(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の火起こし器は、火種を発生させることを目的とせずに、火起こし操作の体験のみを目的として利用する場合であっても、煙や火種が発生する虞があるために、防火上の制約等によって屋内等で使用を制限される場所での体験には適さなかった。例えば、火起こし操作における煙や火種の発生を抑制するために、火きり板および火きり棒を予め水で濡らしておくことが考えられるが、この場合でも、水がすぐに摩擦熱により蒸発してしまい、結局、煙や火種が発生してしまう。
【0005】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、煙や火種を発生させずに、火起こし操作を体験できる火起こし器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明に係る火起こし器は、
棒状の火きり杵と、前記火きり杵の先端部を底部に押し付けた状態で挿入される凹状の火きり臼を上面部に形成してなる木製の火きり板とからなる火起こし器であって、
前記火きり杵の先端部と前記火きり臼の底部との間に、摩擦を低減させる摩擦低減部材を設けた点にある。
【0007】
上記特徴構成によれば、火きり杵の先端部を火きり臼の底部に向けて押し付けて回転させる火起こし操作において、火きり杵の先端部と火きり臼の底部との間に、火きり杵の構成材料よりも低い摩擦係数を有する摩擦低減部材を設けることで、火きり杵の先端部と火きり臼の底部との間の摩擦熱の発生が抑制されて、火きり臼の底部から木粉が殆ど発生しない上に、火きり臼の底部が摩擦熱により焦げることがなく、煙や火種の発生を防止することができる。
よって、例えば、火気や煙を取り扱うことができない室内などで上記火起こし操作を体験するための教材として利用することができる。
【0008】
本発明に係る火起こし器の更なる特徴構成は、
前記摩擦低減部材が着脱自在に装着されている点にある。
【0009】
上記特徴構成によれば、摩擦低減部材を装着しない状態で上記火起こし操作を行なうことで、火きり杵の先端部と火きり臼の底部との間には充分に大きい摩擦熱が発生する。よって、火きり臼の底部が火きり杵の先端部との摩擦により削れて木粉が発生するとともに、その木粉が充分に大きい摩擦熱により高温に蓄熱し、その高温の木粉を火種として得ることができる。
一方、摩擦低減部材を装着した状態で上記火起こし操作を行なうことで、上述の如く、火きり杵の先端部と火きり臼の底部との間の摩擦熱の発生が抑制されて、火きり臼の底部から木粉が殆ど発生しない上に、火きり臼の底部が摩擦熱により焦げることがなく、煙や火種の発生を防止することができる。
即ち、火気や煙を取り扱うことができない室内などで教材として利用する場合には、火きり杵の先端部に摩擦低減部材を装着した状態で、煙や火種を発生させずに、上記火起こし操作を体験することができ、一方、屋外などで火起こしに利用する場合には、火きり杵の先端部から摩擦低減部材を取り外した状態で上記火起こし操作を行なって、実際に火種を得ることができる。
【0010】
本発明に係る火起こし器の更なる特徴構成は、
前記摩擦低減部材が前記火きり杵の先端部に装着されている点にある。
【0011】
上記特徴構成によれば、摩擦低減部材が火きり杵の先端部に装着されているので、上記火起こし操作において、摩擦低減部材が火きり杵の先端部と火きり臼の底部との間に確実に位置して摩擦熱の発生を抑制するので、火きり臼の底部から木粉が殆ど発生しない上に、火きり臼の底部が摩擦熱により焦げることがなく、煙や火種の発生を防止することができる。
【0012】
本発明に係る火起こし器の更なる特徴構成は、
前記火きり杵の先端部が円筒状又は円柱状に形成され、
前記摩擦低減部材が、前記火きり杵の先端部に螺合される金属製の有頭ネジで構成されている点にある。
【0013】
上記特徴構成によれば、火きり杵の先端部が円筒状又は円柱状に形成されるので、上記火起こし操作において、火きり臼の凹部に火きり杵の先端部を押し込んだ状態で、火きり杵をスムーズに回転させることができる。
また、摩擦低減部材である有頭ネジを火きり杵の先端部に装着しない場合は、上記火きり操作で火きり杵が回転するとき、火きり杵の先端部と火きり臼の底部との接触部において、火きり杵の外周側では周速度が大きく、摩擦熱が効率よく発生して、火種となる木粉を発生させることができる。
