特許第5863519号(P5863519)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863519
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】ガス化プラント
(51)【国際特許分類】
   C10J 3/46 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   C10J3/46 L
   C10J3/46 J
【請求項の数】12
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2012-56769(P2012-56769)
(22)【出願日】2012年3月14日
(65)【公開番号】特開2013-189553(P2013-189553A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2015年2月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】上川 由貴
(72)【発明者】
【氏名】木曽 文彦
(72)【発明者】
【氏名】石賀 琢也
(72)【発明者】
【氏名】流森 文彦
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−256274(JP,A)
【文献】 特表2009−511692(JP,A)
【文献】 特開2011−208513(JP,A)
【文献】 特開2012−180426(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系燃料と酸化剤を供給してガス化する複数のバーナを備えたガス化炉を有するガス化設備と、前記ガス化設備に供給する酸素と窒素を空気から分離して製造する空気分離設備と、前記ガス化設備でガス化した生成ガス中の硫黄化合物を除去するガス精製設備と、前記ガス精製設備で精製された生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気を水素と二酸化炭素に変換するシフト反応器と、前記シフト反応器で変換された水素と二酸化炭素のうち、二酸化炭素を回収すると共に水素を分離する二酸化炭素回収設備とを備え、前記二酸化炭素回収設備で分離させた水素を主成分とする生成ガスを下流の機器に供給するガス化プラントにおいて、
前記二酸化炭素回収設備で回収した二酸化炭素の一部を前記ガス化設備のガス化炉に供給するガス供給系統を配設し、前記ガス供給系統にガスを収容するガスホルダーを設置し、前記空気分離設備で空気から分離した窒素を前記ガスホルダーに供給する窒素ガス供給系統を配設し、
前記二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備からこのガスホルダーに供給した窒素を該ガスホルダーから前記ガス供給系統を通じて前記ガス化設備のガス化炉に供給するように構成したことを特徴とするガス化プラント。
【請求項2】
請求項1に記載のガス化プラントにおいて、
前記二酸化炭素回収設備がトリップ時に、この二酸化炭素回収設備から前記ガスホルダーに供給する二酸化炭素の供給を遮断する第1の弁を該ガスホルダーの上流側となる前記ガス供給系統に設け、前記空気分離設備から前記ガスホルダーに供給する窒素の供給を調節する第2の弁を前記窒素ガス供給系統に設け、更に前記ガスホルダーから前記ガス化設備のガス化炉に供給するガスの供給を調節する第3の弁を該ガスホルダーの下流側となる前記ガス供給系統に設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項3】
請求項1に記載のガス化プラントにおいて、
前記ガス化設備のガス化炉に炭素系燃料を供給するフィードホッパを備え、
前記二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備から前記ガスホルダーに供給した窒素を前記フィードホッパにフィードホッパ加圧ガス及びフィードホッパ流動化ガスとして前記ガス供給系統を通じて供給するように構成し、
前記フィードホッパに供給するフィードホッパ加圧ガス及びフィードホッパ流動化ガスの流量をそれぞれ調整する第1の流量調整弁及び第2の流量調整弁を該フィードホッパの上流側となる前記ガス供給系統に設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項4】
請求項1に記載のガス化プラントにおいて、
前記二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備から前記ガスホルダーに供給した窒素が前記ガス供給系統を通じて前記ガス化設備のガス化炉に設置したバーナに供給するように構成し、
前記ガス化設備のガス化炉に備えた前記バーナに供給するガスの流量を調整する第3の流量調整弁を該バーナの上流側に位置する前記ガス供給系統に設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項5】
請求項1に記載のガス化プラントにおいて、
前記二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備から前記ガスホルダーに供給した窒素が前記ガス供給系統を通じて前記ガス化設備のガス化炉の天井に設置した天井ノズルに供給するように構成し、
前記ガス化設備のガス化炉の天井に備えた前記天井ノズルに供給するガスの流量を調整する第4の流量調整弁を該天井ノズルの上流側に位置する前記ガス供給系統に設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項6】
請求項1に記載のガス化プラントにおいて、
前記二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備から前記ガスホルダーに供給した窒素が前記ガス供給系統を通じて前記ガス化設備のガス化炉出口に設置したガス化炉出口ガスノズルに供給するように構成し、
前記ガス化設備のガス化炉出口に備えた前記ガス化炉出口ガスノズルに供給するガスの流量を調整する第5の流量調整弁を該ガス化炉出口ガスノズルの上流側に位置する前記ガス供給系統に設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項7】
請求項1に記載のガス化プラントにおいて、
前記二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備から前記ガスホルダーに供給した窒素が前記ガス供給系統を通じて前記ガス化設備のガス化炉の外周側に設置された圧力容器に設置した隔壁ノズルに供給させて前記隔壁ノズルからガス化炉と圧力容器との間に形成された隔壁部にガスを供給するように構成し、
前記ガス化設備のガス化炉の外周側に備えた前記隔壁ノズルに供給するガスの流量を調整する第6の流量調整弁を該隔壁ノズルの上流側に位置する前記ガス供給系統に設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項8】
請求項4に記載のガス化プラントにおいて、
前記ガス化設備のガス化炉に備えた前記バーナに冷却水を供給する冷却水流路を配設すると共に、この冷却水流路に冷却水の温度を測定する冷却水温度検出器を設置し、
前記冷却水温度検出器で測定した冷却水温度に基づいて前記バーナに供給するガスの流量を演算し、この演算した二酸化炭素の流量に基づいて前記バーナに供給するガスの流量を調整する前記第3の流量調整弁を制御する制御器を設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項9】
請求項5に記載のガス化プラントにおいて、
前記前記ガス化設備のガス化炉の天井にガス化炉天井の温度を測定する天井温度検出器を設置し、
前記天井温度検出器で測定したガス化炉天井の温度に基づいて前記天井ノズルに供給するガスの流量を演算し、この演算した二酸化炭素の流量に基づいて前記天井ノズルに供給するガスの流量を調整する前記第4の流量調整弁を制御する制御器を設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項10】
請求項6に記載のガス化プラントにおいて、
