(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記モーア駆動検出部がエンジンとモーアユニットとの間の動力伝達経路に設けられたPTOクラッチの入り切りを検出する検出デバイスである請求項1に記載の作業車。
【背景技術】
【0002】
一般的に芝刈機と呼ばれる、上記のような作業車は、エンジンからの動力によって車輪とモーアユニットとを駆動することで、走行しながらの草刈り(芝刈り)作業を行うことができる。
近年、草刈り作業、特に芝刈り作業では高品質の仕上がりが要望されている。この要望を満たすための条件の1つは、モーアユニットの駆動速度と作業車の走行速度との関係を最適にすることである。例えば、特許文献1による芝管理作業車では、リール式のモーアユニットを備え、そのリールの回転速度と走行速度との関係を最適にする制御を取り入れている。詳しくは、この芝管理作業車は、車速を検出する車速センサとリールの回転速度を検出するリール回転センサと、検出された車速から制御目標となる目標リール回転速度を算定するコントローラと、検出されたリール回転速度と目標リール回転速度とを比較して実際のリール回転速度が目標リール回転速度を追従するようにフィードバック制御するコントローラとを備えている。
この特許文献1による芝管理作業車では、車速が変化してもその車速に適したリール回転速度になるようにフィードバック制御されるが、車速が頻繁に変動すると、しかも大きな変動幅で変動すると、芝の仕上がりに悪影響を及ぼしてしまう。
【0003】
なお、芝刈機に類似する作業車であるトラクタでは、エンジンにかかる負荷が変動しても一定のエンジン回転数を維持するアイソクロナス制御モードと、負荷に応じてエンジン回転数が変動するドループ制御モードを有するエンジン制御技術が採用されており、その際、耕耘機を牽引しながらの走行作業などにおいてはアイソクロナス制御モードが用いられ、負荷が変動してもエンジン回転数を一定に維持することで耕耘機の回転速度を一定にし、作業を伴わない通常走行ではドループ制御モードが用いられる。例えば、特許文献2による作業車では、トルクの変動に応じてエンジンの回転数が変動するトルクカーブである第1ガバナ特性に基づくエンジン制御(ドループ制御)と、トルクの変動に対して第1ガバナ特性よりもエンジンの回転数の変動が小さいトルクカーブまたはトルクの変動に対してエンジンの回転数が変化しないトルクカーブである第2ガバナ特性に基づくエンジン制御(アイソクロナス制御)とが制御装置に設定されており、ハンドアクセルレバー及び設定スイッチの操作位置によってドループ制御またはアイソクロナス制御のいずれかが実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
草刈作業中でのモーアユニットの刈刃回転速度を一定に維持するためには、上記のようなアイソクロナス制御を芝刈機に採用すると好都合であるが、作業走行と非作業走行が繰り返されるような場合、非作業走行でもアイソクロナス制御が実行されていると、走行運転性が悪くなる。これを避けるためには、選択スイッチを設けて、作業走行時にはアイソクロナス制御モードを選択すべく選択スイッチを操作し、非作業走行時にはアイソクロナス制御モードを選択すべく選択スイッチを操作するという煩わしい操作が運転者に要求される。
このような実情から、より操作性に優れた、刈刃回転速度を一定に維持する制御システムを有する作業車が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
エンジンと、前記エンジンからの動力によって駆動する車輪と、前記エンジンからの動力によって駆動するモーアユニットとを備えた、本発明による作業車では、前記モーアユニットへの動力伝達状況を検出するモーア駆動検出部と、エンジン負荷から独立してエンジン回転数を前もって設定された一定値に維持するアイソクロナス制御モードで前記エンジンを制御するアイソクロナス制御部と、エンジン負荷に依存してエンジン回転数を変動させるドループ制御モードで前記エンジンを制御するドループ制御部と、前記モーアユニットへの動力伝達が前記モーア駆動検出部によって検出されている場合には前記アイソクロナス制御部によるエンジン制御を選択する制御モード選択部とを備え
