(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863959
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】BOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システム
(51)【国際特許分類】
E21B 47/00 20120101AFI20160204BHJP
E21B 43/00 20060101ALI20160204BHJP
E21B 23/00 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
E21B47/00
E21B43/00 Z
E21B23/00
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-513459(P2014-513459)
(86)(22)【出願日】2012年6月14日
(65)【公表番号】特表2014-531530(P2014-531530A)
(43)【公表日】2014年11月27日
(86)【国際出願番号】KR2012004681
(87)【国際公開番号】WO2012173395
(87)【国際公開日】20121220
【審査請求日】2013年12月2日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0057308
(32)【優先日】2011年6月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594006932
【氏名又は名称】ヒュンダイ ヘビー インダストリーズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI HEAVY INDUSTRIES CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アン,ユ−ウォン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヨン−チョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ボム−ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン−グァン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,ジェ−ジン
【審査官】
石井 哲
(56)【参考文献】
【文献】
韓国公開特許第10−2011−0061872(KR,A)
【文献】
米国特許第3987910(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 1/00−49/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定式の構造物または浮遊式の構造物のプラットフォームに設置されるデリック;
前記デリックに設置され、海底面に掘削孔を形成し、形成された掘削孔にケーシングパイプアセンブリ及びBOPアセンブリの設置作業を行うアクティビティ;
前記デリックの下部に位置するように設置され、前記アクティビティと共に複数のライザーとを組み立ててBOPアセンブリを形成し、形成されたBOPアセンブリを支持したまま移動するBOP用トロリー;及び
前記BOP用トロリーの移動方向と平行に延長するようにムーンプールの作業端に形成され、水中に位置するBOPアセンブリがBOP用トロリーによって移動する時またはBOPアセンブリが水中の保管場所に移動した時に、BOPアセンブリから延長するライザーの揺れを抑制するスロットを含み、
前記スロットの幅が前記ライザーの直径よりも大きいことを特徴とするBOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システム。
【請求項2】
前記スロットとライザーとの間に発生する衝撃を緩和するためのダンパーが、スロットの内面に設けられることを特徴とする請求項1に記載のBOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システム。
【請求項3】
前記デリックに設置され、保管所に積載されたケーシングパイプを受け取って引き揚げる補助アクティビティ;及び
前記デリックの下部に位置するように設置され、前記補助アクティビティと連動して複数のケーシングパイプを組み立ててケーシングパイプアセンブリを形成し、形成されたケーシングパイプアセンブリを支持したまま移動するケーシングパイプ用トロリーをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のBOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システム。
