【実施例1】
【0012】
まず、本実施形態における複数カメラ認証装置の構成を説明する。
図1は、本実施形態における複数カメラ認証装置100の構成図である。複数カメラ認証装置100は、利用者の指を撮像するための撮像部を複数個有した装置である。
図1に示すように、複数カメラ認証装置100は、第1の撮像部101と、第2の撮像部102と、第3の撮像部103と、光源部104と、通信部106と、制御部110とを有して構成される。
【0013】
第1の撮像部101は、利用者の指を撮像し、その画像である生体画像を取得するものである。第2の撮像部102および第3の撮像部103は、第1の撮像部101と同様のものである。後述するように、これらの各撮像部は、様々な角度で利用者の指を撮像できるように、これらが指の中心方向に向きつつも、例えば、指の中心部分を中心点とした同一孤上の互いに異なる位置に配置されている。なお、以下では、複数カメラ認証装置100は、複数(本実施例では3つ)の撮像部を有しているものとして説明しているが、多面的に利用者の指を撮像できるもの(例えば、魚眼レンズを有したカメラ)を用いてもよい。この場合、制御部110は、その撮像部が撮像した画像上の領域(例えば、第1領域〜第3領域)を、第1の撮像部101〜第3の撮像部103が撮像する各画像のように分割して以下の処理を行えばよい。
【0014】
光源部104は、光源部204は利用者の指に所定の波長の光(例えば、近赤外光)を照射する光源である。後述するように、光源部104から照射された光を利用者の指が透過し、第1の撮像部101、第2の撮像部102、第3の撮像部103が、その透過光を撮像する。
【0015】
通信部106は、ATMやホストコンピュータから構成される上位装置との間で種々のデータを送受信するものである。
【0016】
制御部110は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等の演算装置から構成され、複数カメラ認証装置100の動作や処理を制御する。制御部110は、複数カメラ認証装置100の各部を制御するとともに、第1の撮像部101および第2の撮像部102および第3の撮像部103で取得された生体画像から本人認証時の特徴情報となる血管パターンを抽出し、抽出された3つの血管パターンを登録データとして通信部106を介して出力する(登録処理)。
【0017】
また、制御部110は、第1の撮像部101および第2の撮像部102および第3の撮像部103で取得された生体画像から特徴情報となる血管パターンを抽出し、抽出された血管パターンとあらかじめ本人が登録した登録データとを照合して両者の一致度を算出し、算出した一致度が所定の閾値を超えるか否かによって本人を認証し、その認証結果を、通信部106を介して出力する(認証処理)。
【0018】
なお、以下では登録データは、制御部110がATMを介してICカードが有するICチップに記憶される前提で説明しているが、例えば、登録データを、ネットワークを介して上位端末であるホストコンピュータに送信して記憶させ、制御部110が本人認証時にその登録データを取得し、利用者本人を認証することとしてもよい。
【0019】
続いて、
図1に示した複数カメラ認証装置の配置を説明する。
図2は、
図1に示した複数カメラ認証装置の配置図である。
図2に示すように、複数カメラ認証装置200では、光源部204が利用者の指である生体部位210の側面から透過光を照射し、第1の撮像部201が生体部位210の中央正面(腹部)を撮像し、第2の撮像部202が生体部位210の右側面を撮像し、第3の撮像部203が生体部位210の左側面を撮像するように配置される。生体部位210が、
図2に示すような状態(水平状態)にある場合には、第1の撮像部201が生体部位210の中央正面(腹部)を撮像することができるが、生体部位210が回転(ロール)している場合には、第1の撮像部201がその中央正面を撮像することができなくなってしまう。
【0020】
そこで、まず、第1の撮像部201が指の中央正面を撮像し、制御部110は、撮像された生体画像とその生体画像と登録データとの一致度が所定の閾値を越えているか否かを判定し、その一致度が所定の閾値を越えていないと判定した場合、生体部位210が
図2において向かって時計回りの方向にロールしている可能性があると判断する。そして、第2の撮像部202がロールした生体部位210を撮像する。このとき第2の撮像部202が撮像する生体画像は、時計回りにロールした生体部位210の中央正面の画像である。
【0021】