、アイソクロナス制御特性マップ群として、刈り草条件別の複数のアイソクロナス制御特性マップが格納され、前記アイソクロナス制御特性マップ群には、少なくとも、エンジン負荷が大きくなるような刈り草条件に対して、エンジン負荷の増大に応じてエンジン回転数の低下を許容するマップが用意され、
前記アイソクロナス制御部は、前記アイソクロナス制御特性マップ群から刈り草条件に応じて選択されたマップを用いて前記エンジンを制御する。
【0007】
この構成では、エンジンからモーアユニットにエンジンの回転動力が伝達されているかかどうかをモーア駆動検出部によってチェックし、モーアユニットにエンジン動力が伝達されていることが検出されている場合には、モーアユニットが回転駆動し草刈作業中であると判断して、アイソクロナス制御部によるエンジン制御が行われる。その結果、エンジン負荷の変動にかかわらず、エンジン回転数が一定に維持され、回転数変動のないエンジン動力を用いた安定したモーアユニットの駆動が実現する。この技術思想は、本発明による作業車が、モーアユニットにエンジン動力が伝達されない限り、作業走行は行われず、非作業走行であるとみなすことができる作業車であることに着眼した結果得られたものである。これにより、専用のモード選択スイッチなどによる選択操作なしに、作業走行時にはアイソクロナス制御モードによるエンジン制御が選択され、非作業走行時にはドループ制御モードによるエンジン制御が選択される。
また、アイソクロナス制御モードでは、一定とするエンジン回転数にエンジンの最高出力時回転数を用いることで、作業中の不必要な高回転によるエンジン騒音を回避することができる。また動力源としてのエンジンの回転数が一定であるので、モーアユニットでの駆動回転数も作業に最適な回転数に固定することができ、作業能力が向上する。
【0008】
本発明の好適な実施形態の1つでは、エンジンからモーアユニットへの動力伝達経路には、モーアユニットへの動力伝達だけを入り切りするPTOクラッチが設けられていることに着眼し、前記モーア駆動検出部を、エンジンとモーアユニットとの間の動力伝達経路に設けられたPTOクラッチの入り切りを検出する検出デバイスとして構成される。
【0009】
モーアユニットとしては、リールタイプとブレードタイプとがある。ブレードタイプのモーアユニットでは、ブレードに起風翼が形成されており、ブレードの回転にともなって刈り取った草を吹き飛ばす空気流を発生させる。この起風翼による空気流の強さはブレードの回転数によって大きく変動し、小さすぎても大きすぎても草刈り性能や刈草搬送性能に悪影響を及ぼす。このためブレードの回転数は、所定の一定値に維持することが重要である。このような観点から、本発明は、前記モーアユニットが回転を通じて生じる風により刈り取った草を送り出すブレードを有する回転ブレードタイプである作業車に特に適している。
【0010】
アイソクロナス制御モードでは、エンジン負荷にかかわらず、できる限りエンジン回転数が一定となるように、例えばエンジンへの燃料供給が調整されるが、エンジン負荷がエンジン容量を越える場合にる回転数低下を引き落とし、最悪の場合、はエンストにまで至る。このため、アイソクロナス制御のためのマップであるアイソクロナス制御特性マップをエンジン負荷に大きな影響を及ぼす刈り草条件別に複数用意して、刈り草条件に応じて使用するマップを選択するようにすると好都合である。つまり、エンジン負荷が大きくなるような刈り草条件では、負荷の増大に応じてある程度の回転数低下を許容するマップを用いると、エンストが起こりにくくなる。
【0011】
アイソクロナス制御モード下での走行は、ドループ制御モード下での走行に較べてその運転感覚にかなりの違いがあるので、アイソクロナス制御モードが実行されていることを運転者が把握していることが重要である。このため、本発明の好適な実施形態の1つでは、前記アイソクロナス制御部によるエンジン制御の実行を報知する報知デバイスが備えられている。その際、前記報知デバイスがエンジン回転数を表示するディスプレイに割り当てられた表示部分であると、スペースの有効利用やコスト面から好都合である。例えば、ディスプレイの所定部分を点灯または点滅させることで運転者は現在アイソクロナス制御モード下にあることを容易に把握することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による作業車の実施の形態の1つとして、フロントモーアを図面に基づいて説明する。