【請求項4】
前記補助アクティビティは、
前記デリックの上端部に設けられたクラウンブロック;
前記クラウンブロックによって上下に移動するトラベリングブロック;
前記トラベリングブロックの下部に設置され、ケーシングパイプを支持するエレベータブロック;及び
前記トラベリングブロックの垂直下部に位置するようにドリルフロアに設置されたロタリーテーブルからなることを特徴とする請求項3に記載のBOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システム。
【請求項5】
前記スロットは、下部に行くほど幅Wがだんだん大きくなる台形型の断面を有するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載のBOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海底地層構造の探査または資源の採掘のために海底面に掘削孔を形成する掘削システムに関するものであって、特に、掘削孔を形成するためのアクティビティのほか、掘削作業時に必要とされるBOPアセンブリのような掘削用設備を予め組み立てて保管及び移動できるようにするBOPアセンブリ用のトロリー及びスロットを更に備える掘削システムであり、追加的に掘削孔を形成する時または他の目的で短距離移動することが必要とされる時に、水中のBOPアセンブリを船体の内部に引き揚げずに水中に保管した状態のままで、船舶が移動できるようにする、BOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海底資源の探査または採掘のために海底面に掘削孔を形成するにあたって、掘削孔は、固定式または移動式の構造物のプラットフォームに搭載された掘削設備によって形成される。
【0003】
図1は、従来の掘削システムの構造図を示しており、
図1を参照して、掘削孔を形成するプロセスを説明する。
【0004】
下部の先端にドリルビット22(drill bit)が備えられたドリルパイプ21(drill pipe)を、デリック10に設けられたトップドライブ20に設置する。この時、上記トップドライブは、ドリルパイプを回転させ、デリックの上端部に設けられたクラウンブロック30(crown block)によって支持されて上下に移動するトラベリングブロック40(travelling block)に結合されることにより、上下に移動することになる。従って、上記トップドライブとクラウンブロックによって、ドリルパイプが回転すると共に下降することにより、海底面に掘削孔を形成し、掘削孔の深さが増加するにつれて、ドリルパイプの単位ユニットを追加的に組み立てる方式にて、掘削孔の深さに応じてドリルパイプの長さを延長させることになる。
【0005】
一方、掘削孔が一定の深さで形成されると、掘削孔の崩れを防止するためのケーシングパイプ50を掘削孔に挿入した後、セメンティング(cementing)して掘削孔に挿入されたケーシングパイプ50を固定させる。
【0006】
次に、より小さい直径のドリルビットを使用して掘削孔を所定の深さだけ更に形成し、以前に掘削孔に挿入されていたケーシングパイプより小さい直径を有するもう一つのケーシングパイプを掘削孔に挿入した後、セメンティングして固定させる。
【0007】
上記のような掘削孔の形成およびケーシングパイプの設置のプロセスを繰り返すことにより、所望の深さを有する掘削孔を形成することになり、掘削孔を形成する際において海底にある高圧のガスや水または石油などが掘削孔を通って突然噴出することを防止するためのBOP 60(Blow Out Preventer)を、掘削孔(ケーシングパイプ)の上端部に設置し、BOP60は、ライザー61によってプラットフォーム70に連結される。
【0008】
一方、上記ケーシングパイプやライザーを取り付ける作業は、所定の長さを有する複数の単位ユニットを相互に組み立てて一つのアセンブリを形成した後、形成されたアセンブリを掘削孔またはBOPに設置する。
【0009】
上記のようなアセンブリの形成および設置の作業は、デリックに備えられたアクティビティ(Activity)によって行われ、アクティビティは、クラウンブロック30、トラベリングブロック40、トップドライブ20、およびロータリテーブル80からなる。
【0010】
しかし、上記のような従来の掘削システムは、デリックに1つのアクティビティが備わったシングルアクティビティのタイプであって、掘削作業と、ケーシングパイプの組み立ておよび設置作業と、ライザーの組み立ておよび設置作業のうちいずれかの作業がアクティビティによって進められているプロセスにおいて、他の作業を並行できないという問題点を有する。
【0011】
