特許第5863698号(P5863698)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5863698-燃焼制御装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863698
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】燃焼制御装置
(51)【国際特許分類】
   F23N 5/02 20060101AFI20160204BHJP
   F23N 5/24 20060101ALI20160204BHJP
   F23N 5/10 20060101ALI20160204BHJP
   F23K 5/00 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   F23N5/02 343A
   F23N5/24 106A
   F23N5/10 320Z
   F23K5/00 304
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-83007(P2013-83007)
(22)【出願日】2013年4月11日
(65)【公開番号】特開2014-206302(P2014-206302A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年8月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】槙野 雄介
(72)【発明者】
【氏名】根笹 典政
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−031336(JP,A)
【文献】 実開昭61−023056(JP,U)
【文献】 特開昭63−087524(JP,A)
【文献】 特開2011−247540(JP,A)
【文献】 特開平07−035341(JP,A)
【文献】 特開平11−014050(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23N 5/02
F23K 5/00
F23N 5/10
F23N 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナの失火検知用の炎検知手段を備える燃焼機器の制御装置であって、
前記炎検知手段の出力値が、あらかじめ定められた所定の失火判定閾値を下回る状態が、あらかじめ定められた所定の失火判定時間以上、継続するという失火判定条件が成立した場合に、前記バーナの失火の発生を検知して、該バーナへの燃料供給を遮断するように構成された失火検知手段と、
前記炎検知手段の出力値が、前記失火判定閾値を下回ってから、前記失火判定時間が経過するまでの期間内で、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御するように構成された燃料供給制御手段とを備え
前記燃料供給制御手段は、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御することを、前記バーナヘの燃料供給量が第2の所定値以下となっている場合にのみ行うように構成されていることを特徴とする燃焼機器の制御装置。
【請求項2】
請求項1記載の燃焼機器の制御装置において、
前記燃料供給制御手段は、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御することを、前記炎検知手段の出力値が、前記失火判定閾値を下回ってから、前記失火判定時間が経過するまでの期間のうちの始端よりも終端に近い期間内で行うように構成されていることを特徴とする燃焼機器の制御装置。
【請求項3】
バーナの失火検知用の炎検知手段を備える燃焼機器の制御装置であって、
前記炎検知手段の出力値が、あらかじめ定められた所定の失火判定閾値を下回る状態が、あらかじめ定められた所定の失火判定時間以上、継続するという失火判定条件が成立した場合に、前記バーナの失火の発生を検知して、該バーナへの燃料供給を遮断するように構成された失火検知手段と、
前記炎検知手段の出力値が、前記失火判定閾値を下回ってから、前記失火判定時間が経過するまでの期間内で、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御するように構成された燃料供給制御手段とを備え
前記燃料供給制御手段は、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御することを、前記炎検知手段の出力値が、前記失火判定閾値を下回ってから、前記失火判定時間が経過するまでの期間のうちの始端よりも終端に近い期間内で行い、且つ当該一時的な燃料供給量の制御の終了時に前記バーナへの燃料供給量を前記炎検知手段の出力値によらずに当該一時的な燃料供給量の制御の開始時の燃料供給量に復帰させるように構成されており、