図1には、このフロントモーアの後方斜め上から見た斜視図が示され、
図2は、フロントモーアの前半領域の側面図が示されている。
フロントモーアの車体1を構成するフレーム10は、前輪11と後輪12とによって懸架されている。フレーム10はフロントフレーム10aとリアフレーム11bからなり、それぞれ、車体1の長手方向(走行方向)に沿って延びている左右の縦メンバとそれらを連結するクロスメンバを有する。対地作業ユニットとしてのモーアユニット2は、前輪11より前方で、フロントフレーム10aの下方でフロントフレーム10aから前方に突き出すように昇降機構20を介して昇降可能に支持されている。なお、この明細書では、特に断らない限り、位置関係を示す前(前方)や後(後方)といった語句は車体1の長手方向(走行方向)を基準としている。
【0014】
車体1の前半領域は運転領域となっており、フロントフレーム10aの前端領域にステアリング装置4が配置され、フロントフレーム10aの後端領域に運転席13が配置されている。
図3、
図4、
図5に示すように、ステアリング装置4は、車体幅方向のほぼ中心でフロントフレーム10aの前端領域から上方にやや後方に傾斜しながら延びているステアリングポスト4Aと、ステアリングポスト4Aに支持されたステアリングホイールユニット4Bと、マンマシーンインターフェースパネルユニット4Cとを含んでいる。
【0015】
ステアリングポスト4Aは、フロントフレーム10aの前端を構成するクロスビームに固定された第1ステアリングポスト43と、この第1ステアリングポスト43の上端に連結された第2ステアリングポスト44とからなる。第1ステアリングポスト43は、内部に収容空間を作り出す空洞体であり、
図3から明らかなように、ベースパネルである後パネル43aと補助パネルである前パネル43bとからなる、ボルト連結される2分割体である。なお、前パネル43bはフロントモーアの正面(顔)となるので、前パネル43bの下部にはスカート部431が形成されており、このスカート部431によって後パネル43aとフレーム10との連結構造が隠されるように構成されている。第1ステアリングポスト43は、車体前後方向から見て逆三角形状であるがその外形線は曲線である。また車体幅方向からみて、補助パネル43bの上部が前方に張り出している。第1ステアリングポスト43の上部には車体幅方向で二股状に突き出した左右一対の突出部が形成されており、その間の凹部空間に第2ステアリングポスト44が挿入されている。第2ステアリングポスト44も空洞体であり、第1ステアリングポスト43の凹部空間にちょうど嵌め込まれるように略角柱形状を有する。
【0016】
ステアリングホイールユニット4Bは、スポーク40bとリング40aからなるステアリングホイール40と、ステアリングホイール40に連結したステアリングシャフト41からなる。ステアリングシャフト41は第2ステアリングポスト44の内部空間に収容されている。ステアリングシャフト41の回転変位は、それ自体は公知である全油圧式パワステアリング機構を構成するパワステユニット42に伝達され、操向輪(この実施形態では後輪12)の操向角の変更をもたらす。この実施形態では、第2ステアリングポスト44は第1ステアリングポスト43に対して前後方向に揺動可能に取り付けられており、ステアリングホイール40のチルティング調整及び運転者の乗り降りの容易性を実現している。このため、ステアリングシャフト41とパワステユニット42との間にはユニバーサルジョイントが介装されており、パワステユニット42は、実質的に第1ステアリングポスト43内に収納されている。
【0017】
マンマシーンインターフェースパネルユニット4Cは、運転者による操作入力ないしはこのフロントモーアに搭載されている各種機器の状態などを運転者に報知するための報知出力を行うためのインターフェースデバイスを配置したパネルモジュール群46からなり、パネルモジュール群46のそれぞれには、運転者から見やすい表示面または運転者が操作しやすい操作面あるいはその両方であるマンマシーンインターフェース面が作り出される。ここでは、パネルモジュール群46は、ステアリングホイール40の回転軸芯、つまりステアリングシャフト41の回転軸芯の周辺に配置されている。パネルモジュール群46には、第2ステアリングポスト44の前方に隣接して配置された第1パネルモジュール46a、第2ステアリングポスト44の一方の側方に隣接した配置された第2パネルモジュール46b、第2ステアリングポスト44の他方の側方に隣接した配置された第3パネルモジュール46cが含まれている。
