【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の背景に照らして、第一の態様において、本発明は1つまたはそれ以上の発熱する電子コンポーネントを収容する密封型モジュールを提供する。このモジュールは、ハウジングと、伝導面を有する熱伝達装置と、を含み、ハウジングと伝導面とが第一の冷却液を入れることのできる内部空間を画定し、熱伝達装置はさらに、第二の冷却液を受けるための通路を画定し、伝導面は内部空間と通路を分離して、伝導面を通じてこれらの内部空間と通路間で熱が伝達されるようにし、さらに内部空間内に設置された電子コンポーネントを含む。伝導面とハウジングの少なくとも一部は、電子コンポーネントの形状に適合するように成形される。
【0016】
ハウジングと伝導面の一方またはその両方の形状を電子コンポーネントの形状に適合させることによって、第一の冷却液と第二の冷却液の間の熱伝達効率は大幅に改善される。これによって、第一の冷却液を、電子コンポーネントからの放熱量が高いレベルになるまで液体の状態に保つことができる。
【0017】
好ましい実施形態において、密封型モジュールはさらに、内部空間内に配置された、使用中に発熱する少なくとも1つの電子コンポーネントと第一の冷却液を含む。
【0018】
第二の液体冷媒は、伝導面に直接接触しながら通路内を流れるようにされる。第二の液体冷媒は好ましくは、ポンプで送られる。熱を内部空間内の第一の冷却液から通路内の第二の冷却液への伝導によって伝えることにより、熱抵抗が大幅に減少する。これによって熱伝達の効率が高まり、拡張可能で、データ処理センタ等、大量の熱を発生するシステムに適用できるシステムが得られる。さらに、伝導面を使って熱を伝達することによって得られるこのシステムの低い熱抵抗により、冷媒は常に液体の状態に保たれ、その結果、システムの複雑化、高コスト化につながる蒸気サイクル冷却が不要となる。
【0019】
また、冷却のための電力消費も、蒸気サイクル冷却の必要性が減り、または不要となるため、節減される。また、サーバボード等、電子コンポーネントと電子回路基板の密度を高めることも可能となる。
【0020】
ある密度のサーバとコンポーネントについて、冷却システムにより、好ましくは、各コンポーネントからそれを所望の動作温度範囲内に保つのに十分な熱は除去されるが、それ以上は除去されない。発熱量の少ない機器は、発熱量の大きなものほど冷却を必要としない。十分な動作に必要なレベル以下まで冷却すると、通常、不必要に余分なエネルギーを消費するため、最適な効率は得られない。
【0021】
有利な点として、通路は伝導面と接触する領域を有し、これが通路の幅を規定し、最も小さい通路の幅は伝導面の寸法と比較して有意である。
【0022】
これに加えて、またその代わりに、通路は、少なくとも1か所で方向転換する経路に沿って伝導面と界面をなす。好ましくは、この経路は直線部分を有し、最小通路幅は、経路の直線部分の長さの少なくとも10%である。他の実施形態において、最小通路幅は少なくとも、経路の直線部分の長さの10%、20%、30%、40%または50%である。これに加えて、またはその代わりに、経路は本線と支線を有し、支線の経路は本線の経路と少なくとも1点で接続される。液体の乱流が大きいほど、熱伝達を改善できる。
【0023】
第二の態様において、本発明は、電子コンポーネントを冷却する方法を提供し、この方法は、ハウジングと、伝導面を有する熱伝達装置を含み、ハウジングと伝導面とが内部空間を画定するモジュールを提供するステップと、電子コンポーネントを内部空間内に格納するステップと、内部空間に第一の冷却液を充填するステップと、第一の冷却液と第二の冷却液の間で、伝導面を通じて熱を伝導させるステップと、を含み、第一の冷却液と第二の冷却液は伝導面のそれぞれの側に配置される。伝導面またはハウジングの少なくとも一部は、電子コンポーネントの形状と適合するように成形される。
【0024】
好ましくは、熱を第一の冷却液から第二の冷却液に伝導させるステップは、第一の冷却液と第二の冷却液が液体の状態のままであるように構成される。
【0025】
