS7では、隙間を広げるようにエンドプレー調整を行う。即ち、全ての油圧ジャッキ31のストロークを調整(短く)することによって、全ての軸受パッド32がスラストカラー23から離れるようにすることにより、隙間を全体的に広くする。
【0067】
なお、このときの各油圧ジャッキ31のストローク調整量は、制御装置62に予め設定(入力)しておく。例えば、検出温度T
1,T
2の大きさに応じて各油圧ジャッキ31のストローク調整量を設定するようにしてもよい。或いは、制御装置62に予め設定温度T
0よりも小さな設定温度T
01を設定(入力)しておき、設定温度T
0以上になった検出温度T
1又はT
2或いはT
1及びT
2が、設定温度T
01以下になるまで、各油圧ジャッキ31のストロークを調整(短く)するようにしてもよい。
【0068】
本実施の形態例2のスラスト軸受装置22Bのその他の構成については、上記実施の形態例1のスラスト軸受装置22A(
図1〜
図5)と同様である。
【0069】
以上のことから、本実施の形態例2のスラスト軸受装置22Bによれば、上記実施の形態例1のスラスト軸受装置22Aと同様の作用効果を得ることができる。
【0070】
更に、本実施の形態例2のスラスト軸受装置22Bによれば、軸受パッド32A,32Bの温度T
1,T
2を検出する温度センサ61A,61B(温度検出手段)と、温度センサ61A,61Bによって得られる軸受パッド32A,32Bの検出温度T
1,T
2に基づいて、油圧ジャッキ31のストロークを調整して軸受パッド32の位置を調整することにより、隙間を調整する制御装置62(油圧ジャッキ制御手段)とを備えたことを特徴としているため、軸受パッド32A,32Bの温度に基づいて油圧ジャッキのストローク調整(即ち隙間調整)を行うことができる。このため、軸受パッド32の焼損をより確実に防止することができ、スラスト軸受装置22Bの健全性が更に向上する。
【0071】
しかも、制御装置62では、温度センサ61A,61Bによって得られる2つの軸受パッド32A,32Bの検出温度T
1,T
2と設定温度T
0とを比較し、その結果、検出温度T
1,T
2の何れか一方又は両方が設定温度T
0以上であると判定した場合には、検出温度T
1,T
2の差ΔTを算出して、この検出温度差ΔTと設定温度差ΔT
0とを比較し、その結果、検出温度差ΔTが設定温度差ΔT
0以上であると判定した場合には、油圧ジャッキ31のストロークを調整することによって複数(図示例では8個)の軸受パッド32の傾斜調整を行う一方、検出温度差ΔTが設定温度差ΔT
0以上ではないと判定した場合には、油圧ジャッキ31のストロークを調整(短く)することによって複数(図示例では8個)の軸受パッド32の位置を調整することにより、隙間を全体的に広くするようにように制御することを備えたことを特徴としているため、検出温度T
1,T
2だけでなく、検出温度差ΔTも考慮して(軸受パッド温度の上昇が、スラストカラー23が大きく傾斜したことに因るものか、エンドプレーの調整不足に因るものかを判断して)、より的確に油圧ジャッキ31のストローク調整(即ち隙間調整)を行うことができる。このため、軸受パッド32の焼損をより確実に防止して、スラスト軸受装置22Bの健全性が更に向上させることができる。
【0072】
なお、上記では上下2つの軸受パッド32A,32Bに温度センサ61A,61Bが設けられている場合について説明したが、これに限定するものではなく、本発明は3つ以上(全部でもよい)の軸受パッド32に温度センサが設けられている場合にも適用することができる。
この場合、制御装置62では、例えば、温度センサによって得られる3つ以上の軸受パッド32の検出温度Tのうちの何れか2つの検出温度T
1,T
2を選定して、これらの検出温度T
1,T
2と設定温度T
0とを比較し、その結果、検出温度T
1,T
2の何れか一方又は両方が設定温度T
0以上(T
1≧T
0又はT
2≧T
0、或いは、T
1≧T
0及びT
2≧T
0)であると判定した場合には、検出温度T
1,T
2の差ΔT(絶対値)を算出して、この検出温度差ΔTと設定温度差ΔT
0とを比較し、その結果、検出温度差ΔTが設定温度差ΔT
0以上(ΔT≧ΔT
0)であると判定した場合には、油圧ジャッキ31のストロークを調整することによって複数(図示例では8個)の軸受パッド32の傾斜調整を行う一方、検出温度差ΔTが設定温度差ΔT
0以上ではない(ΔT<ΔT
0)と判定した場合には、油圧ジャッキ31のストロークを調整(短く)することによって複数(図示例では8個)の軸受パッド32の位置を調整することにより隙間を全体的に広くする(エンドプレー調整)ように制御すればよい。
【0073】
また、上記では複数の軸受パッド32に温度センサを設けた場合について説明したが、必ずしもこれに限定するものではなく、少なくと1つの軸受パッドに温度センサが設けられているスラスト軸受装置であれば、本発明を適用することができる。
例えば、スラストカラー23の傾斜によって最上部の軸受パッド32Aの温度が最も高くなることが予測できる場合には、この軸受パッド32Aに温度センサ61Aを設置するだけでもよい。この場合のスラスト軸受装置は、軸受パッド32Aの温度T
