(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記止め具は挿入体を更に備え、前記挿入体は前記くさびと係合状態にあって、前記くさびが前記第1および第2の穴の中へ押し込まれると前記くさびに沿って平行移動し、前記スプールに相対的に移動可能で前記スプールの前記回転によってもたらされる有効な調整代を増やす、請求項1に記載の摩耗アセンブリ。
前記くさびおよび前記挿入体のそれぞれには、前記くさびの回転によって前記くさびが挿入体に沿って平行移動するように、一つに係合するねじが形成される、請求項3に記載の摩耗アセンブリ。
前記スプールは前記摩耗部材に接触する第1の支持部と、前記支点に接触する第2の支持部と、前記第1および第2の支持部を相互に連結するステムとを備え、前記くさびが前記第1および第2の穴の中に押し込められると前記スプールが前記支点の周りを回転するように、前記ステムが前記くさびを係合するための前記ステムの長さに沿って湾曲した凹状の前面を備える、請求項1に記載の摩耗アセンブリ。
前記くさびおよび前記スプールのそれぞれには、前記くさびの回転によって前記くさびが前記スプールに沿って平行移動するように、一つに係合されるねじが形成される、請求項6に記載の摩耗アセンブリ。
前記くさびはねじを備え、前記挿入体は前記くさびの前記ねじと係合するための部分的なねじを備え、前記くさびの挿入体に対する相対的な回転によって前記くさびが下方向に動く、請求項8に記載の止め具。
前記スプールは弓形の内側面を有する凹みを備え、前記弓形の内側面は前記くさびが下方向に動かされると前記挿入体がそれに沿って動く経路を規定する、請求項8に記載の止め具。
前記第2の支持部は前記支持構造に接触して支点を規定し、前記くさびが前記第1の方向に動かされるとその支点の周りを前記スプールが回転して前記第1の支持部を後方へ動かす、請求項15に記載の止め具。
前記ステムは凹みを備え、前記挿入体がその凹みの中に収容され、前記凹みは前方向に開放されて前記くさびとの係合のために前記挿入体の前記前面を露出する、請求項18に記載のスプールアセンブリ。
前記挿入体を前記弓形の面から分離しようとする外向きの力を加え、前記挿入体と前記くさびの間をより確実に係合する弾性部材を備える、請求項20に記載のスプールアセンブリ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[005]掘削歯用の止め具は一般的に細長いピン部材であり、アダプタおよび歯先が協働して規定する開口に適合する。開口は、米国特許第5,469,648号に示すようにアダプタの突出端の側部に沿って規定されてもよく、または米国特許第5,068,986号に示すように突出端を通過してもよい。どちらの場合も、止め具は、ハンマを用いて挿入および取り外しを行う。このようなハンマで止め具を叩くことは厄介な作業であり、作業者が怪我する危険がある。
【0006】
[006]止め具が使用中に外れ、それに伴って歯先が脱落しないように、止め具は一般に開口にきつく収められる。この嵌合は、歯先にある部分的に不整列の穴、止め具用開口を規定するアダプタ、開口内またはピン内部のゴム部材の介在、および/または止め具と開口のわずかな寸法差に影響を受ける場合がある。しかし容易に理解できるように、開口が止め具を受ける嵌合度が上がると、止め具をハンマでアセンブリに出し入れすることに伴う困難さと危険度が増す。
【0007】
[007]さらに止め具は、多くの場合歯先をアダプタに実質的に締結する能力に欠けることが多い。従前の止め具方式にはゴム部材が備えられて、摩耗部材を支持構造に多少は締結しているが、掘削歯に使用中の負荷がかかっているときは、ゴムには確実な締結に必要な強度が不足していて、その効果は限られる傾向がある。ほとんどの止め具も、部品の摩耗時に再締結する能力を何ら備えていない。その結果、掘削歯に使用される止め具の多くが、部品摩耗および締結力低下により脱落しやすい。調整代すなわち再締結能力を提供する従前の止め具はねじまたはくさびに依存しがちで、一般に取り外しの困難さおよび/または安全性の問題を抱える。
【0008】
[008]固定装置の欠点は歯先をアダプタへ取り付けることだけに限定されない。別の例では、アダプタは掘削バケットの縁に取り付けられる摩耗部材であり、アダプタに代わって支持構造を規定する。システムの摩耗のほとんどは歯先であるが、アダプタも摩耗し、ついには交換しなければならない。硬い鋼材を使用できるようにアダプタを機械的にバケットの縁に取り付けて、現場で交換できるようにするのが一般的である。一般的な1つの方法は、米国特許第3,121,289号(
図8参照)に開示されているようなWhisler型アダプタを用いることである。従来のWhislerシステムでは、アダプタはバケット縁をまたぐ二股の脚で形成される。アダプタ脚およびバケット縁には止め具を受けるための整列された開口が形成される。このような環境の止め具は、全体にC形状をしたスプールと、くさびとを備える。スプールの腕はアダプタ脚の後端の斜面を覆う。脚の斜面および腕の内側表面はそれぞれ後方かつ縁から離れる方向に傾く。次に、揃った開口内にくさびをハンマで叩き入れてスプールを後方へ付勢する。スプールのこの後方への動きがアダプタ脚を縁に強く押し付けて、使用中のアダプタの動きまたは解除を防ぐ。
【0009】
[009]しかし、Whisler型止め具の開口にくさびをハンマで出し入れすることはどちらかと言えば困難であり潜在的に危険である。くさびをアセンブリから外すために接近できるようにバケットは必ず全体に反っているため、取り外しは特に困難になることがある。バケットのこの向きの中で、作業者はバケットの下から開口に近づき、大きなハンマでくさびを上方へ動かさなければならない。バケットが大きいことから危険性は明らかである。また、修理中にくさびが飛び出す可能性があるため、くさびを相手のスプールに仮溶接するのが一般的で、これによりいかなる再締結も除外され、くさびの取り外しを余計に難しくする。
【0010】
[010]多くのアセンブリにおいて、摩耗部材の取り替えが必要なとき、他の要因によって止め具の取り外しと挿入の難しさが更に増大する。例えば横方向に挿入された止め具など(例えば米国特許第4,326,348号参照)では、近隣構成要素が近く、止め具をアセンブリにハンマで出し入れすることが困難となる。微粉もまた止め具を受ける開口内で影響を与えることがあり、止め具に近づいて取り外すことが困難になる。
【0011】
[011]掘削装置に使用する目的で、ハンマを要しない止め具を作り出すいくつかの試みがなされてきた。例えば、米国特許第5,784,813号および米国特許第5,868,518号は、歯先をアダプタに固定するためのねじ駆動式くさび型止め具を開示しており、米国特許第4,433,496号および米国特許第5,964,547号は、アダプタをバケットに固定するためのねじ駆動式くさびを開示している。これらの装置ではハンマ作業は不要であるがそれぞれ多数の部品が必要で、したがって止め具がより複雑かつ高価になる。また、微粉が入ると摩擦が増えねじ結合を邪魔するため、取り外しが困難になる。さらに、標準ねじの使用のせいで、微粉がねじのまわりに増えると「固着」し、ねじが腐食損傷してボルトの回転および部品の取り外しが著しく困難になる。
【0012】
[012]米国特許第6,986,216号、米国特許第7,174,661号、および米国特許第7,730,652号は、ねじが切られたくさびによる摩耗アセンブリ用固定装置を開示している。ねじが切られたくさびは、スプールまたは摩耗部材に形成されたねじと契合し、回転してくさびを開口に出し入れする。これらのシステムは最小限の構成要素しか必要とせず、ハンマ作業が不要で、従前のシステムに伴う取り外しの問題を軽減する。しかしこれらは、縁または他の支持構造と確実に締結するか、摩耗発生後に効果的に再締結するための十分な調整代を提供できない。
【0013】
[013]通常、採掘作業では、大型ケーブルショベルまたは浚渫機械などの大型の土木機械は、機械専用のバケットを3個有する場合がある。これらのバケットは、機械で積極的に使用されるバケットが1つ、機械から外して再生工場にあるバケットが1つ(例えば、種々の摩耗部材を取り外し、新しい摩耗部材に置き換え、掘削歯の基部用の縁および覆い取り付け領域の再生のため)、および「待機ライン」バケットが1つである。待機ラインバケットは新品バケットまたは再生工程を経て作業への復帰準備ができたバケットである。バケット再生の完了に数ヶ月掛かることがあるため、待機ラインバケットが必要である。待機ラインバケットは計画された点検期間に従って、あるいはたまたま、機械のバケットに大きな故障が起きたときに使用できる。再生工程は非常に長く掛かるため、鉱山は緊急時に機械に取り付けられるバケットを持たないわけにはいかない。休止時間およびそれに付随する経済的損失はあまりにも膨大になる。
【0014】
[014]大きな採鉱作業(例えば、複数のケーブルショベルおよび/または浚渫機械が関係する作業)は各機械に専用の3個のバケットをもたない場合もあるが、それでも通常は十分な数の待機ラインバケットを必要に応じて用意し、過剰な休止時間を防ぐことになる(すなわち、バケットの再生業務完了を待つ間の機械の非稼働を避ける)。多数の待機ラインバケットを必要とすることは、採鉱作業に大きな経費が掛かることを示す。
【0015】
[015]縁の再生はバケットの再生工程で一番時間が掛かる部分になりやすく、再生の時間間隔を延長することによって再生回数を減らすことは大きな節約になる。バケットの縁または他の部品の再生回数すなわち頻度をそのように低減すると、最終ユーザはこれら再生に必要な費用および時間を節約することになるとともに、掘削バケットの機械からの取り外しに伴う休止時間すなわち資材移動に使用できないことを避けることになる。縁の再生回数低減は、交換用バケットの在庫削減、これら再生実施に要する溶接工の人数削減、および容易に操業可能で都合が良いときに変更可能な寛容なシステムという観点で大きな節約となり得る。
【0016】
[016]バケット縁は使用中にかなりの酷使を受け相当の負荷が掛かるため、故障を回避する強度と完全性の維持が求められる。縁を溶接して縁の先端をその元の形状に再生するが、それも正しく再生できなければ危険性をもたらす。亀裂の発生を防ぐには、縁を予備加熱しなければならず、溶接工程を注意深く守らなければならない。縁に亀裂が入ると、バケットを機械から取り外し修理する必要が生じる。しかし、縁の溶接修理が度々必要でなければ見込まれる故障モードが減るか限定され、その結果縁の亀裂または故障の機会が最小になる。
【0017】
[017]バケットの縁を修理または再生する必要性に影響する可能性がある因子の1つは、摩耗部材を縁に結合するためのシステムが、部品を一つに確実に係合させることができるか否かに関係する。結合システムは、摩耗部材を縁に据えるため、摩耗部材を縁から十分に離すことができなければならない。この移動量を「調整代」と呼ぶ(例えば、結合システムは摩耗部材を縁から十分に離れた「調整代」まで、摩耗部材と縁の間の何らかの間隙または距離だけ動かさなければならない)。例えば結合システムが摩耗部材を縁からわずかの距離しか動かせなければ、その結合システムは調整代能力が小さく、そのようなシステムでは、採鉱作業者が縁をより頻繁に再生することを余儀なくされる可能性がある(摩耗部材を移動させ縁にしっかり当て付けて保持するのに十分な調整代を結合システムが確実に有するようにするまで)。使える調整代が少ない結合システムでは、縁の修理も比較的精密に行って、結合システムが確実に摩耗部材を動かせ、縁に保持できるようにしなければならない。摩耗部材が支持構造にしっかり保持されないシステムでは摩耗が一層生じやすく、摩耗部材がさらに脱落しやすい。おそらく縁の早期摩耗が一番の関心事項であるが、アダプタなど他の支持構造の早期摩耗も、より頻繁な交換による休止時間および費用を増加させる。
