特許第5863768号(P5863768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5863768ポリマーフィルムにおいて抗菌剤の有効性を向上させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863768
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】ポリマーフィルムにおいて抗菌剤の有効性を向上させる方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20160204BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20160204BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20160204BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20160204BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20160204BHJP
   B32B 27/18 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   C08L101/00
   C08L31/04 S
   C08K3/00
   C08K5/00
   C08J5/18CER
   B32B27/18 F
   B32B27/18 Z
【請求項の数】25
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2013-504913(P2013-504913)
(86)(22)【出願日】2011年3月25日
(65)【公表番号】特表2013-523992(P2013-523992A)
(43)【公表日】2013年6月17日
(86)【国際出願番号】US2011029925
(87)【国際公開番号】WO2011129982
(87)【国際公開日】20111020
【審査請求日】2014年3月6日
(31)【優先権主張番号】61/426,914
(32)【優先日】2010年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/323,890
(32)【優先日】2010年4月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】594177391
【氏名又は名称】エーブリー デニソン コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Avery Dennison Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン,ケビン,オー.
【審査官】 繁田 えい子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−186804(JP,A)
【文献】 特開平04−359028(JP,A)
【文献】 特開平01−306473(JP,A)
【文献】 特開昭55−089336(JP,A)
【文献】 特開2008−174576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物から形成されたポリマーフィルムであって、
前記ポリマー組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと、抗菌剤と少なくとも1つの発泡剤及び少なくとも1つの親水性湿潤剤を包含する抗菌剤促進剤と、を含み、
前記ポリマーフィルムは、前記少なくとも1つの発泡剤がフィルム中で気泡を形成してフィルム面に沿って破裂することにより形成されたクレーター状表面を有する、ポリマーフィルム。
【請求項2】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン酢酸ビニル(EVA)である、請求項1記載のポリマーフィルム。
【請求項3】
前記エチレン酢酸ビニルが10%〜40%の酢酸ビニル含有率を有する、請求項2記載のポリマーフィルム。
【請求項4】
直鎖低密度ポリエチレンを更に含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が6%〜16%のメタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレンを含む、請求項4記載のポリマーフィルム。
【請求項6】
前記抗菌剤が有機抗菌剤、無機抗菌剤及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項7】
前記無機抗菌剤が銀機能付与粘土である、請求項6記載のポリマーフィルム。
【請求項8】
前記無機抗菌剤が銀イオンを包含する、請求項6記載のポリマーフィルム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの発泡剤が脂肪族又は脂環式化合物、無機発泡剤、希ガス及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜8のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項10】
前記親水性湿潤剤がポリオキシアルキレン、ソルビタンエステル、ホスファチド、アルキルアミン、グリセリン、水溶性ポリマー、界面活性剤及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項1〜9のいずれか1項に記載のポリマーフィルム。
【請求項11】
少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び抗菌剤を包含するポリマー組成物を提供することと、
前記組成物に少なくとも1つの発泡剤及び少なくとも1つの親水性湿潤剤を含む抗菌剤促進剤を添加して、これにより改良されたポリマー組成物を形成することと、を含む、ポリマー組成物に混和された抗菌剤の有効性を向上させる方法。
【請求項12】
前記改良されたポリマー組成物を押出して、これによりポリマーフィルムを形成することをさらに含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記熱可塑性ポリマーがエチレン酢酸ビニル(EVA)である、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記エチレン酢酸ビニルが10%〜40%の酢酸ビニル含有率を有する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記抗菌剤が有機抗菌剤、無機抗菌剤及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項1114のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記無機抗菌剤が銀機能付与粘土である、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記無機抗菌剤が銀イオンを包含する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1つの発泡剤が脂肪族又は脂環式化合物、無機発泡剤、希ガス及びその組み合わせからなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項19】
前記親水性湿潤剤がポリオキシアルキレン、ソルビタンエステル、ホスファチド、アルキルアミン、グリセリン、水溶性ポリマー、界面活性剤及びその組み合せからなる群より選択される、請求項11記載の方法。
【請求項20】
ノルボルネンベース材料及びエチレンビニルアルコールの少なくとも1つの層を含む臭気バリア複合材と、
請求項1〜10のいずれか1項に記載のポリマーフィルムと、を含む、多層バリアフィルム。
【請求項21】
前記臭気バリア複合材が環式オレフィンコポリマー(COC)を含む、請求項20記載の多層バリアフィルム。
【請求項22】
前記環式オレフィンコポリマーがノルボルネン及びエチレンのコポリマーである、請求項21記載の多層バリアフィルム。
【請求項23】
前記環式オレフィンコポリマーが湿気又は臭気バリア層中に60%〜80%の濃度で存在する、請求項21又は22記載の多層バリアフィルム。
【請求項24】
前記臭気バリア複合材が結合構成要素を更に包含する、請求項2023のいずれか1項に記載の多層バリアフィルム。
【請求項25】
前記結合構成要素がg−無水マレイン酸エチレン酢酸ビニルである、請求項24記載の多層バリアフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2010年4月14日に出願された米国仮特許出願第61/323,890号明細書及び2010年12月23日に出願された第61/426,914号明細書の優先権を主張し、このどちらも参照によりその全体が本明細書に援用されている。
【0002】
本発明は、抗菌剤を含有するポリマーフィルム、並びにフィルムを含む物品及び方法に関する。本発明は、ポリマーフィルムに混和されたこのような薬剤の有効性を向上させる方法にも関する。フィルム、それらの物品及び方法は、医療及びヘルスケア用途などの各種用途で有用である。
【背景技術】
【0003】
ガス及び蒸気の透過を防止して、これにより新鮮さ及び風味の消失並びに/又は芳香及び臭気の漏出を制御又は防止するために、ガス及び蒸気バリアフィルムが物品に組み込まれている多くの用途が公知である。医療及びヘルスケア用途を含むいくつかの用途において、微生物活性は同時に存在する微生物増殖と共に、関連する物品から悪臭を放つガス及び蒸気並びに考えられる感染を引き起こす可能性がある。微生物活性に関わる物品は通常、受動ガス及び蒸気バリアフィルムを用いて、悪臭を放つガス及び蒸気を含有する。蓄積したガス及び蒸気の放出は、例えば、オストミーパウチなどのこのような物品のいくつかで必要とされる。
【0004】
銀イオンは抗菌剤として非常に有効である。しかしこのようなイオンを含有する化合物は、比較的高価でもある。銀イオンを使用する大半の抗菌技術は、微生物に対しての曝露のためにポリマーフィルムの表面に到達できる銀イオンの量によって限定されている。ポリマーフィルム中のより高い銀イオン濃度の効果が限定されるのは、イオンが相互を遮断して、表面より下で更なるイオンの曝露を防止する傾向があるためである。従って、フィルム面に沿った銀イオンの抗菌効力を向上させることができる方法への要求が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
抗菌剤に関連する先に公知のフィルム及び実施に関連する問題及び欠点は、本ポリマーフィルム、このフィルムを含む物品及び方法において対処される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの態様において、本発明はフィルムの形成に適したポリマー組成物を提供する。組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーと、抗菌剤と、(i)少なくとも1つの発泡剤、(ii)少なくとも1つの親水性湿潤剤、並びに(iii)(i)及び(ii)の組み合わせから成る群より選択される抗菌剤促進剤と、を含む。
【0007】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び抗菌剤を含むポリマーフィルムを提供する。フィルムは、条件(a)及び(b)の少なくとも1つを満たし、条件(a)は、フィルムが少なくとも1つの親水性湿潤剤を包含する抗菌剤促進剤も含むことであり、条件(b)は、フィルムが少なくとも1つの発泡剤を包含する抗菌剤促進剤を最初に含み、続いて発泡剤がフィルム中で気泡を形成してフィルム面に沿って破裂して、これによりフィルムにクレーター状表面を形成したことである。
【0008】
なお別の態様において、本発明は、ポリマー組成物に混和された抗菌剤の有効性を向上させる方法を提供する。本方法は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び抗菌剤を包含するポリマー組成物を提供することを含む。本方法は、組成物に(i)少なくとも1つの発泡剤、(ii)少なくとも1つの親水性湿潤剤、並びに(iii)(i)及び(ii)の組み合わせから成る群より選択される抗菌剤促進剤を添加して、これにより改良されたポリマー組成物を形成することを含む。
【0009】
なお別の態様において、本発明は、ノルボルネンベース材料及び/又はエチレンビニルアルコールの層を包含する臭気バリア複合材を含む多層バリアフィルムを提供する。多層バリアフィルムは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー及び抗菌剤を包含するポリマーフィルムも含む。フィルムは、条件(a)及び(b)の少なくとも1つを満たし、条件(a)は、フィルムが少なくとも1つの親水性湿潤剤を包含する抗菌剤促進剤も含むことであり、条件(b)は、フィルムが少なくとも1つの発泡剤を包含する抗菌剤促進剤を最初に含み、続いて発泡剤がフィルム中で気泡を形成してフィルム面に沿って破裂して、これによりフィルムにクレーター状表面を形成したことである。
【0010】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つのガス及び蒸気バリア有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有する第1皮膜層を含む、多層ポリマーフィルムを提供する。多層フィルムは、少なくとも1つのエラストマー性有機ポリマーを包含して、上表面及び下表面を有するコア層も含み、コア層の上表面は第1皮膜層の下表面の下に存在する。多層フィルムは、少なくとも1つのシール性有機ポリマー及び少なくとも1つの抗菌剤を包含して、上表面及び下表面を有する第2皮膜層も含み、第2皮膜層の上表面はコア層の下表面の下に存在する。
【0011】
