【実施例1】
【0022】
先ず、本発明の実施例1によるサーモアクチュエータが、排熱回収装置に搭載された例を図面に基づき説明する。
図1に示されるように、サーモアクチュエータ10は、本体としてのケース20と、このケース20の一端20aに取付けられワックス41が収納されている有底筒状のワックス収納部40と、このワックス収納部40を囲うようにしてケース20に取付けられていると共に媒体が流される媒体容器50と、ケース20に収納されワックス41が所定の温度を超えて膨張することによりケース20の他端20bに向かって前進するピストン60と、このピストン60に接続されケース20の他端20bから一部が露出しているロッド70と、このロッド70のうちケースから露出した部位を覆い可撓性を有するブーツ90と、ケース20に収納されロッド70を後退する方向に付勢する戻しばね15と、この戻しばね15の一端が着座する座16と、この座16によって抑えられていると共にロッド70を進退可能に支持しているスリーブ80と、ロッド70の先端に取付けられているキャップ部材18とからなる。
【0023】
ケース20は、2つの部材からなり、ワックス収納部40を支持する支持部21に、筒状のシリンダ部22が取付けられている。
【0024】
支持部21には、中心軸PCに沿ってガイド部30が一体的に形成されており、ガイド部30の内周に開けられている孔31にピストン60が収納されている。即ち、ピストン60は、ガイド部30によって進退方向がガイドされている。また、ピストン60の中心軸PCに、ガイド部30及びロッド70の中心軸が一致している。
【0025】
シリンダ部22の先端には、径が狭められている口部24が形成されている。この口部24にスリーブ80が嵌合されている。
【0026】
ワックス収納部40に収納されるワックス41は、温度が上がることによって膨張する性質を有する。ワックス収納部40を塞ぐようにして、ワックス41の膨張及び収縮によって変形するダイヤフラム42が取付けられている。
【0027】
孔31は、ダイヤフラム42が配置される部位において、ワックス収納部40の内径と略同一の径に形成されている。孔31は、ダイヤフラム42が配置されている部位から先端に向かって連続的に縮径され、ピストン60の外径と略同一の径まで縮径される。ピストン60の外径と略同一の径まで縮径された孔31は、同じ径を保ちながら先端に向かって直線状に形成されている。
【0028】
孔31の内部において、ワックス収納部40とピストン60の間の領域には、ダイヤフラム42が変形することによりピストン60を押すための流体43が充填されている。
【0029】
媒体容器50は、排熱回収装置の熱回収器に接続されている。熱回収器を通過した媒体(例えば、冷却水)が、媒体導入口51から導入され、媒体排出口52から排出される。媒体容器50内を流れる際に、媒体がワックス収納部40の外周に接触し、媒体の温度がワックス収納部40に伝わる。
【0030】
ピストン60は、流体43によって押されるゴム製のラバーピストン61と、このラバーピストン61に一体的に形成されている樹脂製のプレート62と、このプレート62に一体的に形成されロッド70を押すピストン本体63とからなる。ピストン本体63には、流体43のロッド70側への漏れを防止するためのシール部材64が取付けられている。
【0031】
ロッド70は、ガイド部30を囲っているリテーナ部71によって、略円柱状のロッド本体72が支持される構成とされている。
リテーナ部71には、外周に向かって突出している鍔部74が形成され、この鍔部74が戻しばね15の座になっている。この鍔部74を介して、ロッド70は、図面右側、即ち後退する方向に向かって付勢されている。
【0032】
ロッド本体72の先端には、中心軸PCに向かって凹むロッド溝部75が形成されている。即ち、図に示されるように、ロッド70が後端位置(後退限)にある場合において、ロッド70のうちケース20から露出している部位に、中心軸PCに向かって凹むロッド溝部75が形成されている。
