(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記のような耐熱ブロックにおいては、ブロックの部位ごとの要求特性は必ずしも同じではない。例えば、炉の内側(加熱空間側)を向く部分は高い耐熱性が要求される一方、炉の外側(炉壁側)を向く部分は、さほど高い耐熱性は要求されない。このような場合には、高い耐熱性を要求される部分にのみ高耐熱性材料を使用し、他の部分には前記高耐熱性材料に比して若干耐熱性が劣っても安価な耐熱性材料を使用することにより、低コストで耐熱性に優れる耐熱ブロックを製造することができると考えられる。
【0008】
しかし、特許文献1に記載の耐熱ブロックや特許文献2または3に記載のセラミックファイバーブロックは、長尺のセラミックファイバーブランケット等を連続的に折り畳んだ構造であるため、ブロックの部位ごとに異なる材料を使用することが困難であった。前記構造は、ブロックの一部に高い耐熱性を付与したい場合でも、ブロック全体を高価な高耐熱性材料で構成せざるを得ないため、耐熱ブロックの製造コストを必要以上に増大させる一因となっていた。また、使用する材料によっては、ブランケットを折り畳んで耐熱ブロックを製造する際に、または耐熱ブロックを炉に設置する際に、折り畳み部分が破損するおそれがあった。
【0009】
本発明は、前記従来技術の課題に鑑みてなされたものであって、優れた耐熱性を有し、低コストで製造することができ、製造や設置の際に破損し難い耐熱ブロックおよび炉の内張材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、長尺のブランケットを連続的に折り畳むのではなく、複数のブランケットを積層する構造とし、ブランケットの一部を異なる材料の突き合わせ構造とすることによって、前記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
[1]耐熱ブロック:
即ち、本発明によれば、セラミックス繊維の集積体であるブランケットが積層されて積層体が構成され、前記積層体が圧縮成形されてなる耐熱ブロックであって、前記積層体は、最高使用温度が1000℃以上のセラミックス繊維からなる第1のブランケットと、最高使用温度が1000℃以上で、かつ、前記第1のブランケットよりも最高使用温度が50℃以上低いセラミックス繊維からなる第2のブランケットと、から構成され、
圧縮成形後の前記積層体は、
圧縮成形前の前記積層体の厚さの95%以下の厚さに形成されており、1枚の前記第1のブランケットと
1枚の前記第2のブランケットとが面一に突き合わされることによって、高耐熱部と耐熱部とが連続形成された構造の圧縮成形後の厚さが10mm以上40mm以下の複合層と、
1枚の前記第1のブランケットのみからなる圧縮成形後の厚さが5mm以上20mm以下の単独層とをそれぞれ複数有し、かつ、前記複合層と前記単独層が交互に積層された交互積層部を有しており、前記高耐熱部が、その一の端縁から前記耐熱部と接する側の端縁に至るまで、長さ150mm以上に渡って形成されていることを特徴とする耐熱ブロック;が提供される。
【0012】
本発明の耐熱ブロックは、前記第1のブランケットは、最高使用温度が1600℃以上のセラミックス繊維からなる高耐熱性ブランケットであり、前記第2のブランケットは、最高使用温度が1000℃以上、1550℃以下のセラミックス繊維からなる耐熱性ブランケットであること;前記高耐熱性ブランケットが、アルミナ含有率が65質量%以上の高耐熱性アルミナ繊維の集積体であり、前記耐熱性ブランケットが、アルミナ含有率が30質量%以上、60質量%以下の耐熱性アルミナ繊維の集積体であること;が好ましい。
【0013】
また、本発明の耐熱ブロックは
、各々の前記複合層における前記高耐熱部が同方向を向くように、複数の前記複合層が積層されていること
;が好ましい。
【0014】
更に、本発明の耐熱ブロックは、前記積層体から前記高耐熱部が脱落することを防止するための脱落防止ピンを備え、前記脱落防止ピンが、前記高耐熱部と前記単独層の双方を貫通するように配置されていること;が好ましい。
【0015】