ここで、円柱状に形成される場合において、火きり杵の中心側は周速度が小さいために摩擦熱がほとんど発生せず、木粉も発生も少なくなる。よって、火きり杵の中心側は削られず、外周側が木粉の発生に伴って大きく削られる状態となり、先端部の外周側において火きり臼の底部への押圧力を伝えることが阻害されて摩擦熱の発熱効率が低下するが、先端部を円筒状とすることで、周速度の小さい中心側が空洞とされて、周速度の大きい外周側のみで構成されることとなるので、摩擦熱が効率よく発生される状態を維持することができる。
また、摩擦低減部材である有頭ネジを火きり杵の先端部に装着する場合では、火きり杵の先端部を円筒状とすることで、その先端部の円筒部内に有頭ネジの胴部を螺合させる形態で有頭ネジを装着するという非常に合理的な構成とすることができ、その有頭ネジを摩擦低減部材として機能させることができる。尚、有頭ネジとは、ねじ山が形成された軸部の一端部に半球状又は円盤状の頭部が設けられたネジを示す。
【0014】
本発明に係る火起こし器の更なる特徴構成は、
前記摩擦低減部材が前記火きり臼の底部に装着されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、摩擦低減部材が火きり臼の底部に装着されているので、上記火起こし操作において、摩擦低減部材が火きり杵の先端部と火きり臼の底部との間に確実に位置して摩擦熱の発生を抑制して、火きり臼の底部から木粉が発生しない上に、火きり臼の底部が摩擦熱により焦げることがなく、煙や火種の発生を防止することができる。
また、上記火起こし操作において、火きり杵の先端部による押圧により、摩擦低減部材が火きり臼の底部に押しつけられた状態となるので、摩擦低減部材が火きり臼の底部から外れることなく、安定して摩擦熱の発生を抑制することができる。
【0016】
本発明に係る火起こし器の更なる特徴構成は、
前記摩擦低減部材の温度の状態を表示する温度状態表示手段を備えた点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、火きり杵の先端部と前記火きり臼の底部との間に、摩擦低減部材を装着した状態で上記火起こし操作を行なう際には、実際には火種を得ることができないが、摩擦低減部材の温度が適度な摩擦熱により上昇することを、上記温度状態表示手段の表示により視認することができる。よって、例えば、上記火起こし操作による摩擦低減部材の温度が、発火温度よりも低く、煙や火種の発生が抑制される所定温度に到達したことを、模擬的な発火成功と判断する形態で、火起こし操作を体験することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1実施形態〕
以下に本発明に係る火起こし器1の第1実施形態を
図1および
図2に基づいて説明する。まず、火起こし器1の具体的構成について説明する。
本第1実施形態に係る火起こし器1は、木製棒状の火きり杵3と、その火きり杵3の先端部3aを底部5bに押し付けた状態で挿入される凹状の火きり臼5aを上面部に形成してなる木製の火きり板5とからなり、火きり杵3の先端部3aに、その先端部3aと火きり板5に設けられた火きり臼5aの底部5bとの間での摩擦を低減させる摩擦低減部材4が着脱自在に備えられている。
【0020】
この火起こし器1は、火きり杵3の先端部3aを、火きり臼5aの底部5bに押し付けた状態で回転させる火起こし操作を行なう形態で使用される。ここで、詳細については後述するが、火きり杵3の先端部3aに摩擦低減部材4を装着しない状態で火起こし操作を行う場合は、火きり杵3と火きり臼5aとの摩擦によって実際に火種を発生させることができ、一方、摩擦低減部材4を装着した状態で火起こし操作を行う場合は、煙や火種を発生させない状態とすることができる。
【0021】
火きり杵3は、
図1(a)に示すように、棒状の火きり棒5の一端部6bに嵌合固定されており、この火きり棒6は、その外表面に軸心方向に延出する複数の溝部6aが形成されている。つまり、火きり棒6の外表面に軸心方向に沿う溝部6aを加工して、凹凸形状を有するように構成されている。これにより、火起こし操作において引き紐7を外表面に巻きつけて回転させる際に、引き紐7が外表面上を滑らないようにされ、火きり棒及び火きり杵を確実に回転させることができる。