前記失火検知手段は、当該一時的な燃料供給量の制御に応じて前記失火判定時間が経過する前に前記炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値以上に上昇したときには、その後、該炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値を下回ってから改めて前記失火判定時間の計時を開始するように構成されていることを特徴とする燃焼機器の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロ等の燃焼機器の燃焼制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスコンロ等の燃焼機器では、バーナの燃焼炎を検知するために該バーナの近傍に配置された熱電対を備え、該熱電対から出力される熱起電力に基づいて失火が検知された場合に、バーナへの燃料供給を遮断するようにしたものが一般に知られている(例えば特許文献1の段落0018を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−333234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
失火検知用の熱電対を備える燃焼機器では、瞬時的なノイズ等に起因して、バーナの失火が誤検知されてしまうのを防止するために、通常、熱電対から出力される熱起電力が所定の閾値を下回る状態が、所定の失火判定時間以上、継続した場合に、バーナの失火が生じたことを検知するようにしている。
【0005】
しかしながら、本願発明者の各種実験、検討によれば、特にバーナの火力を低火力に設定した場合に、熱電対の配置位置のばらつき、バーナの実際の火力のばらつき、あるいは、気流等の影響によって、バーナの失火が発生していない状態であっても、熱電対から出される熱起電力が所定の閾値を下回る状態が、所定の失火判定時間以上、継続する場合があることが判明した。
【0006】
そして、このような場合には、バーナの失火が発生していないのに、バーナの失火が生じたものと誤検知されて、バーナが消火されてしまうという不都合がある。
【0007】
また、かかる不都合を解消するために、熱電対から出力される熱起電力と比較する上記閾値をより小さめに設定したり、あるいは、上記失火判定時間を長めに設定すると、実際の失火が発生した場合に、その検知、ひいては、バーナへの燃料供給の遮断が遅れ気味になり、バーナからの生燃料の放出量が増加するので好ましくない。
【0008】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、燃焼機器のバーナの実際の失火を適切に検知することを可能としつつ、実際の失火が発生していない状況での誤検知を防止することができる制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の燃焼機器の制御装置は、かかる目的を達成するために、バーナの失火検知用の炎検知手段を備える燃焼機器の制御装置であって、前記炎検知手段の出力値が、あらかじめ定められた所定の失火判定閾値を下回る状態が、あらかじめ定められた所定の失火判定時間以上、継続するという失火判定条件が成立した場合に、前記バーナの失火の発生を検知して、該バーナへの燃料供給を遮断するように構成された失火検知手段と、前記炎検知手段の出力値が、前記失火判定閾値を下回ってから、前記失火判定時間が経過するまでの期間内で、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御するように構
成された燃料供給制御手段とを備え、前記燃料供給制御手段は、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御することを、前記バーナヘの燃料供給量が第2の所定値以下となっている場合にのみ行うように構成されていることを特徴とする。
【0010】
かかる本発明によれば、バーナの燃焼運転時の火力が小さい状況等で、前記炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値を下回った場合には、燃料供給制御手段は、前記失火判定時間が経過するまでの期間内で、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御する。
【0011】
この場合、炎検知手段の出力値は、バーナの火力が大きいほど、大きくなる。このため、バーナの実際の失火が発生しておらず、バーナの燃焼運転が行われている状況では、前記失火判定時間が経過する前におけるバーナへの燃料供給量の上記の制御によって、バーナの火力が一時的に比較的大きな火力となることで、炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値以上の大きさに増加するようになる。
【0012】
このため、前記失火判定条件が成立しないこととなって、前記失火検知手段によって、バーナの失火が誤検知されるのが防止される。ひいては、該失火検知手段によって、バーナへの燃料供給が強制的に遮断されることがなく、バーナの燃焼運転を継続できる。
【0013】
また、バーナの実際の失火が発生している状況では、前記燃料供給制御手段が、前記失火判定時間が経過する前に、バーナへの燃料供給量を上記の如く制御しても、前記炎検知手段はバーナの燃焼熱が作用しない状態に維持されるので、該炎検知手段の出力値は失火判定閾値を下回る状態に維持される。
【0014】
このため、前記失火判定時間が経過した時に、前記失火判定条件が成立する。ひいては、失火検知手段によって、バーナへの燃料供給を支障なく遮断することができる。
【0015】
以上の如く、本発明によれば、燃焼機器のバーナの実際の失火を適切に検知することを可能としつつ、実際の失火が発生していな状況での誤検知を防止することができる
