特許第5863856号(P5863856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863856
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】建造物
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/20 20060101AFI20160204BHJP
   A01G 9/16 20060101ALI20160204BHJP
   A01K 1/00 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   A01G9/20 B
   A01G9/16 Z
   A01K1/00 Z
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2014-42035(P2014-42035)
(22)【出願日】2014年3月4日
(62)【分割の表示】特願2014-35943(P2014-35943)の分割
【原出願日】2012年5月22日
(65)【公開番号】特開2014-128282(P2014-128282A)
(43)【公開日】2014年7月10日
【審査請求日】2014年3月7日
【審判番号】不服2015-7019(P2015-7019/J1)
【審判請求日】2015年4月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-165763(P2011-165763)
(32)【優先日】2011年7月28日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509049193
【氏名又は名称】中村 鉄哉
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】中村 鉄哉
【合議体】
【審判長】 赤木 啓二
【審判官】 谷垣 圭二
【審判官】 住田 秀弘
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−12362(JP,U)
【文献】 実開昭62−186649(JP,U)
【文献】 特開2011−15676(JP,A)
【文献】 特開2011−129852(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/103378(WO,A1)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根に太陽光を電力に変換する光電変換手段を備える建造物であって、
内部に植物を育成する植物育成領域が存在し、
前記屋根には、太陽光が内部に透過する透過部と透過しない不透過部があり、同屋根のうち前記植物が配置された領域の垂直上方及び隣接する植物同士の間の領域の垂直上方は太陽光を充分に透過可能な前記透過部が設けられ、
前記光電変換手段は、前記不透過部に存在するものであり、
前記透過部は、建造物の内部空間と外部を常に連通させ、空気が自由に出入り可能であると共に、前記透過部を透過した太陽光は、前記植物育成領域に直接射す、建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部で家畜を飼育するための建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業と家畜業は、異なる法体系により規制されているように、別々の事業として発展してきた。業者は、基本的には、飼育環境・育成環境等をコントロール下におくようにしてきた(特許文献1、2など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−110275号公報
【特許文献2】特開平8−256614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているように、畜産業では、太陽光は、不安定であり排除されやすい。そのため、太陽光を活用して、建物内部で植物を育成することは困難であった。このような建物では、農業・畜産業の多重的な再活性化を実現することはできない。
【0005】
他方、農業では、太陽光は、例えばビニルハウスのように植物育成のために活用する。そのため、建物は、通常、光量を制御する構造で足り、例えば内部で家畜を飼育する等は想定されていない。
【0006】
なお、特許文献2には、ネット状体の遮光性被覆材に太陽電池を固着することが記載されている。しかしながら、特許文献2記載の技術は、日射光量が多い場合には植物の生長・生産が阻害されるため、直達光量を一定の割合に減少させるためのものである。すなわち、特許文献2記載の技術は、動植物の育成困難な自然環境下におけるものである。よって、ネット状体の構造は、植物の育成のみによって決定される。特許文献2には、畜産業に関しては記載も示唆もされていない。むしろ、動物の生育が困難な状況下におけるものである。
【0007】
また、電力不足も深刻である。しかしながら、発電所は、忌避施設として住民の反対運動等があり、新たに設けることは困難な状況である。
【0008】
ゆえに、本発明は、農業又は畜産業を行いつつ、電力不足をも解決可能な建造物を提供
することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明の第1の観点は、屋根に太陽光を電力に変換する光電変換手段を備える建造物であって、内部に植物を育成する植物育成領域が存在し、前記屋根には、太陽光が内部に透過する透過部と透過しない不透過部があり、前記光電変換手段は、前記不透過部に存在するものであり、前記透過部を透過した太陽光は、前記植物育成領域に射すものである。
【0010】
本願発明の第2の観点は、屋根に太陽光を電力に変換する光電変換手段を備える建造物であって、内部で、家畜を飼育するものであり、前記屋根には、太陽光が内部に透過しない不透過部があり、前記光電変換手段は、前記不透過部に存在するものであり、外壁は、前記家畜が通過できないものである。
【0011】
本願発明の第3の観点は、第1又は第2の観点において、当該建造物は、高低差のない部分と高低差のある部分とを含む土地上に建てられたものであり、前記屋根の最も高い位置と最も低い位置の高さの差は、前記土地の最も高い位置と最も低い位置の差よりも小さいものであり、前記光電変換手段は、前記土地の高低差のある部分に対して前記不透過部が透過させない太陽光を電力に変換するものである。
