特許第5863531号(P5863531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5863531発泡用ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂発泡シート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863531
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】発泡用ポリエチレン系樹脂組成物及びポリエチレン系樹脂発泡シート
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20160202BHJP
【FI】
   C08J9/04 101
   C08J9/04CES
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-74701(P2012-74701)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-203886(P2013-203886A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2014年10月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002440
【氏名又は名称】積水化成品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】川守田 祥介
(72)【発明者】
【氏名】諌山 顕
(72)【発明者】
【氏名】田積 皓平
【審査官】 松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−052038(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0120902(US,A1)
【文献】 特開平08−072127(JP,A)
【文献】 特開2010−260229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密度が0.93〜0.97g/cm3190℃での溶融張力が5〜7cN、曲げ弾性率が730〜950MPa及びメルトフローレイトが0.2〜4g/10分である高溶融張力ポリエチレンと、密度が0.94〜0.97g/cm3190℃での溶融張力が0.5〜3cN、曲げ弾性率が850〜1200MPa及びメルトフローレイトが2〜4.4g/10分である低溶融張力ポリエチレンとを含み、密度が0.94〜0.97g/cm3メルトフローレイトが0.2〜3g/10分190℃での溶融張力が4〜10cN及び曲げ弾性率が800〜1500MPaであることを特徴とする発泡用ポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
高溶融張力ポリエチレンの密度が0.94〜0.97g/cm3であることを特徴とする請求項1に記載の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
高溶融張力ポリエチレン100重量部と、低溶融張力ポリエチレン25〜400重量部とを含むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
ASTM D6866によって測定された植物度が5%以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させてなる発泡シートであって、見掛け密度が0.2〜0.8g/cm3、厚みが0.5〜1.5mm、純曲げ試験における曲げかたさが75〜150gf・cm2/cm、曲げ回復率が15〜35gf・cm/cm、120℃における加熱寸法変化率が−2〜2%であることを特徴とするポリエチレン系樹脂発泡シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物及びこれを用いて得られたポリエチレン系樹脂発泡シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、密度が0.94g/cm3以上である密度の高いポリエチレンは、耐熱性、耐寒性、機械的強度及び耐薬品性に優れていることから、様々な用途に用いられており、更に、断熱性、柔軟性及び緩衝性を付与するために、密度の高いポリエチレンを発泡させた発泡体も一部実用化されている。
【0003】
ポリエチレン系樹脂は結晶性樹脂であることから、ポリエチレン系樹脂の物理特性は融点を境に顕著に変化する。具体的には、ポリエチレン系樹脂は、融点未満の温度から加熱していくと、融点よりも高い温度にて急激に弾性率が低下し、溶融粘度が急激に低下する一方、ポリエチレン系樹脂は、融点よりも高い温度から冷却していくと、融点未満の温度で急激に結晶を生じて溶融粘度が急激に上昇し、ポリエチレン系樹脂を発泡に適した溶融粘度とするには、融点近傍の狭い領域にて温度調整をしなければならない。
【0004】
ポリエチレン系樹脂の中でも密度が0.94g/cm3以上である密度の高いポリエチレンは、その分子鎖に分岐が少ないために溶融時の粘度が非常に低い上に結晶性が高く且つ結晶化する速度も速いために、発泡に適した溶融粘度とするためには、更に狭い領域にて温度調整を行う必要がある。従って、密度が0.94g/cm3以上である密度の高いポリエチレンを発泡させて独立気泡率の高い発泡体を製造するのは非常に困難であった。
【0005】