本発明の第三の態様において、密封型モジュールキットを提供してもよく、このキットは、ハウジングと、伝導面を有する熱伝達装置と、を含み、熱伝達装置は、伝導面とハウジングが第一の冷却液を入れることのできる内部空間を画定するようにハウジングに結合され、熱伝達装置はさらに、第二の冷却液を受ける通路を規定し、熱伝達装置がハウジングに結合されたときに伝導面が内部空間と通路を分離して、内部空間と通路の間で伝導面を通じて熱が伝達されるようにし、さらに内部空間内に配置された電子コンポーネントを含む。伝導面またはハウジングの少なくとも一部は、電子コンポーネントの形状に適合するように成形される。
【0026】
上記の第一、第二または第三の態様のいずれかによって特定されている本発明には、多数のその他の特徴を適用することができる。それについて以下に説明する。
【0027】
有利な点として、伝導面は、第一の内部空間内に突出し、内部空間と通路間で熱を伝導するための少なくとも1つの突起を有する。少なくとも1つの突起を使用することにより、伝導面の表面積が大きくなり、伝導面と電子コンポーネントの形状をより密接に適合させることができる。これらは、熱伝導効率を高める。
【0028】
密封型モジュールに電子コンポーネントが含まれる場合、伝導面は好ましくは、第一の内部空間内に突出し、内部空間と通路間で熱を伝達するための少なくとも1つの突起を有し、少なくとも1つの突起は電子コンポーネントの形状と適合するように配置される。これはさらに熱伝導効率を高めるが、これは、コンポーネントと伝導面の間の空隙が小さくなり、また突起の総表面積が拡大することで熱流路の熱抵抗が低減し、また効率的な冷却のための冷却液の必要量が減少し、伝導性は低いが、より安価またはより軽量、またはその両方の材料(たとえば、プラスチック)をより多く使用できるようになるためである。特に、冷却効率は、冷却液が伝導面と素早く接触することにより改善する。
【0029】
必要に応じて、伝導面は、合成プラスチック材料で作製され、これは望ましい熱伝導性を有する。これに加えて、またはその代わりに、ハウジングは、合成プラスチック材料で作製してもよい。好ましくは、これは断熱性を有する。実施形態において、熱伝達装置は、合成プラスチック材料で作製してもよい。
【0030】
いくつかの実施形態において、密封型モジュールは、電子コンポーネントに結合されたコンポーネント用ヒートシンクを更に備え、これは伝導面の少なくとも1つの突起と協働するように準備された少なくとも1つの突起を有する。
【0031】
有利な点として、伝導面の少なくとも1つの突起は、フィン構造からなる。あるいは、またはそれに加えて、伝導面の少なくとも1つの突起は、ピン構造からなる。好ましい実施形態において、少なくとも1つの突起は、ピンフィン構造からなる。ピンフィン突起は、異なる高さであってもよい。好ましくは、これらは、断面が長方形のフィンの形状である。より好ましくは、突起は、伝導面全体を覆わない。
【0032】
好ましくは、
偏向器が空間内に配置される。これは、バッフルプレートまたはその他の受動的流れ制御機構の形態をとっていてもよい。このような構造物には、高温の液体の湧昇を、この構造物の真上にあり、この構造物がなければ過熱するかもしれないコンポーネントから遠ざけるように偏向させる目的がある。
【0033】
必要に応じて、複数の導電体を内部空間内に設置し、複数の導電体は、第一の冷却液の水位を検出するように構成される。この導電体は、好ましくは、モジュールの上部にあり、内部空間内に向けて下方に延びる1対のロッドの形態をとる。これらは、コンデンサとして動作し、その数値は、(誘電効果により)液体の水位の変化に合わせて変化する。適当な電子回路を取り付けることにより、第一の冷却液の水位を推定ができる。これによって、オペレータはいつ水位がその時点での液温に関する正常値より低くなったかを知ることができ、漏れの可能性が示される。同じ装置を使って、モジュールの初期充填時(または補給時)の水位も判断できる。
【0034】
これに加えて、またはその代わりに、ハウジングの透明窓を使って、水位を直接観察する。さらに選択可能な改善方法として、電子コンポーネントが設置される回路基板に、または電子コンポーネントの付近に、センサおよびその関連回路を構築する方法があろう。