また別の態様において、本発明は、少なくとも1つの接着性有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有する少なくとも1つの結合層をさらに含む、本明細書に記載するようなフィルムを提供し、結合層の上表面層は第1皮膜層の下表面の下に存在して、結合層の下表面層がコア層の上表面の上に存在するか、又は結合層の上表面がコア層の下表面の下に存在して、結合層の下表面は第2皮膜層の上表面の上に存在する。
【0012】
本発明の追加の態様は物品であって、物品は本明細書に記載するフィルムを含む。
【0013】
なお別の態様において、本発明は、フィルムから製造された物品においてガス及び蒸気バリア並びに抗菌活性を提供する方法を提供する。本方法は、フィルムを提供することを含み、フィルムは少なくとも1つのガス及び蒸気バリア有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有する第1皮膜層と、少なくとも1つのエラストマー性有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有するコア層であって、コア層の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在するコア層と、少なくとも1つのシール性ポリマー及び少なくとも1つの抗菌剤を含み、上表面及び下表面を有する第2皮膜層であって、第2皮膜層の上表面がコア層の下表面の下に存在する第2皮膜層とを包含する。本方法は、フィルムを含む物品を製造することも含む。
【0014】
認識されるように、本発明は、他の及び各種の実施形態を可能にして、そのいくつかの詳細は、すべて本発明から逸脱することなく、多様な点で修正を行うことができる。したがって図面及び説明は、制限するものとしてではなく、例証として見なされるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
添付図面は、本発明を制限するのではなく、例証するために提供されている。図面の構成要素は、縮尺通りではなく、代わりに本発明の原理を例証することに重点を置いている。図面では、本発明のフィルムの構成要素は、全図面を通して同じ参照番号を付される。
【0016】
図1】本発明による好ましい実施形態のポリマーフィルムの概略斜視図である。
図2図1に示した好ましいフィルムの概略詳細断面図である。
図3図1及び2に描かれた好ましいフィルムを包含する好ましい実施形態の多層アセンブリの概略断面図である。
図4】実施例1の各種のインキュベーション時間での多様な試料の細菌数のグラフである。
図5】本発明の一実施形態による3層を有するフィルムの断面図である。
図6】本発明の一実施形態による4層を有するフィルムの断面図である。
図7】本発明の一実施形態による4層を有するフィルムの断面図である。
図8】本発明の一実施形態による5層を有するフィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一般に、本発明により、ポリマー組成物及びそれから形成されたフィルム中に混和されているときに組成物中の薬剤の抗菌活性を著しく改善する1つ以上の抗菌促進剤が利用される。抗菌促進剤は好ましくは、抗菌剤を含有するポリマー組成物に添加される発泡剤及び/又は親水性湿潤剤を包含する。ポリマー組成物は同時押出しされて、ポリマーフィルムを形成することができる。フィルム又は層は広範囲の物品中に組み込まれて、好ましくは多層バリアアセンブリ中で使用することができる。抗菌促進剤が添加されるポリマー層としては、これに限定されるわけではないが、銀イオン、酸化亜鉛、トリクロサン及び/又は他の抗菌剤などの少なくとも1つの抗菌剤が挙げられる。促進剤が発泡剤を包含する実施形態では、ポリマー層は好ましくはフォームを形成するには薄すぎる特定の厚さを有するので、発生する気泡が破裂して、これによりフィルム面に沿ってはるかに大きい表面積が生成される。増大した表面積は、抗菌剤の曝露のためにさらなる領域を提供して、微生物との接触を引き起こす。より広い表面積は、ほぼいずれの濃度においても抗菌剤の有効性を著しく増大させる。抗菌促進剤が1つ以上の親水性湿潤剤を包含する実施形態では、湿潤剤の混和により微生物含有水性媒体と抗菌剤を含有するポリマー層の面との間の接触が増加する。本発明は、(i)1つ以上の発泡剤及び/又は(ii)1つ以上の親水性湿潤剤と併せて抗菌剤を有するポリマー層を包含する。すなわち本発明は、別個の及び相互に組み合せた(i)及び(ii)のそれぞれの使用及び混和を包含する。これら及び他の態様は本明細書により詳細に記載されている。
【0018】
ポリマーフィルム
本発明の好ましい実施形態において、ポリマー層は、少なくとも1つのシール性有機ポリマー、少なくとも1つの抗菌剤及び少なくとも1つの抗菌剤促進剤を含む。シール性有機ポリマーは、ポリマー層のそれ自体若しくは別の層への、異なるフィルムの層への、又は物品へのシールを可能にするいずれの熱可塑性有機ポリマーも含む。本発明の多様な実施形態において、シール方法としては、例えば感圧性接着剤又は溶剤接着剤などの接着剤を用いたシール、積層接着剤並びに/又は圧力及び/若しくは熱を使用する積層によるシール、上記のシール方法のいずれの組み合わせも挙げられる。好ましい実施形態において、シール方法はヒートシール方法である。ある実施形態において、ヒートシール方法は、加熱した棒を用いたシール、熱風を用いたシール、例えば赤外線放射若しくは高周波放射などの電磁放射源を用いたシール、又は上記のヒートシール方法のいずれかの組み合わせを含む。
【0019】
シール性有機ポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、スチレンベースホモポリマー若しくはコポリマー、ポリカーボネート、ポリウレタン、ハロゲン含有ポリマー、アクリレートベース若しくはメタクリレートベースホモポリマー若しくはコポリマー、アルケン不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体コポリマー、ビニルアルコール含有ホモポリマー若しくはコポリマー、又は上記のポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。本発明のある実施形態において、シール性有機ポリマーはヒートシール性であり、ポリエチレン、アルケン不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体コポリマー、又は上記のポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。好ましくは、ポリエチレンはヒートシール性であり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリエチレンプラストマー、又は上記のポリエチレンのいずれか2つ以上の混合物を含む。アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーも好ましくはヒートシール性であり、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−メタクリル酸アルキルコポリマー、エチレン−アクリル酸アルキルコポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマーの金属塩を包含するアイオノマー、又は上記のコポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。ある実施形態において、エチレン酢酸ビニルコポリマーはヒートシール性であり、重量ベースで10%から40%の、16%から36%の、又は22%から32%の酢酸ビニル含有率を有する。一般にシール性有機ポリマーは、ポリマー層中に重量ベースで20%から70%、30%から60%、又は40%から50%にて存在する。有用なシール性有機ポリマーは市販されていて、セラニーズ(Celanese)によるエチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマーである、アテバ(ATEVA)(登録商標)2810A(0.949g/cmのASTM D792密度、190℃/2.16kgにて6dg/分のASTM D 1238メルトインデックス及び28重量%の酢酸ビニル含有率を有する)及びデュポン(Du Pont)(商標)によるエルバックス(ELVAX)(登録商標)3182(0.95g/cmのASTM D 792密度、190℃/2.16kgにて3dg/分のASTM D 1238メルトインデックス及び28重量%の酢酸ビニル含有率を有する)が挙げられる。
【0020】
ある実施形態において、線形低密度ポリエチレンと、最も好ましくはメタロセン触媒線形低密度ポリエチレン(LLDPE)と組合されたエチレン酢酸ビニルを包含することが好ましい。この構成成分の好ましい割合は、次の通りである。エチレン酢酸ビニルは、好ましくは約40%から約50%の、最も好ましくは約45%の量で使用される。メタロセン触媒LLDPEは、約6%から約16%の、最も好ましくは約11%の量で使用される。
【0021】
発泡剤及び/又は親水性湿潤剤並びに抗菌剤に加えて、ポリマーフィルムは、スリップ剤、ブロック剤、核化剤、押出助剤、抗酸化剤、難燃剤、着色料又は顔料などのさらなる添加剤も含み得る。顔料の例は、カーボンブラック又は二酸化チタン又は黒鉛及び当分野で公知の他の化合物である。
【0022】
好ましくはポリマー層のある実施形態において、抗菌促進剤に1つ以上の発泡剤を利用するときに表面特徴を促進してシール性を維持するために、ポリマー層がある厚さを有することが好ましい。ポリマーフィルムが医療用途のための多層バリアなどの多層アセンブリに組み込まれて使用されるとき、好ましい厚さはフィルム構造全体の5%から15%の間を目標とする。一般にポリマー層の厚さは、組成物が発泡剤の活性化時にただちに泡を形成しないように十分な薄さになっている。代わりに、フィルム又はポリマー層の面に沿って形成する気泡はいずれも破裂する傾向があり、これにより不均質で比較的不連続なフィルム外表面が生成される。この表面は、本明細書においてときどき「クレーター状表面」と呼ばれる。
【0023】
図1及び図2は、露出外面12を画成する好ましい実施形態のフィルム10を概略的に描いている。図2は、記載されたクレーター状表面12を描いたフィルム10の代表的な断面である。詳細にはフィルム10は、層全体に分散した1つ以上の抗菌剤5を包含するポリマー組成物の層を含む。抗菌剤5は、例えばフィルム10のクレーター状外表面12に沿って利用可能である銀イオンを包含することができる。クレーター状表面12は一般に、複数の外に延伸する突起2及び複数の陥没凹部4を包含する。認識されるように、外表面12の表面積は、突起及び凹部4が存在する結果として著しく増大している。
【0024】
先に記載したように、ポリマーフィルムは、親水性湿潤剤である抗菌促進剤を利用し得る。このため1つ以上の親水性湿潤剤は、図1及び図2に描かれたフィルム10のポリマー組成物によって包含されることが可能である。又はポリマー組成物は、親水性湿潤剤のみを包含する促進剤を使用することが可能であり、このため発泡剤を含んでいない。これらの実施形態において、ポリマーフィルムは、促進剤が発泡剤を包含するときに生じるクレーター状表面とは違って、比較的平滑な外面を呈する。これらの態様は、本明細書でより詳細に説明される。
【0025】
抗菌剤
好ましくは、ポリマー層に混和された少なくとも1つの抗菌剤は、有機抗菌剤、無機抗菌剤又は上記の抗菌剤のいずれか2つ以上の混合物を含む。抗菌剤は殺菌性で微生物を死滅させることができるか、又は静菌性であり微生物の増殖若しくは生殖を防止することができる。「微生物」という用語は、本明細書で使用する場合、細菌、真菌、植物及び原生動物を包含する微生物(microorganism)を指す。微生物の追加の例が本明細書に包含される。
【0026】
好ましい実施形態において、有機抗菌剤は、例えばクエン酸などの植物化学物質を包含する天然抗菌剤、例えばトリクロサン及び4級アンモニウムハライドを包含する合成抗菌剤、又は上記の有機抗菌剤のいずれか2つ以上の混合物を含む。
【0027】
無機抗菌剤は、好ましくは金属イオン含有組成物を含む。好ましい実施形態において、無機抗菌剤は銀イオン含有組成物、亜鉛イオン含有組成物、銅イオン含有組成物、スズイオン含有組成物、又は上記の組成物のいずれか2つ以上の混合物を含む。最も好ましくは、無機抗菌剤は銀イオン含有組成物である。
【0028】
ある実施形態において、抗菌剤は静微生物性である無機抗菌剤である。金属イオン含有組成物は、例えばイオン交換樹脂などの有機支持体上の金属イオン、例えばケイ酸塩ベースのゼオライト若しくはケイ酸塩ベースの粘土若しくはガラス若しくはセラミックなどの無機支持体上の金属イオン、又は上記の組成物のいずれか2つ以上の混合物を含むことができる。ある実施形態において、ポリマー層の抗菌剤は、抗菌剤添加濃縮物を形成するために熱可塑性ポリマー担体中に分散された抗菌剤を含む。他の実施形態において、ポリマー層の抗菌剤は、抗菌剤機能付与ナノメートルサイズ充填剤添加剤を含み、機能付与は充填剤の表面に抗菌剤を結合することを伴う。この機能付与によって、従来のマイクロメートルサイズの支持体又は充填剤上の抗菌剤と比較して、抗菌剤の粒径の小型化及び分散性の上昇並びに抗菌剤の効率及び持続性の向上をもたらすことができる。
【0029】
特に好ましい抗菌剤は、マサチューセッツ州ボストンのナノバイオマターズ(NanoBioMatters)、ノースアメリカ、LLCからBACTIBLOCK(登録商標)という名称で市販されている。BACTIBLOCK(登録商標)は、ポリマーベース原材料のための抗菌添加剤である。BACTIBLOCK(登録商標)の技術は、天然起源で高い効率の抗菌生成物を生成する銀機能付与粘土をベースとしている。この添加剤は細菌、カビ、真菌及び他の微生物の増殖を防止し、このことによってもBACTIBLOCK(登録商標)は臭気や変色に対する強力な武器となる。
【0030】
