【文献】
M.Scholl, S.Ding, C.W.Lee, R.H.Grubbs,Synthesis and Activity of a New Generation of Ruthenium-Based Olefin Metathesis Catalysts Coordinated with 1,3-Dimethyl-4,5-dihydroimidazol-2-ylidene Ligands,Organic Letters,米国,American Chemical Society,1999年 8月,Vol.1, No.6,953-956
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
「エラストマー」という用語は、シリコーン分野において与えられる意味で使用され、シリコーン組成物を硬化させた後に得られる生成物を説明するものとして理解され、その弾力特性に関していずれかの暗示はないことを理解するべきである。
【0023】
好ましくは、触媒組成物は、本発明に従って、1種またはそれ以上のアルコールGおよび重縮合触媒Aのみから構成される。アルコールGは、触媒組成物Y’中に、上記触媒組成物Y’の全重量に関して少なくとも50重量%の割合で、そして好ましくは上記触媒組成物Y’の全重量に関して少なくとも55重量%、さらにより好ましくは少なくとも60重量%の割合で存在する。
【0024】
少なくとも1種のアルコール(アルコール溶液)を含んでなる溶媒中で、溶液中で安定しているカルベンを調製する方法は、仏国特許出願第1050108号明細書に記載されている。そのような方法は、その場で任意に生じる少なくとも1種の強塩基を使用する前駆体塩の脱プロトンによってカルベンを調製することからなり、上記脱プロトンは、少なくとも1種のアルコールを含んでなる溶媒中で実行される。
【0025】
さらに特に、本発明による触媒組成物Y’を調製する方法は、以下の工程:
a)任意にその場で生じる少なくとも1種の強塩基を、好ましくは0℃〜100℃の温度において、以下の構造(I’):
【化2】
(式中、
−記号Xは、次の原子または基:−O−、−S−、記号RがC
1〜C
30基である−N(R)−および−P(R)−からなる群から選択され、
−記号R
1、R
2およびR
3は、同一であるか、または異なって、任意に置換されて、S、P、Si、NおよびOからなる群から選択される1種またはそれ以上の原子を任意に含んでなるC
1〜C
30基であり、かつ
−記号X、R
1、R
2およびR
3は、一組になって、5員、6員または7員環を形成することが可能である)のイミニウム官能基を含んでなる塩である少なくとも1種の式(I)のカルベン前駆体化合物A’と反応させる工程を含んでなるが、
以下:
−強塩基は、構造(I’)のイミニウム官能基の水素の脱プロトンを実行することが可能であるように選択され、かつ
−反応は、アルコールまたはアルコール混合物である溶媒中で実行される
ということを条件とする。
【0026】
有利には、この脱プロトン化は、周囲温度(20℃)において実行される。
【0027】
好ましくは、化合物A’は、次の一般式(III)または(III’):
【化3】
[式中、
−記号AおよびBは、独立して、炭素または窒素原子を表し、
・式(III)において、記号Aが窒素原子を表す場合、記号T
4は存在せず、記号Bが窒素原子を表す場合、記号T
3は存在せず、
・式(III’)において、記号Aが窒素原子を表す場合、記号T
4またはT
4'は存在せず、記号Bが窒素原子を表す場合、記号T
3またはT
3'は存在しない
ということが理解され、
−記号T
3、T
3'、T
4およびT
4'は、互いに独立して、水素原子、または以下の基:アルキル、アルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたシクロアルキル、アルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたアリール、アルケニル、アルキニル、またはアリール部分がアルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたアリールアルキルの1種を表し、
−記号T
3およびT
4は、AおよびBがそれぞれ炭素原子を表す場合、一緒にそしてAおよびBとアリールを形成することができ、この場合、T
3'およびT
4'は存在しないということが理解され、
−記号T
1およびT
2は、独立して、
