【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1の溶接ビード切削装置10について、
図1〜7を用いて説明する。
【0016】
溶接ビード切削装置10は、エンドミル21を有する本体部20と、本体部20を案内するガイド部30と、本体部20をガイド部30に沿って移動させる移動機構46と、ガイド部30を介して本体部20を支持する一対の支持体41と、支持体41に着脱できる保護脚50、51と、支持体41を母材5に固定する固定治具60とを備えている。
【0017】
一対の支持体41は、左右方向に互いに約234mm離間し、前後方向に略平行に延びている。前端が前連結体42で互いに連結され、後端が後連結体43で互いに連結されている。各支持体41は、左右の幅が約40mmで略水平な底板44と、底板44の左端又は右端から上方へ略垂直に起立している縦板45とからなっている。
【0018】
ガイド部30は、本体部20の左右両側に設けられ、前後方向に略平行に延びている二本のガイド棒31からなっている。各ガイド棒31は、略垂直に立設され、支持体41の縦板45にボルト32で取着されている垂直板33と、垂直板33の上端に略水平に形成されている水平板34とからなっている。水平板34の中間部には、支持体41に対する水平板34の高さを調整する調整機構35が設けられている。
【0019】
調整機構35は、ガイド棒31の水平板34に固定された固定ナット36と、固定ナット36に螺合している調整ボルト37とからなっている。
【0020】
本体部20は、底が開口した略箱状の筐体22と、筐体22上に設置され、回転軸23を筐体22内に挿入している駆動モータ24と、駆動モータ24の回転軸23にチャック26を介して着脱可能に取着されているエンドミル21とを備えている。チャック26は筐体22内に設けられているベアリン25で軸支されている。
【0021】
筐体22は、駆動モータ24を起動及び停止するためのスイッチボックス27が前面に設けられ、前後両面に取手28が取着されている。左右両側面の前後には、ガイド棒31の水平板34に上方から当接する上ローラ15と、下方から当接する下ローラ16とが軸着されている。また、筐体22の前方及び後方には、ガイド棒31の水平板34に側方から当接する水平ローラ18が左右に設けられている。水平ローラ18は、ブラケット19を介して筐体22に軸着されている。上ローラ15と下ローラ16とで水平板34を挟持することから、本体部20は、ガイド棒31に対する上下方向の相対変位が規制されている。また、左右の水平ローラ18がそれぞれ水平板34に当接することから、本体部20は、ガイド棒31に対する左右方向の相対変位が規制されている。従って、本体部20の移動は、二本のガイド棒31の間において、このガイド棒31に沿う、前後方向への直線移動になっている。
【0022】
駆動モータ24は、出力が0.4KW、3相6ポールの交流モータ(220V、60Hz)である。
【0023】
エンドミル21は、三菱マテリアル社の型番NSE300R504S32を用い、刃が付いている側の端を下側にして筐体22より下方に突出している。また、エンドミル21の軸心は、一対の支持体41間の略中央に位置している。エンドミル21の下端は、支持体41の下端(底板44の下面)と略同じ高さになるように、調整機構35で調整されている。
【0024】
移動機構46は、一対の支持体41に取着されたブラケット47に前後端が回転可能に支持されているネジ軸48と、ネジ軸48に螺合し、筐体22の前面に固着されている移動片49と、ネジ軸48の前端に取着され、ネジ軸48を回転させるハンドル14とを備えている。そして、移動機構46は、ハンドル14を回転させることで、ネジ軸48が回転し、ネジ軸48の回転に伴って、移動片49がネジ軸48に沿って前後に移動し、本体部20が前後に移動する。
【0025】
保護脚50、51は、厚板片状の脚体52と、脚体52の上面に突設され、鉤状の取着片53と、取着片53に螺合している蝶ネジ54とを備えている。そして、脚体52と取着片53との間に底板44を挟むようにして、支持体41の前端及び後端に設けられ、蝶ネジ54により着脱可能に支持体41に取着されている。また、支持体41の後端に設けられている保護脚51の脚体52は、車輪55を軸支している。
【0026】
図6に示すように、固定治具60は、略コ字状の治具板61と、治具板61の上部に偏心して軸着されている略円柱状の回転体62と、回転体62に固着されているレバー63とを備えている。
図6のa1、b1に示すように、治具板61の空間64に母材5を挿入した後、
図6のb1の矢印の方向へレバー63を傾動させることで、
図6のa2、b2に示すように、回転体62が回動して下降し、底板44を下方へ押圧することで、固定治具60が母材5と支持体41とを密接させて挟持する。これによって、支持体41は母材5に固定される。
