特許第5863668号(P5863668)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5863668-底部にガス供給装置を備える反応器 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863668
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】底部にガス供給装置を備える反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 8/06 20060101AFI20160204BHJP
   B01J 8/02 20060101ALI20160204BHJP
   B01J 8/04 20060101ALI20160204BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160204BHJP
   B01J 23/75 20060101ALI20160204BHJP
   B01J 35/06 20060101ALI20160204BHJP
   C07C 1/04 20060101ALN20160204BHJP
   C10G 2/00 20060101ALN20160204BHJP
【FI】
   B01J8/06
   B01J8/02 D
   B01J8/02 C
   B01J8/04
   B01J8/02 Z
   B01J35/04 301Z
   B01J23/75 Z
   B01J35/06 A
   !C07C1/04
   !C10G2/00
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-546420(P2012-546420)
(86)(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公表番号】特表2013-515604(P2013-515604A)
(43)【公表日】2013年5月9日
(86)【国際出願番号】EP2010070590
(87)【国際公開番号】WO2011080196
(87)【国際公開日】20110707
【審査請求日】2013年12月12日
(31)【優先権主張番号】09180825.3
(32)【優先日】2009年12月28日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390023685
【氏名又は名称】シエル・インターナシヨネイル・リサーチ・マーチヤツピイ・ベー・ウイ
【氏名又は名称原語表記】SHELL INTERNATIONALE RESEARCH MAATSCHAPPIJ BESLOTEN VENNOOTSHAP
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】シュラウウェン,フランシスクス・ヨハネス・マリア
【審査官】 原 賢一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−112125(JP,A)
【文献】 特開2005−305381(JP,A)
【文献】 特開2004−167448(JP,A)
【文献】 特表2004−536696(JP,A)
【文献】 特表2008−535802(JP,A)
【文献】 米国特許第06262131(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/00−8/46,23/74−23/755,35/04−35/06
C07B 61/00
C07C 1/00−1/36
C10G 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱プロセスを実行するための反応器(1)であって、反応器シェル(2)と、反応器シェル(2)の内部に設けられた冷却剤室(6)と、前記冷却剤室(6)から隔てられて前記反応器シェル(2)の内部に設けられた、前記冷却剤室(6)の下方の空間(15)と、前記冷却剤室(6)から隔てられて前記反応器シェル(2)の内部に設けられた、前記冷却剤室(6)の上方の空間(13)と、前記冷却剤室(6)の下方の空間(15)内に設けられたガス供給装置(11)と、反応性ガスを前記ガス供給装置(11)に導入するための入口()と、冷却剤を前記冷却剤室(6)に導入するための入口(7)と、前記冷却剤室(6)の下方の空間(15)から液体生成物を除去するための出口()と、前記冷却剤室(6)から前記冷却剤を除去するための出口(8)と、少なくとも2つの反応器管(9)と、を備え、少なくとも2つの反応器管(9)が、前記冷却剤室(6)の下方の空間(15)と前記冷却剤室(6)の上方の空間(13)の間の流体連通を可能にするように前記冷却剤室(6)を通じて延在し、前記反応器(1)が、1つまたは複数の高多孔質触媒を含み、前記触媒が、少なくとも1mmの大きさを有すると共に、多孔質体および触媒材料を含み、前記多孔質体が、50〜98体積%の範囲内の多孔率を有し、前記ガス供給装置(11)は、前記反応器管(9)の各々の内側に配置される出口を備え、前記反応器(1)は、さらに、前記冷却剤室(6)の上方の空間(13)と前記冷却剤室(6)の下方の空間(15)とを接続する1つまたは複数の液体リサイクル管を備える、反応器(1)。
