特許第5863643号(P5863643)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863643
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月16日
(54)【発明の名称】冷却される電子システム
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/473 20060101AFI20160202BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20160202BHJP
   G06F 1/20 20060101ALI20160202BHJP
【FI】
   H01L23/46 Z
   H05K7/20 P
   G06F1/20 A
   G06F1/20 C
【請求項の数】31
【全頁数】44
(21)【出願番号】特願2012-510362(P2012-510362)
(86)(22)【出願日】2010年5月12日
(65)【公表番号】特表2012-527109(P2012-527109A)
(43)【公表日】2012年11月1日
(86)【国際出願番号】GB2010000950
(87)【国際公開番号】WO2010130993
(87)【国際公開日】20101118
【審査請求日】2013年5月9日
(31)【優先権主張番号】0908156.3
(32)【優先日】2009年5月12日
(33)【優先権主張国】GB
(31)【優先権主張番号】61/177,548
(32)【優先日】2009年5月12日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511275876
【氏名又は名称】アイセオトープ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェスター ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ホプトン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ベント ジェーソン
(72)【発明者】
【氏名】ディーキン キース
【審査官】 松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−064257(JP,A)
【文献】 特開2001−102835(JP,A)
【文献】 特開昭62−085449(JP,A)
【文献】 特開平01−318295(JP,A)
【文献】 特開平02−067792(JP,A)
【文献】 特開平11−121668(JP,A)
【文献】 特開平08−172285(JP,A)
【文献】 特開2007−258624(JP,A)
【文献】 米国特許第06992888(US,B1)
【文献】 特開平04−226057(JP,A)
【文献】 特開2000−349213(JP,A)
【文献】 特開平02−073698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/473
G06F 1/20
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたはそれ以上の発熱する電子コンポーネントを収容する密封型モジュールであって、
ハウジングと、
伝導面を有する熱伝達装置であって、前記ハウジングと前記伝導面とが第一の冷却液を入れることのできる内部空間を画定し、当該熱伝達装置はさらに、第二の冷却液を受けるための通路を規定し、前記伝導面は前記内部空間と前記通路を分離して、前記伝導面を通じて前記内部空間と通路間で熱が伝達されるようにする、熱伝達装置と、
前記内部空間内に設置された電子コンポーネントと、
を含み、
前記伝導面は、前記内部空間内に突出して前記内部空間と前記通路の中で熱を伝導する少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起は、前記電子コンポーネントの形状と適合するように成形されており、
使用時には、前記第一の冷却液は前記内部空間内に配置され、前記電子コンポーネントが発した熱は、当初は局所的な伝導によって、その後に前記第一の冷却液が膨張するにつれて対流によって、前記内部空間内の前記第一の冷却液に移動され、この熱移動により前記第一の冷却液前記伝導面に接触さ
前記伝導面と少なくとも1つの前記電子コンポーネントの間のギャップは、前記対流による前記第一の冷却液の流れが通過する程度に広くされており、前記対流による流れが前記ギャップを通過し、主に前記第一の冷却液の前記対流により前記電子コンポーネントから前記伝導面の熱移動が達成される、
密封型モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載の密封型モジュールであって、前記内部空間内に配置された第一の冷却液をさらに含む密封型モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の密封型モジュールであって、前記電子コンポーネントに連結され、前記伝導面の前記少なくとも1つの突起と隣り合って配置された少なくとも1つの突起を有するコンポーネント用ヒートシンクをさらに含む密封型モジュール。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記伝導面の前記少なくとも1つの突起はフィン構造である、密封型モジュール。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記伝導面の前記少なくとも1つの突起はピン構造である、密封型モジュール。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の密閉型モジュールであって、前記内部空間内に配置され前記内部空間内の前記第一の冷却液の流れを偏向させる偏向器をさらに含む密封型モジュール。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記内部空間内に配置された複数の導電体をさらに含み、前記複数の導電体は、前記第一の冷却液の水位を検出するように構成されている、密封型モジュール。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記伝導面は前記通路を規定し、前記通路の形状は、前記電気コンポーネントの形状に適合するように構成される、密封型モジュール。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記熱伝達装置は一体に形成されている、密封型モジュール。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記熱伝達装置は前記伝導面に結合されるベース部をさらに備え、前記ベース部は前記第二の冷却液を受けるための通路を規定する、密封型モジュール。
【請求項11】
請求項1から7のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記ハウジングと前記伝導面は内側チャンバを画定し、前記熱伝達面は通路を規定する外側チャンバをさらに備える、密封型モジュール。
【請求項12】
請求項11に記載の密封型モジュールであって、前記外側チャンバは、合成プラスチック材料で作製される、密封型モジュール。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記ハウジングの少なくとも一部を覆う断熱層をさらに備える密封型モジュール。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、
複数の電子コンポーネントを含み、その少なくとも1つは使用中に発熱し、
前記電子コンポーネントを保持する回路基板をさらに含む密封型モジュール。
【請求項15】
請求項14に記載の密封型モジュールであって、前記回路基板と前記ハウジングの間に配置された保護膜をさらに含み、前記保護膜は、前記保護膜と前記回路基板の間の液体の流れを防止するように構成されている、密封型モジュール。
【請求項16】
請求項14に記載の密封型モジュールであって、前記回路基板の少なくとも一部は前記ハウジングと一体に形成されている、密封型モジュール。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、
前記ハウジングの中に配置され、そこから液体を前記内部空間の中に受け入れることのできる前記モジュールへの充填口と、
前記充填口の密封手段と、
をさらに含む密封型モジュール。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記ハウジングの中に配置され、前記内部空間内の圧力が所定の限度を超えたときに、液体が前記内部空間から流出できるように準備された減圧弁をさらに備える密封型モジュール。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記伝導面は合成プラスチック材料から作製されている、密封型モジュール。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記通路は前記伝導面との接触領域を有し、これが通路幅を規定し、最小通路幅は、当該最小通路幅の幅方向と同じ方向における前記伝導面の寸法より小さい、密封型モジュール。
【請求項21】
請求項1から20のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記通路は、前記伝導面の少なくとも一部と、少なくとも1か所で方向転換する経路に沿って界面をなす、密封型モジュール。
【請求項22】
請求項20に従属する請求項21に記載の密封型モジュールであって、前記経路は直線部分を有し、前記通路の最小幅は、前記経路の前記直線部分の長さの少なくとも10%である、密封型モジュール。
【請求項23】
請求項21または22に記載の密封型モジュールであって、前記経路は本線経路と支線経路を有し、前記支線経路は少なくとも1か所で前記本線経路に接続される、密封型モジュール。
【請求項24】
冷却される電子システムであって、
請求項1から23のいずれか1項に記載の密封型モジュールと、
前記内部空間内に配置された第一の冷却液と、
ヒートシンクと、
第二の冷却液が前記密封型モジュールの通路の少なくとも一部を通って前記ヒートシンクへと所定の流速で流れるように構成されたポンプ装置と、
前記電子コンポーネントの温度を測定するように準備された温度センサと、
前記ポンプ装置と前記通路のうち前記第二の冷却液が流れる部分の少なくとも1つを制御して、前記電子コンポーネントの温度が所定の最高動作温度を超えないように制御されるように構成されたコントローラと、
を備える電子システム。
【請求項25】
密封型モジュールキットであって、
ハウジングと、
伝導面を有する熱伝達装置であって、前記伝導面と前記ハウジングが第一の冷却液を入れることのできる内部空間を画定するように前記ハウジングに結合され、第二の冷却液を受け、当該熱伝達装置が前記ハウジングに結合されたときに前記伝導面が前記内部空間と前記通路を分離して、前記内部空間と前記通路の間で前記伝導面を通じて熱が伝導されるようにする通路を規定するような熱伝達装置と、
前記内部空間内に配置された電子コンポーネントと、
を含み、
前記伝導面は、前記内部空間内に突出して前記内部空間と前記通路の中で熱を伝導する少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起は、前記電子コンポーネントの形状と適合するように成形されており、
使用時には、前記第一の冷却液は前記内部空間内に配置され、前記電子コンポーネントが発した熱は、当初は局所的な伝導によって、その後に前記第一の冷却液が膨張するにつれて対流によって、前記内部空間内の前記第一の冷却液に移動され、この熱移動により前記第一の冷却液前記伝導面に接触さるように、前記ハウジング、前記電子コンポーネント、および前記熱伝達装置が構成され、
前記伝導面と少なくとも1つの前記電子コンポーネントの間のギャップは、前記対流による前記第一の冷却液の流れが通過する程度に広くされており、前記対流による流れが前記ギャップを通過し、主に前記第一の冷却液の前記対流により前記電子コンポーネントから前記伝導面の熱移動が達成される、
密封型モジュールキット。
【請求項26】
電子コンポーネントを冷却する方法であって、
ハウジングと、伝導面を有する熱伝達装置を含むモジュールであって、前記ハウジングと前記伝導面とが内部空間を画定する、モジュールを提供するステップと、
前記電子コンポーネントを前記内部空間内に、前記伝導面との間にギャップを設けて格納するステップと、
前記内部空間に第一の冷却液を充填するステップと、
前記第一の冷却液と第二の冷却液の間で、前記伝導面を通じて熱を伝導させるステップであって、前記第一の冷却液と前記第二の冷却液は前記伝導面の両側にそれぞれ位置する、ステップと、
を含み、
前記伝導面は、前記内部空間内に突出して前記内部空間と前記通路の中で熱を伝導する少なくとも1つの突起を有し、前記少なくとも1つの突起は、前記電子コンポーネントの形状と適合するように成形されており、
前記電子コンポーネントが発した熱は、当初は局所的な伝導によって、その後に前記第一の冷却液が膨張するにつれて対流によって、前記内部空間内の前記第一の冷却液に移動され、この熱移動により前記第一の冷却液を前記伝導面に接触させ、
前記伝導面と少なくとも1つの前記電子コンポーネントの間の前記ギャップは、前記対流による前記第一の冷却液の流れが通過する程度に広くされており、前記対流による流れが前記ギャップを通過し、主に前記第一の冷却液の前記対流により前記電子コンポーネントから前記伝導面の熱移動が達成される、
方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であって、熱を前記第一の冷却液から前記第二の冷却液に伝導させるステップは、前記第一の冷却液と前記第二の冷却液が液体の状態のままであるように構成される、方法。
【請求項28】
電子機器を冷却する方法であって、
ハウジングと、伝導面を有する第一の熱伝達装置とを含むモジュールを提供するステップであって、前記ハウジングと前記伝導面とは内部空間を画定し、前記内部空間は第一の冷却液で満たされ、電子機器が前記伝導面との間に所定のギャップを設けて前記内部空間内に配置されている、ステップと、
前記電子機器を前記内部空間内で動作させるステップと、
前記電子機器により発生された熱を、当初は局所的な伝導によって、その後に前記第一の冷却液が膨張するにつれて対流によって、前記内部空間内の前記第一の冷却液に移動し、この熱移動により前記第一の冷却液を前記伝導面に接触させ、前記伝導面の少なくとも一部を通じて前記第一の冷却液から第二の冷却液へと伝達するステップであって、前記伝導面と前記電子機器の間の前記ギャップは、前記対流による前記第一の冷却液の流れが通過する程度に広くされており、前記対流による流れが前記ギャップを通過し、主に前記第一の冷却液の前記対流により前記電子機器から前記伝導面の熱移動が達成される、ステップと、
熱を前記第二の冷却液からヒートシンクへと第二の熱伝達装置を使って伝達するステップと、
前記伝導面を通過する前記第二の冷却液の流量と、前記伝導面のうち熱が前記第二の冷却液へと伝達される部分との一方または両方を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御されるように設定するステップと、
を含む方法。
【請求項29】
請求項28に記載の方法であって、
前記電子機器の温度を測定するステップをさらに含み、
前記設定するステップは、前記測定された温度に基づいて行われる、
方法。
【請求項30】
請求項28に記載の方法であって、前記設定するステップは、前記伝導面を通過する前記第二の冷却液の流量と、前記伝導面のうち熱が前記第二の冷却液に伝達される部分との少なくとも一方が、前記電子機器について予測された所定の最高動作温度に基づいて所定のレベルに設定されることを含む、方法。
【請求項31】
冷却される電子システムであって、
ハウジングと電子機器および第一の冷却液を含む密封容器と、
第二の冷却液を受けるための第一の通路を規定する第一の熱伝達装置であって、前記第一の冷却液と前記第一の通路の間で、伝導面の少なくとも一部を通じて熱を伝達するように構成された第一の熱伝達装置と、
前記第二の冷却液を前記第一の熱伝達装置に、またはそこから移送するように構成された配管構造と、
を備え、
前記電子機器により発生された熱は、当初は局所的な伝導によって、その後に前記第一の冷却液が膨張するにつれて対流によって、前記密封用器内の前記第一の冷却液に移動され、この熱移動により前記第一の冷却液が前記伝導面に接触され、
