(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明における実施例1について詳細に説明する。
図1は、本発明の実施例1における車両用衝突危険予測システム100を示す構成図であって、本発明の車両用衝突危険予測装置101を、車両用衝突危険予測システム100に適用した場合における構成例を示す。
【0012】
車両用衝突危険予測システム100は、車両に搭載されており、車両周辺(例えば、前方向)の衝突の危険を検知して、ドライバーに警告を与える等が可能なシステムである。
【0013】
車両用衝突危険予測システム100は、車両用衝突危険予測装置101と、画像表示部107と、警報音出力部108を適宜用いて構成される。
車両用衝突危険予測装置101は、車両に搭載されており、車両周辺(例えば、前方向)の衝突の危険を検知して、画像と音声によってドライバーに警告を与えるための、合成画像の出力と、音声信号の出力をする装置であって、ミリ波撮像部102、第1検出部103、可視光撮像部104、危険予測部105、画像合成部106とを適宜用いて構成される。
【0014】
ミリ波撮像部102は、ミリ波センサ・信号処理部109を用いて構成される。
ミリ波センサ・信号処理部109は、ミリ波帯からサブミリ波帯(波長:数十μm程度から1cm程度まで)と呼ばれる波長の電磁波を撮像し、2次元デジタルデータである出力画像として、第1検出部103及び画像合成部106に出力する。一般的に、ミリ波帯からサブミリ波帯まで(波長:数十μm程度から1cm程度まで)の電磁波は、ある種の材質によってできた物を透過するという性質を持つ。そのため、障害物の陰に隠れて人の目には見えない位置にある物体であっても、ミリ波センサ・信号処理部109によってその物体を形状を画像化することができる。
【0015】
第1検出部103は、ミリ波撮像部102の出力画像から、人・動物などの生物や、自動車・バイク・自転車などの車両の物体形状を抽出し、また、その物体の移動速度や移動の傾向などを判断し、自車両と衝突する危険がある物体(以下、衝突危険物体)であると判断した場合には、その衝突危険物体の画像上の大きさや位置情報を示す衝突危険物体情報を、危険予測部105に出力する。衝突危険物体の判定方法の一例については後述する。
【0016】
可視光撮像部104は、紫外線から可視光を含み近赤外線(波長:10nm程度から数μm程度まで)と呼ばれる波長の電磁波を撮像し、2次元デジタルデータである出力画像として、画像合成部106に出力する。
【0017】
危険予測部105は、第1検出部103から出力された衝突危険物体情報を、画像合成部106に出力する。また、危険予測部105は、第1検出部103から出力された衝突危険物体情報に基づいて、ドライバーにアラーム音や合成音声などの警告音でドライバーに警告するべき内容を決定し、音声信号に変換し、警告音出力部108に出力する。
【0018】
画像表示部107は、危険予測部105から出力された衝突危険物体情報に基づいて、ミリ波撮像部102の出力画像から、衝突危険物体の位置の画像を切り抜き処理し、可視光撮像部104の出力画像に重畳した合成画像を、画像表示部107に出力する。
【0019】
警告音出力部108は、危険予測部105から出力された音声信号を元に発音して、音声でドライバーに警告を与える。
【0020】
以上のような構成によって、障害物の向こう側にある衝突危険物体について、ミリ波撮像部102と第1検出部103によって検出することができるようになり、合成画像と音声によりドライバーに警告して衝突回避行動を促すことで、衝突事故を未然に防ぐようにできる。なお、ドライバーへの警告は音声又は画像の一方だけでもよく、最初に音声を出力し、所定時間経過後、映像を出力するように時間差をつけても構わない。また、これらの警告は、自車両と衝突危険物体との距離に応じて段階的に変化させてドライバーに通知しても構わない。
【0021】
図2は、可視光撮像部104の出力画像の例を示す図である。この図は、自車両の前方を撮影するように可視光撮像部104が設置された場合を示している。撮像に使用する電磁波は、紫外線から可視光を含み近赤外線まで(波長:10nm程度から数μm程度まで)のいずれかの波長で撮像されているものとする。例えば可視光で撮像した場合には、人間の目で見える範囲の画像を撮像することができる。また、例えば近赤外線で撮像した場合には、夜間でも、物体の形を感度良く撮像することができる。それゆえ、例えば、照度センサ等の検出光量やネットワークと接続されて得られる日没情報・位置情報・天候情報等に基づき、適宜撮像に使用する電磁波を自動で切り替えるようにしてもよく、ドライバーが手動で切り替えるようにしても構わない。
【0022】
この
図2に示されるように、例えば自車両の前方に3つの障害物(看板広告201、街路樹202、のぼり旗203)が存在しているとする。看板広告201の材質は木材、街路樹202の材質は木材、のぼり旗203の材質は布とプラスチックである。ドライバーは当然可視光しか視認することができないので、自転車204、歩行者205に関しては視認可能であるが、もし障害物の向こう側に衝突危険物体が存在していたとしても予め視認することができない。
【0023】
そのため、本特許の装置を使用しない場合には、衝突危険物体が障害物の陰から急に飛び出してきくると、ブレーキやハンドリングなどによる衝突回避行動が間に合わずに事故に繋がる可能性がある。
【0024】
そこで、障害物の向こう側に衝突危険物体がある場合であっても、それを予め検知してドライバーに警告を与えて、ドライバーに衝突回避行動を取らせ、衝突事故を未然に防ぐ手段が必要となる。そのために、実施例1の手段ではミリ波帯からサブミリ波帯まで(波長:数十μm程度から1cm程度まで)と呼ばれる電磁波で撮像を行う。この波長帯の電磁波は、木材・プラスチック・布・紙・陶磁器・ダンボール・煙・霧など、水・金属以外の様々な物質を透過し、金属表面で反射し、また、人や動物など、水分を多く含んだ物体に吸収されるという性質がある。すなわち、障害物が、この波長帯の電磁波を透過する素材でできていた場合には、ミリ波撮像部102によって、障害物の向こう側を“透視”した映像を得ることができるということになる。
【0025】
一般的に、撮像方法は電磁波の光源(放射源)の種類によって、パッシブ型と、アクティブ型の二種類に分類される。パッシブ型は、熱を持った物体から自然に放射される、ミリ波帯からサブミリ波帯まで(波長:数十μm程度から1cm程度まで)の電磁波を光源とする撮像方法である。一方、アクティブ型は、自ら設置した光源で撮像対象を照らして、金属などの物質で反射した電磁波を、パッシブ型の場合よりも鮮明に撮像することができる撮像方法である。
【0026】
実施例1では、パッシブ型で撮像することとする。そのため、熱を持った物体である、歩行者や動物や走行中の車両(特にエンジン)などを検知することができる。
【0027】
図3は、ミリ波撮像部102の出力画像の例を示す図である。実施例1では、パッシブ型の撮像方法を採っているので、水・金属以外の様々な材質でできた障害物を透過して、人や動物や走行中の車両など、熱を持つ物体を検知することができる。例えば
図3では、可視光撮像部104によって検知可能だった自転車204、歩行者205以外にも、障害物に隠れた位置に存在する歩行者301、自動車302についても検知することが可能になっている。
【0028】
第1検出部103において、衝突危険物体を判定する方法の一例について、
図4を用いて以下に説明する。まず、ミリ波撮像部102から出力された出力画像から、人・動物などの生物や、自動車・バイク・自転車などの車両の物体形状を抽出する。また、時間的に連続して撮影された出力画像から、画像処理によって物体の予測移動方向・速度を計算し、物体の動き予測を行う。自車両の前方向の、ヨー角θ [°]以内(例:θ=10)、距離L [m](例:L=10)以内に、時間t [sec](例:t=2)以内に物体が通過する可能性があると判断された場合には、衝突危険物体として判定する。その場合には、その衝突危険物体の画像上の大きさや位置情報を示す、衝突危険物体情報を出力する。
【0029】
例えば
図4の場合には、撮像範囲200に存在する物体(自転車204、歩行者205、歩行者301、自動車302)の物体形状が抽出される。そして、それぞれの物体について、t[sec]後の予測位置(
図4の401、402,403,404)及び、0[sec]からt[sec]までの間の予測移動軌跡(