【0033】
スリーブ80は断面視ハット形状に形成される部材であり、中心軸PCに沿って開けられているロッド支持孔81によって、ロッド本体72を進退可能に支持している。また、スリーブ80の先端には、中心軸PCに向かって凹むようにしてスリーブ溝部82が形成されている。さらに、詳細は後述するが、中心軸PCの軸方向に沿って、ケース20の内部とブーツ90の内部とを連通する連通孔83が形成されている。
【0034】
なお、サーモアクチュエータ10を排熱回収装置以外の装置に搭載する際には、媒体容器50に代え、ワックス収納部40の外周をヒータで囲うこともできる。即ち、本発明に係るサーモアクチュエータ10は、媒体の温度により作動するものに限られない。
図2においてブーツ90の詳細を説明する。
【0035】
図2に示されるように、ゴム製のブーツ90の一端(図面右側)には、スリーブ溝部82に嵌合されるスリーブ嵌合部91が形成され、ブーツ90の他端には、ロッド溝部75に嵌合されるロッド嵌合部92が形成されている。スリーブ嵌合部91は、スリーブ溝部82に嵌合されると共に、外周がケース20の口部24によって押圧されている。また、ロッド嵌合部92は、ロッド溝部75に嵌合されると共に、外周がキャップ部材18によって押圧されている
【0036】
ブーツ90の一端に、スリーブ嵌合部91が形成される。また、スリーブ80にスリーブ溝部82が形成されている。このスリーブ溝部82にスリーブ嵌合部91が嵌合されていると共に、ケース20でスリーブ80を囲うことにより、スリーブ嵌合部91を圧縮し、スリーブ溝部82へ押圧する。即ち、ブーツ90の一端はケース20によりスリーブ80に押圧されつつ、スリーブ80に固定されている。
【0037】
加えて、スリーブ嵌合部91をスリーブ溝部82とケース20とによって挟込む構成とすることによって、ブーツ90が周方向(外周側)へ外れることを防止することができる。
【0038】
ブーツ90の他端に形成されているロッド嵌合部92も同様である。即ち、ブーツ90の他端に、ロッド嵌合部92が形成される。また、ロッド70にロッド溝部75が形成されている。このロッド溝部75にロッド嵌合部92が嵌合されていると共に、キャップ部材18でロッド70を囲うことにより、ロッド嵌合部92を圧縮し、ロッド溝部75へ押圧する。即ち、ブーツ90の他端はキャップ部材18によりロッド70に押圧されつつ、ロッド70に固定されている。
【0039】
加えて、ロッド嵌合部92をロッド溝部75とキャップ部材18とによって挟込む構成とすることによって、ブーツ90が周方向(外周側)へ外れることを防止することができる。
【0040】
本発明によれば、ブーツ90を取付けるに当たって、ケース20やキャップ部材18の先端を曲げる必要がない。曲げ工程が不要であるため、工数の低減を図ることができる。従って、組立ての容易なサーモアクチュエータ10ということができる。
【0041】
なお、ブーツ90には、ゴムの他、軟質樹脂等可撓性を有する任意の素材を選択することができる。
図3において、連通孔(
図1、符号83)を詳細に説明する。
【0042】
図3に示されるように、連通孔83は、略半円形状を呈すると共に、ロッド70の外周面に臨むよう複数(本実施例では3個)スリーブ80の内控に形成されている。それぞれの連通孔83は、ロッド70に対して等間隔に形成されている。
【0043】
図1に戻り、連通孔83がロッド70の外周面に臨むように形成されている。連通孔83をロッド70近傍に形成することにより、スリーブ溝部82をロッド支持孔81の近傍に形成することができる。スリーブ溝部82をロッド支持孔81の近傍に形成することにより、スリーブ80の外径を小さくすることができ、スリーブ80を小型化することができる。スリーブ80を小型化することにより、サーモアクチュエータ10全体としても小型化を図ることができる。
ガイド部(
図1、符号30)及びリテーナ(
図1、符号71)について、
図4において詳細を説明する。
【0044】