1)以下の基:アルキル、アルキルによって任意に置換されたシクロアルキル、ペルフッ素化アルキル基もしくはペルフルオロアルキル基によって任意に置換されたアルキル、アルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたシクロアルキル、アルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたアリール、アルケニル、アルキニル、またはアリール部分がアルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたアリールアルキルの1種、または
2)次式(IV)
−V1−V2 (IV)
{式中、
・記号V1は、任意に置換された、飽和または不飽和二価炭化水素基、好ましくは直鎖または分枝鎖C
1〜C
10アルキレンであり、
・記号V2は次の置換基:
・アルコキシ、−OR
a(式中、記号R
aは、水素原子、またはアルキルもしくはアリール基に相当する)、
・シリル、−Si(OR
b)
x(R
c)
3-x(式中、記号R
bは、水素原子、またはアルキル、シリルもしくはシロキサニル基に相当し、記号R
cは、アルキルまたはアリール基に相当し、そして記号xは0、1、2または3に等しい整数である)、
・アミン、好ましくは−N(R
a)
2(式中、記号R
aは、水素原子、またはアルキルもしくはアリール基に相当する)の群から選択される一価の基である}の一価の基を表し、
−置換基T
1、T
2、T
3、T
3'、T
4およびT
4'は、式(III)および(III’)中の2つの隣接する環員上に位置する場合、一組になって、飽和または不飽和炭化水素鎖を形成することができ、
−記号Z1は、独立して、好ましくは、
・式G°−COOHのカルボン酸(式中、記号G°は、アルキル、有利にはC
1〜C
22アルキル、アリール、有利には1個またはそれ以上のC
1〜C
6アルキルによって任意に置換されたC
6〜C
18アリールを表す)、
・式G°−SO
3Hのスルホン酸(式中、G°は上記で定義した通りである)、
・式G°−PO
3Hのリン酸(式中、G°は上記で定義した通りである)、
・単独のまたは互いとの組合せとしての以下の無機酸:HF、HCl、HBr、HI、H
2SO
4、H
3PO
4、HClO
4およびHBF
4、ならびに
・それらの混合物
からなる群から選択されるブレンステッド酸(プロトン酸)から誘導されるアニオンを表す]の化合物から選択される。
【0028】
塩(III)に関して、アニオンZ
1-は有機または無機ブレンステッド酸(プロトン酸)から誘導されるアニオンである。通常、アニオンZ
1-は6未満のpKaを示す酸から誘導される。好ましくは、Z
1-は、4未満、より一層好ましくは2未満のpKaを有する酸から誘導される。本明細書で引用されるpKa値は、水中で測定された酸のpKa値である。
【0029】
酸の例は、式G°−COOHのカルボン酸(式中、記号G°は、アルキル、例えば、C
1〜C
22アルキル基、アリール、例えば、1個またはそれ以上のアルキル、好ましくは1個またはそれ以上のC
1〜C
6アルキルによって任意に置換されたC
6〜C
18アリール基を表す)、式G°−SO
3Hのスルホン酸(式中、記号G°は、上記で定義した通りである)、および式G°−PO
3Hのホスホン酸(式中、記号G°は、上記で定義した通りである)であり、他の酸は、HF、HCl、HBr、HI、H
2SO
4、H
3PO
4、HClO
4およびHBF
4である。
【0030】
カルボン酸の好ましい例は、酢酸、安息香酸およびステアリン酸である。好ましいスルホン酸としてはベンゼンスルホン酸が挙げられ、好ましいホスホン酸としてはフェニルホスホン酸が挙げられる。
【0031】
酸HCl、HI、HBF
4およびHPF
6から誘導されるアニオンZ
1-がより特に好ましい。
【0032】
したがって、特に好ましいアニオンZ
1-は、ハライド、テトラフルオロホウ酸およびヘキサフルオロリン酸アニオンである。
【0033】
イミダゾリウム塩の例のいくつかを下に挙げる。
【化4】
【0034】
これらの消費物は、市販品として入手可能であるか、または市販品として入手可能である化合物から当業者によって容易に調製されるものである。
【0035】
A=B=Cである式(III)の塩の合成方法は、米国特許第5077414号明細書に記載されている。
【0036】
この方法は、
=>次式(V):
【化5】
のα−ジカルボニル化合物(式中、記号T
3およびT
4は、上記で定義された通りである)と、
=>HCHOならびに式T
1−NH
2およびT
2−NH
2の2種のアミン
とを適切な酸の存在下で反応させる工程を含んでなる。記号T
1およびT
2は、上記で定義された通りである。
