(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863693
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】鉄板加熱燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/22 20060101AFI20160204BHJP
F23M 9/00 20060101ALI20160204BHJP
F23D 14/14 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
F23D14/22 D
F23M9/00 D
F23D14/14 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-67587(P2013-67587)
(22)【出願日】2013年3月27日
(65)【公開番号】特開2014-190636(P2014-190636A)
(43)【公開日】2014年10月6日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100118898
【弁理士】
【氏名又は名称】小橋 立昌
(72)【発明者】
【氏名】茂木 徹
(72)【発明者】
【氏名】十河 桜子
【審査官】
杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−190517(JP,A)
【文献】
実公昭48−014327(JP,Y1)
【文献】
特開2009−192213(JP,A)
【文献】
実開昭63−142527(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/22
F23D 14/14
F23M 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面側で被加熱対象物を加熱する鉄板と、前記鉄板の背面に近接配置された赤熱輻射バーナーとを備え、
前記赤熱輻射バーナーは、前記鉄板の背面と対面する表面に複数の炎孔部を形成した赤熱輻射板を備え、
前記炎孔部は、独立して供給される燃料ガスと燃焼用空気とを混合する混合ガス形成空間を有することを特徴とする鉄板加熱燃焼装置。
【請求項2】
前記混合ガス形成空間は、前記赤熱輻射板の表面に形成された凹部であり、
前記凹部には、前記赤熱輻射板を貫通する空気流路が連通しており、該空気流路内に前記凹部にガス出射口が臨む燃焼ガス供給路が配置されていることを特徴とする請求項1記載の鉄板加熱燃焼装置。
【請求項3】
前記鉄板の表面には複数の均一温度領域が形成され、該複数の均一温度領域が異なる温度に設定可能なように前記複数の炎孔部が分散配置されていることを特徴とする請求項1記載の鉄板加熱燃焼装置。
【請求項4】
複数の前記炎孔部へのガス供給が複数系統に分割されており、前記複数系統への選択的なガス供給によって、前記均一温度領域の温度が設定されることを特徴とする請求項3記載の鉄板加熱燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄板を介して被加熱物を加熱する鉄板加熱燃焼装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄板を介して被加熱物を加熱する燃焼装置は、各種の用途があるが、調理用としては、鉄板焼き調理を行うグリドルなどが知られている。このような加熱燃焼装置は、熱伝導性の高い鉄板を高温に加熱するので面状の加熱体を形成することができ、比較的広い面積を有する被加熱対象物や形状が特定しない被加熱物(やきそば、卵、お好み焼きなど)の加熱に適する。
【0003】
このような鉄板加熱燃焼装置は、鉄板とこれを加熱するためのバーナーとを備えており、バーナーの火炎で鉄板を高温に加熱している(下記特許文献1参照)。そして、比較的広い面積の鉄板を加熱するためには、バーナーの炎孔を複数設けることがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−190517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の鉄板加熱燃焼装置は、バーナーの火炎で鉄板を加熱するため、火炎が直接当たっている箇所と当たっていない箇所とでは鉄板に加えられる熱量に差が生じ、被加熱対象部を加熱する鉄板の表面に温度分布が生じる。これによって、面積の広い被加熱物に対しては鉄板表面の位置を移動させない限り均一な加熱ができない問題があった。
【0006】