【0018】
運転席13に着座した運転者の正面に位置する第1パネルモジュール46aは、前パネル43bの上面に配置され表示面を作り出している。また、運転席13に着座した運転者の手に対応するように位置している第2パネルモジュール46bと第3パネルモジュール46cとは、後パネル43aの左右一対の突出部の各上面に配置されている。第2パネルモジュール46bはステアリングホイール40を向いた面に左側操作面を作り出しており、第3パネルモジュール46cはステアリングホイール40を向いた面に右側操作面を作り出している。ここでは、ステアリングホイール40の下方に位置する運転者との間のマンマシーンインターフェース面として、表示面と左側操作面と右側操作面とが含まれている。
【0019】
図6に示すように、第1パネルモジュール46aには、第1表示部を作り出す第1表示ユニットとして大型のフラットパネルディスプレイ5aが組み込まれ、さらにその両側に第2表示部を作り出す第2表示ユニットとしてLEDパネルユニット5bが組み込まれている。フラットパネルディスプレイ5aには各種情報を示す数値・文字・記号・イラストなどが表示される。これらの表示に対する、運転席13に着座した運転者の視認性を高めるため、フラットパネルディスプレイ5aは、
図5から明らかなように、ディスプレイ面法線とステアリングホイール回転軸芯とがステアリングホイールの上方で交差するように、傾斜している。これは、ステアリングホイール40は手で操作されるため、ステアリングホイール回転軸芯の延長線より後方に運転者の顔が位置するように運転席13が配置されることから、フラットパネルディスプレイ5aを上述のように傾斜させることでその着座姿勢での運転者がフラットパネルディスプレイ5aの画面が見やすくなるからである。
なお、フラットパネルディスプレイ5aを構築するには、液晶の使用が一般的であるが、これに限定されるわけではなく、有機エレクトロルミネッセンス、LED(発光ダイオード)、VFD(蛍光表示管)、PDP(プラズマディスプレイパネル)などを使用してもよい。また、LEDパネルユニット5bに代えて、他の照明デバイスや発光素子からなるパネルユニットを用いてもよい。つまり、本願におけるフラットパネルディスプレイ5aとは、従来のCRTタイプのディスプレイ以降に製品化されたパネルタイプのディスプレイであり、その表示面は曲面であってもよい。
【0020】
図3、
図4、
図5に示すように、前パネル43bの第1パネルモジュール46aより下方の中央にヘッドライト18を装着するための孔18aが設けられている。ヘッドライト18はその光軸が水平よりやや下方に向けられており、モーアユニット2の周辺も直接照明される。ヘッドライト18は、シールドガラスを除いてその大部分が、第1パネルモジュール46aの内部空間に収納されており、ヘッドライト18が前パネル43bの中間部を形成する凹湾曲面から外にほとんど突き出さないような外観が作り出されている。
【0021】
図5から明らかなように、フロントフレーム10aの前部は前上がりに約30度傾斜しており、その先端上面から第1ステアリングポスト43、詳しくは後パネル43bが直立している。つまり、第1ステアリングポスト43は地面に対して約60度の傾斜角をもって延びている。また、フラットパネルディスプレイ5aのディスプレイ面法線は水平線に対して約45度であり、ディスプレイ面法線はステアリングホイール40の近傍、好ましくはその上方で、ステアリングホイール40の回転軸芯と約15度で交わることになる。なお、ヘッドライト18の光軸は約10度の下向き角度となっている。
【0022】
上述した、フラットパネルディスプレイ5aつまり第1パネルモジュール46aとステアリングホイール40の位置関係、及び、ステアリングホイール40を構成するリング40aとスポーク40bの形状から、運転席13に着座した運転者の、フラットパネルディスプレイ5aに対する視認性が向上する。運転席13に着座した運転者の目を視点とする視野が模式的に
図7に示されている。この