更にまた、本発明の耐熱ブロックは、炉壁に前記耐熱ブロックを取り付けるための取付具と、前記取付具に前記耐熱ブロックを固定する固定ピンと、を更に備え、前記取付具は、基板部と、前記基板部から、前記基板部と直交する方向に突出された少なくとも1対の挿込板部と、を有し、前記基板部に、前記取付具の固定ボルトを挿入するボルト挿入孔が形成され、前記少なくとも1対の挿込板部の各々に、前記固定ピンを挿入するピン挿入孔が形成された構造のものであり、前記取付具の前記少なくとも1対の挿込板部が、前記積層体における前記耐熱部が配された側の端部に挿し込まれ、前記固定ピンが、前記積層体における前記複合層の前記耐熱部と前記単独層の双方を貫通するように配置されるとともに、前記取付具の前記ピン挿入孔に挿入された状態で前記取付具に係合されていること;が好ましい。
【0016】
[2]炉の内張材:
また、本発明によれば、前記耐熱ブロックからなることを特徴とする炉の内張り材;が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の耐熱ブロックおよび炉の内張材は、優れた耐熱性を有し、低コストで製造することができ、製造や設置の際に破損し難い。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。
【0020】
[1]耐熱ブロック:
本発明の耐熱ブロックは、例えば
図1A〜
図1Cに示す耐熱ブロック1、並びに
図2Aおよび
図2Bに示す耐熱ブロック1Aのように、セラミックス繊維の集積体であるブランケット2が積層されて積層体4が構成され、積層体4が圧縮成形されてなるものである。「集積体」は、セラミックス繊維を積層し、一体化したものを指す。例えば、セラミックス短繊維をマット状に積層して積層物を形成し、前記積層物にニードルパンチを加えることにより、前記セラミックス短繊維を一体化したブランケット等を挙げることができる。
【0021】
[1−1]構成材料:
積層体4は、第1のブランケットと、第2のブランケットと、から構成されている。
【0022】
[1−1A]第1のブランケット:
第1のブランケットは、最高使用温度が1000℃以上のセラミックス繊維の集積体である。最高使用温度が1000℃以上のものを用いることで、耐熱性を得ることができる。
【0023】
中でも、第1のブランケットが、高耐熱性ブランケット6であることが好ましい。高耐熱性ブランケット6は、最高使用温度が1600℃以上のセラミックス繊維の集積体である。最高使用温度が1600℃以上のものを用いることで、炉内に露出する部分での使用にも耐え得る高い耐熱性を得ることができる。「最高使用温度」とは、耐熱温度のことであり、1気圧、酸化雰囲気の条件下、電気炉内で24時間連続加熱した際に、加熱収縮率4%以下を維持できる最高温度を意味するものとする。最高使用温度の上限は特に限定されないが、製造コストを考慮すると、1800℃以下のものを使用することが好ましく、1700℃以下のものを使用することが更に好ましい。
【0024】
前記最高使用温度の条件を満たすものである限り、セラミックスの種類等は特に限定されない。但し、高耐熱性アルミナ繊維の集積体であることが好ましい。本明細書において、「高耐熱性アルミナ繊維」とは、アルミナ含有率が65質量%以上のアルミナ質セラミック繊維を意味するものとする。アルミナ含有率が65質量%以上のものを用いることで、1600℃以上の高温に対する耐熱性(高耐熱性)を付与することができる。前記効果をより確実に得るためには、アルミナ含有率が70質量%以上のものを用いることが更に好ましい。アルミナ含有率の上限は特に限定されず、アルミナ含有率が100質量%のものを用いることもできる。但し、製造コストと得られる耐熱性のバランスを考慮すれば、80質量%以下とすることが好ましい。
【0025】
前記高耐熱性アルミナ繊維の成分については特に限定されないが、例えばアルミナ、シリカ等を挙げることができる。即ち、前記高耐熱性アルミナ繊維はアルミナ−シリカ質のものが好ましい。前記高耐熱性アルミナ繊維がアルミナ−シリカ質のものである場合、アルミナとシリカの合計含有率が98質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0026】