BACTIBLOCK(登録商標)中の活性成分は、周知の抗菌スペクトルを持つと共に、人体に接触しても安全であることが広く認識されている天然型元素のイオン化銀である。BACTIBLOCK(登録商標)剤において、イオン化銀は粘土表面に結合され、これにより添加剤中で活性種が均一に分布される。加えて、粘土に付着した銀は、小板の二次凝集を防止して、添加剤を均一に分散させる。この分散機構の組み合わせにより、ポリマー材料の抗菌効率及び均質な保護が最大限になる。
【0031】
粘土小板に結合した銀種は、保護された材料の表面に向けて制御された速度で放出される。このことにより、ポリマー中ですでに利用可能な活性種を持つ添加剤と比較して、より均一で長期の抗菌効果が確保される。
【0032】
各BACTIBLOCK(登録商標)グレードの主な構成要素は、低濃度の抗菌剤と組合された機能付与粘土である。各構成要素の具体的なレベルは所望の性能を達成するように調整することができる。添加剤パッケージ全体の最終濃度は、生成物の設計及び標的の特性に大きく依存する。
【0033】
銀機能付与粘土の多様な特長及び形成に関する追加の詳細事項は、米国特許出願公開第2010/0272831号明細書で述べられている。
【0034】
抗菌剤も広範囲の公知抗生剤及び抗菌剤より選択され得る。好適な材料は“Active Packaging of Food Applications”A.L.Brody,E.R.Strupinsky,and L.R.Kline,Technomic Publishing Company,Inc.Pennsylvania(2001)で議論されている。本発明の実施に好適な抗菌剤の追加の例としては、安息香酸、ソルビン酸、ナイシン、チモール、アリシン、過酸化物、イマザリル、トリクロサン、ベノミル、抗菌金属イオン交換材料、金属コロイド、金属塩、無水物及び有機4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0035】
好ましい実施形態において、抗菌剤は、抗菌イオンと交換された又は抗菌イオンが添加された金属イオン交換材料より選択される。本発明の実施に好適な金属イオン交換材料は、リン酸ジルコニウム、リン酸水素金属、リン酸水素ナトリウムジルコニウム、ゼオライト、モンモリロナイトなどの粘土、イオン交換樹脂及びポリマー、多孔性アルミノケイ酸塩、層状化イオン交換材料及びケイ酸マグネシウムより選択される。好ましい金属イオン交換材料は、リン酸ジルコニウム、リン酸水素金属、リン酸水素ナトリウムジルコニウム又はゼオライトである。好ましい抗菌イオンは、銀、銅、ニッケル、亜鉛、スズ及び金である。特に好ましい実施形態において、抗菌イオンは銀及び亜鉛より選択される。抗菌イオンは抗菌剤の抗菌基部分である。
【0036】
好ましい抗菌剤の追加の例としては、これに限定されるわけではないが、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)、塩化ベンザルコニウム(BZK)、又はヨードプロピニルブチルカルバメート(IPBC;ゲルマルプラス(Germall plus))が挙げられる。抗菌剤のさらなる例は、これに限定されるわけではないが、ヨードフォア、ヨウ素、安息香酸、ジヒドロ酢酸、プロピオン酸、ソルビン酸、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、セトリミド、これに限定されるわけではないが、塩化ベンゼトニウム(BZT)、塩化デクアリニウムを包含する4級アンモニウム化合物、クロルヘキシジン(遊離塩基及び塩を包含する(以下を参照))、PHMB(ポリヘキサメチレンビグアニド)などのビグアニド、クロロクレゾール(chloroeresol)、クロロキシレノール(chlorxylenol)、ベンジルアルコール、ブロノポール、クロルブタノール、エタノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、2,4−ジクロロベンジルアルコール、チオメルサール、クリンダマイシン、エリスロマイシン、過酸化ベンゾイル、ムピロシン、バシトラシン、ポリミキシンB、ネオマイシン、トリクロサン、パラクロロメタキシレン、ホスカルネット、ミコナゾール、フルコナゾール、イトリコナゾール、ケトコナゾール及びその製薬的に許容される塩が挙げられる。
【0037】
本発明による抗菌剤として使用され得る製薬的に許容されるクロルヘキシジン塩は、これに限定されるわけではないが、クロルヘキシジンパルミテート、クロルヘキシジンジホスファニレート、クロルヘキシジンジグルコネート、クロルヘキシジンジアセテート、クロルヘキシジンジヒドロクロライド、クロルヘキシジンジクロライド、クロルヘキシジンジヒドロヨージド、クロルヘキシジンジペルクロラート、クロルヘキシジンジニトレート、クロルヘキシジンサルフェート、クロルヘキシジンサルファイト、クロルヘキシジンチオサルフェート、クロルヘキシジンジアシッドホスフェート、クロルヘキシジンジフルオロホスフェート,クロルヘキシジンジホルメート、クロルヘキシジンジプロピオナート、クロルヘキシジンジヨードブチラート、クロルヘキシジンジ−n−バレラート、クロルヘキシジンジカプロアート、クロルヘキシジンマロネート、クロルヘキシジンスクシナート、クロルヘキシジンマレアート、クロルヘキシジンタートレート、クロルヘキシジンジモノグリコレート、クロルヘキシジンモノジグリコレート、クロルヘキシジンジラクテート、クロルヘキシジンジ−アルファ−ヒドロキシイソブチラート、クロルヘキシジンジグルコヘプタネート、クロルヘキシジンジイソチオネート、クロルヘキシジンジベンゾアート、クロルヘキシジンジシンナメート、クロルヘキシジンジマンデレート、クロルヘキシジンジイソフタレート、クロルヘキシジンジ−2−ヒドロキシナフトアート、及びクロルヘキシジンエンボネートが挙げられる。クロルヘキシジン遊離塩基は、抗菌剤のさらなる例である。
【0038】
本発明のポリマー層は、追加の医薬化合物のいずれの組み合わせも含有することができる。このような医薬化合物としては、これに限定されるわけではないが、抗菌剤、抗生剤、抗真菌剤、抗ウイルス剤、抗血栓剤、麻酔薬、抗炎症剤、鎮痛薬、抗癌剤、血管拡張物質、創傷治癒剤、血管新生剤、抗血管新生剤、免疫増強剤、成長因子及び他の生物剤が挙げられる。好適な抗菌剤としては、これに限定されるわけではないが、クロルヘキシジン及びその塩などのビグアニド化合物;トリクロサン;ペニシリン;テトラサイクリン;ゲンタマイシン及びトブラマイシン(商標)などのアミノグリコシド;ポリミキシン;リファンピシン;バシトラシン;エリスロマイシン;バンコマイシン;ネオマイシン;クロラムフェニコール;ミコナゾール;オキソリン酸、ノルフロキサシン、ナリジクス酸、ペフロキサシン、エノキサシン及びシプロフロキサシンなどのキノロン;スルホンアミド;ノノキシノール9;フシジン酸;セファロスポリン;並びにこのような化合物及び同様の化合物の組み合わせが挙げられる。追加の抗菌化合物は向上した抗菌活性を提供する。
【0039】
抗菌化合物は、好ましくは有効量で使用される。「有効量」という用語は、本明細書で使用する場合、ポリマー組成物に混和され、これからフィルムが形成される場合、フィルム面に沿って薬剤が存在することによって、微生物を死滅させる、又は少なくとも微生物の増殖若しくは生殖を防止するような抗菌剤のいずれの量も指す。抗菌イオンが銀である場合に、銀イオンが組成物の0.01から20重量%を構成することが好ましい。最も好ましくは、ポリマー層における銀イオンの濃度が約5%から約15%である。
【0040】
本発明において、フィルム表面は微生物の増殖に対して耐性とされる。耐性になることができる微生物の一部としては、単細胞生物、例えば細菌、真菌、藻類、及び酵母並びにカビが挙げられる。細菌はグラム陽性及びグラム陰性細菌の両方を包含することができる。グラム陽性細菌のいくつかの例としては、例えばバチルス・セレウス(bacillus cereus)、ミクロコッカス・ルテウス(micrococcus luteus)及びスタフィロコッカス・アウレウス(staphylococcus aureus)が挙げられる。グラム陰性細菌のいくつかの例としては、例えばエシェリキア・コリ(escherichia coli)、エンテロバクター・アエロゲネス(enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・クロアカ(enterobacter cloacae)及びプロテウス・ブルガリス(proteus vulgaris)が挙げられる。酵母の株としては、例えばサッカロミセス・セレビシエ(saccharomyces cerevisiae)が挙げられる。本発明は多様な他の微生物及び微生物(microorganism)の死滅又はその増殖及び/若しくは生殖の低減に関することが認識される。本発明は、本明細書に示す微生物の特定の例に決して限定されない。
【0041】
抗菌促進剤としての発泡剤
先に記載したように、ある実施形態において、抗菌促進剤は1つ以上の発泡剤を包含し得る。促進剤は、このような発泡剤を1つ以上の親水性湿潤剤と共に包含し得るか、又は発泡剤のみを使用し得る。本発明で利用される発泡剤は、それぞれのポリマーに好適であるいずれかの公知の発泡剤より、例えば炭化水素、エーテル、低級アルコール,ハロゲン化炭化水素,とりわけ部分ハロゲン化炭化水素を包含する脂肪族若しくは脂環式化合物、及び水、二酸化炭素、NO、NO及びNOなどの亜酸化窒素、窒素、アンモニアなどの無機発泡剤、アルゴンなどの希ガス及び空気、又はその混合物より選択することができる。無機発泡剤は、当分野で通例公知であるような、例えばNの発生にはアゾ型化合物、NHの発生にはアンモニウム化合物並びにCOの発生には炭酸塩及び酸の混合物などの、分解してガスを発生する組成物に化学化合物を添加することによってその場で産生することもできる。
【0042】
好適な脂肪族又は脂環式化合物の例は、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、イソブタン、ブチレン、イソブテン、ペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン及びその混合物である。エーテルの好適な例は、ジメチルエーテル(DME)、メチルエチルエーテル、又はジエチルエーテルである。低級アルコールの好適な例は、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びその混合物であり、エタノールが好ましい。無機発泡剤の中でも、二酸化炭素又は二酸化炭素/水混合物が好ましい。部分ハロゲン化炭化水素の例は、クロロエタン、クロロジフルオロメタン(R−22)、1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン(R−142b)、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R−134a)、1,1,2,2−テトラフルオロエタン(R−134)、2−クロロ−1,1,1,2−テトラフルオロエタン(R−124)、ペンタフルオロエタン(R−125)、1,1−ジフルオロエタン(R−152a)、1,1,1−トリフルオロエタン(R−143a)、1−フルオロエタン(R−161)、ジフルオロメタン(R−32)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)及びその混合物である。
【0043】
すべての場合で好ましいのは、オゾン破壊係数(ozone depletion potential(ODP))を有さない発泡剤組成物、すなわちフッ化アルカン、無機発泡剤、アルコール、炭化水素、エーテル又はその組み合わせである。例えばアルキレン芳香族ポリマー及びコポリマーに、又はオレフィン系ポリマー及びコポリマーに特に好適なのは、主として二酸化炭素、及び二酸化炭素と水若しくはエタノール若しくはイソプロパノール若しくはジメチルエーテルの混合物又はこれらの2つ以上の混合物で構成される発泡剤組成物である。(i)1,1,1,2−テトラフルオロエタン、(ii)1,1,2,2−テトラフルオロエタン、(iii)1,1−ジフルオロエタン、(iv)これらの2つ以上の混合物、又は(v)各化合物の混合物又はエタノール若しくはイソプロパノール若しくはジメチルエーテル若しくは水若しくは二酸化炭素との混合物又はこれらの2つ以上の混合物をベースとする組成物も、本発明の実施に特に好適である。加えて、ジメチルエーテル及びジメチルエーテルと水若しくはエタノール若しくはイソプロパノール若しくは二酸化炭素との混合物又はこれらの2つ以上の混合物をベースとする組成物も、本発明の実施に特に好適である。他の好適な発泡剤は、プロパン、ブタン、ペンタンなどの炭化水素又はその混合物である。さらに好適な炭化水素とジメチルエーテル、二酸化炭素、及び部分ハロゲン化炭化水素との混合物も本発明の実施に好適である。
【0044】
発泡剤は一般に、組成物の総重量に基づいて0.5から2.5重量パーセントの、好ましくは1から1.5重量パーセントの量で使用される。
【0045】
好ましくは、発泡剤は、シール性がもはや達成不能になる程度まで表面を破壊することはない。このことは発泡剤によって生成されたセルのサイズが好ましくは、抗菌剤を含有するポリマー層の厚さよりも小さい断面積を有することを意味する。又は好ましくは、発泡剤は抗菌剤の機能を妨害しない。ゆえに発泡剤は、表面をより疎水性にしたり、又は抗菌機能を無効にする競合アニオン効果を発生したりしない。抗菌促進剤が親水性湿潤剤も包含する場合に、このことは特に当てはまる。これらは好ましいフィルムの記載されたクレーター状表面の好ましい特徴である。
【0046】
一般に抗菌促進剤が発泡剤を包含する場合、気泡のサイズは均一でなく、これは発泡剤の量及び処理温度に依存する。表面破損は、表面に対する気泡の位置に依存する。
【0047】
気泡(又は破裂した気泡)の代表的な好ましいサイズ範囲は以下の通りである。ポリマーフィルム平面における最大径は、好ましくはポリマー層厚の20%から50%の間である。これは好ましい実施形態のフィルムの記載されたクレーター状表面の別の好ましい特徴である。しかし本発明がこの特徴に決して限定されないことが認識される。代わりに、本発明は、気泡の最大径がポリマー層厚の20%未満及びポリマー層厚の50%超である形成されたポリマーフィルムを包含する。
【0048】
抗菌促進剤としての親水性湿潤剤