図4に示されるように、ガイド部30の外周面は、対向して形成されている平坦状の平坦部34,34と、これらの平坦部34,34を繋ぐように形成されている円弧形状の円弧部35,35とからなる。
【0045】
リテーナ部71に形成されたピン挿入孔76,76に、円柱形状のピン101,101が挿入されている。ピン101,101は、それぞれ平坦部34,34に接触している。ピン挿入孔76,76には、ピン101,101の外周の半分が挿入されている。
【0046】
リテーナ部71が図面表裏方向に向かって前進又は後退する際に、ピン101,101は、リテーナ部71と共に移動する。移動する際、ピン101,101は、平坦部34,34上を摺動する。リテーナ部71に対して回転方向に力が加わった場合に、ピン101,101がリテーナ部71と平坦部34,34との間に挟まり、リテーナ部71の回転を防止する。リテーナ部71、即ち、ロッドが回転することを防止する。ロッド70の回転を防止することにより、ロッド70によってブーツ(
図1、符号90)が捩られることを防止し、ブーツの長寿命化を図ることができる。
このようなサーモアクチュエータ10の作用を
図1に戻り説明する。
【0047】
図1に戻り、内燃機関を作動させることにより、排熱回収装置の熱交換器を通過した媒体は、排気ガスによって徐々に温められる。即ち、媒体導入口51から導入される媒体の温度が徐々に高くなる。この媒体の温度は、ワックス収納部40を介してワックス41に伝わり、ワックス41を膨張させる。ワックス41が膨張することにより、ダイヤフラム42が図面左側に向かって突出するように変形する。ダイヤフラム42が変形することにより、流体43が押され、流体43がピストン60を押す。ピストン60に押されることによりロッド70は、戻しばね15の力に抗して前進する。ロッド70が前進するのに合わせて、ブーツ90が伸張する。
【0048】
ロッド70が前進することにより、ロッド70と共にブーツ90が伸張する。伸張した際に、連通孔83を介してケース20内の空気をブーツ90内に取込むことができる。ケース20内の空気をブーツ90内に取込むことにより、ブーツ90が伸張した際に発生する負圧の影響を抑制する。負圧の影響を抑制することにより、ブーツ90の長寿命化を図ることができる。
【0049】
一方、内燃機関を停止させると、熱交換器を通過した媒体の温度が徐々に低下する。媒体の温度が低下することにより、ワックス41が収縮する。ワックス41が収縮することにより、戻しばね15の力によってロッド70は後退する。ロッド70が後退することにより、ピストン60も後退し、ダイヤフラム42も元の形状に戻る。また、ロッド70の後退により、ブーツ90も収縮する。
ブーツ90の取付け方法の一例を
図5以降において説明する。
【0050】
図5(a)に示されるように、まず、スリーブ嵌合部91をスリーブ溝部82に嵌合させると共に、ロッド嵌合部92をロッド溝部75に嵌合させる。
【0051】
図5(b)に示されるように、スリーブ嵌合部91をスリーブ溝部82に嵌合させた状態において、スリーブ嵌合部91とスリーブ溝部82との間には、長さTa1の隙間及びTa2の隙間が存する。即ち、スリーブ嵌合部91とスリーブ溝部82との間に、合計でTa1+Ta2の隙間が存する。
【0052】
次に、
図5(c)に示されるように、ケース20をロッド70の先端側から取付ける。口部24によって、スリーブ嵌合部91を押圧する。
【0053】
図6(a)に示されるように、口部24の基端部24aがいわゆるアール形状(円弧形状)を呈することにより、スリーブ嵌合部91を円滑に変形させることができる。変形させることにより、スリーブ嵌合部91とスリーブ溝部82との間の隙間がTbになる。口部24によって押し潰された分、スリーブ嵌合部91とスリーブ溝部82との間の隙間が小さくなる。即ち、Tb<(Ta1+Ta2)。
【0054】
なお、口部24の基端部24aは、アール形状の他、テーパ形状等にすることもできる。即ち、スリーブ嵌合部91を容易に変形させるための任意の形状に形成することができる。