【0037】
式(III)の塩中のアニオンZ
1-の性質は、この工程において使用される酸次第である。使用可能な酸は、例えば、上記で列挙したものおよびZ
1-が誘導されるものである。
【0038】
式(III)の塩の他の調製方法は、Chem.Eur.J.,1996,2,No.12,1627−1636頁、およびAngew.Chem.Int.Ed.Engl.,1997,36,2162−2187に与えられている。
【0039】
触媒として使用されるカルベンを調製するための反応は、アルコールをベースとする溶液中で安定しているカルベンを得るために、少なくとも1種のアルコールGまたはアルコールG混合物を含んでなる溶媒中で実行される。
【0040】
好ましくは、この溶媒中のアルコールGは、式R°OH(式中、R°は、以下の基、アルキル、シクロアルキル、アリール、アルケニル、アルキニル、アリールアルキル、シリルまたはシロキサンの1種に相当し、好ましくは、記号R°は、メチル、エチル、プロピルおよびブチルからなる群から選択される)に相当する。
【0041】
溶液中でカルベンを合成するための反応に関して、1つの好ましい実施形態において、強塩基は、アルカリ金属またはアルカリ土類金属水酸化物、アルコキシド、水素化物またはアミドからなる群から選択され、好ましくは、CH
3ONa、カリウムtert−ブトキシド、KOH、NaOH、CH
3CH
2OMgOCH
2CH
3およびそれらの混合物を含んでなる下位群から選択される。
【0042】
1つの可能性によると、この強塩基は、その場で、例えば懸案下のアルコールにナトリウムもしくは水素化ナトリウムまたはマグネシウムを加えることによって生成させることができる。このようにして、アルコキシドをその場で発生させることができる。
【0043】
有利には、脱プロトンによって塩を生成させ、この塩を沈殿させて、カルベン溶液から分離する。次いで、上記溶液は、触媒組成物Y’として以下に記載される本発明の方法において有用である。
【0044】
好ましくは、本発明による触媒組成物Y’は、式(II)または(II’):
【化6】
(式中、
−記号A
1およびA
2は、独立して、炭素または窒素原子を表し、
1)式(II)において、記号A
1が窒素原子を表す場合、記号T
4は存在せず、記号A
2が窒素原子を表す場合、記号T
3は存在せず、かつ
2)式(II’)において、記号A
1が窒素原子を表す場合、記号T
4またはT
4'は存在せず、記号A
2が窒素原子を表す場合、記号T
3またはT
3'は存在しない
ということが理解され、
−記号T
3、T
3'、T
4およびT
4'は、独立して、水素原子、または以下の基:アルキル、アルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたシクロアルキル、アルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたアリール、アルケニル、アルキニル、またはアリール部分がアルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたアリールアルキルの1種を表し、
−記号T
3およびT
4は、A
1およびA
2がそれぞれ炭素原子を表す場合、一緒にそしてAおよびBとアリールを形成することができ、この場合、T
3'およびT
4'は存在しないということが理解され、
−記号T
1、T
2、T
3、T
3'、T
4およびT
4'は、式(II)および(II’)中の2つの隣接する環員上に位置する場合、一組になって、飽和または不飽和炭化水素鎖を形成することができ、
−記号T
1およびT
2は、互いに独立して、
1)以下の基:アルキル、アルキルによって任意に置換されたシクロアルキル、ペルフッ素化アルキル基もしくはペルフルオロアルキル基によって任意に置換されたアルキル、アルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたシクロアルキル、アルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたアリール、アルケニル、アルキニル、またはアリール部分がアルキルもしくはアルコキシ基によって任意に置換されたアリールアルキルの1種、または
2)次式(IV)
−V1−V2 (IV)
{式中、
−V1は、任意に置換された、飽和または不飽和二価炭化水素基、好ましくは直鎖または分枝鎖C
1〜C
10アルキレンであり、
−V2は次の置換基:
−アルコキシ、−OR
a(式中、記号R
aは、水素原子、またはアルキルもしくはアリール基に相当する)、