記載したように、ある実施形態において、抗菌促進剤は1つ以上の親水性湿潤剤を包含する。促進剤は、このような湿潤剤を1つ以上の発泡剤と共に包含し得るか、又は湿潤剤のみを使用し得る。「湿潤剤」という用語は、ポリマー層の面に沿って水性媒体による水和又は水性媒体との接触を促進する又は向上させる薬剤を指す。好適な湿潤剤の例としては、ポリオキシアルキレン(BASFからPLURONICSという名称で入手可能なもの、又はPEGを含むものを含む、ユニオンカーバイドからCARBOWAXESという名称で入手可能なものなど)、エーテルキャップ化ポリオキシアルキレン、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、エステルキャップ化ポリオキシアルキレン、例えばポリオキシエチレンステアレート、ソルビタンエステル(スパン(SPAN)及びツイン(TWEEN)という名称で市販されているある製品など)、ホスファチド(レシチンなど)、アルキルアミン、グリセリン、ポリエチレンオキシド、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンなどの水溶性ポリマー、アルキル(C6−C20)硫酸塩、例えばラウリル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤、硫酸アリール(C6−C10)及び硫酸アルカリール(C7−C24)などが挙げられる。本発明がこの湿潤剤のいずれかに決して限定されないことが理解される。代わりに、ほぼいずれの湿潤剤も、ポリマー構成要素及び抗菌剤と適合性である限り抗菌促進剤に使用できる。
【0049】
いずれの特定の理論にも束縛されるものではないが、親水性湿潤剤は、ポリマーフィルム面と微生物を含有しやすい水性媒体との接触の程度を増加させることによって、抗菌剤促進剤として作用すると考えられる。媒体とポリマーフィルム表面との間の接触が増加すると、フィルム内での抗菌剤への曝露の程度が増加する。
【0050】
方法
多様な好ましい実施形態のフィルムは、様々な方法で産生することができる。好ましくは、抗菌特性を有するポリマーフィルムの形成では、1つ以上の抗菌剤及び1つ以上の抗菌剤促進剤が選択され、適切な量で本明細書に記載するポリマー系と組合される。構成要素は、1回の操作で組合され得るか、又は連続して複数回の操作でポリマー系に組合され得る及び/若しくは混和され得る。次にフィルムがポリマー組成物から形成される。好ましくは公知の押出又は同時押出技法を使用して、1つ以上のポリマー組成物又はポリマー構成要素及び添加剤構成要素からフィルムが形成される。発泡剤を抗菌促進剤に使用する場合に、所望のクレーター状表面を産生するための温度及び押出速度などの適切な条件が選択される。
【0051】
本発明は多様な方法も提供する。好ましい方法は、ポリマー組成物中に混和された抗菌剤の有効性を上昇させることを包含する。本方法は、本明細書に記載する抗菌剤促進剤を組成物に添加する操作を包含する。この方法を使用して、組成物から形成されたフィルムの、及び組成物自体の有効性を向上させることができる。
【0052】
多層バリア
本発明は、医療用途に、特にオストミー用途に使用するための多層フィルムも提供する。認識されるように、このようなフィルムに重要な特徴は、フィルムを臭気が通過するのを防止する、又は少なくとも著しく低減することである。好ましいフィルムは、抗菌剤を抗菌剤促進剤と組み合わせて含むポリマー層を特長とする。薬剤及び促進剤は、本明細書で上述した通りである。好ましい多層バリア構造は、場合により相溶化剤と組合された環式オレフィンコポリマー(COC)を包含する臭気遮断層を使用する。他の実施形態において、好ましい多層バリア構造は、ナノクレイ粒子を含有する内層を包含する。また追加の実施形態において、多層バリア構造は、多層アセンブリの独立層若しくは共通層又は領域において、これらの構成要素を共に利用することができる。なお追加の実施形態において、臭気バリア複合材は多層バリアフィルムで利用される。臭気バリア複合材は、好ましくは環式オレフィンコポリマーすなわちCOC及び/又はエチレンビニルアルコール(EVOH)であるノルボルネンベース材料の層を包含する。好ましくは、臭気バリア複合材はノルボルネンベース材料及び1つ以上の他の構成要素を有する1つ以上の層、並びにEVOHを有する1つ以上の追加の層を包含する。好ましくは、ノルボルネンベース材料を含有する層の少なくとも1つは、EVOHを含有する層に隣接している。特に好ましい実施形態において、EVOHの1つ以上のグレードを含有する層は、ノルボルネンベース材料をそれぞれ包含する2つの層の間に配置されている、又は「挟まれて」いる。
【0053】
ある実施形態において、ポリマーフィルムに1つ以上の環式オレフィンコポリマーを利用することが好ましい。環式オレフィンコポリマーは、エチレンコポリマー、COC、シクロオレフィンコポリマー、環式オレフィンポリマー及びエチレン−ノルボルネンコポリマーとしても公知である。
【0054】
現在、異なる種類の環式モノマー及び重合方法をベースとする、いくつかの種類の市販の環式オレフィンコポリマーが存在する。環式オレフィンコポリマーは、8,9,10−トリノルボルナ−2−エン(ノルボルネン)又は1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−1,4:5,8−ジメタノナフタレン(テトラシクロドデセン)などの環式モノマーとエテンとの連鎖共重合によって通例産生される。市販の環式オレフィンコポリマーの非制限的な例としては、トパス・アドバンスト・ポリマーズからトパス(TOPAS)という名称で入手可能なもの、三井化学のアペル(APEL)、又は日本合成ゴム(JSR)からアートン(ARTON)という名称で入手可能なもの、並びにゼオンケミカルズ(Zeon Chemical’s)のゼオネックス(ZEONEX)及びゼオノア(ZEONOR)である、多様な環式モノマーの開環メタセシス重合と続いての水素添加によって形成されるものが挙げられる。
【0055】
特に好ましい環式オレフィンコポリマーは、トパス・アドバンスト・ポリマーズから入手可能なものである。これらの環式オレフィンコポリマーは、部分結晶性ポリオレフィンポリエチレン及びポリプロピレンとは対照的に、環式オレフィン及び直鎖オレフィンをベースとする一般にアモルファス透明コポリマーである。
【0056】
最も好ましくは、トパスによる環式オレフィンコポリマーはグレード9506及び8007である。トパスによる別の好ましい環式オレフィンコポリマーも下に記載されている。この環式オレフィンコポリマーは開発中のポリマーと呼ばれる。これらのコポリマーの特性及び特徴を下の表1〜表3に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
図3は、本発明による好ましい多層バリアアセンブリ2の概略図である。多層アセンブリ2は、外面12を画成する外層10、第1可撓性支持体層10、第1湿気・臭気バリア層30、酸素及び臭気透過を低減するための第2バリア40、第2湿気・臭気バリア50、第2可撓性支持体層60及び微生物含有媒体と接触するための内面72を画成する抗菌内層70を含む。抗菌層70は、少なくとも1つの抗菌剤及び本明細書に記載するよう少なくとも1つの抗菌剤促進剤を包含する。抗菌剤促進剤が1つ以上の発泡剤を包含する場合、多層化バリアアセンブリの内面72が本明細書に記載するようなクレーター状表面を示すことが好ましい。
【0061】
一般に、好ましい実施形態の多層構造は(層は最外層から最内層まで順番に記載されている)、(i)不織布外層、(ii)ポリエチレン及びポリプロピレンのエラストマーを使用する雑音を減衰するための第1可撓性支持体、(iii)COC及び相溶化剤、g−マレイン酸無水物EVAを含む第1湿気・臭気バリア層又は層アセンブリ、(iv)化学剤又は化学種がバリアを超えて移動する可能性をさらに低減する蛇行路を提供する、EVOH及びナノクレイ構成要素を含む水及び硫化水素(すなわち臭気)の透過を低減するための別のバリア、(v)上記の層(iii)に相当する第2湿気・臭気バリア、(vi)上記の層(ii)に相当する第2の可撓性支持体並びに(vii)銀イオン含有化合物などの抗菌剤を含有する抗菌内層を包含する。
【0062】
好ましい多層バリア構造を表4で次のように示す。
【0063】
【表4】
【0064】
多層フィルム構造で、例えば層(iii)及び(v)での使用に好ましいCOCは、トパス・アドバンスト・ポリマーズより入手される。COCは、ノルボルネン及びエチレンのコポリマーと考えられる。現在、トパスによるグレード9506は、多様な多層バリア構造での使用に好ましい。グレード8007又は先に記載した開発中のCOCが使用され得ることも考慮される。これらのコポリマーの特性及び特徴は、本明細書の表1−3に示されている。COCは、湿気又は臭気バリア層中で約10%から約95%の、さらに好ましくは約50%から約90%の、さらに好ましくは約60%から約80%の、最も好ましくは約70%などのほぼいずれの濃度でも使用することができる。ある実施形態において、COCをg−無水マレイン酸−エチレン酢酸ビニル(GMAH−EVA)などの結合構成要素と組み合わせて使用することが好ましい。多様な多層バリアフィルムは、これらの特定のCOCの使用に限定されないことが認識される。代わりに、広範囲の同程度の化合物及び/又は材料が多層構造の記載された湿気及び臭気バリア層で利用できることが考慮される。
【0065】
好ましい多層構造における可撓性支持体、例えば層(ii)及び(vi)は、低密度ポリオレフィン並びに好ましくはプロピレン及び/又はエチレンベースエラストマーを利用する。本発明の多層バリア構造はこれらの特定のエラストマーに限定されないことが認識される。
【0066】
広範囲の市販のポリオレフィンエラストマーは、可撓性支持体層の一方又は両方に使用することができる。このような材料の代表的な好ましい例としては、クラトンポリマーズ(Kraton Polymers)US、LLC(ヒューストン、テキサス州)より入手可能なKRATON D1164P及びG2832;ダウケミカル社(Dow Chemical Corp.)(ミッドランド、ミシガン州)によるダウアフィニティ(DOW AFFINITY)DG8200並びにダウバーシファイ(DOW VERSIFY)3200及び3000;GLS社(GLS Corp.)(マクヘンリー、イリノイ州)によるダイナフレックス(DYNAFLEX)G2755;クラレ(東京、日本)によるセプトン(SEPTON)2063;並びにエクソンモービルケミカル社(Exxon Mobil Chemical Co.)(ヒューストン、テキサス州)によるビスタマックス(VISTAMAXX)VM1100が挙げられる。表5は、これらの材料を使用して作製したフィルムの代表的な弾性率、引裂強度及び密度の値を示す。
【0067】
【表5】
【0068】
本発明の多層バリア構造はこれらの特定のエラストマーの使用に限定されないことが認識される。
【0069】
抗菌層、例えば層(vii)は、抗菌剤及び好ましくは本明細書に記載する1つ以上の抗菌剤促進剤を含む。この特定の例において、抗菌剤促進剤は親水性湿潤剤である。抗菌層は、好ましくは、メタロセン触媒直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)及びエチレン酢酸ビニル(EVA)などの本明細書に記載する1つ以上のシール性ポリマーも含む。1つ以上のスリップ剤及び/又は粘着防止剤もこの層に混和することができる。
上で示したように、バリア特性に加えて、ポリマーフィルムは丸めたときに雑音を発しないことがしばしば望ましい。例えばオストミー又は失禁用途では、オストミー又は失禁バッグが雑音を発しないことが望ましい。しかし、大半のポリマーフィルムは丸めたときに雑音を発する。好ましい実施形態の多層バリアフィルムの場合、フィルムは同程度のオストミーフィルムよりも著しく静音性である。
【0070】
好ましい多層バリア構造は、現在公知のオストミーフィルムに勝るいくつかの利点を示すと考えられる。好ましい多層バリアはハロゲンフリーであり、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)の使用を回避している。好ましい多層バリアはより静音性であり、「カサカサ音」は著しく少ない。そして好ましい多層バリアは、優れた臭気遮断特徴を示す。多層バリア構造は透明であり得るか、又は着色剤を含有し得る。加えて、好ましい多層バリアは、少なくとも一部は抗菌剤促進剤のために比較的高い抗菌効力を示す抗菌層を特長としている。
【0071】
好ましい実施形態の別の群は、特定の皮膜層及びコア層並びに結合層を包含する多層ポリマーフィルムに関する。詳細には本発明の実施形態は、少なくとも1つのガス及び蒸気バリア有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有する第1皮膜層、少なくとも1つのエラストマー性有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有するコア層であって、コア層の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在するコア層、並びに少なくとも1つのシール性有機ポリマー及び少なくとも1つの抗菌剤を含み、上表面及び下表面を有する第2皮膜層であって、第2皮膜層の上表面がコア層の下表面の下に存在する第2皮膚層を含む多層ポリマーフィルムである。「の下に存在する」及び「の上に存在する」という用語は、第1層が第2層の下に存在する又は第2層の上に存在するときに、第1層が第2層を一部又は完全に被覆できること、及び第1層が第2層と直接接触できること、又は1つ以上の中間層が、例えば結合層を包含するために第1層と第2層との間に位置できることを意味する。本発明の別の実施形態において、多層ポリマーフィルムは、本明細書に記載するように、少なくとも1つの接着性有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有する少なくとも1つの結合層であって、結合層の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在して、結合層の下表面がコア層の上表面の上に存在するか、又は結合層の上表面がコア層の下表面の下に存在して、結合層の下表面が第2皮膜層の上表面の上に存在する結合層を含む。本発明のまた別の実施形態において、物品は本明細書に記載する多層ポリマーフィルムを含む。本発明の多層ポリマーフィルム及びこのフィルムから得た物品は、以下でより詳細に記載する多様な用途において改良された性能をもたらすことができる特長の組み合わせを提供する。提供された特長としては、ガス及び蒸気バリア、抗菌活性、比較的低い引張弾性率並びに比較的高い引裂強度が挙げられる。本発明のフィルム及びフィルムから得た物品は、医療及びヘルスケア、建設及び構造、スポーツ用品、エレクトロニクス、パーソナルケア、食品市場及び織物を含むいくつかの用途で有用である。医療及びヘルスケア用途は、オストミーパウチ、尿バッグ、潰瘍又は創傷包帯又は関連材料、及び腎臓又は腎性不全の処置に使用される透析材料を含み、処置としては血液透析及び腹膜透析及び血液濾過が挙げられる。本発明のフィルムは、微生物活性を包含する得られた物品においてとりわけ有用であり、物品における組合された特長により、可撓性、柔らかさ、静音性及び強度が臭気制御及び抗菌活性と共に提供され、臭気制御及び抗菌活性は、例えば物品がオストミーパウチであるときに、蓄積したガスや蒸気の放出を低減又は解消することができる。