前記伝導面と前記電子機器の間のギャップは、前記対流による前記第一の冷却液の流れが通過する程度に広くされており、前記対流による流れが前記ギャップを通過し、主に前記第一の冷却液の前記対流により前記電子機器から前記伝導面の熱移動が達成され、
前記システムは、前記第一の通路を通る前記第二の冷却液の流量と、前記伝導面のうち熱が前記第二の冷却液に伝達される部分との一方または両方を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように設定するように構成される、
電子システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動作中に発熱する電子コンポーネントを格納するモジュールまたは小容器、このような電子コンポーネントを冷却する方法、電子機器を冷却する方法、冷却される電子システムおよび、電子機器容器に冷却液を充填する方法に関する。本発明は特に、たとえばコンピュータプロセッサおよびマザーボードに適用可能である。
【背景技術】
【0002】
電子コンポーネントおよび特にコンピュータプロセッサは動作中に発熱し、この熱はコンポーネントおよびシステム内のその他の部品の過熱、ひいてはその損傷の原因となることがある。したがって、コンポーネントを冷却して、熱をコンポーネントから取り去り、コンポーネントの温度を、コンポーネントの正確で信頼性の高い動作のために指定されている最高動作温度より低く保つことが望ましい。
【0003】
この問題は特に、データ処理またはコンピュータサーバセンタに関係があり、そこでは、多くのコンピュータプロセッサが集中して設置され、長期間にわたって高い信頼性を保ちながら連続的に動作することが意図されている。このようなセンタには一般に多くのサーバユニットがあり、これらは複数の装置ラックを占領し、1部屋または何部屋も満杯となっているかもしれない。各サーバユニットには、1つまたはそれ以上のサーバボードが含まれる。1つのサーバボードは、何百ワットもの電力を熱として放出することがある。既存のシステムでは、連続的に熱を伝達し、正しい動作を維持するのに必要なエネルギーは、サーバを動作させるのに必要なエネルギーと同程度にもなりうる。
【0004】
発生された熱は、プロセッサが置かれている建物の外の最終のヒートシンク、たとえばその建物を取り囲む大気に伝えられる。現在の実装では一般に、プロセッサと最終のヒートシンクの間の1つまたはそれ以上の段階において、空気を伝達媒体として利用する。
【0005】
しかしながら、上記のような大量の熱に対して伝達媒体に空気を使用することは、建物の基本構造に大きな制約を加えないかぎり、難しい。これは、熱を伝達できる速度は、熱源(たとえば、サーバボード、特にコンピュータプロセッサ)と最終のヒートシンクの間の温度差(ΔT)の拡大および、熱源と最終のヒートシンクを熱的に連結する経路(複数の場合もある)の熱抵抗の減少に合わせて上昇するからである。
【0006】
この問題に対処する周知の技術の中に、プロセッサの格納場所の環境条件を制御するように設計するものがある。現在はエアハンドリング技術がよく使用され、たとえば、空気の蒸気圧縮冷却(空調)は局所の気温を下げて、局所の温度差を広げるものであり、空気圧縮(ファンを使用)は気流速度を高め、それによって熱抵抗を下げるものである。さらに、熱交換段階を使用して、局所の空気から抽出された熱を最終的ヒートシンク、たとえば大気へと伝達させてもよい。
【0007】
しかしながら、これらの方法は十分とは言えず、それは、空調を使用した場合、その動作に大量の電力が必要となりうるからである。これらの方法はまた、局所的な温度や騒音により、その場にいる人々にとって必ずしも快適ではない。
【0008】
さらに、空気流量と気温を制限しなければないかもしれず、たとえば、温度を「結露点」より高く保ち、繊細な電子コンポーネントへの損傷の原因となりうる空気からの蒸気凝縮を防止しなければならない。このような理由により、現在、一般にはサーバをまばらに分散配置して熱密度を低下させ、局所的な気流を改善し、それによって熱抵抗を下げている。
【0009】
液体を電子コンポーネントと接触させることによって電子コンポーネントを冷却する方法によれば、サーバの密度を高め、冷却コストを下げ、またはその両方を実現できる。
【0010】
液体を使って電子コンポーネントを冷却する既存の方法は、US−2007/109742とGB−A−2432460に記載されている。コンピュータプロセッサボードを気密容器に格納する。冷却液、好ましくはオイルを容器内に充填する。プロセッサボードを容器の底部に設置し、蒸発器コイルを容器の上部に設置して、冷却液内に対流を起こす。冷却液は、プロセッサボードによって加熱され、その結果発生した蒸気は凝縮器へと流れる。容器は、その中の回路基板が水平面上に置かれた状態となり、コンポーネントからの熱が対流できるように設置する。
【0011】
凝縮器を使った冷却では、システムが複雑化し、コストも高くなり、システム実装にさらに制約が生じる。
【0012】
WO−2006/133429およびUS−2007/034360は、電子コンポーネントを冷却するための別の周知の方法を開示している。電子コンポーネントを液体で満たされた容器の中に封入し、熱伝導板を液体と接触する容器の一部として設置する。熱伝導板は、液体から容器の外に熱を伝える。これは独立した動作のために設計されるが、熱伝導板を他の熱交換機に連結して、さらに電子コンポーネントを冷却することができる。
【0013】
この代案としての構成によれば、容器内への液体の充填が必要な方法と比較して、システムの複雑さは軽減する。しかしながら、これは熱源と最終のヒートシンクの間の熱抵抗を低下させる問題には十分に対応していない。温度差が大きくなっても、全体的な熱抵抗は依然として大きいままである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/109742号明細書
【特許文献2】英国特許出願公開第2432460号明細書
【特許文献3】国際公開第2006/133429パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/034360号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の背景に照らして、第一の態様において、本発明は1つまたはそれ以上の発熱する電子コンポーネントを収容する密封型モジュールを提供する。このモジュールは、ハウジングと、伝導面を有する熱伝達装置と、を含み、ハウジングと伝導面とが第一の冷却液を入れることのできる内部空間を画定し、熱伝達装置はさらに、第二の冷却液を受けるための通路を画定し、伝導面は内部空間と通路を分離して、伝導面を通じてこれらの内部空間と通路間で熱が伝達されるようにし、さらに内部空間内に設置された電子コンポーネントを含む。伝導面とハウジングの少なくとも一部は、電子コンポーネントの形状に適合するように成形される。
【0016】
ハウジングと伝導面の一方またはその両方の形状を電子コンポーネントの形状に適合させることによって、第一の冷却液と第二の冷却液の間の熱伝達効率は大幅に改善される。これによって、第一の冷却液を、電子コンポーネントからの放熱量が高いレベルになるまで液体の状態に保つことができる。
【0017】
好ましい実施形態において、密封型モジュールはさらに、内部空間内に配置された、使用中に発熱する少なくとも1つの電子コンポーネントと第一の冷却液を含む。
【0018】
第二の液体冷媒は、伝導面に直接接触しながら通路内を流れるようにされる。第二の液体冷媒は好ましくは、ポンプで送られる。熱を内部空間内の第一の冷却液から通路内の第二の冷却液への伝導によって伝えることにより、熱抵抗が大幅に減少する。これによって熱伝達の効率が高まり、拡張可能で、データ処理センタ等、大量の熱を発生するシステムに適用できるシステムが得られる。さらに、伝導面を使って熱を伝達することによって得られるこのシステムの低い熱抵抗により、冷媒は常に液体の状態に保たれ、その結果、システムの複雑化、高コスト化につながる蒸気サイクル冷却が不要となる。
【0019】
また、冷却のための電力消費も、蒸気サイクル冷却の必要性が減り、または不要となるため、節減される。また、サーバボード等、電子コンポーネントと電子回路基板の密度を高めることも可能となる。
【0020】
ある密度のサーバとコンポーネントについて、冷却システムにより、好ましくは、各コンポーネントからそれを所望の動作温度範囲内に保つのに十分な熱は除去されるが、それ以上は除去されない。発熱量の少ない機器は、発熱量の大きなものほど冷却を必要としない。十分な動作に必要なレベル以下まで冷却すると、通常、不必要に余分なエネルギーを消費するため、最適な効率は得られない。
【0021】
有利な点として、通路は伝導面と接触する領域を有し、これが通路の幅を規定し、最も小さい通路の幅は伝導面の寸法と比較して有意である。
【0022】
これに加えて、またその代わりに、通路は、少なくとも1か所で方向転換する経路に沿って伝導面と界面をなす。好ましくは、この経路は直線部分を有し、最小通路幅は、経路の直線部分の長さの少なくとも10%である。他の実施形態において、最小通路幅は少なくとも、経路の直線部分の長さの10%、20%、30%、40%または50%である。これに加えて、またはその代わりに、経路は本線と支線を有し、支線の経路は本線の経路と少なくとも1点で接続される。液体の乱流が大きいほど、熱伝達を改善できる。
【0023】
第二の態様において、本発明は、電子コンポーネントを冷却する方法を提供し、この方法は、ハウジングと、伝導面を有する熱伝達装置を含み、ハウジングと伝導面とが内部空間を画定するモジュールを提供するステップと、電子コンポーネントを内部空間内に格納するステップと、内部空間に第一の冷却液を充填するステップと、第一の冷却液と第二の冷却液の間で、伝導面を通じて熱を伝導させるステップと、を含み、第一の冷却液と第二の冷却液は伝導面のそれぞれの側に配置される。伝導面またはハウジングの少なくとも一部は、電子コンポーネントの形状と適合するように成形される。
【0024】
好ましくは、熱を第一の冷却液から第二の冷却液に伝導させるステップは、第一の冷却液と第二の冷却液が液体の状態のままであるように構成される。
【0025】
本発明の第三の態様において、密封型モジュールキットを提供してもよく、このキットは、ハウジングと、伝導面を有する熱伝達装置と、を含み、熱伝達装置は、伝導面とハウジングが第一の冷却液を入れることのできる内部空間を画定するようにハウジングに結合され、熱伝達装置はさらに、第二の冷却液を受ける通路を規定し、熱伝達装置がハウジングに結合されたときに伝導面が内部空間と通路を分離して、内部空間と通路の間で伝導面を通じて熱が伝達されるようにし、さらに内部空間内に配置された電子コンポーネントを含む。伝導面またはハウジングの少なくとも一部は、電子コンポーネントの形状に適合するように成形される。
【0026】
上記の第一、第二または第三の態様のいずれかによって特定されている本発明には、多数のその他の特徴を適用することができる。それについて以下に説明する。
【0027】
有利な点として、伝導面は、第一の内部空間内に突出し、内部空間と通路間で熱を伝導するための少なくとも1つの突起を有する。少なくとも1つの突起を使用することにより、伝導面の表面積が大きくなり、伝導面と電子コンポーネントの形状をより密接に適合させることができる。これらは、熱伝導効率を高める。
【0028】
密封型モジュールに電子コンポーネントが含まれる場合、伝導面は好ましくは、第一の内部空間内に突出し、内部空間と通路間で熱を伝達するための少なくとも1つの突起を有し、少なくとも1つの突起は電子コンポーネントの形状と適合するように配置される。これはさらに熱伝導効率を高めるが、これは、コンポーネントと伝導面の間の空隙が小さくなり、また突起の総表面積が拡大することで熱流路の熱抵抗が低減し、また効率的な冷却のための冷却液の必要量が減少し、伝導性は低いが、より安価またはより軽量、またはその両方の材料(たとえば、プラスチック)をより多く使用できるようになるためである。特に、冷却効率は、冷却液が伝導面と素早く接触することにより改善する。
【0029】
必要に応じて、伝導面は、合成プラスチック材料で作製され、これは望ましい熱伝導性を有する。これに加えて、またはその代わりに、ハウジングは、合成プラスチック材料で作製してもよい。好ましくは、これは断熱性を有する。実施形態において、熱伝達装置は、合成プラスチック材料で作製してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、密封型モジュールは、電子コンポーネントに結合されたコンポーネント用ヒートシンクを更に備え、これは伝導面の少なくとも1つの突起と協働するように準備された少なくとも1つの突起を有する。
【0031】
有利な点として、伝導面の少なくとも1つの突起は、フィン構造からなる。あるいは、またはそれに加えて、伝導面の少なくとも1つの突起は、ピン構造からなる。好ましい実施形態において、少なくとも1つの突起は、ピンフィン構造からなる。ピンフィン突起は、異なる高さであってもよい。好ましくは、これらは、断面が長方形のフィンの形状である。より好ましくは、突起は、伝導面全体を覆わない。
【0032】
好ましくは、偏向器が空間内に配置される。これは、バッフルプレートまたはその他の受動的流れ制御機構の形態をとっていてもよい。このような構造物には、高温の液体の湧昇を、この構造物の真上にあり、この構造物がなければ過熱するかもしれないコンポーネントから遠ざけるように偏向させる目的がある。
【0033】
必要に応じて、複数の導電体を内部空間内に設置し、複数の導電体は、第一の冷却液の水位を検出するように構成される。この導電体は、好ましくは、モジュールの上部にあり、内部空間内に向けて下方に延びる1対のロッドの形態をとる。これらは、コンデンサとして動作し、その数値は、(誘電効果により)液体の水位の変化に合わせて変化する。適当な電子回路を取り付けることにより、第一の冷却液の水位を推定ができる。これによって、オペレータはいつ水位がその時点での液温に関する正常値より低くなったかを知ることができ、漏れの可能性が示される。同じ装置を使って、モジュールの初期充填時(または補給時)の水位も判断できる。
【0034】
これに加えて、またはその代わりに、ハウジングの透明窓を使って、水位を直接観察する。さらに選択可能な改善方法として、電子コンポーネントが設置される回路基板に、または電子コンポーネントの付近に、センサおよびその関連回路を構築する方法があろう。
【0035】
いくつかの実施形態において、伝導面が通路を画定する場合、通路の形状は電子コンポーネントの形状と適合するように構成される。これによって、第一の冷却液と第二の冷却液の間の熱伝達効率はさらに改善される。
【0036】
好ましい実施形態において、熱伝達装置は一体として形成される。熱伝達装置のための一体型のアセンブリの場合、保守が不要かもしれず、通路が事前に形成されたコールドプレート部と、コールドプレート部に溶接またはその他の方法で接着されるシーリングプレートから構成できる。そのため、ねじやガスケットが不要となり、液漏れの可能性が低下する。
【0037】
いくつかの実施形態において、熱伝達装置は、伝導面に結合され、第二の冷却液を受けるための通路を画定するベース部をさらに備える。
【0038】
1つの実施形態において、ハウジングと伝導面は内側チャンバを画定し、熱伝達装置は外側チャンバをさらに備え、通路を規定する。
【0039】
第二の冷却液を受けるための通路を規定し、内側ハウジングと協働して伝導面を提供する外側チャンバを使用することにより、モジュールを小型化できる。このような構成により、さらに、通路の幅を熱伝達要求に合わせて画定または調節することが可能となる。必要に応じて、外側チャンバは合成プラスチック材料で作製される。
【0040】
有利な点として、密封型モジュールは、ハウジングの少なくとも一部を覆う断熱層をさらに備える。好ましくは、断熱層は内部空間内にある。これに加えて、またはその代わりに、密封型モジュールは、ハウジングの少なくとも一部を覆う、内部空間の外の断熱層を有していてもよい。外部断熱体は、軟質発泡体とすることができる。これには、液体の充填、排出またはその両方のためのコネクタを支持し、それと同時に管を曲げられるようにするという別の利点がある。その結果、滑動部の耐性が大きくなり、対応のラックに挿入しやすくなる。
【0041】
好ましくは、複数の電子コンポーネントを内部空間内に配置してもよい。好ましい実施形態において、密封型モジュールは複数の電子コンポーネントを含み、そのうちの少なくとも1つは使用中に発熱し、さらに、複数の電子コンポーネントを保持する回路基板を含む。
【0042】