【0018】
[018]したがって、摩耗部材をバケットの掘削端に固定するための解除可能な結合システムの改良が採鉱産業および建設産業では歓迎されることになる。簡単かつ安全に取り付け取り外しができ、使用中に信頼性があり、十分な調整代を可能にし、バケット再生間隔を延長可能にし、種々の部品の製造工程における広い寸法ばらつき範囲を許容し、機械の短い休止時間につながる結合システムが必要とされる。そのような改良は、待機ラインバケットの必要性とバケットの掘削端の再生に伴う費用とを減らすことによって経費削減をもたらす。
【課題を解決するための手段】
【0019】
[019]本発明は、分離可能な部品が解除自在に確実、簡単、かつ信頼性のある方法で一つに保持される改良されたアセンブリに関する。本発明は、掘削装置および掘削作業に関連する摩耗部材を支持構造に固定するのに特に役立つ。本発明の結合アセンブリは簡単に使用でき、再使用可能で、摩耗アセンブリに確実に保持され、かつ摩耗部材を支持構造に効果的に締結するように作動する。
【0020】
[020]本発明の一態様は、摩耗部材を支持構造に固定するのに使用するための止め具に関係し、この支持構造はくさびとスプールとを備え、スプールは支持構造の支点の周りを旋回すなわち回転して、くさびがアセンブリの中へ押し込められると摩耗部材を支持構造に締結し確実に保持する。従前のスプールの後方平行移動とは対照的に、スプールの旋回が大きな調整代をもたらして、その下にある支持構造がかなり摩耗した後でも緊密な装着を確保する。本発明は摩耗部材を効果的に再締結でき、係合し合う部品の間で製造許容誤差を大きく取ることができる。調整代が大きいため、縁の先端ならびに他の構成要素の再生が必要になるまでの寿命が延び、バケット在庫、労務費、および/または装置の休止時間に関係した経済的損失を削減することから経費削減につながる。さらに、大きな調整代がハンマ不要の止め具で好ましく達成されて、安全性を改善する。
【0021】
[021]本発明の別の態様は、大きな調整代が比較的小型かつ内部収納式止め具の形態で得られる結合アセンブリに関連する(すなわち止め具は、一つに結合される構成要素に設けられた開口内に完全にまたはほぼ完全に収納される)。提供される大きな調整代はまた、結合アセンブリの組み立ておよび分解を支援する。その理由は、種々の部品を締結完了まで互いに比較的緩く組み合わせることができ、くさびを緩めたときに種々の部品間の間隙を比較的大きく作ることができる(そのため、分解が容易迅速である)。さらに、止め具が小型であることにより、止め具の大部分または全部を摩耗部材および/または支持構造に設けられた開口内に収めることができ、それによって止め具およびその部品を資材流動から保護する(例えば、スプールおよびくさびの使用中の岩石または他の資材との接触による損傷を防ぐ)。
【0022】
[022]本発明の一態様では、摩耗部材を支持構造に固定するための止め具は、くさびとスプールとを備える。スプールには軸方向に凹状の係合表面が形成され、その中にくさびを契合する。この凹状の係合表面がスプールを支持構造上の支点の周りに旋回すなわち回転させて、調整代を増やす。
【0023】
[023]本発明の別の態様では、摩耗部材を支持構造に固定するための止め具は、くさびと、スプールと、挿入体とを備え、全てが互いに相対的に動いて、支持構造上の支点周りのスプールの旋回すなわち回転をもたらして調整代を増やす。可動式の挿入体を使用することによって、調整代量は、場合によっては従前のくさびおよびスプールシステムの場合の3〜4倍まで大きくなる。
【0024】
[024]本発明の一態様では、挿入体はスプールに可動式に取り付けられてくさびと係合する。くさびがアセンブリに出入りするように駆動されると、くさびおよびスプールと挿入体との係合によってスプールが回転して摩耗部材の支持構造への装着を締結する。
【0025】
[025]本発明の別の態様では、挿入体およびスプールはくさびと反対側で係合し、支持構造に固定され、そのためくさびがアセンブリに出入りするように駆動されると挿入体およびスプールがそれぞれ旋回すなわち回転する。
【0026】
[026]本発明の別の態様は、くさびと挿入体の間を弾性的に締結する結合アセンブリに関する。この特徴は、使用中の挿入体とくさびの間の確実な接触の維持を助け、挿入体をスプールにくさび無しで固定し(出荷、取り付け、および取り外し中など)、弾性的調整代手段として限定的締結の利点をもたらす。
【0027】
[027]本発明の別の態様では、摩耗部材の一部は支持構造を覆い、穴を備える。穴は、覆い部を貫通して第1の方向に延びてくさびとスプールの止め具アセンブリを受ける第1の部分と、第1の部分の側方外側であって棚状部があるため覆い部の一部だけを通って延びる第2の部分とを有する。スプールの支持部が棚状部を超えて延びて、摩耗部材が支持構造から離れないようにし、スプールを穴内にくさび無しで所定位置に保持し、使用中はスプールを第1の方向に直角方向に付勢する力を加えない。
【0028】
[028]本発明の一態様では、棚状部は穴の後端全体にわたって延びる。別の態様では、棚状部は穴の第1の部分の横方向だけに設けられる。どちらの場合も、第2の部分は好ましくは後壁を備え、これをスプールが押して摩耗部材を支持構造に締結する。穴の第2の部分は好ましくは前壁も備えて穴の第1の部分の後方端にスプールを保持し、くさびの挿入を容易にする。
本発明の所定の実施形態例は、例えば、以下の通りである。
[形態1]
掘削装置用の摩耗部材であって、掘削される資材と係合するよう構成された前端と、前記掘削装置に固定された支持構造を覆う取り付け部を有する後端と、前記取り付け部に規定され、前記取り付け部を通って第1の方向に延びてくさびとスプールによる止め具システムを収容して前記摩耗部材を前記支持構造に保持する第1の部分を有する穴と、前記取り付け部を部分的に通過し前記第1の方向に延び、前記第1の部分の外側側方であって前記第1の方向に横断的に延びる棚状部を有して、前記スプールを前記第1の方向に横断する方向にも強制せずに前記スプールの一部を収容する第2の部分とを備え、前記くさびの前記穴への挿入前に前記棚状部が前記スプールを所定位置に保持する、
摩耗部材。
[形態2]
前記棚状部は前記穴の前記後端の全体を側方に横断して延びる、形態1に記載の摩耗部材。
[形態3]
前記棚状部は前記穴の前記第1の部分の外側側方のみに延びる、形態1に記載の摩耗部材。
[形態4]
前記穴は後壁を備え、前記くさびが前記穴に挿入されると、この後壁を前記スプールが押して前記摩耗部材を前記支持構造に緊密に装着する、形態1に記載の摩耗部材。
[形態5]
前記穴の前記第2の部分は前記スプールの前方への動きを防止する前壁を備えて、前記くさびを前記穴へ挿入するための空間を維持する、形態1に記載の摩耗部材。
[形態6]
弾性部材は使用中に前記止め具を押し付けるよう設けられる、形態1に記載の摩耗部材。
[形態7]
摩耗部材を掘削装置に取り付けるための方法であって、
前記摩耗部材を前記掘削装置に固定された支持構造の上に配置するステップを備え、前記支持構造は第1の穴を有し、前記摩耗部材は掘削される資材と係合する前端および第2の穴を備える後部取付端を有し、さらに
スプールを前記第1および第2の穴に挿入して、前記スプールが前記摩耗部材および前記支持構造と接触するようにするステップと、
先細りのくさびを、前記スプールが前記摩耗部材を押して前記摩耗部材を前記支持構造にさらに押し付け、前記摩耗部材を前記支持構造に緊密に締結するように前記第1および第2の穴に挿入して既に挿入されている前記スプールと係合させて前記スプールを前記スプールの前記支持構造との接触の周りに回転させるステップとを備える
方法。
[形態8]
前記挿入体は、前記スプールが前記第1および第2の穴に挿入される前に前記スプールに連結され、前記くさびが前記第1および第2の穴に挿入されると前記挿入体が前記くさびと係合する、形態7に記載の方法。
[形態9]
前記挿入体は、前記くさびが前記第1および第2の穴に挿入されると前記支持構造に連結されて前記くさびと係合する、形態7に記載の方法。
【0029】
[029]本発明の他の態様、効果、および特徴を以下にさらに詳しく説明する。本発明による構造の例に関する以下の詳細説明によって本発明の他の態様、効果、および特徴が理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[067]以下の説明および添付図は、分離可能な部品を解除自在に1つに保持するための本発明の実施例による結合アセンブリの特徴部の例を開示する。本発明は広く応用可能であるが、特に掘削装置および掘削作業において摩耗部材を支持構造に解除自在に固定する場合に役立つ。摩耗部材は、例えば歯先、アダプタ、覆い、または他の交換可能な構成要素でよい。本発明による係止機能を用いることができる機械装置の例には、掘削用ショベル、浚渫用バケット、フロントエンドローダ、油圧ショベル、浚渫用切削機、鉱石運搬用ダンプ(Load haul dumper)用バケットがあるがこれらに限定されない。
【0033】
[068]
図1Aおよび1Bは、本発明による解除自在の結合アセンブリを用いて一つに保持される摩耗部材および縁の実施例を説明する。縁102は種々の掘削機械のいずれか用のバケット(図示せず)の一部である。摩耗部材106が、縁102に取り付けられる覆いとして図示され、止め具150によって縁に固定される。覆い106は穴すなわち開口110を備え、この開口は、覆いを縁に保持する止め具150を受けるための縁の穴152とほぼ整列する(
図2A〜3B)。覆い(摩耗部材)を縁(支持構造)に取り付ける本実施例が、本発明の別の態様に関する説明の便宜上用いられる。しかし、本発明の態様は、他の摩耗部材を他の支持構造に取り付けるなど、他の構成要素を一つに固定するためにも使用可能である。本発明の態様は、アダプタを縁にまたは歯先をアダプタに固定するためのあくまでも実施例として用いられる。さらに、これらの様々な他の部品は、本発明から逸脱することなく他の構造および/または形状を取ることができる。
【0034】
[069]
図1Bに示す様に、縁102はその幅方向W
1に沿って配置された複数の摩耗部材106を備えることができる(
図1Bには3つの摩耗部材106が示されている)。この実施例では、摩耗部材は相隔たる覆い106として図示されている。一般に掘削歯(図示せず)は縁の覆いの間に取り付けられることになる。あるいは、縁に掘削歯を必要としない用途の場合は、覆いを図よりも幅広にして覆いの間の間隙を省いてもよい。各摩耗部材106は止め具150によって縁に固定される。
【0035】
[070]