【0072】
第1皮膜層
本発明の実施形態において、第1皮膜層は少なくとも1つのガス及び蒸気バリア有機ポリマーを含む。ガスは、0℃の標準温度及び1気圧の標準圧力において気体状態で存在する元素及び化合物として定義することができる。ガスとしては、酸素、窒素、二酸化炭素、メタン及び硫化水素が挙げられる。蒸気は、0℃の標準温度及び1気圧の標準圧力においてその標準状態が液体又は固体である物質の分子のガス又は空気分散物として定義することができる。蒸気としては、水、インドール、メタンチオールなどのチオール及びジメチルジスルフィドなどのスルフィドが挙げられる。例えばオストミーパウチにおける微生物活性に関わる用途において、インドール、チオール、スルフィド及び硫化水素を包含する悪臭のあるガス及び蒸気が微生物代謝から形成されることがある。少なくとも1つのガス及び蒸気バリア有機ポリマーを含む第1皮膜層は、ガス及び蒸気バリアを提供することができる。
【0073】
本発明の実施形態において、第1皮膜層のガス及び蒸気バリア有機ポリマーは、モノマー塩化ビニリデンを包含する不飽和塩素含有モノマーのホモポリマー若しくはコポリマー、ポリアミド、ポリ(ビニルアルコール)及びアルケン−ビニルアルコールコポリマーを包含するビニルアルコール含有ホモポリマー若しくはコポリマー、アクリロニトリルのホモポリマー若しくはコポリマー、スチレンのホモポリマー若しくはコポリマー、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート又は上記のガス及び蒸気バリア有機ポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。
【0074】
本発明の実施形態において、第1皮膜層のガス及び蒸気バリア有機ポリマーは、アルケン−ビニルアルコールコポリマーであって、アルケンモノマーが少なくとも1つのC2−C10アルファオレフィンを含み、アルケン−ビニルアルコールコポリマー中のアルケンモノマー含有率がモルベースで20から60%、29から56%、又は38から52%であるアルケン−ビニルアルコールコポリマーを包含する。一実施形態において、第1皮膜層のガス及び蒸気バリア有機ポリマーは、第1のアルケンコモノマー、コポリマーが重合された後にビニルアルコールを形成するために加水分解される酢酸ビニルから通常得られる第2のビニルアルコールコモノマー及び第3のコモノマーを含有する、修飾アルケン−ビニルアルコールコポリマーを含む。一実施形態において、第3のコモノマーは、修飾アルケン−ビニルアルコールコポリマー中にモルベースで10%、7%又は4%まで存在することができる。一実施形態において第3のコモノマーは、例えばエチレン又はプロピレン又は1−ブテンなどのアルファオレフィンを包含する重合性不飽和モノマー、及び例えばアクリル酸又はメチルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸又はその誘導体を含む。修飾アルケン−ビニルアルコールコポリマーは、第3のコモノマーの混和によってより高い可撓性、柔らかさ及び静音性を第1皮膜層及び本発明のフィルム中で提供する、ガス及び蒸気バリア有機ポリマーとして機能する。本発明の実施形態において、第1皮膜層のガス及び蒸気バリア有機ポリマーは、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(EVOH)を含む。一実施形態において、第1皮膜層のガス及び蒸気バリア有機ポリマーは、上記の修飾エチレン−ビニルアルコールコポリマーを含む。一実施形態において、第1皮膜層のガス及び蒸気バリア有機ポリマー含有率は、重量ベースで50%、55%、60%又は65%超である。一実施形態において、第1皮膜層のガス及び蒸気バリア有機ポリマー含有率は、重量ベースで51から100%、56から88%又は61から77%である。有用なガス及び蒸気バリア有機ポリマーは市販されていて、クラレのエチレン−ビニルアルコールコポリマー、エバール(登録商標)H101(1.17g/cmのASTM D 792密度及び190℃/2.16kgにて1.6dg/分のASTM D 1238メルトインデックスを有する)、エバール(登録商標)E105(1.14g/cmのASTM D 792密度及び190℃/2.16kgにて5.5dg/分のASTM D 1238メルトインデックスを有する)及びエバルカ(登録商標)G176(1.12g/cmのASTM D 792密度及び210℃/2.16kgにて15dg/分のASTM D 1238メルトインデックスを有する);並びに日本合成のエチレン−ビニルアルコールコポリマー、ソアノール(登録商標)DC3212(1.19g/cmのASTM D 792密度及び210℃/2.16kgにて12dg/分のASTM D 1238メルトインデックスを有する)、及びソアノール(登録商標)H4815B(1.12g/cmのASTM D 792密度及び210℃/2.16kgにて16dg/分のASTM D 1238メルトインデックスを有する)が挙げられる。
【0075】
本発明の実施形態において、第1皮膜層は、少なくとも1つのアルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーをさらに含む。アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーは、第1皮膜層及び本発明のフィルムにおける可撓性、柔らかさ及び静音性を改善するように機能することができる。一実施形態において、アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーのアルケンコモノマーは、C2−C10アルファオレフィンを含む。一実施形態において、アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーの不飽和カルボン酸コモノマーは、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びフマル酸などの重合性不飽和カルボン酸モノマーを含む。一実施形態において、アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーの不飽和カルボン酸誘導体コモノマーは、例えば酢酸ビニル、アクリル酸メチル、メタクリル酸エチル及び無水マレイン酸などのエステル又は無水物を包含する重合性不飽和カルボン酸誘導体モノマーを含む。一実施形態において、アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーはアイオノマーを含む。一実施形態において、アイオノマーは、アルケンコモノマーがC2−C10アルファオレフィンを含み、不飽和カルボン酸コモノマーがアクリル酸又はメタクリル酸を含み、金属が亜鉛、ナトリウム、リチウム、マグネシウム又は上記の金属の2つ以上の混合物を含む、アルケン不飽和カルボン酸コポリマーの部分中和金属塩を含む。一実施形態において、アイオノマーは、エチレン−メタクリル酸コポリマーの部分中和亜鉛塩、ナトリウム塩又は亜鉛及びナトリウム塩を包含する。一実施形態において、アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーは、2つ以上のコポリマーの混合物を含む。一実施形態において、第1皮膜層中のアルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーの含有率は、重量ベースで0から40%、8から35%又は16から30%である。有用なアルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーは、市販されていて、デュポン(商標)によるアイオノマーである、サーリン(SURLYN)(登録商標)1705−1(0.95g/cmのASTM D 792密度及び190℃/2.16kgにて5.5dg/分のASTM D 1238メルトインデックスを有する)、及びA.シュルマン(Schulman)(登録商標)によるクラリックス(CLARIX)(登録商標)210805−01(0.94g/cmのASTM D 792密度及び190℃/2.16kgにて4.5dg/分のASTM D 1238メルトインデックスを有する)が挙げられる。
【0076】
本発明の実施形態において、第1皮膜層は、第1皮膜層及び本発明のフィルムの性能を改善するために、少なくとも1つの添加剤をさらに含む。添加剤は本発明のフィルムの1つ以上の層にそのまま導入することができるが、添加剤は、通常、添加濃縮物の一部として本発明のフィルムの1つ以上の層に導入されるか、又は代わりに1つ以上の添加剤が、本発明のフィルムの層を形成するために熱可塑性ポリマー製造者から入手する市販の熱可塑性ポリマー中に存在することがある。添加濃縮物は一般に、少なくとも1つの添加剤及び少なくとも1つの熱可塑性ポリマー担体を含み、添加濃縮物中の添加剤含有率は重量ベースで0.01から90%であることができる。一実施形態において1つ以上の添加濃縮物は、第1皮膜層中に重量ベースで0から30%で存在する。一実施形態において、第1皮膜層の添加剤は、粘着防止剤、スリップ剤、加工助剤、充填剤、核化剤、帯電防止剤、着色料又は顔料、染料、空洞形成剤、抗酸化剤、第2皮膜層について後述する脱臭剤、第2皮膜層について後述する抗菌剤、可塑剤、紫外線吸収剤又は上記の添加剤のいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、第1皮膜層は、スリップ剤、粘着防止剤、加工助剤、充填剤又は上記の添加剤のいずれか2つ以上の混合物を含む。粘着防止剤としては、例えばアモルファスシリカなどの無機材料、又はフィルム層を形成するために使用される1つ又は複数のポリマーと非適合性であるポリマーなどの有機化合物が挙げられ、粘着防止剤はフィルムがフィルム自体に付着しないように表面を粗化するために作用することができる。スリップ剤としては、フィルムの摩擦係数を低下させる、例えば脂肪酸アミドなどのロウ様有機材料が挙げられる。加工助剤としては、フィルム又はフィルムの層を形成するための処理中に熱可塑性ポリマーの流動を改善する、例えばフルオロポリマーなどの有機潤滑材料が挙げられる。充填剤は、例えば粘土、有機粒子状固体材料又はその混合物などの無機粒子状固体材料を含む。充填剤は、25マイクロメートル以下の平均粒径を有することができ、第1皮膜層及び本発明のフィルムにおける機械、熱及びガス/蒸気バリア特性を包含する性能を改善するように機能することができる。一実施形態において、充填剤は、欧州特許出願第1985585(A1)号に記載されているようにナノメートルサイズ充填剤を含み、ナノメートルサイズ充填剤は少なくとも1つの寸法が約1から10ナノメートルである寸法を有する充填剤を含む。一実施形態において、ナノメートルサイズ充填剤の充填剤は、例えば粘土などのフィロケイ酸塩を包含するシート様層を有する無機物、層状複水酸化物又は上記の無機物のいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、ナノメートルサイズ充填剤は、ポリマー中でインタカレーションによって分散されて、ポリマー添加濃縮物中でナノメートルサイズ充填剤を形成する。一実施形態において、ナノメートルサイズ充填剤添加濃縮物中のポリマーは、上記のガス及び蒸気バリア有機ポリマー、上記のアルケン不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体コポリマー又は上記の熱可塑性ポリマーのいずれか2つ以上の混合物を包含するいずれの熱可塑性ポリマーを含む。一実施形態において、ナノメートルサイズ充填剤添加濃縮物中のポリマーは、エチレン−ビニルアルコールコポリマーである。ナノメートルサイズ充填剤は、従来のマイクロメートルサイズの充填剤と比べて改善された性能を提供することができる。有用な添加濃縮物は市販されていて、デュポン(商標)による複合スリップ/粘着防止剤添加濃縮物である、CONPOL(登録商標)5B10S1(0.96g/cmのASTM D 792密度及び190℃/2.16kgにて25g/10分のASTM D 1238メルトインデックスを有する)及びA.シュルマン(登録商標)によるポリバッチ(POLYBATCH)(登録商標)MCE5106IM(0.97g/cmのASTM D 792密度を有する);加工助剤添加濃縮物であるアムパセット(Ampacet)(商標)10919(0.91g/cmのASTM D 792密度及び190℃/2.16kgにて2g/10分のASTM D 1238メルトインデックスを有する);及びナノバイオマターズ(商標)によるエチレン−ビニルアルコールコポリマー添加濃縮物中のナノメートルサイズ充填剤である、NANOBIOTER(登録商標)が挙げられる。
【0077】
表6は、本発明のフィルムの第1皮膜層を形成するのに有用である組成物の例を重量パーセントベースで示す。
【0078】
【表6】
【0079】
コア層