回路基板を注意深く選択された液体中に浸漬することによって、回路基板は空気中の不純物または本来であれば大気から凝結する水、または他の箇所からの漏れによる損害を受けないように隔離される。空気中に存在する、または水中に溶解する不純物は、たとえば、回路基板の繊細な配線に容易に損傷を与える可能性がある。また、電源、DC−DC変換機およびディスクドライブ等のその他の発熱するコンポーネントを封入して冷却することができる。少なくとも1つの電子コンポーネントがディスクドライブを含む場合、ディスクドライブは好ましくは、ソリッドステートデバイスである。可動部品を有する機器は、液体中への浸漬に適していない。
【0043】
第一の冷却液は、好ましくは、加熱時の液体の膨張に対応する空間が確保され、内部空間内の圧力が大幅に上昇しないように、密封型モジュールの内部空間の一部を占める。
【0044】
好ましくは、密封型モジュールは、回路基板とハウジングの間に配置された保護膜をさらに備え、保護膜はハウジングと回路基板の間に液体が流れないように配置される。これによって、この好ましくない経路を通じた熱抵抗が増大し、内部空間に充填する冷媒の必要量が減り、それと同時に、回路基板の後方に小型のコンポーネントを設置できるようになる。好ましい実施形態において、保護膜は変形可能である。
【0045】
有利な点として、回路基板の少なくとも一部は、ハウジングと一体形成される。電子回路基板は、モジュールハウジングの一部と、たとえば側壁だけを使って一体化することができる。すると、相互接続手段を、回路基板を通って直接ハウジングの外面に出すことができ、出口の地点においてケーブルをモジュールで封入する必要がなくなる。必要に応じて、回路基板と壁は単体として構成され、それゆえ、たとえばガラス繊維の成型を使用する封入の問題がさらに減少する。
【0046】
好ましい実施形態において、密封型モジュールは、ハウジング内に配置され、そこから液体が内部空間内に受けられるモジュールへの充填口と、充填口の密封手段と、を備える。これによって、現場で密封型モジュールの空間に冷却液を素早く充填または補給することができる。
【0047】
好ましくは、密封型モジュールは、ハウジング内に配置され、空間内の圧力が所定の限界を超えたときに空間から液体を流出させるように配置された除圧弁を備える。
【0048】
必要に応じて、通路は伝導面との接触領域を有し、これが通路幅を規定し、最小通路幅は、伝導面の寸法に比して重要である。
【0049】
これに加えて、またはその代わりに、通路は、伝導面の少なくとも一部と、少なくとも1か所で方向転換する経路に沿って界面をなす。好ましくは、経路は直線部分を有し、最小通路幅は、経路の直線部分の長さの少なくとも10%である。その他の実施形態において、最小通路幅は、経路の直線部分の長さの少なくとも10%、20%、30%、40%または50%であってもよい。これに加えて、またはその代わりに、経路は本線経路と支線経路を有し、支線経路は少なくとも1か所で本線経路に接続される。
【0050】
本発明は、冷却される電子システムにも見出すことができ、これは、本願で開示する密封型モジュールと、内部空間内に配置された電子コンポーネントと、内部空間内に配置された第一の冷却液と、ヒートシンクと、第二の冷却液が密封型モジュールの通路の少なくとも一部を通ってヒートシンクへと所定の流速で流れるように準備されたポンプ装置と、電子コンポーネントの温度を測定するように配置された温度センサと、ポンプ装置と通路のうち第二の冷却液が流れる部分の少なくとも1つを制御して、電子コンポーネントの温度が所定の最高動作温度を超えないように制御されるように構成されたコントローラと、を備える。
【0051】
有利な点として、伝導面は、第一の内部空間内に突出し、内部空間と通路の間で熱を伝導するための少なくとも1つの突起を有する。密封可能モジュールが電子コンポーネントを含む場合、伝導面は好ましくは、第一の内部空間内に突出し、内部空間と通路の間で熱を伝達するための少なくとも1つの突起を有し、少なくとも1つの突起は、その電子コンポーネントの形状と適合するように構成される。いくつかの実施形態において、密封型モジュールは、電子コンポーネントに結合されるコンポーネント用ヒートシンクを備え、これは伝導面の少なくとも1つの突起と協働するように構成される少なくとも1つの突起を有する。有利な点として、伝導面の少なくとも1つの突起はフィン構造である。あるいは、またはこれに加えて、伝導面の少なくとも1つの突起はピン構造である。好ましい実施形態において、少なくとも1つの突起はピンフィン構造である。
【0052】
本発明の第四の態様は、電子機器を冷却する方法に見出され、この方法は、ハウジングと、伝導面を有する第一の熱伝達装置とを備えるモジュールを提供するステップであって、ハウジングと伝導面とが内部空間を画定し、内部空間は第一の冷却液で満たされ、電子機器がその中に配置されているようなステップと、電子機器を内部空間内で動作させるステップと、電子機器により発生された熱を第一の冷却液から第二の冷却液へと、伝導面の少なくとも一部を通じて伝えるステップと、熱を第二の冷却液からヒートシンクへと第二の熱伝達装置を使って伝達するステップと、伝導面からヒートシンクへの第二の冷却液の流量と、伝導面のうち熱を第二の冷却液へと伝える部分との一方または両方を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御されるように設定するステップと、を含む。
【0053】
流量、熱伝達面積の一方またはその両方を設定することによって、有利な点として、熱抵抗を必要に応じて増減させて、所望の温度差を発生させることができる。これによって、(たとえば大気による最終のヒートシンクが使用される場合)最終のヒートシンクの温度が上昇したとしても、電子コンポーネントを、その最大動作温度を超えない温度に保たれる。必要に応じて、伝導面は、合成プラスチック材料で作製される。
【0054】
必要に応じて、方法は、電子コンポーネントの温度を測定するステップをさらに含む。設定するステップは、測定された温度に基づいて行われる。これは、測定された温度に基づく動態的調整の形態である。
【0055】
それに加えて、またはその代わりに、設定するステップは、伝導面からヒートシンクへの第二の冷却液の流量と、伝導面のうち熱を第二の冷却液に伝える部分との少なくとも一方は、その電子機器について予測された所定の最高動作温度に基づいて、所定のレベルに設定されることを含む。このような実施形態において、流量、伝導面の部分の一方または両方は、電子機器からの予測された発熱量または発熱量の範囲に基づいて事前設定される。
【0056】
第五の態様において、冷却される電子システムが提供され、このシステムは、ハウジングと電子機器および第一の冷却液を含む密封容器と、第二の冷却液を受けるための第一の通路を規定する第一の熱伝達装置であって、第一の冷却液と第一の通路の間で、伝導面の少なくとも一部を通じて熱を伝えるように構成された第一の熱伝達装置と、第二の冷却液を第一の熱伝達装置に、またはそこから伝えるように構成された配管構造と、を備える。このシステムは、第一の通路を通る第二の冷却液の流量と、伝導面のうち熱を第二の冷却液に伝える部分の一方または両方を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように設定するように構成される。有利な点として、第二の冷却液は、伝導面からヒートシンクに流れる。
【0057】
本発明の第六の態様は、電子機器を冷却する方法によって提供されてもよく、この方法は、容器内で電子機器を動作させるステップであって、容器はまた、第一の冷却液を含み、電子機器により発せられる熱を第一の冷却液に伝え、容器は第一の冷却液の漏出を防止するように密封されているようなステップと、第一の冷却液と第一の熱伝達装置の中の第二の冷却液との間で熱を伝えるステップと、第二の冷却液を第一の熱伝達装置から第二の熱伝達装置に管により供給するステップと、第二の冷却液と第二の熱伝達装置の中の第三の冷却液の間で熱を伝えるステップと、第三の冷却液をヒートシンクに管により供給するステップと、を含む。
【0058】
それゆえ、3段階の液体冷却が提供され、これによって、第二の冷却液と第三の冷却液の流量と圧力を個別に制御することが可能となる。したがって、第二の冷却液の圧力を下げて、この液体の漏出リスクをさらに低減することができる。これらの液体は、電子コンポーネントと密接に近接するため、漏出は望ましくない。また、有利な点として、流量を発熱量に基づいて制御し、各段階での熱伝達効率を高めることができる。
【0059】
好ましくは、第一の冷却液と第二の冷却液の間で熱を伝えるステップは、伝導によって行われる。
【0060】
好ましい実施形態において、この方法は、第二の冷却液の流量を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含む。これに加えて、またはその代わりに、この方法はまた、第三の冷却液の流量を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含んでいてもよい。これによって、第二の冷却液の流量を発熱レベルまたは量に適合させることができる。
【0061】
第一の熱伝達装置が伝導面を含む場合、この方法は必要に応じて、伝導面のうち熱が第二の冷却液に伝達される部分を、電子機器の温度が、所定の最高動作温度を超えないように制御されるように設定するステップをさらに含む。これは、たとえば、伝導面において、第二の冷却液を輸送する複数の通路と、第二の冷却液が流れるべき1つまたは複数の通路を決定し、あるいは異なる通路間で冷却液の流量を適切に平衡化して、電子機器の温度を閾値より低く保持するための適当な制御弁またはバッフルプレートを使用することによって実現できる。それによって、通路は異なる領域において、液体流量を同様にし、または変化させ、および、したがって伝導面の異なる部分からの熱伝達率を変化させる。
【0062】
いくつかの実施形態において、この方法は、第二の冷却液の流量と、第三の冷却液の流量の少なくとも一方を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように、また、第一の期間中に、第二の冷却液と第三の冷却液の間または第三の冷却液とヒートシンクの間の熱伝達率が所定の最大率より高くならないように、また、後の第二の期間中に、第二の冷却液と第三の冷却液の間、または第三の冷却液とヒートシンクの間の熱伝達率が、所定の最大率より高くなってもよいように制御するステップをさらに含んでいてもよい。
【0063】
必要に応じて、制御するステップは、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように、また、第一の期間中に、第二の冷却液と第三の冷却液の少なくとも1つの温度が所定の最低平均温度より低くならないよいように、また、後の第二の期間中に、第二の冷却液と第三の冷却液の温度が所定の最低平均温度より低くなってもよいように実行される。
【0064】
本発明の更なる態様において、電子機器を冷却する方法が提供され、この方法は、容器内で電子機器を動作させるステップであって、容器はまた、第一の冷却液を含み、電子機器により発せられる熱が第一の冷却液に伝えられるようになっており、容器は密封されて、第一の冷却液の漏出が防止されているようなステップと、第一の冷却液と第一の熱伝達装置の中の第二の冷却液の間で熱を伝えるステップと、第二の冷却液とヒートシンクの間で熱を伝えるステップと、第二の冷却液とヒートシンクの間の熱伝達率を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように、また、第一の期間中に、熱伝達率が所定の最大率を超えないように、また、その後の第二の期間中に、熱伝達率が所定の最大率を超えてもよいように制御するステップを含む。
【0065】
この方法で使用されるシステムの有利な特徴は、冷却装置の高い熱容量である。これには、多くの利点と可能性がある。システムの一部が故障しても、コンポーネントがすぐには損傷を受けない。温度は上昇するが急激ではなく、保守要員は時間的に、より余裕をもって、故障部分を分離し、不具合の拡大を最小限にとどめることができる。同様に、このシステムは、周辺温度の変動が大きい日中の環境にも対処できる。システムは日中に発生する熱にも耐え、コンポーネントの最高動作温度を超えない。熱は、夜間に安全に低温部へと放散される。システムの流量管理アルゴリズムは、このような日中の高い周囲温度を考慮して構成されてもよい。
【0066】
有利な点として、電子システムを冷却する方法が提供され、この方法は、この第六の態様にしたがって電子機器を冷却する方法のステップを実行するステップと、第二の容器の中で第二の電子機器を動作させるステップであって、第二の容器はまた、第四の冷却液を含み、電子機器によって発せられる熱が第四の冷却液に伝えられるようになっており、第二の容器は密封されて、第四の冷却液の漏出が防止されているようなステップと、第四の冷却液と第三の熱伝達装置内の第五の冷却液の間で熱を伝えるステップと、を含む。必要に応じて、この方法は、第五の冷却液の流量を制御するステップをさらに含む。
【0067】
2つの容器を有するユニットは重く、一人で持ち上げるための衛生安全限度を超える可能性があるため、ラックに取り付けるのは難しいかもしれない。1つの実施形態において、第一と第二の容器が使用され、これらの容器が背中合わせに設置される。言い換えれば、第一の容器のコネクタは、第二の容器のコネクタに隣接して位置付けられる。ラックの中に容器を背中合わせに配置し、中央に配線と液体用の管を設けることにより、1つのモジュールの、一人で持ち上げられるユニットが実現される。
【0068】
好ましくは、第二の冷却液と第五の冷却液が合流される。これによって、第一の冷却段階は別であるが、第二の冷却段階は共通の、複数の電子機器のための効率的な冷却が可能となる。より好ましくは、この方法は、第一の熱伝達装置からの第二の冷却液と、第三の熱伝達装置からの第五の冷却液をプレナムチャンバに管によって供給するステップをさらに含む。より好ましくは、第二の冷却液と第五の冷却液は、合流させてから、プレナムチャンバに到達させる。必要に応じて、この方法はまた、プレナムチャンバからの第二の冷却液を第一の容器に管により供給し、プレナムチャンバからの第五の冷却液を第二の容器に管により供給するステップを含む。
【0069】
必要に応じて、この方法は、合流された第二の冷却液と第五の冷却液の流量を、第一の電子機器の温度が第一の所定の最高動作温度を超えないように、また、第二の電子機器の温度が第二の所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含む。
【0070】
この実施形態では、モジュールごとの個別の流量制御が不要となる。合流された液体の全体的流量の制御は、たとえば供給側のプレナムチャンバの中のバッフルによって、各冷却ユニットへの液体流量バランスを事前設定することと組み合わせたときに、満足な結果を得ることができる。
【0071】
別の実施形態において、この方法は、第三の熱伝達装置からの第五の冷却液を第四の熱伝達装置に管により供給するステップと、第五の冷却液と第四の熱伝達装置内の第三の冷却液の間で熱を伝達させるステップをさらに含む。
【0072】
第七の態様において、本発明は、冷却される電子システムにおいて見出すことができ、このシステムは、ハウジングと電子機器と第一の冷却液を含む密封容器と、第二の冷却液を受けるための第一の通路を画定する第一の熱伝達装置であって、第一の冷却液と第一の通路の間で熱を伝えるように構成された第一の熱伝達装置と、第一の通路から第二の冷却液を受けるための第二の通路とヒートシンクに結合するために第三の冷却液を受けるための第三の通路を含む第二の熱伝達装置であって、第二の通路と第三の通路の間で熱を伝えるように構成された第二の熱伝達装置と、を備える。
【0073】
好ましくは、第一の熱伝達装置は伝導面を含み、ハウジングと伝導面とが、電子コンポーネントと第一の冷却液が配置される内部空間を画定する。より詳しくは、伝導面は、内部空間と第一の通路を分離して、内部空間と通路の間で伝導面を通じて熱が伝達されるようにする。
【0074】
有利な点として、伝導面またはハウジングの少なくとも一部は、電子機器の形状と適合するように成形される。
【0075】
有利な点として、伝導面は、第一の冷却液からの熱を受けるための少なくとも1つの突起を有する。好ましい実施形態において、少なくとも1つの突起は、電子機器の形状に適合するように配置される。必要に応じて、冷却される電子システムは、電子機器に連結され、伝導面の少なくとも1つの突起と協働するように配置された少なくとも1つの突起を有するコンポーネント用ヒートシンクをさらに備える。
【0076】
有利な点として、伝導面の少なくとも1つの突起は、フィン構造である。あるいは、またはこれに加えて、伝導面の少なくとも1つの突起は、ピン構造である。好ましい実施形態において、少なくとも1つの突起は、ピンフィン構造である。
