(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記変換係数を上位制御装置から取得する変換係数取得部、及び前記変換係数を第1の軸の速度指令および第2の軸の速度指令に基づいて計算する変換係数計算部のうちの少なくとも一方を含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のサーボ制御装置。
【背景技術】
【0002】
一般の工作機械等では、被加工物を工具で加工する場合、電動機により駆動される複数の軸が協調同期して加工が行われる。
【0003】
複数の軸が協調同期して加工を行う工作機械として、例えば、
図1に示すような立形マシニングセンタが知られている。立形マシニングセンタ100では、被加工物101を固定したテーブル102がX軸方向とY軸方向に動作し、回転工具103がZ軸方向に動作することで加工が行われる。
【0004】
また、複数の軸が協調同期して加工を行う工作機械として、
図2に示すような旋盤も知られている。旋盤200では、被加工物201は回転するC軸に固定され、半径方向(X軸)と回転軸方向(Z軸)に工具202を被加工物201に接触させながら動作させることにより加工が行われる。
【0005】
さらに、複数の軸が協調同期して加工を行う工作機械として、
図3に示すような創成歯車加工機も知られている。創成歯車加工機300では、被加工物301は回転するC軸に固定され、工具302を、B軸を中心にして回転させ、B軸の回転とC軸の回転とが所定比率(=条数/歯数)で同期するように、B軸用電動機304とC軸用電動機303を制御することにより加工が行われる。
【0006】
ここで、立形マシニングセンタ100のXY平面上で被加工物101にテーパー加工を行う場合がある。この場合、X軸及びY軸をそれぞれ駆動する電動機は、テーパー角度θに応じた速度(Vx=Vcosθ、Vy=Vsinθ)で同期運転を行う。この場合の工具103のX軸位置とY軸位置との関係を
図4(a)に示す。
【0007】
同様に旋盤200で円筒の被加工物201を加工する場合、C軸回転速度に比例するようにZ軸の同期運転を行う。この場合の被加工物201のC軸角度と工具202のZ軸位置との関係を
図4(b)に示す。
【0008】
さらに、創成歯車加工機300で被加工物301を加工する場合、B軸の回転速度に比例(比率=条数/歯数)するようにC軸の同期運転を行う。この場合の被加工物301のC軸角度と工具302のB軸角度との関係を
図4(c)に示す。
【0009】
このように2軸を同期させて被加工物の加工を行う場合、加工の負荷外乱と、工具、被加工物、及びこれらを駆動する機構部の剛性に依存して、振動が発生する場合がある。さらにこの振動は、被加工物と工具とが接触していることによる軸間の干渉で増幅され、加工精度に悪影響を与えるおそれがある。
【0010】
このような場合、従来は各軸を駆動する電動機の応答性を下げて振動を抑制する方法、あるいは、それぞれの軸で独立して制振制御を行う方法によって、振動低減を行っていた。
【0011】
例えば、機械剛性に応じた振動抑制フィルタによって、軸毎に振動を抑制する方法が知られている(例えば、特許文献1)。この従来技術では、単独軸の振動を抑制することは可能であるが、軸間の干渉による振動を抑制する効果は不十分であるという問題がある。
【0012】
一方、軸間の干渉による振動を低減する方法として、1つの稼働部材を2つの電動機で駆動する場合、相互の電動機の速度差を使って、トルク指令を補正する制振制御方法が知られている(例えば、特許文献2)。この従来技術は、2つの電動機の結合は固定されており、また2つの電動機は同じ速度で駆動される。従って、この従来技術は、工具と被加工物とが接触して加工する場合の振動を低減する方法に関するものではなく、異なる速度で同期する場合の振動を低減することはできない。また、工具と被加工物との関係のように非結合状態となるような場合には対応できないという問題がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係るサーボ制御装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0020】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係るサーボ制御装置について図面を用いて説明する。