図3Aおよび3Bは、丸い前端151を有する従来の縁102を説明する。ただし、異なる構造および他の前端を有する他の縁を用いてもよい。縁102は穴すなわち開口152を備え、その中に本発明による止め具150が収められる。開口152は前壁154と後壁156とを備える。後壁156は、2つのほぼ平行な終端部156a、156b(垂直方向になるように図示)と、終端部156a、156bを接続する傾斜した中間部156cとを備える。中間部156cは好ましくは丸みを帯びた角部すなわち稜で終端部156aと接し、止め具150用の支点すなわち取り付け角部157を形成する。本発明から逸脱することなく他の内壁形状および/または構造(例えば、壁154および156)が可能である。例えば、後壁156全体がまっすぐに垂直方向になるように中間部156cを無くしてもよい。この配置の場合、後壁156と縁の底面との交点が止め具用の支点または取り付け角部を形成してもよい。また、他の構造によってスプールが係合でき、旋回可能で、摩耗部材を支持構造に締結し保持しさえすれば、その構造を止め具用の支点として設けてもよい。
【0036】
[071]
図2A〜2Cは、本発明による縁に装着可能な覆い106の例を示す。覆い106は、間隙104を規定する後方に延びる一対の脚108aと108bとを備える。この間隙104は、脚が縁102の前端151に緊密に被さり跨ぐように縁を収容する。この実施例の間隙104は丸い前支持面104aを有して、縁の丸い前端151と緊密に合って境を接するが、縁構造に合わせて作られさえすれば他の形状でもよい。例えば間隙は、鋭利垂直な前稜または傾斜した前稜を有する縁に適合するように形成されてもよい。本発明による摩耗アセンブリは板材による縁または鋳物による縁のどちらにも使用できる。上側脚108aは穴110を備え、本発明による止め具はこの穴を介して係合され取り出される。
【0037】
[072]覆いの開口110は好ましくは狭い第1の部分110Aと広い第2の部分110Bとを備える。図示のように、開口110の第1の部分110Aは開口の前を規定し、覆い106の上側脚108aを貫通して延び、一方、後部110Bは上側脚108a内を部分的に延びる。一態様では、棚状部112aが広い後部110Bの全幅にわたって延びる。他の態様(図示せず)では、横部110cの中にだけ棚状部112aを設けて、穴の残りの部分は脚を貫通する第1の部分としてもよい。どちらの態様においても、棚状部112aは開口110内を延びて面を提供し、その面の上に止め具の一部が延びて、採掘中にある負荷に置かれた場合に覆い106が上方に引っ張られ縁から離れるのを防止する助けになる。本発明では、好ましくは下側脚108bを短くして、部品製作に必要な材料、製造費用、および機械に載る摩耗部材の重量を減らす。
【0038】
[073]本発明による止め具150は、米国特許第7,174,661号に開示されているようなねじが切られたくさび350と、スプール200とを備える。スプールとくさびは互いに協働しかつ、摩耗部材および支持構造と協働し、くさびがアセンブリの中へ押し込められるとスプールが回転して、摩耗部材を引っ張って支持構造に密着させる十分な調整代を提供する。ねじが切られたくさびおよびスプールはハンマの使用の回避には好ましいが、本発明ではハンマを用いるくさびおよびスプールを使用してもよい。
【0039】
[074]
図4〜8に説明した態様では、スプール200は摩耗部材106および支持構造102の両方と係合する。スプール200は、好ましくは中心ステム部201と一対の支持部202、204とを備え、これらは本態様では、ステム201の両端にある上腕および下腕として規定される。支持部202、204は好ましくは後方に延びてC形状のスプールを規定するが、(米国特許第7,730,652号に開示されるように)側方に延びてもよく、あるいはスプールが、摩耗部材と支持構造と係合するための他の種類の支持部(すなわち、延在する腕以外)を有してしてもよい。
【0040】
[075]
図4から解るように、スプール200の後側200aは、棚状部112aに被さり、覆い106の開口110の後壁112と係合する第1のすなわち上側支持部202を備える。支持部202が後壁112に接触するので、スプールの回転時に摩耗部材106は支持構造102へ容易に締結される。支持部202は棚状部112Cを覆って、掘削中の覆いの前端118に下方向の負荷が加わるときに上側脚108aが上方へ引っ張られ縁102から離れるのを防ぐ。支持部202は、従来のWhisler型固定装置の場合のように一定の内向きの挟持力を棚状部112a(または覆い106)に加えて覆いを縁にしっかり保持することはしない。スプールの機能のこの変化によりスプールの応力が大きく低減され、小型スプールが使用できスプールの故障のおそれが低くなる。
【0041】
[076]上側の支持部202は側方に延びる側部209を備える。側部209はスプール200のステム部201の側方外側、および開口110の狭い部分110aの側方外側に延びて、開口110の幅広の後部110Bの側部110cに収容される。これらの側方に延びる側部209は、好ましくは後壁112、棚状部112a、および前壁110dによって囲まれて、取り付け中にくさびを挿入する前かつ摩耗部材交換中にくさびを取り外した後にスプールを所定の位置に保持する。具体的には、側部209が棚状部112Cおよび前壁110dと係合してくさびが縁102の穴152を滑り抜けないようにして、取り付けを容易にする。これは取り付けを容易迅速にするだけでなく、取り付けが夜間または悪天候時に行われるときに大きな利点となる。縁を抜け落ちたスプールを見つけることは困難であり、作業者をバケットの下の危険な位置にはりつけることになる。同じ利点は取り外し時にもあり、くさびがアセンブリから取り外された後も、側部209がスプール200を覆い106に保持する。前壁110dはスプールを後方位置に保持して、取り付け中にくさびの先端を受ける所定の空間を提供する。側部209以外の他の構成によって同じ目的を達成することができるが、本構造が好ましい。なぜなら、本構造は一般的な構造に比べて効果的であり、摩耗アセンブリの覆いまたは他の構成要素の強度または作動を低下させず、信頼性があり、製造の費用対効果が高いからである。さらに上記のように、棚状部112Cが単独で側部110cに囲まれるため、側部209だけが、後壁112を押す機能および/または脚108が縁102から離れる動きを防ぐ機能を持っている。
【0042】
[077]スプール200の後側200aは、縁102の開口152の角部156dと係合する第2のすなわち下側の支持部204をさらに備える。支持部204のステム部201への接続は、縁壁156の丸みを帯びた角稜156dと寸法および形状が類似の丸みを帯びた角部を備えてもよい。本構造例では、スプール200は、覆い106および縁102の開口110および152内に緊密に収まる全体にC形状に整えられる。角部156dはスプール用の支点157を規定して、調整代を増やすためのスプールの旋回すなわち回転を容易にする。上に述べたように、他の構造をスプールの固定具として用いてもよい。
【0043】
[078]好ましい一構造では、止め具150は可動可能にスプールに取り付けられる挿入体250も備える。挿入体は、くさびがアセンブリに出入りするように動かされるとスプールが支点157の周りを旋回すなわち回転するように、くさびとスプールの連結を規定して、摩耗部材に十分な調整代を与える。
【0044】
[079]スプール200の反対側の前側部200bは中空部すなわち凹み210を備え、この中に挿入体250が収容される。この実施例の凹み210は、(a)全体に弓形の内側面210a、(b)2つの対向する側壁210b、210c、および(c)側壁210b、210cの間にあり内側面210aに面する広い空間210dによって規定される。好ましくは、滑らかに丸い稜および角部が種々の面と壁の間に設けられる。内側面210aは好ましくはステム201の長さ(すなわち、
図6Cに示す垂直方向)に沿った弓形形状である。この弓形面が経路を規定し、くさびがアセンブリに出入りするように動かされると挿入体250がその経路に沿ってスプールに対して相対移動する。くさびが摩耗アセンブリの中へ押し込まれると、くさび350のねじが挿入体250のねじと係合する。くさびをある方向に回転させると、くさびが下方に動き更にアセンブリに押し込まれる。くさびが挿入体に沿って相対平行移動することによって、くさびのより幅広の部分が開口内に押し込まれるにつれて挿入体は後方に動く。挿入体のこの動きによって、スプール200が支点157の周りを回転する。スプールのこの動きが結果的に凹み210の弓形の内側面210aに沿った挿入体の動きになるが、挿入体自身は縁102に対して垂直にわずかしか動かない。
【0045】
[080]凹み210に設けられた側壁210b、210cは、挿入体をスプール200に保持し、内側面210aと協働して、挿入体をその所定の運動経路に沿ってスプールに相対的に案内する。一態様では、側壁210b、210cは、それらが前方に延びて内側面210aから離れるにつれて、互いに向かって多少内側に延びる。例えば、側壁は15〜45度の角度範囲に収束してもよく、好ましい実施例では約30度の角度に収束するが、他のテーパーでもよい。側壁がこのように前方に先細りすることによって前側空間210dができ、この前側空間210dがその最大幅の位置で挿入体の幅より狭いため、挿入体が凹みの前をすり抜けて脱落することはない。側壁210b、210cも、好ましくは互いに内側方向にスプール200の上端214から下端216の方向に先細りする。例えば、側壁はステム201の長さに沿って2〜15度の範囲で先細りさせてもよく、好ましくは約7度の角度である。好ましくは、側壁のこのテーパーはくさびのテーパーとほぼ等しくすべきである。これは単に使いやすさと空間的な要求事項のためであるが必須でなく、他のテーパーでもよい。この下向きのテーパーによって、側壁210b、210cが空間を規定し、その空間はその幅広の上端で挿入体250の幅より狭いから、挿入体が凹み210の底から外れて脱落することはない。これら種々のテーパーによって、挿入体250をその望ましい進路に沿って案内する経路が規定され、また挿入体を固着せずともスプール200から脱落することが無い。またテーパーは、出荷中や止め具の取り付け取り外しなど、くさびが係合されていないときに挿入体をスプール内に保持する機能も果たす。凹み210の上端は開放され十分に大きくて入り口210eを規定し、この入り口から凹み内に挿入体が装着される。挿入体は好ましくは止め具の最初の製造中に凹み210内へ滑入させるが、最終ユーザが摩耗アセンブリに取り付ける前に挿入してもよい。使用可能な他の配列(すなわち、先細りの側壁以外)には、キーとキー溝の使用、中空部を規定する壁の外側稜の枠で挿入体を覆って挿入体を保持し、所望どおりに案内する、などがある。
【0046】
[081]上記の様に挿入体250は、くさびの下向きの動きに応答して凹み210内を(すなわち、スプール200に相対的に)動くことができる。凹みは挿入体を所定の経路に沿って方向付けするための案内を形成する。くさびがアセンブリ内へ押し込まれ連結を緊密にするにつれて、スプールが支点157の周りを回転すなわち旋回するため、上側支持部202が後壁112を押して覆い106を後方かつ縁102にしっかり押し付け、その結果、覆いの支持面104aが縁102の前端151に緊密に当接する。
【0047】
[082]凹み210は、好ましくは図示のように内側面210a内の長い垂直スロットである空洞212を備えており、弾性部材302を収容して取り付けるための空間が設けられる(
