(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863471
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】プラガブル光通信モジュール
(51)【国際特許分類】
H05K 9/00 20060101AFI20160202BHJP
H01S 5/022 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
H05K9/00 G
H05K9/00 M
H01S5/022
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-7507(P2012-7507)
(22)【出願日】2012年1月17日
(65)【公開番号】特開2013-149688(P2013-149688A)
(43)【公開日】2013年8月1日
【審査請求日】2014年10月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】301005371
【氏名又は名称】日本オクラロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本廣 智
(72)【発明者】
【氏名】本澤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大森 幸一
(72)【発明者】
【氏名】石野 敏也
(72)【発明者】
【氏名】安田 元気
【審査官】
遠藤 邦喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−108684(JP,A)
【文献】
特開2012−008480(JP,A)
【文献】
特表2005−522004(JP,A)
【文献】
実開平05−076094(JP,U)
【文献】
特開2010−251607(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0048850(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置に配置されたケージに対して挿入して使用するプラガブル光通信モジュールであって、
導電性のケースを備え、
前記ケースは、分割された複数の分割ケースから構成され、
前記複数の分割ケースは、前記ケージへの挿入方向に対して交差する方向に相対的に可動であり、相対的に離れる方向に弾性力が付与されており、
前記弾性力によって、少なくとも1つの前記分割ケースが前記ケージの内側に接触し、
前記弾性力を付与するための弾性体と、
前記ケースに内蔵される基板と、
をさらに有し、
前記弾性体は、前記基板に取り付けられていることを特徴とするプラガブル光通信モジュール。
【請求項2】
ホスト装置に配置されたケージに対して挿入して使用するプラガブル光通信モジュールであって、
導電性のケースを備え、
前記ケースは、分割された複数の分割ケースから構成され、
前記複数の分割ケースは、前記ケージへの挿入方向に対して交差する方向に相対的に可動であり、相対的に離れる方向に弾性力が付与されており、
前記弾性力によって、少なくとも1つの前記分割ケースが前記ケージの内側に接触し、
少なくとも1つの前記分割ケースは、対向して配置される他の前記分割ケースとの対向面に電磁波吸収体を有することを特徴とするプラガブル光通信モジュール。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、
前記ケースは、前記ケージへの挿入方向の先端から後端に向けて次第に厚み又は幅が大きくなる部分を有するように構成され、
前記厚み又は前記幅を定義する一方の面は、前記ケージの内側に接触する前記少なくとも1つの前記分割ケースの外表面であることを特徴とするプラガブル光通信モジュール。
【請求項4】
請求項2に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、
少なくとも1つの前記分割ケースは、前記弾性力を付与するための弾性材料から構成されていることを特徴とするプラガブル光通信モジュール。
【請求項5】
請求項2に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、
前記弾性力を付与するための弾性体をさらに有することを特徴とするプラガブル光通信モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、
前記ケースに内蔵される基板をさらに有し、
前記弾性体は、前記基板に取り付けられていることを特徴とするプラガブル光通信モジュール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、
前記複数の分割ケースは、トップケースとボトムケースであり、上下方向に可動であることを特徴とするプラガブル光通信モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラガブル光通信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
プラガブル光通信モジュールは、ホスト装置の内部に設けられた金属製のケージに対して着脱可能な形態である。このプラガブル光通信モジュールはホスト装置に配置された電気コネクタに接続されて光通信を行なう。プラガブル光通信モジュールをホスト装置内で保持するケージは、ホスト装置の外部への電磁障害(EMI: Electromagnetic Interference)を抑制するため、ホスト装置のグラウンドに接地されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、複数の光通信モジュールが搭載可能なケージを持つホスト装置に装着されて使用されるプラガブル光通信モジュールに導電性の弾性フィンガを両側面に備え、複数のプラガブル光通信モジュールを両側面が互いに隣接するように配置した場合に、一方の側面の弾性フィンガが隣接する他方の側面に接触し、且つ、両側面の弾性フィンガ同士は互いに干渉しないように設けることでホスト装置前方における隙間を狭くしてEMIシールド機能を高める形が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−158888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラガブル光通信モジュールは、ホスト装置の基板に設けられているケージに挿入して使用される。プラガブル光通信モジュールは、ケージとの間に隙間を持った状態で、ホスト装置に配置された電気コネクタに接続する。プラガブル光通信モジュールとホスト装置との電気的なインターフェースは電気コネクタを経由して行なう。プラガブル光通信モジュールと電気コネクタの間では、電磁障害の源となる高周波の電気信号の授受も行なう。