−シリル、−Si(OR
b)
x(R
c)
3-x(式中、記号R
bは、水素原子、またはアルキル、シリルもしくはシロキサニル基に相当し、記号R
cは、アルキルまたはアリール基に相当し、かつ記号xは0、1、2または3に等しい整数である)、
−アミン、好ましくは−N(R
a)
2(式中、記号R
aは、水素原子、またはアルキルもしくはアリール基に相当する)からなる群から選択される一価の基である}の一価の基を表す]の重縮合触媒Aを含んでなる。
【0045】
「アルキル」という用語は、(例えば1個またはそれ以上のアルキルによって)任意に置換された、直鎖または分枝鎖飽和炭化水素鎖であって、好ましくは、1〜10個の炭素原子、例えば1〜8個の炭素原子、より一層好ましくは1〜7個の炭素原子を有するものを意味する。
【0046】
アルキル基の例は、特に、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、tert−ブチル、イソブチル、n−ブチル、n−ペンチル、イソアミルおよび1,1−ジメチルプロピルである。アルコキシ基のアルキル部分も、上記で定義した通りである。
【0047】
ペルフッ素化アルキル基またはペルフルオロアルキル基によって任意に置換されたアルキル基は、好ましくは、次式:
−(CH
2)
p−C
qF
2q+1
(式中、記号pは、0、1、2、3または4を表し、記号qは1〜10までの整数であり、C
qF
2q+1は直鎖または分枝鎖である)に相当する。この基の好ましい例は、−(CH
2)
2−(CF
2)
5−CF
3および(CF
2)
7−CF
3である。
【0048】
「アリール」という用語は、6〜18個の炭素原子を有する単環式または多環式、好ましくは単環式または二環式芳香族炭化水素基を意味する。本発明の文脈上、「多環式芳香族基」という用語は、2個以上の芳香族環が互いに縮合(オルト縮合またはオルトペリ縮合)した基、すなわち、少なくとも2個の共通の炭素を一対で有する基を意味するものとして理解されるべきである。
【0049】
上記芳香族(「アリール」)炭化水素基は、例えば、1個またはそれ以上のC
1〜C
3アルキルによって、1個またはそれ以上のハロゲン化炭化水素基(例えばCF
3)によって、1個またはそれ以上のアルコキシ(例えばCH
3O)によって、または1個またはそれ以上のケトン単位(例えばCH
3CO−)を含んでなる1個またはそれ以上の炭化水素基によって、任意に置換される。
【0050】
アリールの例としては、フェニル、ナフチル、アントリルおよびフェナントリル基を挙げることができる。
【0051】
「アリールアルキル」という用語は、その炭化水素鎖上において1個またはそれ以上の上記で定義されたアリール基によって置換された上記で定義されたアルキル基を意味する。それらの例は、ベンジルおよびトリフェニルメチルである。
【0052】
「シクロアルキル」という用語は、好ましくは3〜10個の炭素原子、より一層好ましくは3〜8個の炭素原子を有する、単環式または多環式、好ましくは単環式または二環式飽和炭化水素基を意味するものとする。「多環式飽和炭化水素基」という用語は、2個以上の環がσ結合によって互いに結合し、かつ/または対になって縮合した基を意味するものとする。多環式シクロアルキル基の例は、アダマンタンおよびノルボルナンである。単環式シクロアルキル基の例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルである。
【0053】
「アルケニル」という用語は、少なくとも1個のオレフィン性二重結合、より一層好ましくは1個のみの二重結合を有する置換または未置換の直鎖または分枝鎖不飽和炭化水素鎖を意味するものとする。好ましくは、アルケニル基は、2〜8個の炭素原子、より一層好ましくは2〜6個の炭素原子を有する。この炭化水素鎖は、少なくとも1個のO、NまたはSなどのヘテロ原子を任意に含んでなる。アルケニル基の好ましい例は、アリルおよびホモアリル基である。
【0054】
「アルキニル」という用語は、本発明によると、少なくとも1個のアセチレン性三重結合、より一層好ましくは1個のみの三重結合を有する置換または未置換の直鎖または分枝鎖不飽和炭化水素鎖を意味するものとする。好ましくは、アルキニル基は、2〜8個の炭素原子、より一層好ましくは2〜6個の炭素原子を有する。アセチレニル基およびプロパルギル基を例として挙げてもよい。この炭化水素鎖は、少なくとも1個のO、NまたはSなどのヘテロ原子を任意に含んでなる。
【0055】
本発明によると、「シリル」という用語は、少なくとも1個のケイ素原子を含む直鎖または分枝鎖基を意味するものとする。ポリジメチルシロキサン鎖はシリル基の例である。