コア層は、本発明の実施形態において、少なくとも1つのエラストマー性有機ポリマーを含む。エラストマー性有機ポリマーは、静音性を伴う可撓性及び強度の両方をコア層及び本発明のフィルムに提供することができる。一実施形態において、エラストマー性有機ポリマーは弾性であり、200%、400%又は600%を超えるASTM D 882破断時伸びを有する。一実施形態において、エラストマー性有機ポリマーは可撓性を提供し、縦方向及び横方向の両方で40MPa(メガパスカル)、33MPa、26MPa又は19MPa未満のASTM D 882引張弾性率を有する。縦方向はフィルムがその製造時に進行する方向であり、横方向は縦方向に直角又は垂直の方向である。一実施形態において、エラストマー性有機ポリマーは強度を提供し、縦方向及び横方向の両方で少なくとも10MPa、11MPa、12MPa又は13MPaのASTM D 882破断時引張強度を有する。
【0080】
本発明の実施形態において、コア層のエラストマー性有機ポリマーは、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマー、ポリウレタンベースエラストマー、ポリエステルベースエラストマー、ポリアミドベースエラストマー、ポリオレフィンベースエラストマー又は上記のエラストマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーは、例えばスチレン及びアルファ−メチルスチレンなどのビニルアレーンを含むビニルアレーンと、少なくとも1つの他のモノマーとのコポリマーを含み、コポリマー内に2つ以上のポリマーブロックを形成する。一実施形態において、他のモノマーは少なくとも1つのオレフィンを含み、オレフィンはアルファオレフィンであることができるアルケンを含み、アルケン又はアルファオレフィンは2つ以上の炭素原子、非共役ジエン若しくは共役ジエン又は上記のオレフィンのいずれか2つ以上の混合物を有する。一実施形態において、オレフィンとしては、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1,4−ペンタジエン、イソプレン、ブタジエン又は上記のオレフィンのいずれか2つ以上の混合物が挙げられる。一実施形態において、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーは、水素添加又は非水素添加であることができるスチレン−イソプレンジブロックコポリマー、水素添加又は非水素添加が可能であるスチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレントリブロックコポリマー、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレントリブロックコポリマー、水素添加又は非水素添加が可能であるスチレン−ブタジエンジブロックコポリマー、水素添加又は非水素添加が可能であるスチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマー、水素添加又は非水素添加が可能であるスチレン−イソプレン−ブタジエンブロックコポリマー又はスチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマー及びスチレン−イソプレンジブロックコポリマーの混合物(SIS/SI)を含む上記のブロックコポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーは、弾性の上昇をもたらす低いビニルアレーン含有率を有する。一実施形態において、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーはモルベースで50%、40%又は30%未満のビニルアレーン含有率を有する。一実施形態において、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーは重量ベースで50%、40%又は30%未満のビニルアレーン含有率を有する。一実施形態において、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーとしては、直鎖ブロックコポリマー、分枝ブロックコポリマー、ラジアルブロックコポリマー又は上記のブロックコポリマーのいずれか2つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0081】
一実施形態において、ポリオレフィンベースエラストマーは、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーについて上に記載したような1つのオレフィンから形成された少なくとも1つのポリマー又は1つのオレフィンから形成された少なくとも1つのポリマーを含み、ポリマーはブロックコポリマー、例えば少なくとも1つのアイソタクチック又はシンジオタクチックポリプロピレンブロック及び少なくとも1つのアタクチックポリプロピレンブロックを有するブロックコポリマーである。一実施形態において、ポリオレフィンベースエラストマーは、ビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーについて上に記載したような2つ以上のオレフィンから形成され、ランダムコポリマー、少なくとも2つのポリマーブロックを有するブロックコポリマー又は上記のコポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む、少なくとも1つのコポリマーを含む。一実施形態において、ポリオレフィンベースエラストマーランダムコポリマーは、少なくとも第1のアルケン及び少なくとも第2のアルケン又はジエンから形成されたランダムコポリマーであって、ランダムコポリマー中の第2のアルケン又はジエンの含有率はモルベースで25%以下であり、例えば0.912g/cmを超え0.94g/cmまでの密度を有し、多量のエチレン及び少量の少なくとも1つの他のアルファオレフィンから形成された直鎖低密度ポリエチレン及び多量のイソブチレン及び少量のイソプレンから形成されたブチルゴムを包含する、ランダムコポリマー;少なくとも2つのアルケンから形成されたランダムコポリマーであって、2つのアルケンが一般にランダムコポリマー中に等モル量で存在し、例えばエチレン−プロピレンゴム及び少量の非共役ジエンをさらに含有するエチレン−プロピレン−ジエンモノマーエラストマーを包含するランダムコポリマー;又は上記のランダムコポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、ポリオレフィンベースエラストマーブロックコポリマーは、少なくとも2つのアルケンから形成され、少なくとも1つのコポリマーセグメントに結合された少なくとも1つのホモポリマーセグメントを有するブロックコポリマーであって、例えば少なくとも1つのポリプロピレンホモポリマーセグメント及び少なくとも1つのプロピレン−エチレンコポリマーセグメントを含有するプロピレン−エチレンベースブロックコポリマー、及び少なくとも1つのポリエチレンホモポリマーセグメント及び少なくとも1つのエチレン−アルファ−オレフィンコポリマーセグメントを含有するエチレン−アルファ−オレフィンベースブロックコポリマーを包含するブロックコポリマー;少なくとも1つの直鎖ジエン及び少なくとも1つの分枝ジエンから形成され、分枝ジエンによる少なくとも1つのホモポリマーセグメントに結合した直鎖ジエンによる少なくとも1つのホモポリマーセグメントを有するブロックコポリマーであって、例えば水素添加ブタジエン−イソプレン−ブタジエントリブロックコポリマーを包含するブロックコポリマー;又は上記のブロックコポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、ポリオレフィンベースエラストマーは上に記載したような少なくとも2つのアルケンから形成されたブロックコポリマーを含み、ブロックコポリマーはナノメートルレベルの結晶サイズを有し、これによりマイクロメートルレベルの結晶サイズを有する従来のエラストマーと比べて改善された特性が提供される。ポリオレフィンベースエラストマーブロックコポリマーは、米国特許第3,985,826号明細書、米国特許第5,708,083号明細書及び米国特許第6,812,292号明細書でさらに記載されている。一実施形態において、コア層はエラストマー性有機ポリマー及び少なくとも1つの第2の有機ポリマー又は構成要素のブレンドを含み、コア層中のエラストマー性有機ポリマーの含有率は重量ベースで50%、70%又は90%超である。一実施形態において、コア層中のエラストマー性有機ポリマーの含有率は、重量ベースで50%を超えて100%まで、70%を超えて100%まで又は90%を超えて100%までである。有用なエラストマー性有機ポリマーは市販されていて、三井化学によるポリオレフィンベースエラストマーである、ノティオ(商標)PN−2070(ナノメートルレベルの結晶サイズを持つプロピレン−エチレンブロックコポリマー)(0.867g/cmのASTM D 792密度、230℃/2.16kgにて7dg/分のASTM D 1238メルトフローレート、800%超のASTM D 882破断時伸び、16MPaの縦方向及び横方向のASTM D 882引張弾性率、14MPaの縦方向及び横方向のASTM D 882破断時引張強度を有する);エクソンモービルによるポリオレフィンベースエラストマーである、ビスタマックス(商標)VM1100(プロピレン−エチレンベースランダムコポリマー)(0.862g/cmのASTM D 792密度及び230℃/2.16kgにて4dg/分のASTM D 1238メルトフローレートを有する);及びデクスコポリマー(Dexco Polymers)によるビニルアレーンベースブロックコポリマーエラストマーである、ベクター(VECTOR)(商標)4114A(ブロックコポリマーのSIS/SIブレンド)(0.92g/cmのASTM D 792密度及び200℃/5kgにて25dg/分のASTM D 1238メルトフローレートを有する)が挙げられる。
【0082】
本発明の実施形態において、コア層は、コア層及び本発明のフィルムの性能を改善するために、第1皮膜層について上に記載したような少なくとも1つの添加剤をさらに含む。一実施形態において、コア層は少なくとも1つの着色料を含む。一実施形態において、1つ以上の添加濃縮物がコア層中に重量ベースで0から30%で存在する。有用な添加濃縮物は市販されていて、着色料添加濃縮物であるアムパセット(商標)ベージュ6027Eが挙げられる。
【0083】
表7は、本発明のフィルムのコア層を形成するのに有用である組成物の例を重量パーセントベースで示す。
【0084】
【表7】
【0085】
第2皮膜層
本発明の実施形態において、第2皮膜層は少なくとも1つのシール性有機ポリマー及び少なくとも1つの抗菌剤を含む。一実施形態において、シール性有機ポリマーは、第2皮膜層のそれ自体若しくは本発明のフィルムの別の層への、異なるフィルムの層への、又は物品へのシールを可能にするいずれの熱可塑性有機ポリマーを含む。本発明の実施形態において、シール方法としては、例えば感圧性接着剤又は溶剤接着剤などの接着剤を用いたシール、積層接着剤並びに/又は圧力及び/若しくは熱を使用する積層によるシール、熱によるシール、上記のシール方法のいずれの組み合わせも挙げられる。一実施形態において、シール方法はヒートシール方法である。一実施形態において、ヒートシール方法は、加熱した棒を用いたシール、熱風を用いたシール、例えば赤外線放射若しくは高周波放射などの電磁放射源を用いたシール、又は上記のヒートシール方法のいずれかの組み合わせを含む。一実施形態において、シール性有機ポリマーは、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、スチレンベースホモポリマー若しくはコポリマー、ポリカーボネート、ポリウレタン、ハロゲン含有ポリマー、アクリレートベース若しくはメタクリレートベースホモポリマー若しくはコポリマー、第1皮膚層について及び以下で記載するようなアルケン不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体コポリマー、ビニルアルコール含有ホモポリマー若しくはコポリマー、又は上記のポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。本発明の実施形態において、シール性有機ポリマーはヒートシール性であり、ポリエチレン、アルケン不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体コポリマー、又は上記のポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、ポリエチレンはヒートシール性であり、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線形低密度ポリエチレン、超低密度ポリエチレン、ポリエチレンプラストマー、又は上記のポリエチレンのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマーはヒートシール性であり、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマー、エチレン−アクリル酸コポリマー、エチレン−メタクリル酸アルキルコポリマー、エチレン−アクリル酸アルキルコポリマー、エチレン−メタクリル酸コポリマーの金属塩を包含するアイオノマー、又は上記のコポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、エチレン−酢酸ビニルコポリマーはヒートシール性であり、重量ベースで10から40%の、16から36%の、又は22から32%の酢酸ビニル含有率を有する。一実施形態において、シール性有機ポリマーは第2皮膜層中に、重量ベースで51から99.99%、65から99.99%又は80から99%で存在する。有用なシール性有機ポリマーは市販されていて、セラニーズによるエチレン−酢酸ビニル(EVA)コポリマーであるアテバ(ATEVA)(登録商標)2810A(0.949g/cmのASTM D 792密度、190℃/2.16kgにて6dg/分のASTM D 1238メルトインデックス及び28重量%の酢酸ビニル含有率を有する)及びデュポン(商標)によるエルバックス(ELVAX)(登録商標)3182(0.95g/cmのASTM D 792密度、190℃/2.16kgにて3dg/分のASTM D 1238メルトインデックス及び28重量%の酢酸ビニル含有率を有する)が挙げられる。