【0006】
近年は信号の伝送量の増大に加えて伝送速度が高速化していて、この電気信号の動作周波数は高くなっている。動作周波数が低い場合は、プラガブル光通信モジュールとケージとの隙間が多少大きくても電磁障害を抑制することが可能であった。しかし、動作周波数が高くなると、プラガブル光通信モジュールとケージとの隙間が小さくても電磁波がこの隙間を通ってホスト装置の外部へ放出されるようになる。
【0007】
特許文献1は、フィンガを備えたプラガブル光通信モジュールにのみ採用可能で、複数の光通信モジュールが搭載可能な装置に対して有効な手段である。
【0008】
本発明は、フィンガの有無に関係なく、プラガブル光通信モジュールとホスト装置のケージとの隙間を小さくして、上述した電磁障害(EMI)に対するシールド機能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係るプラガブル光通信モジュールは、ホスト装置に配置されたケージに対して挿入して使用するプラガブル光通信モジュールであって、導電性のケースを備え、前記ケースは、分割された複数の分割ケースから構成され、前記複数の分割ケースは、前記ケージへの挿入方向に対して交差する方向に相対的に可動であり、相対的に離れる方向に弾性力が付与されており、前記弾性力によって、少なくとも1つの前記分割ケースが前記ケージの内側に接触することを特徴とする。本発明によれば、弾性力によって分割ケースがケージの内側に接触するので、プラガブル光通信モジュールとホスト装置のケージとの隙間を小さくして、電磁障害(EMI)に対するシールド機能を高めることができる。
【0010】
(2)(1)に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、前記ケースは、前記ケージへの挿入方向の先端から後端に向けて次第に厚み又は幅が大きくなる部分を有するように構成され、前記厚み又は前記幅を定義する一方の面は、前記ケージの内側に接触する前記少なくとも1つの前記分割ケースの外表面であることを特徴としてもよい。
【0011】
(3)(2)に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、前記ケージの内側に接触する前記少なくとも1つの前記分割ケースの前記外表面は、傾斜面であり、前記ケースは、前記ケージへの挿入方向に平行であって前記外表面に交差する面で切断した断面において、くさびの一部に相当する形状を有することを特徴としてもよい。
【0012】
(4)(2)に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、前記ケージの内側に接触する前記少なくとも1つの前記分割ケースの前記外表面は、湾曲した凸曲面であり、前記外表面は、前記ケージへの挿入方向に平行な面で切断した断面において、アーチ形状を描くことを特徴としてもよい。
【0013】
(5)(1)から(4)のいずれか1項に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、少なくとも1つの前記分割ケースは、前記弾性力を付与するための弾性材料から構成されていることを特徴としてもよい。
【0014】
(6)(1)から(4)のいずれか1項に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、前記弾性力を付与するための弾性体をさらに有することを特徴としてもよい。
【0015】
(7)(6)に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、前記ケースに内蔵される基板をさらに有し、前記弾性体は、前記基板に取り付けられていることを特徴としてもよい。
【0016】
(8)(1)から(7)のいずれか1項に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、少なくとも1つの前記分割ケースは、対向して配置される他の前記分割ケースとの対向面に電磁波吸収体を有することを特徴としてもよい。
【0017】
(9)(1)から(8)のいずれか1項に記載されたプラガブル光通信モジュールにおいて、前記複数の分割ケースは、トップケースとボトムケースであり、上下方向に可動であることを特徴としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールを示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールを使用するホスト装置の一部を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールが挿入されたホスト装置を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールの断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールの変形例1を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールの変形例2を示す図である。
【
