【実施例】
【0020】
図1は、本発明の一実施例に係る動翼体を搭載したガスタービンを表す概略構成図、
図2は、ガスタービンにおける動翼を表す概略図、
図3は、動翼の取付状態を表す動翼体の腰部断面図、
図4は、ダンパピンが装着された動翼体の要部断面図、
図5及び
図6は、ダンパピン及び調整ピースが装着された動翼体の要部断面図、
図7は、調整ピースの角度に対する反力/遠心力を表すグラフである。
【0021】
ガスタービンは、
図1に示すように、圧縮機11と燃焼器12とタービン13により構成されている。このガスタービンには、図示しない発電機が連結されており、発電可能となっている。
【0022】
圧縮機11は、空気を取り込む空気取入口20を有し、圧縮機車室21内に入口案内翼(IGV)22が配設されると共に、複数の静翼23と動翼24が前後方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配設されてなり、その外側に抽気室25が設けられている。燃焼器12は、圧縮機11で圧縮された圧縮空気に対して燃料を供給し、点火することで燃焼可能となっている。タービン13は、タービン車室26内に複数の静翼27と動翼28が前後方向(後述するロータ32の軸方向)に交互に配設されている。このタービン車室26の下流側には、排気車室29を介して排気室30が配設されており、排気室30は、タービン13に連続する排気ディフューザ31を有している。
【0023】
また、圧縮機11、燃焼器12、タービン13、排気室30の中心部を貫通するようにロータ(主軸)32が位置している。ロータ32は、圧縮機11側の端部が軸受部33により回転自在に支持される一方、排気室30側の端部が軸受部34により回転自在に支持されている。そして、このロータ32は、圧縮機11にて、各動翼24が装着されたロータディスク35が複数重ねられて固定され、タービン13にて、各動翼28が装着されたロータディスク36が複数重ねられて固定されており、排気室30側の端部に図示しない発電機の駆動軸が連結されている。
【0024】
そして、このガスタービンは、圧縮機11の圧縮機車室21が脚部37に支持され、タービン13のタービン車室26が脚部38により支持され、排気室30が脚部39により支持されている。
【0025】
従って、圧縮機11の空気取入口20から取り込まれた空気が、入口案内翼22、複数の静翼23と動翼24を通過して圧縮されることで高温・高圧の圧縮空気となる。燃焼器12にて、この圧縮空気に対して所定の燃料が供給され、燃焼する。そして、この燃焼器12で生成された作動流体である高温・高圧の燃焼ガス(作動流体)が、タービン13を構成する複数の静翼27と動翼28を通過することでロータ32を駆動回転し、このロータ32に連結された発電機を駆動する。一方、排気ガス(燃焼ガス)のエネルギは、排気室30の排気ディフューザ31により圧力に変換され減速されてから大気に放出される。
【0026】
このように構成されたガスタービンにて、本実施例の動翼体は、タービン13に適用されたものであって、
図2及び
図3に示すように、ロータ32と一体に回転可能なロータディスク36と、このロータディスク36の外周部から放射状に延出するように装着される複数の動翼28とを有している。
【0027】
動翼28は、翼根部41と、プラットホーム42と、翼部43とから構成されている。翼根部41は、ロータ32の軸心方向視の断面形状が、所謂、クリスマスツリー形状に形成され、ロータディスク36に板厚方向から嵌合して固定可能となっている。プラットホーム42は、翼根部41と翼部43とをつなぐ台座形状をなし、ロータディスク36の外周を覆うように、翼根部41と一体となる湾曲したプレート形状をなしている。翼部43は、横断面形状が流線形をなし、この形状を確保しながら徐々に捩られながら延出しており、基端部がプラットホーム42に固定されて先端部がケーシング(図示略)の内壁面側に延出しており、燃焼ガスを円滑に流動させるべく機能する。
【0028】
一方、ロータディスク36は、外周部に動翼28の翼根部41の断面形状とほぼ同じ形状をなす嵌合溝51が、周方向に等間隔で軸方向に沿って形成されている。この各嵌合溝51は、動翼28の翼根部41が軸方向から挿入されて固定される。そして、複数の動翼28がロータディスク36に組み付けられることで、ロータディスク36の外周から複数の動翼28における翼部43が放射状に延出した動翼体が構成される。
【0029】