密度が0.94g/cm3以上である密度の高いポリエチレンの発泡シートが一部実用化されており、特許文献1には、見掛け密度70g/L〜350g/L、連続気泡率40%以下のポリエチレン系樹脂押出発泡シートであって、該発泡シートを構成するポリエチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率が300MPa以上であり、該樹脂組成物の190℃での溶融張力(A)が15mN〜400mN、且つ前記溶融張力(A)と該樹脂組成物のMFR(B:g/10分)の積(A×B)の値が100以上であるポリエチレン系樹脂押出発泡シートが開示されている。
【0006】
しかしながら、上記ポリエチレン系樹脂押出発泡シートは、実質的に密度が0.94g/cm3以上である密度の高いポリエチレンに、密度が0.93g/cm3未満の低密度ポリエチレンを混合することによって作製されているため、得られるポリエチレン系樹脂押出発泡シートは曲げ強度などの機械的強度が低いと共に耐熱性も劣るという問題点を有する。
【0007】
又、地球温暖化などの環境問題から、植物由来の原料からなる熱可塑性樹脂の開発も行われてきており、ポリエチレン系樹脂においても植物由来の樹脂が市販されているが、密度の高い植物由来のポリエチレン系樹脂を用いて製造された発泡体は実用化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−43813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、発泡性に優れ、優れた機械的強度及び耐熱性を有する発泡体を製造することができる発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物は、密度が0.93〜0.97g/cm3で且つ190℃での溶融張力が4.5cN以上である高溶融張力ポリエチレンと、密度が0.94〜0.97g/cm3で且つ190℃での溶融張力が0.3〜3cNである低溶融張力ポリエチレンとを含み、密度が0.94〜0.97g/cm3であると共にメルトフローレイトが0.2〜3g/10分で且つ190℃での溶融張力が4cN以上であることを特徴とする。
【0011】
本発明の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物は、密度が0.93〜0.97g/cm3で且つ190℃での溶融張力が4.5cN以上である高溶融張力ポリエチレンと、密度が0.94〜0.97g/cm3で且つ190℃での溶融張力が0.3〜3cNである低溶融張力ポリエチレンとを含有している。高溶融張力ポリエチレンは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。低溶融張力ポリエチレンは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なお、本発明において、ポリエチレン及び発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の密度は、JIS K6922−1:1998に準拠して測定された値をいう。
【0012】
上記高溶融張力ポリエチレン及び低溶融張力ポリエチレンは、所謂、中密度ポリエチレン又は高密度ポリエチレンであって、高溶融張力ポリエチレンは190℃での溶融張力が4.5cN以上であるものが用いられ、低溶融張力ポリエチレンは190℃での溶融張力が0.3〜3cNであるものが用いられる。中密度ポリエチレンの製造方法としては、例えば、BASF法(Tubular法)において過酸化ベンジル(BPO)を重合開始剤として用いて約500atm(50.7MPa)、115〜120℃にてエチレンを重合する製造方法が挙げられる。高密度ポリエチレンの製造方法としては、例えば、CrO3/SiO2・Al23を用いて30〜40atm(3.0〜4.1MPa)、100〜170℃でエチレンを重合する製造方法、MoO3/γ−Al23を用いて70atm(7.1MPa)、230〜270atmでエチレンを重合する製造方法、チグラー触媒を用いて常圧〜10atm、60〜80℃でエチレンを重合する製造方法などが挙げられる。
【0013】
高溶融張力ポリエチレンの密度は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物から得られたポリエチレン系樹脂発泡体の曲げ強度などの機械的強度及び耐熱性が低下するので、0.93〜0.97g/cm3に限定され、0.94〜0.97g/cm3が好ましい。
【0014】
高溶融張力ポリエチレンの190℃における溶融張力は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の溶融張力が低くなり、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物が発泡時に破泡するので、4.5cN以上に限定され、高すぎると、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の押出機における混練性が低下して発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の発泡性が低下することがあるので、4.5〜10cNが好ましく、5〜7cNがより好ましい。
【0015】