図4の白貫き矢印)が予測される。予測移動軌跡が、図の405で示される範囲を通過する物体は、衝突危険物体として判定される。例えば、
図4の場合には、自転車204、歩行者205、歩行者301、自動車302が衝突危険物体として判定される。なお、予測移動軌跡の予測には、ネットワーク等を介して取得されるマップ情報・渋滞情報等を補足情報として用いても構わない。
【0030】
図5は、画像合成部106の出力画像の例を示す図である。衝突危険物体として判断
された物体については、ミリ波撮像部102の出力画像から、物体の形状に沿って切り抜き処理され、可視光撮像部104の出力画像に重畳される。さらに、衝突危険物体の周辺に、
図5に矩形の点線で示すような、危険であることを示すマーカーが画像処理によって付加される。このような合成画像が、画像表示部を通じてドライバーに提示されることになる。このような合成画像によって、ドライバーは、障害物の向こう側にある衝突危険物体について知ることができる。
【0031】
以上のように、実施例1の手段を用いれば、障害物の向こう側にある衝突危険物体について、ミリ波撮像部102と第1検出部103によって検出することができるようになり、画像と音声によりドライバーに警告して衝突回避行動を促すことで、衝突事故を未然に防ぐようにできる。なお、ここでは、自車両の前方を撮像する場合を例にとって説明したが、これに限られず、自車両がバックする場合には、後方を撮像しながら同様に本発明を適用できることは言うまでもない。また、撮像範囲の方向については、例えば、自車両の方向指示器の動作に応じて適宜変更するようにしても構わない。また、本実施例1の記載中に示した変形例については、他の実施例においても適宜適用可能である。
【実施例2】
【0032】
以下、本発明における実施例2について詳細に説明する。
図6は、本発明の実施例2における車両用衝突危険予測システム100−2を示す構成図であって、本発明に係る車両用衝突危険予測装置101−2を、車両用衝突危険予測システム100−2に適用した場合における構成例を示す。
【0033】
車両用衝突危険予測装置101−2は、ミリ波撮像部102−2、第1検出部103−2、可視光撮像部104−2、危険予測部105−2、画像合成部106−2を適宜用いて構成され、ミリ波撮像部102−2は、ミリ波センサ・信号処理部109−2の他、ミリ波光源601−2を用いて構成される。
【0034】
ミリ波光源601−2は、ミリ波センサ・信号処理部109−2で撮像可能な電磁波(波長:数十μm〜1cm程度)を、撮影対象となる自車両の周辺に放射することができる光源(放射源)である。その他の構成要素に関しては、実施例1の
図1と同様であるので、説明を割愛する。
【0035】
実施例2では、ミリ波センサ・信号処理部109−2とミリ波光源601−2とを組み合わせて、アクティブ型の撮像方法を採るという点で、実施例1と異なる。
【0036】
実施例2では、アクティブ型の撮像方法を採るので、金属で覆われた物体である、自動車や、バイクや、自転車といった車両を、パッシブ型の場合よりも鮮明に撮像することが可能となり、その結果、危険物体の検出精度や、ドライバーに提示する合成画像の鮮明さが向上する。
【0037】
図7は、
図3と同様のシーンを、実施例2の撮像方法(アクティブ型)で撮像した場合の、ミリ波撮像部102−2の出力画像の例を示す図である。この例では、金属でできた自転車204、自動車302を、実施例1の撮像方法(パッシブ型)よりも鮮明に撮像可能である。
【0038】
鮮明に撮像された画像を用いるので、第1検出部103−2における衝突危険物体の検出精度は、実施例1の場合よりも高くなる。
【0039】
図8は、画像合成部106−2の出力画像の例を示す図である。合成画像の生成方法は、実施例1の場合と同様であるので、割愛する。この例では、金属でできた自転車204、自動車302が、実施例1の撮像方法(パッシブ型)よりも鮮明な画像になってドライバーに提示されている。
【0040】
以上のように、実施例2の手段を用いれば、障害物の向こう側にある衝突危険物体について、ミリ波撮像部102で高い精度で検出し、かつ鮮明な撮像画像を提示して、ドライバーに警告することができる。その結果、ドライバーは、より適切に衝突回避行動をとることができるので、衝突事故を未然に防ぐことができる。
【実施例3】
【0041】
以下、本発明における実施例3について詳細に説明する。
【0042】
図9は、本発明に係る実施例3における車両用衝突危険予測システム100−3を示す構成図であって、本発明の車両用衝突危険予測装置101−3を、車両用衝突危険予測システム100−3に適用した場合における構成例を示す。
【0043】
車両用衝突危険予測装置101−3は、ミリ波撮像部102−3、第1検出部103−3、可視光撮像部104−3、危険予測部105−3、画像合成部106−3を適宜用いて構成され、ミリ波撮像部102−3は、ミリ波センサ・信号処理部109−3、ミリ波光源601−3を用いて構成される。
【0044】
危険予測部105−3は、実施例2の危険予測部105−2と同様の処理を実施する。さらに、危険予測部105−3は、ミリ波撮像部102−3の撮像パラメータを制御する制御信号を、ミリ波撮像部102−3に出力する。また、図示しない切替部に基づいて、ミリ波光源601−3のON(点灯)/OFF(消灯)を切り替える制御信号を、ミリ波光源601−3に出力する。その他の構成要素に関しては、実施例2の
図6と同様であるので、説明を割愛する。
【0045】
実施例3は、撮像方法を時分割で切り替えて、パッシブ型とアクティブ型の両方の撮像方法を時分割で切り替えて撮像するという点で、実施例1,2と異なっている。時分割制御により、実施例3では、2つの撮像方法の検出結果の両方を用いることができるようになり、アクティブ型の撮像によって車両など金属でできた物体の検出精度を高める作用と、パッシブ型の撮像によって歩行者や動物などの検出を可能とする作用の両方を同時に実現することが可能となる。
【0046】
図10は、時分割制御の制御タイミングの一例を示した図である。時刻t1〜t2では、ミリ波光源601をOFF,t2〜t3ではON、・・・と、ミリ波光源601が点滅するように、危険予測部105が制御を行う。ミリ波光源601がOFFになっている期間はパッシブ型の撮像方法となり、逆に、ミリ波光源601がONになっている期間は、アクティブ型の撮像方法となる。
図10の場合には、出力画像1,3,5がパッシブ型、出力画像2,4がアクティブ型で撮像されることになる。撮像方法によって感度やS/N比などが異なるので、絞り量・シャッター速度・ノイズ除去信号処理強度などの撮像パラメータは、それぞれの撮像方法にとって最適な値が異なる。そこで、危険予測部105−3は、撮像方法の変更に合わせて、最適な撮像パラメータを設定するように、撮像パラメータ制御信号をミリ波センサ・信号処理部109−3に出力する。
【0047】
第1検出部103−3では、パッシブ型で撮像された出力画像と、アクティブ型で撮像された出力画像のそれぞれについて、衝突危険物体を検出し、アクティブ型・パッシブ型両方の結果のマッチングをとり、少なくともどちらか片方の撮像方法で検出された衝突危険物体について、衝突危険物体情報を、危険予測部105−3に出力する。
【0048】
このように、実施例3の手段を用いれば、2つの撮像方法の検出結果の両方を用いることができるようになり、アクティブ型の撮像によって車両など金属でできた物体の検出精度を高める作用と、パッシブ型の撮像によって歩行者や動物などの検出を可能とする作用の両方を同時に実現することが可能となる。
【実施例4】
【0049】
以下、本発明における実施例4について詳細に説明する。
図11は、本発明の実施例4における車両用衝突危険予測システム100−4を示す構成図であって、本発明に係る車両用衝突危険予測装置101−4を、車両用衝突危険予測システム100−4に適用した場合における構成例を示す。
【0050】
車両用衝突危険予測装置101−4は、ミリ波撮像部102−4、第1検出部103−4、可視光撮像部104−4、危険予測部105−4、画像合成部106−4、第2検出部1101−4を適宜用いて構成され、ミリ波撮像部102−4は、ミリ波センサ・信号処理部109−4を用いて構成される。
【0051】