鉄板の温度分布を均一化するためには、炎孔を鉄板の背面に近づけて、火炎を鉄板の背面に沿って拡大させることが考えられるが、燃焼用空気と燃料ガスを予め混合して炎孔に供給する予混合式のバーナーでは、ガスを放出する炎孔を鉄板に近づけすぎると加熱された鉄板の熱で炎孔自体が加熱され、予混合ガスの供給経路に火炎が伝搬する逆火現象が生じることの懸念がある。
【0007】
本発明は、このような問題に対処することを課題の一例とするものである。すなわち、逆火現象を生じることなく鉄板の温度分布を均一化することができる鉄板加熱燃焼装置を提供すること、等が本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本発明による鉄板加熱燃焼装置は、以下の構成を少なくとも具備するものである。
【0009】
表面側で被加熱対象物を加熱する鉄板と、前記鉄板の背面に近接配置された赤熱輻射バーナーとを備え、前記赤熱輻射バーナーは、前記鉄板の背面と対面する表面に複数の炎孔部を形成した赤熱輻射板を備え、前記炎孔部は、独立して供給される燃料ガスと燃焼用空気とを混合する混合ガス形成空間を有することを特徴とする鉄板加熱燃焼装置。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する鉄板加熱燃焼装置によると、鉄板は、その背面に近接配置された赤熱輻射バーナーによって加熱される。これによって、複数の炎孔部で燃焼する火炎による加熱に加えて、炎孔部の燃焼で加熱された赤熱輻射板からの輻射熱で加熱されることになり、鉄板の表面には温度むらの少ない均一温度領域を形成することができる。
【0011】
また、赤熱輻射バーナーは、炎孔部で燃料ガスと燃焼用空気とが混合されるので、赤熱輻射バーナーを鉄板に近接させた状態であっても逆火現象が生じることがない。これによって、安全に鉄板と熱源である赤熱輻射バーナーを近接させることができ、鉄板を効率よく均一加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る鉄板加熱燃焼装置を説明する説明図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る鉄板加熱燃焼装置の使用形態を示した説明図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る鉄板加熱燃焼装置の使用形態を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る鉄板加熱燃焼装置を説明する説明図である。
図1(a)が側面視した全体断面図、
図1(b)が平面図、
図1(c)が炎孔部の拡大説明図である。
【0014】
鉄板加熱燃焼装置1は、表面側で被加熱対象物を加熱する鉄板2と、鉄板2の背面に近接配置された赤熱輻射バーナー3とを備えている。鉄板2は、図示の例は矩形平板状であるが、これに限らず円形状やドーム状などであってもよく、また、表面に凹凸などがあるものであってもよい。
【0015】
赤熱輻射バーナー3は、鉄板2の背面と対面する表面に複数の炎孔部10を形成した赤熱輻射板30を備えている。赤熱輻射板30は、例えば、セラミックなどの耐火材で形成され、炎孔部10の燃焼による加熱で赤熱燃焼し、赤外線を輻射熱として放出するものである。赤熱輻射板30の形態は、鉄板2の形態に対応して形成され、鉄板2が平板形状であれば、それに応じて赤熱燃焼板30も平板形状に形成される。赤熱輻射板30は、鉄板2の背面に近接配置される表面を有する。
【0016】
赤熱輻射板30の表面に形成される炎孔部10は、その表面に複数分散配置されている。炎孔部10の配置形態は特に限定されないが、所定の領域内では均等に分散配置されていることが望ましい。各炎孔部10は、独立して供給される燃料ガスと燃焼用空気とを混合する混合ガス形成空間Sを有する。すなわち、炎孔部10は、炎孔部10内に混合ガス形成空間Sが設けられる先混合方式が採用されている。
【0017】
混合ガス形成空間Sは、赤熱輻射板30の表面に形成された凹部30Aによって形成されている。凹部30Aには、赤熱輻射板30を貫通する空気流路30Bが連通しており、この空気流路30B内に、凹部30Aにガス出射口11Aが臨む燃焼ガス供給路11が配置されている。炎孔部10は、空気流路30Bを通って凹部30Aに流入する燃焼用空気と燃料ガス供給路11のガス出射口11Aから出射して凹部30A内に流入する燃料ガスが混合して、この凹部30A内で火炎長の短い微少火炎Fsを形成する。図示の例では、外部から空気が流入する空気室31が赤熱輻射バーナー3の内部に形成されており、この空気室31に各炎孔部10における空気流路30Bが連通している。
【0018】