制御部110は、第1の撮像部201が生体画像を撮像した場合と同様に、撮像された生体画像とその生体画像と登録データとの一致度が所定の閾値を越えているか否かを判定し、その一致度が所定の閾値を越えていないと判定した場合、上述した場合とは逆に、生体部位210が
図2において向かって反時計回りの方向にロールしている可能性があると判断し、第3の撮像部203がロールした生体部位210の中央正面を撮像する。このとき第3の撮像部203が撮像する生体画像は、反時計回りにロールした生体部位210の中央正面の画像である。
【0022】
制御部110は、第1の撮像部201が生体画像を撮像した場合と同様に、撮像された生体画像とその生体画像と登録データとの一致度が所定の閾値を越えているか否かを判定し、その一致度が所定の閾値を越えていないと判定した場合、認証失敗と判定する。一方、制御部110は、いずれかの生体画像と登録データとの一致度が所定の閾値を越えていると判定した場合には本人を認証し、登録データとの一致度を超える生体画像が複数存在する場合には、それらの生体画像のうち登録データに最も近い生体画像を特定し、特定したその生体画像を用いて本人を認証する。
【0023】
なお、本実施例では、制御部110は、第1の撮像部201が撮像した生体画像とその生体画像と登録データとの一致度が所定の閾値を越えているか否かを判定し、その一致度が所定の閾値を越えていないと判定した場合、第2の撮像部202や第3の撮像部203が撮像した生体画像を用いて本人を認証している。しかし、制御部110が、第1の撮像部201〜第3の撮像部203が撮像した生体画像のうち、第1の撮像部201が撮像した生体画像と登録データとの一致度よりも、第2の撮像部202が撮像した生体画像と登録データとの一致度が高いと判定した場合には、指が時計回りにロールしていると判断して本人を認証することも可能である。また、これとは逆に、制御部110が、第1の撮像部201〜第3の撮像部203が撮像した生体画像のうち、第1の撮像部201が撮像した生体画像と登録データとの一致度よりも、第3の撮像部203が撮像した生体画像と登録データとの一致度が高いと判定した場合には、指が反時計回りにロールしていると判断して本人を認証することも可能である。
【0024】
このように、制御部110は、第1の撮像部201〜第3の撮像部203が撮像した生体画像を用いて利用者を認証するので、利用者は指のロールを意識することなく容易に本人を認証することができ、また、指のロールによって本人を認証する精度の低下を防ぐことができる。また、通常は指がロールしない状態で登録データが生成されていることが多く、制御部110は、まず第1の撮像部201が撮像した生体画像を用いて利用者を認証した後、第2の撮像部202および第3の撮像部203が撮像した生体画像を用いて利用者を認証するので、指のロールを考慮しつつも、速やかに利用者を認証することができる。
【0025】
続いて、本実施形態における1カメラ認証装置の構成を説明する。
図3は、本実施形態における1カメラ認証装置300の構成図である。1カメラ認証装置300は、利用者の指を撮像するための撮像部を1つ有した装置である。1カメラ認証装置300は、撮像部301と、光源部304と、通信部306と、制御部310とを有して構成される。撮像部301、光源部304、通信部306は、複数カメラ装置100が有するものと同様であるため、ここではその説明を省略する。
【0026】
制御部310は、制御部110と同様の演算装置である。制御部310は、1カメラ認証装置300の各部を制御するとともに、撮像部301で取得された生体画像から本人認証時の特徴情報となる血管パターンを抽出し、抽出された血管パターンを登録データとして通信部306を介して出力する(登録処理)。
【0027】
また、制御部310は、撮像部301で取得された生体画像から特徴情報となる血管パターンを抽出し、抽出された血管パターンとあらかじめ本人が登録した登録データとを照合して両者の一致度を算出し、算出した一致度が所定の閾値を超えるか否かによって本人を認証し、その認証結果を、通信部を介して出力する(認証処理)。
【0028】
なお、以下では登録データは、制御部110と同様に、制御部310がATMを介してICカードが有するICチップに記憶したり、ネットワークを介して上位端末であるホストコンピュータに送信して記憶させ、制御部310が本人認証時にその登録データを取得し、利用者本人を認証することとしてもよい。
【0029】
続いて、
図3に示した1カメラ認証装置の配置を説明する。
図4は、
図3に示した1カメラ認証装置400の配置図である。