【0056】
式(II)および(II’)のカルベンは、少なくとも2個の縮合環を有することができ、すなわち、2つの隣接した環員上に位置するT
1、T
2、T
3、T
3'、T
4およびT
4'からの少なくとも2個の基が一緒になって、好ましくは3〜6個の炭素原子を有する飽和または不飽和炭化水素鎖を形成する。「飽和または不飽和炭化水素鎖」という用語は、オレフィン性二重結合またはアセチレン性三重結合型の1個またはそれ以上の不飽和を含んでいても含んでいなくてもよい直鎖または分枝鎖炭化水素鎖を意味するものとする。
【0057】
式(II)または(II’)における好ましい実施形態に関して、上記の式(II)において記号A
1=A
2=炭素原子である実施形態である。
【0058】
この式(II)における記号T
1およびT
2に関する好ましい意味は、
−アルキル、特にn−プロピル、n−ペンチルもしくはネオペンチル(−CH
2−C(CH
3)
3)、
−シクロアルキル、特にシクロペンチル、シクロヘキシルもしくはアダマンチル、
−アルケニル、特にアリル(−CH
2−CH=CH
2)、メタリル(−CH
2−C(CH
3)=CH
2)、
−アルキニル、特にプロパルギルもしくはホモプロパルギル(−(CH
2)
2−C≡CH)、
−または上記で定義された一価の基(V)、特に
【化7】
である。
【0059】
さらに式(II)において、好ましくは、記号T
3およびT
4の両方が水素に相当するか、または一緒になってアリール、より一層好ましくはフェニルを形成する。
【0060】
カルベンの例としては、刊行物“Bourissouら、Chem Rev.,2000,100,39−91”の第48頁の表2に記載されたものが挙げられてもよい。
【0061】
本発明による重縮合触媒Aの量は、本発明による組成物Xの全重量の0.1重量%〜10重量%、および好ましくは0.1重量%〜5重量%であってもよい。
【0062】
本明細書に関連する粘度の全ては、25℃においてそれ自体周知の様式で測定される動的粘度値に相当する。粘度は、AFNOR基準76−102に従って、ブルックフィールド粘度計を使用して測定される。これらの粘度は、ニュートン粘度と呼ばれる25℃における動的粘度、すなわち、測定される粘度が速度勾配とは無関係となるように十分に低い剪断速度勾配で、それ自体周知の様式で測定される動的粘度に相当する。
【0063】
シリコーンベースBの説明:
本発明で使用される、重縮合反応によって架橋または硬化するシリコーンベースは周知である。これらのベースは数多くの特許において詳細に説明されており、それらは市販品として入手可能である。
【0064】
使用前の早期または不都合な反応を防止するために、特定の成分を分離するため、シリコーンベースに含有される成分を、いくつかのパッケージに包装することができる。例えば、シリコーンベースを、少なくとも2つのフラクションに包装することができ、1つのフラクションは、アルコール溶液中の重縮合触媒Aのみを含んでなり、そして1つまたはそれ以上の別のフラクションは、組成物Xの他の試薬を含んでなる。
【0065】
本発明による組成物を製造するために使用されるシリコーンベースBは、
−重縮合を介してエラストマーへと重合可能または架橋可能であり、かつ25℃で10mPa・s〜1.5×10
6mPa・sの動的粘度を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン油またはガムC、
−任意に少なくとも1種の架橋剤D、
−任意に少なくとも1種の接着促進剤E、ならびに
−任意に少なくとも1種の非ケイ質、有機および/またはケイ質無機充填剤F
を含んでもよい。
【0066】
ポリオルガノシロキサン油またはガムCは、好ましくは、25℃で10〜1500000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシポリジオルガノシロキサンポリマーであり、その有機基は、炭化水素基、好ましくは、1〜20個の炭素原子を有するアルキル、3〜8個の炭素原子を有するシクロアルキル、2〜8個の炭素原子を有するアルケニルおよび5〜8個の炭素原子を有するシクロアルケニルからなる群から選択される。
【0067】
本発明による組成物Xの1つの具体的な実施形態において、ポリオルガノシロキサン油またはガムCは、ヒドロキシル、アルコキシ、オキシム、アシルおよび/もしくはエノキシ型の官能基の少なくとも2個、ならびに/または好ましくは少なくとも2個のシラノール官能基を含んでなってもよい。
【0068】