第2検出部1101−4は、可視光撮像部104−4の出力画像から、人・動物などの生物や、自動車・バイク・自転車などの車両の物体形状を抽出し、また、その物体の移動速度や移動の傾向などを判断し、衝突危険物体であると判断した場合には、その衝突危険物体の画像上の大きさや位置情報を示す衝突危険物体情報を、危険予測部105−4に出力する。第2検出部1101−4による衝突危険物体の判定方法の一例については後述する。
【0052】
危険予測部105−4は、第1検出部103−4と第2検出部1101−4それぞれで独立に求めた衝突危険物体情報を入力とし、物体のマッチングを行った上で、衝突危険物体の「危険度」というパラメータを付加して合成画像部106−4に出力する。「危険度」の定義については、後述する。また、「危険度」に応じて、危険予測部105−4から警告音出力部108−4への音声信号の内容も変化させる。
【0053】
画像合成部106−4は、実施例1と同様に可視光撮像部104の出力画像に、衝突危険物体の画像の一部を重ね合わせた上に、さらに「危険度」の情報を提示できる合成画像を生成して画像表示部107−4に出力する。
図11のその他の構成要素に関しては、実施例1の
図1と同様であるので、説明を割愛する。
【0054】
実施例4は、ミリ波撮像部102−4の出力画像を用いて衝突危険物体の検出を行う第1検出部103−4の検出結果と、可視光撮像部104−4の出力画像を用いて衝突危険物体の検出を行う第2検出部の検出結果の両方を用いるという点と、危険予測部105−4において「危険度」というパラメータを算出して、その結果によって画像や音声によってドライバーに警告する内容を変えるという点で、実施例1と異なる。
【0055】
実施例4では、2つの撮像部の検出結果の両方を用いて、衝突危険物体について「危険度」というパラメータを求めることができるようになり、「危険度A」の衝突危険物体について、画像や音声によってドライバーに与える警告を強めることで、ドライバーにとって特に危険な物体がより認識されやすくなり、ドライバーが意識して衝突回避行動を取りやすくなり、事故を防止できるようになる。
【0056】
以下に、第2検出部1101−4における、衝突危険物体を判定する方法について説明する。
第2検出部1101−4は、可視光撮像部104−4の出力画像を入力画像として用いるという点で、ミリ波撮像部102−4の出力画像を入力画像として用いる第1検出部103−4と差異がある。
第2検出部1101−4において、入力画像から衝突危険物体を判定する方法については、第1検出部103−4の検出アルゴリズムや設定値と同じにしても良いし、変えても良い。
【0057】
以下は、例として、第2検出部1101−4でも、第1検出部103−4と同じ検出アルゴリズム及び設定値を使用する場合について説明する。
入力画像から衝突危険物体を判定する方法としては、まず、可視光撮像部104−4から出力された出力画像から、人・動物などの生物や、自動車・バイク・自転車などの車両の物体形状を抽出する。次に、時間的に連続して撮影された出力画像から、画像処理によって物体の予測移動方向・速度を計算し、物体の動き予測を行う。自車両の前方向の、ヨー角θ [°]以内(例:θ=10)、距離L [m](例:L=10)以内に、時間t [sec] (例:t=2)以内に物体が通過する可能性があると判断された場合には、衝突危険物体として判定する。その場合には、その衝突危険物体の画像上の大きさや位置情報を示す、衝突危険物体情報を出力する。
【0058】
例えば
図12の場合には、撮像範囲200に存在する物体(自転車204、歩行者205)の物体形状が抽出される。そして、それぞれの物体について、t[sec]後の予測位置(
図12の401、402)及び、0〜t [sec]の間の予測移動軌跡(
図12の白貫き矢印)が予測される。予測移動軌跡が、
図12の405で示される範囲を通過する物体は、衝突危険物体として判定される。例えば、
図12の場合には、自転車204、歩行者205が衝突危険物体として判定される。
【0059】
以下に、実施例4における危険予測部105−4の振る舞いについて説明する。
実施例4では、第1検出部103−4と、第2検出部1101−4の両方の検出結果を、危険予測部105−4の入力として用いている。危険予測部105−4では、これら検出結果間で、衝突危険物体が、同一物体であるか判定(マッチング)する。具体的なマッチングの方法としては、例えば、同じ座標に存在し、同じ方向に、同じ速度で移動していると検出された場合に、同一物体であると判断するなどの方法がある。
【0060】
表1は、危険予測部105−4の、「危険度」というパラメータの定義について説明する表である。
【0061】
【表1】
【0062】
表1のような、「危険度」の定義は、平たく説明するならば「見えない危険が、より危険である」という考え方に基づいている。つまり、(実際には、可視光撮像部104−4で撮像できる波長が人の可視域よりも広い場合も含まれるが、)可視光で検出できる物体は、ドライバーが視認できる場合があり、危険度としては標準的なものとして考えることができるのに対して、可視光で検出できない物体に関しては、ドライバーが知る術なく接近を許してしまう可能性があり、危険度がより高いと考えることができる。さらに、物体との距離や相対速度、場所に応じ、例えば、距離情報に基づいて自車両との距離がより近いものはより危険度が高いものといえる。本発明に係る装置・システムを使えば、この危険度について危険予測部105−4で判定し、危険度の高い物体について、強くドライバーに警告を与えることができるようになる。
【0063】
危険予測部105−4では、物体のマッチング結果に関して、ミリ波により物体を検知する第1検出部103−4と、可視光により物体を検知する第2検出部1101−4それぞれにおいて、物体を検出できたかという条件によって、表1のように物体の危険度を判定する。判定方法としては、まず、第1検出部103−4で検出できた物体は「危険度B」として定義する。さらに、第1検出部103−4で検出できなかった物体のうち、第2検出部1101−4で検出できた物体を「危険度A」、検出できなかった物体を「危険度B」として定義する。「危険度A」の物体は、「危険度B」の物体よりも、衝突の危険性が高いことを示している。
【0064】
画像合成部106−4では、実施例1の場合と同様に、可視光で撮像した出力画像の上に、ミリ波で撮像した出力画像を重畳し、マーカー等によって、衝突危険物体を強調されるように画像を合成する。さらに、画像合成部では、危険度Aの物体が特に強調されて、ドライバーに警告が特に分かりやすくなるように画像を合成する(強調方法については、後述する)。
【0065】
また、「危険度A」の衝突危険物体が、特に強く音声で警告されるように、危険度によって、危険予測部105−4で生成する音声信号の、警告音の音量や、警告音の音色や、警告音となる合成音声の警告文や、警告音となる合成音声の音程などを変更する。
【0066】
このように、危険度が高い物体ほど、ドライバーに強く警告することで、特に衝突事故に繋がりやすい物体をドライバーがより意識して回避することができるようになるので、衝突を防止できるようになる。
【0067】
以下に、画像の合成について、図を用いて具体的に説明する。
実施例1において説明したのと同様に、ミリ波撮像部102−4の出力画像の例を示す図は
図3と同様であり、第1検出部103−4では、この出力画像に基づき、例えば4つの衝突危険物体(自転車204,歩行者205,歩行者301,自動車302)が検知される。
【0068】
一方、可視光撮像部104−4の出力画像の例を示す図は
図2と同様であり、第2検出部1101−4では、この出力画像に基づき、例えば2つの衝突危険物体(自転車204,歩行者205)が検知される。
【0069】
このように、2つの検出部で検知された物体をマッチングすると、自転車204,歩行者205,歩行者301,自動車302の4つの衝突危険物体が検知されたことになる。さらに、表11に基づいて危険度を判定すると、歩行者301,自動車302は「危険度A」、自転車204,歩行者205は「危険度B」とそれぞれ判定される。
【0070】
図13は、画像合成部106−4の出力画像の例を示す図である。
図13は、
図5と同様に、衝突危険物体として判断された物体については、ミリ波撮像部102−4の出力画像から、物体の形状に沿って切り抜き処理され、可視光撮像部104−4の出力画像に重畳されている。
【0071】
図13では、危険度に応じて、物体を強調する程度が異なるようになっている。例えば、