【請求項2】
前記冷却剤室(6)の上方の空間(13)からオフガスを除去する上部出口(5)をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の反応器(1)。
【請求項3】
前記冷却剤室(6)を、前記冷却剤室(6)の下方の前記空間(15)および前記冷却剤室(6)の上方の前記空間(13)から隔てる少なくとも2つのほぼ平行な板(16、17)をさらに備えることを特徴とする、請求項1または2に記載の反応器(1)。
【請求項4】
反応器管(9)の上部および底部に触媒保持器をさらに備えることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項5】
前記多孔質体が、ガーゼ、ハニカム、モノリス、スポンジ、メッシュ、ウェビング、箔構造、および織られたマットの形態、またはこれらの組み合わせからなる群から選択される形態または形状を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項6】
前記多孔質体が、金属から作製されることを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項7】
前記触媒の前記多孔率が、前記触媒の外周の体積に基づいて計算される少なくとも50体積%であり、1つまたは複数の反応器管(9)内における前記触媒の外部空隙率が、前記反応器管内における前記触媒の前記外周の体積の外側の前記反応器管の容積に基づいて計算される0〜60体積%の範囲内である、請求項1〜のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項8】
前記反応性ガスは、前記反応器管の底部から前記反応器管の上部に向けて流れ、前記反応器管の上部における触媒の1つまたは複数の層が、前記反応器管の底部における触媒の1つまたは複数の層より高い固有活性を有することを特徴とする、請求項1〜のいずれか一項に記載の反応器(1)。
【請求項9】
フィッシャー・トロプシュ反応を実行するための方法であって、
請求項1からのいずれか一項に記載の反応器(1)に、前記反応性ガスとして合成ガスを供給するステップと、
フィッシャー・トロプシュ生成物を前記反応器から除去するステップと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィッシャー・トロプシュ法などの発熱プロセスを実行するための反応器に関する。本発明は、特に、反応器の底部にガス供給装置を備える固定層反応器に関する。好ましい実施形態では、この反応器は、高多孔質触媒を含む。本発明は、反応器の使用にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第2005/075065号に説明されるように、ガス状炭化水素供給原料を液体炭化水素および/または固体炭化水素に転換するためには、フィッシャー・トロプシュ法がしばしば使用される。供給原料、例えば、天然ガス、付随ガス、炭層メタン、残(原)油留分、石炭および/またはバイオマスは、第1段階において、合成ガスとしても知られる、水素と一酸化炭素の混合物に転換される。次いで、第2段階において、合成ガスは、高温高圧で適切な触媒により、メタンから200個以下、または特定の状況下でそれ以上の炭素原子を含む高分子量分子までの範囲のパラフィン化合物に転換される。
【0003】
フィッシャー・トロプシュ反応を実行するために、多数の種類の反応器系が開発されてきた。フィッシャー・トロプシュ反応器系には、固定層反応器、特に多管式固定層反応器、噴流流動層反応器および固定流動層反応器などの流動層反応器、ならびに三相スラリ気泡塔および沸騰層反応器などのスラリ層反応器が含まれる。
【0004】
フィッシャー・トロプシュ反応は、大きな発熱を伴い、温度感受性であり、したがって最適な動作条件および炭化水素生成物の選択性を維持するために慎重な温度制御を必要とする。
【0005】
典型的には、商用のフィッシャー・トロプシュ固定層および三相スラリ反応器は、反応熱を除去するために沸騰水を利用する。固定層反応器では、個々の反応器管は、典型的にはシェル壁のフランジを介して反応器に供給される水/蒸気を収容するシェル内に設置される。反応熱は、各管内の触媒層の温度を上昇させる。この熱エネルギーは、管壁に伝達されて周囲の水を沸騰させる。スラリの設計では、冷却管が、スラリの容積内に配置され、熱が、液体連続マトリックスから管壁へ伝達される。管内の蒸気の生成が冷却をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一目的は、フィッシャー・トロプシュ法などの発熱プロセスを実行するための改良型反応器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、発熱プロセスを実行するための反応器(1)であって、反応器シェル(2)と、反応物および冷却剤を反応器シェル(2)に導入するための入口(3、7)と、反応器シェル(2)から生成物および冷却剤を除去するための出口(4、8)と、少なくとも2つの反応器管(9)と、冷却剤室(6)と、冷却剤室(6)の下方のガス供給装置(11)とを備え、少なくとも2つの反応器管(9)が、冷却剤室(6)の下方の空間(15)と冷却剤室(6)の上方の空間(13)の間の流体連通を可能にするように冷却剤室(6)を通じて延在し、反応器(1)が、1つまたは複数の高多孔質触媒を含み、(1つまたは複数の)触媒が、少なくとも1mmの大きさを有する、反応器(1)に関する。(1つまたは複数の)触媒は、多孔質体および触媒材料を含む。多孔質体は、50〜98体積%の範囲内の多孔率を有する。