すなわち、トップドライブにドリルパイプが設けられ、掘削孔を形成する作業が行われている場合には、ケーシングパイプまたはライザーの組み立て作業ができないことから、最終的に所望の深さの掘削孔が形成されるまで待ってから、掘削孔のボーリングが完了すると、ドリルビットとドリルパイプをトップドライブから分離した後、ケーシングパイプやライザーの組み立ておよび設置作業を行わなければならないので、作業の効率が低下し、作業時間も長くかかる弊害を有する。
【0012】
また、シングルアクティビティ(Single activity)タイプの掘削システムは、他の掘削孔を形成するためにBOPを既存の掘削孔から分離しようとする場合、アクティビティを使用してライザーとBOPを掘削孔(ケーシングパイプ)から分離および引き揚げた後、BOPとライザーを完全に分離して所定の積載所に保管しなければならなかった。これは、掘削孔から分離されたBOPアセンブリ(BOP+ライザー)をアクティビティにそのまま放っておくと、他の作業が不可能であるため、分離されたBOPアセンブリを完全に分離し、その後、再び組み立てて使用する必要があるので、無駄な時間をたくさん費やすことになってしまう問題点を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記のような問題点を考慮してなされたものであって、本発明の目的は、他の掘削孔を形成する場合または他の目的でBOPアセンブリを水中に吊るしているドリルシップの短距離移動が必要とされる場合に、BOPアセンブリを船体内部に引き揚げずに水中に吊るしたまま、ドリルシップが移動できるようにする、BOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システムを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、掘削作業を行うアクティビティのほか、補助アクティビティを更に備えて、掘削作業中にケーシングパイプアセンブリを形成できるようにすることにより、掘削作業の効率を高めることができる掘削システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記のような目的を達成し、従来技術の問題点を除去するための課題を遂行する本発明のBOPアセンブリを水中保管するためのスロットを有する掘削システムは、固定式または浮遊式の構造物のプラットフォームに設置されたデリックと、前記デリックに設置され、海底面に掘削孔を形成し、形成された掘削孔にケーシングパイプアセンブリとBOPアセンブリを設置する作業を実施するアクティビティと、前記デリックの下部に位置するように設置され、前記アクティビティと共に、複数のライザーとBOPを組み立ててBOPアセンブリを形成し、形成されたBOPアセンブリを支持したまま移動するBOP用トロリーと、前記BOP用トロリーの移動方向と平行に延長するようにムーンプールの作業端に形成され、水中に位置するBOPアセンブリがBOP用トロリーによって移動する時またはBOPアセンブリが水中の保管場所に移動する時に、BOPアセンブリから延長するライザーの揺れを抑制するスロットを含むことをその特徴とする。
【0016】
また、前記スロットとライザーとの間に発生する衝撃を緩和するためのダンパーが、スロットの内面に設けられることができる。
【0017】
また、前記スロットの幅は、ライザーの直径よりも大きく形成されることが望ましい。
【0018】
また、前記デリックに設置され、保管所に積載されているケーシングパイプを受け取って引き揚げる補助アクティビティと、前記デリックの下部に位置するように設置され、前記補助アクティビティと連動して複数のケーシングパイプを組み立ててケーシングパイプアセンブリを形成し、形成されたケーシングパイプアセンブリを支持したまま移動するケーシングパイプ用トロリーとが更に含まれることができる。
【0019】
この時、前記補助アクティビティは、前記デリックの上端部に設置されたクラウンブロックと、前記クラウンブロックによって上下に移動するトラベリングブロックと、前記トラベリングブロックの下部に設置され、ケーシングパイプを支持するエレベータブロックと、前記トラベリングブロックの垂直下部に位置するように、ドリルフロアに設けられたロータリテーブルからなる。
【発明の効果】
【0020】
上記のような特徴を有する本発明によれば、BOPアセンブリを水中に吊るしているドリルシップの短距離移動が必要とされる場合に、BOPアセンブリを船体内部に引き揚げずに水中に吊るしたままでドリルシップが移動できるので、BOPアセンブリの分解と再組み立てが必要でなく、これにより、ドリルシップの移動時に要求される諸作業の利便性を高め、作業にかかる時間を大幅に削減できる効果がある。
【0021】
また、補助アクティビティを利用して、掘削作業中にケーシングパイプアセンブリを形成することができ、形成されたケーシングパイプアセンブリをケーシングパイプ用トロリーに保管しておいてから必要に応じてアクティビティを運搬して使用できるので、掘削作業の効率が向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】本発明の好ましい実施形態に係る掘削システムが適用されたドリルシップの側面図である。