前記前記ガス化設備のガス化炉の出口にガス化炉の出口ガス温度を測定するガス化炉出口ガス温度検出器を設置し、
前記ガス化炉出口ガス温度検出器で測定したガス化炉天井の温度に基づいて前記ガス化炉出口ガスノズルに供給するガスの流量を演算し、この演算した二酸化炭素の流量に基づいて前記ガス化炉出口ガスノズルに供給するガスの流量を調整する前記第5の流量調整弁を制御する制御器を設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項11】
請求項7に記載のガス化プラントにおいて、
前記ガス化設備のガス化炉の圧力と該ガス化炉の外周側に設置された圧力容器の圧力との差圧を測定する第1の差圧検出器を設置し、
前記第1の差圧検出器で測定したガス化炉と圧力容器の差圧に基づいて前記隔壁ノズルから隔壁部に供給するガスの流量を演算し、この演算したガスの流量に基づいて前記隔壁ノズルに供給するガスの流量を調整する前記第6の流量調整弁を制御する制御器を設けたことを特徴とするガス化プラント。
【請求項12】
請求項3に記載のガス化プラントにおいて、
前記フィードホッパと前記ガス化設備のガス化炉の外周側に設置された圧力容器の圧力との差圧を測定する第2の差圧検出器を設置し、
前記第2の差圧検出器で測定したフィードホッパと圧力容器の差圧から前記フィードホッパに供給するフィードホッパ加圧ガスの流量を演算し、この演算したフィードホッパ加圧ガスの流量に基づいてフィードホッパに供給するガスの流量を調整する前記第1の流量調整弁を制御すると共に、前記フィードホッパに供給するフィードホッパ流動化ガスの流量を演算し、この演算したフィードホッパ流動化ガスの流量に基づいてフィードホッパに供給するガスの流量を調整する前記第2の流量調整弁を制御する制御器を設けたことを特徴とするガス化プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭素系燃料をガス化した生成ガスを生成し、このガス化した生成ガスに含まれる炭素は二酸化炭素として生成ガスから回収して水素を主成分とする精製ガスを製造するガス化プラントに関するものであり、二酸化炭素の排出を抑制して地球温暖化防止に寄与する技術である。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出を抑制する地球温暖化対策のため、水素と一酸化炭素の混合ガスを製造する炭素系燃料のガス化システムに対して、二酸化炭素を回収することが求められている。
【0003】
炭素系燃料のガス化システムでは、ガス化装置内で炭素系燃料をガス化して生成した水素と一酸化炭素を含む生成ガスを脱塵設備及びガス精製設備で精製し、シフト反応設備でこの精製した生成ガスと水蒸気をシフト反応(CO+HO→CO+H)させ、この生成ガスから分離させたHを発電設備の燃料や化学原料として用いる。
【0004】
炭素系燃料をガス化した生成ガス中の二酸化炭素は、二酸化炭素回収設備で精製ガスから分離・回収され、液化して貯蔵される。そして一部の二酸化炭素はガス化装置に再循環させて、二酸化炭素回収設備で再度回収される。
【0005】
二酸化炭素をガス化装置に再循環させると、生成ガス総量中の窒素濃度が循環する二酸化炭素によって低減できるため、発電設備から発生する窒素酸化物を抑制することができる。
【0006】
また生成ガスから分離させたHを化学原料として用いる際には、生成ガス中の窒素濃度が低くなると反応に不活性な窒素をプロセスから除去する工程が簡素化できるため、二酸化炭素の再循環による窒素濃度の低減は有効である。
【0007】
二酸化炭素回収設備で回収した二酸化炭素を再循環するプロセスを含む炭素系燃料のガス化システムとしては、例えば特開2010−59940号公報に記載された技術がある。この技術に記載された炭素系燃料のガス化システムでは、二酸化炭素回収設備で回収した二酸化炭素はガス化設備の炭素系燃料をガス化炉に加圧搬送する搬送用ガスとして使用している。
【0008】
また特開2008−291081号公報に記載された炭素系燃料のガス化システムの技術では、ガス化炉で炭素系燃料をガス化した生成ガスによって発電設備を駆動した後の排気から分離した二酸化炭素を微粉炭と共にガス化炉に供給することによってガス化炉の温度上昇を抑制して冷ガス効率を向上させるガス化システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−59940号公報
【特許文献2】特開2008−291081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特開2008−291081号公報に開示された炭素系燃料のガス化システムでは、ガス化炉でガス化した生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの要因によってトリップした場合に、二酸化炭素回収設備からガス化炉に導入する二酸化炭素の供給が断たれるため、ガス化炉の運転が継続できず停止せざるを得ないという課題がある。
【0011】
本発明の目的は、炭素系燃料をガス化炉でガス化して炭素系燃料に含まれた水素と一酸化炭素が混合した生成ガスを生成してこの生成ガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の一部をガス化炉に供給してガス化炉の冷ガス効率を向上させるように構成したガス化プラントにおいて、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの原因でトリップした場合に、ガス化炉を停止させずに安定な運転を継続し得るガス化プラントを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のガス化プラントは、炭素系燃料と酸化剤を供給してガス化する複数のバーナを備えたガス化炉を有するガス化設備と、前記ガス化設備に供給する酸素を空気から分離して製造する空気分離設備と、前記ガス化設備でガス化した生成ガス中の硫黄化合物を除去するガス精製設備と、前記ガス精製設備で精製された生成ガス中の一酸化炭素と水蒸気を水素と二酸化炭素に変換するシフト反応器と、前記シフト反応器で変換された水素と二酸化炭素のうち、二酸化炭素を回収すると共に水素を分離する二酸化炭素回収設備とを備え、前記二酸化炭素回収設備で分離させた水素を主成分とする生成ガスを下流の機器に供給するガス化プラントにおいて、
前記二酸化炭素回収設備で回収した二酸化炭素の一部を前記ガス化設備のガス化炉に供給するガス供給系統を配設し、前記ガス供給系統にガスを収容するガスホルダーを設置し、前記空気分離設備で空気から分離した窒素ガスを前記ガスホルダーに供給する窒素ガス供給系統を配設し、前記二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記ガスホルダーに収容した窒素ガスを該ガスホルダーから前記ガス供給系統を通じて前記ガス化設備のガス化炉に供給するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭素系燃料をガス化炉でガス化して炭素系燃料に含まれた水素と一酸化炭素が混合した生成ガスを生成してこの生成ガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の一部をガス化炉に供給してガス化炉の冷ガス効率を向上させるように構成したガス化プラントにおいて、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの原因でトリップした場合に、ガス化炉を停止させずに安定な運転を継続し得るガス化プラントが実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施例であるガス化プラントの構成を示す概略系統図。
図2図1に記載した第1実施例のガス化プラントのガス化設備を構成するガス化炉を示す詳細構成図。
図3】本発明の第2実施例であるガス化プラントの制御器で行われるバーナガス流量の制御例を示したブロック図。
図4】本発明の第3実施例であるガス化プラントの制御器で行われる天井ガス流量の制御例を示したブロック図。
図5】本発明の第4実施例であるガス化プラントの制御器で行われるガス化炉出口ガス流量の制御例を示したブロック図。
図6】本発明の第5実施例であるガス化プラントの制御器で行われる隔壁二酸化炭素流量の制御例を示したブロック図。