【0035】
いくつかの実施形態において、伝導面が通路を画定する場合、通路の形状は電子コンポーネントの形状と適合するように構成される。これによって、第一の冷却液と第二の冷却液の間の熱伝達効率はさらに改善される。
【0036】
好ましい実施形態において、熱伝達装置は一体として形成される。熱伝達装置のための一体型のアセンブリの場合、保守が不要かもしれず、通路が事前に形成されたコールドプレート部と、コールドプレート部に溶接またはその他の方法で接着されるシーリングプレートから構成できる。そのため、ねじやガスケットが不要となり、液漏れの可能性が低下する。
【0037】
いくつかの実施形態において、熱伝達装置は、伝導面に結合され、第二の冷却液を受けるための通路を画定するベース部をさらに備える。
【0038】
1つの実施形態において、ハウジングと伝導面は内側チャンバを画定し、熱伝達装置は外側チャンバをさらに備え、通路を規定する。
【0039】
第二の冷却液を受けるための通路を規定し、内側ハウジングと協働して伝導面を提供する外側チャンバを使用することにより、モジュールを小型化できる。このような構成により、さらに、通路の幅を熱伝達要求に合わせて画定または調節することが可能となる。必要に応じて、外側チャンバは合成プラスチック材料で作製される。
【0040】
有利な点として、密封型モジュールは、ハウジングの少なくとも一部を覆う
断熱層をさらに備える。好ましくは、
断熱層は内部空間内にある。これに加えて、またはその代わりに、密封型モジュールは、ハウジングの少なくとも一部を覆う、内部空間の外の
断熱層を有していてもよい。外部
断熱体は、軟質発泡体とすることができる。これには、液体の充填、排出またはその両方のためのコネクタを支持し、それと同時に管を曲げられるようにするという別の利点がある。その結果、滑動部の耐性が大きくなり、対応のラックに挿入しやすくなる。
【0041】
好ましくは、複数の電子コンポーネントを内部空間内に配置してもよい。好ましい実施形態において、密封型モジュールは複数の電子コンポーネントを含み、そのうちの少なくとも1つは使用中に発熱し、さらに、複数の電子コンポーネントを保持する回路基板を含む。
【0042】
回路基板を注意深く選択された液体中に浸漬することによって、回路基板は空気中の不純物または本来であれば大気から凝結する水、または他の箇所からの漏れによる損害を受けないように隔離される。空気中に存在する、または水中に溶解する不純物は、たとえば、回路基板の繊細な配線に容易に損傷を与える可能性がある。また、電源、DC−DC変換機およびディスクドライブ等のその他の発熱するコンポーネントを封入して冷却することができる。少なくとも1つの電子コンポーネントがディスクドライブを含む場合、ディスクドライブは好ましくは、ソリッドステートデバイスである。可動部品を有する機器は、液体中への浸漬に適していない。
【0043】
第一の冷却液は、好ましくは、加熱時の液体の膨張に対応する空間が確保され、内部空間内の圧力が大幅に上昇しないように、密封型モジュールの内部空間の一部を占める。
【0044】
好ましくは、密封型モジュールは、回路基板とハウジングの間に配置された保護膜をさらに備え、保護膜はハウジングと回路基板の間に液体が流れないように配置される。これによって、この好ましくない経路を通じた熱抵抗が増大し、内部空間に充填する冷媒の必要量が減り、それと同時に、回路基板の後方に小型のコンポーネントを設置できるようになる。好ましい実施形態において、保護膜は変形可能である。
【0045】
有利な点として、回路基板の少なくとも一部は、ハウジングと一体形成される。電子回路基板は、モジュールハウジングの一部と、たとえば側壁だけを使って一体化することができる。すると、相互接続手段を、回路基板を通って直接ハウジングの外面に出すことができ、出口の地点においてケーブルをモジュールで封入する必要がなくなる。必要に応じて、回路基板と壁は単体として構成され、それゆえ、たとえばガラス繊維の成型を使用する封入の問題がさらに減少する。
【0046】
