特許第5863815号(P5863815)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベットの特許一覧

特許5863815触媒化微粒子フィルターの製造方法及び触媒化微粒子フィルター
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863815
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】触媒化微粒子フィルターの製造方法及び触媒化微粒子フィルター
(51)【国際特許分類】
   B01J 37/02 20060101AFI20160204BHJP
   B01J 23/30 20060101ALI20160204BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20160204BHJP
   F01N 3/022 20060101ALI20160204BHJP
   F01N 3/035 20060101ALI20160204BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20160204BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20160204BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   B01J37/02 301B
   B01J23/30 A
   B01D53/94 100
   B01D53/94 222
   F01N3/022 C
   F01N3/035
   B01J37/02 301M
   F01N3/08 B
   F01N3/10 A
   F01N3/24 E
【請求項の数】7
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-537034(P2013-537034)
(86)(22)【出願日】2011年11月1日
(65)【公表番号】特表2014-509923(P2014-509923A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2011005504
(87)【国際公開番号】WO2012059211
(87)【国際公開日】20120510
【審査請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】PA201000991
(32)【優先日】2010年11月2日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンセン・ケルド
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/026806(WO,A1)
【文献】 特表2010−506724(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/051752(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/94
F01N 3/022
F01N 3/035
F01N 3/08
F01N 3/10
F01N 3/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒化微粒子フィルターを製造する方法であって、
a)煤の燃焼除去において活性な第一の触媒と、窒素酸化物の選択接触還元において活性な第二の触媒とを組み合わせて含む、単一のウォッシュコート懸濁物から得られる単一の触媒ウォッシュコートを提供する工程;
b)微粒子フィルター本体を、該フィルター本体の分散側及び透過側に、かつ、該フィルター本体の隔壁内に該触媒ウォッシュコートで被覆する工程;及び
c)該被覆されたフィルター本体を乾燥及び熱処理して、触媒化微粒子フィルターを得る工程であって、その際、前記ウォッシュコートの懸濁物中の該第一又は第二の触媒が、フィルター壁の平均細孔径よりも小さく、前記第二の触媒が、少なくとも一種の、ゼオライト、シリカリン酸アルミニウム、イオン交換ゼオライト、鉄及び/又は銅で促進されたシリカリン酸アルミニウム、一種又は多種の卑金属酸化物、及び酸化チタン支持体、アルミナ支持体、酸化ジルコニウム支持体又はシリカ支持体上の酸化セリウムタングステンのうちの少なくとも一つの触媒支持体を含み、そして、前記第一の触媒が、一種又は多種の希土類金属を含む、上記の方法。
【請求項2】
前記第二の触媒が、鉄及び/又は銅の促進剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第二の触媒が、アルミナ上に担持された、酸化タングステン及び酸化セリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記フィルター本体が、流路を境界付けしかつ画定する、長手方向に延在する壁によって形成される、長手方向に延在する複数の経路を有するウォールフローモノリスの形態の形にされ、その際、経路の分散側は開放インレット端及び栓で塞がれる(plugged with plugs)アウトレット端を有し、そしてその際、経路の透過側は、栓で塞がれるインレット端及び開放アウトレット端を有する、請求項1〜3のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記ウォールフローモノリスのフィルター本体が、該分散側のアウトレット端及び該透過側のインレット端が栓で塞がれる前にウォッシュコートされる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