【0086】
本発明の実施形態において、第2皮膜層の少なくとも1つの抗菌剤は、有機抗菌剤、無機抗菌剤又は上記の抗菌剤のいずれか2つ以上の混合物を含む。抗菌剤は殺菌性で微生物を死滅させることができるか、又は静菌性であり微生物の増殖若しくは生殖を防止することができる。微生物は、細菌、真菌及び原生動物を包含する微生物(microorganism)である。一実施形態において、有機抗菌剤は、例えばクエン酸などの植物化学物質を包含する天然抗菌剤、例えばトリクロサン及び4級アンモニウムハライドを包含する合成抗菌剤、又は上記の有機抗菌剤のいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、無機抗菌剤は金属イオン含有組成物を含む。一実施形態において、無機抗菌剤は銀イオン含有組成物、亜鉛イオン含有組成物、銅イオン含有組成物、スズイオン含有組成物、又は上記の組成物のいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、抗菌剤は静微生物性である無機抗菌剤である。一実施形態において、金属イオン含有組成物は、例えばイオン交換樹脂などの有機支持体上の金属イオン、例えばケイ酸塩ベースのゼオライト若しくはケイ酸塩ベースの粘土若しくはガラス若しくはセラミックなどの無機支持体上の金属イオン、又は上記の組成物のいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、第2皮膜層の少なくとも1つの抗菌剤は、抗菌剤添加濃縮物を形成するために熱可塑性ポリマー担体中に分散された抗菌剤を含む。一実施形態において、第2皮膜層の少なくとも1つの抗菌剤は抗菌剤機能付与ナノメートルサイズ充填剤添加剤を含み、ナノメートルサイズ充填剤は第1皮膜層に関して上に記載され、機能付与は充填剤の表面に抗菌剤を結合することを伴う。この機能付与によって、従来のマイクロメートルサイズの支持体又は充填剤上の抗菌剤と比較して、抗菌剤の粒径の小型化及び分散性の上昇並びに抗菌剤の効率及び持続性の向上をもたらすことができる。加えてナノメートルサイズ充填剤は、第1皮膜層に関して上に記載したように、従来のマイクロメートルサイズ充填剤に比べて性能をさらに改善することができる。一実施形態において、抗菌剤機能付与ナノメートルサイズ充填剤添加剤は、銀イオン含有組成物、亜鉛イオン含有組成物、銅イオン含有組成物、スズイオン含有組成物又は上記の組成物のいずれか2つ以上の混合物を包含する金属イオン含有組成物を含む無機抗菌剤を含む。一実施形態において、第2皮膜層の少なくとも1つの抗菌剤は、抗菌剤機能付与ナノメートルサイズ充填剤添加剤を包含して、抗菌剤添加濃縮物を形成するために熱可塑性ポリマー担体中に分散されている。一実施形態において、抗菌剤添加濃縮物の熱可塑性ポリマー担体は、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、スチレンベースホモポリマー若しくはコポリマー、ポリカーボネート、ポリウレタン、ハロゲン含有ポリマー、アクリレートベース又はメタクリレートベースホモポリマー若しくはコポリマー、アルケン不飽和カルボン酸若しくは不飽和カルボン酸誘導体コポリマー、例えばポリ(ビニルアルコール)を包含するビニルアルコール含有ホモポリマー若しくはコポリマーを包含するいずれの熱可塑性コポリマーも、又は上記のポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、抗菌剤添加濃縮物の熱可塑性ポリマー担体は、ポリエチレン、アルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマー又は上記のポリマーのいずれか2つ以上の混合物を包含する、上に記載したようにヒートシール性であるシール性有機ポリマーを含む。一実施形態において、第2皮膜層の抗菌剤は添加濃縮物中で第2皮膜層に送達され、添加濃縮物が抗菌剤及びポリ(ビニルアルコール)担体を含む。一実施形態において、抗菌剤添加濃縮物は、熱可塑性ポリマー担体中に分散された抗菌剤又は支持体若しくは充填剤上の抗菌剤を含み、抗菌剤又は支持体若しくは充填剤上の抗菌剤の含有率は、重量ベースで0.01から90%である。一実施形態において、第2皮膜層中の1つ以上の抗菌剤添加濃縮物の含有率は、重量ベースで0.01から30%である。有用な抗菌剤は市販されていて、A.シュルマン(登録商標)による銀イオンベース抗菌剤添加濃縮物である、ポリバッチ(登録商標)ABACT 422VA、及びウェルズプラスチックス(Well Plastics)によるBACTIGLAS(登録商標)AM91874;ナノバイオマターズによる特定のポリマー担体中の添加濃縮物として供給可能な銀ベース抗菌剤添加剤である、銀機能付与ナノメートルサイズ粘土充填剤添加剤のNANOBIOTER+(登録商標);ポリワン(PolyOne)による酸化亜鉛ベース抗菌剤添加濃縮物のアンチバクテリアル−PE(ANTIBACTERIAL−PE)(登録商標)CC10098866;ポリワンによるトリクロサンベース抗菌剤添加濃縮物のAMPE(登録商標)115283 CC10115283;及びバイオセーフ(BIOSAFE)(登録商標)による抗菌剤添加濃縮物MCX(登録商標)117653が挙げられる。
【0087】
本発明の実施形態において、第2皮膜層は、第2皮膜層及び本発明のフィルムの性能を改善するために、第1皮膜層について上に記載したような少なくとも1つの追加の添加剤をさらに含む。一実施形態において、第2皮膜層は粘着防止剤、スリップ剤、充填剤、脱臭剤又は上記の添加剤のいずれか2つ以上の混合物をさらに含む。一実施形態において、脱臭剤は、ベータ−シクロデキストリン、有機酸、例えばリシノール酸亜鉛などの脂肪族カルボン酸の金属塩、例えばアルミナなどのアルミニウム化合物、例えばシリカなどのケイ素化合物、例えば硫酸第一鉄などの鉄化合物、例えばケイ酸亜鉛などの亜鉛化合物、例えばゼオライトなどの粘土若しくは粘土誘導体又は上記の脱臭剤のいずれか2つ以上の混合物を包含する、臭気を吸収するいずれの材料も含む。一実施形態において、少なくとも1つの追加の添加剤を含有する1つ以上の添加濃縮物は、第2皮膜層に重量ベースで0から30%存在する。有用な追加の添加剤は市販されていて、複合スリップ剤/粘着防止剤添加濃縮物である、A.シュルマン(登録商標)によるポリバッチ(登録商標)1220 NG、ワッカーケミカル(Wacker Chemical)による脱臭剤添加剤であるベータ−シクロデキストリンの、カバマックス(CAVAMAX)(登録商標)W7及び脱臭剤添加濃縮物である、酸化アルミニウムを含有するアムパセット(登録商標)101787が挙げられる。
【0088】
表8は、本発明のフィルムの第2皮膜層を形成するのに有用である組成物の例を重量パーセントベースで示す。
【0089】
【表8】
【0090】
結合層
一実施形態において、本発明のフィルムは少なくとも1つの結合層をさらに含み、結合層は少なくとも1つの接着性有機ポリマーを含む。1つ又は複数の結合層の接着性有機ポリマーは、一方又は両方の皮膜層とコア層との間の結合又は接着を向上させ、可撓性を維持しながら層間剥離を防止することができる。一実施形態において、本発明のフィルムは2つの結合層を有し、2つの結合層は同じ組成物を有するか、又は2つの結合層は異なる組成物を有する。一実施形態において、結合層の接着性有機ポリマーは、第1又は第2皮膜層とコア層との間の結合又は接着を向上させるいずれの熱可塑性有機ポリマーも含む。一実施形態において、接着性有機ポリマーは、第1及び第2皮膜層について記載したようなアルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマー、第2皮膜層について記載したようなポリエチレン、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体グラフト構成要素がグラフトされたアルケン不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体コポリマー、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体グラフト構成要素がグラフトされたポリオレフィン又は上記の接着性有機ポリマーのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体グラフト構成要素は、3個以上の炭素原子を有する不飽和カルボン酸、3個以上の炭素原子を有する不飽和カルボン酸のエステル又は無水物を包含する不飽和カルボン酸誘導体又は上記のグラフト構成要素のいずれか2つ以上の混合物を含む。不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体グラフト構成要素は、アクリル酸、メタクリル酸、酢酸ビニル、グリシジルメタクリレート、無水マレイン酸又は上記のグラフト構成要素のいずれか2つ以上の混合物を包含する。一実施形態において、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体グラフト構成要素がグラフトされたポリオレフィンは、ポリエチレン若しくはポリプロピレンホモポリマーを包含するポリオレフィンホモポリマー、ポリエチレン若しくはポリプロピレンコポリマーを包含するポリオレフィンコポリマー又は上記のポリオレフィンのいずれか2つ以上の混合物を含む。一実施形態において、結合層の接着性有機ポリマーは、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸誘導体グラフト構成要素がグラフトされているエチレン−酢酸ビニルコポリマーを含む。有用な接着性有機ポリマーは市販されていて、デュポン(商標)による無水マレイン酸グラフトエチレン−酢酸ビニルコポリマー、バイネル(BYNEL)(登録商標)E418(0.95g/cmのASTM D 792密度及び190℃/2.16kgにて10.9dg/分のASTM D 1238メルトインデックスを有する)が挙げられる。一実施形態において、結合層は第1皮膜層について上に記載したような少なくとも1つの添加剤をさらに含む。
【0091】
フィルム構造、処理並びにそれの物品及び方法
一実施形態において、図5に示すように、本発明の多層ポリマーフィルムは、上表面及び下表面を有する第1皮膜層110、上表面及び下表面を有するコア層120であって、コア層の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在するコア層120並びに上表面及び下表面を有する第2皮膜層130であって、第2皮膜層の上表面がコア層の下表面の下に存在する第2皮膜層130を含む。一実施形態において、図6に示すように、本発明の多層ポリマーフィルムは、上表面及び下表面を有する第1皮膜層110、上表面及び下表面を有するコア層120、上表面及び下表面を有する結合層140であって、結合層の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在して、結合層の下表面がコア層の上表面の上に存在する結合層140並びに上表面及び下表面を有する第2皮膜層130であって、第2皮膜層の上表面がコア層の下表面の下に存在する第2皮膜層130を含む。一実施形態において、図7に示すように、本発明の多層ポリマーフィルムは、上表面及び下表面を有する第1皮膜層110、上表面及び下表面を有するコア層120であって、コア層の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在するコア層120、上表面及び下表面を有する第2皮膜層130並びに上表面及び下表面を有する結合層150であって、結合層の上表面がコア層の下表面の下に存在し、結合層の下表面が第2皮膜層の上表面の上に存在する結合層150を含む。一実施形態において、図8に示すように、本発明の多層ポリマーフィルムは、上表面及び下表面を有する第1皮膜層110、上表面及び下表面を有するコア層120、上表面及び下表面を有する結合層140であって、結合層140の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在して、結合層140の下表面がコア層の上表面の上に存在する結合層140、上表面及び下表面を有する第2皮膜層130並びに上表面及び下表面を有する結合層150であって、結合層150の上表面がコア層の下表面の下に存在し、結合層150の下表面が第2皮膜層の上表面の上に存在する結合層150を含む。
【0092】
本発明の多層ポリマーフィルムの実施形態は、図5図8に示すように、1つの層の押出物を形成するための線形又は環状ダイからの1つの層の押出、2つ以上の層の同時押出物を形成するための線形又は環状ダイからの2つ以上の層の同時押出、先に形成された層又は多層複合材上への1つ以上の層のコーティング、2つ以上の先に形成された層の積層又は上記のステップのいずれかの組み合わせを含む1つ以上のステップによって形成することができる。一実施形態において、本発明のフィルムは、フィルムの2つ以上の層の同時押出によって形成される。一実施形態において、本発明のフィルムは、フィルムを単軸延伸することによる配向フィルムであるか、フィルムを2軸延伸することによる配向フィルムであるか、又はフィルムが故意に単軸又は2軸延伸されていない非配向フィルム若しくはキャストフィルムである。
【0093】
本発明の多層ポリマーフィルム及びフィルムの層の厚さは、フィルム使用の特定の用途に応じて変えることができる。一実施形態においてフィルムは、13から254マイクロメートルの、36から198マイクロメートルの、又は58から142マイクロメートルの厚さを有する。フィルム層の厚さは、各層の具体的な機能及びフィルム使用の特定の用途に応じて、相互に対して変化することができる。一実施形態において、フィルムに引裂強度を提供するコア層は、第1及び第2皮膜層並びに、フィルム中に存在する場合には、いずれの1つ又は複数の結合層よりも比較的厚い。一実施形態において、コア層の厚さは、フィルムの厚さの70から90%、73から87%又は76から84%である。一実施形態において、コア層の厚さは、9から229マイクロメートル、26から172マイクロメートル又は44から119マイクロメートルである。一実施形態において、皮膜層及び1つ又は複数の結合層のそれぞれの厚さは、フィルムの厚さの1から20%、2から17%又は3から14%である。一実施形態において、皮膜層及び1つ又は複数の結合層のそれぞれの厚さは、0.2から51マイクロメートル、0.7から34マイクロメートル又は1.7から20マイクロメートルである。