前記のように高耐熱性アルミナ繊維は、アルミナ含有率が65質量%以上と高く、高温溶解が困難であるため、例えばアルミニウムとシリコンを含む紡糸液を繊維化し、焼成する前駆体繊維化法等により製造される。このような製法により得られる繊維は、主として結晶質アルミナからなる多結晶繊維である。
【0027】
[1−1B]第2のブランケット:
第2のブランケットは、最高使用温度が1000℃以上で、かつ、前記第1のブランケットよりも最高使用温度が50℃以上低いセラミックス繊維の集積体である。前記構成とすることで、耐熱性を有し、かつ、前記第1のブランケットよりも安価な材料を使用することが可能となる。
【0028】
中でも、第2のブランケットが、耐熱性ブランケット8であることが好ましい。耐熱性ブランケット8は、最高使用温度が1000℃以上、1550℃以下のセラミックス繊維の集積体である。最高使用温度が1000℃以上のものを用いることで、炉内に露出しないブロックの深部で使用するには十分な耐熱性を得ることができる。前記効果をより確実に得るためには、最高使用温度が1400℃以上のものを用いることが更に好ましい。一方、最高使用温度が1550℃以下のものを用いることで、安価な材料を使用することができる。前記効果をより確実に得るためには、最高使用温度が1500℃以下のものを用いることが更に好ましい。
【0029】
前記最高使用温度の条件を満たすものである限り、セラミックスの種類等は特に限定されない。但し、耐熱性アルミナ繊維の集積体であることが好ましい。本明細書において、「耐熱性アルミナ繊維」とは、アルミナ含有率が30質量%以上、60質量%以下のアルミナ質セラミック繊維を意味するものとする。アルミナ含有率が30質量%以上のものを用いることで、高耐熱性アルミナ繊維には及ばないものの、1200℃以上の高温に対する耐熱性を付与することができる。前記効果をより確実に得るためには、アルミナ含有率が50質量%以上のものを用いることが更に好ましい。一方、アルミナ含有率が60質量%以下のものを用いることで、材料費を安価に抑えることができる。前記効果をより確実に得るためには、アルミナ含有率が55質量%以下のものを用いることが更に好ましい。
【0030】
前記耐熱性アルミナ繊維の成分については特に限定されないが、例えばアルミナ、シリカ等を挙げることができる。即ち、前記耐熱性アルミナ繊維はアルミナ−シリカ質のものが好ましい。前記耐熱性アルミナ繊維がアルミナ−シリカ質のものである場合、アルミナとシリカの合計含有率が80質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることが更に好ましい。
【0031】
前記のような耐熱性アルミナ繊維は、アルミナ含有率が30質量%以上、60質量%以下であるため、原料を高温溶解し、繊維化する溶融繊維化法等により製造される。このような製法により得られる繊維は、主として非晶質アルミナからなるガラス状態の繊維である。
【0032】
[1−1C]ブランケットの嵩密度:
第1のブランケットおよび第2のブランケットの嵩密度(圧縮成形前)は、いずれも160kg/m
3以上であることが好ましい。嵩密度を160kg/m
3以上とすることで、高熱に曝された際に、積層体の各層を構成するブランケットが収縮し、ブランケット間にスリットが形成される不具合を抑制することができる。また、積層体の各層を構成するブランケット同士の摩擦力を増加させることができ、積層体からブランケットが抜け落ちる事態を防止することができる。前記効果をより確実に得るためには、嵩密度を200kg/m
3以上とすることが更に好ましい。
【0033】
[1−2]積層体:
積層体4は、複合層10と単独層12とからなる。積層体4の少なくとも1層は、複合層10であり、残りの層は単独層12である。このような構造は、折り畳み部分を有していないため、ブランケットを折り畳んで耐熱ブロックを製造する際に、または耐熱ブロックを炉に設置する際に、折り畳み部分が破損するおそれがない。
【0034】
[1−2A]複合層:
複合層10は、第1のブランケット(
図1A等に示す例では高耐熱性ブランケット6)と第2のブランケット(