本発明において、ポリエチレン及び発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の190℃における溶融張力は、下記の要領で測定された値をいう。ポリエチレン又は発泡用ポリエチレン系樹脂組成物からなる試料を垂直に起立状態に配設された内径が15mmのシリンダー内に収容した上で190℃にて5分間に亘って加熱して溶融する。しかる後、シリンダー内にその上部からピストンを挿入し、シリンダー内の溶融状態の試料をピストンでシリンダーの下端に設けたキャピラリー(ダイ径:2.095mm、ダイ長さ:8mm、流入角度:90°(コニカル))から押出速度0.0676mm/sの一定速度で押出して紐状体を得た。この押出された紐状体をキャピラリーの下方に配設した張力検出プーリーに通過させた後に巻取りロールを用いて巻取り、巻取りはじめの初速を3.447mm/sとし、その後に加速度を13.1mm/s2とし、徐々に巻取り速度を大きくし、張力検出プーリーによって観察される張力が急激に低下した時の巻取り速度を「破断点速度」とし、この破断点速度が観察されるまでの間に観測された張力のうちの破断点速度直前の張力の極大値と極小値の相加平均値を「ポリエチレン又は発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の190℃における溶融張力」とする。なお、ポリエチレン及び発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の190℃における溶融張力は、例えば、チアスト社から商品名「ツインボアキャピラリーレオメーター Rheologic 5000T」にて市販されている試験機を用いて測定することができる。
【0016】
高溶融張力ポリエチレンのメルトフローレイトは、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の押出機による混練性が低下することがあり、高いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物から得られたポリエチレン系樹脂発泡体の曲げ強度などの機械的強度及び耐熱性が低下することがあるので、0.1〜5g/10分が好ましく、0.2〜4g/10分がより好ましい。
【0017】
本発明において、ポリエチレン及び発泡用ポリエチレン系樹脂組成物のメルトフローレイトは、JIS K7210に準拠して、温度190℃、荷重2.16kgf(21.18N)の条件下で測定された値をいう。
【0018】
高溶融張力ポリエチレンの曲げ弾性率は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させて得られるポリエチレン系樹脂発泡体の曲げ強度などの機械的強度が低下することがあり、高いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させて得られるポリエチレン系樹脂発泡体の成形性が低下することがあるので、700〜1500MPaが好ましく、730〜1200MPaがより好ましい。
【0019】
なお、本発明において、ポリエチレン及び発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率は下記の要領で測定される。先ず、ポリエチレン又は発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を押出機に供給して230℃にて溶融混練して押出機から吐出量5kg/hrにてストランド状に押出し、得られたストランド状の押出物を水中に供給して冷却した後にペレタイザーを用いて裁断してペレット化した。得られたペレットを80℃にて4時間に亘って真空乾燥した。真空乾燥したペレットを射出成形機に供給して193℃にて2分間に亘って加熱した後、射出成形金型に射出して縦80mm×横10mm×高さ4mmの直方体形状の試験片を製造する。この試験片を用いてJIS K7171に準拠してポリエチレン及び発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の曲げ弾性率を測定することができる。
【0020】
低溶融張力ポリエチレンの密度は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物から得られたポリエチレン系樹脂発泡体の曲げ強度などの機械的強度及び耐熱性が低下するので、0.94〜0.97g/cm3に限定され、0.95〜0.97g/cm3が好ましい。
【0021】
低溶融張力ポリエチレンの190℃における溶融張力は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の溶融張力を向上させることができず、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の発泡性が低下し、高いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の溶融伸びが低下して破泡が生じるので、0.3〜3cNに限定され、0.5〜2cNが好ましい。
【0022】
低溶融張力ポリエチレンのメルトフローレイトは、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の押出機による混練性が低下することがあり、高いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物から得られたポリエチレン系樹脂発泡体の曲げ強度などの機械的強度及び耐熱性が低下することがあるので、1〜6g/10分が好ましく、2〜5g/10分がより好ましい。
【0023】