図4に示すように、1カメラ認証装置400では、光源部404が利用者の指である生体部位410の側面から透過光を照射し、撮像部401が生体部位410の中央正面(腹部)を撮像するように配置される。
【0030】
1カメラ認証装置400では、撮像部401を1つのみ有しているため、複数カメラ認証装置200のように複数の撮像部によって利用者を認証することはなく、例えば、指がロールしていない状態の生体画像が登録データとして登録されている場合において、認証処理時に指がロールした状態で血管パターンが抽出された場合、制御部310は、両者の一致度が低いと判定し、本人と認証できない場合が生じることとなる。
【0031】
このため、制御部310は、後述するように、登録データが複数カメラ認証装置200によって登録されたものであるか否かを判定し、登録データが複数カメラ認証装置200によって登録されたものであると判定した場合、制御部110の場合と同様に、複数の登録データのうちのそれぞれの生体画像と撮像部401が撮像した生体画像とを順に照合し、それぞれの一致度が所定の閾値を越えているか否かを判定し、いずれかの生体画像と登録データとの一致度が所定の閾値を越えていると判定した場合には本人を認証し、登録データとの一致度を超える生体画像が複数存在する場合には、それらの生体画像のうち登録データに最も近い生体画像を特定し、特定したその生体画像を用いて本人を認証する。
【0032】
また、制御部310は、制御部110の場合と同様に、複数カメラ認証装置200によって撮像された登録データのうち、第1の撮像部201が撮像した登録データと撮像部401が撮像した生体画像との一致度よりも、第2の撮像部202が撮像した登録データと撮像部401が撮像した生体画像との一致度が高いと判定した場合には、指が時計回りにロールしていると判断して本人を認証することも可能である。また、これとは逆に、制御部310が、複数カメラ認証装置200によって撮像された登録データのうち、第1の撮像部201が撮像した登録データと撮像部401が撮像した生体画像との一致度よりも、第3の撮像部203が撮像した登録データと撮像部401が撮像した生体画像との一致度が高いと判定した場合には、指が反時計回りにロールしていると判断して本人を認証することも可能である。
【0033】
このように、制御部310は、登録データが第1の撮像部201〜第3の撮像部203が撮像した生体画像であるか否かを判定し、その場合には各生体画像との一致度が所定の閾値を越えているか否かを判定した上で利用者を認証するので、複数カメラ認証装置200によって登録データが登録された場合であっても、1カメラ認証装置400においてスムーズに利用者を認証することができる。また、複数カメラ装置200の場合と同様に、利用者は指のロールを意識することなく容易に本人を認証することができ、また、指のロールによって本人を認証する精度の低下を防ぐことができる。また、通常は指がロールしない状態で登録データが生成されていることが多く、制御部310は、登録データである第1の撮像部201が撮像した生体画像を用いて利用者を認証した後、第2の撮像部202および第3の撮像部203が撮像した生体画像を用いて利用者を認証するので、複数カメラ認証装置200の場合と同様に、指のロールを考慮しつつも、速やかに利用者を認証することができる。
【0034】
続いて、本実施形態における複数カメラ認証装置200による登録処理を説明する。
図5は、本実施形態における複数カメラ認証装置を用いた登録処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0035】
図5に示すように、複数カメラ認証装置200は、制御部110が不図示のセンサが認証装置に置かれた生体を検出したか否かを判定し(ステップS501)、生体を検出したと判定した場合(ステップS501;Yes)、次のステップに進む。一方、制御部110は、不図示のセンサが認証装置に置かれた生体を検出していないと判定した場合(ステップS501;No)、生体が検知されるまでそのまま待機する。
【0036】
ステップS501において生体が検知されると、複数カメラ認証200に搭載される第1の撮像部201および第2の撮像部202および第3の撮像部203がその指を撮像して生体画像をそれぞれ取得し、制御部110は、それぞれの撮像部が読取った生体画像から血管パターンを抽出する(ステップS502)。
【0037】
ここで、
図6に示すように、第1の撮像部201は指の中央正面を撮像し、第2の撮像部202は指の側面(向かって左側面)を撮像し、第3の撮像部203は指の側面(向かって右側面)を撮像する。そして、制御部110は、第1の撮像部201が撮影した画像からは第1の血管パターン601を抽出し、第2の撮像部202で撮影した画像からは第2の血管パターン602を抽出し、第3の撮像部203で撮影した画像からは第3の血管パターン603を抽出する。