図1A等に示す例では耐熱性ブランケット8)とが面一に突き合わされることによって、高耐熱部14と耐熱部16とが連続形成された構造の層である。このような突き合わせ構造は、ブロックの部位ごとに異なる材料を使用することが容易である。従って、高い耐熱性を要求される部分(炉の内側<加熱空間側>を向く部分等)にのみ高耐熱性材料を使用し、他の部分(炉の外側<炉壁側>を向く部分)には前記高耐熱性材料に比して耐熱性は劣るが安価な耐熱性材料を使用することができる。即ち、低コストで耐熱性に優れる耐熱ブロックを製造することが可能となる。
【0035】
高耐熱部14は、その一の端縁E1から耐熱部16と接する側の端縁E2に至るまで、長さ150mm以上に渡って形成されている(前記長さを、図中、符号Lで示す)。ここで、「一の端縁」とは、高耐熱部14の端縁のうち、耐熱ブロック1、1Aの外表面に露出する側の端縁であり、耐熱部16と接する側の端縁E2と背向する端縁を意味する。
【0036】
図5に示すように、炉においては、炉壁表面(炉内表面)から距離が離れるに連れてその温度は低下していき、炉壁表面から150mm以上離れると、顕著にその温度が低下する。即ち、炉壁表面から150mmの範囲内では高い耐熱性が要求される一方、炉壁表面から150mmを超えると、さほど高い耐熱性は要求されない。従って、本発明においては、耐熱ブロック1、1Aの外表面から中心側に向かって少なくとも150mmの領域に高耐熱部14が配置されるように前記構成とした。
【0037】
複合層10の厚さ(圧縮成形前)は、10mm以上、50mm以下であることが好ましい。厚さを10mm以上とすることで、ブランケット自体の強度を保ち、破れ等の破損を防止することができる。前記効果をより確実に得るためには、厚さを25mm以上とすることが更に好ましい。一方、厚さを50mm以下とすることで、ブロックのサイズが同じでも積層体を構成するブランケットの枚数を増加させることができる。従って、積層体の各層を構成するブランケット同士の摩擦力を増加させることができ、積層体からブランケットが抜け落ちる事態を防止することができる。
【0038】
[1−2B]単独層:
単独層12は、第1のブランケット(
図1A等に示す例では高耐熱性ブランケット6)のみからなる層である。即ち、単独層12は複合層10のような突き合わせ構造を有しておらず、1枚の高耐熱性ブランケット6が連続的に配置されている。
【0039】
単独層12の厚さ(圧縮成形前)は、5mm以上、25mm以下であることが好ましい。厚さを5mm以上とすることで、ブランケット自体の強度を保ち、破れ等の破損を防止することができる。前記効果をより確実に得るためには、厚さを10mm以上とすることが更に好ましい。一方、厚さを25mm以下とすることで、ブロックのサイズが同じでも積層体を構成するブランケットの枚数を増加させることができる。従って、積層体の各層を構成するブランケット同士の摩擦力を増加させることができ、積層体からブランケットが抜け落ちる事態を防止することができる。前記効果をより確実に得るためには、厚さを20mm以下とすることが更に好ましい。
【0040】
[1−2C]積層構造:
積層体4が、複数の複合層10を有していることが好ましい。そして、積層体4が、複数の複合層10を有している場合には、各々の複合層10における高耐熱部14が同方向を向くように、複数の複合層10が積層されていることが好ましい。「同方向を向く」とは、高耐熱部14の端縁E1が耐熱ブロック1、1Aの同じ面に位置するように、複数の複合層10が配向していることを意味する。前記構造の積層体4においては、耐熱ブロック1、1Aの一の面側に複数の高耐熱部14が、前記一の面と背向する面側に複数の耐熱部16が集中的に配置されることになる。
【0041】
積層体4が、複数の複合層10および複数の単独層12を有していることが好ましい。そして、積層体4が、複数の複合層10および複数の単独層12を有している場合には、複合層10と単独層12が交互に積層された交互積層部を有していることが好ましい。複合層10と単独層12を交互に積層することにより、複合層10をその両側から単独層12が挟み込む構造となり、複合層10を単独層12との摩擦力によって保持することができる。なお、この構成においては、積層体4は交互積層部を有していればよく、積層体4全体が交互積層部となっている必要はない。例えば、積層体の中央部に交互積層部を配し、積層体の両端部については単独層を複数枚連続して積層する構成を採用してもよい(