【0008】
少なくとも1mmの大きさを有する触媒は、少なくとも1mmの最も長い内側の直線長さ(internal straight length)を有する触媒として定義される。好ましくは、高多孔質触媒は、10μmを超える大きさを有する孔を有する。触媒材料は、担体、およびそのための触媒活性成分または前駆体を含む。触媒活性成分の前駆体は、水素または水素含有ガスにさらすことによって触媒活性にさせられ得る。
【0009】
本発明による反応器は、いくつかの利点を有する。本発明による反応器の利点の1つは、固体触媒粒子の充填物を含む固定層反応器内の触媒と冷却媒体の間の熱伝達に比べて、冷却剤室内で触媒と冷却媒体の間のとても良好な熱伝達を有することが可能であることである。本発明による反応器内の熱伝達は、反応器管内に高多孔質触媒を含み、反応性ガスが反応器管の上部から反応器管を通じて下向きに流れる多管式固定層反応器に比べてもより良好である。
【0010】
良好な熱伝達は、より大きい管径を使用することを可能にし、したがって反応器容積あたりの管の数をより少なくすることを可能にする。これにより、反応器を、組み立ておよび操作するのがより簡単なものにさせる。
【0011】
本発明による反応器の別な利点は、固体触媒粒子の充填物を含む固定層反応器に比べて、反応器管に沿った低い圧力損失を得ることができることである。低い圧力損失は、供給ガスおよび/またはリサイクルガスの(1つまたは複数の)圧縮機の費用およびエネルギー消費を減少させる。
【0012】
本発明による反応器のさらなる利点は、アップスケーリングが、流動化した触媒粒子を含むスラリ反応器に比べて、より容易に実行され、より信頼できるものであり得ることである。これは、商用の反応器の設計が、単管の小規模試験に依拠し得るからである。アップスケーリングは、反応器管の本数の乗算によって簡単かつ確実に実行することができる。
【0013】
本発明による反応器の別な利点は、水力学的な動作条件とは独立に、反応器内で触媒の一様な分配がもたらされ得ることである。単一の反応器管内で異なる触媒構造を積み重ねることさえ適用することができる。これは、複数の冷却剤管を有する容器またはシェルを備えるスラリ反応器に対して大きな利点である。好ましくは後述のような高多孔質触媒、または後述のような異なる高多孔質触媒の積み重ねもしくは勾配が適用される。
【0014】
本発明による反応器のさらなる利点は、生成物が触媒から容易に分離できることである。これは、流動化した触媒粒子を含むスラリ反応器に対して大きな利点である。
好ましくは、冷却剤室(6)は、冷却剤室(6)を、冷却剤室(6)の下方の空間(15)および冷却剤室(6)の上方の空間(13)から隔てる少なくとも2つのほぼ平行な板(16、17)を備える。好ましくは、そのような平行板(16、17)は、ほぼ水平である。好ましくは、冷却剤室(6)を通じて延在する少なくとも2つの反応器管(9)は、冷却剤室(6)の少なくともほぼ平行な板(16、17)をも通じて延在する。
【0015】
反応器は、好ましくは50000本未満の反応器管、より好ましくは30000本未満の反応器管、さらにより好ましくは10000本未満の反応器管、最も好ましくは5000本未満の反応器管を備える。反応器は、好ましくは少なくとも10本の反応器管、より好ましくは少なくとも100本の反応器管、さらにより好ましくは少なくとも1000本の反応器管、最も好ましくは少なくとも2000本の反応器管を備える。
【0016】
反応器管は、好ましくは、1メートルを超える長さ、より好ましくは5メートルを超える長さ、さらにより好ましくは7メートルを超える長さを有する。反応器管は、好ましくは70メートル未満の長さ、より好ましくは40メートル未満の長さ、さらにより好ましくは20メートル未満の長さを有する。
【0017】
反応器管は、好ましくは少なくとも1cmの内径、より好ましくは少なくとも2cmの内径、さらにより好ましくは少なくとも5cmの内径を有する。反応器管は、好ましくは30cm未満の内径、より好ましくは20cm未満の内径、さらにより好ましくは15cm未満の内径を有する。
【0018】
好ましくは、各反応器管の少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%は、冷却剤室内にある。
好ましくは、冷却剤を反応器シェルに導入するための(1つまたは複数の)入口、および冷却剤を反応器シェルから除去するための(1つまたは複数の)出口は、冷却剤室を、冷却剤室の下方の空間および冷却剤室の上方の空間から隔てる平行板同士の間にある。より好ましくは、1つまたは複数の冷却剤入口が、冷却剤室の最も下の平行板のすぐ上に配置され、1つまたは複数の冷却剤出口が、冷却剤室の最も高い平行板のすぐ下に配置される。