【0038】
ステップS502において血管パターンが抽出されると、制御部110は、それぞれの血管パターンから、本人認証するための照合に適切な登録用のデータ形態に変換し、これを生体登録データ600として出力し、ATM等の上位端末を介してICカードが有するICチップに生体登録データ600を登録する(ステップS503)。このステップS503の処理が終了すると、
図5に示した複数カメラ認証装置200による登録処理が終了する。
【0039】
続いて、本実施形態における1カメラ認証装置400による登録処理を説明する。
図7は、本実施形態における1カメラ認証装置を用いた登録処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0040】
図7に示すように、1カメラ認証装置400は、制御部310が不図示のセンサが認証装置に置かれた生体を検出したか否かを判定し(ステップS701)、生体を検出したと判定した場合(ステップS701;Yes)、次のステップに進む。一方、制御部310は、不図示のセンサが認証装置に置かれた生体を検出していないと判定した場合(ステップS701;No)、生体が検知されるまでそのまま待機する。
【0041】
ステップS701において生体が検知されると、複数カメラ認証400に搭載される撮像部401がその指を撮像して生体画像を取得し、制御部310は、その撮像部が読取った生体画像から血管パターンを抽出する(ステップS702)。ここで、
図8に示すように、撮像部401は指の中央正面を撮像し、制御部310は、撮像部401が撮影した画像から血管パターン801を抽出する。
【0042】
ステップS702において血管パターンが抽出されると、制御部310は、その血管パターンから、本人認証するための照合に適切な登録用のデータ形態に変換し、これを生体登録データ800として出力し、ATM等の上位端末を介してICカードが有するICチップに生体登録データ600を登録する(ステップS703)。このステップS703の処理が終了すると、
図7に示した1カメラ認証装置400による登録処理が終了する。
【0043】
続いて、本実施形態における複数カメラ認証装置200による認証処理を説明する。
図9は、本実施形態による複数カメラ認証装置200を用いた認証処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0044】
図9に示すように、複数カメラ認証装置200は、まず、通信部106がATM等の上位端末に挿入されたICカードが有するICチップから渡された登録データを受け取る(ステップS901)。このとき、上位端末から渡される登録データは、複数カメラ認証装置で登録された登録データ600、あるいは1カメラ認証装置で登録された登録データ800である。
【0045】
そして、制御部110が不図示のセンサが認証装置に置かれた生体を検出したか否かを判定し(ステップS902)、生体を検出したと判定した場合(ステップS902;Yes)、次のステップに進む。一方、制御部110は、不図示のセンサが認証装置に置かれた生体を検出していないと判定した場合(ステップS902;No)、生体が検知されるまでそのまま待機する。
【0046】
ステップS902において生体が検知されると、複数カメラ認証200に搭載される第1の撮像部201および第2の撮像部202および第3の撮像部203がその指を撮像して生体画像をそれぞれ取得し、制御部110は、それぞれの撮像部が読取った生体画像から血管パターンを抽出する(ステップS903)。
【0047】
そして、制御部110は、ステップS901で受け取った登録データが、複数カメラ認証装置200で登録された登録データ600であるか、1カメラ認証装置400で登録された登録データ800であるかを判定し(ステップS904)、その判定結果に応じて適切な照合処理ステップへ進む。例えば、登録処理時に、どちらの認証装置で登録されたものであるかを示すフラグ(複数カメラ認証装置200の場合は「1」、1カメラ認証装置400の場合は「2」等)を登録データに対応付けてICカードのICチップに記憶しておき、制御部110がそのフラグを参照することによって、いずれの認証装置で登録された登録データであるかを判定する。
【0048】