図3A、
図4A等を参照)。
【0042】
積層体4は圧縮成形されている。圧縮成形することにより、耐熱ブロック1、1Aを炉壁に設置した後、圧縮状態を開放することで、耐熱ブロック1、1Aを炉壁または隣接する耐熱ブロックに密着させることが可能となる。圧縮成形の方法は特に限定されないが、例えば積層体をプレスする方法等を挙げることができる。
【0043】
積層体4の圧縮の程度(圧縮率)は特に限定されないが、積層体の厚さが圧縮成形前の95%以下となるように圧縮成形することが好ましい。積層体の厚さを圧縮成形前の95%以下とすることで、ブランケットが元の厚さに復元する際に生じる圧着力・摩擦力によって、積層体からブランケットが抜け落ちる事態を防止することができる。前記効果をより確実に得るためには、積層体の厚さを圧縮成形前の80%以下とすることが更に好ましい。
【0044】
圧縮成形後の積層体4においては、複合層10の厚さ(圧縮成形後)が10mm以上、40mm以下、複合層10の嵩密度(圧縮成形後)が130kg/m
3以上、230kg/m
3以下となっていることが好ましい。また、単独層12の厚さ(圧縮成形後)が5mm以上、20mm以下、単独層12の嵩密度(圧縮成形後)が130kg/m
3以上、230kg/m
3以下となっていることが好ましい。
【0045】
[1−3]脱落防止ピン:
本発明の耐熱ブロックにおいては、
図2Aおよび
図2Bに示す耐熱ブロック1Aのように、積層体4から高耐熱部14が脱落することを防止するための脱落防止ピン20を備えていることが好ましい。そして、脱落防止ピン20が、高耐熱部14と単独層12の双方を貫通するように配置されていることが好ましい。
【0046】
積層体4においては、複合層10がその両側から単独層12に挟み込まれた状態で圧縮成形されている。従って、複合層10は単独層12との摩擦力によって強固に固定されており、積層体4から高耐熱部14が抜け落ちることは少ない。しかし、例えば耐熱ブロック1を炉の天井に取り付ける等、高耐熱部14が下向きとなる状態で炉に取り付けたような場合には、高耐熱部14が自重によって落下するおそれもある。このような場合に、高耐熱部14と単独層12の双方を貫通するように脱落防止ピン20を配置すれば、脱落防止ピン20によって高耐熱部14が単独層12に対して固定され、積層体4から高耐熱部14が脱落する事態をより確実に防止することができる。
【0047】
脱落防止ピン20の材質は特に限定されない。但し、脱落防止ピン20が高耐熱部14に配置される部材であるため、高耐熱部14を構成する第1のブランケット(
図2A等に示す例では高耐熱性ブランケット6)と同程度の高い耐熱性を有する材質であることが好ましい。例えば、セラミックスや金属等を挙げることができる。中でも、アルミナ含有率が65質量%以上の結晶質アルミナ(Al
2O
3、最高使用温度:1600〜1700℃)、炭化ケイ素(SiC、最高使用温度:約1600℃)、ムライト(Al
2O
3−SiO
2、最高使用温度:約1600℃)等が好ましい。
【0048】
脱落防止ピン20の形状は特に限定されない。例えば丸棒状、角棒状等を挙げることができ、丸棒状とすることが好ましい。脱落防止ピン20のサイズは、耐熱ブロック1のサイズ等を考慮した上で、高耐熱部14を固定し得る強度を有するサイズのものを適宜選択して用いればよい。例えば、耐熱ブロック1が1辺300mmの立方体形状である場合には、外径6〜12mmφ、長さ260〜290mmのものを用いることが好ましい。脱落防止ピン20の本数も特に限定されず、高耐熱部14の固定に必要な本数だけ使用すればよい。即ち、少なくとも1本の脱落防止ピン20を使用することが好ましく、図示のように2本の脱落防止ピン20を使用することが更に好ましい。
【0049】