【0019】
好ましくは、反応物を反応器シェルに導入するための(1つまたは複数の)入口は、冷却剤室の下方にある。反応物を導入するための1つまたは複数の入口は、ほぼ垂直な反応器シェルを通じて冷却剤室の下方に位置してもよく、および/または反応器の底部に円蓋を通じて位置してもよい。好ましくは、反応物を導入するための入口は、ノズルを備える。
【0020】
好ましくは、反応性ガスが、個々の反応器管に分配および供給される。好ましくは、ガス供給装置11は、反応器管内および/または反応器管の真下に配置される供給装置出口を介して入口3から反応器管9にガスを送る。反応性ガス、例えば合成ガスは、反応器管内の触媒を通じて上向きに流れ、生成物に転換される。一般に、触媒を通過する全ての合成ガスが、生成物に転換されるのではない。
【0021】
一実施形態では、ガス供給装置は、管の下方に、例えば列をなして設置されるほぼ水平の配管を備える。この配管は、いくつかの反応性ガス出口を有する。管は、例えば穴が開いていてもよい。加えてまたは代替として、管は、例えば、ガスを個々の反応器管に案内する垂直方向の小パイプを有してもよい。好ましい実施形態では、小パイプは、反応器管の下部分の中に延在する。
【0022】
反応器シェルを通じて最小個数の反応性ガス入口を有するために、一実施形態が、反応性ガス出口を有するパイプの列を有するガス供給装置を備え、それによってパイプの列は、より大きい供給配管に接続される。より大きい供給配管は、例えばリングの形態にあってもよい。
【0023】
好ましい実施形態では、ガス供給装置は、反応性ガスが供給される全ての反応器管が、同様の量の反応性ガスを受け取るように設計される。これによって、反応器全体にわたって均一な転換を保証する。これはまた、均一な転換と、反応器内の均一な液体運動との両方によって、良好な熱伝達に寄与する。
【0024】
生成物を除去するための(1つまたは複数の)出口は、冷却剤室の上方および/または下方にあってもよい。加えてまたは代替として、生成物を除去するための(1つまたは複数の)出口は、冷却剤室の液面にあってもよい。冷却剤室の上方の出口は、例えば、越流堰を備えてもよい。冷却剤室の下方の出口を通じての液体の抜き出しは、例えば、液面調整器に基づくことができる。液面調整器の場合には、反応器内の液体生成物の液面は、流量調整器による抜き出しのための設定点を与える。好ましくは、反応器は、冷却剤室の下方の出口を備える。生成物が冷却剤室の下方に除去されるとき、液体生成物と共に引っ張られることになるガスは無いか、またはほとんど無い。したがって、冷却剤室の下方で除去された生成物は、冷却剤室の上方で除去された生成物に比べて、おそらくより少ないガス状生成物、例えば、HO、C生成物、CO、CO、およびHを含有するであろう。冷却剤室の下方の出口は、反応器を空にする可能性ももたらす。
【0025】
最も好ましくは、生成物の排出は、液面調整器に基づく。例えば、数メートルの範囲での液面調整器は、冷却剤室の下方の生成物を除去するために出口における弁を調節するように冷却剤室の上方に配置されてもよい。その場合には、液体生成物は、冷却剤室の上方の液面調整器に基づいて冷却剤室の下方の出口を介して排出される。
【0026】
好ましい実施形態では、本発明による反応器の使用中、反応性ガスが反応器の中に流れていないときでも、反応器内の液体の量は、反応器管内の触媒を液体に浸漬させるのに十分大きい。これは、液面調整手段によって調節されてもよい。
【0027】
本発明による反応器の使用中、ガスの上昇流、またはガスおよび液体の並流の上昇流が存在する。
好ましい実施形態では、反応器は、反応器管、および1つまたは複数の液体リサイクル管を備える。反応器の使用中、反応器管は、触媒を収容する。液体リサイクル管は、反応器の使用中に触媒を収容しない管である。液体リサイクル管(18)は、冷却剤室(6)の下方の空間(15)と冷却剤室(6)の上方の空間(13)の間の流体連通を可能にするように冷却剤室(6)を通じて延在することができる。使用中、液体は、反応器管を通過する反応性ガスにより反応器管(9)内を上向きに伝達され、液体は、1つまたは複数の液体リサイクル管(18)内を下向きに移動している。最適な熱伝達は、液体リサイクル管を備える反応器を用いることによって実現できることが分かった。
【0028】
反応器は、反応器管とは異なる大きさの液体リサイクル管を備えてもよく、それらは、異なる内径および/または異なる長さを有してもよい。代替として、液体リサイクル管は、反応器管と同じ大きさを有してもよい。その場合には、反応器を使用する前に、大部分の管を触媒で満たすと共に一部の管を空のままにしておくように選んでもよく、すなわち大部分の管を反応器管として使用すると共に一部の管を液体リサイクル管として使用してもよい。好ましくは、反応性ガスは、液体リサイクル管に供給されない。
【0029】
反応器管として使用できる管が、この管を液体リサイクル管として使用するために触媒で満たされていない場合、反応性ガスは、この液体リサイクル管に供給されない。そのような場合、もし、ガス供給装置の出口が管の真下または管内に存在するなら、ガス供給装置の出口を閉鎖することが必要であり得る。