図13のように、「危険度B」の物体は、
図5の場合と同様に、矩形の点線で囲まれたように描画されるが、「危険度A」の物体は、
図13の301のように、太い線で囲まれて描画される。例えば、このようにマーカーの種類を変えることで、ドライバーにとって特に危険な物体がより認識されやすくなり、ドライバーが意識して衝突回避行動を取りやすくなり、事故を防止できるようになる。なお、危険度に応じた物体の強調については、これに限られず、危険度に応じて明度を上げる等、種々変更可能である。また、危険度Aの場合のみ音声と映像とで警告し、B以下の場合には映像又は音声のみのようにしても構わない。
【0072】
以上のように、実施例4の手段を用いれば、2つの撮像部の検出結果の両方を用いて、衝突危険物体について「危険度」というパラメータを求めることができるようになり、「危険度A」の衝突危険物体について、画像や音声によってドライバーに与える警告を強めることで、ドライバーにとって特に危険な物体がより認識されやすくなり、ドライバーが意識して衝突回避行動を取りやすくなり、事故を防止できるようになる。
【実施例5】
【0073】
以下、本発明における実施例5について詳細に説明する。
図14は、本発明の実施例5における車両用衝突危険予測システム100−5を示す構成図であって、本発明に係る車両用衝突危険予測装置101−5を、車両用衝突危険予測システム100−5に適用した場合における構成例を示す。
【0074】
車両用衝突危険予測装置101−5は、ミリ波撮像部102−5、第1検出部103−5、可視光撮像部104−5、危険予測部105−5、画像合成部106−5、第2検出部1101−5を適宜用いて構成され、ミリ波撮像部102−5は、ミリ波センサ・信号処理部109−5、ミリ波光源601−5を用いて構成される。
【0075】
ミリ波光源601−5は、実施例2の
図6と同様に、ミリ波撮像部102−5で撮像可能な電磁波(波長:数十μm〜1cm程度)を、撮影対象となる自車両の周辺に放射することができる光源(放射源)である。
図14のその他の構成要素に関しては、実施例4の
図11と同様であるので、説明を割愛する。
【0076】
実施例5では、実施例2と同様に、ミリ波光源601−5と、ミリ波撮像部102−5を組み合わせて、アクティブ型の撮像方法を採る。アクティブ型の撮像方法を採るので、金属で覆われた物体である、自動車や、バイクや、自転車といった車両を、パッシブ型の場合よりも鮮明に撮像することが可能となり、その結果、危険物体の検出精度や、ドライバーに提示する合成画像の鮮明さが向上する。
【0077】
さらに、実施例5では、実施例4と同様に、2つの撮像部の検出結果の両方を用いて、衝突危険物体について「危険度」というパラメータを求めることができるようになり、「危険度A」の衝突危険物体について、画像や音声によってドライバーに与える警告を強めることで、ドライバーにとって特に危険な物体がより認識されやすくなり、ドライバーが意識して衝突回避行動を取りやすくなり、事故を防止できるようになる。
【0078】
実施例5では、実施例2と同様にアクティブ型の撮像方法を採る手法と、実施例4と同様に「危険度」パラメータを求めて、それに応じて合成画像や音声信号を変化させる手法の、両方を同時に使用できる構成となっているという点で、実施例2、4と異なる。実施例5において、アクティブ型の撮像方法を採る手法については、実施例2と同様なので割愛する。また、実施例5において、「危険度」パラメータを求めて、それに応じて合成画像や音声信号を変化させる手法については、実施例4と同様なので割愛する。
【0079】
以上のように、実施例5の手段を用いれば、実施例2と同様に、障害物の向こう側にある衝突危険物体について、高い精度で検出し、かつ鮮明な撮像画像を提示して、ドライバーに警告することができる。その結果、ドライバーは、より適切に衝突回避行動をとることができるので、衝突事故を未然に防ぐことができる。
【0080】
また同時に、実施例5の手段を用いれば、実施例4と同様に、2つの撮像部の検出結果の両方を用いて、衝突危険物体について「危険度」というパラメータを求めることができるようになり、「危険度A」の衝突危険物体について、画像や音声によってドライバーに与える警告を強めることで、ドライバーにとって特に危険な物体がより認識されやすくなり、ドライバーが意識して衝突回避行動を取りやすくなり、事故を防止できるようになる。このように、実施例5においては、実施例2と実施例4の両方の効果を同時に得ることができる。
【実施例6】
【0081】
以下、本発明における実施例6について詳細に説明する。
図15は、本発明の実施例6における車両用衝突危険予測システム100−6を示す構成図であって、本発明に係る車両用衝突危険予測装置101−6を、車両用衝突危険予測システム100−6に適用した場合における構成例を示す。
【0082】
車両用衝突危険予測装置101−6は、ミリ波撮像部102−6、第1検出部103−6、可視光撮像部104−6、危険予測部105−6、画像合成部106−6、第2検出部1101−6を適宜用いて構成され、ミリ波撮像部102−6は、ミリ波センサ・信号処理部109−6、ミリ波光源601−6を用いて構成される。
【0083】
ミリ波光源601−6は、実施例3の
図9と同様に、ミリ波撮像部102−6で撮像可能な電磁波(波長:数十μm〜1cm程度)を、撮影対象となる自車両の周辺に放射することができる光源(放射源)である。
【0084】
危険予測部105−6は、実施例3の危険予測部105−3と同様に、ミリ波撮像部102−6の撮像パラメータを制御する制御信号を、ミリ波撮像部102に出力する。また、ミリ波光源601−6のON(点灯)/OFF(消灯)を切り替える制御信号を、ミリ波光源601−6に出力する。
【0085】
さらに、危険予測部105−6は、実施例4の
図11と同様に、第1検出部103−6と第2検出部1101−6それぞれで独立に求めた衝突危険物体情報を入力とし、物体のマッチングを行った上で、衝突危険物体の「危険度」というパラメータを付加して合成画像部106−6に出力する。
図14のその他の構成要素に関しては、実施例4の
図14と同様であるので、説明を割愛する。
【0086】
実施例6では、実施例3と同様にアクティブ型とパッシブ型の撮像方法を時分割に切り替えて撮像する手法と、実施例4と同様に「危険度」パラメータを求めて、それに応じて合成画像や音声信号を変化させる手法の、両方を同時に使用できる構成となっているという点で、実施例3、4と異なる。実施例5において、アクティブ型とパッシブ型の撮像方法を時分割に切り替えて撮像する手法については、実施例3と同様なので割愛する。また、実施例5において、「危険度」パラメータを求めて、それに応じて合成画像や音声信号を変化させる手法については、実施例4と同様なので割愛する。
【0087】
以上のように、実施例6の手段を用いれば、実施例3と同様に、2つの撮像方法の検出結果の両方を用いることができるようになり、アクティブ型の撮像によって車両など金属でできた物体の検出精度を高める作用と、パッシブ型の撮像によって歩行者や動物などの検出を可能とする作用の両方を同時に実現することが可能となる。
【0088】
また同時に、実施例6の手段を用いれば、実施例4と同様に、2つの撮像部の検出結果の両方を用いて、衝突危険物体について「危険度」というパラメータを求めることができるようになり、「危険度A」の衝突危険物体について、画像や音声によってドライバーに与える警告を強めることで、ドライバーにとって特に危険な物体がより認識されやすくなり、ドライバーが意識して衝突回避行動を取りやすくなり、事故を防止できるようになる。このように、実施例6においては、実施例3と実施例4の両方の効果を同時に得ることができる。
【実施例7】
【0089】
以下、本発明における実施例7について詳細に説明する。
図16は、本発明の実施例7における車両用衝突危険回避システム1600−7を示す構成図である。実施例7では、本発明の実施例1(
図1の101)、実施例2(
図6の101−2)、実施例3(
図9の101−3)のいずれかに記載の車両用衝突危険予測装置を、車両用衝突危険回避システム1600−7に適用した場合における構成例を示す。
【0090】
車両用衝突危険回避システム1600−7は、車両に搭載されており、車両周辺(例えば、前方向)の衝突の危険を検知して、ドライバーに警告を与えると共に、衝突を回避するために、車両自らが衝突回避行動をとり、衝突を回避するシステムである。