さらに、本発明では、前記燃料供給制御手段は、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御することを(以降、この燃料供給量の制御を一時的燃料調整制御ということがある)、前記バーナヘの燃料供給量が第2の所定値以下となっている場合にのみ行うように構成されている。
ここで、バーナの失火が実際に発生していないのに炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値を下回ることとなるような状況は、基本的には、バーナへの燃料供給量が小さい場合(バーナの火力が小さい場合)に発生する。そして、バーナへの燃料供給量が比較的大きい場合(バーナの火力が比較的大きい場合)には、基本的には、炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値を下回ることはない。
従って、前記一時的燃料調整制御を、バーナヘの燃料供給量が第2の所定値以下となっている場合にのみ行うことで、バーナへの燃料供給量が比較的大きい状態でのバーナの実際の失火が発生して、前記炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値を継続的に下回る状態となった場合には、前記一時的燃料調整制御が行われないこととなる。
このため、バーナへの燃料供給量が比較的大きい状態での前記一時的燃料調整制御によって、バーナから放出される燃焼前の燃料がさらに多くなるのを防止することができる。
そして、前記一時的燃料調整制御は、バーナへの燃料供給量が比較的小さい場合にだけ行われるので、バーナの実際の失火が発生した場合に、バーナから放出される燃焼前の燃料の量を極力少なくすることができる。
【0016】
かかる本発明では、前記燃料供給制御手段は、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御することを、前記炎検知手段の出力値が、前記失火判定閾値を下回ってから、前記失火判定時間が経過するまでの期間のうちの始端よりも終端に近い期間内で行うように構成されていることが好ましい。
【0017】
これによれば、前記燃料供給制御手段によって、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量が制御されることが、短い時間間隔で頻繁に行われることとなるのを防止することができる。
【0018】
また、本発明は、バーナの失火検知用の炎検知手段を備える燃焼機器の制御装置であって、前記炎検知手段の出力値が、あらかじめ定められた所定の失火判定閾値を下回る状態が、あらかじめ定められた所定の失火判定時間以上、継続するという失火判定条件が成立した場合に、前記バーナの失火の発生を検知して、該バーナへの燃料供給を遮断するように構成された失火検知手段と、前記炎検知手段の出力値が、前記失火判定閾値を下回ってから、前記失火判定時間が経過するまでの期間内で、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御するように構成された燃料供給制御手段とを備え、前記燃料供給制御手段は、前記バーナへの燃料供給量を一時的に増加させるか、又は、該燃料供給量を一時的に所定値以上の供給量にするように、前記バーナへの燃料供給量を制御することを、前記炎検知手段の出力値が、前記失火判定閾値を下回ってから、前記失火判定時間が経過するまでの期間のうちの始端よりも終端に近い期間内で行い、且つ当該一時的な燃料供給量の制御(一時的燃料調整制御)の終了時に前記バーナへの燃料供給量を前記炎検知手段の出力値によらずに当該一時的な燃料供給量の制御の開始時の燃料供給量に復帰させるように構成されており、前記失火検知手段は、当該一時的な燃料供給量の制御に応じて前記失火判定時間が経過する前に前記炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値以上に上昇したときには、その後、該炎検知手段の出力値が前記失火判定閾値を下回ってから改めて前記失火判定時間の計時を開始するように構成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態の燃焼機器(ガスコンロ)の構成を示す図。
図2】実施形態の燃焼機器の作動例を説明するためのグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の第1実施形態を図1及び図2を参照して以下に説明する。
【0025】
図1参照して、本実施形態の燃焼機器1は、例えばガスコンロである。この燃焼機器1(以降、ガスコンロ1という)は、バーナ2と、バーナ2に燃料ガスを供給する燃料供給路3と、ガスコンロ1の運転制御を行うコントローラ4とを備える。
【0026】
燃料供給路3には、該燃料供給路3を開閉するための電磁弁5と、該燃料供給路3を流れる燃料ガスの流量を調整するための流量調整弁6とが介装されている。流量調整弁6は、その弁開度を電動モータ等のアクチュエータ6aにより変化させ得るように構成された電動式の弁である。
【0027】
バーナ2の近傍には、バーナ2の失火検知用の炎検知手段としての熱電対7が設けられている。この熱電対7は、バーナ2の燃焼炎により加熱されることで熱起電力を発生し、該熱起電力を出力する。該熱起電力は、本発明における炎検知手段の出力値に相当し、バーナ2の火力が大きいほど、大きくなる。