【0030】
一実施形態では、反応器は、反応器シェルの外側に位置する1つまたは複数の液体リサイクル管を備える。そのような液体リサイクル管は、2つの異なる位置で反応器シェルを通過する。反応器シェルの外側に位置する液体リサイクル管(18)が、冷却剤室(6)の上方の空間(13)と冷却剤室(6)の下方の空間(15)の間の流体連通を可能にするように冷却剤室(6)の上方および下方に反応器シェル(2)を通じて延在してもよい。これにより、反応器の使用中に、反応器シェルの外側の(1つまたは複数の)液体リサイクル管を液体が流れ落ちることを可能にする。
【0031】
好ましい実施形態では、反応器は、上部出口5を備える。その場合には、反応しなかったガス、および適宜、ガス状生成物は、上部出口5を介して反応器を去ることができる。存在するならば、1つまたは複数の上部出口5が、冷却剤室の上方に位置することが好ましく、ほぼ垂直な反応器シェルを通じて冷却剤室の上方に位置してもよく、および/または反応器の上部に円蓋を通じて位置してもよい。好ましくは、上部出口は、ノズルを備える。
【0032】
好ましい実施形態では、反応器は、反応器の上部で円蓋を通じた上部出口と、上部出口の真下の反応器内に気液分離器、例えば、デミスタまたはサイクロンとを備える。気液分離器は、上部出口を通じて反応器を去る材料の量を制限するために使用することができ、生成物出口を介して反応器を去る材料の量を増加させる。
【0033】
本発明の反応器は、フィッシャー・トロプシュ法を実行するために特に適切である。フィッシャー・トロプシュ反応器として使用中のときに、本発明による反応器は、冷却剤室(6)を通じて延在する少なくとも2つの反応器管(9)を通じて、冷却剤室(6)の下方の空間(15)と冷却剤室(6)の上方の空間(13)の間の合成ガスおよび流体炭化水素の流体連通を可能にする。
【0034】
フィッシャー・トロプシュ反応器として使用されるとき、合成ガスは、炭化水素に転換される。転換生成物は、反応器の動作条件下で液相、または部分的に液相および部分的に気相にあり得る。
【0035】
通常動作中、反応器管は液体生成物で満たされ、反応性ガスは液体生成物を通じて泡立たされる。このように、触媒から冷却剤室への最適な熱伝達が、液体生成物を介して得られる。反応物の触媒構造への良好な伝達も、このやり方で達成することができる。フィッシャー・トロプシュ反応器として通常動作中、反応器管は液体炭化水素で満たされ、合成ガスは液体炭化水素を通じて泡立たされる。このように触媒から冷却剤室への最適な熱伝達は、液体炭化水素を介して得られる。
【0036】
冷却剤は、好ましくは冷却剤室の下側にある1つまたは複数の入口を介して冷却剤室に供給され、好ましくは冷却剤室の上側にある1つまたは複数の出口を介して冷却剤室を去る。とても適切な冷却剤は、水および/または蒸気である。沸騰水は、蒸気ドラムを用いて自然循環熱サイフォンシステムを通じて循環させることができる。代替として、灯油などの沸騰炭化水素は、冷却剤として使用できる。
【0037】
本発明による反応器は、高多孔質触媒を備える。触媒は、少なくとも1mmの大きさを有する。少なくとも1mmの大きさを有する触媒は、少なくとも1mmの最も長い内側の直線長さを有する触媒として定義される。十分な大きさのとき、高多孔質触媒は、反応器管内に固定されることができる。
【0038】
好ましくは、触媒は、多孔質体および触媒材料を含む。触媒は、触媒体(catalyst body)とも呼ばれる。多孔質体は、触媒材料用の支持体として働く。触媒材料は担体および触媒活性成分またはそのための前駆体を含む。触媒活性成分の前駆体は、前駆体を水素または水素含有ガスにさらすことによって触媒活性にさせられ得る。
【0039】
触媒または触媒体は、本明細書については、触媒活性である、あるいは触媒または触媒体を水素または水素含有ガスにさらすことによって触媒活性にさせられ得る体として定義される。例えば、金属コバルトは、フィッシャー・トロプシュ反応において触媒活性である。触媒または触媒体がコバルト化合物を含む場合、コバルト化合物は、コバルト化合物を水素または水素含有ガスにさらすことによって金属コバルトに転換され得る。水素または水素含有ガスにさらすことは、ときどき、還元または活性化と呼ばれる。
【0040】
触媒が、ある量の触媒活性金属を含むと称するとき、金属の形態にあるときに触媒活性を有する触媒中の金属原子の量に言及がなされる。例えば、コバルト化合物を含有する触媒は、ある量の触媒活性のコバルト原子を有する触媒と考えられる。このようにして、触媒は、その酸化状態に関わらず、ある量の触媒活性金属を含む。
【0041】
多孔質体は、規則的な形状または不規則な形状、あるいはそれらの混合物であってもよい。そのようなものには、円筒、立方体、球、卵形、および他の形状の多角形が含まれる。
【0042】
好ましい実施形態では、多孔質体は、ガーゼ、ハニカム、モノリス、スポンジ、発泡体、メッシュ、ウェビング(webbing)、箔構造、および織られたマットの形態、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される形態または形状を有する。