このように構成された本実施例の動翼体は、周方向に隣接する動翼28のプラットホーム42同士の隙間に装着されるダンパピン(ダンパ部材)61と、プラットホーム42とダンパピン61との間に介装されてこのダンパピン61に対する接触角度を調整可能な調整ピース(調整部材)62とが設けられている。この場合、周方向に隣接するプラットホーム42同士の対向面のうちの少なくともいずれか一方に、ロータディスク36の放射方向に対してロータ32の中心側が拡大するような傾斜面が設けられ、この傾斜面に調整ピース62を位置決め可能な取付凹部が設けられている。
【0030】
即ち、
図4に示すように、隣接する動翼28の各プラットホーム42のうち、一方のプラットホーム42aは、ロータディスク36の放射方向に平行な側面71aを有し、他方のプラットホーム42bは、ロータディスク36の放射方向に対してロータ32の中心側が拡大するような側面となる傾斜面71bを有している。そして、プラットホーム42bは、この傾斜面71bに取付凹部72が形成されており、この取付凹部72はロータ32の軸方向に沿った溝となっている。本実施例にて、傾斜面71b(取付凹部72)は、ロータ32の径方向、つまり、ロータディスク36の放射方向に対する角度がθ
0に設定されている。
【0031】
そして、プラットホーム42aの側面71aと、プラットホーム42bの傾斜面71b(取付凹部72)との間に、ダンパピン61が介装されている。この場合、ダンパピン61は、取付凹部72内に配置されており、端部が図示しない支持部材により支持されることが好ましい。
【0032】
また、本実施例では、ダンパピン61に対するプラットホーム42bの接触角度が調整可能となっている。即ち、
図5に示すように、調整ピース62aは、上端部が薄くて下端部が厚い板厚を有し、ロータディスク36の軸方向に長い板部材であって、プラットホーム42bの傾斜面71bに形成された取付凹部72に嵌合している。そのため、ダンパピン61は、プラットホーム42aの側面71aと、プラットホーム42bにおける傾斜面71bの取付凹部72に支持された調整ピース62aとの間に介装されることとなる。この場合、調整ピース62aは、ロータ32の径方向、つまり、ロータディスク36の放射方向に対する角度がθ
1(θ
1<θ
0)に設定されている。
【0033】
また、
図6に示すように、調整ピース62bは、上端部が厚くて下端部が薄い板厚を有し、ロータディスク36の軸方向に長い板部材であって、プラットホーム42bの傾斜面71bに形成された取付凹部72に嵌合している。そのため、ダンパピン61は、プラットホーム42aの側面71aと、プラットホーム42bにおける傾斜面71bの取付凹部72に支持された調整ピース62bとの間に介装されることとなる。この場合、調整ピース62bは、ロータ32の径方向、つまり、ロータディスク36の放射方向に対する角度がθ
2(θ
1<θ
0<θ
2)に設定されている。
【0034】
ここで、各調整ピース62(62a,62b)は、プラットホーム42(42a,42b)及びダンパピン61よりも軟質材料により構成されている。
【0035】
従って、
図4に示すように、ロータ32と共にロータディスク36が回転し、各動翼28が回転すると、ダンパピン61に遠心力CFが作用することから、一方のプラットホーム42aの側面71aからダンパピン61に反力Naが作用し、他方のプラットホーム42bの傾斜面71bからダンパピン61に反力Nbが作用する。一方、ガスタービンの運転中は、各動翼28に燃焼ガスからの励振力が作用するため、各動翼28は振動することとなり、プラットホーム42a,42bとダンパピン61との接触部に摩擦力が発生する。その結果、プラットホーム42a,42bとダンパピン61との接触部に発生する摩擦力が動翼28の励振力を減衰させることとなる。
【0036】
しかし、ガスタービンは、その機種により定格回転数が相違するものであり、このときの周波数(励振力)に応じた固有の振動数を有している。そのため、いずれの機種のガスタービンであっても、このダンパピン61により動翼28の励振力を減衰させることができるものでもない。
【0037】
そこで、
図5及び
図6に示すように、プラットホーム42bの傾斜面71bに形成された取付凹部72に形状の異なる調整ピース62a,62bを装着することで、ダンパピン61に対するプラットホーム42b(調整ピース62a,62b)の接触角度を変更する。そのため、ダンパピン61とプラットホーム42b(調整ピース62a,62b)との間に発生する摩擦力が変わり、特定のガスタービンの固有振動数に対応した摩擦力に調整することが可能となる。