【0077】
1つの実施形態において、熱伝達装置は、伝導面に結合され、かつ第二の冷却液を受ける通路を規定するベース部をさらに備える。
【0078】
有利な点として、伝導面は、合成プラスチック材料で作製される。これに加えて、またはその代わりに、ハウジングは、合成プラスチック材料で作製されてもよい。実施形態において、熱伝達装置のベース部は、合成プラスチック材料で作製されてもよい。
【0079】
必要に応じて、モジュールは、そこから第一の冷却液を受けることのできる容器への充填口と、充填口の密封手段をさらに備える。これに加えて、またはその代わりに、モジュールは、容器内の圧力が所定の限度を超えたときに、容器から第一の冷却液を排出するように構成された除圧弁をさらに備える。
【0080】
電子機器が長軸を有する場合、伝導面は好ましくは、電子機器の長軸と適合するように配置された長軸を有し、それによって空間と通路の間で、伝導面を通じて熱が伝導される。
【0081】
必要に応じて、冷却される電子システムは、第二の冷却液の流量を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御する流量制御装置をさらに備える。
【0082】
これに加えて、またはその代わりに、冷却される電子システムは、第三の冷却液の流量を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するために準備された流量制御装置をさらに備えていてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、密封容器は第一の密封容器であり、冷却される電子システムは、第二のハウジング、第二の電子機器、第二の電子機器からの熱を受けるための第四の冷却液、第五の冷却液を受けるための第四の通路を有する第三の熱伝達装置を含む第二の密封容器をさらに備え、第三の熱伝達装置は、第四の冷却液から第四の通路に熱を伝えるように構成される。
【0084】
好ましくは、第一の通路と第四の通路は連結されて、第二の冷却液と第五の冷却液を合流させる。必要に応じて、冷却される電子システムは、合流された第二の冷却液と第五の冷却液を回収するように構成されたプレナムチャンバをさらに備える。
【0085】
有利な点として、冷却される電子システムは、合流された第二の冷却液と第五の冷却液の流量を、第一の電子機器と第二の電子機器の温度がそれぞれ第一と第二の所定の最高動作温度を超えないように制御するように準備された流量制御装置をさらに備える。
【0086】
好ましくは、この流量制御装置は分流装置を備え、この分流装置は、第二の冷却液の流量を、第一の電子機器の温度が第一の所定の最高動作温度を超えないように設定し、また、第五の冷却液の流量を、第二の電子機器の温度が第二の所定の最高動作温度を超えないように設定するように構成される。
【0087】
あるいは、冷却される電子システムは、第四の通路から第五の冷却液を受けるための第五の通路と、第六の冷却液を受けてヒートシンクに連結させる第六の通路を有する第四の熱伝達装置をさらに備え、第二の熱伝達装置は、第五の通路と第六の通路の間で熱を伝達するように構成されている。
【0088】
第八の態様において、本発明は、電子機器のための容器の内部に冷却液を充填する方法において見出されてもよく、この方法は、容器を充填温度まで加熱するステップと容器の内部を減圧するステップの少なくとも一方によって、容器が冷却液を受ける準備をするステップと、容器に冷却液を充填するステップと、容器を密封し、冷却液の漏出を防止するステップと、を含む。
【0089】
容器と液体を充填温度または圧力に適合させ、この温度または圧力で容器に冷却液を充填することによって、動作条件で液体が充填される容器の内部スペースの容積が増大し、その際、容器内の圧力をそれほど上昇させない。過剰な圧力は、容器または電子機器に損傷を与える可能性がある。
【0090】
必要に応じて、この方法は、冷却液を充填温度まで加熱するステップと、密封容器と冷却液を動作温度まで冷却するステップと、をさらに含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、容器を充填するステップは、容器を適応させるステップの前に実行される。必要に応じて、容器を適応させるステップは、電子機器を動作させるステップを含む。
【0092】
第九の態様において、電子機器の容器の内部に冷却液を充填する方法が提供され、この方法は、冷却液を充填温度まで加熱するステップと、容器に加熱された冷却液を充填するステップと、容器を密封して冷却液の漏出を防止するステップと、密封された容器と冷却液を動作温度まで冷却するステップと、を含む。これは、第八の態様の代案であり、第八と第九の態様はまた、必要に応じて組み合わせることもできる。
【0093】
第八と第九の態様のいずれかまたは両方に、数多くの好ましい、または任意の特徴がある。有利な点として、充填温度は、冷却液中に溶解している気体が冷却液から除去されるように選択される。したがって、空気、水分およびその他の溶解気体は、容器の内部から除去される。容器内の乾燥の必要性が低くなり、または不要となる。
【0094】
好ましくは、充填温度は、電子機器の最高動作温度に基づいて選択される。有利な点として、充填温度は、電子機器の最高動作温度と同等またはそれより高くするように選択される。
【0095】
好ましい実施形態において、容器を充填するステップは、容器内のすべての空気が排出されるように実行される。
【0096】
本発明は、さまざまな方法で実施することができ、その1つを以下に、あくまでも例として、添付の図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】各々が本発明による2つの密封型モジュールを備える複数の冷却ユニットを収容した装置ラックの簡略前面図である。
図2図1の装置ラックの簡略側方断面図である。
図3】カバーが取り付けられた、図1に示される冷却ユニットを示す図である。
図4】カバーが取り外され、本発明による2つの密封型モジュールが見えるようにした冷却ユニットの図である。
図5】本発明のある実施形態による、発熱する電子コンポーネントを含む密封型モジュールの拡大断面図である。
図6図5の密封型モジュールの上部の断面図である。
図7図5の密封型モジュールと使用されるコールドプレートのある実施形態の密封型モジュール面を示す図である。
図7A図5の密封型モジュールと使用されるコールドプレートの、図7とは反対側の面のある実施形態の、第二の冷却液に関する液流通路を示す図である。
図7B図7Aに示されるコールドプレート60の面の別の実施形態を示す図である。
図8】本発明による1つの冷却ユニットを含む3段階冷却システムの概略図である。
図9】本発明による複数の冷却ユニットを有する3段階冷却システムのブロック図である。
図10図9の3段階冷却システムと使用される監視および制御システムを示す図である。
図11A】本発明による密封型モジュールの第二の実施形態の第一の側面図である。
図11B図11Aに示される実施形態の第二の側面図である。
図11C図11A図11Bに示される実施形態の、より詳細な図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
まず、図5を参照すると、本発明のある実施形態による、発熱する電子コンポーネント69を含む密封型モジュール41の分解断面図が示されている。密封型モジュールは、ハウジング81と、コールドプレート60の一部を形成するフィン付伝導面71と、ハウジング81と伝導面71によるコンポーネントの組み立て後に画定され、第一の冷却液(図示せず)が充填される容器空間と、伝導面71に隣接する液流通路61と、小型電子コンポーネント68と、大型電子コンポーネント69と、メモリモジュール76と、を含む。
【0099】
密封型モジュールはさらに、電子回路基板75と、電子回路基板75のための取付ピラー63と、大型電子コンポーネント69に取り付けられたコンポーネント用ヒートシンク70と、取付ピラー63を伝導面71に固定するためのねじ80と、コールドプレートの、伝導面上のフィンと反対側のカバープレート78と、ハウジング81のための断熱体73と、第一の密封ガスケット62と、第二の密封ガスケット64と、コールドプレートアセンブリの構成部品をまとめて保持するためのねじ79と、伝導面71の上のピンフィン突起65と、をさらに含む。断熱体73はまた、ハウジング81と回路基板75の間の保護膜としても機能できる。
【0100】
コールドプレート60は2つの面を有するように製作され、各々の面が別の機能を有する。伝導面71は、ピンフィン付プレートであり、コールドプレートの片面を形成する。ハウジング81は、電子回路基板75、コールドプレートのピンおよび第一の冷却液(図示せず)のための内部スペースができるように、ピンフィン付プレート71に取り付けられる。組み立てられた小容器は、ガスケット62によって実質的に密封され、液体の喪失または空気の侵入が防止される。ピンフィンプレートは有効に、組み立て後のカプセルの蓋となる。
【0101】
冷却対象のコンポーネントを担持する電子回路基板75は、ピラー63を取り付けることによってコールドプレート60に取り付けられ、それによって回路基板がコールドプレート60に懸架され、ハウジング81を取り付ける前に、コールドプレートのフィンと回路基板上のコンポーネントとを正確に位置合わせすることができる。
【0102】
あるいは、回路基板は、ハウジング81から延びるボスまたはこれと同等の手段を取り付けることによって、ハウジング81に取り付けてもよい。
【0103】
ピンフィン付伝導面71のフィン65は通常、回路基板75のコンポーネント側に面する。ある場合において、大型のコンポーネントは、回路基板の両側に設置してもよい。その場合、ハウジングは、回路基板の、ピンフィン付伝導面71とは反対側において、コンポーネントの周囲の形状に合わせて形成してもよく、その結果、冷却液の流れが改善され、必要な冷却液が少なくなる。
【0104】
図5に示される実施形態において、コールドプレートは、単独部品として製作され、別々に形成される2つの面を有する。あるいは、コールドプレートは2つの部品、すなわち、裏面が平坦なピンフィン付プレートと、同じく裏面が平坦な、液体が流れるための通路61を有するプレートとして製造してもよく、これら2つの平坦な面は組み立て時に接合される。コールドプレートアセンブリ60は、ピンフィン付伝導面の裏面となる表面を有し、そこに61に示されるような断面の通路が形成される。
【0105】
電子回路基板75のコンポーネント側は、伝導面71のフィン65に面する。フィンの端とコンポーネントの間に小さなギャップが設けられる。フィンは断面が長く、フィンの高さにはばらつきがあり、電子回路基板上の大きさの異なるコンポーネントとフィンの上部との間に小さなギャップが保持されるようになっている。電子コンポーネント68と69の面およびメモリモジュール76の縁辺は、回路基板の表面からの突出量が異なる。小型コンポーネント68は比較的高さの低い形状で、大型のコンポーネント69はより高低差の大きい形状であり、対応するフィン65の高さはそれに応じて異なる。ピンフィンの高さと、回路基板75の上のコンポーネントとピンフィンの上部とのギャップは、できるだけ小さくなるように構成され、これは効率的冷却の要求による。この構成によって、小容器内で必要な冷却液の総量が減り、冷却ユニットの実装密度が高くなる。
【0106】
システムが動作中であると、回路基板上のコンポーネント68、69およびメモリ76から発せられる熱は、当初は局所的な伝導によって、その後、加熱された液体が膨張し、浮揚性を有するようになると、対流によって、冷却液(図示せず)に伝達される。対流する液体は急速に、伝導面71のフィン65およびその他の面と接触する。
【0107】
伝導面71のフィン65からの熱は、通路61を通じて流れて循環する第二の液体に伝導され、それによって伝導面71および、したがって冷却液を冷却する。
【0108】
回路基板75の上で最も大量の熱を発生するコンポーネントは一般に、マイクロプロセッサである。この場合、このようなコンポーネントの冷却効率は、フィン付のコンポーネント用ヒートシンク70を、コンポーネントと物理的および熱的に直接接触するように追加することによって改善してもよく、そのフィンは、コールドプレート上のフィンのアレイと互い違いになっていてもよい。コンポーネント用ヒートシンクのフィンは、少なくとも部分的に、コールドプレートのピンフィンと物理的に接触していてもよい。ギャップが残され、そこを第一の冷却液が流れることができる。
【0109】
追加の断熱層73が、好ましくは、密封型モジュール41のハウジング81の内部に設置される。その他の断熱材もまた、コールドプレートカバー78の外部とコールドプレート60の縁辺に加えてもよい。断熱材により大気中への局所的な熱損失が低減されるが、このような熱損失は、多数の電子回路基板を用いる大型の装置において大きく、室温を好ましくないレベルまで上昇させる可能性がある。
【0110】
電子回路基板75には、片側だけに大型のコンポーネントを設置し、反対側には動作中の発熱量の少ない小型のコンポーネントだけを設置してもよい。すると、回路基板75の、コンポーネントのない側の付近に液体が流れるということがなくなるため、密封型モジュール41の動作は改善されうる。断熱材73は、回路基板75とハウジング81の間の柔軟な保護膜としての機能を果たすことができる、これは、回路基板のこの面に取り付けられるかもしれない小型コンポーネントの形状に対応させることができる。あるいは、別の保護膜(図示せず)を、ハウジング81と電子回路基板75の間に設置することができる。すると、冷却液の対流は回路基板75の主なコンポーネントが設置された側と伝導面71との間のスペースに集中する。
【0111】
本発明の用途は、コンピュータシステムに限定されない。しかしながら、コンピュータシステムは大量の熱を発生するため、冷却の改善が利益をもたらす。このようなシステムでは、1つまたはそれ以上のマイクロプロセッサとその他いくつかのデジタルおよびアナログデバイス、たとえばメモリチップ(RAM、ROM、PROM、EEPROMおよび同様のデバイス)、特定用途集積回路(ASIC)およびさまざまな関連する能動および受動コンポーネントが一般に、回路基板上に取り付けられ、それらが、コンピュータシステムの主要部分として動作するという機能を果たす。電子コンポーネントは回路基板の両側に実装できるため、少なくとも嵩張るコンポーネントを片側のみに取り付けることがより一般的である。その他のデバイスが、ケーブル、光学的手段または無線伝送によって回路基板に接続され、全体としてコンピュータ、コンピュータシステムまたはサーバを形成する。
【0112】
熱はさまざまなコンポーネントから発生されるが、一般に、マイクロプロセッサが最大の発熱コンポーネントである。最適に設計された冷却システムは、各コンポーネントから大量の熱を除去して、設計された動作温度範囲内に抑えるが、それ以上はできない。発熱量の少ないデバイスは、発熱量のより多いものほど冷却を必要としない。十分な動作に必要な程度以上に冷却すれば通常、不必要に余分なエネルギーが消費され、したがって最適な効率は得られない。
【0113】
さらに、コンピュータ基板上のコンポーネントの実装密度は、従来のコンピュータハウジングの大きさと、空冷が利用されるという仮定を一部の要因として決定される。大型のシステム、特にサーバセンタでは、コンポーネントの実装密度をますます高めて、全体的な占有スペースを小さくすることが望ましい。それと同時に、発生された熱がより小さなスペースに集中するため、より有効な除熱手段が必要となる。除熱の改善によって、コンポーネントの実装密度が高まるかもしれず、より詳しくは、単位体積当たりの処理能力が向上する。
【0114】
次に、図6を参照すると、図5の密封型モジュール41の上部の断面図が示されている。同じ特徴が示されている場合は、同じ参照番号が使用される。モジュールの深さは、そうしないと描きにくいいくつかの特徴の詳細を明らかにするために、誇張されている。図6ではさらに、第一の冷却液66と、充填口44と、密封手段43と、除圧装置45と、留めねじ79を受けるための固定手段82と、密封ガスケット62と、バッフルプレート74と、容量ロッド72が示されている。充填口44は第一の冷却液66を受けるためのものであり、密封型モジュール41の充填後に液体の損失を防止するための密封手段43を有する。除圧装置45によって、温度、圧力の一方または両方の極限条件下、すなわち正常範囲外の時に、液体を逃がすことができる。
【0115】