図7】発明の第6実施例であるガス化プラントの制御器で行われる炭素系燃料のフィードホッパ加圧用二酸化炭素流量の制御例を示したブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のガス化プラントの実施例について図面を引用して以下に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1実施例であるガス化プラントについて図1及び図2を引用して説明する。
【0017】
図1は本発明の第1実施例である二酸化炭素を回収するガス化プラントの構成を示している。
【0018】
図1に示した本実施例のガス化プラントにおいて、フィードホッパ1から供給される炭素系燃料2と、空気分離設備3によって空気から分離して製造された酸素である酸化剤4は、酸素供給系統を通じて炭素系燃料をガス化するガス化炉5aを備えたガス化設備5のバーナ23又は別設されたノズル(図示せず)に供給され、このガス化炉5aにて炭素系燃料2はガス化されて一酸化炭素と水素を主成分とする混合された生成ガスを生成する。
【0019】
ガス化設備5のガス化炉5aで生成された生成ガスは、ガス化設備5の下流側に設置された熱回収設備6で該生成ガスが有する熱量を熱回収された後に、前記熱回収設備6の下流側に設置された脱塵設備7に供給される。
【0020】
前記脱塵設備7では、生成ガス中のチャー8などの微粒子が回収される。前記脱塵設備7で回収されたチャー8は、この脱塵設備7からガス化設備5に供給してリサイクルされ、ガス化設備5を構成するガス化炉5aの内部で溶融スラグとして回収される。
【0021】
前記脱塵設備7で脱塵後の生成ガスは該脱塵設備7の下流側に設置された水洗塔9へ送られ、塩化水素等を除去した後に硫化カルボニル(COS)転化器10へ送られる。
【0022】
前記COS転化器10は、チタニア系やアルミナ系の触媒を内部に充填しており、この触媒を用いて生成ガス中のCOSと水蒸気を反応させ、硫化水素と二酸化炭素に変換する。
【0023】
前記COS転化器10で生成ガス中のCOSを硫化水素と二酸化炭素に変換させる理由は、前記COS転化器10の下流側に設置された硫化水素除去設備11で用いるアミン系の吸収液はCOSを吸収しないので、高い脱硫率を達成するためには、COSを硫化水素とする必要があるためである。
【0024】
前記COS転化器10を経た生成ガスは、次に該COS転化器10の下流側に設置された硫化水素除去設備11に導かれ、前記硫化水素除去設備11にて生成ガス中の硫化水素を除去する。この硫化水素の除去には、アミン水溶液などの吸収液が用いられる。そして硫化水素を吸収した吸収液は、前記硫化水素除去設備11を構成する吸収液再生塔に供給され、吸収液中の硫化水素を分離して吸収液を再生する。
【0025】
吸収液再生塔で再生した吸収液は、前記硫化水素除去設備11内で循環利用できるように該硫化水素除去設備11が構成されている。
【0026】
前記硫化水素除去設備11で硫化水素が除去された生成ガスは、硫化水素除去設備11の下流側に設置されたシフト反応器12に送られ、このシフト反応器12で生成ガス中の一酸化炭素と、水蒸気とを反応させて二酸化炭素と水素に変換するシフト反応を行なう。
【0027】
一酸化炭素は可燃性ガスであり、一酸化炭素を直接除去すると生成ガスの発熱量が低下するので、シフト反応器12で生成ガス中の一酸化炭素を二酸化炭素に変換するシフト反応を進行させる。シフト反応は、鉄−クロム系や銅−亜鉛系の触媒を用いて進められる。
【0028】
前記シフト反応器12でのシフト反応後の二酸化炭素と水素を含んだ生成ガスは、更に該シフト反応器12の下流側に設置された二酸化炭素吸収設備13に送られる。
【0029】
この二酸化炭素吸収設備13では、生成ガスに含まれた二酸化炭素を吸収塔の吸収液に吸収させて除去させることによって、水素を主成分とする生成ガスを得ることができる。
【0030】
前記二酸化炭素吸収設備13で生成ガス中の二酸化炭素を吸収した吸収液は、該二酸化炭素吸収設備13の下流側に設置された二酸化炭素再生設備14に送られ、この二酸化炭素再生設備14の再生塔にて吸収液に吸収された二酸化炭素を分離することによって吸収液を再生する。
【0031】
そして、前記二酸化炭素再生設備14にて二酸化炭素を分離して再生した吸収液は、前記二酸化炭素再生設備14から前記二酸化炭素吸収設備13に循環するように供給され、この二酸化炭素吸収設備13にて生成ガス中の二酸化炭素を吸収液で吸収するように、前記吸収液が循環利用できるように前記二酸化炭素吸収設備13及び前記二酸化炭素再生設備14が構成されている。
【0032】
前記二酸化炭素再生設備14にて吸収液から分離された二酸化炭素は、前記二酸化炭素再生設備14の下流側に設置された第1圧縮機15で圧縮し、該第1圧縮機15の下流側に設置された第1冷却器16によって圧縮した二酸化炭素を冷却し、更にこれらの機器の下流側にそれぞれ設置された第2圧縮機15bで冷却した二酸化炭素を圧縮し、該第2圧縮機15bの下流側に設置された第2冷却器16bによって圧縮した二酸化炭素を更に冷却して液化し、この液化した二酸化炭素を前記第2冷却器16bの下流側に設置された液化貯蔵装置17に供給して貯蔵する。
【0033】
また、第1冷却器16によって冷却した二酸化炭素20の一部は、液化貯蔵装置17で貯蔵せずに、前記第1冷却器16と第2圧縮機15bとの間から分岐してガス供給系統20aを通じて導かれ、このガス供給系統20aに設置された二酸化炭素ホルダ18に供給されて貯留される。
【0034】
前記二酸化炭素ホルダ18に貯留された二酸化炭素20は、この二酸化炭素ホルダ18からガス供給系統20bを通じてガス化設備のガス化炉5aのバーナ23に供給される。
【0035】
前記二酸化炭素ホルダ18には、空気分離設備3から該空気分離設備3によって空気から分離された窒素19が窒素ガス供給系統19aを通じて供給できる構成となっている。
【0036】
そして生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素吸収設備13及び二酸化炭素再生設備14を備えた二酸化炭素回収設備の何れかが何らかの原因によってトリップして、ガス化設備5のガス化炉5aに前記二酸化炭素再生設備14からガス供給系統20aを通じて二酸化炭素20が供給できなくなった場合、或いは、前記二酸化炭素ホルダ18に貯蔵した二酸化炭素20を使い尽くして該二酸化炭素ホルダ18からガス供給系統20bを通じて供給できなくなった場合に、前記二酸化炭素回収設備から制御器39に入力するトリップ信号75に基づいて前記制御器39から出力された指令信号によって、二酸化炭素ホルダ18の上流側に位置するガス供給系統20aに設置した流量調節弁71を閉弁し、ガス供給系統20aを通じた二酸化炭素20の供給を停止する。
【0037】
次に、前記制御器39から出力された指令信号によって、窒素ガス供給系統19aに設置した流量調節弁72を開弁し、空気分離設備3によって空気から分離された窒素19を該空気分離設備3から窒素ガス供給系統19aを通じて二酸化炭素ホルダ18に導入する。
【0038】
そして、前記二酸化炭素ホルダ18に導入された窒素ガスは、前記制御器39から出力された指令信号によってガス化炉5aに設けたバーナ23の上流側のガス供給系統20bに設置した流量調節弁30の開度が制御され、前記二酸化炭素ホルダ18からガス供給系統20b、及びバーナ23を通じてガス化炉5a内に供給される窒素ガスの供給量が調節される。
【0039】
よって、二酸化炭素回収設備に何らかの原因でトリップが生じて、この二酸化炭素回収設備からガス化炉5aへの二酸化炭素の供給が断たれた場合でも、ガス化炉5aに供給する供給ガスを二酸化炭素ホルダ18からガス化炉5aに供給する窒素ガスに切り替え、更にこの窒素ガスの供給量は流量調節弁30の開度制御によって、二酸化炭素20から窒素19への供給ガスの切り替えに伴う圧力変動が回避しているので、二酸化炭素回収設備のトリップに起因したガス化炉5aの運転停止は防止され、ガス化炉5aが安定な運転を継続し得るように二酸化炭素20から窒素19へガス化炉5aへの供給ガスをスムーズに切り替えることができる。
【0040】
前記二酸化炭素ホルダ18に二酸化炭素20或いは窒素ガス19を貯留するのは、ガス化炉5aへの供給ガスを二酸化炭素20から窒素19へ切り替える際、或いはガス化炉5aを起動する際の供給ガスの圧力変動を抑制するためである。