【0091】
車両用衝突危険回避システム1600−7は、車両用衝突危険予測装置101−7、画像表示部107−7、警告音出力部108−7、車両制御部1601−7を用いて構成され、車両用衝突危険予測装置101−7は、主に、実施例1(
図1)、実施例2(
図6)、実施例3(
図9)のいずれかで示される車両用衝突危険予測装置の構成となり、さらに、車両用衝突危険予測装置101−7の内部の第1検出部(
図1,
図6,
図9のいずれか)は、車両が自ら回避すべき物体を示す「衝突回避物体」を判定し、「衝突回避物体情報」を危険予測部に出力する。
【0092】
また、さらに、車両用衝突危険予測装置101−7の内部の危険予測部(
図1の105,
図6の105−2,
図9の105−3のいずれか)は、車両がどのような衝突危険回避行動をとるべきかを示した「衝突回避情報」を、車両制御部1601−7に出力する。車両制御部1601−7は、危険予測部(
図1の105,
図6の105−2,
図9の105−3のいずれかに記載のもの)から、衝突回避情報を受け取り、自車両のブレーキングやハンドリングをドライバーの操作に関わらず自動で制御する。画像表示部107−7、警告音出力部108−7に関しては、実施例1の
図1の107,108と同様であるため、説明を割愛する。
【0093】
実施例7では、実施例1〜3のいずれかの手法により、ドライバーに衝突危険物体について警告を与え、衝突回避行動を促す。
一方で、実施例7では、ドライバーが衝突回避行動をとらない場合であっても、物体との衝突を防止するために自車両が自ら判断して衝突回避行動をとるという点で、実施例1〜3と異なる。
【0094】
自車両が自ら判断して衝突回避行動をとる際の具体的な方法としては、例えば以下のようになる。
まず、第1検出部(
図1,
図6,
図9のいずれか)で、衝突を回避すべき物体(衝突回避物体)を検出する。このとき、衝突危険物体と衝突回避物体の判定方法については、アルゴリズムや設定値を同じにしても良いし、変えても良い。
【0095】
例えば、衝突回避物体の判定アルゴリズムとして、実施例1の
図4で示した衝突危険物体の判定アルゴリズムと同様に、画像処理によって物体の予測移動方向・速度を計算し、物体の動き予測を行う手法を採用することができる。
【0096】
図17は、第1検出部において衝突回避物体を判定する方法の例を示す図である。この手法では、自車両の前方向の、ヨー角θ
2 [°]以内(例:θ
2=8)、距離L
2 [m](例:L
2=5)以内に、時間t
2 [sec] (例:t
2=1)以内に物体が通過する可能性があると判断された場合には、衝突回避物体として判定する。
【0097】
衝突回避物体と判定された物体については、危険予測部(
図1,
図6,
図9のいずれか)で、衝突回避行動をとるための車両制御信号を、車両制御部1601−7に出力する。車両制御部では、自車両をブレーキングにより減速したり、衝突回避物体とは逆方向にハンドリングしたりするなどの衝突回避行動をとるように、自車両を制御する。また、車両が自動で衝突回避行動をとる際には、画像表示部で表示する画像に警告文を表示し、また警告音出力部から音声を発してドライバーに知らせる。
【0098】
この例のようにθ
2≦θ
、L
2≦L、t
2≦tとした場合には、物体の接近に応じて段階的に安全策をとることができる。物体が近づいてきた場合には、まず衝突危険物体として判定され、ドライバーに警告を与えてドライバーの自主的な衝突回避行動を促す。その後さらに近づいてくる場合には、衝突回避物体として判定され、車両が自ら衝突回避行動をとる。
【0099】
以上のように、実施例7の手段を用いれば、実施例1〜3の場合と同様に、画像及び/又は音声により、障害物の向こう側にある衝突危険物体についてドライバーに警告することができ、適切に衝突回避行動をとることができるので、衝突事故を未然に防ぐことができる。また、実施例7の手段を用いれば、ドライバーが衝突回避行動を取らなかった場合であっても、自車両が自動で衝突回避行動をとるので、衝突事故を未然に防ぐことができる。
【0100】
本実施例の変形例として、
図16の構成から、画像表示部107−7を省略し、また可視光撮像部(
図1の104,
図6の104−2,
図9の104−3のいずれか)、画像合成部(
図1の106,
図6の106−2,
図9の106−3のいずれか)を省略した構成とすることができる。この構成の場合には、合成画像によるドライバーへの警告を省略した上で、衝突回避物体が判定された場合には、車両が自ら衝突回避行動をとることができる。また、本実施例の変形例として、
図16の構成から、警告音出力部108−7を省略した構成とすることができる。この構成の場合には、音声によるドライバーへの警告を省略した上で、衝突回避物体が判定された場合には、車両が自ら衝突回避行動をとることができる。
【実施例8】
【0101】
以下、本発明における実施例8について詳細に説明する。
図18は、本発明の実施例8における車両用衝突危険回避システム1600−8を示す構成図である。実施例8では、本発明の実施例4(
図11の101−4)、実施例5(
図14の101−5)、実施例6(
図15の101−6)のいずれかに記載の車両用衝突危険予測装置を、車両用衝突危険回避システム1600−8に適用した場合における構成例を示す。
【0102】
車両用衝突危険回避システム1600−8は、車両に搭載されており、車両周辺(例えば、前方向)の衝突の危険を検知して、ドライバーに警告を与えると共に、衝突を回避するために、車両自らが衝突回避行動をとり、衝突を回避するシステムである。
【0103】
車両用衝突危険回避システム1600−8は、車両用衝突危険予測装置101−8、画像表示部107−8、警告音出力部108−8、車両制御部1601−8を用いて構成される。
【0104】
車両用衝突危険予測装置101−8は、主に、実施例4(
図11の101−4)、実施例5(
図14の101−4)、実施例6(
図15の101−4)のいずれかで示される車両用衝突危険予測装置の構成となる。
【0105】
さらに、車両用衝突危険予測装置101−8の内部の第1検出部(
図11の103−4,
図14の103−5,
図15の103−6のいずれか)は、実施例7と同様に、車両が自ら回避すべき物体を示す「衝突回避物体」を判定し、「衝突回避物体情報」を危険予測部(
図11の105−4,
図14の105−5,
図15の105−6のいずれか)に出力する。
【0106】
また、さらに、車両用衝突危険予測装置101−8の内部の第2検出部(
図11の1101−4,
図14の1101−5,
図15の1101−6のいずれか)は、実施例7の場合と同様に、車両が自ら回避すべき物体を示す「衝突回避物体」を判定し、「衝突回避物体情報」を危険予測部に出力する。
【0107】
また、さらに、車両用衝突危険予測装置101−8の内部の危険予測部(
図11,
図14,
図15のいずれか)は、車両がどのような衝突危険回避行動をとるべきかを示した「衝突回避情報」を、車両制御部1601−8に出力する。
【0108】
車両制御部1601−8は、危険予測部(
図11の105−4,
図14の105−5,
図15の105−6のいずれか)から、衝突回避情報を受け取り、自車両のブレーキングやハンドリングを制御する。画像表示部107−8、警告音出力部108−8に関しては、実施例4の
図11の107−4,108−4と同様であるため、説明を割愛する。
【0109】
実施例8では、実施例4〜6のいずれかの手法により、ドライバーに衝突危険物体について警告を与え、衝突回避行動を促す。
一方で、実施例8では、ドライバーが衝突回避行動をとらない場合であっても、物体との衝突を防止するために自車両が自ら判断して衝突回避行動をとるという点で、実施例4〜6と異なる。
【0110】
また、実施例8では、第2検出部(
図11の1101−4,
図14の1101−5,
図15の1101−6のいずれか)を備え、さらに、危険予測部は第1検出部と第2検出部の両方の検出結果を用いて衝突回避物体を判定するという点で、実施例7と異なる。
【0111】
自車両が自ら判断して衝突回避行動をとる際の具体的な方法としては、例えば以下のようになる。
まず、第1検出部及び、第2検出部で、衝突を回避すべき物体(衝突回避物体)を検出する。このとき、衝突危険物体と衝突回避物体の判定方法については、アルゴリズムや設定値を同じにしても良いし、変えても良い。第1検出部における、衝突回避物体の検出方法については、実施例7の