好ましい実施形態において、密封型モジュールは、ハウジング内に配置され、そこから液体が内部空間内に受けられるモジュールへの充填口と、充填口の密封手段と、を備える。これによって、現場で密封型モジュールの空間に冷却液を素早く充填または補給することができる。
【0047】
好ましくは、密封型モジュールは、ハウジング内に配置され、空間内の圧力が所定の限界を超えたときに空間から液体を流出させるように配置された除圧弁を備える。
【0048】
必要に応じて、通路は伝導面との接触領域を有し、これが通路幅を規定し、最小通路幅は、伝導面の寸法に比して重要である。
【0049】
これに加えて、またはその代わりに、通路は、伝導面の少なくとも一部と、少なくとも1か所で方向転換する経路に沿って界面をなす。好ましくは、経路は直線部分を有し、最小通路幅は、経路の直線部分の長さの少なくとも10%である。その他の実施形態において、最小通路幅は、経路の直線部分の長さの少なくとも10%、20%、30%、40%または50%であってもよい。これに加えて、またはその代わりに、経路は本線経路と支線経路を有し、支線経路は少なくとも1か所で本線経路に接続される。
【0050】
本発明は、冷却される電子システムにも見出すことができ、これは、本願で開示する密封型モジュールと、内部空間内に配置された電子コンポーネントと、内部空間内に配置された第一の冷却液と、ヒートシンクと、第二の冷却液が密封型モジュールの通路の少なくとも一部を通ってヒートシンクへと所定の流速で流れるように準備されたポンプ装置と、電子コンポーネントの温度を測定するように配置された温度センサと、ポンプ装置と通路のうち第二の冷却液が流れる部分の少なくとも1つを制御して、電子コンポーネントの温度が所定の最高動作温度を超えないように制御されるように構成されたコントローラと、を備える。
【0051】
有利な点として、伝導面は、第一の内部空間内に突出し、内部空間と通路の間で熱を伝導するための少なくとも1つの突起を有する。密封可能モジュールが電子コンポーネントを含む場合、伝導面は好ましくは、第一の内部空間内に突出し、内部空間と通路の間で熱を伝達するための少なくとも1つの突起を有し、少なくとも1つの突起は、その電子コンポーネントの形状と適合するように構成される。いくつかの実施形態において、密封型モジュールは、電子コンポーネントに結合されるコンポーネント用ヒートシンクを備え、これは伝導面の少なくとも1つの突起と協働するように構成される少なくとも1つの突起を有する。有利な点として、伝導面の少なくとも1つの突起はフィン構造である。あるいは、またはこれに加えて、伝導面の少なくとも1つの突起はピン構造である。好ましい実施形態において、少なくとも1つの突起はピンフィン構造である。
【0052】
本発明の第四の態様は、電子機器を冷却する方法に見出され、この方法は、ハウジングと、伝導面を有する第一の熱伝達装置とを備えるモジュールを提供するステップであって、ハウジングと伝導面とが内部空間を画定し、内部空間は第一の冷却液で満たされ、電子機器がその中に配置されているようなステップと、電子機器を内部空間内で動作させるステップと、電子機器により発生された熱を第一の冷却液から第二の冷却液へと、伝導面の少なくとも一部を通じて伝えるステップと、熱を第二の冷却液からヒートシンクへと第二の熱伝達装置を使って伝達するステップと、伝導面からヒートシンクへの第二の冷却液の流量と、伝導面のうち熱を第二の冷却液へと伝える部分との一方または両方を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御されるように設定するステップと、を含む。
【0053】
流量、熱伝達面積の一方またはその両方を設定することによって、有利な点として、熱抵抗を必要に応じて増減させて、所望の温度差を発生させることができる。これによって、(たとえば大気による最終のヒートシンクが使用される場合)最終のヒートシンクの温度が上昇したとしても、電子コンポーネントを、その最大動作温度を超えない温度に保たれる。必要に応じて、伝導面は、合成プラスチック材料で作製される。
【0054】