【0041】
また、前述した様に二酸化炭素回収設備に何らかの原因によってトリップが生じた場合だけでなく、ガス化炉5aを起動する場合においても、二酸化炭素回収設備が未稼働なため該二酸化炭素回収設備からガス化炉5aに供給する二酸化炭素が存在していないので、前述した実施例と同様に、前記制御器39からの指令信号によって窒素ガス供給系統19aに設置した流量調節弁72を開弁して、空気分離設備3によって空気から分離された窒素19をこの空気分離設備3から窒素ガス供給系統19aを通じて二酸化炭素ホルダ18に導入する。
【0042】
更に、前記二酸化炭素ホルダ18に導入された窒素ガスは前記制御器39からの指令信号によってガス化炉5aに設けたバーナ23の上流側のガス供給系統20bに設置した流量調節弁30の開度を制御して、前記二酸化炭素ホルダ18からガス供給系統20b、及びバーナ23を通じてガス化炉5a内に供給される窒素ガスの供給量を調節して、前記ガス化炉5aを起動させることが可能となる。
【0043】
本実施例において、ガス化プラントが通常運転時に二酸化炭素ホルダ18を経由してガス供給系統20bを通じてガス化炉5aに供給される二酸化炭素20、或いは、二酸化炭素回収設備がトリップ時に二酸化炭素20から切り替えて供給される窒素ガス19は、ガス化設備のバーナ23、天井ガスノズル35、ガス化炉出口ガスノズル40、及びガス化設備のガス化炉5aと圧力容器27との間に設置されている隔壁部28へ供給される隔壁ガスノズル44に夫々供給されるように構成されている。
【0044】
また、二酸化炭素ホルダ18からガス化炉5aに供給される二酸化炭素20、或いは二酸化炭素20から切り替えて供給される窒素ガス19は、炭素系燃料の搬送ガス、及びチャーの搬送ガスとしても供給されるように構成されている。
【0045】
本実施例のガス化プラントでは、ガス化設備5のバーナ23、天井ガスノズル35、ガス化炉出口ガスノズル40、及びガス化設備のガス化炉5aと圧力容器27との間に設置されている隔壁部28へ供給される隔壁ガスノズル44に供給するガスとして、通常の運転中は生成ガスから回収した二酸化炭素を用いている。
【0046】
図2は本実施例のガス化プラントのガス化設備5におけるガス化炉5aの詳細構造を示している。
【0047】
図2に示された本実施例のガス化設備5を構成するガス化炉5aは、フィードホッパ1から供給される炭素系燃料2と、空気分離設備3で空気から製造された酸化剤4を、複数設置されたバーナ23から投入して燃焼させてガス化するガス化部24と、このガス化部24の下方に設けられ、ガス化部24で生じたスラグを回収するスラグ回収部25と、このガス化部24の上方に設けられ、ガス化部24で生じた一酸化炭素と水素を主成分とする生成ガスを冷却するガス冷却部26とを備えている。
【0048】
前記ガス化炉5aの外側には圧力容器27が設置されており、ガス化炉5aと圧力容器27との間には隔壁部28が設けられ、この隔壁部28には不活性ガスが充填されている。
【0049】
前記ガス化部24に設置された前記複数のバーナ23は、前記ガス化部24の上段と下段に位置するようにそれぞれ配置されている。更にチャーバーナ29が前記ガス化部24の下段に位置するように配置されている。
【0050】
前記バーナ23には、ガス化プラントが通常運転中は、二酸化炭素回収設備を構成する二酸化炭素再生設備14等から回収された二酸化炭素が、ガス供給系統20a、二酸化炭素ホルダ18及びガス供給系統20bを通じて二酸化炭素20として供給されるように構成されており、この二酸化炭素20を二酸化炭素ホルダ18からガス化炉5aのバーナ23に供給するガス供給系統20bに設置されたバーナ用二酸化炭素流量調整機構30の開度を制御器39からの指令信号によって調節することにより、前記バーナ23に供給するバーナ用の二酸化炭素20の流量が調整される。
【0051】
そして、二酸化炭素回収設備を構成する二酸化炭素吸収設備13及び前記二酸化炭素再生設備14のいずれかに何らかの原因でトリップが生じて、前記二酸化炭素回収設備からガス化炉5aへの二酸化炭素の供給が断たれた場合は、前記二酸化炭素回収設備から制御器39に入力するトリップ信号75に基づいて前記制御器39から出力された指令信号によって、二酸化炭素ホルダ18の上流側に位置するガス供給系統20aに設置した流量調節弁71を閉弁し、ガス供給系統20aを通じた二酸化炭素ホルダ18への二酸化炭素20の供給を停止する。
【0052】
同時に、前記制御器39から出力された指令信号によって、窒素ガス供給系統19aに設置した流量調節弁72を開弁し、空気分離設備3で空気から分離された窒素19を該空気分離設備3から窒素ガス供給系統19aを通じて二酸化炭素ホルダ18に導入する。
【0053】
そして、前記二酸化炭素ホルダ18に導入された窒素19は、前記制御器39から出力された指令信号でガス化炉5aに設けたバーナ23の上流側のガス供給系統20bに設置した流量調節弁30の開度を制御することによって、前記二酸化炭素ホルダ18からガス供給系統20b、及びバーナ23を通じてガス化炉5a内に供給される窒素19の供給量を調節することによって、前記二酸化炭素回収設備のトリップ時にガス化炉5aへの二酸化炭素の供給から窒素への供給に切り替えられる。
【0054】
下記する本実施例の説明では、ガス化プラントが通常運転中で二酸化炭素回収設備で回収した二酸化炭素20をガス供給系統20a、20bを通じてガス化炉5aに供給する場合と、ガス化プラントの二酸化炭素回収設備がトリップして二酸化炭素の供給から窒素の供給に切り替えて前記空気分離設備3からガスホルダー18に供給した窒素19の一部をガス供給系統20bを通じてガス化炉5aに供給する場合について説明しているが、前者の場合では二酸化炭素20がガス化炉5aに供給されるケースとなり、後者の場合では窒素19がガス化炉5aに供給されるケースとなっています。
【0055】
そして、ガス化プラントの二酸化炭素回収設備にトリップが生じた場合や、ガス化プラントのガス化炉5aの起動時の場合など、二酸化炭素回収設備で二酸化炭素を回収できない場合は、ガス化炉5aへの二酸化炭素の供給から切り替えて、空気分離設備3から二酸化炭素ホルダ18に供給した窒素19を、ガス供給系統20bを通じてガス化炉5aに供給するように構成している。
【0056】
本実施例のガス化プラントにおいて、前記ガス化炉5aのバーナ23に供給するバーナ用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量は、バーナ23の入口部に配設した冷却水流路61に設置されたバーナ冷却水温度検出器31で測定したバーナ冷却水温度を前記制御器39に入力し、この制御器39で冷却水の設定温度と比較して、バーナ冷却水温度検出器31で測定したバーナ冷却水温度32が前記冷却水の設定温度よりも高い温度の時は前記バーナ23に供給するバーナ供給用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が多くなるように前記バーナ用二酸化炭素流量調整機構30を制御し、バーナ冷却水温度検出器31で測定したバーナ冷却水温度32が前記冷却水の設定温度よりも低い温度の時は前記バーナ23に供給するバーナ用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が少なくなるように前記バーナ用二酸化炭素流量調整機構30を制御して、前記バーナ23に供給するバーナ用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量を前記制御器39によって調整している。
【0057】
そして前記バーナ23の冷却水流路61に設置したバーナ冷却水温度検出器31で測定した検出温度に基づいて制御装置39の制御によって前記バーナ23に供給する二酸化炭素20、或いは窒素19の流量を調整することにより、バーナ23の全体を効果的に冷却することができる。
【0058】
ガス化炉5aのガス化部24に設置されたバーナ23の構造は、炭素系燃料2を搬送する流路と、酸化剤4を供給する流路と、二酸化炭素20、或いは窒素19を供給する流路とがそれぞれ分断された構成となっており、二酸化炭素20、或いは窒素19を供給する流路がバーナ23の入口からバーナの先端に至るまで形成されていると共に、この二酸化炭素20、或いは窒素19を供給する流路がバーナ23の最も外側に配置される構成であることが望ましい。