制御部110は、ステップS901で受け取った登録データが3カメラ認証装置200で登録された登録データ600であると判定した場合(ステップS904;Yes)、ステップS905において、3つの撮像部によって撮像された各データの照合処理をする。具体的には、
図10Aに示すように、制御部110は、この照合処理において、登録データ内の3個の血管パターン601、血管パターン602、血管パターン603と、ステップS903で抽出された3個の照合用血管パターン1001、照合用血管パターン1002、照合用血管パターン1003とを個々に照合して認証の成否を判定する。
【0049】
一方、ステップS904において、制御部110が、ステップS901で受け取った登録データが3カメラ認証装置200で登録された登録データ600でない、すなわち1カメラ認証装置で登録された登録データ800であると判定した場合(ステップS904;No)、ステップS906において、1つの撮像部によって撮像されたデータの照合処理をする。具体的には、
図11Aに示すように、制御部110は、この照合処理において、登録データ内の血管パターン801とステップS903で抽出された3個の照合用血管パターン1001、照合用血管パターン1002、照合用血管パターン1003とを個々に照合して認証の成否を判定する。
【0050】
図12は、ステップS906における1つの撮像部によって撮像されたデータの照合処理の詳細を説明する図である。以下では、制御部110は、指のロールを考慮するため、上述したように利用者の指を3つの撮像部によって撮像された生体画像と登録データとを比較して両者を照合している。
【0051】
図12に示すように、制御部110は、登録データの血管パターン801と第1の照合用血管パターン1001とを照合し、照合一致と判定した場合は認証成功となり、照合不一致の場合は指がロールしていると判断し、次ステップに進む(ステップS1201)。そして、制御部110は、登録データの血管パターン801と第2の照合用血管パターン1002とを照合し、照合一致と判定した場合は認証成功となり、照合不一致の場合は指が逆側にロールしていると判断し、次ステップに進む(ステップS1202)。
【0052】
さらに、制御部110は、登録データの血管パターン801と第3の照合用血管パターン1003とを照合し、照合一致と判定した場合は認証成功となり、照合不一致の場合は3個の照合用血管パターンのいずれにも照合一致しなかったため、認証失敗となる(ステップS1203)。最後に、制御部110は、このような認証の判定結果をATM等の上位端末側へ出力する(ステップS907)。このステップS907の処理が終了すると、
図9に示した認証処理が終了する。
【0053】
このように、複数カメラ認証装置200が登録処理や認証処理を行うので、登録用の静脈パターンの再登録作業の負担をかけることがない。具体的には、複数カメラ認証装置200では、指の中央のカメラに加えて、左右側面の静脈パターンを撮影するカメラを設け、従来型の認証装置と互換性を保つために、従来型の1カメラ認証装置で登録した登録データを用い新しい複数カメラ認証装置で認証する場合において、登録パターンと複数のカメラから取得した複数の照合パターンとを個々に照合処理を行うので、新規に複数カメラ指静脈認証装置を導入するに際して、従来型の1カメラ認証装置による登録データとの互換性を保ちつつ、複数カメラ指静脈認証装置用に登録データを再登録する必要なくスムーズに移行させることが可能となる。また、指の中央正面に配置されたカメラだけでなく、その側面に配置された複数のカメラから取得した複数の照合パターンと登録パターンとを個々に照合処理を行うので、指をロールして置いた際の認証精度の改善が見込める。また、新規に認証装置を導入するに際して、登録データを再登録する必要なく移行が可能となる。
【0054】
なお、
図9、
図12では、複数のカメラ認証装置200が認証処理を行う場合について説明しているが、1カメラ認証装置400の制御部310が認証処理を行う場合も、全体としては同様の手順で処理を実行する。この場合、ステップS903において、制御部310は、血管パターンは1つの撮像部401が撮像した生体画像から抽出することとなる。また、
図9に示したステップS904において、制御部310が、ステップS901で受け取った登録データが3カメラ認証装置200で登録された登録データ600でない、すなわち1カメラ認証装置で登録された登録データ800であると判定した場合(ステップS904;No)、ステップS906において、1つの撮像部によって撮像されたデータの照合処理をする。具体的には、
図10Bに示すように、制御部310は、登録データ内の血管パターン801とステップS903で抽出された1個の照合用血管パターン1001とを照合して認証の成否を判定する。