図6Dおよび6E)。しかしながら、空洞212 はどのような所望の大きさおよび形状でも、凹みの別部品を設けても、または全く無くてもよく、弾性部材は他の方法で固定してもよいが本発明から逸脱することはない。弾性部材302はどのような所望の材料で作ってもよく、ゴム(例えば、硬度計ショアD硬度65のゴム)、他の高分子材料または重合体材料(例えば、独立発泡ポリウレタン、硬度計硬度80の2%発泡率の発泡体)、または種々のばねアセンブリなどがある。弾性部材は一定した力を提供し、使用中はこの力が挿入体250を前方向に付勢してくさび350と継続的に接触させる。くさびをアセンブリへ出し入れすると、この接触が挿入体250とくさび350のねじを確実に係合させ、採掘中のくさびの飛出しの危険性を低減する。また弾性部材302がもたらす締結は、スプールの出荷および保管中ならびに止め具150の取り付け取り外し中は、挿入体250を凹み210に保持する機能も果たす。また弾性部材302は、スプールしたがって覆いに何らかの弾性的調整代を与える機能も果たして、覆いと支持部材の間の緊密な装着を維持する。この「緊密な装着」は、掘削中の機械の過酷さに打ち勝つことを意図せずまたはその能力は無いが、覆いと縁の間の間隙を取り除くことを意図する。そのため、覆いに衝撃負荷が加わっても、覆いは既に縁と接触状態にあるので、縁と覆いの接触部の両方の損傷が軽減される。
【0048】
[083]挿入体250は、本結合アセンブリ例(
図5A〜5C)のスプール200の凹み210内に収容される。
図5Cに示す様に、挿入体250の後内側面252は挿入体の上端260から挿入体の下端262まで湾曲している。内側面252のこの湾曲は、好ましくは凹み210の内側面210aの湾曲形状に一致するが、挿入体250がスプールに相対的に所定の経路に沿って移動するなら別の形状でもよい。しかし一般に、これら2面が良く一致するほど接触圧は小さく、加えられる点加重は小さくなり、結果的に両部材の応力は小さくなる。挿入体250の前外側面256は、くさびと係合するための露出したねじ254(本明細書では「ねじ部」とも呼ぶ)を備える。この前面256は、くさびを受けるための連続的に横方向に湾曲した形状でもよく、または
図5Bに示す様に、切断面を有するくさびを使用するときは、多少の切断面を有してもよい(例えば、丸みを帯びた角部で連結された平坦面を有する)。説明されている挿入体250は3つのねじ部254を備え、それぞれが全外周の約1/5にわたって延びるが、ねじ部254がどのような所望の数および/またはどのような所望の範囲に設けられてもよく、本発明から逸脱することはない。
【0049】
[084]挿入体250の前面256は、
図5Aに示す様に、その上端260から下端262まで先細りの形状でもよい。好ましくはこのテーパーによって、挿入体を入り口210eから凹み210の中へ容易に挿入でき、凹みに装着時または挿入時に最初の係合の準備が整ったときに挿入体の底を開放空間210dから凹み210の底210fへ容易に挿入できるが、挿入体は凹みから外れはしない。挿入体250の側壁258a、258bも挿入体の厚さH全体に先細りして(すなわち、
図5Bに示す様に前面256から後面252まで)、例えば凹み210の側壁210bおよび210cのテーパーと全体に一致してもよい(すなわち、中空部210の開放前面から後面210aまで)が、他のテーパーを用いることもできる。本実施例では、挿入体250、側壁258a、および258bは
図5Bの角度Bで先細りしており、ここに角度Bは15〜45度の範囲にあり、一態様では約30度の角度であるが、他のテーパー構造および他の非テーパー構造でもよい。
【0050】
[085]
図6A〜6Eは、挿入体250をスプール200の凹み210内に収容したスプール200を説明する。挿入体250の下端262が、入り口210eを滑って凹み210の上部へ入って、スプール200と挿入体250を一つに係合する。挿入体250の上端260は下端262より広く、凹み210の側壁210bおよび210cは上端から下端まで内側へ先細りし、挿入体250の上端260は凹み210の底210fにおける側壁210bと210cの間の間隔よりも広いため、挿入体250は中空部210内側面を210aに沿って上下方向に滑るが、中空部210の下端から滑り出ることはない。挿入体250の上端260に向かうその側部258a、258bは、挿入体250が中空部210の底から滑り出る前に、凹み210の側壁210bおよび210cと接触する。これらのテーパーによって、挿入体250を一方向にだけ、すなわち入り口からだけ取り付けまたは取り外しできる。入り口は好ましくは凹み210の上端にあり、これによって重力および弾性部材302が取り付け取り外し中に挿入体を正しい位置に保持できる。またこれらの相補的なテーパー面は、出荷、スプールの取り付けおよび取り外し中も、挿入体250のスプール200との係合を維持する。
【0051】
[086]挿入体250の側壁258a、258bの後から前へのテーパー、および凹み210の側壁210b、210cの後から前への相補的なテーパーは、挿入体250が凹み210の開放空間210dから脱落しないように機能する。
図5B、6D、および6Eでよくわかるように、挿入体250の側壁258a、258bは後面252から前面256へ向かう方向に先細りしている(すなわち、
図5Bのテーパー角度B)。中空部210の側壁210b、210cは同様なテーパー角度を有する。挿入体の後面252の幅W2(
図5B参照)は中空部210の開放空間210dの対応する幅より広いため、挿入体250を垂直に中空部210から開放空間210dを通って動かすことはできい。この保持機能が、挿入体250とスプール200を一体に維持するのを助けて、脱落または不要な分離を防ぐと同時に、挿入体250の中空部210内への比較的容易な挿入および中空部210からの比較的容易な取り外しを可能にする。
【0052】
[087]
図7Aおよび7Bは、本発明による止め具に使用できるくさび350の例を説明する。図示のように、くさび350は上端から下端まで全体に丸い断面形状を有し、全体に円錐形状(円錐台)であり、テーパー角度(
図7Aの角度C)は好ましくは2〜15度の範囲にあり、一態様では約7度であるが、他のテーパーでもよい。くさび350はその後端すなわち上端352からその先端すなわち下端354まで延び、くさび350の全体の直径(すなわち他の断面寸法)は連続的に上から下へ(すなわち長手)方向Lに連続的に一貫して減少する。本実施例では、
図7Bに示す様に、丸いくさび350は好ましくは全体に八角形断面形状であり、8本の側稜356(例えば、平面)と、隣接する側稜356の間の丸みを帯びた角部358とを有するが、円形断面形状でもよく、または異なる数の切断面を有する形状でもよい。また八角形断面形状は、掘削中のくさびの不要なゆるみを防ぐことができる。これら切断面は、くさび350が穴にもぐるセルフインデックス(self-indexing)、すなわち重負荷下における荷重構成要素の弾性変形の結果、くさびがさらにアセンブリ内へ引っ張られてしまうことも防ぐ。そのようなセルフインデックスは締結をより強固にするが、その強さはある環境下ではアセンブリから取り外す作業者の工具の能力を超えることがある。一実施例では、
図7Bに示す様に八角形のくさび350は角−角間直径D
1およびわずかに小さい面−面間直径D
2を有する。面取りくさびを用いると、弾性部材302によって、止め具150が摩耗部材106を支持構造102に完全に締結するまで、挿入体250の必要な揺動(例えば、
図6Dの力Fを参照)がくさびの回転を促進する。
【0053】
[088]また
図7Bは、くさび350の上端352が、くさび350を結合アセンブリ内で回転させるために用いられる工具(例えば、くさび350を回転させるための手動式または電動式工具)と係合するための係合構造360を備えてもよいことを説明する。ここで説明される工具係合構造360は四角穴であるが(レンチ、ソケット、または他の工具の四角端を受ける)、本発明から逸脱することなく他の穴形状(例えば、他の多角形(例えば六角形)、他の非円形の湾曲凹み等)、六角ボルトなど、他の係合構造も使用できる。必要に応じて、くさび350の上面352および底面354両方に、工具と係合してくさびを回転させる係合構造(例えば、構造360)を設けて、くさびの上端または下端からくさび350と係合して回転させることができるようにしてもよい。
【0054】
[089]これらの図示した実施例のくさび350は、くさび350の長手方向長さLに沿った等間隔のねじ364をさらに備える。これらのねじ364は、
図7C〜7Fに示すように、挿入体250のねじ部254と係合するように寸法と間隔が決められている。挿入体250の外側面256は、それが受けるくさび350の2つの丸みを帯びた角部358および隣接稜356の形状と全体に一致する。図示の構造例は、くさび350のねじ364の3カ所と係合する3つのねじ部254を有する挿入体250を示しているが、いかなる所望の数のねじ部254を挿入体250に設けてもよく、本発明から逸脱することもない。くさび350は、いかなる所望の方法(例えば、鋳造または機械加工)および材料(例えば、鋼材)によって作ってもよく、本発明から逸脱することもない。
【0055】
[090]
図7D〜7Fは互いに係合したくさび350および挿入体250の断面図を説明する(明確にするために、これらの図にはスプール200は図示しない)。
図7D(長手方向断面)に示す様に、挿入体250のねじ部254はくさび350のねじ364と係合する。くさび350を挿入体250に対して回転させると、この係合によってくさびがアセンブリに出入りするように動かされ、掘削中のくさびの飛び出しを防ぐ。
図7Eは、その中をねじ254が通っている(かつ、ねじ254が噛み合うくさび350のねじ部364が通り抜けている)挿入体250の概略断面図を示す。
図7Dおよび7Eに示す様に挿入体250のねじ254は、これらの図のねじ254とくさび350の中心部との間の間隙によって示すように、好ましくはくさび350のねじ364の内側面まで届かない。そのため、大きな平面部分255が支持を担い、これには開示されたくさび350の平面356が含まれる。ただし他の配置も可能である。
【0056】
[091]
図7Fは断面図の概要を示すもので、ねじ364および254の外側にくさび350と挿入体250の領域が通っている。くさび350と挿入体250は、ねじ254および364とではなく平面356(すなわち、ねじ254と364の間の領域)と互いに接触して支持し合う。
図7Fに示す様に、くさび350の1つの平面稜356が挿入体250の前面256の平面切断面領域に収まる一方、くさび350の隣接する平面稜356は挿入体250から間隙G
3だけ隔てられる。間隙G
3の寸法は、くさびが摩耗アセンブリ内へ移動するにつれて増加するくさびの直径を容易に収容するように決められる。弾性材料302が存在するため、挿入体250に対するくさび350の回転が容易になる(すなわち、挿入体250の移動により、挿入体の平面上面256上でくさびの大きな角−角間直径D
1の回転が可能になり(弾性材料の変位によって)、次にくさび350の短い面−面間直径D
2がねじ部254内に位置付けられると、弾性材料302が挿入体250を押してくさびのねじ364との係合に戻す)。間隙G
3の大きさは、くさび350が連結アセンブリ内に配置される範囲によっても多少変化する(くさび350の狭い断面が挿入体250と係合するときは、間隙G