架橋剤Dは、好ましくは、1分子あたりケイ素原子に結合した3個以上の加水分解性基を有する有機ケイ素化合物である。
【0069】
架橋剤Dとして、
−次の一般式:
R
1kSi(OR
2)
(4-k)
(式中、記号R
2は、同一であるか、または異なって、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルまたは2−エチルヘキシル基、C
3〜C
6オキシアルキレン基を表し、記号R
1は、直鎖または分枝鎖飽和または不飽和脂肪族炭化水素基、飽和または不飽和および/または芳香族単環式または多環式炭素環式基を表し、かつkは0、1または2である)のシラン、ならびに
−このシランの部分的な加水分解生成物
が挙げられてもよい。
【0070】
C
3〜C
6アルコキシアルキレン基の例として、以下の基:
CH
3OCH
2CH
2−
CH
3OCH
2CH(CH
3)−
CH
3OCH(CH
3)CH
2−
C
2H
5OCH
2CH
2CH
2−
が挙げられてもよい。
【0071】
1つの具体的な実施形態において、記号R
1は、
−メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、2−エチルヘキシル、オクチルまたはデシル基などのC
1〜C
10アルキル基、
−ビニルおよびアリル基、ならびに
−フェニル、トリルとキシリル基などのC
5〜C
8シクロアルキル基
を包含するC
1〜C
10炭化水素基に相当することも可能である。
【0072】
架橋剤Dは、シリコーン市場で入手可能な製品であり、さらに、室温硬化組成物で使用することも知られている。特に、次の仏国特許出願公開第A−1126411号明細書、仏国特許出願公開第A−1179969号明細書、仏国特許出願公開第A−1189216号明細書、仏国特許出願公開第A−1198749号明細書、仏国特許出願公開第A−1248826号明細書、仏国特許出願公開第A−1314649号明細書、仏国特許出願公開第A−1423477号明細書、仏国特許出願公開第A−1432799号明細書および仏国特許出願公開第A−2067636号明細書に記載されている。
【0073】
架橋剤Dの中でも、アルキルトリアルコキシシラン、アルキルシリケートまたはアルキルポリシリケートであって、有機基が1〜4個の炭素原子を有するアルキル基であるものが特に好ましい。
【0074】
使用されてもよい架橋剤Dの他の例として、以下のシラン:
−プロピルトリメトキシシラン、
−メチルトリメトキシシラン、
−エチルトリメトキシシラン、
−ビニルトリメトキシシラン、
−ビニルトリエトキシシラン、
−メチルトリエトキシシラン、
−プロピルトリエトキシシラン、
−テトラエトキシシラン、
−テトラプロポキシシラン、
−1,2−ビス(トリメトキシシリル)エタン、
−1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、および
−テトライソプロポキシシラン、
または他に、CH
3Si(OCH
3)
3、C
2H
5Si(OC
2H
5)
3、C
2H
5Si(OCH
3)
3、CH
2=CHSi(OCH
3)
3、CH
2=CHSi(OCH
2CH
2OCH
3)
3、C
6H
5Si(OCH
3)
3、[CH
3][OCH(CH
3)CH
2OCH
3]Si[OCH
3]
2、Si(OCH
3)
4、Si(OC
2H
5)
4、Si(OCH
2CH
2CH
3)
4、Si(OCH
2CH
2CH
2CH
3)
4、Si(OC
2H
4OCH
3)
4、CH
3Si(OC
2H
4OCH
3)
3、CICH
2Si(OC
2H
5)
3
が特に挙げられる。
【0075】
より一層好ましくは、架橋剤Dは、
−ビニルトリメトキシシラン、
−ビニルトリエトキシシラン、
−メチルトリエトキシシラン、
−プロピルトリエトキシシラン、
−テトラエトキシシラン、
−1,2−ビス(トリエトキシシリル)エタン、
−C
2H
5Si(OC
2H
5)
3、および
−Si(OC
2H
5)
4
からなる群から選択される。
【0076】
架橋剤Dの他の例として、ポリケイ酸エチルまたはポリケイ酸n−プロピルが挙げられてもよい。
【0077】
一般には、ポリオルガノシロキサン油またはガムCの100重量部あたり、0.1〜60重量部の架橋剤Dが使用される。
【0078】
1つの好ましい実施形態において、架橋剤Dはシリコーン樹脂Hであり、そのヒドロキシル官能基重量含量は0.1%〜20重量%である。
【0079】
本発明による組成物に任意に存在する接着促進剤Eは、例えば、
(1)ケイ素原子に結合した1個またはそれ以上の加水分解性基、ならびに