図8】ケージに挿入されたときのプラガブル光通信モジュールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態の説明ではプラガブル光通信モジュールのフォームファクターの一つであるXFP(10 Gigabit Small Form Factor Pluggable)を例に挙げて説明するが、プラガブル光通信モジュールにはSFP+(Small Form−Factor Pluggable Plus)、CFP2(100G form−factor pluggable 2)、QSFP(Quad Small Form−factor Pluggable)等様々なフォームファクターがあり、あらゆるプラガブル光通信モジュールにも本発明を適用することができる。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールを示す図である。
図2は、本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールを使用するホスト装置の一部を示す図である。
【0022】
プラガブル光通信モジュール10は、ホスト装置に配置されたケージ12に対して挿入して使用するものである。ケージ12は、ホスト装置の基板14に取り付けられている。ホスト装置の前面にフロントパネル16が配置されている。フロントパネル16は、プラガブル光通信モジュール10の差込口18を有する。ケージ12は、フロントパネル16の差込口18と連通するように、プラガブル光通信モジュール10の収容空間を有する。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュール10が挿入されたホスト装置を示す図である。
【0024】
プラガブル光通信モジュール10は、ケージ12に挿入されると、基板14に設けられた電気コネクタ20と電気的に接続する。フロントパネル16は導電材料から構成され、ホスト装置の図示しないアースと同電位となっており、ホスト装置と基板14からの電磁波をシールドするので、電磁障害(EMI)に対して効果がある。しかしながら、フロントパネル16の差込口18とプラガブル光通信モジュール10の間に隙間が形成されると、高速な電気信号による電磁波が漏れるため、プラガブル光通信モジュール10とケージ12との隙間を小さくすることは、電磁障害(EMI)のシールドにおいて非常に有効となる。
【0025】
図4は、本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュール10の断面図である。プラガブル光通信モジュール10は、導電性のケース22を備えている。ケース22は、分割された複数の分割ケース24から構成されている。複数の分割ケース24は、トップケース26とボトムケース28であり、上下方向に可動である。少なくとも1つの分割ケース24(ボトムケース28)は、弾性力を付与するための弾性材料から構成されている。トップケース26とボトムケース28はネジ30によって保持されている。
【0026】
ケース22は、ケージ12への挿入方向の先端から後端に向けて次第に厚み又は幅が大きくなる部分を有するように構成されている。厚み又は幅を定義する一方の面は、ケージ12の内側に接触する少なくとも1つの分割ケース24の外表面である。
【0027】
ケージ12の内側に接触する少なくとも1つの分割ケース24の外表面は、傾斜面である。ケース22は、ケージ12への挿入方向に平行であって外表面に交差する面で切断した断面において、くさびの一部に相当する形状を有する。
【0028】
複数の分割ケース24は、ケージ12への挿入方向に対して交差する方向に相対的に可動である。複数の分割ケース24は、相対的に離れる方向に弾性力が付与されている。弾性力によって、少なくとも1つの分割ケース24がケージ12の内側に接触する。
【0029】
図5は、ボトムケース28を示す図である。少なくとも1つの分割ケース24(ボトムケース28)は、対向して配置される他の分割ケース24(トップケース26)との対向面に電磁波吸収体25を有する。これにより、プラガブル光通信モジュール10の内部からの電磁波もシールドすることができ、システム全体の電磁障害対策もより効果的となる。
【0030】
プラガブル光通信モジュール10の幅(高さ)は、ケージ12に挿入されるとその高さに倣って小さくなる。トップケース26とボトムケース28は、相対的に離れる方向に弾性力が付与されているので、プラガブル光通信モジュール10とケージ12との隙間は小さくなる。
【0031】
本実施形態によれば、弾性力によって分割ケース24がケージ12の内側に接触するので、プラガブル光通信モジュール10とホスト装置のケージ12との隙間を小さくして、電磁障害(EMI)に対するシールド機能を高めることができる。(変形例1)
【0032】
図6は、本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールの変形例1を示す図である。この例では、ケージ12の内側に接触する少なくとも1つの分割ケース124の外表面は、湾曲した凸曲面である。外表面は、ケージ12への挿入方向に平行な面で切断した断面において、アーチ形状を描く。(変形例2)
【0033】
図7は、本発明の実施形態に係るプラガブル光通信モジュールの変形例2を示す図である。この例では、弾性力は弾性体232によって付与される。ケース222には基板214が内蔵されている。弾性体232は、基板214に取り付けられている。プラガブル光通信モジュール210をケージ12に挿入する前では、弾性体232には力が加えられていないので、弾性力が生じていない。
【0034】
図8は、ケージ12に挿入されたときのプラガブル光通信モジュール210を示す図である。プラガブル光通信モジュール210をケージ12に挿入すると、ボトムケース228はケージ12から上方向の力を受ける。これにより、弾性体232が圧縮され、弾性力が生じる。これにより、プラガブル光通信モジュール210とケージ12との隙間が小さい状態を保ちつつ、プラガブル光通信モジュール210はケージ212に収まる。
【0035】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施の形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 ラガブル光通信モジュール、12 ケージ、14 基板、16 フロントパネル、18 差込口、20 電気コネクタ、22 ケース、24 分割ケース、25 電磁波吸収体、26 トップケース、28 ボトムケース、30 ネジ、124 分割ケース、210 ラガブル光通信モジュール、214 基板、222 ケース、228 ボトムケース、232 弾性体。