3は比較的大きく、くさび350の広い断面が挿入体250と係合するときは間隙G
3は小さくなるか、または消滅してもよい)。すなわち間隙G
3によって、くさび350がどのような深さにも挿入可能になり、それによってくさび350と挿入体250の間の平面356と平面256の係合が維持される。掘削中は、側壁210b、210cが、くさびおよびねじの係合を支持し安定させるのでどちらかの間隙G
3が時々接近して高負荷時の脱落を防止する。
【0057】
[092]
図1A〜7Fと関連付けてこれまでに図示および説明した部品の例を含む摩耗アセンブリ400の一実施例のアセンブリおよび動作を、
図8A〜8Eと関連付けてさらに詳細に説明する。最初の段階として、
図8Aの矢印402で示すように、挿入体250を(製造時に実施されていない場合)滑らせて入り口210eから凹み210へ入れると、挿入体250とスプール200が一体化される。凹み210内の弾性インサート302が挿入体を前方、開放空間210dの方へ付勢する(
図6E参照)。
【0058】
[093]スプール200の前側部200bの上端261(すなわち、スプール200の入り口210eと上端214の間)は好ましくは溝263として形成される。この溝は、下方に動かされて挿入体250と係合していないくさび350のその部分を受ける間隙である。取り付けおよび取り外し中のスプール200の旋回のため、溝263が延びて入り口210eから離れると、溝263は好ましくは深くなって、最初の取り付け時に(すなわち、スプールを最も前方の位置にして)くさびを受けるための十分な間隙を提供する。
【0059】
[094]次に、
図8Aに矢印404で概略を示すように、覆い106を縁102の前端151の周りに被せるように装着する。次に、スプール200を、覆い106および縁102の整列された開口110および152のそれぞれに装着し、スプール200の全体にC形状の後側200aが、後壁156内の支点157を規定する棚状部112aおよび角部156dの周りに装着されるようにする。この概要を
図8Aの矢印406で示す。より具体的には、スプール200の下部支持部204は、縁102の取り付け角部156dによって規定される支点157と係合し、支持部202は覆い106の棚状部112aに及んでいて掘削中に覆いを縁に保持する。上部支持部202の側部209は開口の側部110c内に装着されて、くさびの取り付けおよび取り外し中にくさびを所定位置に保持して工程を簡単にし、縁102の開口152からのスプールのいかなる不要な脱落も防止する。
【0060】
[095]このとき、くさび350は開口110から、開口152の前壁154に沿って開口152へ挿入される(
図8Aの矢印408で概要を示す)。また挿入体250も開口152内にむき出しで置かれ、くさびと係合する。次に、くさび350を回転させると(矢印410)、くさび350のねじ364が挿入体250のねじ部254と係合しくさびをさらにアセンブリ内へ動かす。くさびが回転中の摩耗アセンブリ400の段階を
図8B〜8Eの部分断面図に示す。
【0061】
[096]
図8Bは、スプール200に取り付けられた挿入体250と接触し、次にこの挿入体と係合するくさび350を説明する。このとき図示のように、くさび350は覆い106の開口110と通り抜け、片側が縁102の開口152の前方側154と接触する。上記の様に、必要に応じて、この前方側の壁154を少なくとも部分的に(例えば硬質材料製の)保護要素で被覆してもよい。スプールの代わりに必要ならこの保護要素にねじを切ってくさび350のねじ364と係合してもよい。くさび350のねじは挿入体250のねじ部254と係合する。この段階で、くさび350の最狭部は壁154と挿入体250の間に係合されるため、挿入体250は凹み210内の最下位で、その最も時計回り方向に傾いた位置にあり、これによってスプール200はその最も反時計回り方向に傾いた位置にあることになり(これらの位置は共に
図8B〜8Dに示した図の視点による)、すなわち支持部202が覆いの開口110の後壁112とちょうど接触している状態となる。スプール200がその最も反時計回り方向に傾いた位置にあるため、側部209と前壁110dが接触しているため、さらにスプール200が支点157と係合しているため、覆い106はくさびが挿入され係合された状態のすなわち未締結の位置にある縁102に対して最前位置に置かれる。
【0062】
[097]覆い106の脚108aと108bの間の間隙104の前端にある支持面104aを縁102の前端151にしっかり当てるのに必要な程度まで、くさび350を回転させ締結することができる。くさび350を締結すると、まず覆い106が縁102に当たるまで動いて部品間の間隙を無くす。さらに締結すると中空部210の弾性挿入体302が変形する。例えば
図8Bに示した位置が該当し、このとき縁102および覆い106は新しいまたは比較的新しい状態にある。なお、
図8Bの右端に示した寸法「W
3」は覆い106と縁102の終端の間の距離を示す。寸法W
3は、縁の上の任意の基準点に対する単なる便宜的な測定値であって、縁の後端を基準にしたものではない(そうしてもよいが)。
【0063】
[098]くさび350を動かして摩耗アセンブリ400内に押し込むと、くさびの下方向への動きによって挿入体250が後方へ動く。挿入体250のこの後方への動きによって、スプール200が支点157の周りに後方(すなわち、図に示した時計回り方向)へ旋回すなわち回転することになる。すなわち、スプール200の下側の支持部204は、スプール200用の支点を規定する取り付け角部156cと係合を持続する。上側の支持部202は後方へ回転して後壁112を押圧し、覆い106をさらに縁102に押し当てる。スプールのこの回転によって、挿入体が内側面210aに沿って平行移動することになる。それでも、挿入体250はくさび350との係合を持続する。くさびも挿入体も縁に対しては回転しない。くさびがアセンブリの中へ動かされると、挿入体250は後方へは動こうとはするが、縁102に対して垂直方向にはあまり動くことはできない。
【0064】
[099]米国特許第7,730,652号に開示されているような従来のWhisler型装置またはその他一般的ではないくさびとスプールによる止め具に比べ、くさび350と挿入体250の相互作用によって生じるスプール200のこの回転はかなり大きな調整代になる。実際のところ、従来のスプールの実際の後方移動は一連の不規則な移動動作から成るが(つまり、一つの腕が時に他と無関係に動くことがある)、全体的なスプールの動きを長い時間でみれば単なる後方への平行移動である。従来、スプールはこのような向きの直線平行移動を行うものであり、それはスプールの腕が斜面に乗って摩耗部材の脚を縁に挟み付けるか(例えば米国特許第7,730,652号、米国特許第7,174,661号(
図12)、米国特許第3,121,289号に示す様に)、または単に摩耗部材部分に置かれ押圧力を後方に作用させるか(例えば米国特許第7,174,661(
図8)に示す様に)には関係がなかった。従前のくさびとスプールの止め具によって提供される調整代はくさびの外側のテーパーに制限を受けた。くさびの取り付けに必要な力とくさびの飛び出しの危険性の低減の釣り合いを考慮した場合、このようなくさびのテーパーはわずかで、その結果、摩耗部材の有効な調整代は限られる。挿入体およびスプールの旋回を今までにない方法で使用することによって、くさびのテーパーを何ら大きくすることなく従前のくさびとスプールの止め具よりも、場合によっては3〜4倍大きい調整代が得られる。
【0065】
[100]
図8Eを参照して、スプール200の回転に対する挿入体250の動きの関係についてさらに説明する。挿入体250は縁102またはくさびに相対回転しないが、挿入体がその周りをスプールに相対的に動く点を指す挿入体の回転中心(COR)が図中に記載されている(すなわち、挿入体が弓形の内側面210aに沿って動くと、スプール200が支点157の周りを回転する)。CORから、スプール200と覆い106の後壁112との接触点(POC)までの垂直距離は、「てこの腕」を規定し、これを本明細書では挿入体てこと呼ぶ。その周りをスプールが回転する支点157とPOCの間の垂直距離は別の「てこの腕」を規定し、これを本明細書ではスプールてこと呼ぶ。挿入体てことスプールてこの長さが近いほど結合アセンブリが作り出す調整代が大きくなる。言い換えれば、スプール200の長さが回転中心よりも相対的に長いと、挿入体の後方への僅かな動きがスプール200の反対側の上端(すなわち、上側支持面202)の相対的に大きな動きを発生させる。また、挿入体てこがスプールてこより相対的に短いほど、止め具によって覆い106に加えられる力は大きい。言い換えれば、挿入体250の回転中心が支点157に対してより高い位置に配置されるほど、覆い106の取り付け中に覆い106を動かすために加えられる力は大きい。これは覆い106の無用な脱落に対抗する唯一可能な取り付け力である(これはスプール200の断面係数の働きであってくさび350の駆動力ではない)。
【0066】
[101]支点157の周りのスプール200の回転によって、上側支持部202が上方へ揺動して上側支持部202と棚状部112aの間にわずかの間隙ができてもよい(それ以前に間隙が無くても)。間隙が生じるか否かは覆いに対するスプールの相対角度によって決まる。しかし通常は、上側支持部202は好ましくは上側脚108aを縁に挟み付けないため、そのような間隙で覆いを縁に固定することは妨害されない。回転した位置においても、支持面104aは縁102の前端151に強く押しつけられたままであり、常に上側支持部202は、掘削中に上側脚108aを縁から離れさせるいかなる不適切な動きも生じさせない。
【0067】
[102]時間および使用の経過とともに(例えば、このような種類の機器が掘削中に受ける過酷な状況下で)、縁102の前端151は全体に摩耗し、摩耗部材の装着がゆるむ。摩耗が発生すると、まず弾性インサート302が挿入体250を外側に押して、負荷のかかっている摩耗部材の動きに一定限度抵抗する。しかし、摩耗が続き覆い106と縁102の間の間隙が広がると、さらなる動きが起こり、それによって好ましくないがたつき等が縁102と覆い106の間に発生する。摩耗部品の固定が緩いと摩耗が増えやすく、摩耗が過大になるとくさびの飛び出しのリスクが高まる。そのためユーザは、時間が経つと、覆い106と縁102の間の結合を再締結したいと考えるかもしれない。あるいは、再締結が必要な時期頃に覆いが摩耗するように設計して、新しい覆いを縁に取り付けるときにくさびを大がかりに締結したいと考えるかもしれない。この再締結または追加締結は、くさび350を回転させることによって達成される(
図8Cの矢印420で図示)。この回転によってくさび350は元の場所を越えて下方に付勢され、くさび350のより広範な部分が壁154と挿入体250の間の開口152内に押し入る(くさび350が長手方向に先細りしているため)。上記のように、くさび350の下向きの動きによって、挿入体250が後方へ動き、スプール200が支点157の周りに後方へ旋回する。スプールのこの旋回すなわち回転によって、挿入体250がスプール200の凹み210の内側面210aに沿ってさらに滑る(
図8Cの矢印422で図示)。取り付け角部156dの周りの回転によって、スプール200の上側支持部202がさらに下方へ動き、次にこれによって覆い106がさらに後方へ付勢され縁102とさらに緊密な装着状態になる。