このような鉄板加熱燃焼装置1によると、赤熱輻射バーナー3の炎孔部10での燃焼による火炎で鉄板2が加熱され、同時にこの炎孔部10の燃焼により赤熱輻射板30が加熱されて赤熱燃焼を起こし、赤熱輻射板30からの輻射熱で更に鉄板2が加熱される。このように、赤熱輻射板30は炎孔部10の燃焼と赤熱輻射板30の赤熱燃焼によってほぼ均一な熱を発生する面状熱源となり、この面状熱源が鉄板2の背面に近接した状態で鉄板2を加熱するので、鉄板2の表面には温度ムラがほとんど無い均一温度領域を形成することができる。
【0019】
また、赤熱輻射バーナー3は、前述したように先混合方式の炎孔部10を備えるので、炎孔部10の上流側では燃焼混合気が形成されない構造になっている。このため、予混合方式のバーナーで問題となる逆火現象を根本的に解消することができ、安全な燃焼状態を確保しながら赤熱輻射バーナー3の炎孔部10を鉄板2の背面に近接させることができる。これによって、安全且つ効率的に鉄板2を均一加熱することができる。
【0020】
図2及び
図3は、実施形態に係る鉄板加熱燃焼装置の使用形態を示した説明図であり、鉄板2に対する炎孔部10の配置と炎孔部10へのガス供給を模式的に示している。
図2及び
図3に示した鉄板加熱燃焼装置1は、鉄板2の表面に複数の均一温度領域(領域A,B,C)が形成されている。そして、複数の領域A,B,Cが異なる温度によるように、複数の炎孔部10が分散配置されており、各炎孔部10にはガス供給路11によってガス供給がなされている。
【0021】
図2に示した例では、領域A,B,C内が均一な温度分布になるように、各領域内で炎孔部10が分散配置されており、領域A,B,Cのそれぞれにおいて炎孔部10の配置密度(単位面積あたりの配置個数)が異なるようになっている。領域Aは炎孔部10の配置密度が最も高い領域であり、領域Bは炎孔部10の配置密度がやや低い領域であり、領域Cは炎孔部10の配置密度が低い領域である。このような配置密度の違いによって、領域Aは高温の均一温度になり、領域Bは中温の均一温度になり、領域Cは低温の均一温度になる。
【0022】
図示の例では、各領域内に分散配置された炎孔部10には、領域毎に独立したガス供給系統が形成されている。領域A,B,Cは、それぞれ一つのバルブVa,Vb,Vcで炎孔部10へ繋がるガス供給路11へのガス供給を制御している。これによって、ガスの供給・遮断を領域A,B,C毎に行うことができ、ガス供給量の調整も領域A,B,C毎に行うことができるようになっている。
【0023】
図3に示した例は、領域A,B,Cを異なる温度設定の均一温度領域にすることができる点は
図2の例と同じである。
図3に示した例は、一つの領域内で、複数の炎孔部10へのガス供給が複数系統に分割されており、複数系統への選択的なガス供給によって、均一温度領域の温度が設定されている。
【0024】
図示の例では、領域Aは、バルブVa1の開放で全ての炎孔部10へのガス供給が可能な一つのガス供給系統になっている。領域Bは、バルブVb1で管理するガス供給系統とバルブVb2で管理するガス供給系統に分割されており、バルブVb1を開放してバルブVb2を遮断することで、実線で示した一部の炎孔部10へのガス供給が可能になる。領域Cは、バルブVc1で管理するガス供給系統とバルブVc2で管理するガス供給系統に分割されており、バルブVc1を開放してバルブVc2を遮断することで、実線で示した一部の炎孔部10へのガス供給が可能になる。領域Bと領域Cとでは、一つのガス供給系統で供給できる炎孔部10の分散密度が異なっており、領域Bではやや密度が高く、領域Cでは密度が低くなっている。また、領域Bにおいて、バルブVb2を開いて、バルブVb1を遮断すると、さらに炎孔部10の分散密度が低い領域を形成することができる。
【0025】
このような使用形態によると、領域A内では高温加熱による調理を行い、領域B内では中温加熱による調理を行い、領域Cでは調理済みの被加熱対象物を鉄板2上で温めながら保持するといった使用が可能になる。この際、各領域内の温度を均一にすることができるので、領域全体を無駄なく使用することができる。また、領域毎にガス供給を遮断することができるので、特定の領域(例えば領域A)の炎孔部10のみにガス供給を行い、他の領域の炎孔部10へのガス供給を遮断して、ガス消費量を抑制した使用形態を実現することができる。
【0026】
このような特徴を有する本発明の実施形態に係る鉄板加熱燃焼装置1によると、逆火現象を生じることなく鉄板2の温度分布を均一化することができ、また、一つの鉄板2上に前述した複数の均一温度領域を形成することで、鉄板調理の機能性を高めることができる。
【0027】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0028】
1:鉄板加熱燃焼装置,2:鉄板,3:赤熱輻射バーナー,
10:炎孔部,11:ガス供給路,11A:ガス出射口,
30:赤熱輻射板,30A:凹部,30B:空気流路,
S:混合ガス形成空間,
Va,Vb,Vc,Va1,Vb1,Vb2,Vc1,Vc2:バルブ