図7から理解できるように、ステアリングホイール40の回転軸芯方向から見て、ステアリングホイール40のスポーク40bとリング40aによって境界付けられる少なくとも1つの開口の大きさはフラットパネルディスプレイ5aより大きくなっている。これにより、運転者は、ステアリングホイール40の開口からフラットパネルディスプレイ5aの画面を良好に見ることができる。これに対して、左手と右手でそれぞれ操作されるボタンやスイッチなどの操作入力デバイス30が装備される第2パネルモジュール46bの操作面と第3パネルモジュール46cの操作面とによるトータル操作面の車体幅方向に占める長さはフラットパネルディスプレイ5a大きくなっている。この構成により、第2パネルモジュール46bの操作面と第3パネルモジュール46cの操作面はフラットパネルディスプレイ5aより車体幅方向の外側に突き出すことになり、これにより第2パネルモジュール46b及び第3パネルモジュール46cに対する手動操作性が向上する。この実施形態では、第2パネルモジュール46bである第2操作面部には、DPF(Diesel particulate filter:ディーゼル微粒子捕集フィルター)に対する手動操作選択ボタンや照明スイッチが配置され、第3パネルモジュール46cである第2操作面部には、操作入力デバイス30である、DPFに対する自動操作選択ボタンやキースイッチが配置されている。
【0023】
また、第2ステアリングポスト44の左右側面からそれぞれ第1操作レバー31と第2操作レバー32とが突き出しているが、その操作姿勢も、ステアリングホイール40の開口を通じて良好に視認することができる。なお、ここでは、第2ステアリングポスト44の左面から突き出ている第1操作レバー31は、第2ステアリングポスト44つまりステアリングホイール40のチルトロック・ロック解除レバーであり、第2ステアリングポスト44の右面から突き出ている第2操作レバー32は、アクセルレバーである。
ステアリングホイール40の開口を通じての良好な視認性を得るためには、リング40aとスポーク40bはできるだけ細くしてその開口の面積を大きくすることが好ましい。
また、この実施形態では、リング40aは円形であるが、楕円形でも多角形でもよいし、スポーク40bも図示された3本タイプ以外でもよいが、上述したような、開口を通じての良好な視認性が確保されるべきである。
【0024】
図1から理解できるように、フロントフレーム10aの上方でステアリング装置4と運転席13の左右側周辺領域及びステアリング装置4と運転席13との間の領域には、フロア15が形成されている。その際、ステアリング装置4の両側から後方にかけて、ちょうど前上がり傾斜部分の上方にフットレスト区画15aが形成されており、その上に滑り防止材が敷設されている。滑り防止材を敷設する代わりに、フロア15を構成する板材に突起等を形成して滑り防止機能を持たせてもよい。フロア15には、変速ペダル33やパーキングレバー34のほか、モーアユニット2にエンジン動力を伝達するPTO動力の伝達をON・OFFするPTOクラッチのためのPTOクラッチレバー35などが配置されている。
【0025】
車体1の後半領域は動力源領域となっており、
図1では、ボンネットユニット8によって覆われているため図示されていないが、この実施形態では水冷式ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンと称する)やエンジン補助機器が配置されている。運転席13とボンネットユニット8の間にロプス14と呼ばれる、ここでは門型の枠体が立設されている。
【0026】
図8はこのフロントモーアのトランスミッション70を示している。このトランスミッション70は、エンジン7の出力を無段変速する無段変速装置70A、変速された動力を前輪11と後輪12に伝達するとともにエンジン出力を無段変速装置70Aを迂回してモーアユニット2に伝達するギヤ伝動装置70Bを備えている。さらに、エンジン7とモーアユニット2との間の動力伝達経路の一部としてPTO軸74が備えられている。
【0027】
無段変速装置70Aはエンジン7からの動力が伝えられる可変容量型の油圧ポンプ71aと、この油圧ポンプ71aからの作動油の供給で駆動される油圧モータ71bとからなる。油圧モータ71bの出力軸71cからの動力はギヤ伝動装置70Bを構成する副変速装置72、及び、ベベルピニオン軸73aを介して前輪差動装置73に伝えられる。ベベルピニオン軸73aに形成したギヤ79aからの動力はPTO軸74にニードルベアリングを介して遊転支承した中間ギヤ79b、これに咬合するギヤ79cを有した中間伝動軸75aを介して後輪差動装置75に伝えられる。