【0055】
一方、制御部310は、ステップS901で受け取った登録データが3カメラ認証装置200で登録された登録データ600であると判定した場合(ステップS904;Yes)、ステップS905において、登録データである3つの撮像部によって撮像された各データの照合処理をする。具体的には、
図11Bに示すように、制御部310は、登録データ内の3個の血管パターン601、血管パターン602、血管パターン603と、ステップS903で抽出された1個の照合用血管パターン1001とを個々に照合して認証の成否を判定する。
【0056】
また、
図12に示した処理は、1カメラ認証装置400では、ステップS905で行われ、制御部310は、登録データである第1の登録用血管パターン601と照合用血管パターン1001とを照合し、照合一致と判定した場合は認証成功となり、照合不一致の場合は指がロールしていると判断して次ステップに進む(ステップS1201)。そして、制御部310は、第2の登録用血管パターン602と照合用血管パターン1001とを照合し、照合一致と判定した場合は認証成功となり、照合不一致の場合は指が逆側にロールしていると判断して次ステップに進み(ステップS1202)、さらに第3の登録用血管パターン603と照合用血管パターン1001とを照合し、照合一致と判定した場合は認証成功となり、照合不一致の場合は3個の登録用血管パターンのいずれにも照合一致しなかったため、認証失敗となる(ステップS1203)。
【0057】
このように、1カメラ認証装置400が登録処理や認証処理を行うので、システムのスムーズな運用の移行が可能となる。具体的には、1カメラ認証装置400では、指の中央の静脈パターンを撮影するカメラを設け、制御部310が複数カメラ認証装置で登録された複数の登録データを用いて利用者を認証するので、複数カメラ認証装置200によって登録データが登録された場合であっても、従来型の認証装置と互換性を保ちつつ、1カメラ認証装置400においてスムーズに利用者を認証することができる。また、指の中央正面に配置されたカメラが撮像した生体画像と、複数カメラ認証装置200によって登録された複数の登録パターンとを個々に照合処理を行うので、指をロールして置いた際の認証精度の改善が見込める。
【実施例2】
【0058】
上述した実施例1においては、複数のカメラによって利用者の指を撮像し、撮像された生体画像と登録データとを比較することによって、指のロールを判定しつつ、利用者を認証することとした。この場合、利用者によっては自身の指がどのようにロールしているかがはっきりとわからない場合もある。そこで、そのような場合に備え、利用者の指がロールしている場合には、ディスプレイ等の画面上に指の状態や置き方をガイダンスする場合の処理について説明する。なお、以下では、ガイダンスをATM等の上位装置が有するディスプレイに表示させる場合について示しているが、認証装置の指置き部等にディスプレイを有している場合には、その部分にガイダンスを表示させることとしてもよい。
【0059】
図9に示した複数カメラ認証装置登録装置200による認証処理のステップS906の処理を、実施例2における処理として、
図13を用いて説明する。
図13は、実施例2においてステップS906における1つの撮像部によって撮像されたデータの照合処理の詳細を説明する図である。
【0060】
ステップS904において、1カメラ認証装置で登録された登録データ800であると判定された際は、ステップ906において、1カメラデータの照合処理を実施する。この照合処理は、
図13に示すように、制御部110は、登録データの血管パターン801と第1の照合用血管パターン1001とを照合し、照合一致と判定した場合は認証成功となり、照合不一致の場合は次ステップに進む(ステップS1301)。
【0061】
そして、制御部110は、登録データの血管パターン801と第2の照合用血管パターン1002とを照合し、照合一致と判定した場合は指が右ロールして置かれたため認証失敗したものであると判断して認証成功となり、照合不一致の場合は次ステップに進む(ステップS1302)。ここで、照合が不一致となった場合、制御部110は、例えば、ATMの操作画面上に指が右ロールしているため指を置きなおす旨のガイダンスを表示させる。
【0062】
図14Aは、制御部110が指の置き直しを促すためのガイダンスの例を示す図である。
図14Aに示すように、ガイダンス1401には、現在の状態では指210が右ロールしている旨およびその指210を正しく置き直すことを促す旨のメッセージと、それらのイメージ図が表示されている。