図5に本発明の実施例1に係るサーボ制御装置1を含む加工システムのブロック図を示す。本発明の実施例1に係るサーボ制御装置1は、第1の軸であるB軸に設けられた第1電動機304、及び第2の軸に設けられた第2電動機303を同期させて駆動するサーボ制御装置であって、第1の軸の速度フィードバック量を取得する第1軸速度フィードバック取得部2と、第1の軸と同期する第2の軸の速度フィードバック量を取得する第2軸速度フィードバック取得部3と、第1の軸の速度フィードバック量を第2の軸の速度フィードバック量と対応させるための変換係数を取得し、該変換係数を用いて第1の軸の速度フィードバック量を変換する速度変換部4と、変換された第1の軸の速度フィードバック量と、第2の軸の速度フィードバック量との速度差を計算する速度差計算部5と、速度差を用いて制振のためのトルク補正値を計算するトルク補正計算部6と、トルク補正値を用いて、第2の軸のトルク指令を補正する第2軸トルク指令補正部7と、第1の軸のトルク指令を補正するために、変換係数を用いてトルク補正値を変換するトルク補正値変換部8と、変換されたトルク補正値を用いて、第1の軸のトルク指令を補正する第1軸トルク指令補正部9と、を備えることを特徴とする。
【0021】
サーボ制御装置1には、コンピューター数値制御装置(Computer Numerical Control:CNC)等の上位制御装置20から、工具302を第1の軸であるB軸を中心に回転させる第1電動機304を制御するための工具指令と、被加工物であるワーク301を第2の軸であるC軸を中心に回転させる第2電動機303を制御するためのワーク指令が入力される。
【0022】
工具指令は、工具側(第1の軸側)の第1位置制御部11に入力され、第1位置制御部11は速度指令を出力する。出力された速度指令は、工具側の第1速度制御部21に入力され、トルク指令が出力される。
【0023】
出力されたトルク指令は、トルク補正値変換部8から出力されたトルク補正値とともに、第1軸トルク指令補正部9に入力され、第1軸トルク指令補正部9からは補正されたトルク指令が出力される。
【0024】
出力された、補正後のトルク指令は工具側の第1電流制御部31に入力され、電流指令が出力される。出力された電流指令は第1アンプ305に入力され、第1電動機304を駆動し、工具302を、B軸を中心に回転させる。
【0025】
第1電動機304には速度センサ(図示せず)が設けられており、速度センサで検出された第1の軸の速度フィードバック量は、第1軸速度フィードバック取得部2に入力される。ただし、第1の軸の速度フィードバック量は、速度変換部4が直接取得してもよい。
【0026】
一方、ワーク指令は、ワーク側(第2の軸側)の第2位置制御部12に入力され、第2位置制御部12は速度指令を出力する。出力された速度指令は、ワーク側の第2速度制御部22に入力され、トルク指令が出力される。
【0027】
出力されたトルク指令は、トルク補正計算部6から出力されたトルク補正値とともに、第2軸トルク指令補正部7に入力され、第2軸トルク指令補正部7からは補正されたトルク指令が出力される。
【0028】
出力された、補正後のトルク指令は工具側の第2電流制御部32に入力され、電流指令が出力される。出力された電流指令は第2アンプ306に入力され、第2電動機303を駆動し、ワーク301を、C軸を中心に回転させる。
【0029】
第2電動機303には速度センサ(図示せず)が設けられており、速度センサで検出された第2の軸の速度フィードバック量は、第2軸速度フィードバック取得部3に入力される。ただし、第2の軸の速度フィードバック量は、速度差計算部5が直接取得してもよい。
【0030】
本発明の実施例1に係るサーボ制御装置では、第1電動機304及び第2電動機303からなる2軸の電動機が所定の速度比率で同期しながら加工する場合、それぞれの電動機の速度差を利用して振動を低減する補正量を計算し、この補正量を用いてトルク指令を補正することによって軸間の干渉による振動を低減する。
【0031】
上記の速度差に関しては、上位制御装置20から変換係数を取得して、この変換係数を使って、一方(第1の軸)の速度フィードバック量を、他方(第2の軸)の速度フィードバック量相当の重みに変換して、速度差を求める。具体的には、速度変換部4が、第1の軸の速度フィードバック量を第2の軸の速度フィードバック量と対応させるための変換係数を取得し、該変換係数を用いて第1の軸の速度フィードバック量を変換する。または、逆に第2の軸の速度フィードバックを、第1の軸の速度フィードバック相当の重みに変換しても良い。