【0059】
上記したように前記バーナ23の内部構造を前記各流路が分断された構成にすると共に、これらの流路の内、最も外側に位置する流路に、二酸化炭素20、或いは窒素19を供給する流路を配設することによって、燃料と酸素の混合を阻害することなく前記バーナ23によって燃焼する火炎温度を低くできるため、バーナ23を効果的に冷却することができる。
【0060】
本実施例において、前記ガス化炉5aのガス化部24には、天井ガスとして二酸化炭素20、或いは窒素19の一部をガス化部24内に供給する天井ガスノズル35が前記ガス化部24の天井面に設置されている。
【0061】
前記天井ガスノズル35には二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20、或いは窒素19の一部を供給するように構成されており、二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20、或いは窒素19を天井ガスノズル35に供給する経路に設置された天井ガス流量調整機構36を制御器39からの指令信号によって調節することにより、前記天井ガスノズル35に供給する天井ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が調整される。
【0062】
即ち、前記天井ガスノズル35に供給する天井ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量は、前記ガス化炉5aのガス化部24の天井に設置された天井温度検出器37で測定したガス化部24の天井温度38を前記制御器39に入力し、この制御器39によってガス化部24の天井の設定温度と比較して、天井温度検出器37で測定した天井温度38が前記天井の設定温度よりも高い温度の時は前記天井ガスノズル35に供給する天井ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が多くなるように天井ガス流量調整機構36を制御し、天井温度検出器37で測定した天井温度38が前記天井の設定温度よりも低い温度の時は前記天井ガスノズル35に供給する天井ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が少なくなるように天井ガス流量調整機構36を制御して、前記天井ガスノズル35に供給する天井ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量を前記制御器39によって調整している。
【0063】
この結果、前記天井温度検出器37で検出された天井温度38の検出温度に基づいて制御装置39の制御によって前記天井ガスノズル35に供給する天井ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量を調整することにより、ガス化炉5aのガス化部24の天井の冷却に必要な二酸化炭素20、或いは窒素19を効率よく供給できる。
【0064】
本実施例において、前記ガス化炉5aのガス冷却部26には、二酸化炭素20、或いは窒素19の一部をガス化炉出口ガスとしてガス冷却部26内に供給するガス化炉出口ガスノズル40が前記ガス化炉冷却部26の入口に設置されている。
【0065】
前記ガス化炉出口ガスノズル40には二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20、或いは窒素19の一部を供給するように構成されており、二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20、或いは窒素19をガス化炉出口ガスノズル40に供給する経路に設置されたガス化炉出口ガス流量調整機構41を制御器39からの指令信号によって調節することにより、前記ガス化炉出口ガスノズル40に供給するガス化炉出口ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が調整される。
【0066】
即ち、前記ガス化炉出口ガスノズル40に供給するガス化炉出口ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量は、前記ガス化炉5aのガス冷却部26の入口に設置されたガス化炉出口ガス温度検出器42で測定したガス冷却部26のガス化炉出口ガス温度43を前記制御器39に入力し、この制御器39によってガス冷却部26の出口ガスの設定温度と比較して、ガス化炉出口ガス温度検出器42で測定したガス化炉出口ガス温度43が前記出口ガスの設定温度よりも高い温度の時は前記ガス化炉出口ガスノズル40に供給する出口ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が多くなるように前記ガス化炉出口ガス流量調整機構41を制御し、ガス化炉出口ガス温度検出器42で測定したガス化炉出口ガス温度43が前記出口ガスの設定温度よりも低い温度の時は前記ガス化炉出口ガスノズル40に供給する出口ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が少なくなるように前記ガス化炉出口ガス流量調整機構41を制御して、前記ガス化炉出口ガスノズル40に供給する出口ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量を前記制御器39によって調整している。
【0067】
この結果、前記ガス化炉出口ガス温度検出器42で検出されたガス化炉出口ガス温度43の検出温度に基づいて制御装置39の制御によって前記ガス化炉出口ガスノズル40に供給する出口ガス用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量を調整することにより、ガス化炉5aのガス化部24から排出されてガス冷却部26に流入する生成ガスの温度を所望の温度に調節することが可能となる。
【0068】
本実施例において、前記ガス化炉5aの外側に設置された圧力容器27には、このガス化炉5aと圧力容器27との間に形成された隔壁部28に、二酸化炭素ホルダ18から導いた二酸化炭素20、或いは窒素19の一部を供給する隔壁ガスノズル44が設置されている。
【0069】
前記隔壁ガスノズル44から隔壁部27内に供給する二酸化炭素20、或いは窒素19のガス流量は、二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20の一部を前記隔壁ガスノズル44に供給する経路に設置された隔壁ガス流量調整機構55を制御器39からの指令信号によって調節することにより、前記隔壁ガスノズル44から隔壁部27内に供給する二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が調整される。
【0070】
即ち、前記隔壁ガスノズル44に供給する二酸化炭素20、或いは窒素19の流量は、前記ガス化炉5aのガス化部24と圧力容器27との間に配設された差圧検出器45で測定されたガス化部と圧力容器との差圧46を前記制御器39に入力し、この制御器39によって前記差圧検出器45で測定したガス化部と圧力容器との差圧46が一定値となるように、隔壁ガス流量調整機構55を制御器39からの指令信号によって調節することにより、隔壁ガスノズル44から圧力容器27に供給する二酸化炭素20、或いは窒素19の流量を調整している。
【0071】
更に、前記隔壁ガスノズル44から隔壁部28に供給する二酸化炭素20、或いは窒素19の流量は、ガス化プラントが通常運転時には、前記二酸化炭素ホルダ18に二酸化炭素20、或いは窒素19を供給するガス供給系統20aに設置された回収二酸化炭素流量検出器52で測定された回収二酸化炭素流量53を前記制御器39に入力し、この制御器39による演算によって、前記回収二酸化炭素流量検出器52で検出する二酸化炭素の濃度が高くなるように二酸化炭素の流量を決定する。
【0072】
フィードホッパ1へはフィードホッパ1を加圧するために、二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20、或いは窒素19の一部が供給され、前記二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20をフィードホッパ1に供給する経路に設置されたフィードホッパ加圧ガス流量調整機構33を制御器39からの指令信号によって調節することにより、前記フィードホッパ1に供給するフィードホッパ加圧用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が調整される。