【
図3】本発明に係るスロットがムーンプールの作業端に形成された状態を示す平面図である。
【
図4】本発明に係るBOP用トロリーの斜視図である。
【
図5】本発明に係るケーシングパイプ用トロリーの斜視図である。
【
図6】本発明に係るスロットの構造を示す横断面図である。
【
図7】本発明に係るスロットの構造を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付されている図面を参照しながら、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。本発明の実施例を説明するに当たり、関連した公知の機能または公知の構成についての具体的な説明が、本発明の要旨を余計に不明にする恐れがあると判断された場合、その詳細な説明を省略する。
【0024】
図2は、本発明の好ましい実施形態に係る掘削システムが適用されたドリルシップの側面図であり、
図3は、本発明に係るスロットがムーンプールの作業端に形成された状態を示す平面図であり、
図4は、本発明に係るBOP用トロリーの斜視図であり、
図5は、本発明に係るケーシングパイプ用トロリーの斜視図であり、
図6は、本発明に係るスロットの構造を示す横断面図であり、
図7は、本発明に係るスロットの構造を示す側断面図である。
【0025】
本発明の掘削システムは、他の掘削孔を形成する作業のために、または他の理由により、BOPアセンブリ210を水中に吊るしているドリルシップの短距離移動が必要とされる場合に、BOPアセンブリ210を水中の保管場所に移動させ、BOPアセンブリ210を船体内部に引き揚げなくてもドリルシップの短距離移動ができるようにする特徴を有するものであって、デリック110と、アクティビティ120と、BOP用トロリー130と、スロット140を含むようになっている。
【0026】
前記デリック110は、原油生産地に固定されるように設置された固定式構造物または掘削船のように移動可能な浮遊式構造物のプラットフォーム上に形成され、H-ビーム、アングル、スチールプレートを組み合わせて様々な構造として形成することができる。
【0027】
前記アクティビティ120は、デリック110に設置され、掘削孔を形成するための諸作業を行うものであって、デリック110に設置されたクラウンブロック121と、前記クラウンブロック121と連結されてクラウンブロック121によって上下に移動するトラベリングブロック122と、前記トラベリングブロック122によって支持され、ドリルパイプと結合されてドリルパイプを回転させるトップドライブ123と、前記トップドライブ123の垂直下部に位置するようにドリルフロアに設けられたロタリーテーブル124からなり、クラウンブロック121、トラベリングブロック122、トップドライブ123及びロタリーテーブル124は、従来の掘削システムにおいて使用されている周知慣用技術なので、具体的な説明は省略する。
【0028】
前記BOP用トロリー130は、アクティビティ120と連動して複数のライザー212とBOP 211を組み立てることによってBOPアセンブリ210を形成し、形成されたBOPアセンブリ210を支持したまま移動する。
【0029】
一方、前記BOP用トロリー130は、プラットフォームのフロアに敷設されたレール170に沿って水平方向に移動するように設置され、ライザー212が貫通するように形成されたトロリーボディ131と、前記トロリーボディ131上に設けられ、トロリーボディ131を貫通したライザー212を置いて互いに近づくか遠ざかる方向に移動しながら、ライザーを支持する一対のスパイダー132,133からなる。
【0030】
この時、前記トロリーボディ131には、駆動するためのエンジン、電気モーター、及び油圧モーターのうちいずれかの駆動源が内装として設けられることもでき、別途の油圧シリンダと連結されて油圧シリンダの駆動によってレール170に沿って移動するように形成することもでき、前記一対のスパイダー132,133は、ラックとピニオンを利用するか、または油圧シリンダを利用して動作するように構成することができる。
【0031】
前記スロット140は、ドリルシップに設けられたムーンプールMの作業端141に形成され、水中に位置するBOPアセンブリ210を保管場所に移動させる時に、BOPアセンブリ210から延長するライザー212の移動を案内すると共にライザーが揺れ過ぎることを抑制する。
【0032】
このようなスロット140は、BOP用トロリーの移動方向と平行に延長するように作業端 141に形成され、ライザーが安定的に移動できるようにすると共にライザーが揺れ過ぎることを抑制できるように、ライザーの直径より大きい幅を有する。
【0033】