【0028】
コントローラ4は、本発明における制御装置に相当するものであり、マイクロコンピュータ等を含む電子回路ユニットにより構成されている。このコントローラ4には、熱電対7の出力が入力されると共に、ユーザによるバーナ2の火力調整つまみ8の操作信号等が入力される。
【0029】
そして、コントローラ4は、図示しないメモリに実装されるプログラムを実行することで実現される機能(ソフトウェアにより実現される機能)、あるいは、ハードウェア構成により実現される機能として、熱電対7の出力(熱起電力の大きさを示す電圧値)に基づいてバーナ2の失火の発生の有無を検知して、失火の発生を検知した場合にそれに応じた制御処理を実行する失火検知部11と、電磁弁5及び流量調整弁6の動作制御を行うことで、バーナ2への燃料ガスの供給を制御する燃料供給制御部12とを有する。
【0030】
上記失火検知部11及び燃料供給制御部12は、それぞれ本発明における失火検知手段、燃料供給制御手段に相当するものである。
【0031】
次に、本実施形態のガスコンロ1の作動を説明する。
【0032】
ユーザが図示しない点火ボタンを操作すると、コントローラ4は、電磁弁5を開弁制御することで、バーナ2への燃料ガスの供給を開始させると共に、図示しないイグナイタを駆動する。これにより、バーナ2が点火されて該バーナ2の燃焼運転が行われる。
【0033】
そして、バーナ2の燃焼運転中に、コントローラ4は、熱電対7の出力(熱起電力に応じた電圧値)を逐次取得しつつ、失火検知部11及び燃料供給制御部12の処理を実行する。
【0034】
失火検知部11は、熱電対7の出力が所定の失火判定閾値を下回る状態が、所定の失火判定時間(例えば30秒)以上、継続するという失火判定条件が成立した場合に、バーナ2の失火が発生したことを検知する。
【0035】
具体的には、失火検知部11は、熱電対7の出力がある時刻で失火判定閾値を下回ると、その時刻からタイマの計時を開始する。このタイマの計時は、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った状態に維持されている限り続行される。そして、失火検知部11は、タイマの計時時間が失火判定時間に達すると、バーナ2の失火を検知する。
【0036】
なお、上記失火判定条件に係る失火判定閾値及び失火判定時間は、バーナ2の失火が実際に発生した場合に、当該失火判定条件が成立することとなるようにあらかじめ実験等に基づいて定められている。また、上記タイマの計時は、その計時中に、熱電対7の出力が失火判定閾値以上の大きさに上昇した場合には、中止されると共にその計時時間がリセット(初期化)される。
【0037】
失火検知部11は、上記失火判定条件が成立して、バーナ2の失火が発生したことを検知した場合には、前記電磁弁5を強制的に閉弁させるように該電磁弁5を制御する。これにより、バーナ2への燃料ガスの供給が強制的に遮断される。
【0038】
また、失火検知部11は、上記失火判定条件が成立しない状況、すなわち、熱電対7の出力が失火判定閾値以上に保たれている状況(前記タイマの計時が行われていない状況)、あるいは、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った後に、失火判定時間が経過する前に、該熱電対7の出力が失火判定閾値以上の大きさに復帰する状況(前記タイマの計時時間が、計時途中でリセットされる状況)では、バーナ2の失火が発生していないと判断する。この場合には、失火検知部11は、電磁弁5を開弁状態に維持する。
【0039】
ここで、バーナ2の燃焼運転中における前記流量調整弁6の開度調整(バーナ2への燃料ガスの供給量の調整)によって、バーナ2の火力が小さい火力に調整された状況では、バーナ2に対する熱電対7の配置位置のばらつき(ガスコンロ1の製品毎のばらつき)、あるいは、火力調整つまみ8によるバーナ2の設定火力に対する実際の燃料ガスの供給量のばらつき、あるいは、バーナ2の近辺の気流の影響等に起因して、バーナ2の燃焼運転が正常に行われていても、図2の実線又は破線のグラフで例示する如く、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回る場合がある。
【0040】
さらに、このような状況で、仮に、バーナ2の火力を小さい火力のままに維持する(バーナ2への燃料ガスの供給量を少量の供給量に維持する)と、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回る状態が前記失火判定時間以上、継続して、失火判定条件が成立する場合がある。この場合には、失火検知部11の制御処理によりバーナ2への燃料ガスの供給が遮断されて、バーナ2が強制的に消火される。
【0041】
例えば、バーナ2の火力を大火力から小火力に変更するように流量調整弁6を調整するすると、図2の破線のグラフ(比較例のグラフ)で例示する如く熱電対7の出力(電圧値)が変化する場合がある。この場合、図示例の破線のグラフでは、バーナ2の燃焼運転が行われていても、時刻t1で熱電対7の出力が失火判定閾値を下回り、以後、この状態が継続する。このため、時刻t1から失火判定時間ΔT1が経過した時点で、失火判定条件が成立して、バーナ2が消火されてしまう。
【0042】