【0043】
多孔質体は、上に挙げたものなどの形態の組み合わせであってもよい。例えば、多孔質体は、ハニカム状材料で構成され、円形の外形を有してもよい。別の例は、織られたマットから作製される円筒である。
【0044】
多孔質体は、反応器内の条件に耐えることができる任意の不活性材料から作製されてもよい。多孔質体は、耐火性酸化物、例えばチタニア、シリカ、アルミナから作製されてもよい。多孔質体は、金属、例えばステンレス鋼、鉄または銅から作製されることが好ましい。
【0045】
触媒材料を多孔質体に塗布する前の多孔質体内の多孔率、すなわち、多孔質体の内部空隙率は、多孔質体の周囲容積(circumferential volume)に基づいて計算される50〜98体積%の範囲内であり、好ましくは内部空隙率は、95体積%未満であり、内部空隙率は、好ましくは60体積%を超え、より好ましくは70体積%を超え、さらにより好ましくは80体積%を超え、最も好ましくは90体積%を超える。
【0046】
触媒材料および多孔質体を含む触媒もしくは触媒体の多孔率は、触媒体の周囲容積に基づいて計算される少なくとも50体積%であり、好ましくは少なくとも65体積%、より好ましくは約85体積%である。
【0047】
反応器管内のin situの、触媒材料および多孔質体を含む触媒もしくは触媒体の外部空隙率は、反応器管内の触媒もしくは触媒体の周囲容積の外側の反応器管の容積に基づいて計算される0〜60体積%の範囲内である。
【0048】
言い換えれば、反応器管は、1つまたは複数の多孔質触媒(触媒体)で完全に満たされてもよい。その場合には、反応器管内のin situの外部空隙率は、0体積%であり、全ての反応性ガスおよび液体生成物は、触媒体の多孔質構造を通過することになる。代替として、反応器管内のin situの触媒体の周囲容積の周りに空間があってもよい。その場合には、反応器管内のin situの外部空隙率は、60体積%までになり得、反応性ガスおよび液体生成物は、触媒体の多孔質構造、および触媒体の周囲容積の周りを通過することになる。
【0049】
例えば、触媒材料で覆われた金属線で作成されるドーナツ状の多孔質触媒体の場合、周囲容積は、ドーナツ形状の内側の穴を含まないことになる。不規則に積み重なったドーナツ状の触媒体の場合、反応性ガスおよび液体生成物は、触媒体の多孔質構造および触媒体の周囲容積の周りを通過することになる。触媒体の周囲容積の周りを通過するとき、流体は、ドーナツ状の触媒体の内側の穴を通じることを含めて全ての側で触媒体を通る。
【0050】
触媒体の多孔率、言い換えると、触媒体内の開口容積は、反応物の効率的な貫流を助けるのに十分でなければならず、一方同時に、各触媒体の比表面積は、反応物の触媒材料への露出を増大させるために可能な限り大きくあるべきである。
【0051】
触媒材料を塗布できる適切な多孔質体は、社内で用意することができ、または市販により得ることができる。適切な多孔質体の製造者の一例は、ドイツ、ドレスデンのFraunhofer−Institute for Manufacturing and Advanced Materialsである。Fraunhofer−Instituteは、例えば、円筒状または球状であり得る溶融抽出金属繊維および高多孔質繊維構造を広告および販売する。適切な多孔質体の製造者の別の例は、Rhodiusである。Rhodiusは、例えば、様々な厚さおよび様々な密度を有する様々な形状の編まれた金網を広告および販売する。適切な多孔質体の製造者の別の例は、Fibretechである。
【0052】
触媒材料は、多孔質体に塗布することができる。好ましくは触媒材料の薄層が、多孔質体に塗布される。
好ましくは、触媒材料層は、触媒材料層内の合成ガス成分の拡散物質移動限界(COおよび/または水素の分圧の減少、ならびに/あるいは触媒層内の水素/一酸化炭素比の好ましくない変化)を防ぐのに十分に薄い。好ましくは、触媒材料層の厚さは、物質移動限界の始まりまで増加させられる。流体力学的理由のために多孔質体上の触媒材料の塗布後に残っている空隙率以外に、多孔質体への触媒材料層の厚さに上限はない。
【0053】
触媒体の触媒材料の部分(fraction)は、容積で少なくとも約1%であることが好ましく、(触媒体の容積を参照すると)好ましくは容積で約4%より大きく、好ましい最大値が25容積%である。
【0054】
好ましくは、触媒材料は、多孔質体に層として塗布され、典型的には約1〜300ミクロンの厚さであり、好ましくは約5〜約200ミクロンである。
触媒または材料を用意するための一般的な方法は、当業界で知られており、例えば米国特許第4409131号、米国特許第5783607号、米国特許第5502019号、国際公開第0176734号、CA1166655、米国特許第5863856号、および米国特許第5783604号を参照されたい。これらは、共沈および含浸による調製を含む。そのようなプロセスは、突然の温度変化も含み得る。
【0055】
触媒材料には、1種または複数種の金属または金属酸化物が促進剤として含まれてもよく、より詳細には1種または複数種のd金属またはd金属酸化物が含まれ得る。