図17において説明したので、割愛する。
【0112】
第2検出部において入力画像から衝突危険物体を判定する方法については、第1検出部及び、第2検出部の検出アルゴリズムや設定値と同じにしても良いし、変えても良い。
【0113】
以下は、例として、第2検出部でも、第1検出部と同じ検出アルゴリズム及び設定値を使用する場合について説明する。
図19は、第2検出部において衝突回避物体を判定する方法の例を示す図である。例えば
図19の場合には、撮像範囲200に存在する物体(自転車204、歩行者205)の物体形状が抽出される。そして、それぞれの物体について、t
2[sec]後の予測位置(
図19の1701,1702)及び、0〜t
2 [sec]の間の予測移動軌跡(
図19の白貫き矢印)が予測される。予測移動軌跡が、
図19の1705で示される範囲を通過する物体は、衝突回避物体として判定される。例えば、
図19の場合には、自転車204、歩行者205が衝突危険物体として判定される。
【0114】
実施例8では、第1検出部と、第2検出部の両方の検出結果を、危険予測部の入力として用いている。
【0115】
危険予測部では、これら検出結果間で、衝突回避物体が、同一物体であるか判定(マッチング)する。具体的なマッチングの方法としては、例えば、同じ座標に存在し、同じ方向に、同じ速度で移動していると検出された場合に、同一物体であると判断するなどの方法がある。前述の表1は、危険予測部の、「危険度」というパラメータの定義について説明する表であって、危険予測部では、衝突回避物体のマッチング結果に関して、ミリ波により物体を検知する第1検出部と、可視光により物体を検知する第2検出部それぞれにおいて、衝突回避物体として検出できたかという条件によって、表1のように物体の危険度を判定する。
【0116】
実施例8では、衝突回避物体のうち、危険度AもしくはBとして判定された物体について衝突回避行動を取る。ミリ波と可視光の少なくともどちらか片方で検知された物体について衝突を回避することができるので、物体の検知率を上げることができる。
【0117】
以上のように、実施例8の手段を用いれば、実施例4〜6と同様に、可視光とミリ波の両方の検出結果から危険度を算出し、危険度に応じて警告の度合いを制御することで、ドライバーに見えない危険な物体ほど、ドライバーが認識しやすくすることができ、事故を防止できる。
【0118】
また、実施例8の手段を用いれば、ドライバーが衝突回避行動を取らなかった場合であっても、ミリ波と可視光の少なくともどちらか片方で検知された物体について衝突を回避することができるので、高い検知率に基づいて、自車両が自動で衝突回避行動をとることができ、衝突事故を未然に防ぐことができる。
【0119】
本実施例の変形例として、
図16の構成から、画像表示部を省略した構成とすることができる。この構成の場合には、合成画像によるドライバーへの警告を省略した上で、衝突回避物体が判定された場合には、車両が自ら衝突回避行動をとることができる。また、本実施例の変形例として、
図16の構成から、警告音出力部を省略した構成とすることができる。この構成の場合には、音声によるドライバーへの警告を省略した上で、衝突回避物体が判定された場合には、車両が自ら衝突回避行動をとることができる。
【実施例9】
【0120】
以下、本発明における実施例9について詳細に説明する。
図30は、ミリ波撮像部102の詳細な構成例を示す図であって、本発明の車両用衝突危険予測システムとして、例えば、実施例2(
図6)、または実施例3(
図9)、または実施例5(
図14)、または実施例6(
図15)の構成をとることができる。
【0121】
ミリ波撮像部102は、ミリ波センサ・信号処理部109、ミリ波光源601を適宜用いて構成される。ミリ波光源601は、送信回路3001、送信アンテナ3002を適宜用いて構成される。ミリ波センサ・信号処理部109は、レンズ・フィルタ3000、受信アンテナアレイ3003、受信回路3004、信号処理部3005を適宜用いて構成される。
【0122】
送信回路3001は、信号処理部3005から指定されるタイミングでアナログの送信信号を作り出し、送信アンテナ3002に出力する回路である。送信アンテナ3002は、ミリ波帯からサブミリ波帯(波長:数十μm程度から1cm程度まで)と呼ばれる波長の信号を含む電磁波を撮影対象となる自車両の周辺に放射することができるアンテナである。
【0123】
レンズ・フィルタ3000は、上記波長の電磁波が、精度よく受信されるように、画素毎もしくは面で集光及びフィルタリングする。波長の受信アンテナアレイ3003は、上記波長の信号を含む電磁波を受信するアンテナが複数、2次元に配置されたもので、アナログの受信信号を、受信回路3004に出力する。受信回路3004は、アナログの受信信号をデジタルの受信信号にA/D変換し、信号処理部3005に出力する。信号処理部3005は、送信信号で出力するタイミングを制御するデジタル信号を送信回路3001に出力する。また、信号処理部3005は、送信信号を送信するタイミングと、受信回路から出力される受信信号を受信するタイミングを比較し、所定の物体の距離情報と、所定の物体の相対速度情報を算出し、第1検出部103に出力する。
【0124】
図20は、受信アンテナアレイ3003の構成例である。受信アンテナアレイ3003は、行回路2001と、2次元に配置された受信アンテナ(2002から2017まで)と、行方向に1次元に配置されたアンプ(2018から2021まで)と、列回路2022を適宜用いて構成される。
【0125】
受信アンテナ(2002から2017まで)は、それぞれ個別の位置に配置されており、また、同一もしくは個別の指向性を有して信号を空間中から受信することが可能である。行回路2001および列回路2022は、受信アンテナ(2002から2017まで)のうち、1つもしくは複数の受信アンテナを選択して、信号を出力させる。アンプ(2018から2021まで)は、受信アンテナから出力された信号を増幅して、列回路2022に出力する。
【0126】
図21は、ミリ波撮像部から距離情報、及び相対速度情報を出力する画素の位置2101の例を示す図である。本図中で2次元に並ぶ四角形は、
図30のミリ波撮像部102から出力される画素の位置を示している。受信アンテナの個数は、行・列方向それぞれ任意でよく、受信アンテナの個数が多い場合は、高画素で出力信号を得ることができる。本図では、一例としてm=8、n=8、つまり行8×列8の64対の受信アンテナを用いて、受信アンテナアレイ3003を構成した場合を示す。この場合、信号処理部からは、行8×列8それぞれの画素に対して、所定の物体の位置情報(奥行き)と、所定の物体の相対速度が計算され、出力される。本図では、すべての画素位置に対して、位置情報・相対速度情報を出力する場合を示している。
【0127】
図22は、受信アンテナアレイ3003の動作タイミングの例を示す図である。行回路2001に入力される行選択信号(2201から2005まで)と、列回路2022に入力される列選択信号(2206から2213)によって、受信アレイが、1つずつラスタスキャン順に選択される。本図では、行・列両方の選択信号が“H”レベル(上がっている状態)のときに、該当する行・列の受信アレイが選択されていることを示しており、また、行・列どちらか片方の選択信号が“L”(下がっている状態)のときに、該当する行・列の受信アレイが選択されていないことを示している。
【0128】
本図の場合は、(行0,列0)、(行0,列1)、(行0,列2)、…、(行0,列7)、(行1,列0)、(行1,列1)、…、(行7,列7)という順で、すべての受信アンテナがラスタスキャン順で周期的に選択される。このとき、受信アンテナが選択される周期、すなわちフレーム周期をTaとする。選択された受信アンテナからのみ、受信回路3004に、受信アレイ信号の出力信号(受信信号)2214が出力される。受信信号2214は、各受信アンテナで受信した信号がスキャンライン順に出力される。
【0129】
図23は、ミリ波撮像部の動作タイミングの例を示す図である。送信回路3001は、信号処理部3005で指定したタイミングで出力信号(送信信号)2302を出力する。送信信号2302は、ミリ波帯からサブミリ波帯と呼ばれる波長の電磁波として自車両の周辺に放射される。例えば、送信信号2302を時刻T0付近で立ち上がる幅Tpのパルス波とする。このとき、そのパルス波が電磁波として出力される。受信アンテナアレイは、