通常、発熱量が最大の、より大型のコンポーネントは、モジュール41の下側部分の方に設置される。状況により、加熱された液体66は、幅の狭い対流湧昇として上昇するかもしれず、それによってモジュール内のより高い位置にあるコンポーネントが過熱する可能性がある。そのため、バッフルプレート74を取り付け、高温の液体の湧昇をモジュールの上側部分にあるコンポーネントから遠ざけるように偏向させて、より低温の液体と混合して、モジュール内で再循環するようにしてもよい。同様に、発熱量の大きい2つまたはそれ以上のプロセッサが回路基板75に設けられる場合、一方のプロセッサがもう一方の上に設置され、低いほうの位置に設置されたプロセッサからの加熱された液体を受ける可能性がある。そこで、バッフルプレート74または、高温の液体を受動的に偏向させる、同様または同等の手段を、モジュールのより低い部分に取り付けてもよい。
【0116】
一般に、冷却液66は揮発性物質である。モジュールからの少量の漏出は検出が困難であるかもしれず、それは、液体が観察される前に蒸発してしまうかもしれないからである。その場合は、容量ロッド72をモジュール41の上側部分に取り付け、通常は液体66の中に浸漬し、外部検出器(図示せず)に接続してもよく、この検出器が容量を測定する。液体がモジュールから漏出すると、液体66の水位が低下して、容量が変化する。それゆえ、容量が検出可能な程度で変化すると、アラームを発し、モジュールからの過剰な液体損失が知らされる。容量ロッド72とそれとの接続手段と検出回路は、あるいは、カスタム化された電子回路基板に構築してもよく、それによって、小容器全体の組み立てが簡略化され、容量ロッド72がハウジング81に入る部分から液体が漏出する可能性がなくなる。
【0117】
液体の水位を監視するその他の手段として、小さな透明窓(図示せず)をハウジング81の上側部分に設けてもよい。この窓により、モジュール内の液体77の水位を直接観察できる。
【0118】
次に、図7を参照すると、図5の密封型モジュール41に使用されるコールドプレート60のある実施形態の片面が示されている。この面はピンフィン付プレートとなり、図5に示されるハウジング81に取り付けられて、密封可能な第一段階の冷却モジュールを形成する。図7Aは、このコールドプレートの実施形態の反対側の面を示す。
【0119】
図7に示されるコールドプレート60の面には、伝導面71、第一のピンフィン96、第二のピンフィン97、密封ガスケット用の溝87、図5のハウジング81を取り付けるための留めねじ用穴88がある。ピンフィン96と97は、伝導面71からの突起を形成する。
【0120】
第二の冷却液用の供給口84と排出口83は、図7において見えてはいるが、コールドプレートの図7における背面側につながっている。モジュール全体の取付用突起90は、液体の供給および排出管83、84も支持する。ピンフィン96は、高さがピンフィン97より高い。図のピンフィンは例であり、ピンフィンの実際のレイアウトと大きさは、冷却対象のコンポーネントの形状と発熱特性によって、図とは違うものでもよい。
【0121】
次に、図7Aを参照すると、図5の密封型モジュール41に使用するためのコールドプレート60の、図7とは反対面のある実施形態が示されている。流れを方向付けるための指状部85、89により、コールドプレート60の中に通路91ができ、この通路はコールドプレート60の境界内に連続的な回旋パターンを作り、穴92を介して、第二の冷却液のための供給口コネクタ84と排出口コネクタ83として表面に出る管に結合される。
【0122】
コールドプレート60の図に示される側の平坦部分は、図7に示される伝導面71の裏面である。図5のカバー78は、穴88と整合するねじでコールドプレートに取り付けられ、溝87に嵌められたガスケットによって密封され、通路91を取り囲み、これによって、アセンブリ内で回旋する通路構成ができる。組み立てられた通路構成には保守が不要であるため、カバー78をコールドプレート60のベース部に直接溶接することにより、改良されたアセンブリが構成されるかもしれない。接着剤または、カバーを永久的に固定するためのその他の技術も、上記の代わりに使用できる。すると、ガスケット64と留めねじが不要となり、第二の冷却液の漏出の可能性が低下する。
【0123】
あるいは、1つの回旋通路構成を分岐させて、2つまたはそれ以上の通路を形成し、第二の冷却液のための注入口と排出口の接続部を共通としてもよい。2つまたはそれ以上の通路は、寸法が同様でも異なっていてもよく、回旋していても、まっすぐでもよく、コールドプレートの異なる部分で第二の冷却液の流量を変えることができる。
【0124】
図7Bを参照すると、図7Aに示されるコールドプレート60の面の別の実施形態が示される。これは、いくつかの通路を略垂直方向に並べた、1つの可能な配置を示す。通路の境界に流れを方向付けるための指状部93がある。供給口84から入る液体の流れは通路間で分けられ、各通路内の流量はその通路の幅、その通路の入り口の形状および液体供給穴92の位置に依存する。
【0125】
それゆえ、アセンブリを、異なる領域での液体流量を同様にし、または変化させ、それゆえ、コールドプレートの異なる部分からの熱伝達率を変化させるように配置することが可能である。コールドプレート60の、通路から反対側の伝導面に隣接する電子コンポーネントは、その発熱量が異なるかもしれない。発熱量がより高レベルであれば、これは、熱伝達率のより高い領域に対応させることが有利かもしれない。
【0126】
必要に応じて、アセンブリにある程度の調整を含めてもよい。留めねじ95によって取り付けられる1つまたはそれ以上の調節可能なバッフルプレート94を設置して、液体の流れを通路の1つに向かわせ、またはそれから遠ざけるように方向付けてもよい。バッフルプレートは、ねじ95を緩めて、バッフルプレートを新しい位置に回転させ、ねじを締めなおすことによって調節してもよい。この例において、調節は、カバーを取り付ける前に行うが、組み立て後のユニットの外からバッフルプレートを調節する手段を追加することも容易にできるであろう。
【0127】
アセンブリ全体の取付突起90はまた、供給口コネクタ84と排出口コネクタ83も支持する。
【0128】
コールドプレート60と伝導面71に使用される材料は、良好な熱伝導体、一般には金属が選択される。製造しやすさと、量産の低コスト化のために、熱伝導特性は劣るが、依然として十分であるプラスチック材料も利用できる。コールドプレート60の中に形成される通路91は、コールドプレートを通って外部へと循環する第二の冷却液を搬送し、熱をシステムの別の冷却段階へと伝えるために使用される。
【0129】
密封型モジュール41は第一の冷却段階となり、冷却ユニットの一部を形成し、各冷却ユニットが1つまたはそれ以上のモジュールを担持する。少なくとも1つ、および一般的には多くの第一段階冷却ユニットがシステム内に配置される。冷却ユニットは、あらゆる好適なハウジングの中に設置できるが、1つのシステム内で大量に使用する場合は通常、従来の装置ラックが使用される。
【0130】
図4において、カバーが取り外された冷却ユニットが示され、2つの密封型モジュールが見える。図4図6図7と同じ特徴が示される場合は、同じ参照番号が使用される。ここにはさらに、フレーム31、ロッキングタブ32、データ伝送ケーブル46、電源ケーブル47、ケーブル引込口用第一の密封手段50、ケーブル引込口用第二の密封手段51、および試験監視パネル52が示されている。
【0131】
基本的に、図4は、各冷却モジュール41の密封可能部分を示し、残りの部分は、モジュール反対側にあって、図5の内部コールドプレートと伝導面によって分離されている。冷却ユニットは、フレーム31を備え、これは冷却モジュール41と各種の液体および電気的相互接続手段を支持する。フレーム31の前面パネルには、試験監視パネル52とロッキングタブ32があり、ロッキングタブはヒンジの周囲で回転して、ユニットを装置ラック内の所定の位置にロックすることができる。
【0132】
2つの密封されたモジュール41が示されている。各々の密封型モジュール41のためのハウジング81は、プラスチックまたはこれと同等の材料で作製され、この材料は、電気的絶縁体となり、また断熱性を有するほか、モジュール内で使用される冷却液と反応しないものが選択される。ハウジング81は固定手段56によって留めつけられる。電源を供給し、双方向データ伝送をサポートするケーブル46、47は、引込地点50、51を介してカプセル内に入り、密封され、液体の漏出または空気の侵入を防止する。ケーブル46、47の終端は、冷却ユニットの後面のそれぞれのコネクタ(図示せず)に連結される。
【0133】
各モジュールのコールドプレート側(図4には示されていない)は、循環する第二の液体によって冷却される。2つの密封型モジュール41の各々は、第二の冷却液のための供給管53を通じて液流分配機55に接続される。液流分配機55は2つの出力と、別の管58で連結された1つの共通の入力を有する。これは、第二の冷却液をモジュール41のために分け、共通の入力は別の管58によって、冷却ユニットの後面パネルの液体供給コネクタ12に接続される。同様に、2つの密封型モジュールの各々からの液体排出管54は、液体を合流ユニット57まで搬送し、その共通の出力は別の管59によって冷却ユニットの後面パネルの液体排出コネクタ11に接続される。
【0134】
組み立てられた密封型モジュール41には、部分的または完全に、充填口44から第一の冷却液66が充填され、その後、密封装置43で密封される。充填手順は、工場での組立時、または現場での冷却モジュールの据え付け時に行うことができる。
【0135】
充填中、密封型モジュール41には途中まで液体が充填され、残りのスペースは、その蒸気とある程度の残留気体の混合物が占めるようにする。これを実現する1つの方法は、液体とモジュールを充填温度(Tfill)まで加熱することであり、この充填温度(Tfill)は、気温より十分に高く、システムの最高動作温度(Tmax)と略同じになるように選択される。電子コンポーネントの最高保管温度は一般に、最高動作温度よりはるかに高いため、Tfillは、想定されるシステムの最高動作温度であるTmaxより低くても、同等でも、それ以上であってもよい。
【0136】
次に、液体を追加して、密封モジュール41の中の空気の大部分を排出させ、液体の水位が冷却対象のコンポーネント全体を実質的に浸漬するのに十分となるようにする。次に、密封モジュール41を密封装置43で密封し、液体の漏出と、その後の空気の侵入を防止する。次に、密封型モジュール41を室温まで冷却する。液体が収縮してスペースが残り、これは液体の蒸気と空気の混合物で占められる。充填手順は2ステップまたはそれ以上に分けて行い、1回のステップで密封型モジュール41に追加された液体がある程度冷却される時間をおいてから、また追加するようにしてもよい。
【0137】
それゆえ、周囲温度では、充填され、密封されたモジュール内の蒸気と空気は大気圧より低い状態にある。これは動作中に上昇して、外部の気圧と同等またはそれより若干上昇しうる。モジュールへの充填を周囲温度で行って密封した場合、動作中およびTmaxへの加熱中に上記の方法で充填した場合よりはるかに高く、損傷を与えかねないような内部圧力にさらされる。
【0138】
必要に応じて、この方法を利用して、Tfillでモジュールを満杯にし、TfillをTmaxより高く選択することによって液体内のすべての空気を除去し、冷却時に液体の上方に残っているスペースが、大気圧より低い圧力の液体からの蒸気だけで占められるようにしてもよい。液体を加熱することには、未処理の液体の中に存在するかもしれない、溶解した気体不純物の一部または全部が排除されるという別の利点がある。
【0139】
また別の充填方法は、液体とモジュール41のどちらも周囲温度にあるときに充填口44からモジュール41に液体を追加して、冷却対象の電子コンポーネントを十分に浸漬できる所定の水位まで充填する方法である。密封手段43で密封する前に、モジュールをその電源と電子コンポーネントに接続し、電子コンポーネントは、液体温度がTmaxまたはその近くまで上昇するように動作させる。次に、モジュールを密封して、電源を切断し、温度を下げる。
【0140】
さらに別の充填方法は、真空下で行い、液体を周囲温度でモジュールに追加できるようにするもので、それと同時に全部または一部の空気が排除される。これを実現する1つの方法として、弁と、密封装置43から空気が送出され、液体が入るための管を連結する手段を取り付ける。弁は、管が接続されると開くが、取り外されると閉じて、自動的にモジュールを密封する。管はT字型の接続部を有し、一方のアームは別の閉止可能な弁を介して真空ポンプに接続される。T字型接続部のもう一方のアームは柔軟な管によって、所定の量の充填液で満たされている容器に接続される。当初、容器は、液体が充填口の高さより低くなる位置に保持される。管の端は、それぞれモジュールと容器と気密状態で連結される。真空ポンプへの弁が開き、空気のほとんどがポンプによってモジュールと液体容器から排出される。すると、真空ポンプへの弁が閉じ、容器は充填口の高さより高い位置まで上昇される。すると、液体がモジュール内に流れて、利用可能なスペースが所定のレベルまで満たされ、冷却対象のコンポーネントが浸漬される。最後に、T字型接続部を有する管をモジュールから引き抜くと、充填口の弁が自動的に密封し、空気の侵入または液体の損失を防止する。このようにして、モジュールには所定のレベルまで液体が充填されており、大気圧より低い圧力の蒸気または空気のためのスペースが残る。
【0141】
現場での充填にも有益な別の方法は、低温の、または暖かい液体を充填する方法であり、これは高温の液体をこぼした場合、危険が大きくなるからである。この場合、液体の上には膨張の分として、空気の隙間を必ず残す。液体は、工場で前処理によって溶解気体を排除してから、密封容器の中に保管する。密封型モジュール41の内部スペースには乾燥空気を満たし、密封装置を取り付ける。密封型モジュールに液体を充填する際、密封装置43を外し、充填口44から指定量の液体を密封モジュール41の中に注入したら、すぐに密封装置43を戻す。追加される液体の指定量は、有効に冷却するのに十分であるが、想定されるシステムの最高動作温度であるTmaxまでの温度で液体が膨張する分として、空気で満たされるスペースが残る。
【0142】
想定される最低室温より低い温度では、液体はさらに収縮し、電子回路基板74が十分に液体に浸漬されなくなるかもしれない。これは、モジュールが動作していないとき、保管中または飛行機等での輸送中、外部の圧力と温度が低いときに発生すると想定される。ハウジングとコールドプレートの間の密封手段62は、非動作時、保管および輸送時、Tmaxの条件下について想定される限界の間の温度および圧力の変化に耐えられるものとする。
【0143】
maxを超えると、システムはその設計時の温度範囲から出る。そのような高温になる可能性はきわめて低いが、除圧弁装置45によって、Tmaxを超えた液体は排出され、この温度では液体がモジュール内部の利用可能なスペースを満たし、またはこれを略満たす。除圧弁は、充填口44のための密封手段43と組み合わせてもよい。
【0144】
第一の冷却液66は、多数の望ましい特性に基づいて選択される。これは電子回路基板75の性能または、回路基板75とその他の外部機器の間の情報伝送に大きな影響を与えるべきではない。また、冷却液は、冷却モジュールのいずれのコンポーネントに対しても腐食性を有するべきではなく、あらゆる動作、保管および輸送温度で液体の状態を保ち、できるだけ効率的に電子コンポーネントから熱を遠ざけるように十分に比熱容量が高く、急速な対流を助けるように、膨張率は十分に高く、粘性は十分に低く、低コストで、安全に使用でき、漏出しても無害であるべきである。
【0145】
適当な第一の冷却液66の一例は、ハイドロフルオロエーテル化学物質である。これは、すべての望ましい特性を有し、たとえば、高い膨張率と十分に高い比熱容量を有するため、加熱されると高い質量流量と急速な対流を提供し、したがって、高温のコンポーネントから素早く熱を遠ざける。
【0146】
図3には、図4の冷却ユニットが示され、そのフレーム31にカバー33が取り付けられ、組み立てられた冷却ユニット2を形成している。冷却ユニット2は、第一のデータコネクタ27、第二のデータコネクタ28、第一の電源コネクタ29、第二の電源コネクタ30、およびフロントパネルロッキングタブ32をさらに備える。
【0147】
標準的装置ラックに格納された場合、各コールドプレート60はそれぞれの密封型モジュール41の中で、一般には垂直平面上に置かれる。各コールドプレート60は、冷却ユニット2の内部の1対の密封型モジュール41にも関連付けられる供給口12からの液体を搬送する。
【0148】
カバー33は、ねじ34またはこれと同等の固定手段で所定の位置に保持され、冷却ユニット2の密封型モジュール41とその他の内部部品を保護し、EMC保護も強化する。カバーによってさらに、長方形の箱の外形が完成し、これは据え付け、修理または交換時に、ラックの棚にスライドさせて出し入れするのに好都合である。
【0149】