【0032】
なお、上記の変換係数は、それぞれの軸の速度指令の比に相当するので、下記の式のように、それぞれの速度指令から計算することも可能である。
変換係数=第2の軸の速度指令/第1の軸の速度指令
【0033】
即ち、変換係数を上位制御装置20から取得する変換係数取得部、及び変換係数を第1の軸の速度指令および第2の軸の速度指令に基づいて計算する変換係数計算部のうちの少なくとも一方を含むようにすることが好ましい。
【0034】
図5に示した創成歯車加工機の例では、ワーク301の歯車の歯数Tと、工具(砥石、あるいはカッタ)302の条数Lの比(=L/T)で、ワーク301と工具302とが同期して回転しながら加工を行う。ワーク指令速度は以下の式により求められる。
ワーク指令速度=工具(カッタ)指令速度×L/T
【0035】
サーボ制御装置1は、上位制御装置20から、この比(=L/T)、即ち、変換係数を取得して、工具側の第1の軸の速度フィードバック量にこの比を乗算して、ワーク速度相当の重みに変換し、ワーク側の第2の軸の速度フィードバック量との差分である速度差を以下の式により求める。
速度差=ワーク速度フィードバック−工具(カッタ)速度フィードバック×L/T
【0036】
具体的には、速度差計算部5が、変換された第1の軸の速度フィードバック量と、第2の軸の速度フィードバック量との速度差を計算する。
【0037】
このようにして計算された速度差を用いて、トルク補正計算部6が制振のためのトルク補正値を計算する。トルク補正計算部6の構成図を
図6に示す。トルク補正計算部6は、ねじれ剛性を補正するために、速度差を積算した値に第1定数を乗算する積分計算部61と、摩擦を補正するために、速度差に第2定数を乗算する比例計算部62と、積分計算部61の計算結果と、比例計算部62の計算結果とを加算する加算部63と、加算された計算結果の位相調整を行う位相進めフィルタ64と、を含む。
【0038】
トルク補正計算部6におけるトルク補正手順について詳細に説明する。
図6に示すように、速度差計算部5が、速度変換部4で変換された第1の軸(工具)の速度フィードバック量と、第2の軸(ワーク)の速度フィードバック量との速度差を計算する。計算された速度差について、摩擦を補償する比例計算と、バネ剛性を補償する積分計算が実行される。例えば、以下の計算式によって比例計算及び積分計算が行われる。
P=K2×速度差 (比例計算)
I=K1×Σ速度差 (積分計算)
但し、K1、K2は定数、Σは積分である。
ここで、摩擦は、工具やワークの軸受け(ベアリング)等の回転摺動部の摩擦、及び工具とワークとの接触部分の摩擦を意味している。また、バネ剛性は、工具とその駆動電動機、ワークとその駆動電動機の結合部分のねじれ剛性と、工具、例えば創成歯車加工においては、砥石やホブカッタの弾性変形を意味している。
【0039】
比例計算、及び積分計算された結果は、加算部63で加算(=P+I)され、その結果に基づいて位相進めフィルタ64で位相調整する。これは速度フィードバックのサンプリング等の遅れを補償するものである。
【0040】
この位相調整された結果はトルク補正となり、これは電動機に加わる外乱に相当し、この補正をトルク指令に加算もしくは減算することでフィードフォワード的に外乱を抑制し、振動を低減することができる。
【0041】
このトルク指令は、上記の上位制御装置20から取得した変換係数を使って、第2の軸のためのトルク補正に変換して、トルク指令に加算もしくは減算する。または逆に第1の軸のためのトルク補正に変換しても良い。
【0042】
例えば、上記の創成歯車加工機の場合、以下の式により、ワーク軸の新たなトルク指令及び工具(砥石)軸の新たなトルク指令が求められる。
ワーク軸の新たなトルク指令=ワーク軸のトルク指令+トルク補正
工具(砥石)軸の新たなトルク指令=工具(砥石)軸のトルク指令+トルク補正×(T/L)
【0043】
なお、上記トルク補正は、工具と被加工物とが接触している状態、すなわち加工されている状態でのみ、トルク指令に加算もしくは減算されるものである。従って、接触しているか否かを示す加工状態信号を、上位制御装置もしくは外部機器から取得して、その状態信号に応じて補正を行うか否かを判断する必要がある。