しかるに、本実施形態のガスコンロ1では、コントローラ4の燃料供給制御部12は、失火検知部11の処理と並行して、熱電対7の出力を逐次監視している。そして、燃料供給制御部12は、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った場合には、該熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った時点から、失火判定時間が経過するまでの期間内で、一時的にバーナ2への燃料供給量を増加させるように流量調整弁6を制御する。
【0043】
さらに詳細には、本実施形態では、燃料供給制御部12は、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った時点からの経過時間(前記タイマの計時時間)が、失火判定時間よりも短いあらかじめ定めた所定の待機時間に達した時に、所定の時間幅(例えば1秒)の一時的な期間だけ、燃料ガスの供給量を、最大供給量以下の範囲内で、現在値よりも所定の増加量だけ増加させるように流量調整弁6を制御する。
【0044】
この場合、上記所定の時間幅の一時的な期間(以降、燃料増量期間という)における燃料ガスの増加量は、増加後の燃料ガスの供給量でのバーナ2の燃焼運転が行われた場合に、熱電対7の出力が失火判定閾値以上に出力になるようにあらかじめ実験的に設定されている。なお、上記燃料ガスの増加量は、燃料増量期間の直前の燃料ガスの供給量(又は流量調整弁6の開度)に応じて決定するようにしてもよい。
【0045】
また、上記待機時間は、上記燃料増量期間が、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った時点から前記失火判定時間が経過するまでの期間における始端(該期間の開始時点)よりも終端(該期間の終了時点)に近い期間となるように設定されている。具体的には、本実施形態では、上記待機時間は、失火判定時間(例えば30秒)よりも短く、且つ、失火判定時間の1/2の時間よりも長い時間(例えば20秒)に設定されている。
【0046】
なお、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った時点から待機時間が経過する前に、熱電対7の出力が失火判定値以上の大きさに復帰した場合には、前記タイマの計時時間がリセットされるので、当該待機時間の経過時における燃料ガスの供給量の増加は行われない。
【0047】
以上の如く、燃料供給制御部12は、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った場合には、その下回った状態のままで前記待機時間が経過した時に、バーナ2への燃料ガスの供給量を一時的に増加させるように流量調整弁6を制御する。
【0048】
このため、バーナ2の失火が発生しておらず、正常に燃焼運転が行われている場合には、上記燃料増量期間において一時的にバーナ2の火力が増加する。これにより熱電対7が加熱されることで、該熱電対7の出力が、失火判定閾値以上の大きさに復帰する。
【0049】
その結果、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った時点から、失火判定時間が経過する前に(前記タイマの計時が終了する前に)、熱電対7の出力が失火判定閾値以上の大きさに復帰することとなる。
【0050】
このため、前記失火検知部11は、バーナ2の失火の発生を誤検知することなく、バーナ2の失火が発生していないと判断する。ひいては、バーナ2の燃焼運転が継続する。
【0051】
例えば、バーナ2の火力を大火力から小火力に変更するように流量調整弁6を調整するすると、図2の破線のグラフ(比較例のグラフ)と同様に、図2の実線のグラフ(実施例のグラフ)で例示する如く熱電対7の出力(電圧値)が変化する場合がある。
【0052】
この場合、図2の実線のグラフの例では、バーナ2の失火が生じていないものの、時刻t2以後に、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回る。しかるに、時刻t2から失火判定時間ΔT1よりも短い待機時間ΔT2が経過した時刻t3で、一時的にバーナ2への燃料ガスの供給量が増加される(ひいてはバーナ2の火力が増加する)ことで、熱電対7の出力が、失火判定時間ΔT1の経過前に失火判定閾値以上の大きさに一時的に復帰する。従って、時刻t2から失火判定時間ΔT1が経過しても、バーナ2が消火されることはなく、バーナ2の燃焼運転が継続する。
【0053】
また、図2の実線のグラフの例では、熱電対7の出力は、燃料ガスの供給量の一時的な増量の終了によって、時刻t4で再び、失火判定閾値を下回るものの、その時刻t4から待機時間ΔT2が経過した時刻t5で、一時的にバーナ2への燃料ガスの供給量が増加される(ひいてはバーナ2の火力が増加する)ことで、熱電対7の出力が、失火判定時間ΔT1の経過前に、失火判定閾値以上の大きさに復帰する。
【0054】
以上のように、本実施形態では、バーナ2の火力が小さい火力に調整されて、バーナ2の失火が実際には生じていない状態のままで熱電対7の出力が失火判定閾値を下回る状況となっても、バーナ2が失火検知部11の制御処理によって消火されてしまうことがなく、一時的な燃料増量期間以外は、小さい火力でのバーナ2の燃焼運転を続行することができる。
【0055】