低溶融張力ポリエチレンの曲げ弾性率は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させて得られるポリエチレン系樹脂発泡シートの曲げ強度などの機械的強度が低下することがあり、高いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させて得られるポリエチレン系樹脂発泡シートの成形性が低下することがあるので、800〜1500MPaが好ましく、850〜1200MPaがより好ましい。
【0024】
高溶融張力ポリエチレン及び低溶融張力ポリエチレンの190℃における溶融張力は、重量平均分子量又は分岐度を制御することによって調整することができる。具体的には、高溶融張力ポリエチレンの190℃における溶融張力は、重量平均分子量を大きくすることによって大きくなる傾向にあり、分岐度を高くすることによって大きくなる傾向にある。
【0025】
高溶融張力ポリエチレン及び低溶融張力ポリエチレンの曲げ弾性率は、重量平均分子量又は結晶化度によって調整することができる。具体的には、ポリエチレンの曲げ弾性率は、重量平均分子量を大きくすると高くなる傾向にあり、結晶化度を高くすると高くなる傾向にある一方、重量平均分子量を小さくすると低くなる傾向にあり、結晶化度を低くすると低くなる傾向にある。
【0026】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物全体のメルトフローレイトは、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の押出機による混練性が低下することがあり、高いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させて得られるポリエチレン系樹脂発泡シートの曲げ強度などの機械的強度が低下することがあるので、0.2〜3g/10分に限定され、0.3〜2.5g/10分が好ましい。
【0027】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物全体の190℃における溶融張力は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物が破泡して発泡しない虞れがあるので、4cN以上に限定され、高すぎても、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の発泡性が低下して低密度なポリエチレン系樹脂発泡体を得ることができない虞れがあるので、4〜10cNが好ましく、5〜9cNがより好ましい。
【0028】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物全体の曲げ弾性率は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させて得られるポリエチレン系樹脂発泡体の曲げ強度などの機械的強度が低下することがあり、高いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させて得られるポリエチレン系樹脂発泡体の成形性が低下することがあるので、800〜1500MPaが好ましく、850〜1300MPaがより好ましく、900〜1200MPaが特に好ましい。
【0029】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物全体の密度は、低いと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物から得られたポリエチレン系樹脂発泡体の曲げ強度などの機械的強度及び耐熱性が低下するので、0.94〜0.97g/cm3に限定され、0.95〜0.97g/cm3がより好ましい。
【0030】
低溶融張力ポリエチレンの全部又は一部に、植物由来の原料を用いて製造された低溶融張力ポリエチレンを用いることが好ましく、高溶融張力ポリエチレンの全部又は一部に、植物由来の原料を用いて製造された高溶融張力ポリエチレンを用いることが好ましい。なお、植物由来の原料を用いて製造された低溶融張力ポリエチレンは、例えば、Braskem社から商品名「SGE7252」「SHD7255LSL」にて市販されている。植物由来の原料を用いて製造された高溶融張力ポリエチレンは、例えば、Braskem社から商品名「SGF4960」にて市販されている。
【0031】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物全体のASTM D6866によって測定された植物度は5%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、50%以上であることが特に好ましい。このように植物度の高い発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を用いることによって地球環境の保護を図ることができる。
【0032】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物中における低溶融張力ポリエチレンの含有量は、少ないと、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の発泡性が向上しないことがあり、多すぎても、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の発泡性が低下するので、高溶融張力ポリエチレン100重量部に対して25〜400重量部が好ましく、30〜350重量部がより好ましい。
【0033】