【0028】
又、油圧ポンプ71aの側面には油圧ポンプ71aからの作動油の吐出量を調節するトラニオン軸71dは、変速ペダルと機械式に連係されている。なお、クルージング走行(定速走行)を実現するため、図示されていないが、トラニオン軸71dを選択された位置に保持する保持機構も備えられている。副変速装置72には、油圧モータ71bの出力軸71cからの動力がギヤ対79dを介して伝達される。ベベルピニオン軸73aと平行なカウンタ軸76に設けられた高速用、低速用のギヤとに選択的に咬合するように、ベベルピニオン軸73aにスプライン嵌合しているシフトギヤ79eが備えられている。このシフトギヤ79eは運転席13の近傍の副変速レバー36と機械的に連係している。無段変速装置70Aの油圧ポンプ71aを貫通するライブ軸78に連結した出力ギヤ79fと咬合する入力ギヤ79gがPTO軸74にベアリングを介して遊転支承され、この入力ギヤ79gとPTO軸74との間に油圧式のPTOクラッチ77が備えられている。PTO軸74は、モーアユニット2のベルト伝動機構22につながれている。モーアユニット2には、モーアデッキ21によって覆われた3つの刈草用のブレード23が設けられている。ブレード23はベルト伝動機構22によって縦軸芯周りで回転させられる。ブレード23は、よく知られているように、帯板状であり、起風翼と呼ばれる起風用の突起が形成されており、この突起は、ブレード23の回転に伴って刈草をモーアデッキの側方排出口まで搬送する搬送風を作り出す。
【0029】
図9には、このフロントモーアにおける、エンジン制御系と表示制御系のブロック図が示され、エンジン制御系及び表示制御系に特に関係する電子制御ユニット(ECU)6として、表示ECU50とエンジンECU60とセンサECU90が図示されている。
【0030】
図9では、センサECU90は、各種検出デバイスから受け取った検出信号に基づいて車両状態信号を生成して出力する制御ユニットである。センサECU90には、PTOクラッチ77を操作するPTOクラッチレバー35のON・OFF位置を検出するPTOクラッチセンサ(検出デバイスの1つ)91、パーキングレバー34のON・OFF位置を検出するパーキングセンサ(検出デバイスの1つ)92、油圧ポンプ71aの斜板角度を検出する変速位置センサ93などが接続されている。
【0031】
フロントモーアでは、PTO軸74はエンジン7からの動力をモーアユニット2へ伝達するので、その動力伝達をONまたはOFFするPTOクラッチ77のためのPTOクラッチレバー35の位置を検出するPTOクラッチセンサ91は、モーアユニット2への動力伝達状況(を検出するモーア駆動検出部として機能する。ここでのモーアユニット2への動力伝達状況の1つは、PTOクラッチ77のONによるモーアユニット2への動力伝達であり、その結果ブレード23が回転することであり、他の1つは、PTOクラッチ77のOFFによるモーアユニット2への動力遮断であり、その結果ブレード23が停止することである。
【0032】
エンジンECU60には、アイソクロナス制御部61と、ドループ制御部62と、制御モード選択部63と、マップテーブル64とが含まれている。
アイソクロナス制御部61は、エンジン負荷から独立してエンジン回転数を前もって設定された一定値に維持するアイソクロナス制御モードでエンジン7を制御するアイソクロナス制御機能を有する。アイソクロナス制御が選択された場合、運転手によってエンジン回転数が設定されると、または予め設定されていると、エンジン7に対する負荷の変動に関わらず、実際のエンジン回転数がその設定された回転数に維持される。例えばエンジン負荷(エンジントルク)の上昇に応じて燃料噴射量(またはガバナ位置)を増加させ、エンジン出力トルクを上昇させることよってエンジン回転数を一定に維持するようにしている。このアイソクロナス制御自体はよく知られているので、ここではこれ以上の詳しい説明は省略するが、例えば、特開2007−092926号や特開2002−106401号などの特許公開公報に説明されている。
【0033】