【0094】
本発明の多層ポリマーフィルムは、実施例の項で詳説するように、とりわけ微生物活性が含まれる医療及びヘルスケア用途を包含する多様な用途で有用なフィルムを作製する性能特性の組み合わせを有する。一実施形態において、フィルムは、可撓性及び静音性、強度、ガス及び蒸気バリア特性、抗菌活性と、結果として生じる臭気の低減及び臭気制御並びに微生物活性によるガス及び蒸気発生の低減との組み合わせを有し、塩素を含まないか、又は本質的に塩素を含まない。一実施形態において、フィルムは、引張弾性率によって測定されたように、可撓性及び静音性、又は雑音の低減を有し、より低い引張弾性率を有するフィルムは、より高い引張弾性率を有するフィルムよりは可撓性であり、静音性である。一実施形態において、フィルムは、縦方向及び横方向の両方で138MPa、108MPa又は78MPa未満のASTM D 882引張弾性率を有する。一実施形態において、フィルムは、引裂強度によって測定されるような強度又は靭性を有する。一実施形態において、フィルムは、縦方向及び横方向の両方で少なくとも100グラム重、164グラム重又は228グラム重のASTM D 1922引裂強度を有する。一実施形態において、フィルムはガスバリアとして機能し、ここでフィルムは37℃及び90%相対湿度にて測定した400、367又は334cm/(m−日−気圧)未満のASTM F 1927酸素透過率を有する。一実施形態において、蒸気バリアとして機能し、ここでフィルム37℃及び100%相対湿度にて測定した30、27又は24g/(m−日−気圧)未満のASTM F 1249水蒸気透過率を有する。一実施形態において、フィルムは抗菌剤を含有し、抗菌活性並びに結果として生じる臭気の低減及び臭気制御並びに微生物活性によるガス及び蒸気発生の低減を提供する。一実施形態において、フィルムは塩素を含まないか、又は実質的に塩素を含まず、重量ベースで1%、0.7%又は0.4%未満の塩素含有率を有する。
【0095】
一実施形態において、物品は本発明のフィルムを含む。本発明のフィルム及び本発明のフィルムを含む物品は、上に記載したような多様な用途、とりわけガス及び蒸気バリア並びに抗菌活性を必要とする又はガス及び蒸気バリア並びに抗菌活性から恩恵を受ける用途において有用である。一実施形態において、物品は本発明のフィルムを含み、この物品は医療又はヘルスケア用途で使用される。一実施形態において、医療又はヘルスケア用途で使用される物品は、オストミーパウチ、蓄尿バッグ、創傷包帯又は疾患処置に使用される透析材料を含む。一実施形態において、医療又はヘルスケア用途で使用するための物品、例えば、オストミーパウチの外部又は外側表面は、本発明のフィルムの第1皮膜層を含み、物品の内部又は内側表面は本発明のフィルムの第2皮膜層を含む。
【0096】
本発明の実施形態において、フィルムから製造された物品におけるガス及び蒸気バリア並びに抗菌活性を提供する方法は、a)フィルムであって、少なくとも1つのガス及び蒸気バリア有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有する第1皮膜層、少なくとも1つのエラストマー性有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有するコア層であって、コア層の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在するコア層、並びに少なくとも1つのシール性ポリマー及び少なくとも1つの抗菌剤を含み、上表面及び下表面を有する第2皮膜層であって、第2皮膜層の上表面がコア層の下表面の下に存在する第2皮膜層を含むフィルムを提供することと、b)フィルムを含む物品を提供することを含む。一実施形態において、フィルムから製造された物品における微生物活性による臭気制御並びにガス及び蒸気の低減を提供する方法は、a)フィルムであって、少なくとも1つのガス及び蒸気バリア有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有する第1皮膜層、少なくとも1つのエラストマー性有機ポリマーを含み、上表面及び下表面を有するコア層であって、コア層の上表面が第1皮膜層の下表面の下に存在するコア層、並びに少なくとも1つのシール性ポリマー及び少なくとも1つの抗菌剤を含み、上表面及び下表面を有する第2皮膜層であって、第2皮膜層の上表面がコア層の下表面の下に存在する第2皮膜層を含むフィルムを提供することと、b)フィルムを含む物品を提供することを含む。本発明のフィルムは、受動ガス及び蒸気バリア特性を有する第1皮膜層を、能動的抗菌剤を有する第2皮膜層と組み合わせている。本発明のフィルムは、第1皮膜層にてバリア特性により受動的に、第2皮膜層にて抗菌剤の抗菌活性により能動的に臭気を制御することができる。加えて本発明のフィルムは、第2皮膜層中の抗菌剤の抗菌活性による微生物活性から発生したガス及び蒸気を低減することができる。蓄積したガス及び蒸気を放出する必要を低減又は排除することができるオストミーパウチを包含する本発明のフィルムを含む物品は、臭気制御と微生物活性によるガス及び蒸気の低減との組み合わせから恩恵を受けることができる。
【実施例】
【0097】
実施例1
(i)1つ以上の抗菌剤及び(ii)1つ以上の抗菌剤促進剤を含む好ましい実施形態フィルムの抗菌特性をさらに例証するために、以下の試験を行った。
【0098】
抗菌マスターバッチ12kgは、「アテバ」(登録商標)から入手可能な2810Aという名称のEVA及び9.63%の「BACTIBLOCK」(登録商標)101R1.41を入手して組み合わせることによって産生した。抗菌添加剤「BACTIBLOCK」(登録商標)の選択量を、本明細書に記載する抗菌促進剤を含有する多様なポリマー組成物に添加した。対照組成物も以下でより詳細に記載するように調製した。ポリマーフィルム試料を組成物から形成した。次に微生物に対する試料の効果を評価した。
【0099】
抗菌剤の濃度は2.5%であった(得られた材料の予備分析は、JIS Z 2801に従って、この特定の添加量に対して5.39のR値を示した)。続いて、7種類の異なるフィルムを得て、その抗菌効果を評価した。試料は、1つの活性面が修飾EVAを有する(約10μm)、厚さおよそ100μmの多層フィルムから成る。用いた条件下で大腸菌の増殖に対して著しい殺生物特性を示したのはこれらの試料のうち2つのフィルムのみであったのは、おそらく抗菌生成物の添加量が少なかったためである。
【0100】
次にさらに5つの異なるフィルムを調製して、下の表9に示すように、その抗菌有効性について評価した。
【0101】
【表9】
【0102】
抗菌ポリマーフィルムの有効性を試験するために、動的接触条件下で固定抗菌剤の抗菌活性を決定するための標準試験方法(ASTM E2149)を使用して、細菌増殖を評価した。
【0103】
この方法に従って、フィルム試験片1.5gを、pH7.4のホスフェート緩衝溶液10mLを含有する試験管に導入した。続いて試験管に対数増殖中期の10細胞/mLの大腸菌(CECT 516)を接種して、リストアクション振とう器(160rpm)内で25℃にて24時間インキュベートした。異なる内部時間(3、6、12及び24時間)に、TSAプレート上での継代培養による細菌数を数えた。
【0104】
図4は、異なるインキュベーション時間(0、3、6、12、24)における試料の細菌数を示す。各値は、2個の試験管の平均値を表す。図4は、25℃及び160rpmにて24時間にわたる大腸菌の増殖について試験を行ったフィルムの抗菌有効性を示す。この図より、微生物(microorganism)の最適な増殖はフィルムなしの対照試料及び非修飾フィルムを有する対照試料で観察することができ、試験終了時に7対数単位に近い細菌濃度に達した。これに対し、抗菌剤を有する試料は著しい抗菌効果を示した。
【0105】
表10は、各試料及び時間間隔について、非修飾フィルムを入れた試験管と比較した微生物減少のパーセントを示す。
【0106】
【表10】
【0107】
詳細には、微生物減少パーセントは、以下の式によって計算した:減少%=(CFU/mL対照−CFU/mL試料)/CFU/mL対照*100。
【0108】
表10に見られるように、6時間のインキュベーションでは全ての試料で90%を超える微生物減少が得られた。試料間の差はごく僅かであったが、フィルム1371−119は、試験開始時からより良好な抗菌特性を与えるように思われた。
【0109】
試験を行った試料は全て、用いた条件下で大腸菌増殖に対して著しい殺生物特性を示した。
【0110】
実施例2−4では、皮膜層、コア層及び/又は結合層を有する多様な多層フィルムを評価した。
【0111】
実施例2
非配向フィルムであるフィルムを形成するために、線形ダイによる同時押出によって厚さ81マイクロメートルの4層フィルムを調製した。フィルム構造を図6に示した。第1皮膜層は、フィルム厚の8%である厚さを有し、表6の実施例4の第1皮膜層から形成した。結合層は、フィルム厚の8%の厚さを有し、重量ベースで100%の無水マレイン酸グラフトエチレン−酢酸ビニルコポリマーであるデュポン(商標)のバイネル(登録商標)E418を含有していた。コア層は、フィルム厚の79%の厚さを有し、表7の実施例2のコア層から形成された。第2皮膜層は、フィルム厚の5%の厚さを有し、表8の実施例3の第2皮膜層から形成された。
【0112】
フィルム実施例3(比較)
比較実施例3のフィルムは、84マイクロメータの厚さを有する市販のフィルムであった。実施例3のフィルムは、内側コア層の両側の2つの外側皮膜層より成る構造を有していた。2つの皮膜層はそれぞれエチレン−酢酸ビニルコポリマーを含有して、コア層はポリ(ビニリデンクロライド)を含有していた。
【0113】
表11にフィルム実施例2及び実施例3の物理的特性を挙げる。
【0114】
【表11】
縦方向/横方向で測定したASTM D 882引張弾性率。
縦方向/横方向で測定したASTM D 1922引裂強度。
37℃及び90%相対湿度で測定したASTM F 1927酸素透過率(OTR)。
37℃及び100%相対湿度で測定したASTM F 1249水蒸気透過率(MVTR)。
【0115】
表12及び13は、本発明のフィルムの抗菌活性を示す。
【0116】
【表12】
A.シュルマン銀イオン含有抗菌剤添加濃縮物6重量%を含有する抗菌フィルム試料。
対照フィルムは抗菌剤を含有していなかった。
表面抗菌活性は、JIS(日本工業規格)Z 2801大腸菌の試験方法(NBRC 3972)によって測定した。活性は、初期細菌培養から24時間後に残存する生細菌の数と、減少パーセントとして表される効力とに基づいていた。
【0117】
【表13】
フィルム試料は、A.シュルマン銀イオン含有抗菌剤添加濃縮物6重量%を含有する第2皮膜層を有していた。
フィルム試料は、A.シュルマン銀イオン含有抗菌剤添加濃縮物9重量%を含有する第2皮膜層を有していた。
動的接触条件下での抗菌活性は、ASTM E 2149−01クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(ATCC # 4352)の試験方法によって測定した。活性は、30、60及び120分の接触時間後に対照試料と比較した細菌における減少パーセントに基づいていた。
【0118】
表14は、実施例2及び実施例3のフィルムから作られた物品についての臭気制御及びガス蓄積性能評価を示す。
【0119】
【表14】
等寸法のパウチをフィルム実施例2(抗菌剤を含有)及び実施例3(抗菌剤を含有せず)から作り、臭気制御及びガス蓄積性能を評価した。各パウチを造園用マルチ2グラム及び低温殺菌乳60mlの牛乳組成物で密閉して、次に40℃にて24時間加熱した。
パウチの臭気は、委員会が加熱直後及び加熱72時間後に、0(臭気なし)から5(最大の臭気)のスケールで評価した。
パウチのガス蓄積は、加熱72時間後に委員会が0(パウチの膨潤なし)から5(パウチの最大膨潤)のスケールで評価した。並行評価では、フィルム実施例2及び実施例3から、微生物活性ではなく酵素活性によってガス/蒸気を発生する刻みタマネギ20グラムを含有する等寸法パウチを作った。フィルム実施例2及び実施例3によるどちらのタマネギ含有パウチも、72時間後のガス蓄積の評価は5を有していた。
【0120】
本発明は、創傷包帯若しくはオストミー器具、失禁用機器又はカテーテルなどの他の機器などの医療機器であって、抗菌、抗ウイルス及び/又は抗真菌活性を有する安定化組成物を含む医療機器に関する。本発明のオストミー器具は、本発明による組成物を含む、オストミーバッグ若しくはボディサイド部材又は閉止具などのいずれのオストミー機器でもよい。
【0121】
おそらく他の多くの恩恵が、この技術の今後の応用及び開発から明らかになるだろう。
【0122】
本明細書に記載された全ての特許、公開出願及び論文は、その全体が参照により本明細書に援用されている。
【0123】
本明細書に記載した1つの実施形態のいずれか1つ以上の特長又は構成要素を別の実施形態の1つ以上の他の特長又は構成要素と組み合わせられることが理解されるであろう。このため本発明は、本明細書に記載する実施形態の構成要素又は特長のありとあらゆる組み合わせを包含する。
【0124】
上に記載したように、本発明は、先に公知の組成物、フィルム及び実施に関連する多くの問題を解決する。しかし、本発明の性質を説明するために本明細書に記載及び例証された構成要素及び操作の詳細事項、材料及び配置の多様な変更が、添付した請求項に示すように、本発明の原理及び範囲から逸脱することなく当業者によって行われ得ることが認識される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8