触媒化微粒子フィルターであって、該フィルターの分散側及びその透過側が、かつ、該フィルターの隔壁内が単一のウォッシュコートで被覆され、該単一のウォッシュコートが、煤の燃焼除去において活性な第一の触媒と、窒素酸化物の選択接触還元において活性な第二の触媒とを一緒に含む単一のウォッシュコート懸濁物から得られ、その際、該ウォッシュコート懸濁物中の触媒のうちの一方の粒度が、該フィルター壁の平均細孔径よりも小さい、上記の触媒化微粒子フィルター。
【請求項7】
前記フィルターが、流路を境界付けしかつ画定する、長手方向に延在する壁によって形成される、長手方向に延在する複数の経路を有するウォールフローモノリスの形態であり、その際、経路の分散側は開放インレット端及び閉じたアウトレット端を有し、そしてその際、経路の透過側は、閉じたインレット端及び開放アウトレット端を有する、請求項6に記載の触媒化微粒子フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能の触媒化ディーゼル微粒子フィルターに関する。より詳細には、本発明は、公知の選択接触還元(SCR)法による窒素酸化物の除去における活性及び該フィルター上で捕捉される煤の燃焼における活性の両方を有する、触媒化ディーゼル微粒子フィルターの製造方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、SCRにおいて活性な触媒及び改善された煤の燃焼のための触媒を有する触媒化フィルターを提供する。
【背景技術】
【0003】
ディーゼル排気は、未燃焼の炭化水素に加えて、窒素酸化物(NOx)及び粒状物質を含む。特に、NOx及び粒状物質は、健康及び環境の危険を示す材料及び化学化合物であり、エンジン排気ガスから低減されるか又は除去されなければならない。
【0004】
粒状物質は主として煤からなり、そして従来、エンジンの排気システム中に配置されたフィルターを通過させることによって排気ガスから除去されている。
【0005】
典型的には、これらのフィルターはハニカムウォールフローフィルターであり、その際、煤は該ハニカムフィルターの隔壁上又はそれらの中に捕捉される。時間に伴い、壁に捕捉された粒状物質の蓄積により、フィルターにわたる圧力低下が拡大し、そして、通常、煤を燃焼する方法により粒状物質を除去しなければならない。煤の燃焼除去は、通常、煤燃焼触媒の存在下で受動的に、又は排気ガスの温度の周期的な上昇によって積極的に達成される。
【0006】
煤の燃焼除去に触媒作用を及ぼす触媒を設けたフィルターは従来技術において知られている。
【0007】
従来技術において開示されているディーゼル排気ガス浄化システムは、粒子フィルターの他に、アンモニアとの反応による、NOxの選択還元において活性な触媒ユニットを含む。
【0008】
異なる反応に触媒作用を及ぼす触媒で被覆された多機能ディーゼル微粒子フィルターは、従来技術において既知である。
【0009】
既知の多機能フィルターにおいて、異なる触媒は、フィルターの異なる区画でセグメント的に又は区画的に被覆される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、フィルターでの異なる触媒のセグメント的又は区画的な被覆は高価であり、そして製造プロセスが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、煤の燃焼除去及びNOxの選択還元のための異なる触媒で触媒化された粒子フィルターの比較的容易な製造方法を提案する。
【0012】
したがって、本発明は、触媒化微粒子フィルターの製造方法であって、
a)煤の燃焼除去において活性な第一の触媒と、窒素酸化物の選択接触還元において活性な第二の触媒とを組み合わせて含む、触媒ウォッシュコートを提供する工程;
b)粒子フィルター本体を、該フィルター本体の分散側(dispersion side)及び透過側(permeate side)を、かつ、該フィルター本体の隔壁内を該触媒ウォッシュコートで被覆する工程;及び
c)該被覆されたフィルター本体を乾燥及び熱処理して、触媒化微粒子フィルターを得る工程、
を含む、上記の方法に関する。
【0013】
“分散側(dispersion side)”という語及び“透過側(permeate side)”という語は、ここで使用される際、煤を含有する排気ガスに面するフィルターの流路、及びろ過された排気ガスに面する流路をそれぞれ意味する。
【0014】
本発明による方法の主な利点は、異なる反応に触媒作用を及ぼす二種の触媒を含有する単一のウォッシュコートでフィルターを被覆することができるという点である。それ故、多機能触媒フィルターの製造は、容易化され、かつ、経費節約されたセットアップの観点から非常に改善される。したがって、第一及び第二の触媒の密な混合により、第一の触媒が、第二の反応のためのいくぶんかの活性を示し、そして第二の触媒が第一の反応のためのいくぶんかの活性を示すときに有利な方法が提供される。この相乗作用により、煤の燃焼活性及びSCR活性が、それら触媒の一方だけを含む溶液と比較して増大される。この方法の利点の例は、フィルターの煤の堆積量が低い時に立証される。なぜなら、その際に、最適化されたSCR触媒のSCRNOx除去が、煤の燃焼触媒のSCR活性によって補われるからである。それ故、適した触媒は、反応が要求されるフィルター中で利用可能であり、それはセグメント化ウォッシュコートフィルターと比較した改善である。
【0015】
触媒粒子の混合物として異なる種類の触媒でフィルターを被覆するさらなる利点は、組み合わされたフィルター触媒ブリック(brick)の低い熱質量に起因した、改善された熱転移及び低温始動の間の暖機に見られ、そしてそれ故、当該技術分野で知られているよりも早く、還元剤の噴射及びSCR反応が開始する可能性がもたらされる。
【0016】