また、前記スロット140の内面には、ドリルシップが移動する時に発生しうるライザーの揺れによってスロット140とライザーとの間に発生する衝撃を緩和するためのダンパー142が更に設けられることが望ましい。このようなダンパー142は、スロット140の内面にゴムのような弾性材を付着するか、またはスロット140の内面にウレタンコーティング層を設けることにより、構成することができる。
【0034】
また、前記スロット140は、BOP用トロリー130に支持されているライザー212が船舶の移動または海水の流動によって揺れることを考慮して、下部に行くほどだんだん幅Wが大きくなる台形型の断面構造を有することが望ましい。
【0035】
更に好ましくは、スロット140の前方側面140aも、ライザー212の揺れを考慮して、船首側に向かって下り傾斜構造であることが望ましい。
【0036】
上記のように、スロット140が台形型の断面形状を有するように、またスロット140の前方側面140aを傾斜するようにすると、水中の保管場所に移動したBOPアセンブリ210が揺れる場合に、BOPアセンブリ210から延長するライザー212の側面がスロット140の側面に均一に接触して、BOPアセンブリ210が揺れ過ぎることを安定的に抑制することができる。
【0037】
一方、本発明のように、一つのアクティビティ120を有するシングルアクティビティ120タイプの掘削システムでにおいて、アクティビティ120によって作業が行われる際に、ケーシングパイプアセンブリ220の組立作業を並行できるようにするのための補助アクティビティ150とケーシングパイプ用トロリー160を更に含めることができる。
【0038】
前記補助アクティビティ150は、アクティビティ120の隣接したところに位置するようにデリック110に設置され、ドリルシップの保管所に格納されたケーシングパイプを公知のパイプハンドリング装置を介して受け取って引き揚げることになり、ケーシングパイプ用トロリー160と連動して複数のケーシングパイプを組み立てることによって、ケーシングパイプアセンブリ220を形成する。
【0039】
このような補助アクティビティ150は、前記デリック110の上端部に設置されたクラウンブロック151と、前記クラウンブロック151によって上下に移動するトラベリングブロック152と、前記トラベリングブロック152の下部に設置されてケーシングパイプを支持するエレベータブロック153と、前記トラベリングブロック152の垂直下部に位置するようにドリルフロアに設置されたロタリーテーブル154からなり、上記のクラウンブロック151、トラベリングブロック152、及びロタリーテーブル154は、アクティビティ120を構成するクラウンブロック121、トラベリングブロック122、およびロタリーテーブル124と同様の構造を有することから、これに対する詳細な説明は省略する。
【0040】
一方、前記エレベーターブロック153は、トラベリングブロック152の下端部に結合され、ドローワーク180(Drawworks)によるトラベリングブロック152の上下移動によって上下に移動することになり、ケーシングパイプやドリルパイプのような様々なパイプを支持する。
【0041】
前記ケーシングパイプ用トロリー160は、BOP用トロリー130の移動のためにプラットフォームのフロアに敷設されたレール170に沿って水平方向に移動し、ケーシングパイプが貫通するように形成されたトロリーボディ161と、前記トロリーボディ161上に設置され、トロリーボディ161を貫通したケーシングパイプアセンブリ220を置いて互いに近づくか遠ざかる方向に移動しながらケーシングパイプアセンブリ220を支持する一対のスパイダー162,163と、ケーシングパイプ用トロリー160に支持されたケーシングパイプアセンブリ220とアクティビティ120との結合のために、ケーシングパイプアセンブリ220を上昇させるエレベーター164からなる。
【0042】
この時、前記トロリーボディ161には、駆動するためのエンジン、電気モーター、及び油圧モーターのうちいずれかの駆動源が内装として設けられることができ、別途の油圧シリンダと連結して油圧シリンダの駆動により、レール170に沿って移動するように構成されることもできる。
【0043】
また、前記一対のスパイダー162,163は、ラックとピニオンを利用するか油圧シリンダを利用することによって移動させることができ、前記エレベータ164は、ケーシングパイプアセンブリ220を把持するためのクランピングジョー164a、164b(Clamping jaw)が備わったものであって、垂直に立設された油圧シリンダ164cによって上下に移動する。
【0044】
上記のような本発明の掘削システムは、他の掘削孔の作業のために、既存の掘削孔に設置されたBOPアセンブリ210を掘削孔から分離しようとする場合、まずアクティビティ120を利用してBOPアセンブリ210を掘削孔から分離させ、分離されたBOPアセンブリ210の上部に位置する一部のライザーを取り外すことによってBOPアセンブリ210が船底に近くなるように上昇させた状態で、BOPアセンブリ210をBOP用トロリー130に結合させることになる。