電源29、30とデータ伝送27、28のための電気接続もまた、モジュールの後面で行われる。据え付けおよび取り外し時には、標準的なコネクタを使ってモジュールを接続、切断できる。
【0150】
次に、図1を参照すると、複数の冷却ユニットを格納した装置ラックの簡略前面図が示される。装置ラック1は、冷却ユニット2、追加の装置棚3、一般に空冷されるAC電源ユニット4、AC電源ユニット4をさらに冷却するコールドプレート5を含む。AC電源ユニット4は、あるいは、液体中への浸漬によって、またはコールドプレートへの熱的結合によって冷却してもよい。ラック1には、AC電源ユニットと冷却モジュール2が多数格納され、追加の装置棚3にさらに別のモジュールを入れるための拡張の余地がある。モジュールは、交換または修理のために取り出すことができる。図1は、モジュールの一般的な実装密度を示す。ラック1の棚3のうちの1つにのみ、冷却ユニット2が収容されている。残りの棚にも同様に冷却ユニット2を収容することができる。冷却ユニット2は、ラックの前側から挿入される。
【0151】
図2には、図1に示される装置ラックの簡略的側方断面図が示される。ラック1の前面16、側面15および後面17が示される。
【0152】
装置ラック1にはさらに、後面に向かって、第一のプレナムチャンバ18(均圧化装置)、第二のプレナムチャンバ19、ポンプ21、配水タンク20、熱交換機22、第一の液体コネクタ23、および第二の流体コネクタ24が格納される。
【0153】
流体コネクタ11と12はまた、冷却ユニット2にも示されている。これらはシステムの第二の液体冷却段階の管システムと相互接続しており、これについては後述する。これらは通常、ラックの後面17にあるが、後方からのアクセスが不都合な場合は、ラックの前面16にあってもよい。この例において、冷却ユニット2は、1つの液体供給口と1つの液体排出口があり、各冷却ユニット2の中の、独立して冷却される2つの密封型モジュール41のために使用される。
【0154】
第一のプレナムチャンバ18は、多数の冷却ユニット2から冷却液を回収する。第二のプレナムチャンバ19は、冷却液を多数の冷却ユニット2に分配する。ポンプ21は、プレナムチャンバ18と19を通る冷却液の循環を助ける。配水タンク20は、ポンプ21により循環される冷却液のためのものである。熱交換機22は、熱を第二の液体冷却段階の中の液体から第三の液体冷却段階の中の液体に伝達する。液体コネクタ23と24は、第三の冷却段階の液体を熱交換機へ、および熱交換機からラックの外の機器へと搬送する。
【0155】
以上、電子コンポーネントを冷却する第一段階について説明した。第一段階は、低コストの冷却モジュールを提供するもので、非強制冷却(この場合は、冷却液を通じた伝導と対流を使った熱輸送)と、何らかの手段により、不具合のモジュールを取り外し、正常に動作しているモジュールと交換できる能力とを利用している。1つのシステム内に、このようなモジュールを1つから多数まで、いくつでも設置できる。
【0156】
第一段階では、少なくとも1つの密封型モジュール41が使用される。各密封型モジュール41には、冷却対象の1つまたはそれ以上の電子回路基板、電源ユニット、DC−DC電源変換機、またはディスクドライブが格納される。熱は、発熱する電子コンポーネントから除去されて、密封型モジュールに充填された第一の冷却液66に伝えられ、次に第一の冷却液66から、伝導面71を通って、コールドプレートのベース22を流れる第二の冷却液へと伝送される。
【0157】
第二の冷却液は第二の冷却段階で使用され、熱を第一の段階から遠ざけるために、冷却液を循環させる手段が設置される。第三の冷却段階もまた、高圧下で冷却ユニット内を流れる液体の使用を避けるために、使用できる。
【0158】
また別の中間的熱伝達段階もまた、液体を使って熱を最終の熱交換機に伝達する。別の冷却段階は好ましくは、システムの異なる段階のための冷却液流量管理および圧力管理を含み、密封型モジュール内での冷却液が高圧となるのを防止し、それと同時に、液体が最終のヒートシンクに有効に送出されるようにする。システムはこれによって、最終の熱交換機までのすべての段階で液体を使った、多段階の熱伝達を利用する。
【0159】
熱は、コンポーネントを、それぞれの指定された温度範囲内に保つためには十分に除去されるが、それ以上ではない。プロセッサの「オーバークロック」等の別の動作モードを可能にするように、さらに大量に熱伝達を行い、さらに低温にすることも、このシステムを使えば可能であるが、通常の動作では不要であり、それは、このように低い動作温度の実現にはさらに多くのエネルギーが消費され、また。別の動作モードは、大規模システムでは一般的に使用されないからである。
【0160】
次に図8を参照すると、1つの冷却ユニットを構成する3段階冷却システムの概略図が示されている。冷却ユニット2には、2つの密封型モジュール41が格納され、その各々が液体対流を利用する第一の冷却段階113と、第二の冷却液が冷却ユニット2の外で循環される第二の冷却段階114を有する。2つの密封型モジュール41に流れる液体は分流機55を介して供給され、モジュール41から流れる液体は合流器57の中で合流される。システムはさらに、クイックリリースコネクタ111、第二の冷却液管112、第一のポンプ116、ポンプ制御手段117、配水タンク109、熱交換機118、第二のポンプ119、ポンプ制御手段120、第三の冷却液管126、および熱交換機121をさらに備える。
【0161】
管112は、クイックリリースデバイス111を介して結合され、クイックリリースデバイス111はまた、冷却モジュールと管内の第二の冷却液を分離する手段も有する。冷却ユニット2が接続されると、液体は通常通りに流れるが、冷却ユニット2が切断されると、これは液体の流れを止め、モジュールまたは管からの液体の損失を防止する。
【0162】
第二の冷却液は、密封型モジュール41のコールドプレート(図示せず)を通って熱伝達器118へと循環し、その後、配水タンク109を通ってコールドプレートに戻り、それによって第二の冷却段階の中の液圧が、大気圧より若干だけ高くなるように調整され、第一のポンプ116にはポンプ制御手段117から電源供給され、この電源は、その場で、または外部デバイスからの制御信号により、密封型モジュール41内での発熱量に応じて変化させ、ポンプ速度を変えることができる。図の実施形態において、冷却ユニット内の2つの冷却回路は、分流器55と合流器57を介して並列に接続される。並列の回路の各々の流量は、分流器55および/または合流器57の中で、冷却システムの各アーム内での発熱量の差を考慮して、別々に事前に調節される。液体の流れの方向は、矢印で示されている。
【0163】
熱伝達装置118には、2つの液流回路がある。冷却モジュールからの加熱された第二の冷却液は、第一の回路を通って循環する。第三段階の中の冷却液は、第二の回路を通って循環する。熱は、第一の回路の中の液体から、熱伝導界面を通って第二の回路の中の液体に伝えられ、その後、管126を通って最終の熱交換機121へと流れる。液体の流れる方向は同じく、矢印で示される。
【0164】
熱交換機121は、熱交換機用コールドプレート122、ファン123、電源124を備える。これは従来の装置であり、一般に「乾式冷却器」と呼ばれ、最終のヒートシンク媒体として空気を使用でき、この空気は電源124で駆動されるファン123によって、フィン付コールドプレートまたはこれと同等の熱伝達手段上に吹きつけられ、循環する第三の冷却液を冷却する。冷却された液体は次に、電源120で駆動されるポンプ119を通って、熱伝達手段118に戻る。
【0165】
3段階の液体熱伝達は、最終の熱交換機が、冷却対象の機器からある程度離れた場所、たとえば、ビルの屋上等にあるような状況で望ましい。この場合、最終の熱交換機121と中間熱伝達装置118を通って循環する液体の圧力差が大きくなるかもしれない。第二段階の熱伝達では、ずっと低い圧力の液体を使用できるため、第一段階の冷却モジュール内での液体漏出と電子回路基板への損傷の可能性が大幅に低減する。
【0166】
第二と第三の冷却液は電子回路基板75(図示せず)と接触していないため、その特性は、第一の冷却液66のそれほど制約されない。一般的な液体の中で最も比熱容量が高く、非常に低コストの水を有効に使用することができる。腐食および細菌による汚染を低減させるための添加物を、必要に応じて使用してもよい。
【0167】
第二の冷却液の漏出可能性は、第二の冷却段階の中の圧力を制限することによって、大幅に低減される。配水タンク109は、この段階の圧力を調整する。漏出が起こった場合に備え、流体は、少量の染料を添加することによって、第一段階で使用される液体と区別されてもよい。第二の冷却液を水とすることができるため、この目的のためにさまざまな低コスト、無毒の染料を使用できる。
【0168】
次に、図9を参照すると、本発明による多数の冷却ユニットを用いる、より大規模な3段階冷却システムが示されている。それぞれ本発明による2つの密封型モジュールを有する3つの冷却ユニットが示されているが、一般に、もっと多くのユニットを1つのシステム内に収容できる。より大規模な冷却システムのこの例は、冷却ユニット130、131、132、管129、冷却ユニットからの液体の流れを合流させるプレナムチャンバ147、冷却ユニットからの液体の流れを分散させるプレナムチャンバ148、第二の冷却液のためのポンプ134、配水タンク143、熱交換機135、第三の冷却液のためのポンプ136と、最終の熱交換機137、最終の熱交換機への最終の冷媒供給口138、最終の熱交換機からの最終の冷媒排出口139を備える。
【0169】
ハウジングまたはラックには、多数の冷却ユニット130、131、132を取り付け、図1に示されるように配置することができる。冷却ユニット130、131、132を通じた液体の流れは、プレナムチャンバ147と148を介して並列に接続される。冷却ユニット130、131、132の各々は一般に、2つまたはそれ以上の密封型モジュール41を含み、交換または修理時には、図8に示されるようなクイックリリースコネクタを使って、ラックから別々に切断し、取り外すことができる。冷却ユニットの数は、概略的に示されているように、プレナムチャンバの追加の入力141と出力142を介して増加させることができる。
【0170】
プレナムチャンバ147と148は、有利な点として、断熱することにより、局所的な熱損失が減少し、入力プレナムと出力プレナムの間の熱伝達が軽減されて効率が向上する。その他の改善は、プレナムユニットを直接、冷却ユニット130、131、132のコネクタに沿って配置する方法であり、これによって配管が単純化され、システム内の液体コネクタの総数が減る。
【0171】
第二の冷却液の流れは、プレナムチャンバ148からの管129の並列配置によって冷却モジュール間で分割され、一般には、冷却ユニットごとに1組の管1が設けられ、それぞれがその中に設置される2つの密封型モジュール41のために使用される。各密封型モジュール41への流量は、プレナムチャンバ154の中の制限器とバッフルプレートを使って変化させることができる。
【0172】
各冷却ユニットへの流量を個別に調節することにより、各種の冷却ユニットからの加熱された第二の冷却液の温度がより均一となる、より効率的なシステムが提供される。
【0173】
冷却ユニットからの加熱された液体は、管129を介してプレナムチャンバ147に戻り、ここで合流され、管129を通って熱交換機135に運ばれる。熱交換機135からの冷却された液体は、配水タンク152へと運ばれ、ここで第二の冷却液の圧力が調整される。
【0174】
ポンプ134は、配水タンクから液体を汲み出し、これをプレナムチャンバ148に送出することによって、第二の冷却液の循環を駆動する。液体は次に、管129を通って冷却ユニットに戻される。ポンプ134は、図8のポンプ116と同様であってもよいが、好ましくは、1つではなく複数の冷却ユニット130、131、132に液体を送出するために、より大型のものとする。矢印は、液体の流れの方向を示す。熱伝達装置135は、図8の熱伝達装置118と同じ機能を有するが、1つではなく複数の冷却ユニット130、131、132からの熱を伝えるために、より大規模であることが望ましい。
【0175】
システムの第三段階では、第三の冷却液を使って、熱が熱交換機135から最終の熱交換機137へと伝えられる。ポンプ136は、液体の循環に使用される。大気または低温の地下水が最終のヒートシンク媒体として使用され、138で熱交換機に入り、139から出る。この場合、また特に、大きなサーバアレイを冷却するシステムでは、熱を運ぶ液体のエントロピーは十分に低いため、その他の目的にも使用でき、環境中に放出されない。これは、ビルを使用する人の暖房のためのエネルギー源として、または有益な量の発電に使用できる。他の状況では、気温が異常に上昇すると、発生源と大気の最終のヒートシンクの間の温度差は本来であれば小さすぎるレベルまで縮小するが、過剰な熱は(最終の液体の一部を偏向させることによって)冷却(チラー)ユニットへと偏向され、または、追加のエネルギーまたはコストが最終の熱交換機で消費されるかもしれない(たとえば、水を空気中に噴霧して、有効な気温、湿球温度を下げる、断熱による「乾式冷却器」が使用される)。
【0176】
図9はまた、冷却ユニット130、131、132からの信号出力E1、E2、E3を示す。その他の信号出力(図示せず)も、追加の冷却ユニットによって供給することができ、全体をまとめてE1、E2、E3、...Enとする。また、それぞれポンプ134とポンプ135への制御入力BとC、最終の熱交換機137への制御入力Dも示されている。これらは、監視と制御のために使用することができる。これについては後で詳しく述べる。
【0177】
次に、図10を参照すると、図9の3段階冷却システムで使用される監視および制御システム140が示されている。このシステムは、データ入力146と、ポンプ制御出力145を備える。
【0178】
監視および制御システムは、冷却対象の電子機器の温度を監視し、第二の冷却液、第三の冷却液またはその両方の流量を調整して、最適な冷却を提供するために使用される。各電気回路基板のセンサは、電子コンポーネントの温度を測定し、この情報をアナログまたはデジタル信号に変換する。図9には、信号出力E1、E2、E3が示されているが、これはEnへと拡張でき(nは温度感知装置を含む冷却ユニットの総数)、各信号には、各冷却ユニット内の1つまたはそれ以上の密封型モジュールの温度に関する情報が含まれる。これらの出力は、制御システム140に送信される。
【0179】
制御システム140は、第二の冷却液の最適な流量、第三の冷却液の最適な流量および、最終の熱交換機が動作するべき速度を計算し、これに応答して、制御メッセージB、C、Dを生成する。制御メッセージB、Cは、それぞれポンプ134と136をオンまたはオフに切り替え、またはそのポンプ速度を変えるために使用される。これに加えて、制御システムは、最終の熱交換機がその冷却速度を調整する必要があるか否かを判断し、それはたとえば、制御信号Dを使い、最終のヒートシンクとなる液体または空気の流量を変化させることによって行う。
【0180】
システムの全体的な熱容量が大きいため、周囲温度(およびしたがって、最終のヒートシンクの温度)が短期間に比較的大幅に上昇しても対応でき、その際、主要なコンポーネントがその最高温度定格を超えることはない。最も暑い日には、気温が上昇しすぎ、冷却対象のコンポーネントの発熱量を必ずしもすべて除去できなくなることもある。コンポーネントの動作温度も上昇するするかもしれないが、熱容量が大きいということは、上昇が緩慢で、最高温度を超えないことを意味する。日周期の中のより低温の期間では、発生分より多くの熱を除去できる。したがって、本来であれば積極的冷却を用いない(refrigeration-free)冷却を使えないような気候条件の場所でもシステムを稼働させることができる。制御システムは、外部センサから測定された、または過去の傾向データから、および統計から推測される気温データを使って最適化し、流量が確実に最適化されるようにすることができる。きわめて例外的な温度となる稀な状況では、タイムリーに警告を発して、オペレータが、最終のヒートシンクの有効温度を下げる(たとえば、冷却をアクティブモードに切り替えることによる)、またはその他、適当な修復措置を講じられるようにすることができる。
【0181】
処理システムの「ランタイムハードウェアアブストラクション」が使用される(たとえば、「仮想化」または「ランタイムミドルウェア」による)システムの場合、監視および制御システムが特に重要である。ハードウェアアブストラクションに対応するシステムでは、複数の電子回路基板(ハードウェア)と複数のコンピュータオペレーティングシステムは1対1で対応していない。1つの回路基板に重い処理負荷がかかっているとき、いくつかの活動は他の基板と分担することができる。処理は、ハードウェアのアイテムの間で分散される。その結果、システムの異なる部分からの発熱量は、時間によって異なる。そこで、システムの異なる場所での冷却速度を動態的に調整して、発熱量の変化に合わせることができる。