本発明の一実施形態において、酸素又は二酸化窒素による煤の燃焼において活性な第一の触媒粒子は、一種又は多種の希土類金属酸化物の触媒又は触媒前駆体を含むことができる。希土類酸化物に加えて、第一の触媒は、ジルコニア、アルミナ、チタニア、シリカ、ゼオライト又はそれらの組合せをさらに含むことができる。
【0017】
第一の触媒は、酸化セリウム及び酸化ジルコニウムを含むのが好ましい。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態において、ウォッシュコート中の、NOxの選択接触還元において活性な第二の触媒粒子は、ゼオライト、シリカリン酸アルミニウム、イオン交換ゼオライト、任意に、鉄及び/又は銅で促進されたシリカリン酸アルミニウムの少なくとも一つ、一種又は多種の卑金属酸化物及び酸化チタン担体、アルミナ担体、酸化ジルコニウム担体又はシリカ担体上の酸化セリウムタングステンの少なくとも一つの触媒担体を含むことができる。
【0019】
第二の触媒は、アルミナ上に担持された酸化タングステン及び酸化セリウムを含むのが好ましい。
【0020】
本発明で使用するためのウォッシュコートを形成するために、通常粒子形態の第一及び第二の触媒は、要求される粒度に粉砕され、そして水又は有機溶媒中に懸濁され、任意に、バインダー、増粘剤、発泡剤又は他の処理助剤が添加される。
【0021】
ウォッシュコートは、第一及び第二の触媒粒子を単一の懸濁物の形態に懸濁させることにより、又は、第一及び第二の触媒それぞれにより、二つの別々の懸濁物を調製し、その後、該二つの懸濁物をある体積比で混合して、要求される量の第一及び第二の触媒粒子を有するウォッシュコートを製造することにより、製造することができる。
【0022】
混合後、バインダー、増粘剤、発泡剤をさらに添加することができる。
【0023】
それから、フィルターは、慣習的なやり方でウォッシュコートされる。
【0024】
本発明の好ましい実施形態において、フィルター本体は、流路を境界付けしかつ画定する、長手方向に延在する壁によって形成される、長手方向に延在する複数の経路を有するウォールフローモノリスの形態の形にされ、その際、経路の分散側は開放インレット端及び栓で塞がれる(plugged with plugs)アウトレット端を有し、そしてその際、経路の透過側は、栓で塞がれるインレット端及び開放アウトレット端を有する。
【0025】
さらに好ましい実施形態において、上述のフィルター本体、ウォールフローモノリスは、分散側のアウトレット端及び透過側のインレット端が栓で塞がれる前にウォッシュコートされる。
【0026】
本発明は、触媒化微粒子フィルターであって、その分散側及びその透過側を、かつ、フィルター本体の隔壁内をウォッシュコートされる、触媒化微粒子フィルターをさらに提供し、その際、該ウォッシュコートは、煤の燃焼除去において活性な第一の触媒と一緒に、窒素酸化物の選択接触還元において活性な第二の触媒を含有する。
【0027】
本発明の使用に好ましいフィルター本体は、流路を境界付けしかつ画定する、長手方向に延在する壁によって形成される、長手方向に延在する複数の経路を有するウォールフローモノリスを含む。経路のインレット部分は、開放インレット端及び閉じたアウトレット端を有し、そしてアウトレット経路は、閉じたインレット端及び開放アウトレット端を有する。
【0028】
本発明の使用に適したフィルター材料の例は、シリコンカーバイド、チタン酸アルミニウム、コージライト、アルミナ、ムライト又はそれらの組合せである。
【0029】
フィルター上の第一の触媒の量は、典型的に、10〜100g/lであり、そしてフィルター上の第二の触媒の量は、典型的に、20〜180g/lである。フィルターに投入される(loading)全触媒は、典型的に、40〜200g/lの範囲内にある。
【0030】
ウォッシュコート懸濁物中の二つの触媒の粒度は、フィルター壁の平均細孔径よりも小さい。しかし、さらなるオプションとして、ウォッシュコート懸濁物中の一方の触媒の粒度は、フィルター壁の平均細孔径に等しいか又はそれより大きい。
【実施例】
【0031】
第一の工程において、第一の触媒の懸濁物を、硝酸セリウム及び硝酸ジルコニウムの混合物から調製し、その後、熱処理により該硝酸塩混合物を、Ce/Zrのモル比3:1を有する、セリウム及びジルコニウムの酸化物へ転化させる。第二の工程において、該第一の触媒の懸濁物を、40gの酸化セリウム酸化ジルコニウム混合物を80mlの脱塩水中で混合することにより製造する。分散剤Zephrym PD−7000及び消泡剤を添加する。懸濁物はビードミルで粉砕される。粒度は、ウォールフローフィルターの壁中の細孔の平均細孔径よりも小さくなければならない。
【0032】
第二の触媒の懸濁物を、硝酸セリウム溶液及びメタタングステン酸アンモニウム溶液を混合し、その後、該混合溶液を酸化アルミニウム粒子に含浸させ、そして該粒子を550℃で4時間、空気中で熱処理することにより調製する。それにより、10%酸化セリウム及び10%酸化タングステンを有するアルミナ粒子が得られる。この酸化アルミニウム上の酸化タングステン+酸化セリウムの100gを、200mlの脱塩水中に分散させる。分散剤Zephrym PD−7000及び消泡剤を添加する。懸濁物はボールミルで粉砕される。粒度は、ウォールフローフィルターの壁中の細孔の平均細孔径よりも小さくなければならない。
【0033】
第一の触媒の懸濁物は、その後、第二の触媒の懸濁物中に混合される。
【0034】
高い多孔率(約60%)の、栓で塞がれないSiCウォールフローフィルターに、それから該第一及び第二の触媒の混合物をウォッシュコートし、そして乾燥させる。
【0035】
被覆後、末端チャンネルは、市場から入手可能なセメントにより栓で塞がれ、そして栓で塞がれたフィルターは、引き続き730℃で熱処理される。