【0073】
更に、前記フィードホッパ1へは、フィードホッパ1内の燃料を流動化させるために、二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20、或いは窒素19の他の一部が供給され、前記二酸化炭素ホルダ18から二酸化炭素20、或いは窒素19をフィードホッパ1に供給する経路に設置されたフィードホッパ流動化ガス流量調整機構34を制御器39からの指令信号によって調節することにより、前記フィードホッパ1に供給するフィードホッパ流動化用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が調整される。
【0074】
前記二酸化炭素ホルダ18からフィードホッパ1に供給するフィードホッパ加圧用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量は、フィードホッパ1とガス化炉5aのガス化部24との間に配設された差圧検出器56で測定されたフィードホッパ1とガス化炉5aのガス化部24との差圧を前記制御器39に入力し、この制御器39によって差圧の設定圧力と比較して、差圧検出器56で測定したフィードホッパとガス化炉との差圧47が一定となるように、フィードホッパ加圧ガス流量調整機構33を調節することにより、前記二酸化炭素ホルダ18からフィードホッパ1に供給するフィードホッパ加圧用の二酸化炭素20、或いは窒素19の流量が調整される。
【0075】
そして、ガス化プラントの二酸化炭素回収設備にトリップが生じた場合や、ガス化プラントのガス化炉5aの起動時の場合など、二酸化炭素回収設備で二酸化炭素を回収できない場合は、二酸化炭素の供給から切り替えて、空気分離設備3から二酸化炭素ホルダ18に供給した窒素19を、ガス供給系統20bを通じてフィードホッパ1にフィードホッパ加圧、及び流動化ガスとして供給するように構成している。
【0076】
そしてガス化プラントが通常運転時に二酸化炭素回収設備で二酸化炭素が回収されている場合は、フィードホッパ1のフィードホッパ加圧、及び流動化ガスとして前記二酸化炭素ホルダ18からフィードホッパ1に二酸化炭素20を供給する。
【0077】
ガス化プラントが通常運転時はフィードホッパ1のフィードホッパ加圧、及び流動化ガスに二酸化炭素ホルダ18から供給される二酸化炭素20を用いると、二酸化炭素とチャーとのガス化反応が促進されるため、ガス化炉5aで使用される酸化剤4の使用量を低減できる。
【0078】
このため空気分離設備3の動力を低減することが可能である。なお図示していないが、チャー用のフィードホッパについても同様の方法で加圧及び流動化に必要な二酸化炭素、或いは窒素19の流量が制御される。
【0079】
ガス化炉5aに供給した二酸化炭素は、ガス化炉5aの下流側の二酸化炭素吸収設備13、及び二酸化炭素再生設備14によって回収され、回収された二酸化炭素の一部は、再度、ガス化炉5aに投入される構成となっている。
【0080】
本実施例によれば、炭素系燃料をガス化炉でガス化して炭素系燃料に含まれた水素と一酸化炭素が混合した生成ガスを生成してこの生成ガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の一部をガス化炉に供給してガス化炉の冷ガス効率を向上させるように構成したガス化プラントにおいて、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの原因でトリップした場合に、ガス化炉を停止させずに安定な運転を継続し得るガス化プラントが実現できる。
【0081】
また本実施例によれば、更にガス化炉出口へ回収した二酸化炭素を供給することによって、生成ガス、及び生成ガス中のチャーの温度を低減し、ガス化炉出口部での粒子付着を抑制することができる。
【実施例2】
【0082】
次に本発明の第2実施例であるガス化プラントについて図3を引用して説明する。
【0083】
図3に示した本実施例は、図1及び図2に示した本発明の第1実施例である二酸化炭素を回収するガス化プラントと基本的な構成及び作用は同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0084】
図3に示した本実施例のガス化プラントの制御器で行われるガス化炉5aに設置されたバーナ23に供給する窒素流量の制御例を示したブロック図において、本実施例では、ガス化プラントの二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備3から前記ガスホルダー18に供給した窒素19の一部をガス供給系統20bを通じてガス化炉5aのガス化部24に設置されたバーナ23に二酸化炭素ホルダ18から供給しており、この窒素19のバーナ23への供給に関して、バーナ23に冷却水流路61を通じて冷却水を供給する冷却水温度に基づいてバーナ用窒素流量を制御する方法を図3のブロック図を用いて説明する。
【0085】
図3に示した本実施例のガス化プラントの制御器で行われるバーナ用窒素流量の制御例を示したブロック図において、本実施例では、バーナ23に冷却水を供給する冷却水流路61に設置したバーナ冷却水温度検出器31で測定されたバーナ冷却水温度32は制御器39に入力され、この制御器39によって前記バーナ冷却水温度検出器31で測定されたバーナ冷却水温度32に基づいてバーナ23に供給する窒素19の流量であるバーナ用窒素流量の値が演算されて決定される。
【0086】
前記制御器39では前記バーナ冷却水温度検出器31でバーナ冷却水温度32を常時計測して、バーナ23へ供給するバーナ用窒素流量を計算する。
【0087】
制御器39の演算で決定されたバーナ用窒素流量の値に対応する信号が、バーナ用窒素流量調整機構開度指令49として窒素19を二酸化炭素ホルダ18からバーナ23に供給するガス供給系統20bに設置されたバーナ用窒素流量調整機構30へ送られ、バーナ23に二酸化炭素ホルダ18から供給する窒素19の流量が制御される。
【0088】
バーナ23に供給する窒素流量は、バーナ23を冷却するために必要な最小量とすることが望ましい。
【0089】
本実施例によれば、炭素系燃料をガス化炉でガス化して炭素系燃料に含まれた水素と一酸化炭素が混合した生成ガスを生成してこの生成ガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の一部をガス化炉に供給してガス化炉の冷ガス効率を向上させるように構成したガス化プラントにおいて、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの原因でトリップした場合に、ガス化炉を停止させずに安定な運転を継続し得るガス化プラントが実現できる。
【0090】
また本実施例によれば、更にガス化炉のバーナ冷却水温度に応じて少ない窒素供給量で効率よくバーナを冷却することが可能となる。
【実施例3】
【0091】
次に本発明の第3実施例であるガス化プラントについて図4を引用して説明する。
【0092】
図4に示した本実施例は、図1及び図2に示した本発明の第1実施例である二酸化炭素を回収するガス化プラントと基本的な構成及び作用は同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0093】
図4に示した本実施例のガス化プラントの制御器で行われるガス化炉の天井ノズル35に供給される天井ガス流量となる窒素流量を制御する制御例を示したブロック図において、本実施例では、ガス化プラントの二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備3から前記ガスホルダー18に供給した窒素19の一部をガス供給系統20bを通じてガス化炉5aの天井ガスノズル35に供給しており、この窒素19の天井ガスノズル35への供給に関して、ガス化炉5aのガス化部24の天井温度に基づいて天井ガス流量を制御する方法について図4のブロック図を用いて説明する。
【0094】