【0022】
火きり棒6は、素材として円筒形状を有する竹材(女竹)が使用されている。そして、火きり棒6の外表面に引き紐7を巻きつけて回転させるにあたり、火きり棒6の外径が細いと回転数が大きくなるが、回転させるためにより大きい力が必要となる。一方、外径が太いと小さい力で回転させることができるが、回転数が小さくなる。これを考慮して、本実施形態では、火きり棒6の外径は約13mmとされる。また、火きり杵3が固定される火きり棒6の一端部6bには、火きり杵3の基端部3bを内嵌して固定する四角形状の開口筒部6dが設けられている。また、火きり棒6の一端部6bと反対側の他端部6cには、回転支持部材8が固定されて設けられている。なお、火きり棒6の一端部6bおよび他端部6cの外周部には、糸を巻きつけて、その巻きつけた糸に接着剤を塗布して補強した補強巻き部6eが設けられている。これにより、火きり棒6への火きり杵3や回転支持部材8の嵌入により発生する応力および火起こし操作の際に発生する応力により、火きり棒6の一端部6bおよび他端部6cに割れが発生しないように構成されている。
【0023】
火きり杵3は、火種を得やすくするために、例えば、自然に中空の円筒状に形成されている空木(うつぎ)の茎を乾燥させたものが好適に利用することができる。本実施形態では、乾燥後の直径が8〜10mmの空木の枝を火きり杵3として使用した。
このように、火きり杵3が円筒状に形成されることで、摩擦低減部材4が装着した状態で火起こし操作を行う場合において、火きり杵が回転するとき、周速度の大きい外周部分のみが火きり杵3と火きり臼5aの接触部となるので、摩擦熱を効率よく発生させて、火種を発生させることができる。
なお、円筒状に形成された火きり杵3の形状は、火きり臼5aに挿入された状態で長軸方向を中心とする回転が容易な形状であればよく、その断面が実質的に円形に形成されておれば、楕円形や多少扁平な略円形状であってもよい。
【0024】
また、火きり杵3は火起こし操作の摩擦熱で高温の木粉となって摩耗するので数回使用する毎に交換が必要となる。よって、火きり杵3の先端部3aと反対側に位置する基端部3bの形状は、着脱自在でなおかつ強固に装着できるように基端部3bに向かって小さくなるテーパー状の四角柱状とされ、火きり棒6の一端部6bに設けられた四角形状の開口筒部6dに内嵌可能な形状に加工されている。
【0025】
このように形成された火きり杵3の基端部3bが火きり棒6の開口筒部6dに内嵌されるので、火きり杵3が火きり棒6の開口筒部6dで空回りすることなく、火きり棒6を回転させることによって火きり杵3を回転させるこができる。つまり、引き紐7の引っ張り操作によって発生する火きり棒6の回転力を火きり杵3に伝えることができる。
【0026】
次に、摩擦低減部材4について説明を加える。
本実施形態では、摩擦低減部材4は金属製の有頭ネジで構成されており、その有頭ネジは、火きり杵3の先端部3aにおいて筒状の内部3cに螺合するねじ山が形成された軸部4aと、火きり臼5と接触する頭部4bとによって構成される(
図2参照)。このように、有頭ネジは、その軸部4aを火きり杵3の先端部3aに螺合する状態で当該火きり杵3の先端部3aに取り付けることができ、また、その螺合を解除することで、同先端部3aから取り外すことができる。
【0027】
摩擦低減部材4は、火きり板5との関係で、火きり杵3より摩擦係数が小さい材質であって、火きり板5との摩擦によって、煙や火種が発生することのない材質で構成されており、
図1(a)に示すように摩擦低減部材4が装着された状態で、火起こし操作がされている場合は、煙や火種を発生させずに火起こし操作を実施することができる。
【0028】
また、摩擦低減部材4において火きり臼5aとの接触面となる頭部4bの形状は半球状とされており、その摩擦係数は、上述の如く、火きり杵3の摩擦係数よりも低いものとなっている。これにより、充分な摩擦低減効果を得ることができ、火きり臼5aの底部5bが削れにくくなるので、木粉の発生を一層抑制できる。よって、火きり臼5aにおいて、その先端部3aに摩擦低減部材4が取り付けられた火きり杵3がスムーズに回転できるように構成されている。