ドループ制御部62は、エンジン負荷に依存してエンジン回転数を変動させるドループ制御モードードでエンジン7を制御するドループ制御御機能を有する。ドループ制御選択された場合、無負荷時(アイドル運転時)からの負荷の上昇に応じてエンジン回転数が低下することを許す制御であり、運転者はこのエンジン回転数の低下に反応してアクセルペダルを踏み込むことでエンジン回転数の低下を回避できるが、そのエンジン回転数の低下を走行に利用してもよい。このドループ制御もそれ自体はよく知られているので、ここではこれ以上の詳しい説明は省略されるが、例えば、上記特許公開公報に説明されている。
【0034】
なお、制御特性マップ格納部64には、アイソクロナス制御において、エンジン回転数の低下を回避または一定範囲に限定するために、エンジン負荷(エンジン回転数低下量)に応じた燃料噴射量(またはガバナ位置)を規定した、いわゆるアイソクロナス制御特性マップが複数、つまりアイソクロナス制御特性マップ群として格納されている。アイソクロナス制御部61はこの制御特性マップ格納部64にアクセスして、エンジン負荷(エンジン回転数低下量)に応じた燃料噴射量(またはガバナ位置)を決定する。このため、エンジンECU60には、エンジン7に装備されているエンジン回転数センサ94からの検出信号が入力される。
【0035】
制御モード選択部63は、モーアユニット2への動力伝達がモーア駆動検出部によって検出されている場合にはアイソクロナス制御部61によるエンジン制御を選択し、モーアユニット2への動力伝達が遮断されている場合には、ドループ制御部62によるエンジン制御を選択する機能を有する。前述したように、この実施形態では、モーア駆動検出部としてPTOクラッチセンサ91が採用されている。従って、PTOクラッチレバー35がPTOクラッチ77をONさせるための操作を行うと、エンジン7に対してアイソクロナス制御が実行され、PTOクラッチレバー35がPTOクラッチ77をOFFさせるための操作を行うと、エンジン7に対してドループ制御が実行される。
【0036】
例えば、芝刈作業を行うためにPTOクラッチレバー35がON操作されると、アイソクロナス制御が実行され、アイソクロナス制御特性マップで規定されたエンジン回転数が維持され、結果的には、モーアユニット2のブレード23にとって好都合な回転数が維持され、適切な芝刈作業を行うことができる。ブレード23に好都合な回転数とは、芝刈り品質、騒音、燃費などの評価項目を最適にする回転数である。ただ、そのような回転数は、芝の種類や芝の状態などの刈り草条件によっても異なるので、複数のアイソクロナス制御特性マップを用意しておいて、刈り草条件によって選択できるような構成を採用してもよい。
【0037】
なお、アイソクロナス制御の実行中は、実質的にはエンジン速度が一定となり、通常の運転とは異なった運転感を運転者に与えるので、アイソクロナス制御部61によるエンジン制御の実行が報知される。この報知のために用いられる報知デバイスとしては、ランプの点灯や点滅、あるいはブザーによる報知音が好適である。この実施形態では、フラットパネルディスプレイ5aの画面においてエンジン回転数を表示する表示領域に隣接して割り当てられたアイソクロナス制御実行中表示アイコンがアイソクロナス制御の実行を報知する表示部分として点灯または点灯する。
【0038】
PTOクラッチレバー35がOFF操作されると、PTOクラッチ77が遮断され、回転動力がモーアユニット2に伝達されず、ブレード23は停止状態となる。つまり、芝刈作業を伴う作業走行ではなく、自動車などと同じような走行となる。このため、このPTOクラッチレバー35のOFF操作をトリガーとして、エンジン駆動モードはドループ制御部62によるドループ制御に移行する。
【0039】
図11から明らかなように、表示ECU50には、第1パネルモジュール46aが接続されている。この第1パネルモジュール4には、第1表示ユニットとしてのフラットパネルディスプレイ5aと、第2表示ユニットとしてのLEDパネル5bが配置されている。フラットパネルディスプレイ5aは、第1表示部として、表示ECU50を介してセンサECU(制御ユニットの1つ)90から受け取った各種車両状態信号に基づく車両状態情報を表示する。LEDパネル5bは、第2表示部として、センサECU90ないしは検出デバイスから直接受け取った検出デバイスの検出信号に基づいて当該検出デバイスが検出した車両状態を表示する。
【0040】