図8Bと8Cの間の寸法「W
3」の変化は、本結合アセンブリで利用可能な調整代の一部を示す。この動作により、覆い106の支持面104aを縁102の前端150に対して再度緊密に収容することができ、それによって縁102と覆い106の間の不要ながたつきや動きが減る。
【0068】
[103]さらに使用すると、縁102の前端150がさらに摩耗する。この摩耗によって結合の緩みが再度発生することがあり、がたつきや縁102と覆い106の間の不要な動きなどが再発することがある。したがってここでも、ユーザは縁102と覆い106の間の止め具150を再締結したいと考えるかもしれないし、摩耗が進んだ縁に最初から新しい摩耗部材を締結したいと考えるかもしれない。これはくさび350を再度回転することによって達成される(
図8Dに矢印424で示す)。この追加の回転によって、くさび350がその元の位置を超えて下方へ付勢され、それによって今度はくさび350のより広範な部分が壁154と挿入体250の間の開口152内に押し入る(くさび350が長手方向に先細りしているため)。くさび350の下向きの動きによって、挿入体250が後方へ動き、それによって今度はスプール200が取り付け角部156dの周りにさらに時計回り方向に回転する(
図8Dの矢印426で示す)。この丸い角稜156dの周りの回転によって、スプール200の上部(面202を含む)が右向きに動き、次にそれが覆い106を右方向に付勢する。
図8Cと8Dの間の寸法「W
3」の変化を示す。この動作によって、覆い106の開口104を縁102の前端150に対して再度緊密に収容することができ、それによって縁102と覆い106の間の不要ながたつきや動きが減る。
【0069】
[104]
図8Dは、スプール200の面200aと、面156c、156a、112との間のほぼ平面的な関係によって締結程度がほぼ最大状態である結合アセンブリ400を示す。
【0070】
[105]特に、
図8B〜8Dと関連付けて説明されるこの配置には十分な調整代があり、摩耗が進んだ縁(または他の支持構造)に新しい摩耗部材を繰り返し締結するのに使用でき、またはアセンブリを使用中に必要なだけまたは必要に応じて何度も再締結できる。本止め具150が提供する有効調整代は比較的大きく(例えば、0.5〜2インチ)、縁102の前端151を頻繁に盛り上げること無くこの複数の締結段階を遂行することができる。
【0071】
[106]上記の様に、弾性部材302は挿入体250をスプール200の内側面210から離す力を加え、これが挿入体250とくさび350の間のねじの係合を増す。この力の効果は、スプール200を押してくさび350から離すことであり、スプール200が摩耗部材と直接接触していることから、覆いの縁への装着を緊密にするための摩耗部材への多少の圧力が維持される。一実施例では、弾性部材302は最も押し付けた状態で約4000ポンドの力をもたらし、この力が上記の様に加えられて摩耗部材を縁に保持する。したがって止め具機構に働く力が使用中に変化すると(例えば、動的負荷および衝撃によって)、結合された部品間の締結された連結の維持を弾性部材302が補助して、衝撃負荷に起因する部品の劣化を限定的に低減する(そうすることによって、部品を再生しなければならない必要性または頻度を低減する)。この特徴は本明細書では「弾性調整代」と呼ぶ。弾性部材302は、挿入体250およびくさび350を強固な摩擦力接触状態に保持することによって、使用中のくさびの不要な回転の防止に役立つ(特に多角形断面のくさびの場合であるが、円形断面のくさびの場合も少なくともある程度)。
【0072】
[107]特に本摩耗アセンブリ400では、通常の使用時は、種々の構成要素が垂直方向の固定力無しに一つに結合されている(すなわち、スプール200は覆い106を縁102に垂直方向に固定せず、面156cと112aの間にも固定力を加えない)。縁102と覆い106の間の垂直固定力が無いので実質的にスプール200の応力が低減され、部品の締結および関連する動きが単純かつ容易になる。十分に大きな下向きの力が覆い106の前端118に加わったときにのみ、上側支持部202が機能して上側脚108aを縁102に保持するように支持部202および204に広範に分散した力が働く。
【0073】
[108]上記の改良された「調整代」の特徴に加え、スプール200に収まる挿入体250の回転は別の利点をもたらす。例えば、回転式の挿入体250の使用によって、スプール関連のねじ(すなわち挿入体のねじ)、くさび350関連のねじが、他の場合よりも良好に整列する。回転式の挿入体250の使用によって、スプール200とくさび350の間のより滑らかで均一な装填が楽になる。他のくさびとスプールのシステムではくさびおよびスプールの整列が悪い場合があり(すなわち、構成要素の1つが他に対して相対的にわずかに傾く場合がある)、それによってそれらの接触部付近に挟み込み点が生じ、これが応力集中点を作る。この応力集中点は係合の経路に沿ってどこにでも存在し得る。例えば、くさびのテーパーがわずかに浅い場合はくさび/スプール接触部の底の近くに、くさびのテーパーが広すぎる場合はくさび/スプール接触部の上部の近くに、スプールが許容誤差をわずかに外れている場合は中央部のどこかに応力集中点ができる。そうでなくても、応力が高い点がスプールとくさびの間の接触線に沿っていくつか存在することになる。しかし、挿入体250が回転する本発明による止め具機構は、高応力状態を避けて低応力状態に自動的に調節し、そうすることによって挿入体の長さ全体への負荷をくさびと同じにしようとし、さらに挿入体をスプール内に均等に収容してスプールに対してさらに一様な負荷を加えようとする。挿入体の回転による応力低減と、摩耗部材が縁を常時挟んでいないことで、止め具150の実用寿命が延び、止め具の取り替えが必要になるまで止め具を再利用して複数の摩耗部材を取り付けることができるようになる。
【0074】
[109]本発明による止め具機構の他の優れた特徴は、掘削中にくさび350が底から上向きに(例えば、
図8Eの矢印470の方向に)付勢されるとアセンブリ内で実際に締結する止め具の能力に関連する。容易に理解できるように、従来のくさびは、一般に上方に付勢されて穴から抜けると緩む(テーパーの厚みの減少のため)。しかし、本発明による上記の止め具機構の例のスプール200、挿入体250、およびくさび350の間の相互作用によって、くさび350が上方に付勢された場合(例えば、くさび350の底にごみまたは他の物が矢印470の方向に接触することによって)、本止め具機構が押されて締結がより緊密になる。より具体的には、
図8Eの矢印470によって図示のように上向きの力がくさびに作用すると、2つの構成要素の間のねじが係合されているため、くさび350を上方へ押すことによって挿入体も付勢されて上方へ動く。挿入体250がスプール200に連結されているため、挿入体がくさびと一緒に上方へ動くことが止め具機構内の締結力をもたらし、それによって挿入体がくさびのねじにより緊密に押し込まれることになるか、摩耗部材が縁に締結されることになるか、またはその両方である。それによって生じた動作に関わらず、最終結果は、くさびのそのような上向きの動きがくさびの係合の締結を増して、くさびの飛び出しを防止しようとするということである。これは、くさびの締結力に依存する従前の止め具を上回る改良であって、従前の止め具ではそのような上向きの動きが(本発明と比較すると)くさびの飛び出しのより大きな危険性になる。この締結作用は使用中のくさびの脱落の危険性を著しく低減し、固定された部品間の連結の安定的維持を助ける。
【0075】
[110]本発明から逸脱することなく、摩耗アセンブリ400およびその個々の構成要素の多くの変形形態が可能である。スプール200、挿入体250、くさび350、および摩耗部材106などの種々の構成要素は、さらにいくつかの具体的な実施例として本発明から逸脱することがなく種々の異なる大きさ、形状、および構造を取ることができる。いくつかの実施例では、摩耗アセンブリ400の止め具機構の構成要素は、結合される部品の開口110および152の中にほぼ完全にまたは完全に収容されてもよい。また、結合システムの種々の構成要素は、本発明から逸脱することなく鋼材などいかなる所望の材料で作ることができ、本発明から逸脱することなく鋳造技術、鍛造技術、組立技術、または機械加工技術などいかなる所望の方法で製造できる。スプール200、くさび350、および挿入体250は、それらの意図された用途に合わせて、本発明から逸脱することなく適切なまたは所望のいかなる材料でも作ることができる。掘削装置では、止め具機能の構成要素は好ましくは、強度、硬度、靱性の理由から低合金綱で鋳造される。上記の様に、くさび、スプール、および挿入体(上記)を含む本発明による止め具機構は、アダプタに対する歯先のように他の摩耗部材を所定位置に固定するのに使用できる。この構造では、アダプタの突出端は支点を有する穴を備え、穴は歯先をアダプタに保持するための支点およびスプールによって係合される後壁を有する。さらに、止め具機構は垂直方向にのみ図示されているが(これは摩耗部材(覆いなど)をバケットの縁に保持するための止め具機構を取り付ける場合に一般的である)、とりわけ歯先をアダプタにまたは他のそのような部材を架台に固定する場合には、水平に挿入してもよい(例えば、縁に平行)。当然ながら、垂直および水平などの相対語の呼称は、図を参照するにあたっての便宜的なものである。掘削装置では図示以外の様々な向きを想定することができる。
【0076】
[111]
図9Aおよび9Bは、スプール200内に収容することができる挿入体のいくつかの可能な変形形態を説明する。上記の様に、挿入体250および凹み210の種々のテーパーが、例えば出荷、取り付けおよび取り外し中に挿入体250をスプール200に保持するように機能する。これらの(挿入体250および凹み210の両方の)テーパーは不要である。例えば、挿入体500は先細りした凹みが無いスプールに保持される。
図9Aに図示した挿入体500は、上記挿入体250の外側面256と類似でもよい外側面502を備える(ねじ部の存在を含む)。本挿入体構造500の例の内側面504は、後方に突き出た比較的薄い羽根すなわちレール506を備える。
図4および6A〜6Eと関連付けて先に全体的に説明したように、この羽根すなわちレール506をスプール200の中空部210の弾性部材302に収容してもよい。スプール200が摩耗アセンブリと係合されていないとき(例えば出荷、取り付けおよび取り外し中)、羽根すなわちレール506および弾性部材302は、挿入体500を凹み210内に保持するように機能することができる。くさび350は最終組立および掘削中に種々の部品を一つに保持しようとするが、テーパーまたは羽根もくさびの回転中の挿入体の回転の防止に役立つ。羽根すなわちレール506は、弾性部材302に形成された切り込みすなわち溝304に乗るか、またはその中で案内されてもよい。この別の態様では、弾性部材302は、例えば
図6Dおよび6Eに関して説明したものと同じ一般的な方法で機能することになる。
【0077】
[112]スプールの別の変更形態を用いることができる。例えば、本発明による止め具は挿入体無しで作動してもよい。本態様では、スプール275はねじが切られた溝276を備え、それにねじが切られたくさび350が係合する(