必要に応じて、方法は、電子コンポーネントの温度を測定するステップをさらに含む。設定するステップは、測定された温度に基づいて行われる。これは、測定された温度に基づく動態的調整の形態である。
【0055】
それに加えて、またはその代わりに、設定するステップは、伝導面からヒートシンクへの第二の冷却液の流量と、伝導面のうち熱を第二の冷却液に伝える部分との少なくとも一方は、その電子機器について予測された所定の最高動作温度に基づいて、所定のレベルに設定されることを含む。このような実施形態において、流量、伝導面の部分の一方または両方は、電子機器からの予測された発熱量または発熱量の範囲に基づいて事前設定される。
【0056】
第五の態様において、冷却される電子システムが提供され、このシステムは、ハウジングと電子機器および第一の冷却液を含む密封容器と、第二の冷却液を受けるための第一の通路を規定する第一の熱伝達装置であって、第一の冷却液と第一の通路の間で、伝導面の少なくとも一部を通じて熱を伝えるように構成された第一の熱伝達装置と、第二の冷却液を第一の熱伝達装置に、またはそこから伝えるように構成された配管構造と、を備える。このシステムは、第一の通路を通る第二の冷却液の流量と、伝導面のうち熱を第二の冷却液に伝える部分の一方または両方を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように設定するように構成される。有利な点として、第二の冷却液は、伝導面からヒートシンクに流れる。
【0057】
本発明の第六の態様は、電子機器を冷却する方法によって提供されてもよく、この方法は、容器内で電子機器を動作させるステップであって、容器はまた、第一の冷却液を含み、電子機器により発せられる熱を第一の冷却液に伝え、容器は第一の冷却液の漏出を防止するように密封されているようなステップと、第一の冷却液と第一の熱伝達装置の中の第二の冷却液との間で熱を伝えるステップと、第二の冷却液を第一の熱伝達装置から第二の熱伝達装置に管により供給するステップと、第二の冷却液と第二の熱伝達装置の中の第三の冷却液の間で熱を伝えるステップと、第三の冷却液をヒートシンクに管により供給するステップと、を含む。
【0058】
それゆえ、3段階の液体冷却が提供され、これによって、第二の冷却液と第三の冷却液の流量と圧力を個別に制御することが可能となる。したがって、第二の冷却液の圧力を下げて、この液体の漏出リスクをさらに低減することができる。これらの液体は、電子コンポーネントと密接に近接するため、漏出は望ましくない。また、有利な点として、流量を発熱量に基づいて制御し、各段階での熱伝達効率を高めることができる。
【0059】
好ましくは、第一の冷却液と第二の冷却液の間で熱を伝えるステップは、伝導によって行われる。
【0060】
好ましい実施形態において、この方法は、第二の冷却液の流量を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含む。これに加えて、またはその代わりに、この方法はまた、第三の冷却液の流量を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含んでいてもよい。これによって、第二の冷却液の流量を発熱レベルまたは量に適合させることができる。
【0061】
第一の熱伝達装置が伝導面を含む場合、この方法は必要に応じて、伝導面のうち熱が第二の冷却液に伝達される部分を、電子機器の温度が、所定の最高動作温度を超えないように制御されるように設定するステップをさらに含む。これは、たとえば、伝導面において、第二の冷却液を輸送する複数の通路と、第二の冷却液が流れるべき1つまたは複数の通路を決定し、あるいは異なる通路間で冷却液の流量を適切に平衡化して、電子機器の温度を閾値より低く保持するための適当な制御弁またはバッフルプレートを使用することによって実現できる。それによって、通路は異なる領域において、液体流量を同様にし、または変化させ、および、したがって伝導面の異なる部分からの熱伝達率を変化させる。
【0062】