【0027】
溶接ビード切削装置10により、母材5に形成された溶接ビード7の余盛6を切削して除去する操作について説明する。
【0028】
母材である二枚の平板状の鋼材4a、4bは、互いの辺同士を突き合わせ、該突き合わせ部に形成された開先に溶接ビード7を形成することにより、全体としても平板状となるように接合されている。以下、接合された両母材を符号5で表す。また、溶接ビード7は母材5の表面よりも突出した部分である余盛6を含んでおり、該余盛6は上方から見て略直線状に形成されている。
【0029】
予め本体部20を一対の支持体41の後端側に後退させておいた溶接ビード切削装置10を母材5の上面に載せて、一対の支持体41間の略中央に溶接ビード7の余盛6が位置するようにし、且つ一対の支持体41と溶接ビード7の余盛6とが略平行になるように調整する。なお、保護脚50、51が母材5と干渉するときには、蝶ネジ54を緩めて、保護脚50、51を支持体41から取外す。
【0030】
その後、各支持体41に固定治具60を取り付け、固定治具60のレバー63を約80°回動させることにより、固定治具60で母材5と支持体41とを挟持して、母材5に支持体41を固定する。
【0031】
その後、駆動モータ24を起動させることでエンドミル21を回転させる。そして、ハンドル14を回転させることで、本体部20を前進させ、エンドミル21を溶接ビード7の余盛6に沿って移動させて、溶接ビード7の余盛6をエンドミル21で切削して除去する。
【0032】
溶接ビード7の余盛6の除去が終わったら、固定治具60のレバー63を約80°傾動させることで、固定治具60による母材5と支持体41との挟着を外して、溶接ビード切削装置10を母材5の上面から降ろす。
【0033】
溶接ビード7を境にして母材5に反りが生じている場合に、溶接ビード切削装置10を用いた溶接ビード7の余盛6の除去について、
図7を用いて説明する。
【0034】
図7のaに示す母材5は、溶接ビード7を境にして下に反っており、その反りの大きさは、溶接ビード7から約300mm離れたところで、溶接ビード7より約3mm下方に位置している。
図7のbに示す母材5は、溶接ビード7を境にして上に反っており、その反りの大きさは、溶接ビード7から約300mm離れたところで、溶接ビード7より約3mm上方に位置している。
【0035】
図7のaに示すように、溶接ビード7を境にして母材5が下に反っている場合には、一対の支持体41の内側が当接部(左側の支持体41の右端が左側の支持体41の当接部であり、右側の支持体41の左端が右側の支持体41の当接部である)となり、その間隔が約234mmであることから、エンドミル21は、最大約1.1mmの深さで母材5を切削する。
【0036】
一方、
図7のbに示すように、溶接ビード7を境にして母材5が上に反っている場合には、一対の支持体41の外側が当接部(左側の支持体41の左端が左側の支持体41の当接部であり、右側の支持体41の右端が右側の支持体41の当接部である)となり、その間隔が約314mmであることから、エンドミル21は、最大約1.5mmの高さの溶接ビード7の余盛6の削り残しを生じさせる。
【0037】
本実施例の溶接ビード切削装置10によれば、次の効果が得られる。
・母材5に形成された溶接ビード7の余盛6をエンドミル21で切削して除去することから、粉塵の発生をなくすことができ、且つ騒音を著しく低減することができた。そのため、作業場の環境が良くなると共に、作業場周辺からの苦情をなくすことができた。
・出力が0.4KW、3相6ポールの交流モータ(220V、60Hz)を駆動モータ24に用いたことから、回転数が約1200rpmになり、騒音が半減された。また、インバータを用いないことから、コストが低減された。
【0038】
・一対の支持体41の間隔を約234mmにしたことから、左側の支持体41の左端と、右側の支持体41の右端との間の距離が約314mmとなる。このため、
図7のaに示すように、母材5が溶接ビード7を境にして下に反っている場合には、この反りによる影響で母材5が削られる深さを約1.1mm以下にすることができた。一方、
図7のbに示すように、母材5が溶接ビード7を境にして上に反っている場合には、この反りによる影響で削り残される余盛の高さを約1.5mm以下にすることができた。従って、一度、エンドミル21と母材5との隙間の調整を行うと、再度この調整を行うことなく、許容範囲内で、母材5に形成された溶接ビード7の余盛6を切削して除去することができた。このため、作業効率が向上した。
・一対の支持体41の間隔を約234mmにしたことから、コンパクトになり重さを軽減することができた。
【0039】