脱落防止ピン20の配置方法は特に限定されない。例えば予め積層体4(即ち、高耐熱部14および耐熱部16)にピン挿入用の貫通孔を形成しておき、前記貫通孔に脱落防止ピン20を挿入して配置する方法を挙げることができる。但し、脱落防止ピン20が十分な強度を有する場合には、積層体4に前記貫通孔を予め設けることなく、積層体4に直接、脱落防止ピン20を突き刺して配置する方法を採用してもよい。積層体4よりも脱落防止ピン20が短い場合には、前記貫通孔の開口端側にセラミック繊維のバルクを充填して前記貫通孔を閉塞してもよい。
【0050】
[1−4]取付具:
耐熱ブロック1、1Aは、炉壁に耐熱ブロック1、1Aを取り付けるための取付具30を更に備えていることが好ましい。
【0051】
図示の取付具30は、基板部34と、基板部34から、基板部34と直交する方向に突出された少なくとも1対の挿込板部36と、を有し、基板部34に、取付具30の固定ボルトを挿入するボルト挿入孔38が形成され、少なくとも1対の挿込板部36の各々に、固定ピン32を挿入するピン挿入孔40が形成された構造のものである。
【0052】
基板部34や挿込板部36の形状は特に限定されず、耐熱ブロック1、1Aの形状やサイズ等に応じて適宜形成すればよい。但し、基板部34は正方形状、長方形状等の四角形状とすることが好ましく、挿込板部36は積層体4への挿し込みが容易な形状であることが好ましい。図示の取付具30は、四角形状の基板部34と、基板部34の対向する2辺から、基板部34と直交する方向に突出された2対の挿込板部36と、を有している。各々の挿込板部36は半オーバル形状に形成されている。ここに言う「オーバル形状」とは、半径の等しい二つの円を共通外接線でつないだ形状を意味する(レーストラック形状、角丸長方形状とも称される)。ボルト挿入孔38、ピン挿入孔40は、いずれも円形状に形成されている。
【0053】
取付具30の材質は特に限定されない。後述するように、取付具30は炉壁に近い部分に配置されるため、耐熱ブロック1、1Aを構成するブランケット2程の耐熱性は要求されない。従って、セラミックスや金属等の中から加工性に優れる材料を適宜選択して使用すればよい。例えば、ステンレス鋼(SUS310S、SUS304等)、一般構造用圧延鋼材(SS400等)等により構成することが好ましい。
【0054】
取付具30は、耐熱ブロック1、1Aにおける耐熱部16が配された側の端部に固定されていることが好ましい。前記端部に取付具30を固定することにより、高耐熱部14が配された側の端部が炉の内側を向き、耐熱部16が配された側の端部が炉の外側を向いた状態で、耐熱ブロック1を炉壁に取り付けることが可能となる。
【0055】
[1−5]固定ピン:
耐熱ブロック1、1Aは、取付具30に耐熱ブロック1、1Aを固定する固定ピン32を更に備えていることが好ましい。固定ピン32の形状や配置方法は特に限定されないが、既に説明した脱落防止ピン20の形状や配置方法と同様のものを採用することができる。但し、固定ピン32は耐熱部16に配置される部材であるため、高耐熱部14に配置される脱落防止ピン20程の高い耐熱性は要求されず、第2のブランケット(
図1A等に示す例では耐熱性ブランケット8)と同程度の耐熱性を有する材質で構成すれば足りる。例えばセラミックスや金属等を挙げることができる。中でも、アルミナ含有率が60質量%以下の非晶質アルミナ(Al
2O
3、最高使用温度:1000〜1500℃)、ステンレス鋼(SUS310S、SUS304等)等が好ましい。
【0056】
[1−6]取付具の固定構造:
耐熱ブロック1、1Aが、取付具30と固定ピン32を備えている場合には、取付具30の少なくとも1対の挿込板部36が、積層体4における耐熱部16が配された側の端部に挿し込まれ、固定ピン32が、積層体4における複合層10の耐熱部16と単独層12の双方を貫通するように配置されるとともに、取付具30のピン挿入孔40に挿入された状態で取付具30に係合されていることが好ましい。
【0057】
前記固定構造においては、固定ピン32が取付具30のピン挿入孔40と、積層体4の双方を貫通するように配置されているため、取付具30に対して積層体4が懸垂された状態で固定される。特に
図2Aおよび