いくつかの実施形態において、この方法は、第二の冷却液の流量と、第三の冷却液の流量の少なくとも一方を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように、また、第一の期間中に、第二の冷却液と第三の冷却液の間または第三の冷却液とヒートシンクの間の熱伝達率が所定の最大率より高くならないように、また、後の第二の期間中に、第二の冷却液と第三の冷却液の間、または第三の冷却液とヒートシンクの間の熱伝達率が、所定の最大率より高くなってもよいように制御するステップをさらに含んでいてもよい。
【0063】
必要に応じて、制御するステップは、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように、また、第一の期間中に、第二の冷却液と第三の冷却液の少なくとも1つの温度が所定の最低平均温度より低くならないよいように、また、後の第二の期間中に、第二の冷却液と第三の冷却液の温度が所定の最低平均温度より低くなってもよいように実行される。
【0064】
本発明の更なる態様において、電子機器を冷却する方法が提供され、この方法は、容器内で電子機器を動作させるステップであって、容器はまた、第一の冷却液を含み、電子機器により発せられる熱が第一の冷却液に伝えられるようになっており、容器は密封されて、第一の冷却液の漏出が防止されているようなステップと、第一の冷却液と第一の熱伝達装置の中の第二の冷却液の間で熱を伝えるステップと、第二の冷却液とヒートシンクの間で熱を伝えるステップと、第二の冷却液とヒートシンクの間の熱伝達率を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように、また、第一の期間中に、熱伝達率が所定の最大率を超えないように、また、その後の第二の期間中に、熱伝達率が所定の最大率を超えてもよいように制御するステップを含む。
【0065】
この方法で使用されるシステムの有利な特徴は、冷却装置の高い熱容量である。これには、多くの利点と可能性がある。システムの一部が故障しても、コンポーネントがすぐには損傷を受けない。温度は上昇するが急激ではなく、保守要員は時間的に、より余裕をもって、故障部分を分離し、不具合の拡大を最小限にとどめることができる。同様に、このシステムは、周辺温度の変動が大きい日中の環境にも対処できる。システムは日中に発生する熱にも耐え、コンポーネントの最高動作温度を超えない。熱は、夜間に安全に低温部へと放散される。システムの流量管理アルゴリズムは、このような日中の高い周囲温度を考慮して構成されてもよい。
【0066】
有利な点として、電子システムを冷却する方法が提供され、この方法は、この第六の態様にしたがって電子機器を冷却する方法のステップを実行するステップと、第二の容器の中で第二の電子機器を動作させるステップであって、第二の容器はまた、第四の冷却液を含み、電子機器によって発せられる熱が第四の冷却液に伝えられるようになっており、第二の容器は密封されて、第四の冷却液の漏出が防止されているようなステップと、第四の冷却液と第三の熱伝達装置内の第五の冷却液の間で熱を伝えるステップと、を含む。必要に応じて、この方法は、第五の冷却液の流量を制御するステップをさらに含む。
【0067】
2つの容器を有するユニットは重く、一人で持ち上げるための衛生安全限度を超える可能性があるため、ラックに取り付けるのは難しいかもしれない。1つの実施形態において、第一と第二の容器が使用され、これらの容器が背中合わせに設置される。言い換えれば、第一の容器のコネクタは、第二の容器のコネクタに隣接して位置付けられる。ラックの中に容器を背中合わせに配置し、中央に配線と液体用の管を設けることにより、1つのモジュールの、一人で持ち上げられるユニットが実現される。
【0068】
好ましくは、第二の冷却液と第五の冷却液が合流される。これによって、第一の冷却段階は別であるが、第二の冷却段階は共通の、複数の電子機器のための効率的な冷却が可能となる。より好ましくは、この方法は、第一の熱伝達装置からの第二の冷却液と、第三の熱伝達装置からの第五の冷却液をプレナムチャンバに管によって供給するステップをさらに含む。より好ましくは、第二の冷却液と第五の冷却液は、合流させてから、プレナムチャンバに到達させる。必要に応じて、この方法はまた、プレナムチャンバからの第二の冷却液を第一の容器に管により供給し、プレナムチャンバからの第五の冷却液を第二の容器に管により供給するステップを含む。