なお、摩擦低減部材4としての有頭ネジを、金属製ではなくテフロンなどの樹脂やその他の摩擦係数が小さい部材で構成してもよく、その頭部4bの形状を円盤状とした平ねじを利用してもよい。この有頭ネジとしては火きり杵3の筒状の内部3cにネジ山を自己生成する木ねじ又はタッピングタイプの有頭ネジが使いやすい。また、有頭ネジの頭部4bの直径は火きり杵3の直径と略同じとすることが好ましい。
【0029】
回転支持部材8については、火きり棒6の他端部6cに設けられ、引き紐7で火きり棒6を回転させる際に、火きり棒6を回転可能に支持する。火きり棒6の他端部6cと回転支持部材8との固定は、回転支持部材8に形成された円柱状の内嵌部8aに接着剤を付けて、その内嵌部8aを火きり棒6の他端部6cの開口部に嵌合させて火きり棒6に固定されている。
【0030】
回転支持部材8の素材としては、耐久性を高めるために、押さえ棒9との摩擦によって容易に摩耗しない堅い素材が適切であり、本実施形態では、樫の棒材が使用されている。そして、回転支持部材8の端部面8b側は、
図2に示すように、外径を徐々に縮径するように加工するとともに、端部面8bと外周面8cとの角部に丸みを持たせる。これにより、押さえ棒9の支持孔9a内で回転する回転支持部材8が、押さえ棒9に対して垂直となる状態から傾いた状態で支持されている場合でも、支持孔9a内において回転支持部材8をスムーズに回転させることができる。
【0031】
押さえ棒9は、回転支持部材8を回転可能に支持すると共に、火きり杵3を火きり板5に対して垂直になるように調整することに加え、火きり杵3を火きり臼5aに押しつける力を調節するものである。押さえ棒9の素材は、支持孔9aに回転支持部材8が接触しても摩耗や発熱しにくい素材とするのが適切であり、タモ材の丸棒が使用されている。その丸棒の外周部の一部を、軸方向に沿う状態で削って、外周部に直方体状の平面部9bを形成し、その平面部9bに、回転支持部材8を支持する支持孔9aが設けられている。なお、押さえ棒9の支持孔9aの直径は、回転支持部材8を回転可能に支持することができる直径とされる。そして、回転支持部材8の端部と接触する支持孔9aの底面には、回転支持部材8を滑りやすくするために摩擦係数が小さく耐熱性があるテフロン板10(
図1参照)が圧入固定されている。なお、このテフロン板10は金属板で構成してもよい。また、上述の如く、押さえ棒9はタモ材で形成されて耐摩耗性に優れるので、テフロン板10はなくてもよい。
【0032】
引き紐7は、火きり棒6に巻き付けて火きり棒6を回転させるための部材であり、引き紐7の両端部には、持ち手部材7aが形成されている。例えば、円柱状の木材を持ち手部材7aとして、その長さ方向の中心部付近に貫通孔7bを設けて、その貫通孔7bに引き紐7を通すとともに、引き紐7に結び目を形成して引き紐7から持ち手部材7aが外れないようにされている。
【0033】
火きり板5は、火きり杵3との摩擦で火種となる高温の木粉を作る火きり臼5aが備えられた板である。火きり板5の素材は杉として、火きり板5の長さ方向に沿って複数の火きり臼5aが設けられている。
図1(a)および
図1(b)に示すように、火きり臼5aは円柱状の凹部として構成されるとともに、火きり板の側面部に、それぞれの火きり臼5aに頂点を侵入させる形態でV字型の切欠き部5cが形成されている。
【0034】
そして、火きり臼5aの直径については、火きり杵3の先端部3aが挿入可能であり、先端部3aの直径と略同等か若干大きい直径とされている。そして、この火きり臼5aの直径の大きさに基づいて火きり板5の側面5dから火きり臼5aの径方向の中心部までの距離である中心位置を決める。また、切欠き部5cの頂点の位置は、火きり臼5aの直径方向の中心部よりも若干火きり板5の側面5d側であることが好ましい。なお、この切欠き部5cをV字状とは異なる別の形状としてもよく、また、切欠き部5cが省略されてもよい。
【0035】
V字型の切欠き部5cは、摩擦低減部材4を装着しない状態で火起こし操作を行なう場合には、火きり杵3と火きり臼5aとの摩擦で発生する高温の木粉を効率よく集めるとともに、木粉に蓄積された熱を逃げにくくすることができる。一方、このようなV字状の切欠き部5cを設けた際においても、火きり杵3の先端部3aから摩擦低減部材4を装着した状態で火起こし操作を行なう際には、木粉を殆ど発生させずに煙や火種の発生を良好に防止することができる。
【0036】
以下、