上述のように、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物中に高溶融張力ポリエチレン及び低溶融張力ポリエチレンを含有させ、且つ、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物全体のメルトフローレイトを0.2〜3g/10分に、190℃での溶融張力を4cN以上とすることによって、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の発泡性を向上させることができる。
【0034】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の溶融張力は、動的粘弾性測定にて得られた貯蔵弾性率と相関しており、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の発泡性を貯蔵弾性率曲線を用いて具体的に説明する。
【0035】
図1に示したように、上述の二種類の溶融張力を有するポリエチレンを含有していない場合、例えば、低溶融張力ポリエチレンのみを含有している従来の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の貯蔵弾性率曲線は点線で表される一方、本発明の如く、上述の二種類の溶融張力を有するポリエチレンを含有している発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の貯蔵弾性率曲線は実線で表される。
【0036】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させる際に発泡に適した貯蔵弾性率は網掛けで示した範囲となるが、従来の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物では、発泡に適した貯蔵弾性率をとる温度範囲が狭いのに対して、本発明の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物では、発泡に適した貯蔵弾性率をとる温度範囲が広く、その結果、本発明の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させるにあたって、発泡に適した温度領域を広くとることができ、本発明の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を適切な温度条件下にて発泡させて独立気泡率の高い発泡体を容易に製造することができる。
【0037】
なお、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の貯蔵弾性率は下記の要領で測定することができる。先ず、発泡用ポリエチレン樹脂組成物を20kPa以下の減圧下にて3時間に亘って乾燥する。この発泡用ポリエチレン樹脂組成物を190℃に加熱した熱プレス機を用いて3分間に亘って溶融した後、10MPa圧力で2分間加圧し、その後冷却することによってφ25mm、厚み3mmの円盤状の試験片を成形する。
【0038】
次に、得られた試験片を190℃に加熱された粘弾性測定装置内のφ25mmの測定プレート上に載置して窒素雰囲気下にて5分間に亘って放置して溶融させる。
【0039】
続いて、直径が25mmの平面円形状の押圧板を用意し、この押圧板を用いて測定プレート上の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を押圧板と測定プレートとの対向面間の間隔が1mmとなるまで上下方向に押圧する。そして、押圧板の外周縁からはみ出した発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を除去した後、5分間に亘って放置する。
【0040】
しかる後、歪み1%、周波数1Hz、降温速度2℃/分、測定間隔30秒の条件下にて、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の動的粘弾性測定を行って貯蔵弾性率を測定する。次に、横軸を温度とし、縦軸を貯蔵弾性率として貯蔵弾性率曲線を描く。なお、貯蔵弾性率曲線を描くにあたっては、測定温度を基準として互いに隣接する測定値同士を直線で結べばよい。なお、粘弾性測定装置としては、例えば、Anton Paar社から商品名「PHYSICA MCR301」にて市販されている試験機を用いることができる。
【0041】
そして、本発明の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物は、高溶融張力ポリエチレン及び低溶融張力ポリエチレンを押出機を用いるなどの汎用の混練方法を用いて溶融混練することによって製造することができる。
【0042】
本発明の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を用いてポリエチレン系樹脂発泡体を製造する方法を説明する。発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を用いて発泡体を製造する方法は、汎用の方法を用いることができ、例えば、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を押出機に供給して化学発泡剤又は物理発泡剤などの発泡剤の存在下にて溶融混練し押出機から押出発泡させてポリエチレン系樹脂発泡シートなどのポリエチレン系樹脂発泡体を製造する方法(押出発泡法)などが挙げられる。
【0043】
又、化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウムなどが挙げられる。なお、化学発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0044】