【0044】
そこで、
図5に示すサーボ制御装置1は、工具302と被加工物であるワーク301とが接触しているか否かを示す加工状態信号を受信する結合状態検出部10をさらに有することが好ましい。第1軸トルク指令補正部9及び第2軸トルク指令補正部7は、この加工状態信号に応じて、第1の軸のトルク指令または第2の軸のトルク指令を補正するようにすることができる。
図5において、工具302とワーク301とが結合状態にある場合には、第1スイッチ41がオン状態となり、トルク補正値変換部8から出力されたトルク補正値が第1軸トルク指令補正部9に入力される。また、同様に、工具302とワーク301とが結合状態にある場合には、第2スイッチ42がオン状態となり、トルク補正計算部6から出力されたトルク補正値が第2軸トルク指令補正部7に入力される。
【0045】
次に、本発明のサーボ制御装置の動作手順について図面を用いて説明する。
図7は、本発明の実施例1に係るサーボ制御装置の動作手順を説明するためのフローチャートである。まず、ステップS101において、第1軸速度フィードバック取得部2(
図5参照)が、第1の軸の速度フィードバック量を取得する。次に、ステップS102において、第2軸速度フィードバック取得部3が、第1の軸と同期する第2の軸の速度フィードバック量を取得する。
【0046】
次に、ステップS103において、速度変換部4が、第1の軸の速度フィードバック量を第2の軸の速度フィードバック量と対応させるための変換係数を取得する。さらに、ステップS104において、速度変換部4が、この変換係数を用いて第1の軸の速度フィードバック量を変換する。
【0047】
次に、ステップS105において、速度差計算部5が、変換された第1の軸の速度フィードバック量と、第2の軸の速度フィードバック量との速度差を計算する。
【0048】
次に、ステップS106において、トルク補正計算部6が、計算された速度差から制振のためのトルク補正値を計算する。
【0049】
次に、ステップS107において、結合状態検出部10が、工具と被加工物とが接触しているか否かを示す加工状態信号を受信する。次に、ステップS108において、第2軸トルク指令補正部7は、加工状態信号に応じて、トルク補正を第2の軸のトルク指令に加算することにより、第2の軸のトルク指令を補正する。次に、ステップS109において、第1軸トルク指令補正部9が、加工状態信号に応じて、トルク補正を、変換係数を用いて第1の軸のトルクに変換し、その結果を第1のトルク指令から減算する。
【0050】
以上のようにして、トルク指令を補正することによって得られる効果を、創成歯車加工機を例にとって数値シミュレーションで確認した結果について説明する。
図8は加工外乱がワーク及び工具に加わった場合の同期誤差の時間的変化を示す図である。一方、
図9は、本発明の実施例1に係るサーボ制御装置を用いた場合の同期誤差の時間的変化を示す図である。
【0051】
制御対象は4慣性系モデルで、工具軸電動機、工具(砥石)、ワーク歯車、ワーク軸電動機の4つのイナーシャがそれぞれバネと粘性摩擦で結合している状態をモデル化した。この場合、ワーク歯車とワーク軸電動機の結合剛性は、機械共振周波数300[Hz]とし、工具(砥石)と工具軸電動機の結合剛性は1[kHz]とした。ここで加工時に11[Hz]の加工外乱がワーク及び工具に加わった場合の同期誤差(=ワーク軸速度−工具軸速度×L/T)を数値シミュレーションで確認すると
図8のように300[Hz]の振動が発生し、不安定になる。なお、この場合のワーク軸の速度制御帯域は55[Hz]とした。
図8のグラフの縦軸は、同期誤差[rad]、横軸は時間[sec]である。
【0052】
実施例1に係るサーボ制御装置を用いた場合には、
図9に示すように、速度制御帯域を150[Hz]まで上げても振動は発生せず、安定であった。
【0053】
以上のように、実施例1に係るサーボ制御装置によれば、2つの電動機の速度差を使ってトルク補正を求め、これをそれぞれの軸のトルク指令に加算もしくは減算することで振動を低減することができる。
【0054】
さらに、制御対象の摩擦を補正する比例項と、ねじれ剛性を補正する積分項を持つこと、さらにサンプリング遅れを補正する位相調整器(位相進めフィルタ)を追加することで、高い周波数の振動を抑制することが可能である。