図1に基づいて、本発明に係る火起こし器1を使用した火起こし操作について詳細に説明する。
火起こし操作は、まず、火きり臼5に火きり棒6に固定された火きり杵3の先端部3aを挿入して、火きり棒6の他端部6cに固定された回転支持部材8を押さえ棒9で押さえる。この時、火きり杵3が火きり臼5aに垂直に挿入されている状態として、火きり杵3を火きり臼5aに適切な圧力で押しつけるため回転支持部材8を押さえ棒9で保持し、圧力をかけると共に火きり棒6の姿勢を保つ。
【0037】
そして、火きり棒6に引き紐7を、例えば2回巻き付け、引き紐7の両端部に設けられた持ち手部材7aを交互に引いて火きり棒6を回転させる。この時、火きり杵3を挿入している火きり臼5aの下に火種を受ける火種受け紙(図示せず)を置いておく。最初は押さえ棒9によって回転支持部材8を押さえる力を弱くして、火きり棒6がうまく回転するようになれば押さえる力を少しずつ強めていく。
【0038】
ここで、摩擦低減部材4を装着した状態として、煙や火種を発生させない火起こし操作がされている場合は、連続して火きり棒6をうまく回転させて、火起こし操作の体験を行なうことができる。この火起こしの練習は火種および煙を発生させるものではないので、例えば、防火上の制約等で、火気や煙を取り扱うことができない室内などで火起こし器1を火起こしの練習用の教材等として利用して、火起こし操作を体験することができる。
【0039】
一方、摩擦低減部材4を取り外して、実際に火を起こすための火起こし操作を行なっている場合は、火きり杵3の先端部3aと火きり臼5aの底部5bとの摩擦により、火きり臼5aから発生する黒く焦げた粉末が、火きり板5の切欠き部5cから出て、火種受け紙の上に積もる。そして、火種受け紙の上の黒く焦げた粉末から煙が出るようになれば、その中に火種ができている。このように煙が出る状態となれば、火きり杵3の回転を止め、火種が存在する黒く焦げた木粉の山を壊さないように火種受け紙を押さえながら火きり板5を外す。ここで、火種受け紙上の黒く焦げた木粉を手で扇いで風を送ると、その中に存在する火種が赤く光るので、これにより火種を確認することができる。そして、この火種を麻綿の上に載せ、風を送ることで麻綿から発火させることができる。
【0040】
〔第2実施形態〕
以下、本発明に係る火起こし器の第2実施形態を、
図3に基づいて説明する。
上述の第1実施形態では、摩擦低減部材4を火きり杵3の先端部3aに装着したが、この第2実施形態では、摩擦低減部材4が火きり臼5aの底部5bに装着する点で異なっている。
【0041】
図3に第2実施形態に係る火きり板5を示す。摩擦低減部材4は、火きり杵3との関係で摩擦係数が小さい材料であるテフロン板で構成され、火きり臼5aの底部5bに着脱自在に装着されている。摩擦低減部材4は、火きり臼5aの内径と略同一の直径を有する円盤状に形成されている。
【0042】
ここで、摩擦低減部材4の火きり臼5aへの装着は、火きり臼5aの内径と略同一の直径を有する円盤状に形成された摩擦低減部材4を、火きり臼5aの上部開口から挿入して、火きり臼5aの底部5bに嵌入させる状態で装着する。このように装着した状態において、火起こし操作を行なう際は、火きり杵3の先端部3aによる押圧により、摩擦低減部材4が火きり臼5aの底部5bに押しつけられた状態となるので、摩擦低減部材4が火きり臼5aの底部5bから外れることなく、安定して摩擦熱の発生を抑制することができる。
【0043】
そして、この第2実施形態に係る火起こし器1は、火きり杵3の先端部3aに摩擦低減部材4を装着せずに、上述の第1実施形態と同様に、火きり臼5aの底部5bに押し付けた状態で回転させる火起こし操作を行なう形態で使用される。ここで、火きり臼5aの底部5bに摩擦低減部材4を装着しない状態で火起こし操作を行う場合は、火きり杵3と火きり臼5aとの摩擦によって実際に火種を発生させることができ、一方、火きり臼5aの底部5bに摩擦低減部材4を装着した状態で火起こし操作を行う場合は、煙や火種を発生させない状態とすることができる。
【0044】
〔別実施形態〕
(A)上記第1実施形態においては、火きり杵3に装着された状態の摩擦低減部材4の温度の状態を表示する温度状態表示手段を備えていてもよい。これにより、例えば、温度状態表示手段が発火温度よりも低い所定温度に到達するまで上昇したことを検知した場合には、火種が発生したものと判断することができる。ここで、所定温度は、例えば、摩擦低減部材4を取り付けずに行なう火起こし操作において、火種が発生する動作と同等の動作を、摩擦低減部材4を装着して行った場合に、摩擦低減部材4が到達する温度とすることができる。