【0055】
図6(b)に示されるように、ケース20がスリーブ80に取付けられることにより、スリーブ嵌合部91とスリーブ溝部82との間の隙間がほとんどなくなる。即ち、Tb≒0。
【0056】
図6(c)に示されるように、ケース20を取付けたら、キャップ部材18をロッド70の先端側から取付ける。キャップ部材18の先端部18aによって、ロッド嵌合部92を押圧する。
【0057】
図7(a)に示されるように、ロッド嵌合部92をロッド溝部75に嵌合させた状態において、ロッド嵌合部92とロッド溝部75との間には、長さta1の隙間及びta2の隙間が存する。即ち、ロッド嵌合部92とロッド溝部75との間に、合計でta1+ta2の隙間が存する。
【0058】
図7(b)に示されるように、キャップ部材18の先端部18aがテーパ形状を呈することにより、ロッド嵌合部92を円滑に変形させることができる。変形させることにより、ロッド嵌合部92とロッド溝部75との間の隙間がtbになる。キャップ部材18によって押し潰された分、ロッド嵌合部92とロッド溝部75との間の隙間が小さくなる。即ち、tb<(ta1+ta2)。
【0059】
なお、キャップ部材18の先端部18aは、テーパ形状の他、アール形状等にすることもできる。即ち、ロッド嵌合部92を容易に変形させるための任意の形状に形成することができる。
【0060】
図7(c)に示されるように、キャップ部材18がロッド70に取付けられることにより、ロッド嵌合部92とロッド溝部75との間の隙間がほとんどなくなる。即ち、tb≒0。
【0061】
図8に示されるように、キャップ部材18が取付けられることにより、ブーツ90の取付け作業が終了する。
サーモアクチュエータの別実施例について
図9以降において説明する。
【実施例2】
【0062】
次に、本発明の実施例2を図面に基づいて説明する。
図9は実施例2のサーモアクチュエータの断面構成を示し、上記
図1に対応させて表している。
【0063】
図9に示されるように、サーモアクチュエータ110は、ピストン60の中心軸PCに対して、リテーナ部121の中心軸は一致すると共に、ガイド部130の中心軸GCは偏心されている。
【0064】
このように構成されたサーモアクチュエータ110においても、本発明所定の効果を奏する。特に、ロッド120の回転を防止することができる点については、
図10において詳細に説明する。
【0065】
図10(b)に示されるように、ガイド部130の外周に設けられているリテーナ部121の回転中心は、ガイド部130の中心軸GCに一致する。即ち、仮にリテーナ部121を180°回転させると、一点鎖線で示される位置までリテーナ部121が移動する。
【0066】
仮に、ガイド部130の中心軸GCを中心にリテーナ部121を180°回転させると、
図10(a)に示されるように、ロッド120は、一点鎖線で示される位置まで移動する。
【0067】
しかし、ロッド120は、スリーブ80によって進退可能に支持されている。このため、ガイド部130の中心軸GCを中心にリテーナ部(
図10(b)、符号121)を回転させようとした場合に、スリーブ80がロッド120の回転を防止する。即ち、回転しようとしたロッド120は、スリーブ80の内周面に接触し、回転を妨げられる。ロッド120の回転を防止することにより、ロッド120によってブーツ(
図9、符号90)が捩られることを防止し、ブーツの長寿命化を図ることができる。
【0068】
尚、本発明によるサーモアクチュエータは、ブーツを溝部に嵌め込み、次いでケースやキャップ部材を取付けるという取付け方法を例に説明をした。しかし、ケースやキャップ部材を予め取付けておいたものに、ブーツのそれぞれの嵌合部を押込むことによっても組立てることができる。この場合においても本発明所定の効果を得ることができる。即ち、サーモアクチュエータの組立方法は、これらの方法に限定されず、他の組立方法を採用することも差し支えない。