【0055】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係るサーボ制御装置について図面を用いて説明する。
図10に本発明の実施例2に係るサーボ制御装置のトルク補正計算部の構成を示す。トルク補正計算部以外の構成は
図5に示した実施例1のサーボ制御装置と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0056】
本発明の実施例2に係るサーボ制御装置は、第1の軸に設けられた第1電動機、及び第2の軸に設けられた第2電動機を同期させて駆動するサーボ制御装置であって、第1の軸の速度フィードバック量を取得する第1軸速度フィードバック取得部2と、第1の軸の速度フィードバック量を第2の軸の速度フィードバック量と対応させるための変換係数を取得し、該変換係数を用いて第1の軸の速度フィードバック量を変換する速度変換部4と、変換された第1の軸の速度フィードバック量を微分し、所定の定数を乗算する第2軸微分計算部65と、位相調整を行う第2軸位相進みフィルタ66と、得られた第2軸用トルク補正値に基づいて、第2の軸のトルク指令を補正する第2軸トルク指令補正部7(
図5参照)と、第1の軸と同期する第2の軸の速度フィードバック量を取得する第2軸速度フィードバック取得部3と、第2の軸の速度フィードバック量を微分し、所定の定数を乗算する第1軸微分計算部67と、位相調整を行う第1軸位相進みフィルタ68と、変換係数を用いて、得られた第1軸用トルク補正値を変換するトルク補正値変換部8と、変換された第1軸用トルク補正値を用いて、第1の軸のトルク指令を補正する第1軸トルク指令補正部9と、を備えることを特徴とする。
【0057】
実施例2に係るサーボ制御装置は、実施例1のサーボ制御装置で用いたような速度差を使用せず、第1軸微分計算部67及び第2軸微分計算部65により一方の軸の速度フィードバックを微分計算して、第1軸位相進みフィルタ68及び第2軸位相進みフィルタ66により位相調整を行い、他方の軸のトルク指令を補正して振動を低減する点を特徴としている。
【0058】
例えば、上記の創成歯車加工機の場合、第1の軸である工具軸の速度フィードバックを、変換係数を使って第2の軸であるワーク軸の速度相当の重みに変換し、さらに第2軸微分計算部65により微分(サンプリング毎の差分)して、その結果に適切な定数を掛けて、第2軸位相進みフィルタ66で位相を調整し、ワーク軸のトルク指令から減算する。
【0059】
さらに、ワーク軸の速度フィードバックを第1軸微分計算部67により微分して、その結果に適切な定数を掛けて、第1軸位相進みフィルタ68で位相を調整し、上記の変換係数を使って工具軸相当の重みに変換し、工具軸のトルク指令から減算する。ワーク軸の新たなトルク指令及び工具(砥石)軸の新たなトルク指令は以下の式により求められる。
ワーク軸の新たなトルク指令=ワーク軸のトルク指令−K3×Δ工具軸の速度フィードバック×(L/T)
工具(砥石)軸の新たなトルク指令=工具(砥石)軸のトルク指令−K3×Δワーク軸の速度フィードバック×(T/L)
但し、K3は定数、Δは微分または差分である。
【0060】
なお、この方法においても、トルク補正は、工具と被加工物とが接触している状態、すなわち加工されている状態でのみ、トルク指令に加算もしくは減算されるものである。従って、接触しているか否かを示す加工状態信号を、上位制御装置もしくは外部機器から取得して、その状態信号に応じて補正を行うか否かを判断する必要がある。
【0061】
実施例2に係るサーボ制御装置による効果を実施例1の場合と同様に創成歯車加工機の場合を例にとって数値シミュレーションで確認した結果を
図11に示す。実施例2に係るサーボ制御装置においては、速度制御帯域を150[Hz]まで上げても振動は発生せず、安定であった。
【0062】
以上のように、実施例2に係るサーボ制御装置によれば、速度フィードバックを微分して加速度を求め、これに定数を掛けてトルク指令を補正することで,振動を低減することができる。
【0063】
以上の実施例の説明においては、創成歯車加工機を制御するサーボ制御装置を例にとって説明したが、これには限られず、本発明は、複数の軸を同期させて制御するサーボ制御装置であれば、立形マシニングセンタや旋盤等、他の工作機械にも適用可能である。