【0063】
さらに、制御部110は、登録データの血管パターン801と第3の照合用血管パターン1003とを照合し、照合一致と判定した場合は指が左ロールして置かれたため認証失敗したものであると判断して認証成功となり、照合不一致の場合は次ステップに進む(ステップS1303)。ここで、照合が不一致となった場合、制御部110は、例えば、ATMの操作画面上に指が左ロールしているため指を置きなおす旨のガイダンスを表示させる。
【0064】
図15Aは、制御部110が指の置き直しを促すためのガイダンスの例を示す図である。
図15Aに示すように、ガイダンス1501には、現在の状態では指210が左ロールしている旨およびその指210を正しく置き直すことを促す旨のメッセージと、それらのイメージ図が表示されている。
【0065】
そして、制御部110は、ステップS1303において照合不一致の場合は3個の照合用血管パターンのいずれにも照合一致しなかったため、認証失敗となり、その旨を操作画面に表示させ、このような認証の判定結果をATM等の上位端末側へ出力することとなる(ステップS907)。
【0066】
このように、認証の成否を判定すると同時に認証失敗となった際の指の置き方の状態を判定し、適切な指の置き直し指示のガイダンスを画面上に表示させるので、利用者は、自らの指がロールしていることを容易に認識でき、最終的な認証率の向上に寄与する。
【0067】
なお、上述した例では、複数カメラ認証装置200が処理を行う場合について説明したが、1カメラ認証装置400の場合も同様の手順で処理を実行できる。例えば、ステップS904において、複数カメラ認証装置で登録された登録データ600であると判定された際は、ステップ905において、3カメラデータの照合処理を実施する。
【0068】
この照合処理は、
図13に示した場合と同様の手順であり、制御部310が、登録データである第1の登録用血管パターン601と照合用血管パターン1001とを照合し、照合一致と判定した場合は認証成功となり、照合不一致の場合は次ステップに進む(ステップS1301)。そして、制御部310は、登録データである第2の登録用血管パターン602と照合用血管パターン1001とを照合し、照合一致と判定した場合は指が右ロールして置かれたため認証失敗したものであると判断して認証成功となり、照合不一致の場合は次ステップに進む(ステップS1302)。ここで、照合が不一致となった場合、制御部310は、例えば、
図14Bに示したガイダンスのように、指210が右ロールした状態で撮像された生体画像が登録されている旨およびその指210を正しく置き直して登録することを促す旨のメッセージと、それらのイメージ図が表示されたガイダンスを表示させる。
【0069】
さらに、制御部310は、登録データである第3の照合用血管パターン603と照合用血管パターン1001とを照合し、照合一致と判定した場合は指が左ロールして置かれたため認証失敗したものであると判断して認証成功となり、照合不一致の場合は次ステップに進む(ステップS1303)。ここで、照合が不一致となった場合、制御部310は、例えば、
図15Bに示したガイダンスのように、指210が左ロールした状態で撮像された生体画像が登録されている旨およびその指210を正しく置き直して登録することを促す旨のメッセージと、それらのイメージ図が表示されたガイダンスを表示させる。
【0070】
このように、認証の成否を判定すると同時に認証失敗となった際の指の置き方の状態を判定し、指がロールした状態で登録されており、適切に指を置き直して登録することを促す旨のガイダンスを画面上に表示させるので、利用者は、自らの指がロールして登録されていることを容易に認識でき、最終的な認証率の向上に寄与する。
【0071】
なお、上述した実施例では、
図11Aに示したように、制御部110は、登録データ内の血管パターン801とステップS903で抽出された3個の照合用血管パターン1001、照合用血管パターン1002、照合用血管パターン1003とを個々に照合して認証の成否を判定することとした。しかし、1つのパターンの照合率が閾値を満たして照合一致と判断しつつもその閾値付近(閾値の上側近傍)である場合、あるいは照合率が閾値を満たさず照合不一致と判断しつつもその閾値付近(閾値の下側近傍)である場合等、照合結果を確認したい場合については、以下に示すように、パターン画像の一部を用いてその照合の結果を検証したり、再照合することも可能である。
【0072】
図16Aは、制御部110が、照合結果を確認する場合の検証処理、再照合処理を説明する図である。