図4に示した本実施例のガス化プラントの制御器で行われる天井ガス流量の制御例を示したブロック図において、本実施例では、ガス化炉5aのガス化部24の天井に設置した天井温度検出器37で測定された天井温度38は制御器39に入力され、この制御器39によって天井温度検出器37で測定した天井温度38を常時計測して、ガス化炉5aのガス化部24の天井に設置した天井ガスノズル35に、天井ガス流量として二酸化炭素ホルダ18から供給する二酸化炭素20から供給を切り替えられた窒素19の流量を演算する。
【0095】
制御器39の演算で決定された天井ガス流量調整機構開度指令50が窒素19を二酸化炭素ホルダ18から天井ガスノズル35に至る流路に設置された天井ガス流量調整機構36へ送られ、二酸化炭素ホルダ18から天井ガス量として天井ガスノズル35に供給する窒素19の流量が制御される。
【0096】
供給する二酸化炭素流量は、ガス化部24の天井を冷却するために必要な最小量とすることが望ましい。本制御方法を用いれば、ガス化炉のガス化部の天井温度に応じて少ない窒素19の供給量で効率よく天井を冷却することが可能となる。
【0097】
本実施例によれば、炭素系燃料をガス化炉でガス化して炭素系燃料に含まれた水素と一酸化炭素が混合した生成ガスを生成してこの生成ガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の一部をガス化炉に供給してガス化炉の冷ガス効率を向上させるように構成したガス化プラントにおいて、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの原因でトリップした場合に、ガス化炉を停止させずに安定な運転を継続し得るガス化プラントが実現できる。
【0098】
また本実施例によれば、更にガス化炉のガス化部の天井温度に応じて少ない窒素19の供給量で効率よく天井を冷却することが可能となる。
【実施例4】
【0099】
次に本発明の第4実施例であるガス化プラントについて図5を引用して説明する。
【0100】
図5に示した本実施例は、図1及び図2に示した本発明の第1実施例である二酸化炭素を回収するガス化プラントと基本的な構成及び作用は同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0101】
図5に示した本実施例のガス化プラントの制御器で行われるガス化炉のガス化炉出口ガスノズル40に供給される窒素流量を制御する制御例を示したブロック図において、本実施例では、ガス化プラントの二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備3から前記ガスホルダー18に供給した窒素19の一部をガス供給系統20bを通じてガス化炉5aのガス化炉出口ガスノズル40に供給しており、この窒素19のガス化炉出口ガスノズル40への供給に関して、ガス化炉5aのガス化部24のガス化炉出口ガス温度に基づいてガス化炉出口ガス流量を制御する方法について図5のブロック図を用いて説明する。
【0102】
図5に示した本実施例のガス化プラントの制御器で行われるガス化炉出口ガス流量の制御例を示したブロック図において、本実施例では、ガス化炉5aのガス冷却部26の入口に二酸化炭素ホルダ18から導いた窒素19を供給するガス化炉出口ガスノズル40が設置されており、このガス化炉5aのガス冷却部26の入口に設置したガス化炉出口ガス温度検出器42で測定されたガス化炉5aのガス化部24のガス化炉出口ガス温度43は制御器39に入力され、この制御器39によってガス化炉出口ガス温度検出器42で測定したガス化炉出口ガス温度43を常時計測して、ガス化炉5aのガス冷却部26の入口に設置したガス化炉出口ガスノズル40に、二酸化炭素ホルダ18から供給する窒素19の流量を演算する。
【0103】
制御器39の演算で決定されたガス化炉出口ガス流量調整機構開度指令51が窒素19を二酸化炭素ホルダ18からガス化炉出口ガスノズル40に至るガス供給系統20bに設置されたガス化炉出口ガス流量調整機構41へ送られ、二酸化炭素ホルダ18からガス化炉出口ガスノズル40に供給する窒素19の流量が制御され、この結果、ガス化炉出口ガス流量が制御される。
【0104】
本制御方法を用いれば、ガス化炉出口ガス温度に応じて少ない窒素供給量で効率よくガス化炉の生成ガスを冷却することが可能となる。
【0105】
本実施例によれば、炭素系燃料をガス化炉でガス化して炭素系燃料に含まれた水素と一酸化炭素が混合した生成ガスを生成してこの生成ガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の一部をガス化炉に供給してガス化炉の冷ガス効率を向上させるように構成したガス化プラントにおいて、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの原因でトリップした場合に、ガス化炉を停止させずに安定な運転を継続し得るガス化プラントが実現できる。
【0106】
また本実施例によれば、更にガス化炉出口ガス温度に応じて少ない窒素供給量で効率よくガス化炉の生成ガスを冷却することが可能となる。
【実施例5】
【0107】
次に本発明の第5実施例であるガス化プラントについて図6を引用して説明する。
【0108】
図6に示した本実施例は、図1及び図2に示した本発明の第1実施例である二酸化炭素を回収するガス化プラントと基本的な構成及び作用は同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0109】
図6に示した本実施例のガス化プラントの制御器で行われるガス化炉5aの隔壁に供給する窒素流量の制御例を示したブロック図において、本実施例では、ガス化プラントの二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備3から前記ガスホルダー18に供給した窒素19の一部をガス供給系統20bを通じてガス化炉の隔壁部に隔壁ガスノズル44から供給する窒素19の供給に関して、ガス化炉と圧力容器の差圧に基づいて隔壁部に供給するガス量を計算し、隔壁ガス供給量に基づいてガス化炉5aの隔壁に供給する窒素流量を制御する方法について図6のブロック図を用いて説明する。
【0110】
図2に示した本実施例では、ガス化炉5aの外周側の圧力容器27に二酸化炭素ホルダ18から導いた窒素19を供給する隔壁ガスノズル44が設置されており、この隔壁ガスノズル44からガス化炉5aと該ガス化炉5aの外周側の圧力容器27との間に形成された隔壁部28に窒素19の一部を供給している。
【0111】
前記隔壁ガスノズル44から該ガス化炉5aと圧力容器27との間に形成された隔壁部28に供給する隔壁ガス流量となる窒素19の流量は、前記ガス化炉5aのガス化部24と圧力容器27との間に配設された差圧検出器45で測定されたガス化部と圧力容器との差圧46が一定値となるように、二酸化炭素ホルダ18から隔壁ガスノズル44に至るガス供給系統20bに設置された隔壁ガス流量調整機構55を制御器39からの指令信号によって調節することにより、隔壁ガスノズル44から隔壁部28に供給する窒素19の流量を調整している。
【0112】
前記差圧検出器45で測定されたガス化部の圧力と圧力容器の差圧46は制御器39に入力され、この制御器39によって前記差圧検出器45で測定されたガス化部の圧力と圧力容器の差圧46を常時計測して、前記差圧46が一定となるように隔壁ガスノズル44から隔壁部28に供給する窒素19流量を制御する。
【0113】
前記制御器39では前記差圧検出器45で測定したガス化炉と圧力容器の差圧46を常時計測して、前記差圧検出器45で測定したガス化炉と圧力容器の差圧46に基づき前記制御装置39による演算によって前記隔壁ノズル44からガス化炉5aの隔壁部28に供給する隔壁ガスである窒素19の流量を演算する。
【0114】
そして前記制御器39では、演算した隔壁ガスの流量に対する窒素19の流量の演算に基づいて隔壁ガス流量調整機構開度指令54を決定し、前記制御器39の演算で決定された隔壁ガス流量調整機構開度指令54を、二酸化炭素ホルダ18から隔壁ガスノズル44に至るガス供給系統20bに設置された隔壁ガス流量調整機構55に送り、隔壁ガスノズル44からガス化炉5aの隔壁部28内に供給する隔壁ガス流量が制御される。
【0115】
前記隔壁部28は図1のガス化プラントに示したように、熱回収設備6の下部で生成ガス流通部と連通しているため、圧力変動によって隔壁部28内へ硫化水素や水蒸気を含むガスが流入しないように、窒素などの不活性ガスを充填している。