【0069】
必要に応じて、この方法は、合流された第二の冷却液と第五の冷却液の流量を、第一の電子機器の温度が第一の所定の最高動作温度を超えないように、また、第二の電子機器の温度が第二の所定の最高動作温度を超えないように制御するステップをさらに含む。
【0070】
この実施形態では、モジュールごとの個別の流量制御が不要となる。合流された液体の全体的流量の制御は、たとえば供給側のプレナムチャンバの中のバッフルによって、各冷却ユニットへの液体流量バランスを事前設定することと組み合わせたときに、満足な結果を得ることができる。
【0071】
別の実施形態において、この方法は、第三の熱伝達装置からの第五の冷却液を第四の熱伝達装置に管により供給するステップと、第五の冷却液と第四の熱伝達装置内の第三の冷却液の間で熱を伝達させるステップをさらに含む。
【0072】
第七の態様において、本発明は、冷却される電子システムにおいて見出すことができ、このシステムは、ハウジングと電子機器と第一の冷却液を含む密封容器と、第二の冷却液を受けるための第一の通路を画定する第一の熱伝達装置であって、第一の冷却液と第一の通路の間で熱を伝えるように構成された第一の熱伝達装置と、第一の通路から第二の冷却液を受けるための第二の通路とヒートシンクに結合するために第三の冷却液を受けるための第三の通路を含む第二の熱伝達装置であって、第二の通路と第三の通路の間で熱を伝えるように構成された第二の熱伝達装置と、を備える。
【0073】
好ましくは、第一の熱伝達装置は伝導面を含み、ハウジングと伝導面とが、電子コンポーネントと第一の冷却液が配置される内部空間を画定する。より詳しくは、伝導面は、内部空間と第一の通路を分離して、内部空間と通路の間で伝導面を通じて熱が伝達されるようにする。
【0074】
有利な点として、伝導面またはハウジングの少なくとも一部は、電子機器の形状と適合するように成形される。
【0075】
有利な点として、伝導面は、第一の冷却液からの熱を受けるための少なくとも1つの突起を有する。好ましい実施形態において、少なくとも1つの突起は、電子機器の形状に適合するように配置される。必要に応じて、冷却される電子システムは、電子機器に連結され、伝導面の少なくとも1つの突起と協働するように配置された少なくとも1つの突起を有するコンポーネント用ヒートシンクをさらに備える。
【0076】
有利な点として、伝導面の少なくとも1つの突起は、フィン構造である。あるいは、またはこれに加えて、伝導面の少なくとも1つの突起は、ピン構造である。好ましい実施形態において、少なくとも1つの突起は、ピンフィン構造である。
【0077】
1つの実施形態において、熱伝達装置は、伝導面に結合され、かつ第二の冷却液を受ける通路を規定するベース部をさらに備える。
【0078】
有利な点として、伝導面は、合成プラスチック材料で作製される。これに加えて、またはその代わりに、ハウジングは、合成プラスチック材料で作製されてもよい。実施形態において、熱伝達装置のベース部は、合成プラスチック材料で作製されてもよい。
【0079】
必要に応じて、モジュールは、そこから第一の冷却液を受けることのできる容器への充填口と、充填口の密封手段をさらに備える。これに加えて、またはその代わりに、モジュールは、容器内の圧力が所定の限度を超えたときに、容器から第一の冷却液を排出するように構成された除圧弁をさらに備える。
【0080】
電子機器が長軸を有する場合、伝導面は好ましくは、電子機器の長軸と適合するように配置された長軸を有し、それによって空間と通路の間で、伝導面を通じて熱が伝導される。
【0081】
必要に応じて、冷却される電子システムは、第二の冷却液の流量を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御する流量制御装置をさらに備える。
【0082】