【0045】
一方、もう一つの掘削孔を形成するためにドリルシップが移動する場合、BOP用トロリー130に結合されたBOPアセンブリ210が水中で揺れることがあるので、BOPアセンブリ210の揺れを防止するために、BOPアセンブリ210を保管場所に移動させることが望ましい。
【0046】
上記のようなBOPアセンブリ210の移動は、BOP用トロリー130がレール170に沿ってムーンプールの端部方向(
図3における矢印方向)に移動することによって行われ、この時、BOPアセンブリ210からBOP用トロリー130に延長したライザー212が、ムーンプールの作業端141に形成されたスロット140に挿入されて揺れが抑制されることにより、ドリルシップの移動時に発生するBOPアセンブリ210の揺れを減少させることになる。
【0047】
一方、アクティビティ120を利用してドリルパイプの設置や掘削作業が行われるに際し、デリック110に備わった補助アクティビティ150とケーシングパイプ用トロリー160を利用して複数のケーシングパイプを組み立てることによって、ケーシングパイプアセンブリ220が形成でき、このように形成されるケーシングパイプアセンブリ220は、ケーシングパイプ用トロリー160に保管される。
【0048】
一方、一定の深さの掘削孔が形成されると、アクティビティ120は、ドリルパイプ及びドリルビットを引き揚げることになり、その後アクティビティ120からドリルパイプ及びドリルビットを取り外す。
【0049】
その後、ケーシングパイプ用トロリー160に保管されたケーシングパイプアセンブリ220をアクティビティ120に結合させるために、ケーシングパイプ用トロリー160がアクティビティ120の垂直下部へ移動する。その後、エレベーター164は、クランピングジョー164a、164bを利用してケーシングパイプアセンブリ220を把持して一定長さのほど上昇させることになり、このようなエレベーター164の駆動時に、トロリーボディ161に備わった一対のスパイダー162,163は互いに遠ざかるように移動して、ケーシングパイプアセンブリ220を離すようになる。
【0050】
上記のようなケーシングパイプアセンブリ220の上昇が完了すると、一対のスパイダー162,163が互いに近づく方向に移動してケーシングパイプアセンブリ220を把持することになり、クランピングジョー164a、164bはケーシングパイプアセンブリ220を離し、このような状態でエレベーター164が下降してから、再度ケーシングパイプアセンブリ220を把持したまま上昇し、ケーシングパイプアセンブリ220を一定の長さだけ上昇させる。
【0051】
このようなプロセスを繰り返して、ケーシングパイプアセンブリ220の上端部がアクティビティ120に近接するようになると、ケーシングパイプアセンブリ220の上端部とトップドライブ123を結束することになり、それ以降、アクティビティ120の駆動によってケーシングパイプアセンブリ220が下降することにより、ケーシングパイプアセンブリ220の設置が行われる。一方、ケーシングパイプアセンブリ220が設置された後、ケーシングパイプアセンブリ220の外側にセメントを打設してケーシングパイプアセンブリ220を固定させる。
【0052】
上記のようなケーシングパイプアセンブリ220の設置が完了すると、ケーシングパイプ用トロリー160は、元の位置に復帰して補助アクティビティ150と共に別のケーシングパイプアセンブリ220を形成することになり、この時、アクティビティ120には、ドリルパイプが設置されて、掘削孔を形成する作業を行う。
【0053】
上述したように、本発明に係る掘削システムは、BOPアセンブリ210を水中に吊るしたまま、ドリルシップが短距離移動することができることで、作業効率を大幅に向上させることができる利点がある。
【0054】
また、補助アクティビティ150とケーシングパイプ用トロリー160を利用して、掘削作業が行われている中にもケーシングパイプアセンブリ220を形成することができるので、掘削作業の効率性を高めることができる利点がある。
【0055】
本発明は、上述した特定の好適な実施例に限定されず、特許請求の範囲において請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば誰でも多様な変形実施が可能であることはもちろん、そのような変更は、特許請求の範囲の記載範囲内である。
【符号の説明】
【0056】
110:デリック
120:アクティビティ
130: BOP用トロリー
140:スロット
141:作業端
142:ダンパー
150:補助アクティビティ
151:クラウンブロック
152:トラベリングブロック
153:エレベーターブロック
154:ロタリーテーブル
160:ケーシングパイプ用トロリー
210:BOPアセンブリ
211:BOP
212:ライザー
220:ケーシングパイプアセンブリ