図2Bに示す耐熱ブロック1Aのように、脱落防止ピン20と固定ピン32を併用した場合には、積層体4の単独層12が固定ピン32を介して取付具30に固定され、複合層10の高耐熱部14が脱落防止ピン20を介して単独層12に固定される。即ち、複合層10の高耐熱部14が、脱落防止ピン20、積層体4の単独層12および固定ピン32を介して取付具30に固定された構造となっており、高耐熱部14の自重等による脱落を、更に効果的に防止することができる。
【0058】
なお、図示の構造は、取付具や固定ピンの一の実施形態を示したものにすぎない。即ち、本発明の耐熱ブロックは、炉壁への取り付けが可能である限り、いかなる構造の取付具を使用することもできる。また、取付具や固定ピンとしては、市販の汎用品が存在する。従って、それらの汎用品を使用してもよい(例えば、ITM社製の支持金具等)。
【0059】
[1−7]耐熱ブロックの製造方法:
本発明の耐熱ブロックの製造方法の一例について、
図1A〜
図1Cを参照しながら説明する。
【0060】
まず、第1のブランケットとして使用する高耐熱性ブランケット6と第2のブランケットとして使用する耐熱性ブランケット8とを面一に突き合わせたものと、前記の高耐熱性ブランケット6を交互に積層する。これにより、高耐熱部14と耐熱部16が連続形成された構造の複合層10と、第1のブランケット(高耐熱性ブランケット6)のみからなる単独層12とが交互に積層された構造の積層体4を得る。
【0061】
この積層体4については、積層方向にプレスして圧縮成形し、次いで、ミシン等による縫製、ポリプロピレンバンド(PPバンド)による結束等を行う。この縫製や結束等により、積層体4の圧縮成形状態が維持される。その後、取付具30の挿込板部36を積層体4に対して挿し込む。更に、積層体4の単独層12、複合層10の耐熱部16および挿込板部36のピン挿入孔40に、固定ピン32を貫通させることで、耐熱ブロック1を製造することができる。
【0062】
図2Aおよび
図2Bに示すような脱落防止ピン20を備えた耐熱ブロック1Aを製造する場合には、更に、積層体4の単独層12および複合層10の高耐熱部14に、脱落防止ピン20を貫通させることで、耐熱ブロック1Aを製造することができる。
【0063】
[2]炉の内張り材:
本発明の炉の内張り材は、既に説明した本発明の耐熱ブロックからなることを特徴とする。即ち、本発明の耐熱ブロックを炉の内張り材(モジュール)として炉壁に取り付け、炉の内張り構造を形成することができる(モジュール工法)。
【0064】
図1A〜
図1Cに示す耐熱ブロック1の例で説明すると、取付具30のボルト挿入孔38に固定ボルト(不図示)を挿入し、前記固定ボルトを取付具30に対して係合させ、前記固定ボルトを介して耐熱ブロック1を炉壁に対して固定する。この作業を繰り返すことにより、炉壁に対して多数の耐熱ブロック1を並列的に固定していき、炉壁全体を耐熱ブロック1で覆う。最後に、耐熱ブロック1を結束していたPPバンド(不図示)等を切断することにより、積層体4の圧縮状態を開放し、耐熱ブロック1を炉壁または隣接する耐熱ブロックに密着させる。以上のようにして、炉の内張り構造を形成することができる。
【実施例】
【0065】
以下、実施例により、本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0066】
(実施例1)
図3A〜
図3Cに示す耐熱ブロック1Bを製造した。実施例1においては、第1のブランケットとして高耐熱性ブランケット6を使用し、第2のブランケットとして耐熱性ブランケット8を使用した。
【0067】
まず、高耐熱性ブランケット6と耐熱性ブランケット8とを面一に突き合わせたものと、高耐熱性ブランケット6を交互に積層し、積層体4を構成した。
【0068】
高耐熱性ブランケット6としては、最高使用温度が1600℃のアルミナ−シリカ質繊維の集積体を用いた。具体的には、アルミナ含有率が72質量%、シリカ含有率が27質量%、アルミナとシリカの合計含有率が99質量%である結晶質アルミナ繊維のセラミックブランケット(ITM社製)を用いた。この高耐熱性ブランケット6の嵩密度(圧縮成形前)は、160kg/m
3であった。
【0069】