【0038】
即ち、ダンパピン61に作用する遠心力をCF、一方のプラットホーム42aの側面71aからダンパピン61に作用する反力をNa、他方のプラットホーム42b(傾斜面71b、調整ピース62a,62b)からダンパピン61に作用する反力をNbとする。また、ダンパピン61に対するプラットホーム42b(傾斜面71b、調整ピース62a,62b)の傾斜角度をθとする。このとき、傾斜角度θに対する反力Na,Nb/遠心力CFは、
図7に示すグラフに表すものとなる。ここで、N/CFは、Na/CFとNb/CFの合計である。
【0039】
このグラフからもわかるように、傾斜角度θが大きくなると、反力/遠心力N/CFが減少することとなり、プラットホーム42b(傾斜面71b、調整ピース62a,62b)とダンパピン61との間で発生する摩擦力も小さくなる。つまり、適正な調整ピース62a,62bを用いることで、ダンパピン61との摩擦力を調整することで、特定のガスタービンに対する最適な摩擦力とし、十分なダンピングを付与して適正に動翼28の振動の発生を抑制することができる。
【0040】
なお、本実施例のようにガスタービンのタービン13に搭載される動翼体の場合、翼部43が高温の燃焼ガスにより高温雰囲気にさらされることから、これにより生じる動翼28そのものの過剰な温度上昇を抑える必要がある。そのため、ロータディスク36の外周面と、周方向で隣接する動翼28におけるプラットホーム42から翼根部41にあたる部分とにより、冷却空気を流通させるための隙間が設けられている。その結果、この隙間に冷却空気が流通することで、動翼28との間で直接的に熱交換がなされ、動翼28を冷却して温度上昇を抑止することができる。但し、隣接する動翼28におけるプラットホーム42同士の隙間から燃焼ガスが過剰に漏れ出すと、タービン効率が低下してしまう。そのため、上述したダンパピン61がその燃焼ガスの過剰な漏出を防止するシールピンとして機能する。
【0041】
このように本実施例の動翼体にあっては、ロータ32と一体に回転可能なロータディスク36と、このロータディスク36の外周部から放射状に延出するように装着される複数の動翼28と、周方向に隣接する動翼28のプラットホーム42同士の隙間に装着されるダンパピン61と、プラットホーム42とダンパピン61との間に介装されてダンパピン61に対する接触角度を調整可能な調整ピース62とを設けている。
【0042】
従って、プラットホーム42とダンパピン61との間にこのダンパピン61に対する接触角度を調整可能な調整ピース62を介装しており、この接触角度を調整すると、動翼28の回転時にプラットホーム42から調整ピース62を介してダンパピン61に入力する反力が増減することとなる。そのため、動翼28の形状や回転数などに応じて最適な接触角度を選定することができ、動翼28に発生する振動を適正に抑制することができる。
【0043】
また、本実施例の動翼体では、周方向に隣接するプラットホーム42同士の対向面のうちの少なくともいずれか一方に、ロータディスク36の放射方向に対してロータ32の中心側が拡大するような傾斜面71bを設け、この傾斜面71bに調整ピース62を位置決め可能な取付凹部72を設けている。従って、調整ピース62を取付凹部72に装着することで、この調整ピース62を容易に、且つ、安定して位置決めすることができ、適正に動翼28に発生する振動を抑制することができる。
【0044】
また、本実施例の動翼体では、調整ピース62を、プラットホーム42及びダンパピン61より軟質材料により構成している。従って、長期の使用により軟質な調整ピース62が磨耗することとなり、変更が困難な動翼28やダンパピン61を変更不要とし、磨耗した調整ピース62を交換するだけで長期的に安定した減衰機能を維持することができる。
【0045】
なお、上述した実施例では、プラットホーム42bとダンパピン61との間に調整ピース62を介装したが、プラットホーム42aとダンパピン61との間に調整ピースを介装してもよく、両方に介装してもよい。
【0046】
また、上述した実施例にて、本発明に係る動翼体をガスタービンのタービン13に適用して説明したが、圧縮機11に適用してもよく、また、ガスタービンに限らず、蒸気タービンなどその他の回転機械に適用することができる。