図22の場合と同様に、フレーム周期Taで、全画素の受信信号を順に出力している。本図では、このときのフレーム期間2303をFrame0,Frame1,Frame2,Frame3として示している。
【0130】
放射された電磁波は、電磁波の進行方向に存在する物体に反射して、受信アンテナアレイ3003で受信されて出力される(受信信号2304)。このとき、送信アンテナから放射された電磁波が所定の物体で反射して戻るまでには、物体と自車両の距離・相対速度に応じて遅延時間τが発生する。もし遅延時間が無い場合(τ=T0)(つまり距離ゼロ)で反射した場合には、受信信号2304は、全てFrame0のフレーム期間で出力される。しかし、上述した遅延時間が発生するために、距離に応じて受信信号が出力されるタイミングが変化する。例えば、T0≦τ<(T0+Ta)の場合にはFrame0、(T0+Ta)≦τ<(T0+2Ta)の場合はFrame1、(T0+2Ta)≦τ<(T0+3Ta)の場合はFrame2、(T0+3Ta)≦τ<(T0+4Ta)の場合はFrame3の期間で、それぞれ受信信号が出力される。また、各フレーム期間内では、受信信号がスキャンライン順で出力されている。
信号処理部3005では、このようにして受信された受信信号2304と、送信信号2302を比較して、画素毎の遅延量を求める。すなわち、2次元の画素毎に、距離情報を算出することができる。
このようにして、選択された受信アンテナの信号について、距離情報と相対速度情報を、
図19のように2次元で得ることができる。つまり、本実施例の手法によって、所定の物体の3次元(2次元+奥行き)の位置情報を得ることができる。
【0131】
また、送信信号2302を、パルスではなく低数周波から高周波までの複数の周波数を含んだ信号(ビート信号)とした場合には、レーダーの原理によって、距離のほかに、所定の物体の相対速度を、各画素ごとに2次元で計算することができる。本実施例の手法によって、同時に、自車両からの相対速度情報を、2次元で得ることができる。
【0132】
図4・
図12に示される衝突危険物体判定においては、物体の位置・相対速度を求める方法として、実施例1から5までに示したように画像処理によって計算する方法以外に、本実施例の手法によって、ミリ波撮像部102において直接測定する方法を使用できる。本実施例の手法を用いた場合には、直接測定が可能となるため、距離と相対速度をより正確に求めることができる。
以上のように、実施例9の手段を用いれば、所定の物体の距離と相対速度をより正確に求めることができるので、危険予測部105による危険予測の精度が高まり、衝突事故を未然に防ぐことができるようになる。
【実施例10】
【0133】
以下、本発明における実施例10について詳細に説明する。
実施例10では、本発明の車両用衝突危険予測システム100として、例えば、実施例2(
図6)、または実施例3(
図9)、または実施例5(
図14)、または実施例6(
図15)の構成をとる。また、実施例10では、ミリ波撮像部102として、実施例9で示した
図30の構成をとる。
【0134】
図24は、本実施例によるミリ波撮像部から距離情報、及び相対速度情報を出力する画素の位置の例を示す図である。本実施例では、
図20の受信アンテナ(2002から2017まで)が、m=16、n=16、すなわち行16×列16画素並んでいる場合を想定しており、
図24においても、画素が行16×列16画素が並んでいる。本実施例においては、実施例9の場合と異なり、画素が複数の領域に分割されておりそれぞれの領域ごとに画素がラスタスキャン順に読み出される。例えば
図24では、画素全体が4つの領域に分割されている。本図の場合は、(行:0から7まで,列:0から7まで)の範囲で1つの領域2401、(行:0から7まで,列:8から15まで)の範囲で1つの領域2402、(行:8から15まで,列:0から7まで)の範囲で1つの領域2403、(行:8から15まで,列:8から15まで)の範囲で1つの領域2404となっている。これら4つの領域がそれぞれ、
図22と同様のタイミングで読み出されるようになっている。例えば
図24の場合には、時刻T1からT2においては(行:0,列:0)、(行:0,列:8)、(行:8,列:0)、(行:8,列:8)の4つの受信アンテナが同時に選択され、同座標の4つの画素が同時に読み出される。また、時刻T2からT1においては(行:0,列:1)、(行:0,列:9)、(行:8,列:1)、(行:8,列:9)の4つの受信アンテナが同時に選択され、同座標の4つの画素が同時に読み出される。このようにして、フレーム周期Taの間に、64×4=256画素が全て読み出される。
【0135】
高画素を並列に読み出す手法を実現するために、本実施例では、
図20の行回路2001及び列回路2022では、複数の行・列を同時に選択することが可能となっており、さらに、(アンプ2018から2021まで)と列回路2022では、複数の受信アンテナで受信した信号を、並列で読み出すことができるようになっている。例えば
図23のように4並列で読み出す場合には、行回路2001及び列回路2022によって4画素が同時に選択され、さらに、4画素が同時に受信回路3004に出力される。なお、ここでは4つの領域に分割した例を示したが、分割数・分割領域の設定はこれに限られず、種々変更可能である。
高画素を並列に処理するために、
図30の受信回路3004及び信号処理部3005は、複数の画素を同時に処理可能になっている。
本実施例で示したとおり、並列して複数の画素を同時に読み出すことで、高画素の場合にも高速に処理することが可能になり、フレームレートを落とさずに、出力の高精細化をすることができる。
以上のように、実施例9の手段を用いれば、フレームレートを落とさずに、出力の高精細化をすることができるので、危険予測部105による危険予測の精度の向上や、ドライバーが画像表示部107を確認する際の画質の向上に貢献することができるので、衝突事故を未然に防ぐことができるようになる。
【実施例11】
【0136】
以下、本発明における実施例11について詳細に説明する。
実施例11では、本発明の車両用衝突危険予測システム100として、例えば、実施例2(
図6)、または実施例3(
図9)、または実施例5(
図14)、または実施例6(
図15)の構成をとる。また、実施例11では、ミリ波撮像部102として、実施例9で示した
図30の構成をとる。
【0137】
まず、全ての画素を読み出す場合よりも高フレームレート(短いフレーム周期)で画素を読み出すことができる、「高速読み出しモード」という手法について、
図25,
図26を用いて説明する。
図25は、ミリ波撮像部から距離情報、及び相対速度情報を出力する画素の位置の例を示す図である。本図では、一例として、実施例9の
図21の場合と同様に、m=8、n=8、つまり行8×列8の64対の受信アンテナを用いて、受信アンテナアレイ3003を構成した場合を示す。ただし、本実施例においては、
図25の点線で囲んだ任意の領域(注視領域)2501内の2×4画素のみを、ラスタスキャン順に出力することとする。
【0138】
図26は、
図25に示される2×4画素の領域2501のみを出力する場合の、行回路・列回路の動作タイミングを示す図である。行回路2001に入力される8本の行選択信号のうち、行:1から2までの2本のみが周期的に選択され、また、列回路2022に入力される8本の列選択信号のうち、列:2から5までの4本のみが周期的に選択されている。それ以外の行選択信号・列選択信号は全て“L”(非選択)となっている。
【0139】
このように、時刻T1からT9までで、2×4画素すべての出力が1通り完了している。
図26の場合には、この2×4以外の画素を省略することで、フレーム周期がTb 2609で済むようになっている。つまり、本実施例の手法によって、特定の画素領域のみを読み出すことによって、実施例9の
図22のように全ての画素を読み出す場合よりも高フレームレート(短いフレーム周期)で画素を読み出すことができる(高速読み出しモード)
以上のように、本実施例における、高速読み出しモードを用いれば、画像の特定の領域を高いフレームレートで読み出すことができるので、第1検出部103において物体の認識精度が向上し、危険予測部105による危険予測の精度の向上や、ドライバーが画像表示部107を確認する際の画質・応答速度の向上に貢献することができるので、衝突事故を未然に防ぐことができるようになる。なお、注視領域は1領域に限らず、複数領域を任意に設定しても構わない。