耐熱性ブランケット8としては、最高使用温度が1500℃のアルミナ−シリカ質繊維の集積体を用いた。具体的には、アルミナ含有率が55質量%、シリカ含有率が44質量、アルミナとシリカの合計含有率が99質量%である非晶質アルミナ繊維のセラミックブランケット(ITM社製)を用いた。この耐熱性ブランケット8の嵩密度(圧縮成形前)は、160kg/m
3であった。
【0070】
複合層10は、高耐熱性ブランケット6と耐熱性ブランケット8とを面一に突き合わせることによって、高耐熱部14と耐熱部16とが連続形成された構造の層とした。
【0071】
高耐熱部14は、その一の端縁E1から耐熱部16と接する側の端縁E2に至るまで、長さ150mmに渡って形成した。高耐熱部14の幅は300mmとした。耐熱部16も、高耐熱部14と接する側の端縁から他の端縁まで長さ150mmに渡って形成した。耐熱部16の幅は300mmとした。即ち、複合層10は、全体として300mm×300mmの正方形状に形成された。複合層10の厚さ(圧縮成形前)は、25mmとした。
【0072】
単独層12は、高耐熱性ブランケット6のみからなる層とした。単独層12は、全体として300mm×300mmの正方形状に形成した。単独層12の厚さ(圧縮成形前)は、10mmとした。
【0073】
積層体4は、複合層10を10層、単独層12を13層有するものとした。複合層10(10層)と単独層12(11層)を交互に積層して交互積層部を形成し、交互積層部の両側に更に単独層12(2層)を配する積層構造とした。各々の複合層10における高耐熱部14は同方向(
図3Aの図面下方向)を向くように、複数の複合層10を積層した。
【0074】
積層体4は、積層方向にプレスし、積層体の厚さが圧縮成形前の80%となるように圧縮成形し、次いで、ミシンにより縫製して結束を行った。圧縮成形後の積層体4においては、複合層10の厚さ(圧縮成形後)が約20mm、複合層10の嵩密度(圧縮成形後)が200kg/m
3、単独層12の厚さ(圧縮成形後)が約8mm、単独層12の嵩密度(圧縮成形後)が、200kg/m
3となった。圧縮成形後の積層体4は、300mm×300mm×300mmの立方体状となった。
【0075】
取付具30は、金属板を加工して形成した。取付具30は、長方形状の基板部34と、基板部34の対向する2辺から、基板部34と直交する方向に突出された2対の挿込板部36と、を有するものとした。各々の挿込板部36は半オーバル形状に形成した。具体的には、長方形状の部分の先端に、半円形状の部分を有する半オーバル形状とした。基板部34の中心部には、円形状のボルト挿入孔38を形成し、挿込板部36の各々には、円形状のピン挿入孔40を形成した。2対(4個)の挿込板部36は、各々が長方形状の基板部34の角に接するように形成した。
【0076】
固定ピン32は、金属により構成した。形状は、後述する脱落防止ピンと同様の丸棒状とした。固定ピン32は2本使用した。
【0077】
取付具30は、耐熱ブロック1Bにおける耐熱部16が配された側の端部に固定した。取付具30の2対の挿込板部36を、積層体4における耐熱部16が配された側の端部に挿し込んだ。更に、固定ピン32を積層体4における複合層10の耐熱部16と単独層12の双方を貫通するように配置するとともに、取付具30のピン挿入孔40に挿入した状態で取付具30に係合した。
【0078】
その後、取付具30の挿込板部36を積層体4に対して挿し込んだ。更に、積層体4の単独層12、複合層10の耐熱部16および挿込板部36のピン挿入孔40に、固定ピン32を貫通させることで、耐熱ブロック1を製造した。
【0079】
(実施例2)
図4A〜
図4Cに示す耐熱ブロック1Cを製造した。脱落防止ピン20以外の部分については、実施例1と同様に製造した。
【0080】
脱落防止ピン20は、アルミナ含有率が99.5質量%の再結晶アルミナ(最高使用温度:1600℃、密度:3.9g/cm
3)により構成した。形状は、直径12mmφ、長さ280mmの丸棒状とした。脱落防止ピン20は2本使用した。この2本の脱落防止ピン20を、積層体4の単独層12および複合層10の高耐熱部14に貫通させた。2本の脱落防止ピン20は、積層体4における端面(高耐熱部14の端縁E1が存する端面)から100mmの位置に貫通させた。2つの脱落防止ピン20の中心間距離は150mmとした。