図16Aに示すように、制御部110は、登録データ内の血管パターン1601と照合用血管パターン1801とを照合し、照合結果が閾値から所定の範囲であるか否かを判定する。そして、制御部110は、照合結果が閾値から所定の範囲にあると判定した場合、登録データ内の血管パターン1601を右血管パターン1601aと左血管パターン1601bとに分割する。さらに、制御部110は、照合用血管パターン1802を右照合用血管パターン1802aと左照合用血管パターン1802bに分割し、照合用血管パターン1803を右照合用血管パターン1803aと左照合用血管パターン1803bに分割する。
【0073】
そして、制御部110は、分割した右血管パターン1601aと右照合用血管パターン1802b(あるいは1802a)とを比較し、その一致度が所定の閾値を越えている場合、さらに分割した左血管パターン1601bと左照合用血管パターン1803a(あるいは1803b)とを比較し、その一致度が上述した範囲以上の値として高く設定されている所定の閾値を越えている場合、部分的な照合の一致度が高く、その血管パターン1601と照合用血管パターン1801は全体として照合一致と判定する。このように、制御部110は、パターン画像と、登録パターン画像とを照合して本人を認証した場合であっても、さらにパターン画像の一部と、登録パターン画像の一部との一致度がパターン画像と登録パターン画像との一致度よりも高いか否かを判定し、パターン画像の一部と、登録パターン画像の一部との一致度がパターン画像と登録パターン画像との一致度よりも高いと判定した場合に利用者を認証する、すなわち部分的なパターンの一致度が全体の一致度よりも高い場合には全体のパターンの照合が一致していると判定して利用者を認証するので、より認証を精度よく確実に行うことができる。
【0074】
なお、上述した例では、1つのパターンを縦に2つに分割する例について説明したが、分割数や分割の向きについては特にこれに限られない。また、分割されたパターン同士をそのまま比較するだけでなく、例えば、制御部110が、分割した登録データ内の血管パターンを照合用血管パターンに重ね合わせ、一致する部分を特定し、特定した部分の一致度が所定の閾値を越えている場合、部分的な照合の一致度が高く、その血管パターンと照合用血管パターンとが照合一致と判定したり、さらには特定した部分をつなぎ合わせた全体のパターンが一定の精度以上で登録パターンとを再現させることができれば、両者が一致していると照合することとしてもよい。さらに、
図16Aに示した例では、複数カメラ装置200の場合について説明したが、1カメラ装置400についても
図11Bに示したような登録データが複数存在して照合用血管パターンが1つ存在する場合にも、
図16Bに示すように、登録パターンと照合パターンとを入れ替えて適用することもできる。
【0075】
具体的には、制御部310は、登録データ内の血管パターン1601と照合用血管パターン1801とを照合し、照合結果が閾値から所定の範囲であるか否かを判定する。そして、制御部310は、照合結果が閾値から所定の範囲にあると判定した場合、登録データ内の血管パターン1602を右血管パターン1602aと左血管パターン1602bとに分割し、登録データ内の血管パターン1603を右血管パターン1603aと左血管パターン1603bとに分割する。さらに、制御部310は、照合用血管パターン1801を右照合用血管パターン1801aと左照合用血管パターン1801bとに分割する。
【0076】
そして、制御部310は、分割した右血管パターン1602b(あるいは1602a)と右照合用血管パターン1801aとを比較し、その一致度が所定の閾値を越えている場合、さらに分割した左血管パターン1603a(あるいは1603b)と左照合用血管パターン1801bとを比較し、その一致度が上述した範囲以上の値として高く設定されている所定の閾値を越えている場合、部分的な照合の一致度が高く、その血管パターン1601と照合用血管パターン1801は全体として照合一致と判定する。このように、制御部310は、制御部110の場合と同様に、部分的なパターンの一致度が全体の一致度よりも高い場合には全体のパターンの照合が一致していると判定して利用者を認証するので、より認証を精度よく確実に行うことができる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階では上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることが可能であり、例えば、登録パターンや照合用パターンの数に限定されず適用することができる。