好ましくは、触媒は、フィッシャー・トロプシュ触媒である。フィッシャー・トロプシュ触媒は、当業界で知られており、典型的には8族〜10族の金属成分、好ましくはコバルト、鉄および/またはルテニウム、より好ましくはコバルトが挙げられる。
【0056】
「族」および周期表への言及は、本明細書で用いられる場合、87th Edition of the Handbook of Chemistry and Physics(CRC Press)において説明されたものなどの元素の周期表の新しいIUPACバージョンに関する。
【0057】
適切な金属酸化物促進剤は、元素の周期表の2族〜7族、またはアクチニドおよびランタニドから選択されてもよい。特に、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム、ウラン、バナジウム、クロム、およびマンガンの酸化物が、最も適切な促進剤である。
【0058】
適切な金属促進剤は、周期表の7族〜10族から選択されてもよい。マンガン、鉄、レニウム、および8族〜10族の貴金属は、特に適切であり、白金およびパラジウムが、特に好ましい。
【0059】
(1種類または複数種類の)任意の促進剤は、典型的には、担体の100重量部あたりの0.1〜60重量部の量で存在する。しかし、(1種類または複数種類の)促進剤の最適な量は、(1種類または複数種類の)促進剤として働く各要素について変わり得ることが理解されよう。
【0060】
典型的には、触媒材料は、多孔性無機酸化物、好ましくはアルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、またはそれらの混合物などの担体材料を含む。最も好ましい担体材料は、チタニアである。担体は、例えば含浸による触媒活性金属の付加の前に、多孔質体の上へ加えられてもよい。加えてまたは代替として、触媒活性金属および担体材料が、混合され、次いで多孔質体に加えられてもよい。例えば、触媒材料の粉体形態は、スラリに形成され、次いで多孔質体へ吹き付け塗装されてもよい。
【0061】
適切な触媒は、触媒活性金属としてコバルト、および促進剤としてジルコニウムを含む。別の適切な触媒は、触媒活性金属としてコバルト、ならびに促進剤としてマンガンおよび/またはバナジウムを含む。
【0062】
一実施形態では、本発明の反応器は、多孔質体を含み、この多孔質体の95重量%(wt%)超、より好ましくは99wt%超、最も好ましくは99.9wt%超は、反応器内の多孔質体の総重量に基づいて計算される1mm〜50mm、好ましくは1mm〜30mmの範囲内の大きさを有する。
【0063】
最小の大きさが1mm、および最大の大きさが50mmまでの多孔質体を含む触媒体は、反応器管内に固定することができる。代替として、触媒体は、最も均一な触媒移動および熱伝達を探すように反応器管内に固定されずに、反応器管内で移動可能であってもよい。触媒保持器を用いると、移動可能な触媒体が反応器管内に留まることが確実にされ得る。
【0064】
一実施形態では、本発明の反応器は、大きい触媒体、すなわち50mmより大きい、例えば500mmまで、2mまでのものをも含む。好ましくは、本発明の反応器は、多孔質体を含み、この多孔質体の95重量%(wt%)超、より好ましくは99wt%超、最も好ましくは99.9wt%超は、反応器内の多孔質体の総重量に基づいて計算される50mm〜2m、好ましくは50cm〜1mの範囲内の大きさを有する。50mmを超える触媒体が、反応器管内で固定化され得る。
【0065】
好ましい実施形態では、本発明による反応器内の反応器管は、反応器管の上部および/または底部に触媒保持器を備える。最も好ましくは反応器内の反応器管は、上部に触媒保持器と、底部に触媒保持器とを共に備える。触媒保持器は、ガスおよび液体が通過することを許容するが、これは触媒体が通り抜けることを許容しない。適切な触媒保持器の一例は、十分な網目の大きさを有するガーゼで作製された触媒保持器である。触媒保持器は、触媒管の開口部に配置することができ、好ましくは触媒管の内側に配置される。
【0066】
一実施形態では、本発明による反応器内の反応器管は、積み重ねられた多孔質触媒体で満たすことができる。一実施形態では、本発明による反応器内の反応器管は、勾配を形成するように多孔質触媒体で満たすことができる。
【0067】
反応器管の長さにわたって、いくつかの特性が変化され得る。例えば、反応器管の上部にある触媒体の内部空隙率は、底部にある触媒体の内部空隙率より低いものであり得る。例えば、反応器管の上部にある触媒体の外部空隙率は、底部にある触媒体の外部空隙率より小さいものであり得る。例えば、多孔質体上の触媒材料の量は、反応器管の底部よりも上部でより大きいものであり得る。多孔質体上の触媒材料中の触媒活性材料の量は、反応器管の底部よりも上部でより大きいものであり得る。反応器管の上部にある触媒体は、底部にある触媒体とは異なる触媒活性金属を含むことができる。反応器管の上部にある触媒体は、管の底部にある触媒体に比べて異なる形状を有してもよい。
【0068】
一実施形態では、反応器管は、例えば、様々な触媒活性を有する層を、互いの上部に2層から4層に積載することによって、積み重ねられた触媒体で満たすことができる。そのような場合には、別の層の上部に配置された各層は、真下の層より高い固有の触媒活性を有し得る。本発明による反応器では、したがって、反応器は、反応器管の上部における触媒体の1つまたは複数の層が、反応器管の底部における触媒体の1つまたは複数の層より高い固有の活性を有する1つまたは複数の反応器管を備えることができる。