【0182】
密封型モジュール41(そして、したがって回路基板75)の第一の冷却液が所望の温度Tcaseで動作し、最終のヒートシンクが既知の温度Thsである場合、これは、冷却システムが望ましい例において提供する温度差を、ΔT=Tcase−Thsで定義する。Tcaseは好ましくは、回路基板の最高動作温度より高くならないように制限されるためTcase.max、ΔT≦Tcase,max−Thsとなる。
【0183】
半導体製造メーカは、自社のプロセッサの最高動作温度をますます下げている。その結果、積極的冷却を使用して局所的な温度差を大きくしないと、温度差が縮まる。最終のヒートシンクの温度が摂氏40度ともなりうる気温と同じであれば、さらに問題が大きくなる。
【0184】
システム内の熱抵抗を下げることは、所望の温度差の実現に役立つ。流体の流れを通じて熱を伝達するシステムでは、熱を、完全に、または実質的に静的な、熱結合された物体または気体を通じて伝えるシステムと比較して、熱抵抗が小さくなるかもしれない。たとえば、第二の冷却液の流量を調節して、密封型モジュール41と熱交換機118の間の熱抵抗を下げることができる。これに加えて、またはその代わりに、通路61を流れる第二の冷却液と伝導面71の間の接触面積を変化させて、熱抵抗に影響を与えることができる。
【0185】
高密度で実装された通路61を使用すると、コールドプレートにおける圧力低下(すなわち、水圧損失)が大きくなり、それによって第二の冷却液循環回路のためのポンプ動作のコストが上がる。通路の幅を変えて、圧力損失を減らし、水路への熱の伝達におけるコールドプレート22の伝導面71の影響を小さくすることができる。
【0186】
極端に言えば、通路61の幅をハウジング81の寸法と同じまたはそれより大きくして、第二の冷却液のための「蛇行する川」ではなく、「氾濫原」を作ってもよい。しかしながら、このような実施形態では、第二の冷却液の流れを制御することは難しく、渦流のような特徴的な流れによって熱が局所的に発生して、伝導面71の隣接領域の熱伝達速度を下げるために、望ましくない。
【0187】
したがって、通路61の幅は、ハウジング81の寸法より小さく、それと比して有意に小さい幅となるようにすることができる。通路61の断面を最適化すれば、温度差を改善できる。もっとも長い通路61の長さの約20%の通路61は、特定の領域で流れを方向付けるバッフルによって規定してもよい。また、第二の冷却液の流れを通路61でいくつかの部分に分割し、水が複数のゾーンに分散され、最大の熱流束を有する領域(たとえば、プロセッサ)の中で減速されるようにすることができ、それによって一次冷媒への熱の還流を最小限とし、それと同時に、抽出された熱のエントロピーを小さくすることができる。
【0188】
本発明の好ましい実施形態と動作モードについてこれまで説明したが、当業者であれば、各種の変更が可能であることがわかるであろう。
【0189】
たとえば、図1に示されるコールドプレート5は必要に応じたものであり、当業者であれば、これを含めなくてもよいことがわかるであろう。冷却ユニット2を装置ラック1の中に前から挿入する代わりに、ラックの後ろから挿入してもよい。有利な点として、冷却ユニットは、各ユニットにつき1つしか密封型モジュールが入らないように変更して、ユニットをラックの前後どちらからでも挿入できるようにしてもよい。電気的および液体の接続は、次に、ラックの中央で行われる。1モジュールユニットは、2モジュールユニットよりはるかに軽く、1人で安全に運び、取り付け、または取り外すことができる。
【0190】
熱伝達の中間段階と最終のヒートシンクには液体冷却を使用してよいが、他の冷却機構、たとえば対流冷却等を使用することもできる。
【0191】
当業者であればまた、本発明は、さまざまな方法で実装、動作可能であることがわかるであろう。次に、図11A図11Bを参照すると、本発明による第二の実施形態の密封型モジュール150の側面図が示されており、これは、前述の例の代案である。密封型モジュール150は、外カバー151とハウジング152を備える。第二の実施形態は第一の実施形態と若干異なるが、当業者であれば、2つの実施形態の多くの特徴を相互に交換できることがわかるであろう。
【0192】
コールドプレート60の通路は、外カバー151によって閉じられる。通路を規定するこのアセンブリは、「ウォータジャケット」と呼ぶことができ、これは、伝導面71のような熱伝達面の上を熱が流れるようにする水(第二の冷却液等)の流れを表しているからである。
【0193】
次に、図11Cを参照すると、図11A図11Bによる密封型モジュールのより詳細な図が示されている。密封型モジュール150はまた、熱伝達面153も備え、これは、外側ハウジング151とともに通路156を規定する。また、熱伝達面153と蓋152(これは、ベースまたはハウジングと呼ぶことができる)は、内側チャンバを画定して、その内部空間に、冷却対象の電子機器155と第一の冷却液(図示せず)が配置される。コネクタ154もまた示されており、それによって第二の冷却液が通路156を通って流れる。
【0194】
この、モジュールの他の実施形態はしたがって、第一の液体と1つまたはそれ以上のマザーボードを収容し、実質的に密封される(充填用ポートを除く)内側ハウジングを含んでいてもよい。熱伝達面153は、内側ハウジングとのガスケットによる境界面と第一の冷却液に面するフィンを有し、これは、少なくとも1つのマザーボードの輪郭に適合するように成形される。外側ハウジング151はまた、熱伝達面153とのガスケットによる境界面を有し、少なくとも1つの第二の冷却液循環通路156が熱伝達面153または外側ハウジング151の内面にバッフルで形成される。少なくとも1つの通路156は、第二の冷却液を、圧力損失をなるべく発生させずに、熱伝達面153の上で適当に方向付けるように最適化される。外側ハウジング151は、クイックコネクト式油圧コネクタ154を有しているため、通路156をラックの第二の冷却液供給口と排出口に連結することができる。
【0195】
この設計により、内側ハウジング、熱伝達面153および外側ハウジング151の間の集積距離を大幅に緊密にして、ユニットを小型化することができ、その結果、モジュールの実装密度を高めることができるかもしれない。フィンまたはバッフルは、熱伝達面153の両面に設置できる。それにより、たとえば第二の冷却液の流量をさらに制御し、伝導のための表面積を大きくすることができる。
【0196】
本発明にはさまざまな材料を利用できる。金属材料は良好な伝導体であるが、高価である。また、熱伝達面153または伝導面71(これらは同様または同じとすることができる)が金属で作製され、大型であると、特に複数の密封型モジュールが取り付けられた場合、湾曲する可能性が高まり、密封手段に応力がかかり、温度の異なる領域ができかもしれないことを意味する。
【0197】
これに対して、合成プラスチック材料は、導電体としては金属より劣る。周知の熱伝導性プラスチックの伝導率は通常、アルミニウムが141W/mKであるのに対して、20W/mKである。より高性能の熱伝導性プラスチックは通常、導電性も有し、これは好ましい特性ではない。しかしながら、これらの材料は金属と比較して、より安価で、より軽量で、高温の水があっても腐食の可能性が低い(第二の冷却液に対しては、腐食防止剤の添加が可能)。
【0198】
第二の冷却液の流量、熱伝達面積および通路断面積の制御によって温度差を最適化することにより、温度差をそれほど小さくせずに、プラスチックを使用することが可能となる。特に、プラスチックは、上述のコールドプレートのベース部22または外側ハウジング(ウォータージャケット)に使用することができる。プラスチック材料により、ベース部22または外側ハウジング161の外壁を通じてその場の周辺環境に伝えられる熱の量が減少し、このようにして失われる熱が減少し、第二の冷却液への除熱の効率が高まる。
【0199】
これに加えて、またはその代わりに、伝導面71または熱伝達面153をプラスチックで作製することができる。これによって、密封されたハウジング内の第一の冷却液のための膨張容量がさらに大きくなりうる。このような材料は、中央の剛性の熱伝導プラスチックおよび周囲のリング状の柔軟な非伝導性プラスチックを一体成型(co-mould)してもよい。
【0200】
当業者であれば、上記の実施形態のさまざまな特徴は必要に応じて選択可能であることがわかり、省いてもよい。その例としては、さらに難燃性材料で作製できる断熱体73やクイックリリースコネクタ111である。また、当業者であれば、コールドプレート60または外側ハウジング151について、別の構成を使用できること、および突起96,97は、前述したものとは異なる長さと断面とすることができることがわかるであろう。
【0201】
上記の実施形態は、1つの密封型モジュール41がコールドプレート60に取り付けられている冷却ユニット2を使用しているが、2つまたはそれ以上の密封型モジュール41を共通のコールドプレートに連結してもよいことがわかるであろう。また、冷却ユニット2は、ラックの前後両側から挿入してもよい。
【0202】
電子回路基板は、ハウジング81と組み合わせて、一体型アセンブリとすることができる。これは、電子コンポーネントを回路基板から直接接続する手段となり、その結果、モジュール内のケーブル密封部からの液体の漏出のリスクを低減させ、密封型モジュール全体の幅を狭め、1つのラック内の冷却ユニットの実装密度を高めることができる。
【0203】
電子回路基板と密封型モジュールの外部との間で、データ伝送ケーブル46を光ファイバケーブル、光または赤外線ポートまたは無線接続に置き換えることができる。電源接続は通常、データ伝送の方法が違っていても、配線により行われるが、他の電源供給も利用でき、それと同時に流体の漏出も回避される。
【0204】
第二の冷却液は、プレナムチャンバではなく、個々の流量制御弁を有する管を介して分散させてもよい。弁は、密封型モジュール41の中に格納されたコンポーネントからの温度および状態情報に応答して、その場で調節しても、図10に示される制御システムと同様の中央集中監視および制御システムによって自動的に調節してもよい。また、図8のシステムにおいて、熱交換機121は、あるいは、低温の地下水または、一部の熱を冷却システムへと迂回させる各種の構成に置き換えることができる。回復力と冗長的を提供するために、必要に応じて別の「バックアップ」ポンプと回路を設置してもよい。
【0205】
最終のヒートシンク121が冷却対象の機器に近く、この段階で循環する冷却液の圧力を下げることができる場合、第二の冷却段階を省略してもよい。この場合、第二の冷却液は、最終の熱交換機を通じて直接循環する。ポンプ116と中間の熱伝送装置118または135は省略される。図8に示される実施形態と同様に、図9の3段階システムは、最終段階の液圧が十分に低ければ、2段階に縮小できる。
<付記>
[1]
1つまたはそれ以上の発熱する電子コンポーネントを収容する密封型モジュールであって、
ハウジングと、
伝導面を有する熱伝達装置であって、前記ハウジングと前記伝導面とが第一の冷却液を入れることのできる内部空間を画定し、当該熱伝達装置はさらに、第二の冷却液を受けるための通路を規定し、前記伝導面は前記内部空間と前記通路を分離して、前記伝導面を通じて前記内部空間と通路間で熱が伝達されるようにする、熱伝達装置と、
前記内部空間内に設置された電子コンポーネントと、
を含み、
前記伝導面と前記ハウジングの少なくとも一部は、前記電子コンポーネントの形状に適合するように成形されている、
密封型モジュール。
[2]
上記[1]に記載の密封型モジュールであって、前記内部空間内に配置された第一の冷却液をさらに含む密封型モジュール。
[3]
上記[1]または[2]に記載の密封型モジュールであつて、前記伝導面は、前記内部空間内に突出して前記内部空間と前記通路の中で熱を伝導する少なくとも1つの突起を有する、密封型モジュール。
[4]
上記[3]に記載の密封型モジュールであって、前記少なくとも1つの突起は、前記電子コンポーネントの形状と適合するように成形されている、密封型モジュール。
[5]
上記[4]に記載の密封型モジュールであって、前記電子コンポーネントに連結され、前記伝導面の前記少なくとも1つの突起と協働するように準備された少なくとも1つの突起を有するコンポーネント用ヒートシンクをさらに含む密封型モジュール。
[6]
上記[3]から[5]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記伝導面の前記少なくとも1つの突起はフィン構造である、密封型モジュール。
[7]
上記[3]から[6]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記伝導面の前記少なくとも1つの突起はピン構造である、密封型モジュール。
[8]
上記[1]から[7]のいずれか1項に記載の密閉型モジュールであって、前記内部空間内に配置された偏向器をさらに含む密封型モジュール。
[9]
上記[1]から[8]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記内部空間内に配置された複数の導電体をさらに含み、前記複数の導電体は、前記第一の冷却液の水位を検出するように構成されている、密封型モジュール。
[10]
上記[1]から[9]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記伝導面は前記通路を規定し、前記通路の形状は、前記電気コンポーネントの形状に適合するように構成される、密封型モジュール。
[11]
上記[1]から[10]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記熱伝達装置は一体に形成されている、密封型モジュール。
[12]
上記[1]から[9]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記熱伝達装置は前記伝導面に結合されるベース部をさらに備え、前記ベース部は前記第二の冷却液を受けるための通路を規定する、密封型モジュール。
[13]
上記[1]から[9]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記ハウジングと前記伝導面は内側チャンバを画定し、前記熱伝達面は通路を規定する外側チャンバをさらに備える、密封型モジュール。
[14]
上記[13]に記載の密封型モジュールであって、前記外側チャンバは、合成プラスチック材料で作製される、密封型モジュール。
[15]
上記[1]から[14]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記ハウジングの少なくとも一部を覆う断熱層をさらに備える密封型モジュール。
[16]
上記[1]から[15]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、
複数の電子コンポーネントを含み、その少なくとも1つは使用中に発熱し、
前記電子コンポーネントを保持する回路基板をさらに含む密封型モジュール。
[17]
上記[16]に記載の密封型モジュールであって、前記回路基板と前記ハウジングの間に配置された保護膜をさらに含み、前記保護膜は、前記保護膜と前記回路基板の間の液体の流れを防止するように構成されている、密封型モジュール。
[18]
上記[16]に記載の密封型モジュールであって、前記回路基板の少なくとも一部は前記ハウジングと一体に形成されている、密封型モジュール。
[19]
上記[1]から[18]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、
前記ハウジングの中に配置され、そこから液体を前記内部空間の中に受け入れることのできる前記モジュールへの充填口と、
前記充填口の密封手段と、
をさらに含む密封型モジュール。
[20]
上記[1]から[19]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記ハウジングの中に配置され、前記内部空間内の圧力が所定の限度を超えたときに、液体が前記内部空間から流出できるように準備された減圧弁をさらに備える密封型モジュール。
[21]
上記[1]から[20]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記伝導面は合成プラスチック材料から作製されている、密封型モジュール。
[22]
上記[1]から[21]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記通路は前記伝導面との接触領域を有し、これが通路幅を規定し、最小通路幅は、前記伝導面の寸法と比較して有意である、密封型モジュール。