【発明の効果】
【0012】
本願発明によれば、鶏舎等の家畜を飼育したり、植物を飼育したりする建造物において、屋根の不透過部で太陽光発電を行うことにより、農業又は畜産業を行いつつ、発電することが可能になる。これにより、「多重型農業設備」ともいうべき建造物を実現することができる。特に、第3の観点にあるように、高低差のある土地であっても、植土地の有効利用を図ることが可能になる。
【0013】
なお、本願発明において、前記植物は、果樹であってもよい。果樹であれば、光が照射されるべき領域を特定することができる。そのため、透過部の形成が容易になる。果樹は、例えば、梅の木やオリーブである。これらの樹木は、動物や日陰に強く、さらに、抗菌・殺菌作用があることから、多重型農業設備に適したものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の実施の形態に係る建造物1を説明する図であり、(a)は側面図、(b)は平面図である。
図2】本願発明に係る建造物が設置される土地の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明の実施例について説明する。ただし、本願発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0016】
図1は、本願発明の実施の形態に係る建造物1を説明する図である。図1(a)は、建造物1の側面図である。建造物1(本願請求項の「建造物」の一例)は、内部に、果樹11(本願請求項の「果樹」の一例であり、果樹11が育成する領域が、本願請求項の「植物育成領域」の一例である。)が存在する。果樹は、例えば、梅の木やオリーブである。これらの樹木は、動物や日陰に強く、さらに、抗菌・殺菌作用があることから、多重型農業設備に適したものとなる。また、建造物1の内部には、家畜(本願請求項の「家畜」の一例)が存在し、家畜を飼育するための空間である。家畜は、例えば、ニワトリである。
【0017】
建造物1は、屋根3(本願請求項の「屋根」の一例)と、外壁5(本願請求項の「外壁」の一例)を備える。外壁5は、果樹11が育成する領域を囲う。そして、外壁5は、例えば、金網であり、網目を家畜の大きさよりも小さくして、家畜が通過して外に出ないようにしている。なお、鳥インフルエンザ等を予防するため、野鳥の糞などが入らないように、アクリル板などを設置するようにしてもよい。また、法律上、農地として認められるためには、一見して植物を育成するスペースであることが明らかである必要がある。金網であれば、一見して農地であることが明らかとなる。
【0018】
屋根3は、透過部7(本願請求項の「透過部」の一例)と、不透過部9及び9(本願請求項の「不透過部」の一例)を備える。透過部7は、太陽光が建造物1の内部に透過する部分である。透過した太陽光は、少なくとも、果樹11が育成する領域に射す。不透過部9及び9は、太陽光を透過しない部分である。不透過部9及び9は、外壁5から張り出した部分が存在する。透過部7は、例えば金網によって、網目を家畜の大きさよりも小さくして、家畜が通過して外に出ないようにすることができる。また、鳥インフルエンザ等を予防するため、アクリル板などを設置するようにしてもよい。
【0019】
不透過部9及び92には、それぞれ、太陽光パネル13及び13(本願請求項の「光電変換手段」の一例)が存在する。太陽光パネル13及び13は、不透過部9及び9のうち、外壁5から張り出した部分にも、設置されている。
【0020】
例えば、透過部7を東西に連続して形成することにより、不透過部9及び9が存在しても、太陽光は、外壁5を透過したものも含めて果樹11を育成する領域を射すことができる。このように、本願発明において、透過部7を、屋根3の一方の端から他方の端へ(東西に)連続して形成し、外壁5において、透過部7の下の部分は、光を透過するものとしてもよい。
【0021】
また、屋根3は、南向きに傾斜させて、太陽光が植物育成領域に射しやすくなるとともに、太陽光発電の効率を上げるようにしてもよい。さらに、建造物1を複数設けることにより、大規模に発電して、スマートグリッドを実現することも可能になる。
【0022】
図1(b)は、建造物1の平面図である。果樹11及び11に太陽光が射すよう、透過部7が形成されている。不透過部9及び9には、それぞれ、太陽光パネル13及び13が存在する。
【0023】
図2は、本願発明に係る建造物が設置される土地の一例を示す図である。太陽光発電装置は、発電効率を高めるため、平坦な土地に隙間なく設置されるのが一般的である。しかしながら、そのような土地の形状のみに依存して設置場所を選定すると、設置可能な土地が限定される。例えば山の斜面等の土地に設置することは困難になる。
【0024】
本願発明に係る建造物は、土地の形状の変化を吸収して、太陽光発電を効率よく実現することが可能である。すなわち、図2にあるように、例えば段々畑のように、土地に高低差のある部分Lと高低差のない部分L及びLがあり、高低差のない部分L及びLに植物を育成する領域を設ける。そうすると、土地の高低差のある部分Lは、太陽光を照射しなくても、植物の育成に大きな影響はない。そのため、屋根において、高低差があり植物育成領域でない部分に対して照射する太陽光に対して、不透過部を設け、ここに太陽光発電装置を設け、太陽光発電するようにする。図2では、土地Lの真上から土地Lに対して照射する太陽光を考慮し、その上空の屋根の部分Rを不透過部とし、ここで太陽光発電をする例を示している。
【0025】
そして、屋根の高低差Hは、土地の高低差Hよりも小さくすることにより、太陽光発電を効率よく実現する。すなわち、効率よい太陽光発電を実現するためには、太陽光発電装置が平面状に広がればよく、その土地の形状のみに依存するものではない。そこで、図2の建造物15では、太陽光発電装置を設置する屋根が、平面状に広がるようにする。屋根に高低差を設ける場合には、屋根の形状を変更してもよく、また、例えば図2にあるように、高い屋根と低い屋根を設け、高い方の屋根の軒を利用して、軒の部分に不透過部を設けて太陽光発電装置を設置し、ここで太陽光発電を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0026】
1,15 建造物、3 屋根、5 外壁、7 透過部、9,9 不透過部、11,11,11 果樹、13,13 太陽光パネル
図1
図2