【0140】
次に、距離情報と速度情報を算出する領域を段階的に絞り込むことで、全ての画素に対して位置・相対速度の両方を測定するよりも、高速に衝突危険物体を検知することができるようになる、「段階的距離・相対速度計算」という手法について、
図27,
図28を用いて説明する。
【0141】
図27は、ミリ波撮像部から距離情報、及び相対速度情報を出力する画素の位置の例を示す図である。本図においては、距離情報は、全領域2701に対して算出される。一方、相対速度情報に関しては、危険物体が存在する可能性のある領域を、距離情報を用いて絞り込んだ領域(注視領域)2702に対してのみ算出される。以下、この手法を段階的距離・相対速度計算と呼ぶ。
【0142】
図28は、段階的距離・相対速度計算の手順を示すフロー図である。フロー図に示される通り、まず、Step1でミリ波光源からパルス信号を送信し(S2801),Step2でこれをミリ波センサ・信号処理部で受信・処理して、全画素に対して距離情報を算出する(S2802)。次に、Step3で、その距離情報をもとに、危険予測部105で、一定以上距離が近い領域(注視領域)を判定する(S2803)。さらに、Step4でミリ波光源からビート信号を送信し(S2804),Step5で注視領域に対してのみ、実施例11に示される高速読み出しモードで、相対速度を算出する(S2805)。
【0143】
Step1,2に使用されるパルス信号による測距に比べて、Step3,4に使用されるビート信号の送出は、複数の周波数を送信して、複数の周波数を受信する必要があるため、測定に時間がかかる。本実施例の段階的距離・相対速度計算では、Step1,2では画像全体に対して距離を測定した上で、Step3で衝突する危険がある物体が潜んでいる可能性の高い画素領域に“あたり”を付け、その画素領域に対してのみ、Step4,5で相対速度の測定を行っている。こうすることによって、全ての画素に対して位置・相対速度の両方を測定するよりも、高速に衝突危険物体を検知することができるようになる。
【0144】
以上のように、本実施例における、段階的距離・相対速度計算を用いれば、全ての画素に対して位置・相対速度の両方を測定するよりも、高速に衝突危険物体を検知することができるようになり、第1検出部103において物体の認識精度が向上し、危険予測部105による危険予測の精度の向上や、ドライバーが画像表示部107を確認する際の画質・応答速度の向上に貢献することができるので、衝突事故を未然に防ぐことができるようになる。
【実施例12】
【0145】
以下、本発明における実施例12について詳細に説明する。
図29は、本発明の実施例12における車両用衝突危険回避システム2900を示す構成図である。なお、
図29の車両用衝突危険回避システム2900は、実施例7・実施例8の
図16の衝突危険予測システム1600と同様である。
【0146】
車両用衝突回避システム2900は、車両用衝突危険予測装置101、画像表示部107、警告音出力部108、車両制御装置2901を適宜用いて構成される。車両制御装置2901は、実施例9・実施例11の
図16の車両制御装置1601と同一のものである。車両制御装置2901は、車速制御部2902、トランスミッション部2903、操舵制御部2904、身体接触通知部2905を適宜用いて構成される。
【0147】
車両用衝突危険装置は、実施例9,10の
図16の車両用衝突危険装置101と同様である。すなわち、車両用衝突危険装置は衝突の危険がある物体を検知し、さらに危険予測装置101は、危険予測部で得られた、車両がどのような衝突危険回避行動をとるべきかを示した「衝突回避情報」を、車両制御装置3001に出力する。画像表示部107は、実施例9,10の
図16の車両用衝突危険装置107と同一であり、衝突危険物体を画面に表示し、ドライバーに通知する。警告音出力部108は、実施例9,10の
図16の警告音出力部107と同様であり、危険予測装置101で検知した衝突の危険がある物体について、アラーム音や合成音声などの警告音を出力し、ドライバーに通知する。
【0148】
車速制御部2902は、車両用衝突危険予測装置101から出力された「衝突回避情報」に基づいて、自動でブレーキングによって自車両を減速し、衝突の危険を回避する。このとき、車両用衝突危険予測装置101から車速制御部2902に出力される「衝突回避情報」には、例えば、ブレーキングの強さとタイミングを示す情報が含まれる。
トランスミッション制御部2903は、車両用衝突危険予測装置101から出力された「衝突回避情報」に基づいて、ギアの段数を下げ、エンジンブレーキによって減速し、衝突の危険を回避する。このとき、車両用衝突危険予測装置101からトランスミッション部2903に出力される「衝突回避情報」には、ギアの段数を切り替えるタイミングを示す情報が含まれる。
操舵制御部2904は、車両用衝突危険予測装置101から出力された「衝突回避情報」に基づいて、衝突危険物体と逆の方向にハンドルを切るなどして、衝突を回避する。
身体接触通知部2905は、ドライバーの身体に接触した部位を制御する装置で、車両用衝突危険予測装置101から出力された「衝突回避情報」に基づいて、シートベルトの締め具合を変化させたり、座席を振動させたりするなどの方法によって、ドライバーに危険を通知する。このとき、車両用衝突危険予測装置101から身体接触通知部2905に出力される「衝突回避情報」には、シートベルトの締め具合を変化させる程度、座席を振動させる程度と、シートベルトの締め具合や座席の振動を変化させるタイミングを示す情報が含まれる。
【0149】
衝突回避行動では、車両制御装置内の一部の要素だけを制御しても良いし、全てを同時に制御しても良い。例えば、車速制御部2902のみを使用する場合、車速制御部2902・トランスミッション制御部2903の2要素を併用する場合、車速制御部2902・トランスミッション制御部2903・操舵制御部2904の3要素を併用する場合、車速制御部2902・トランスミッション制御部2903・操舵制御部2904・身体接触制御部2905の4要素全てを併用する場合などがある。また、衝突回避行動は、衝突危険物体の画面表示や、アラーム音や合成音声などの警告音の出力によるドライバーへの通知後、所定時間経過しても衝突回避の行動がなされなかった場合に実施してもよく、また、危険度に応じて衝突回避行動開始のタイミングを変えても構わない。例えば、得られた距離情報に基づいて、衝突危険物体との距離が近く、危険度が高いと判断される場合には、ドライバーへの警告通知後、回避動作開始までの所定時間を短くしたり、通知と同時に回避動作を開始しても構わない。なお、衝突危険回避の行動がなされたか否かは、例えば車速監視部、トランスミッション監視部、操舵監視部などにより監視し、車速の減速等必要な行動が検知されたか否かをみればよい。
【0150】
図29の車両制御装置2901内の4要素(車速制御部2902・トランスミッション制御部2903・操舵制御部2904・身体接触制御部2905)のうち、使用する要素が少ない場合には、ドライバー自身が回避行動を取る補助として、本車両用衝突回避システム2900を使用することができる。この場合には、車両制御装置2901の制御方法のチューニングは簡易で済むので、制御方法設計時の負担は少なくなる。逆に、使用する要素が多い場合には、ドライバーの運転技術の良し悪しにかかわらず、衝突回避行動を取ることができる。
以上のように、実施例12の手段を用いれば、実施例7,8の場合と同様に、画像と音声により、障害物の向こう側にある衝突危険物体についてドライバーに警告することができ、適切に衝突回避行動をとることができるので、衝突事故を未然に防ぐことができる。また、実施例12の手段を用いれば、ドライバーが衝突回避行動を取らなかった場合であっても、自車両が自動で衝突回避行動をとるので、衝突事故を未然に防ぐことができる。本実施例12の手段は、他の実施例で示した構成と適宜組み合わせて適用可能である。
【0151】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
また、上記の各構成は、それらの一部又は全部が、ハードウェアで構成されても、プロセッサでプログラムが実行されることにより実現されるように構成されてもよい。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。