・支持体41の底板44の前端及び後端に保護脚50、51を着脱可能に設けたことから、支持体41と床との間に隙間ができ、床に置いたときに、エンドミルが床に接触して破損することを防止することができた。また、使用時に保護脚50、51が母材5に干渉することも防止できた。
・支持体41の後端に設けられている保護脚51が車輪55を備えていることから、支持体41の前端(前連結体42)を持ち上げることで、溶接ビード切削装置10の移動を容易に行うことができた。また、支持体41の前端に設けられている保護脚50が車輪を備えていないことから、支持体41の前端を降ろすことで溶接ビード切削装置10が容易に移動しないようにできた。
【0040】
・固定治具60のレバー63を約80°傾動させることで、回転体が約80°回動して、固定治具60による母材5と支持体41との挟持及びその開放が行えることから、母材5への支持体41の固定及びその解除がワンタッチで行えた。
【実施例2】
【0041】
本発明の実施例2の溶接ビード切削装置70について、
図8〜10を用いて説明する。
【0042】
溶接ビード切削装置70は、固定治具71のみが溶接ビード切削装置10と異なり、その他の点は、溶接ビード切削装置10と同じである。そこで、溶接ビード切削装置10と異なる点を中心に説明する。なお、
図8〜10において、溶接ビード切削装置10と同じ部材には、同じ符号を付している。
【0043】
固定治具71は、溶接ビードの余盛6と略平行に延び、母材5の上面に固定される固定体72と、固定体72と支持体41とを跨ぐ略円柱状の回転体78と、回転体78に固着されたレバー76と、レバー76に固着され、周面が回転体78の周面に当接している略円柱状の留体79とを備えている。
【0044】
図10に示すように、固定体72は、母材5の上面に当接する下板73と、下板73の上方に設けられ連結板74を介して下板73の上面の中間部に連結されている上板75とからなる。
【0045】
図10のa1に示すように、予めシャコ万等の固定具で母材5に固定されている固定体72の下板73と、支持体41の底板44とを跨ぐように回転体78を設け、
図10のb1の矢印の方向へレバー76を傾動させることで、
図10のa2、b2に示すように、留体79を固定体72の上板75に当接させて、固定体72の下板73と上板75とで回転体78と留体79とを挟持させて、底板44を下方へ押圧する。これによって、支持体41は母材5に固定される。
【0046】
溶接ビード切削装置70により、母材5に形成された溶接ビードの余盛6を切削して除去する操作について説明する。
【0047】
予め本体部20を一対の支持体41の後端側に後退させておいた溶接ビード切削装置70を母材5の上面に載せて、一対の支持体41間の略中央に溶接ビードの余盛6が位置し、且つ一対の支持体41と溶接ビードの余盛6とが略平行になるように調整する。なお、保護脚50、51が母材5と干渉するときには、蝶ネジ54を緩めて、保護脚50、51を支持体41から取外す。
【0048】
その後、一対の支持体41に沿うようにして二本の固定体72を母材5の上面に載せ、シャコ万等の固定具で固定体72を母材5に固定した後、固定治具71のレバー76を約80°傾動させて、回転体78を約80°回動させ、母材5に支持体41を固定する。
【0049】
その後、駆動モータ24を起動させることでエンドミル21を回転させる。そして、ハンドル14を回転させることで、本体部20を前進させ、エンドミル21を溶接ビードの余盛6に沿って移動させて、溶接ビードの余盛6をエンドミル21で切削して除去する。
【0050】
溶接ビードの余盛6の除去が終わったら、固定治具71のレバー76を傾動させて、支持体41の固定を外し、溶接ビード切削装置70を母材5の上面から降ろす。なお、溶接ビードの余盛6が長い場合には、固定体72を母材5に固定したまま、支持体41を移動させた後、レバー76を傾動させて、母材5に支持体41を固定して、再度エンドミル21により溶接ビードの余盛6の切削を行う。
【0051】
本実施例の溶接ビード切削装置70によれば、溶接ビード切削装置10で得られる効果に加え、次の効果が得られる。
・支持体41より長く且つ幅広な母材5にも支持体41を固定することができ、そのような母材5に形成された溶接ビードの余盛6を切削して除去することができた。
【0052】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の趣旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。例えば、母材、溶接ビード及びエンドミルの種類や大きさ等にあわせて、駆動モータの回転数を変更できるようにインバータを備える。母材が上に反っている場合に削り残される余盛の高さを低くするため、支持体の底板の幅を狭くする。