図19および20)。ねじが切られた溝には垂直方向に凹状湾曲が形成される(すなわち、全体に水平軸に対して)。本態様では、凹状のねじが切られた溝とくさびの係合によって、挿入体250によるスプール200と同じ方法でスプールが支点157の周りを回転する。本配置は挿入体を不要だが、この止め具の調整能は劣る。スプール200と同様、変更形態が可能である。例えば、支持部を変更してもよいし、開口および棚状部の構成を変更してもよい。
【0078】
[113]本発明の別法として、弾性部材は必ずしも挿入体と別体でなくてもよい。例えば、
図9Bは、上記挿入体250の外側面256と類似でもよい外側面552を備える挿入体550を説明する(ねじ部の存在を含む)。本挿入体550の例の内側面554は、それに一体的に形成された(または取り付けられた)1つ以上の支持ペグ556(例えば丸、方形、またはその他の断面形状を有する)備える。支持ペグ556は弾性材料558で覆ってもよく、弾性材料558は挿入体550の支持ペグ556および/または底面554に取り付けられる(例えば、接着剤または固着剤、機械的接続、その他によって)。弾性材料558を備えたペグは、挿入体550が中空部210の中に配置されるときに、スプール200の中空部210の内側面210に形成された空洞212内に配置される。スプール200が結合アセンブリ全体とまだ係合していないとき(例えば、出荷および取り付け中)、ペグ556および弾性材料558は挿入体550をスプール200と一緒に保持するのを助ける。くさび350は、凹みの壁を先細りさせることなく、最終アセンブリ内に種々の部品を一つに保持する。挿入体550がスプール200に対して動くにつれて、弾性材料558が変位してもよい。弾性材料558は
図6Dおよび6Eの弾性部材302に関して先に概略説明した方法で機能する。弾性部材を凹み210に装着して使用する場合は、別法として、弾性部材を挿入体に直接固定してもよい。
【0079】
[114]別の結合アセンブリの例を
図10A〜14Fと関連付けて以下に説明する。本摩耗アセンブリの例では、覆い106は、
図2A〜2Cに図示し先に説明した構造と同じまたは類似の構造でもよい。したがって、この覆い106のより詳細な説明はここでは省略する。同様に、本結合アセンブリの例のくさびは
図7A〜7Fと関連付けて説明したくさび部材350と同じまたは類似でもよい。したがって本くさび350のより詳細な説明はここでは省略する。
【0080】
[115]
図10Aおよび10Bは縁600の例を説明する。縁600の外部形状は従来の縁102の外部形状と類似しているが、縁600は従来とは異なる構成の開口602を備える。本実施例の縁600の開口602は、旋回式挿入体を受けるための傾斜した後壁604と、全体に凹状の前壁606(例えば、湾曲形状を有する)とを備える。開口602の側壁608aおよび608bは旋回式挿入体の支持部材を受けるための溝610aと610bとを備える。
【0081】
[116]
図11A〜11Cは、
図10Aおよび10Bと関連付けて説明される縁600に収容可能な旋回式挿入体650の種々の図を説明する(
図11Aは旋回式挿入体650の斜視図、
図11Bは側面図、および
図11Cは正面図)。本旋回式挿入体650は中空すなわち凹状の支持面部652備える。挿入体650の各側部654aおよび654bはそれぞれ、外側に延びる支持部材656aと656bとを備える。支持部材656a、656bは、側部654aおよび654bから側方反対方向に離れるように延びる円筒形状(すなわち円錐台部材)でもよい。これら支持部材656a、656bは、縁600の開口602の側壁608a、608bに設けられた溝610a、610bに適合する。支持部材656a、656bの大きさおよび形状は、支持部材656a、656bが溝610a、610bに沿って自由に滑らかに動くように、また支持部材656a、656bが溝610a、610b内にあるときは(溝610a、610bの盲端612a、612bにおいても)支持部材656a、656bが縁600に対して回転できるように、溝610a、610bに対して決めることができる。
【0082】
[117]旋回式挿入体650を縁600に取り付けるとき、旋回式挿入体650を、その丸い外側面658が内部に延び、縁600の凹状前壁606の方向をほぼ向き、凹状支持面部652が後方を向き、縁の開口602内を向くように配置してよい。
【0083】
[118]
図12は本発明によるこの摩耗アセンブリの例に使用できるスプール700を説明する。スプール700は
図4および6A〜6Eと関連付けて種々の方法で説明したスプール200に類似である。例えば、スプール700は、(a)棚状部112aを覆い、覆い106の後壁112に接触する第1の支持部702と、(b)支持部702から側方に延びて覆い106の開口110の幅広の側部110cの中に収まる側部と、(c)縁600(例えば、縁600の底面614に設けられ、スプールがその周りを回転する支点615を規定する丸みを帯びた角部604a)と係合する第2の支持部704を含む類似形状の後側部700aとを備える。本構造の例では、スプール700の側部700aは覆い106および縁600のそれぞれの開口110および602に収容される全体にC形状に形成される。
【0084】
[119]スプール700の側部700aの反対側の前側部700bは、くさび350に設けられたねじ364と係合するねじ706を備える。ねじ706は全周の約1/3〜1/5に及び、スプール700の長手方向Lのほぼ全長に沿って間を隔てて並べられる。任意の数のねじ706をスプール700の長手方向Lに沿って設けてもよいが(例えば、2〜15)、図示の例は7つのねじ706を備える。ねじ706はスプール700の構造の一部として、例えば鋳造などの何らかの所望の製造技術を用いて一体的に形成される。
【0085】
[120]
図13は本発明の本実施例による摩耗アセンブリ800の組み立ての工程の概要を示す。まず、
図13の矢印802で示すように、旋回式挿入体650の支持部材656a、656bを縁600の開口602の溝610a、610bへ滑入する。支持部材656a、656bが溝610a、610bの端部612a、612bに一端到達したら、湾曲した前面658が開口602の近くの凹状前壁606に対向しそれを覆うように、かつ凹面652を開口602内に向けるように、旋回式挿入体650を(必要に応じて)回転させることができる(旋回式挿入体650は、溝610a、610bに取り付けられると、その支持部656a、656bに対して比較的自由に回転できる)。
【0086】
[121]次に、脚108a、108bの間に規定される覆い106の間隙104に縁を収容するように、支持面104aが縁600の前端616に接触するまで、旋回式挿入体650を備えた縁600に覆い106を被せる。この動作の概要を
図13に矢印804で示す。覆い106を縁600に一旦取り付けたら、下側支持部704が縁の開口602の取付角稜604aと係合し、上側支持部702が覆い106の棚状部112aを超えて開口110の側方に延びる側部110c内へ延びるように、スプール700を開口110、602から挿入する。この動作を
図13に矢印806で示す。この組み立て工程では、摩耗アセンブリ800の種々の部品は比較的緩い状態である。
【0087】
[122]上記まで一旦組み立てたら、くさび350を開口110に挿入する(概要を
図13に矢印808で示す)。所定位置に挿入したら、くさび350を回転させて(矢印810で示す)くさび350のねじ364をスプール700のねじ部706と係合させる。組み立てが完了した結合アセンブリ800の部分断面図を
図14A〜14Fに示す。
【0088】
[123]
図14A〜14Fは本発明の態様による結合アセンブリ800の「調整代」の改良された有利な特徴をさらに説明する。
図14Aは、くさび350が旋回式挿入体650とスプール700と係合した摩耗アセンブリ800を説明する。まずくさび350を締結すると、回転した矢印820で
図14Aに示すように覆い106の支持面104aが縁600の前端616と係合する。スプール700の支持部702、704は、覆い106の面112および/または棚状部112aを覆い、縁600の丸みを帯びた角稜604aに接して、覆い106を縁600に対して右向きに付勢する(
図14Aに示す方向を基準に)。
【0089】
[124]
図14Aに示す時点で、くさび350の比較的狭い部分が旋回式挿入体650とスプール700の間に係合される。縁600の前端616に緊密に接するように覆い106の支持面104aを配置するのに必要な程度まで、くさび350を回転し締結してもよい。
図14Aに示す位置は、例えば縁600および覆い106が新しいまたは比較的新しい状態のときに当てはめることができる。覆い106と縁102の右端の間の比較的長い距離を、
図14Aで寸法「W
4」とする。寸法W
4は、縁の上の任意の基準点に対する単なる便宜的な測定値であって、縁の後端を基準にしたものではない(そうしてもよいが)。
【0090】
[125]時間および使用の経過とともに(例えば、このような種類の機器が掘削中に暴露される過酷な状況下で)、縁600の前端616は摩耗することがある。これが
図14Bに間隙Gで示されており、前端616と開口104の内側面の間に発生する(縁600および/または覆い106の材料の摩滅の結果としての間隙G)。そのような摩耗によって覆いが縁の上で緩み、覆い106と縁600の間のがたつきおよび他の望ましくない動きが発生し、摩耗などを加速する。そのため、ユーザは、時間が経つと、縁600と覆い106の間の結合を再締結したいと考えるかもしれない。これは、本結合アセンブリ800の例では、くさび350をアセンブリ800の残りに対して回転させることによって達成される(
図14Cに矢印822で示す様に)。この回転はくさび350を下方に付勢し、くさび350のより広い部分を旋回式挿入体650とスプール700の間の開口110および602内へ押し入れる(くさび350が長手方向に先細りしているため)。その代わりに、必要な再締結は摩耗した摩耗部材を新品と交換しなければならないときに合わせ、使用中の摩耗部材を再締結するのではなく新しい摩耗部材を取り付けるために追加締結するようにしてもよい。
【0091】
[126]くさび350の下方向の動きによって挿入体650がその支持部材656a、656bの周りに時計回り方向に回転し(
図14Cおよび14Dの斜視図から)、それによってスプール700が丸みを帯びた角稜すなわち支点604aの周りに時計回り方向に回転させる(
図14Cおよび14Dの要素の種々の位置の比較によって示す)。取り付け角部604aの周りの回転によってスプール700の上部702が後方へ動き、それによって覆い106が後方さらに縁の上に動く(
図14Cおよび14Dに示す様に)。この動作が覆い106を縁600の前端616に再度緊密に収容し、それによって縁102と覆い106の間の望まないがたつきおよび動きを低減する。前端616および/または開口104の「盛り上げ」が必要である。
図14Aと14Dの比較によって示す寸法「W
4」は減少寸法であり、これが本結合システムで有効な「調整代」の一部を示す。
【0092】
[127]時間および使用の経過とともに(例えば、このような種類の機器が掘削中に暴露される過酷な状況下で)、縁600の前端616は更に摩耗する場合がある。これが