物理発泡剤は、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ヘキサンなどの飽和脂肪族炭化水素、ジメチルエーテルなどのエーテル類、塩化メチル、1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、モノクロロジフルオロメタンなどのフロン、二酸化炭素、窒素などが挙げられ、ジメチルエーテル、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、二酸化炭素が好ましく、プロパン、ノルマルブタン、イソブタンがより好ましく、ノルマルブタン、イソブタンが特に好ましい。なお、物理発泡剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0045】
押出機には気泡調整剤が供給されることが好ましい。このような気泡調整剤としては、ポリテトラフルオロエチレン粉末などのフッ素系樹脂粉末、タルク、マイカなどの無機粉末、アゾジカルボンアミド、ジニトロソペンタメチレンテトラミン、ヒドラゾイルジカルボンアミド、重炭酸ナトリウム、クエン酸などの化学発泡剤を用いることができ、気泡の微細化効果が高いことから、重炭酸ナトリウムとクエン酸との併用が好ましい。
【0046】
ポリエチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度は、小さいと、発泡体の機械的強度が低下することがあり、大きいと、発泡体の軽量性が低下することがあるので、0.2〜0.8g/cm3が好ましい。なお、発泡体の見掛け密度は、発泡体の重量を発泡体の見掛け体積で除した値をいう。
【0047】
ポリエチレン系樹脂発泡シートの厚みは、薄いと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの機械強度が低下することがあり、大きいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの軽量性が低下することがあるので、0.5〜1.5mmが好ましく、0.6〜1.5mmがより好ましい。
【0048】
ポリエチレン系樹脂発泡シートの純曲げ試験における曲げかたさは、小さいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの機械強度が低下することがあり、大きいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの成形性が低下することがあるので、75〜150gf・cm2/cmが好ましい。
【0049】
ポリエチレン系樹脂発泡シートの曲げ回復率は、小さいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの機械強度が低下することがあり、大きいと、ポリエチレン系樹脂発泡シートの成形性が低下することがあるので、15〜35gf・cm/cmが好ましい。
【0050】
なお、ポリエチレン系樹脂発泡シートの純曲げ試験における曲げかたさ及び曲げ回復率は下記の要領で測定された値をいう。ポリエチレン系樹脂発泡シートの任意の部分から縦100mm×横90mmの平面長方形状の試験片Aを3枚切り出す。なお、3枚の試験片Aの縦方向が同一方向となるようにする。
【0051】
更に、ポリエチレン系樹脂発泡シートの任意の部分から縦100mm×横90mmの平面長方形状の試験片Bを3枚切り出す。なお、3枚の試験片Bの縦方向が同一方向となるように且つ試験片Bの縦方向と試験片Aの縦方向とが直交するように調整する。
【0052】
大型純曲げ試験機を用意し、大型純曲げ試験機の固定アームと可動アームとで各試験片A,Bの縦方向の両端部のそれぞれをアーム間距離40mmにて把持し、曲率0.2cm-1、曲げ速度0.1cm-1/secの測定条件にて試験片A,Bの表面方向及び裏面方向にそれぞれ一回づつ可動アームを動かし、検知したトルクから各試験片A,Bの曲げかたさと曲げ回復率を算出し、各試験片A,Bの曲げかたさ及び曲げ回復率のそれぞれの相加平均値を、発泡体の曲げかたさ及び曲げ回復率とした。なお、大型純曲げ試験機は、例えば、カトーテック社から商品名「KES FB2−L」にて市販されている試験機を用いることができる。
【0053】
発泡用ポリエチレン系樹脂組成物は優れた耐熱性を有していることから、この発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を用いて得られた発泡シートも優れた耐熱性を有している。発泡シートの120℃における加熱寸法変化率は、−2〜2%が好ましい。
【0054】
なお、発泡シートの120℃における加熱寸法変化率は下記の要領で測定された値をいう。発泡シートの加熱寸法変化率はJIS K6767に準拠して測定される。発泡シートの任意の部分から一辺が150mmの平面正方形状の試験片を3枚切り出す。
【0055】
次に、試験片の中央部に、任意の一辺に平行な長さ100mmの直線を三本、互いに平行に描くと共に、上記直線に直交し且つ長さ100mmの直線を三本、互いに平行に描く。試験片を120℃に加熱されたオーブン中に22時間に亘って放置した後にオーブンから取り出し、試験片を23℃にて1時間に亘って放置した後、試験片上に描いた各直線の長さL(mm)を測定し、直線毎に下記式に基づいて変化率を算出し、6本の直線の変化率の相加平均値を試験片の変化率とする。そして、3枚の試験片の変化率の相加平均値を発泡シートの120℃における加熱寸法変化率とする。