また、この場合、燃料増量期間は、一時的な期間であるので、バーナ2の平均的な火力を小さい火力に維持することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、燃料ガスの一時的な増量を行う燃料増量期間は、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回ってから失火判定時間が経過するまでの期間における終端寄りの期間であるので、燃料ガスの一時的な増量が頻繁に行われることが無いようにすることができる。
【0057】
また、バーナ2の実際の失火が発生した状況では、燃料ガスの一時的な増量を行う燃料増量期間でも熱電対7の出力が増加することはないので、失火判定時間が経過した時に、失火検知部11の制御処理によって、電磁弁5が閉弁される。これにより、バーナ2への燃料ガスの供給を遮断することができる。
【0058】
以上の如く、本実施形態によれば、バーナ2の小さい火力での燃焼運転時に、失火の発生が誤検知されることによりバーナ2への燃料ガスの供給の遮断されるのを防止できると共に、バーナ2の実際の失火が発生した場合には、バーナ2への燃料ガスの供給を遮断することができる。
【0059】
次に、本発明の第2実施形態を説明する。なお、本実施形態は、燃料供給制御部12の一部の処理だけが前記した第1実施形態と相違するので、その相違点を中心に説明し、第1実施形態と同一の事項については、説明を省略する。
【0060】
バーナ2の燃焼運転が行われているのに、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回るという現象は、バーナ2への燃料ガスの供給量が大きい状態(バーナ2の火力が大きい状態)では基本的には発生せず、当該現象は、バーナ2への燃料ガスの供給量が小さい状態(バーナ2の火力が小さい状態)で発生するものである。そして、バーナ2への燃料ガスの供給量が大きい状態で、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った場合には、バーナ2の失火が実際に発生していると考えられる。
【0061】
そこで、本実施形態では、燃料供給制御部12は、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った場合に、失火判定時間の期間内の燃料増量期間でバーナ2の燃料ガスの供給量を一時的に増加させることを、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った時点でのバーナ2への燃料ガスの供給量があらかじめ定めた所定値(これは本発明における第2の所定値に相当する)以下である場合にのみ実行する。
【0062】
従って、燃料供給制御部12は、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った時点でのバーナ2への燃料ガスの供給量が上記所定値よりも大きい場合には、失火判定時間の期間内の燃料増量期間でバーナ2の燃料ガスの供給量を一時的に増加させることを実行しない。
【0063】
ここで、燃料ガスの供給量の上記所定値は、該所定値よりも大きい燃料ガスの供給量でバーナ2の燃焼運転が行われている場合には、熱電対7の出力が定常的に失火判定閾値以上の大きさに保たれるように、実験等に基づき設定されている。
【0064】
本実施形態は、以上説明した事項以外は、第1実施形態と同じである。
【0065】
本実施形態によれば、バーナ2への燃料ガスの供給量が比較的大きい状態で、バーナ2の実際の失火が発生して、熱電対7の出力が失火判定閾値を下回った場合に、失火判定時間の期間内の燃料増量期間でバーナ2の燃料ガスの供給量を一時的に増加させることは行われない。
【0066】
このため、バーナ2の実際の失火が発生した状況で、失火判定時間の期間内でバーナ2から放出される燃焼前の燃料ガスの量を第1実施形態の場合よりも少なくできる。
【0067】
なお、以上説明した各実施形態では、燃料増量期間において、バーナ2への燃料ガスの供給量を、該燃料増量期間の開始直前の供給量から所定量だけ増加させるようにしたが、上記燃料増量期間における燃料ガスの供給量を、該燃料増量期間の直前の燃料ガスの供給量によらずに、あらかじめ定めた所定値以上の供給量にするように流量調整弁6を制御するようにしてもよい。
【0068】
また、前記各実施形態では、バーナ2への燃料ガスの供給量を電動式の流量調整弁6により変更し得るようにしたものを例示したが、本発明における燃焼機器は、例えば、バーナに並列接続された複数の燃料供給路に電磁弁を設け、バーナに燃料を供給する燃料供給路を切り替えることで、バーナへの燃料供給量を変更し得るように構成されていてもよい。
【0069】
また、前記各実施形態では、燃焼機器としてガスコンロ1を例にとって説明したが、本発明における燃焼機器は、ガスコンロ以外の燃焼機器、例えば、暖房器、給湯装置等に備える燃焼機器であってもよい。
【0070】
また、燃焼機器の燃料は、燃料ガスに限らず、灯油等の燃料であってもよい。
【0071】
また、前記各実施形態では、燃焼機器の炎検知手段として熱電対7を例示したが、本発明における炎検知手段としては、熱電対7に限らず、フレームロッド、光センサ、バイメタル、測温抵抗体等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0072】
1…ガスコンロ(燃焼機器)、2…バーナ、4…コントローラ(制御装置)、7…熱電対(炎検知手段)、11…失火検知部(失火検知手段)、12…燃料供給制御部(燃料供給制御手段)。
図1
図2