図14Eに間隙Gで示されており、前端616と開口104の内側面の間に発生する(縁600および/または覆い106の材料の摩滅の結果としての間隙G)。既に説明した様に、この摩耗作用によって結合が緩む場合があり、それによって覆い106と縁600の間のがたつきおよび望ましくない動き、摩耗の加速などが起こる。そのためここでも、ユーザは縁600と覆い106の間の結合の再締結または縁への新しい覆いの取り付けを望む。上記の通り、これはくさび350をアセンブリ800の残りに対して回転させることによって達成される(
図14Eに矢印824で示す様に)。この回転はくさび350をさらに下方に付勢し、くさび350のより広い部分を旋回式挿入体650とスプール700の間の開口110および602内へ押し入れる(くさび350が長手方向に先細りしているため)。
【0093】
[128]くさび350のこの更なる下方向の動きによって、挿入体650がその支持部材656a、656bの周りに更に反時計回りに回転し(
図14Eおよび14Fのそれぞれから)、それによって、スプール700が丸みを帯びた604aの周りに時計回り方向にさらに回転する(
図14Eと14Fの種々の要素の位置の比較によって示す)。取り付け角部604aの周りの回転によって、スプール700の上側支持部702が後方へ動き、それによって覆い106が後方に付勢される(
図14Eおよび14Fに示す様に)。この動作によって覆い106が縁600の前端616に緊密に収容されることになり、それによって縁102と覆い106の間の望まないがたつきおよび動きを低減する。この再締結作用は、例えば少なくともスプール700の面700aが縁600の内側面604に到達するまで必要に応じて繰り返すことができる。
【0094】
[129]特に
図14A〜14Fの比較から、くさび350を締結して大きく調整すると(すなわち、縁600に対して覆い106の動きを増やすと)、くさび350、旋回式部材650、およびスプール700のそれぞれが後方へ旋回する(
図14A〜14Fでは右方向)。例えば、
図14A、14D、および14Fを比較すると寸法「W
4」が変化している。
【0095】
[130]
図13〜14Fと関連付けてこれまで説明した配置では、覆い106を縁600に対し十分にかつ反復的に動かすことができ(または次の覆いを繰り返し取り付けることができる)、それによって摩耗アセンブリ800を使用中に何度も締結することが可能になる。本摩耗アセンブリ800の比較的大きな有効「調整代」のおかげで、これらの複数回の締結工程は縁600の前端616を(例えば、新しい材料を縁の上に溶接することによって)頻繁に「盛り上げる」こと無く達成できる。また、本摩耗アセンブリ800では、種々の構成要素が一般に垂直方向の固定力無しに一つに結合される(すなわち、スプール700は覆い106を縁600に垂直方向に挟み込まず、ある垂直負荷を除き面112aと614の間には挟み込み力を加えない)。縁600と覆い106の間に通常は垂直固定力が無いことによって、スプール700の応力が低減し、取り付けおよび/または部品の相対的移動をより単純かつ容易にする。必要に応じて、スプール700の支持部702は覆い106の後壁112aを圧迫しなくてもよく、これら構成要素の側面でのみ圧迫してもよい(例えば、側部110cまたはその近く)。
【0096】
[131]
図15A〜18は本発明による他の変更形態を説明する。
図15Aおよび15Bは本発明による結合アセンブリに使用できる縁900の例を説明する。縁900の外側形状は従来の縁102の外側形状と同じまたは類似でもよいが、開口902は異なる。縁900の開口902は以下に詳細に説明するように、
図10Aおよび10Bと類似の傾斜した後壁904(丸みを帯びた底角稜904aを含む)と、可動挿入体を収容するための湾曲凹状の前壁906とを備える。
【0097】
[132]挿入体950は中空のすなわち凹状の支持面952を備える。この支持面952は組立が完了した止め具の中のくさびと係合する。挿入体950の側部954a、954bはそれぞれ、弾性片部材956a、956bを備える。弾性片部材956a、956bはゴム等の弾性材料の塊から作ってもよい。これらの弾性片部材956a、956bは、縁900の開口902の中に取り付けられるときに開口902の側壁908a、908bと係合することによって、旋回式挿入体950を支持する助けとなる。旋回式挿入体950は支持面部952に対向した丸みを帯びた面958を備える。丸みを帯びた面958は開口902の前面906の曲率と全体に一致する曲率を有してもよい。
【0098】
[133]挿入体950は、縁900の開口902に取り付けられたとき、丸みを帯びた外側面958が縁900の湾曲した前壁906に近似するように、凹状の支持面952が後方を向き縁900の開口902内を向くように配置される。支持面952は、以下に
図18と関連付けてさらに詳細に説明するように、組み立てが完了した結合アセンブリ内でくさびと係合するように位置付けされる。
【0099】
[134]
図17Aおよび17Bは本発明による本結合アセンブリの例に使用できる覆い1000の例を説明する。覆い1000は
図2A〜2Cと関連付けて種々の方法で説明した覆い106と類似である。例えば、覆い1000は上述したものと類似の外部形状を備えてもよく、縁を収容する間隙1008を規定してもよい。
【0100】
[135]覆い106と同様に、
図17Aおよび17Bの覆い1000は、狭い部分1002aおよび広い部分1002bを有する開口1002を備える。
図17Aに示す様に、開口1002の狭い部分1002aは覆い1000の上側脚を貫通するが、広い後部1002bは上側脚を貫通しない。このようにして広い部分1002bは棚状部1012を備え、その上にスプール700の上側支持部702が配置される。本結合アセンブリの例のスプール700は、
図12と関連付けて説明されたスプール、すなわちその上部702が他の部分より多少側方に広く作られたスプール700と同じまたは類似でもよい。本実施例の開口1002の広い部分1002bは全体にU形状の構成1010を有するが(
図17Bから解るように)、貫通部1002aの両側に側部1002Cを備えるだけでもよい。
【0101】
[136]
図17Aおよび17Bは、開口1002の後側部1004が必要に応じて1個以上の穴または凹み1006を備え、その凹みがスプール700の後部と係合または噛み合ってもよいことをさらに説明する。1片の弾性(例えばエラストマ)材料を穴または凹み1006に収容してもよい。弾性材料はゴム等のエラストマ材料の塊で形成してもよい。弾性材料はばねとして作用し、スプール700の上部支持部702を前方に、覆い1000の方向に押し続けるのを助けて、より緊密なシステムの維持に役立つ。
【0102】
[137]
図18は本発明の本実施例による摩耗アセンブリ1100の組み立てに関連する工程の概要を説明する。まず
図18の矢印1102で示すように、湾曲面958が近くの側部906を向くように、湾曲支持面952が開口902内を向くように、旋回式挿入体950を縁900の開口902に滑入する。また、弾性部材956a、956bを、それぞれが開口902の側壁908a、908bを係合するように置く。取り付けると、旋回式挿入体950の湾曲面958は開口902の湾曲面906に沿って移動可能である。
【0103】
[138]次に、覆い1000を、その開口1008に挿入体950を付けたまま、縁900に装着する。この動作の概要が
図18Bに矢印1104によって説明されている。覆い1000を縁900に一旦係合したら、スプール700を開口1002と開口902から挿入し、下側支持部704が縁の開口902の取付角部904aと係合し、上部取付部702が覆い1000の棚状部の側部1010上に収容されるようにする。この手順を
図18Bに矢印1106で示す。この時点では、結合アセンブリ1100の種々の部品は比較的緩くてもよい。
【0104】
[139]このとき、くさび350を開口1002に挿入する(概要を
図18に矢印1108で示す)。一旦所定位置にしたら、くさび350を回転させて(矢印1110で示す)くさび350のねじ364をスプール700のねじ部706に係合させる。
【0105】
[140]使用中にくさび350が締結され、そのより広い部分が開口902、1002内に付勢されると、旋回式挿入体950は縁900の前壁906に対して動くことになり、それによってスプール950を取り付け角部904aの周りに回転させる。この動作が、
図14A〜14Fと関連付けて説明した方法とほぼ類似の方法で、覆い1000を縁900に押し付ける。したがって、この動作および本結合アセンブリ1100の例の調整代の詳細な説明は省略する。
【0106】
[141]上記のように、本発明の実施例による結合アセンブリの主な利点の1つは、これらの結合システムを用いるときに利用可能な大きな調整代に関連する。本発明の実施例による結合システムは、比較的小型かつ内蔵型の結合システムを提供しながら(すなわち、結合アセンブリは一つに結合される構成部品の中に提供される開口に完全にまたはほぼ完全に内部収容される)、結合される間の大きな量の動作をさらに容易にする(例えば、上記実施例の縁に対する覆いの左右動作の範囲は1.25〜5cm(0.5〜2インチ))。この特徴は上記の縁を盛り上げる必要性を有利に回避または実質的に減らす一方、他の利点ももたらす。例えば、この大きな調整代の特徴は、結合アセンブリの種々の部品および/または結合される部品の開口を製造するときの製造寸法の大きなばらつきも許容する(すなわち、間隙を無くすのに必要な程度にくさびを締結し、種々の部品を確実に一つに保持する)。またこれらの特徴は結合装置の分解組み立ての役に立つ。その理由は(a)最後の締結工程が完了するまで種々の部品を比較的緩く一つに組み合わせることができること、および(b)くさびの弛緩状態において種々の部品を比較的緩く作ることができるため分解が容易であるからである。
【0107】
[142]また、本発明の態様を回転可能なねじが切られたくさびと関連させてここまで説明してきたが、本発明による全てのシステムおよび方法にこれが必要な訳ではない。むしろ、従来の「打ち込み」(すなわちハンマによる叩き込み)式のくさびすなわち周知の溝付きくさびを用いるときに、本発明の少なくともいくつかの有利な特徴を必要に応じて実現してもよい。例えば、ハンマ式くさび(例えば、上記のスプール200または他のスプールの構造)、挿入体(例えば、上記挿入体250または他の挿入体の構造のような)、および/または弾性部材(例えば、上記の部材302または他の弾性部材の構造のような)を必要に応じてスプールと組み合わせて用いてもよい。そのようなシステムはハンマ不要ではないが(そして本発明のいくつかの実施例の利点を失うが)、それでもそのような係止システムは上記の大きな調整代の利点を享受することになる。したがって、本発明の少なくともいくつかの態様は上記の種々の係止機構部品の1つ以上を、打ち込みくさび、押し込みくさび、および/または溝付きくさびと一緒の使用に関連する。
【0108】
[143]本発明について、添付図で構造、特徴、要素の様々な例、およびこれらの組み合わせを参照しここまで説明してきた。しかし、これらの開示により提供される目的は、本発明に関連する種々の特徴および概念の例を提供することであり、本発明の範囲を限定することではない。当業者には、上記の構造および方法の例に対し多くの変更形態および変形形態が、本発明の範囲から逸脱することなく可能であることが理解されるであろう。