表示ECU50には、エンジンECU60から車両制御エラーメッセージとしての主にエンジンに関する情報、例えば、エンジン始動不可を示す信号、エンジン回転数を示す信号、エンジン稼動積算時間としてのアワーメータのデータを示す信号、冷却水温度を示す信号、エンジンエラーメッセージを示す信号、などが送られてくる。さらに、表示ECU50には、センサECUから、操作レバーや操作スイッチ・ボタンなどの操作入力デバイス30の操作状態を示す車両状態信号も送られてくる。
【0041】
この実施形態では、
図6に示されているように、第1パネルモジュール46aの中央部にフラットパネルディスプレイ5aが配置され、その左右両側と下側とにLEDパネル5bが配置されている。フラットパネルディスプレイ5aの画面は、燃料計領域、水温計領域、エンジン回転数表示領域、アワーメータ表示領域、エンジンモード表示領域に区分けられている。エンジンモード表示領域は、
図6の例ではエンジン回転数表示領域の右上に割り当てられており、ここではボトル状のエンジンモードアイコンEMが形成されており、このエンジンモードアイコンEMが点灯していることでアイソクロナス制御モードが選択されていることを示し、このエンジンモードアイコンEMが消灯していることでドループ制御モードが選択されていることを示す。アワーメータ表示領域はアルファベット・数字表示セグメントで構成されており、車両状態情報である車両制御エラーメッセージの表示領域及びは車両メンテナンスを促すメンテナンスメッセージの表示領域と兼用化されている。従って、このアワーメータ表示領域のセグメントには、アワーメータを示す数値だけではなく、所定のタイミングで、「Err00」といったような車両制御エラーメッセージを示すエラーコード、あるいは、「Ser1」といったようなメンテナンスを促すメッセージを示すサービスコードが表示される。特に、このサービスコードは、所定時間経過時のキーオン操作時に表示されるので、他の表示を邪魔することは避けられている。また、アワーメータとエラーコードの表示に関しては、エラーコードの表示要求が発生した場合、セグメント表示されるアワーメータ(正確にはアワーメータを示す数値)の表示にエラーコードの表示が割り込む形態で2秒程度の間隔で数回繰り返して表示される。
【0042】
LEDの点灯によって視認されるマークまたはアイコンによって区分けられている表示項目には、
図6におけるマークまたはアイコンの絵柄から推定されるように、バッテリチャージ、パーキングブレーキ、ヘッドランプ、PTOクラッチ、冷却水温、燃料残量警告などがある。この実施形態では、エンジン状態を示す車両状態信号は、一旦エンジンCPU60で処理されて、表示ECU50に送られ、LEDの点灯制御のために直接第1LEDパネル5bに送られてくる。例えば、冷却水温などがそうである。これ以外の車両状態信号は、例えば、パーキングレバー34のON・OFF位置状態を検出するパーキングセンサ92からの検出信号は、2系統の信号伝送ラインを有しており、エンジンCPU60にも送られるが、そのLEDの点灯制御のために直接第1LEDパネル5bに送られる。
【0043】
パーキングブレーキのON・OFF、つまりパーキングレバー34のON・OFF位置はエンジン始動の条件になっているので、パーキングセンサ92からの検出信号はエンジンCPU60でのエンジン始動許可または不可の判定に用いられる。従って、上記の2系統の信号伝送ライン構成により、エンジン始動不可のメッセージが表示されているのにも関わらず、パーキングブレーキのLEDが点灯している場合(パーキングブレーキON)には、パーキングブレーキ以外のエンジン始動条件が成立していないと理解できる。逆に、パーキングブレーキのLEDが点灯していないにもかかわらず、エンジン始動不可のメッセージが表示されない場合は、パーキングセンサ92の信号伝送ラインにトラブルが生じていることが想定される。
【0044】
なお、
図11で示した形態では、フラットパネルディスプレイ5aが表示ECU50を介してセンサECU90から受け取った各種車両状態信号に基づく車両状態情報を表示する第1表示部として用いられ、LEDパネル5bが、センサECU90ないしは検出デバイスから直接受け取った検出デバイスの検出信号に基づいて当該検出デバイスが検出した車両状態を表示する第2表示部として用いられている。これに代えて、第1表示部と第2表示部とを別体の独立した表示パネルの形で装備してもよい。