変化率(%)=100×(L−100)/100
【発明の効果】
【0056】
本発明の発泡用ポリエチレン系樹脂組成物は、上述の如き構成を有しているので、優れた発泡性を有し且つ曲げ強度などの機械的強度及び耐熱性に優れており、この発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を用いて得られた発泡体は、優れた機械的強度及び耐熱性を有し、且つ、高発泡倍率に発泡させることができるので軽量性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】発泡用ポリエチレン系樹脂組成物の温度と貯蔵弾性率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本実施例に何ら限定されるものでない。
【0059】
(実施例1〜6、比較例1、2)
第一押出機の先端に第二押出機が接続されてなるタンデム型押出機を用意した。表1に示した所定量の低溶融張力ポリエチレン(A)(Braskem社製 商品名「SGE7252」)、低溶融張力ポリエチレン(B)(Braskem社製 商品名「SHD7255LSL」)、高溶融張力ポリエチレン(A)(東ソー社製 商品名「TOSOH−HMS CK57」)、高溶融張力ポリエチレン(B)(東ソー社製 商品名「TOSOH−HMS CK38」)、高溶融張力ポリエチレン(C)(Braskem社製 商品名「SGF4960」)、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン社製 商品名「LF128」)、及び、重炭酸ナトリウムとクエン酸のマスターバッチ(大日精化社製 商品名「ファインセルマスターPO217K」)を第一押出機に供給して溶融混練して発泡用ポリエチレン系樹脂組成物とする共に、第一押出機にポリエチレンの総量100重量部に対して表1に示した量となるようにブタンを圧入し、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物中にブタンを均一に分散させた。
【0060】
なお、表1では、「低溶融張力ポリエチレン」を「低溶融張力PE」と、「高溶融張力ポリエチレン」を「高溶融張力PE」と表記した。
【0061】
そして、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を第一押出機から第二押出機に連続的に供給して、第二押出機にて発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を163℃に冷却した後、第二押出機の先端に取り付けたサーキュラダイから吐出量30kg/時間にて円筒状に押出発泡させて円筒状体を製造した。なお、サーキュラダイは、その内ダイの外形が70mm、スリットクリアランスが0.4mmであった。
【0062】
得られた円筒状体を徐々に拡径した上で、外形が206mmで且つ長さが400mmの円柱状の冷却マンドレルに供給して、マンドレルの外周面に円筒状体の内周面を接触させることによって円筒状体を冷却した後、この円筒状体をその押出方向に連続的に内外周面間に亘って切断、展開してポリエチレン系樹脂発泡シートを得た。
【0063】
(比較例3)
低溶融張力ポリエチレンを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてポリエチレン系樹脂発泡シートを製造した。
【0064】
低溶融張力ポリエチレン(A),(B)及び高溶融張力ポリエチレン(A)〜(C)の密度、190℃での溶融張力、曲げ弾性率、メルトフローレイト及び植物度を表1に示した。
【0065】
上記ポリエチレン系樹脂発泡シートの製造方法において、第一押出機に重炭酸ナトリウムとクエン酸のマスターバッチ及びブタンを供給せず、発泡用ポリエチレン系樹脂組成物を発泡させなかったこと以外は実施例1〜6及び比較例1〜3のそれぞれと同様の要領でポリエチレン系非発泡シートを製造した。
【0066】
このポリエチレン系非発泡シートを用いて発泡用ポリエチレン系樹脂組成物のメルトフローレイト、190℃での溶融張力、曲げ弾性率、密度及び植物度を測定し、その結果を表1に示した。
【0067】
得られたポリエチレン系樹脂発泡シートの見掛け密度、厚み、純曲げ試験における曲げかたさ、曲げ回復率及び120℃における加熱寸法変化率を上述の要領で、連続気泡率及び外観を下記の要領で測定し、その結果を表1に示した。
【0068】
(連続気泡率)
ポリエチレン系樹脂発泡シートの連続気泡率は、ASTM D2856−87に準拠して測定された値をいう。具体的には、ポリエチレン系樹脂発泡シートから該ポリエチレン系樹脂発泡シートの厚み方向の全長に亘って切り込むことによって一辺25mmの平面正方形状のシート状試験片を複数枚切り出し、この複数枚の試験片を厚み方向に全体の厚みが25mm程度となるように重ね合わせて積層体を形成した。
【0069】
次に、上記積層体の見掛け体積をノギスを用いて正確に測定した上で、空気比較式比重計(東京サイエンス社製 商品名「空気比較式比重計1000型」)を用いて1−1/2−1気圧法によって体積を測定し、下記式により連続気泡率を算出した。
連続気泡率(%)
=100×(見掛け体積−空気比較式比重計による積層体の体積)/ 見掛け体積
【0070】
(外観)
ポリエチレン系樹脂発泡シートを目視観察して下記基準に基づいて評価した。
○・・・ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面に皺は発生していなかった。
×・・・ポリエチレン系樹脂発泡シートの表面に皺が発生していた。
【0071】
【表1】
図1