【0116】
隔壁部28の圧力はガス化炉5aのガス化部24に比べて高くなるように運転するため、隔壁部28内のガスが生成ガス連通部を通じて生成ガス中へ導入される。
【0117】
ガス化炉5aの起動時など二酸化炭素を回収できない場合においても同様に、隔壁部28へ二酸化炭素を供給できないため、二酸化炭素の供給から切り替えた窒素19の供給による差圧制御が必要となる。
【0118】
この場合は、空気分離設備3から二酸化炭素ホルダ18に供給した窒素19を、前記二酸化炭素ホルダ18から隔壁ガスノズル44を通じて隔壁部28へ供給し、ガス化部と圧力容器の差圧46が一定となるように制御する。
【0119】
本実施例によれば、炭素系燃料をガス化炉でガス化して炭素系燃料に含まれた水素と一酸化炭素が混合した生成ガスを生成してこの生成ガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の一部をガス化炉に供給してガス化炉の冷ガス効率を向上させるように構成したガス化プラントにおいて、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの原因でトリップした場合に、ガス化炉を停止させずに安定な運転を継続し得るガス化プラントが実現できる。
【0120】
また本実施例によれば、更にガス化炉の隔壁部の二酸化炭素濃度を高くし、生成ガスへ流入する窒素量を低減することができる。
【実施例6】
【0121】
次に本発明の第6実施例であるガス化プラントについて図7を引用して説明する。
【0122】
図7に示した本実施例は、図1及び図2に示した本発明の第1実施例である二酸化炭素を回収するガス化プラントと基本的な構成及び作用は同じであるので、両者に共通した説明は省略し、相違する部分のみ以下に説明する。
【0123】
図7に示した本実施例のガス化プラントの制御器で行われる炭素系燃料のフィードホッパ加圧用窒素流量の制御例を示したブロック図において、本実施例では、ガス化プラントの二酸化炭素回収設備がトリップ時に、二酸化炭素の供給から切り替えて、前記空気分離設備3から前記ガスホルダー18に供給した窒素19の一部をガス供給系統20bを通じてフィードホッパ1に供給しており、この窒素19のフィードホッパ1への供給に関して、フィードホッパとガス化炉の差圧に基づいてフィードホッパ加圧用窒素流量、及びフィードホッパ流動化用窒素流量を制御する方法について図7のブロック図を用いて説明する。
【0124】
本実施例では、フィードホッパ1に二酸化炭素ホルダ18から導いた窒素19の一部を供給するフィードホッパ加圧ガス流量調整機構33と、二酸化炭素ホルダ18から導いた窒素19の他の一部を供給するフィードホッパ流動化ガス流量調整機構34とがそれぞれ設置されている。
【0125】
フィードホッパ1と、ガス化炉5aの外周側の圧力容器27との間にはフィードホッパ1とガス化炉5aの差圧57を計測するフィードホッパとガス化炉の差圧検出器56が設置されており、この検出器56で計測したフィードホッパとガス化炉の差圧57が前記制御器39に入力し、この制御器39による演算によって、フィードホッパ1からガス化炉5aのバーナ23に炭素系燃料2を供給するためのフィードホッパ1の加圧に必要な窒素の流量が決定される。
【0126】
即ち、前記制御器39では、フィードホッパとガス化炉の差圧検出器56で計測したフィードホッパとガス化炉の差圧57を常時計測して、前記差圧検出器56で測定したフィードホッパとガス化炉の差圧57に基づき前記制御装置39による演算によって前記フィードホッパ1の加圧に必要な窒素流量が演算され、この演算に基づいてフィードホッパ加圧ガス流量調整機構開度指令58が決定される。
【0127】
更に前記制御器39では、この制御装置39による演算によって前記フィードホッパ1の流動化に必要な窒素流量が演算され、この演算に基づいてフィードホッパ流動化ガス流量調整機構開度指令59が決定される。
【0128】
そして前記制御器39における演算によって決定されたフィードホッパ加圧ガス流量調整機構開度指令58が前記制御器39からフィードホッパ加圧ガス流量調整機構33へ送られ、前記フィードホッパ加圧ガス流量調整機構33を制御して二酸化炭素ホルダ18からフィードホッパ1に供給する窒素19の流量を調節し、前記フィードホッパ1の加圧に必要なフィードホッパ加圧ガス量を供給するように制御する。
【0129】
また制御器39における演算によって決定されたフィードホッパ流動化ガス流量調整機構開度指令59が前記制御器39からフィードホッパ流動化ガス流量調整機構34へ送られ、前記フィードホッパ流動化ガス流量調整機構34を制御して二酸化炭素ホルダ18からフィードホッパ1に供給する窒素19の流量を調節し、前記フィードホッパ1のフィードホッパの流動化に必要なフィードホッパ流動化ガス量を供給するように制御する。
【0130】
また、ガス化炉5aの起動時などガス化プラントの二酸化炭素回収設備によって二酸化炭素を回収できない場合も、フィードホッパ1へ二酸化炭素を供給できないため、窒素19による搬送が必要となる。
【0131】
この場合も上記した本実施例の場合と同様に、空気分離設備3から二酸化炭素ホルダ18に供給した窒素19を、フィードホッパ1に供給し、フィードホッパを加圧、及び流動化できるように制御する。
【0132】
二酸化炭素が回収されている場合は、フィードホッパ1を加圧、及び流動化するガスとして二酸化炭素を供給する。
【0133】
本実施例によれば、炭素系燃料をガス化炉でガス化して炭素系燃料に含まれた水素と一酸化炭素が混合した生成ガスを生成してこの生成ガスから二酸化炭素を回収し、回収した二酸化炭素の一部をガス化炉に供給してガス化炉の冷ガス効率を向上させるように構成したガス化プラントにおいて、生成ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素回収設備が何らかの原因でトリップした場合に、ガス化炉を停止させずに安定な運転を継続し得るガス化プラントが実現できる。
【0134】
また本実施例によれば、更にフィードホッパとガス化炉の差圧と回収二酸化炭素流量に応じて炭素系燃料の供給量を制御して、効率よく炭素系燃料をフィードホッパからガス化炉に搬送することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、二酸化炭素の排出を抑制するガス化プラントに適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
1:フィードホッパ、2:炭素系燃料、3:空気分離設備、4:酸化剤、5:ガス化設備、5a:ガス化炉、6:熱回収設備、7:脱塵設備、8:チャー、9:水洗塔、10:COS転化器、11:硫化水素除去設備、12:シフト反応器、13:二酸化炭素吸収設備、14:二酸化炭素再生設備、15:圧縮機、16:冷却器、17:液化貯蔵装置、18:二酸化炭素ホルダ、19:窒素、19a:窒素ガス供給系統、20:二酸化炭素、20a:ガス供給系統、20b:ガス供給系統、21:生成ガスリサイクル設備、22:リサイクルした生成ガス、23:バーナ、24:ガス化部、25:スラグ回収部、26:ガス冷却部、27:圧力容器、28:隔壁部、29:チャーバーナ、30:バーナ用二酸化炭素流量調整機構、31:バーナ冷却水温度検出器、32:バーナ冷却水温度、33:フィードホッパ加圧ガス流量調整機構、34:フィードホッパ流動化ガス流量調整機構、35:天井ガスノズル、36:天井ガス流量調整機構、37:天井温度検出器、38:天井温度、39:制御器、40:ガス化炉出口ガスノズル、41:ガス化炉出口ガス流量調整機構、42:ガス化炉出口ガス温度検出器、43:ガス化炉出口ガス温度、44:隔壁ガスノズル、45:差圧検出器、46:ガス化部と圧力容器の差圧、49:バーナ用二酸化炭素流量調整機構開度指令、50:天井ガス流量調整機構開度指令、51:ガス化炉出口ガス流量調整機構開度指令、54:隔壁ガス流量調整機構開度指令、55:隔壁ガス流量調整機構、56:フィードホッパとガス化炉の差圧検出器、57:フィードホッパとガス化炉の差圧、58:フィードホッパ加圧ガス流量調整機構開度指令、59:フィードホッパ流動化ガス流量調整機構開度指令、61:冷却水流路、71:流量調節弁、72:流量調節弁、75:トリップ信号。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7