1を検出する温度センサ61A(温度検出手段)と、この温度センサ61Aによって得られる軸受パッド32Aの検出温度T
1に基づいて、油圧ジャッキ31のストロークを調整して軸受パッド32の位置を調整することにより、隙間を調整する制御装置62(油圧ジャッキ制御手段)とを備えた構成となる。この場合、例えば、温度センサ61Aの検出温度T
1と設定温度T
0とを比較し、その結果、検出温度T1が設定温度T
0以上(T
1≧T
0)であると判定したとき、油圧ジャッキ31のストロークを調整して隙間を調整する(即ち軸受パッド32の傾斜調整行う、又は、隙間を広げるようにエンドプレー調整を行う)ように制御することができる。
【0074】
<実施の形態例3>
図9に基づき、本発明の実施の形態例3に係るスラスト軸受装置22Cについて説明する。なお、本実施の形態例3のスラスト軸受装置22Cの全体構成の概要については上記実施の形態例1,2のスラスト軸受装置22A,22B(
図1,
図2を参照)と同様であるため、ここでの図示及び説明は省略する。また、本実施の形態例3のスラスト軸受装置22Cにおいて上記実施の形態例1,2のスラスト軸受装置22A,22B(
図1〜
図8を参照)と同様の部分については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0075】
図9に示すように、本実施の形態例3のスラスト軸受装置22Bでは、変位センサ72(変位量検出手段)と、可変絞り機構72と、制御装置62(油圧ジャッキ制御手段及び可変絞り機構制御手段)とを備えている。
【0076】
変位センサ71は、回転軸21の端面21bに対向して配設されており、矢印Lで示すような回転軸21の軸方向の変位量Wを検出して、この検出変位量Wの信号を制御装置62へ出力する。検出変位量Wは、所定の基準位置(例えば回転軸21が停止しているときの端面21bの位置)からの変位量である。隙間を広げすぎた場合には、蒸気タービンやガスタービンのロータ(回転軸21)が、軸方向に大きく変位する(即ち揺動する)おそれがあり、この揺動によってスラスト軸受装置22Cが損傷するおそれがある。従って、前記揺動の発生を検知するために変位センサ71が設けられている。
【0077】
可変絞り機構72は、油圧ジャッキ31へ作動油52を供給する油圧系統の供給ライン55に配設されている。即ち、可変絞り機構72は、油圧ジャッキ31の油圧系統の上流側に設けられている。可変絞り機構72は、振動に対するダンパとしての役割を果たすこともできる。
【0078】
そこで、制御装置62では、変位センサ71から入力する回転軸21の検出変位量Wと、制御装置62に予め設定(入力)されている設定変位量W
0とを比較し、検出変位量Wが設定変位量W
0以上になったとき、可変絞り機構72の絞り量を調整することにより、回転軸21の軸方向の揺動を抑制する。即ち、可変絞り機構72の絞り量を調整することよって、ダンパとしての役割を果たす可変絞り機構72の減衰係数を調整することにより、回転軸21の軸方向の揺動を抑制する。
【0079】
なお、このときの可変絞り機構72の絞り量(調整量)は、制御装置62に予め設定(入力)しておく。この場合、検出変位量Wの大きさに応じて可変絞り機構72の絞り量(調整量)を設定するようにしてもよい。或いは、制御装置62に予め設定変位量W
0よりも小さな設定変位量W
01を設定(入力)しておき、検出変位量Wが設定変位量W
01以下になるまで、可変絞り機構72の絞り量を調整するようにしてもよい。
【0080】
本実施の形態例3のスラスト軸受装置22Cのその他の構成については、上記実施の形態例1,2のスラスト軸受装置22A,22B(
図1〜
図8)と同様である。
【0081】
以上のことから、本実施の形態例3のスラスト軸受装置22Cによれば、上記実施の形態例1,2のスラスト軸受装置22A,22Bと同様の作用効果を得ることができる。
【0082】
しかも、本実施の形態例3のスラスト軸受装置22Cによれば、油圧ジャッキ31へ作動油52を供給する油圧系統の供給ライン55に設けた可変絞り機構72と、回転軸21の軸方向の変位量Wを検出する変位センサ71と、変位センサ71で検出された回転軸21の軸方向の変位量Wが、設定変位量ΔW
0以上になったとき、可変絞り機構72の絞り量を調整することにより、回転軸21の軸方向の揺動を抑制する制御装置62とを備えたことを特徴としているため、油圧ジャッキ31によって軸受パッド32の傾斜調整を行うことができるだけでなく、可変絞り機構72によって回転軸21の揺動を抑えることもできる。
【0083】
なお、本発明のスラスト軸受装置は、蒸気タービンやガスタービンのロータの回転軸に設置されるスラスト軸受装置に適用して有用なものであるが、これに限定するものではなく、各種の回転体の回転軸に設置されるスラスト軸受装置に適用することができる。
また、上記実施の形態例1〜3では8個の軸受パッドを有するスラスト軸受装置の例を示したが、勿論、これに限定するもではなく、本発明は8個以外の個数(例えば6個、10個、12個など)の軸受パッドを有するスラスト軸受装置にも適用することができる。