これに加えて、またはその代わりに、冷却される電子システムは、第三の冷却液の流量を、電子機器の温度が所定の最高動作温度を超えないように制御するために準備された流量制御装置をさらに備えていてもよい。
【0083】
いくつかの実施形態において、密封容器は第一の密封容器であり、冷却される電子システムは、第二のハウジング、第二の電子機器、第二の電子機器からの熱を受けるための第四の冷却液、第五の冷却液を受けるための第四の通路を有する第三の熱伝達装置を含む第二の密封容器をさらに備え、第三の熱伝達装置は、第四の冷却液から第四の通路に熱を伝えるように構成される。
【0084】
好ましくは、第一の通路と第四の通路は連結されて、第二の冷却液と第五の冷却液を合流させる。必要に応じて、冷却される電子システムは、合流された第二の冷却液と第五の冷却液を回収するように構成されたプレナムチャンバをさらに備える。
【0085】
有利な点として、冷却される電子システムは、合流された第二の冷却液と第五の冷却液の流量を、第一の電子機器と第二の電子機器の温度がそれぞれ第一と第二の所定の最高動作温度を超えないように制御するように準備された流量制御装置をさらに備える。
【0086】
好ましくは、この流量制御装置は分流装置を備え、この分流装置は、第二の冷却液の流量を、第一の電子機器の温度が第一の所定の最高動作温度を超えないように設定し、また、第五の冷却液の流量を、第二の電子機器の温度が第二の所定の最高動作温度を超えないように設定するように構成される。
【0087】
あるいは、冷却される電子システムは、第四の通路から第五の冷却液を受けるための第五の通路と、第六の冷却液を受けてヒートシンクに連結させる第六の通路を有する第四の熱伝達装置をさらに備え、第二の熱伝達装置は、第五の通路と第六の通路の間で熱を伝達するように構成されている。
【0088】
第八の態様において、本発明は、電子機器のための容器の内部に冷却液を充填する方法において見出されてもよく、この方法は、容器を充填温度まで加熱するステップと容器の内部を減圧するステップの少なくとも一方によって、容器が冷却液を受ける準備をするステップと、容器に冷却液を充填するステップと、容器を密封し、冷却液の漏出を防止するステップと、を含む。
【0089】
容器と液体を充填温度または圧力に適合させ、この温度または圧力で容器に冷却液を充填することによって、動作条件で液体が充填される容器の内部スペースの容積が増大し、その際、容器内の圧力をそれほど上昇させない。過剰な圧力は、容器または電子機器に損傷を与える可能性がある。
【0090】
必要に応じて、この方法は、冷却液を充填温度まで加熱するステップと、密封容器と冷却液を動作温度まで冷却するステップと、をさらに含む。
【0091】
いくつかの実施形態において、容器を充填するステップは、容器を適応させるステップの前に実行される。必要に応じて、容器を適応させるステップは、電子機器を動作させるステップを含む。
【0092】
第九の態様において、電子機器の容器の内部に冷却液を充填する方法が提供され、この方法は、冷却液を充填温度まで加熱するステップと、容器に加熱された冷却液を充填するステップと、容器を密封して冷却液の漏出を防止するステップと、密封された容器と冷却液を動作温度まで冷却するステップと、を含む。これは、第八の態様の代案であり、第八と第九の態様はまた、必要に応じて組み合わせることもできる。
【0093】
第八と第九の態様のいずれかまたは両方に、数多くの好ましい、または任意の特徴がある。有利な点として、充填温度は、冷却液中に溶解している気体が冷却液から除去されるように選択される。したがって、空気、水分およびその他の溶解気体は、容器の内部から除去される。容器内の乾燥の必要性が低くなり、または不要となる。
【0094】
好ましくは、充填温度は、電子機器の最高動作温度に基づいて選択される。有利な点として、充填温度は、電子機器の最高動作温度と同等またはそれより高くするように選択される。
【0095】
好ましい実施形態において、容器を充填するステップは、容器内のすべての空気が排出されるように実行される。
【0096】
本発明は、さまざまな方法で実施することができ、その1つを以下に、あくまでも例として、添付の図面を参照しながら説明する。