[23]
上記[1]から[22]のいずれか1項に記載の密封型モジュールであって、前記通路は、前記伝導面の少なくとも一部と、少なくとも1か所で方向転換する経路に沿って界面をなす、密封型モジュール。
[24]
上記[23]に記載の密封型モジュールであって、前記経路は直線部分を有し、前記通路の最小幅は、前記経路の前記直線部分の長さの少なくとも10%である、密封型モジュール。
[25]
上記[23]または[24]に記載の密封型モジュールであって、前記経路は本線経路と支線経路を有し、前記支線経路は少なくとも1か所で前記本線経路に接続される、密封型モジュール。
[26]
冷却される電子システムであって、
上記[1]から[25]のいずれか1項に記載の密封型モジュールと、
前記内部空間内に配置された第一の冷却液と、
ヒートシンクと、
第二の冷却液が前記密封型モジュールの通路の少なくとも一部を通って前記ヒートシンクへと所定の流速で流れるように構成されたポンプ装置と、
前記電子コンポーネントの温度を測定するように準備された温度センサと、
前記ポンプ装置と前記通路のうち前記第二の冷却液が流れる部分の少なくとも1つを制御して、前記電子コンポーネントの温度が所定の最高動作温度を超えないように制御されるように構成されたコントローラと、
を備える電子システム。
[27]
密封型モジュールキットであって、
ハウジングと、
伝導面を有する熱伝達装置であって、前記伝導面と前記ハウジングが第一の冷却液を入れることのできる内部空間を画定するように前記ハウジングに結合され、第二の冷却液を受け、当該熱伝達装置が前記ハウジングに結合されたときに前記伝導面が前記内部空間と前記通路を分離して、前記内部空間と前記通路の間で前記伝導面を通じて熱が伝導されるようにする通路を規定するような熱伝達装置と、
前記内部空間内に配置された電子コンポーネントと、
を含み、
前記伝導面または前記ハウジングの少なくとも一部は、前記電子コンポーネントの形状に適合するように成形される、
密封型モジュールキット。
[28]
電子コンポーネントを冷却する方法であって、
ハウジングと、伝導面を有する熱伝達装置を含むモジュールであって、前記ハウジングと前記伝導面とが内部空間を画定する、モジュールを提供するステップと、
前記電子コンポーネントを前記内部空間内に格納するステップと、
前記内部空間に第一の冷却液を充填するステップと、
前記第一の冷却液と第二の冷却液の間で、前記伝導面を通じて熱を伝導させるステップであって、前記第一の冷却液と前記第二の冷却液は前記伝導面の両側にそれぞれ位置する、ステップと、
を含み、
前記伝導面または前記ハウジングの少なくとも一部は、前記電子コンポーネントの形状に適合するように成形されている、
方法。
[29]
上記[28]に記載の方法であって、熱を前記第一の冷却液から前記第二の冷却液に伝導させるステップは、前記第一の冷却液と前記第二の冷却液が液体の状態のままであるように構成される、方法。
[30]
電子機器を冷却する方法であって、
ハウジングと、伝導面を有する第一の熱伝達装置とを含むモジュールを提供するステップであって、前記ハウジングと前記伝導面とは内部空間を画定し、前記内部空間は第一の冷却液で満たされ、電子機器がその中に配置されている、ステップと、
前記電子機器を前記内部空間内で動作させるステップと、
前記電子機器により発生された熱を、前記第一の冷却液から第二の冷却液へと前記伝導面の少なくとも一部を通じて伝達するステップと、
熱を前記第二の冷却液からヒートシンクへと第二の熱伝達装置を使って伝達するステップと、
前記伝導面を通過する前記第二の冷却液の流量と、前記伝導面のうち熱が前記第二の冷却液へと伝達される部分との一方または両方を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御されるように設定するステップと、
を含む方法。
[31]
上記[30]に記載の方法であって、
前記電子機器の温度を測定するステップをさらに含み、
前記設定するステップは、前記測定された温度に基づいて行われる、
方法。
[32]
上記[30]に記載の方法であって、前記設定するステップは、前記伝導面を通過する前記第二の冷却液の流量と、前記伝導面のうち熱が前記第二の冷却液に伝達される部分との少なくとも一方が、前記電子機器について予測された所定の最高動作温度に基づいて所定のレベルに設定されることを含む、方法。
[33]
冷却される電子システムであって、
ハウジングと電子機器および第一の冷却液を含む密封容器と、
第二の冷却液を受けるための第一の通路を規定する第一の熱伝達装置であって、前記第一の冷却液と前記第一の通路の間で、前記伝導面の少なくとも一部を通じて熱を伝達するように構成された第一の熱伝達装置と、
前記第二の冷却液を前記第一の熱伝達装置に、またはそこから移送するように構成された配管構造と、
を備え、
前記システムは、前記第一の通路を通る前記第二の冷却液の流量と、前記伝導面のうち熱が前記第二の冷却液に伝達される部分との一方または両方を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように設定するように構成される、
電子システム。
[34]
電子機器を冷却する方法であって、
容器内で前記電子機器を動作させるステップであって、容器はまた、第一の冷却液を含み、前記電子機器により発せられる熱を前記第一の冷却液に伝え、前記容器は前記第一の冷却液の漏出を防止するように密封されている、ステップと、
前記第一の冷却液と第一の熱伝達装置の中の第二の冷却液との間で熱を伝えるステップと、
前記第二の冷却液を前記第一の熱伝達装置から前記第二の熱伝達装置に管により送るステップと、
前記第二の冷却液と前記第二の熱伝達装置の中の第三の冷却液との間で熱を伝えるステップと、
前記第三の冷却液をヒートシンクに管により送るステップと、
を含む方法。
[35]
上記[34]に記載の方法であって、前記第一の冷却液と前記第二の冷却液の間で熱を伝える前記ステップは、伝導によって行われる、方法。
[36]
上記[34]または[35]に記載の方法であって、前記第二の冷却液の流量を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含む方法。
[37]
上記[34]から[36]のいずれか1項に記載の方法であって、前記第三の冷却液の流量を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含む方法。
[38]
上記[34]から[37]のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第一の熱伝達装置が伝導面を含む場合、
前記伝導面のうち熱を前記第二の冷却液に伝える部分を、前記電子機器の温度が、所定の最高動作温度を超えないように制御されるように設定するステップ、
をさらに含む方法。
[39]
上記[34]から[38]のいずれか1項に記載の方法であって、
前記第二の冷却液の流量と、前記第三の冷却液の流量の少なくとも一方を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように、また、第一の期間中に、前記第二の冷却液と前記第三の冷却液の間または前記第三の冷却液と前記ヒートシンクの間の熱伝達率が所定の最大率より高くならないように、また、後の第二の期間中に、前記第二の冷却液と前記第三の冷却液の間、または前記第三の冷却液と前記ヒートシンクの間の熱伝達率が、所定の最大率より高くなってもよいように制御するステップ、
をさらに含む方法。
[40]
電子システムを冷却する方法であって、
上記[30]から[32]および[34]から[39]のいずれか1項に記載の電子機器を冷却する方法のステップを実行するステップと、
第二の容器の中で第二の電子機器を動作させるステップであって、前記第二の容器はまた、第四の冷却液を含み、前記電子機器によって発せられる熱が前記第四の冷却液に伝えられるようになっており、前記第二の容器は密封されて、前記第四の冷却液の漏出が防止されている、ステップと、
前記第四の冷却液と第三の熱伝達装置内の第五の冷却液の間で熱を伝えるステップと、
を含む方法。
[41]
上記[40]に記載の方法であって、前記第五の冷却液の流量を制御するステップをさらに含む方法。
[42]
上記[41]に記載の方法であって、前記第一の熱伝達装置からの前記第二の冷却液と前記第三の熱伝達装置からの前記第五の冷却液をプレナムチャンバに管により送るステップをさらに含む方法。
[43]
上記[41]または[42]に記載の方法であって、合流した前記第二の冷却液と前記第五の冷却液の流量を、前記第一の電子機器の温度が第一の所定の最高動作温度を超えないように、かつ前記第二の電子機器の温度が第二の所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含む方法。
[44]
上記[40]に記載の方法であって、
前記第三の熱伝達装置からの前記第五の冷却液を第四の熱伝達装置に管により供給するステップと、
前記第五の冷却液と前記第四の熱伝達装置内の前記第三の冷却液の間で熱を伝えるステップと、
をさらに含む方法。
[45]
電子機器を冷却する方法であって、
容器内で前記電子機器を動作させるステップであって、前記容器はまた、第一の冷却液を含み、前記電子機器により発せられる熱が前記第一の冷却液に伝えられるようになっており、前記容器は密封されて、前記第一の冷却液の漏出が防止されている、ステップと、
前記第一の冷却液と第一の熱伝達装置の中の第二の冷却液との間で熱を伝えるステップと、
前記第二の冷却液とヒートシンクの間で熱を伝えるステップと、
前記第二の冷却液と前記ヒートシンクの間の熱伝達率を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように、また、第一の期間中に、熱伝達率が所定の最大率を超えないように、また、その後の第二の期間中に、熱伝達率が所定の最大率を超えてもよいように制御するステップと、
を含む方法。
[46]
冷却される電子システムであって、
ハウジングと電子機器と第一の冷却液を含む密封容器と、
第二の冷却液を受けるための第一の通路を規定する第一の熱伝達装置であって、前記第一の冷却液と前記第一の通路の間で熱を伝えるように構成された第一の熱伝達装置と、
前記第一の通路から第二の冷却液を受けるための第二の通路とヒートシンクに結合するために第三の冷却液を受けるための第三の通路を含む第二の熱伝達装置であって、前記第二の通路と前記第三の通路の間で熱を伝えるように構成された第二の熱伝達装置と、
を備える電子システム。
[47]
上記[46]に記載の冷却される電子システムであって、前記第一の熱伝達装置は伝導面を含み、前記ハウジングと前記伝導面とが、前記電子機器と前記第一の冷却液が配置される内部空間を画定する、電子システム。
[48]
上記[47]に記載の冷却される電子システムであって、前記伝導面は、前記内部空間と前記第一の通路を分離して、前記内部空間と前記通路の間で前記伝導面を通じて熱が伝導されるようにしている、電子システム。
[49]
上記[33]または[48]に記載の冷却される電子システムであって、前記伝導面または前記ハウジングの少なくとも一部は、前記電子機器の形状と適合するように成形される、電子システム。
[50]
上記[33]および[46]から[49]のいずれか1項に記載の冷却される電子システムであって、前記伝導面は、前記第一の冷却液からの熱を受けるための少なくとも1つの突起を有する、電子システム。
[51]
上記[50]に記載の冷却される電子システムであって、前記少なくとも1つの突起は、前記電子機器の形状に適合するように配置される、電子システム。
[52]
上記[51]に記載の冷却される電子システムであって、前記電子機器に連結され、前記伝導面の前記少なくとも1つの突起と協働するように準備された少なくとも1つの突起を有するコンポーネント用ヒートシンクをさらに備える電子システム。
[53]
上記[50]から[52]のいずれか1項に記載の冷却される電子システムであって、前記少なくとも1つの突起はフィン構造である、電子システム。
[54]
上記[50]から[53]のいずれか1項に記載の冷却される電子システムであって、前記少なくとも1つの突起はピン構造である、電子システム。
[55]
上記[33]および[46]から[54]のいずれか1項に記載の冷却される電子システムであって、前記第二の冷却液の流量を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御する流量制御装置をさらに備える電子システム。
[56]
上記[46]から[55]のいずれか1項に記載の冷却される電子システムであって、前記第三の冷却液の流量を、前記電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するために準備された流量制御装置をさらに備える電子システム。
[57]
上記[33]および[46]から[56]のいずれか1項に記載の冷却される電子システムであって、前記密封容器は第一の密封容器であり、
第二のハウジング、第二の電子機器、前記第二の電子コンポーネントからの熱を受けるための第四の冷却液を含む第二の密封容器と、
第五の冷却液を受けるための第四の通路を有する第三の熱伝達装置であって、前記第四の冷却液から前記第四の通路に熱を伝えるように構成される第三の熱伝達装置と、
をさらに備える電子システム。
[58]
上記[57]に記載の冷却される電子システムであって、前記第一の通路と前記第四の通路は結合されて、前記第二の冷却液と前記第五の冷却液を合流させる、電子システム。
[59]
上記[58]に記載の冷却される電子システムであって、前記合流した第二の冷却液と第五の冷却液を回収するように準備されたプレナムチャンバをさらに含む電子システム。
[60]
上記[58]または[59]に記載の冷却される電子システムであって、前記合流された第二の冷却液と第五の冷却液の流量を、前記第一の電子機器と前記第二の電子機器の温度がそれぞれ第一と第二の所定の最高動作温度を超えないように制御するように準備された流量制御装置をさらに備える電子システム。
[61]
上記[60]に記載の冷却される電子システムであって、前記流量制御装置は分流装置を備え、前記分流装置は、前記第二の冷却液の流量を、前記第一の電子機器の温度が第一の所定の最高動作温度を超えないように設定し、また、前記第五の冷却液の流量を、前記第二の電子機器の温度が第二の所定の最高動作温度を超えないように設定するように構成される、電子システム。
[62]
上記[57]に記載の冷却される電子システムであって、
前記第四の通路から前記第五の冷却液を受けるための第五の通路と、第六の冷却液を受けてヒートシンクに連結させる第六の通路を有する第四の熱伝達装置をさらに備え、
前記第四の熱伝達装置は、前記第五の通路と前記第六の通路の間で熱を伝えるように構成されている、
電子システム。
[63]
電子機器のための容器の内部に冷却液を充填する方法であって、
前記容器を充填温度まで加熱するステップと、前記容器の内部を減圧するステップとの少なくとも一方によって、前記容器が前記冷却液を受け得るように準備をするステップと、
前記容器に前記冷却液を充填するステップと、
前記容器を密封し、前記冷却液の漏出を防止するステップと、
を含む方法。
[64]
上記[63]に記載の方法であって、
前記冷却液を充填温度まで加熱するステップと、
前記密封容器と前記冷却液を動作温度まで冷却するステップと、
をさらに含む方法。
[65]
上記[63]または[64]に記載の方法であって、前記容器を充填する前記ステップは、前記容器の準備をする前記ステップの前に実行される、方法。
[66]
上記[63]から[65]のいずれか1項に記載の方法であって、前記容器の準備をする前記ステップは、前記電子機器を動作させるステップを含む、方法。
[67]
電子機器の容器の内部に冷却液を充填する方法であって、
前記冷却液を充填温度まで加熱するステップと、
前記容器に加熱された前記冷却液を充填するステップと、
前記容器を密封して前記冷却液の漏出を防止するステップと、
密封された前記容器と前記冷却液を動作温度まで冷却するステップと、
を含む方法。
[68]
上記[63]から[67]のいずれか1項に記載の方法であって、前記充填温度は、前記冷却液中に溶解している気体が前記冷却液から除去されるように選択される、方法。
[69]
上記[63]から[68]のいずれか1項に記載の方法であって、前記充填温度は、前記電子機器の最高動作温度に基づいて選択される、方法。
[70]
上記[63]から[69]のいずれか1項に記載の方法であって、前記容器を充填する前記ステップは、前記容器内のすべての空気が排出されるように実行される、方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図11C