ここで、
図4に示すように、温度状態表示手段11は、温度検出部11a、判定部11bおよび表示部11cを備えていてもよく、その判定部11bは摩擦低減部材4の温度を検出する温度検出部11aによって検出された温度が設定温度に到達したときに発火成功として信号を出力するCPU等で構成されるとともに、表示部11cは、判定部11bからの信号を受けて点灯するLEDで構成してもよい。なお、
図3に示した火起こし器1では、表示部11cは小型のディスプレイとして、火きり棒6の上部の外周側面に設けられたが、これに限らず、表示部11cをLEDの赤色ランプとして、摩擦低減部材4の近傍で点滅する構成としてもよく、例えば、火きり杵3の下部の外周側面に表示部11cを設けてもよい。
その他、温度状態表示手段11は、摩擦低減部材4の温度が所定温度にまで上昇したときに色が変化する塗料を摩擦低減部材4に塗布することで構成されていてもよい。
【0045】
(B)上記第2実施形態においても、図示は省略するが、火きり板5に装着された状態の摩擦低減部材4の温度の状態を表示する温度状態表示手段を備えていてもよい。これにより、例えば、温度状態表示手段が発火温度よりも低い所定温度に到達するまで上昇したことを検知した場合には、火種が発生したものと判断することができる。ここで、所定温度は、例えば、摩擦低減部材4を取り付けずに行なう火起こし操作において、火種が発生する動作と同等の動作を、摩擦低減部材4を装着して行った場合に、摩擦低減部材4が到達する温度とすることができる。
ここで、温度状態表示手段は、温度検出部、判定部および表示部を備えていてもよく、その判定部は摩擦低減部材4の温度を検出する温度検出部によって検出された温度が設定温度に到達したときに発火成功として信号を出力するCPU等で構成されるとともに、表示部は、判定部からの信号を受けて点灯するLEDで構成してもよい。なお、表示部をLEDの赤色ランプとしてもよい。
その他、温度状態表示手段11は、摩擦低減部材4の温度が所定温度にまで上昇したときに色が変化する塗料を摩擦低減部材4に塗布することで構成されていてもよい。
【0046】
(C)上記第1実施形態においては、火きり杵3を円筒状に形成したが、これに限らず、円柱状に形成してもよい。また、円柱状に形成されたヒキリ杵3の断面は、実質的に円形に形成されて、火きり臼5aに挿入された状態で長軸方向を中心とする回転が容易であれば、楕円形や多少扁平な略円形状であってもよい。円柱状に形成した場合、摩擦低減部材4の取り付けは、摩擦低減部材4としての有頭ネジを取り付けるための下孔を、ヒキリ杵3の先端部3aに別途形成するか、またはそのまま有頭ネジを先端部3aにねじ込むことで取り付ける構成としてもよい。
【0047】
(D)上記第2実施形態においては、摩擦低減部材4をテフロン製としたが、これに限らず、摩擦係数が小さく耐熱性のある材料で構成されていればよく、テフロン以外の樹脂、金属又はその他の部材で構成してもよい。
【0048】
(E)上記第2実施形態においては、ヒキリ杵3は円筒状としたが、これに限らず、円柱状としてもよい。また、円柱状に形成されたヒキリ杵3の断面は、実質的に円形に形成されて、火きり臼5aに挿入された状態で長軸方向を中心とする回転が容易であれば、楕円形や多少扁平な略円形状であってもよい。
【0049】
(F)上記実施形態においては、火起こし器1を火きり棒6に巻回させたひき紐7の両端部を交互に引っ張る紐錐式のものとしたが、これに限らず、錐揉み式の火起こし器、弓状弓錐式の火起こし器、舞錐式の火起こし器、又は、その他の回転摩擦式の火起こし器としてもよい。
【0050】
(G)上記実施形態においては、ヒキリ杵3は自然に円筒状になっている空木が使用されたが、これに限らず、空木以外の木、竹または草の茎(例えばあじさいの茎)などを使用することもできる。また、木、竹または草の茎の種類によって、中心部の穴が詰まって円筒状になっていないものや、中心部の穴径が小さいものがあるが、この場合、火おこしの効率を安定させるためにドリルで穴径を揃えた円筒状のヒキリ杵3として使用してもよい。