【0069】
本発明は、本発明による反応器をフィッシャー・トロプシュ反応器として使用することにまで及ぶ。
本発明は、
− 本発明による反応器に合成ガスを供給するステップと、
− フィッシャー・トロプシュ生成物を反応器から除去するステップと
を含むフィッシャー・トロプシュ反応を実行するための方法にまでさらに及ぶ。
【0070】
フィッシャー・トロプシュ反応は、好ましくは125〜400℃、より好ましくは175〜300℃、最も好ましくは200〜260℃の範囲内の温度で実行される。圧力は、好ましくは0.5〜15MPa(5〜150バール)、より好ましくは2〜8MPa(20〜80バール)に及ぶ。ガスの毎時の空間速度は、幅広い範囲内で変わり得るものであり、典型的には500〜10000Nl/1/時の範囲内であり、好ましくは1500〜4000Nl/1/時の範囲内である。供給原料が触媒層に供給されるときの供給原料の水素とCOの比は、一般に、0.5:1〜2:1の範囲内である。
【0071】
フィッシャー・トロプシュ合成の生成物は、メタンから重炭化水素にまで及び得る。好ましくは、メタンの生成は、最小にされ、生成された炭化水素の相当な部分は、少なくとも5個の炭素原子の炭素鎖長を有する。C5+炭化水素の量は、好ましくは全生成物の少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、さらにより好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも85重量%である。プロセス全体のCO転換は、好ましくは少なくとも50%である。
【0072】
反応器管の形状、大きさおよび構成、ならびに反応器内の反応器管の配置は、反応器の容量、動作条件、および冷却要求などの要因によって主に左右される。反応器管は、反応器内で 触媒の効率的なパッキングを可能にする任意の断面を有してもよく、例えば、反応器管は、円形断面、正方形断面、三角形断面、長方形断面、台形断面(特に3つの等辺の三角形を含む)、または六角形断面であってもよい。円形断面を有する反応器管は、製造の容易さ、機械的安定性の観点、および一様な熱伝達を可能にすることにおいて有利である。
【0073】
次に、本発明は、本発明による反応器の一例を示す図面を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
図1】反応器管内の触媒が示されていない、本発明による反応器の垂直断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0075】
図1は、フィッシャー・トロプシュ法などの発熱プロセスを実行するための反応器1であって、反応器シェル2、反応物入口3、生成物出口4、上部出口5、冷却剤用の入口7および出口8を有する冷却剤室6、ならびに反応器管9を備える反応器1を示す。反応器1は、冷却剤室6の下方にガス供給装置11をさらに備える。冷却剤室6の下方の空間は、図1に符号15で示される。
【0076】
平行板16および17は、冷却剤室6を、冷却剤室6の下方の空間15および冷却剤室6の上方の空間13から隔てる。
動作中、合成ガスは、入口3を通じてガス供給装置11へ、そして触媒を備える反応器管9の中に供給される。図1に示されるように、ガス供給装置11は、この場合には各反応器管内部に配置される供給装置出口を介してガスを反応器管9に送り込む。
【0077】
ガス状反応物は、図1に矢印10で示されるように、反応器管9を通過する。
液体リサイクルは、液体リサイクル管18を介して行われることになる。液体リサイクル管18に矢印で示されるように、液体は、管18を流れ落ちることになる。
【0078】
反応器1の上部分は、反応器1の主円筒断面の内径に等しい内径を有する円蓋12を備える。冷却剤室の上方の空間は、図1に符号13で示される。冷却剤室6の上方の空間13内で、生成物は、ある高さまで上昇することができる。図1では、生成物の液体面14が示される。オフガスは、冷却剤室6の上方の空間13を通じて上部出口5へ通ることができる。液体生成物は、冷却剤室6の上方の液面調整器(図示せず)に基づいて冷却剤室6の下方の出口4を介して排出される。
【0079】
動作中、冷却剤、典型的には水および/または蒸気は、入口7を通じて冷却剤室6へ供給される。そこで、冷却剤は加熱され、出口8を介して排出される。熱は、反応器管9内の触媒から冷却剤室6内の冷却剤へ伝達される。
【0080】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、実施形態は、特許請求の範囲内のいくつかのやり方で変更することができる。例えば、2つ以上の冷却剤室が、用いられてもよい。
【0081】
さらなる例では、本発明による反応器は、水素化、ヒドロホルミル化、アルカノール合成、一酸化炭素を用いた芳香族ウレタンの用意、コルベ・エンゲルハード合成、およびポリオレフィン合成などの他の発熱プロセスに使用することができる。
図1