(2)窒素原子を含んでなる基によって置換された1個またはそれ以上の有機基、またはアクリレート(メタ)、エポキシおよびアルケニル基の群から選択された有機基、かつさらに好ましくは、単独または混合物として以下の化合物からなる群から選択された有機基、
ビニルトリメトキシシラン(VTMO)、
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、
メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(MEMO)、
[H
2N(CH
2)
3]Si(OCH
2CH
2CH
3)
3、
[H
2N(CH
2)
3]Si(OCH
3)
3、
[H
2N(CH
2)
3]Si(OC
2H
5)
3、
[H
2N(CH
2)
4]Si(OCH
3)
3、
[H
2NCH
2CH(CH
3)CH
2CH
2]SiCH
3(OCH
3)
2、
[H
2NCH
2]Si(OCH
3)
3、
[n−C
4H
9−HN−CH
2]Si(OCH
3)
3、
[H
2N(CH
2)
2NH(CH
2)
3]Si(OCH
3)
3、
[H
2N(CH
2)
2NH(CH
2)
3]Si(OCH
2CH
2OCH
3)
3、
[CH
3NH(CH
2)
2NH(CH
2)
3]Si(OCH
3)
3、
[H(NHCH
2CH
2)
2NH(CH
2)
3]Si(OCH
3)
3、
【化8】
またはそのような有機基を20%よりも多い含量で含有するポリオルガノシロキサンオリゴマー
の両方を有する有機ケイ素化合物から選択されてもよい。
【0080】
平均粒径が0.1μm未満である超微細粒子状製品を無機充填剤Fとして使用することができる。これらの充填剤は、BET比表面積が一般に40m
2/gより大きいヒュームドシリカおよび沈降シリカである。これらの充填剤はまた、0.1μmより大きい平均粒径を有する、それより粗い粒子状製品の形態であってもよい。そのような充填剤の例としては、比表面積が一般には30m
2/g未満である粉末石英、珪藻土、炭酸カルシウム、焼粘土、ルチル型酸化チタン、鉄、亜鉛、クロム、ジルコニウムまたはマグネシウムの酸化物、種々の形態のアルミナ(水和または未水和)、窒化ホウ素、リトポン、メタホウ酸バリウム、硫酸バリウムおよびガラスマイクロビーズが挙げられてよい。
【0081】
これらの充填剤は、この目的のために慣習的に使用される種々の有機ケイ素化合物による処理によって表面変性されていてもよい。したがって、これらの有機ケイ素化合物は、オルガノクロロシラン、ジオルガノシクロポリシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンまたはジオルガノシクロポリシラザン(仏国特許出願公開第A−1126884号明細書、仏国特許出願公開第A−1136885号明細書および仏国特許出願公開第A−1236505号明細書、ならびに英国特許出願公開第A−1024234号明細書)であってもよい。この処理された充填剤は、ほとんどの場合、有機ケイ素化合物の重量の3〜30%を含有する。この充填剤は、異なる粒径のいくつかの種類の充填剤の混合物から構成されてもよく、したがって、例えば、それらは、40m
2/gより大きいBET比表面積を有する微細粒子状シリカ30〜70%、および30m
2/g未満の比表面積を有するそれより粗い粒子状のシリカ70〜30%から構成されてもよい。
【0082】
充填剤を導入することによって、本発明による組成物の硬化から生じるエラストマーに良好な機械的および流体力学的特性を与えることが可能である。
【0083】
これらの充填剤と組み合わせて、鉱物および/または有機顔料が利用されてもよく、またエラストマーの耐熱性(酸化セリウムおよび水酸化セリウムなどの希土類元素の塩および酸化物)および/または耐火性を改善する薬剤も利用されてもよい。例えば、国際公開第98/29488号パンフレットに記載される酸化物カクテルを使用することが可能である。これらの耐火性を改善する薬剤のなかでも、ハロゲン化有機誘導体、有機リン誘導体、白金誘導体、例えば、クロロ白金酸(アルカノール、エーテルオキシドとの反応からのその生成物)または塩化第一白金−オレフィン錯体が挙げられてよい。これらの顔料および薬剤は、合計で、充填剤の重量の多くとも20%で存在する。
【0084】
他の慣用的な添加物および補助剤を本発明による組成物に組み込んでもよく、これらはこの組成物が使用される用途に従って選択される。
【0085】
本発明による組成物を調製するために使用されるシリコーンベースは以下:
−重縮合を介してエラストマーへと架橋可能な100部のポリオルガノシロキサン油Cあたり、
−0〜20部の架橋剤D、
−0〜20部の接着促進剤E、および
−0〜50部の充填剤F
を含んでなってよい。
【0086】
主成分に加えて、非反応性の直鎖ポリオルガノシロキサンポリマーG’が、本発明による組成物の物理的特徴に、および/またはこれらの組成物の硬化から生じるエラストマーの機械的特性に作用する意図で導入されてもよい。
【0087】
これらの非反応性直鎖ポリオルガノシロキサンポリマーG’は周知であり、それらはさらに特に以下:本質的にジオルガノシロキシ単位および多くとも1%のモノオルガノシロキシおよび/またはシロキシ単位から形成され、そのケイ素原子に結合した有機基がメチル、ビニルおよびフェニル基から選択され、これらの有機基の少なくとも60%がメチル基であって、多くとも10%がビニル基である、25℃において少なくとも10mPa・sの粘度を有するα,ω−ビス(トリオルガノシロキシ)ジオルガノポリシロキサンポリマーを含んでなる。これらのポリマーの粘度は、25℃で数千万mPa・sに到達することが可能である。したがって、それらには、流体から粘性までの外観を有する油と、軟性から硬性までのゴムが含まれる。それらは、仏国特許出願公開第A−978058号明細書、仏国特許出願公開第A−1025150号明細書、仏国特許出願公開第A−1108764号明細書および仏国特許出願公開第A−1370884号明細書にさらに詳細に記載される通常の技術に従って調製される。25℃で10mPa・s〜1000mPa・sの範囲の粘度を有するα,ω−ビス(トリメチルシロキシ)ジメチルポリシロキサン油を利用することが好ましい。可塑剤として作用するこれらのポリマーは、重縮合を介して重合または架橋が可能であるポリオルガノシロキサン油またはガムC100部あたり、多くとも70部、好ましくは5〜20部の割合で導入することができる。
【0088】
本発明による組成物は、少なくとも1種のシリコーン樹脂Hをさらに有利に含んでなることが可能である。これらのシリコーン樹脂は周知であって、かつ市販品として入手可能である分枝鎖オルガノポリシロキサンポリマーである。それらは、1分子あたり、式R’’’
3SiO
1/2(M単位)、R’’’
2SiO
2/2(D単位)、R’’’SiO
3/2(T単位)およびSiO
4/2(Q単位)から選択される少なくとも2個の異なる単位を有する。R’’’基は、同一であるか、または異なって、直鎖もしくは分枝鎖アルキル基またはビニル、フェニルもしくは3,3,3−トリフルオロプロピル基から選択される。好ましくは、このアルキル基は、1〜6個の炭素原子を有する。さらに特に、アルキルR基として、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルおよびn−ヘキシル基が挙げられてよい。これらの樹脂は、好ましくは、ヒドロキシル化され、この場合、ヒドロキシル基の重量含量は5〜500meq/100gである。
【0089】
樹脂の例としては、MQ樹脂、MDQ樹脂、TD樹脂およびMDT樹脂が挙げられてよい。
【0090】
シリコーン樹脂Hが架橋剤Dとしても使用される場合、1分子あたり、少なくとも1個のシロキシル単位M=R’
3SiO
1/2および/または1個のシロキシル単位D=R’
2SiO
2/2を、少なくとも1個のシロキシル単位T=R’SiO
3/2および/または1個のシロキシル単位Q=SiO
4/2と組み合わせて含んでなるシラノール官能基を有するシリコーン樹脂が好ましくは選択されるであろう。ここで、基R’は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチルおよびn−ヘキシル基からなる群から選択される。
【0091】
本発明による組成物Xは、エラストマー、特にゲル、シーラントおよび/または薄層コーティング用コーティングの形態のエラストマーの調製に使用することができる。
【0092】
そのようなエラストマーを得るために、組成物の様々な基本的成分を、好ましくは乾燥雰囲気で混合し、かつ適切であれば、アジュバントおよび添加物が添加される。
【0093】
したがって、オルガノポリシロキサン油Cおよび充填剤Fを最初に混合し、次いでこの得られたペーストに、架橋剤D、化合物Eおよび触媒組成物Y’を添加することが可能である。油C、架橋剤D、化合物Eおよび充填剤Fを混合し、続いて触媒組成物Y’を添加することも可能である。これらの操作の間、揮発性材料の除去を促進するために、この混合物を大気圧または減圧下で、40〜180℃、例えば40〜130℃の範囲内の温度で加熱してもよい。
【0094】
湿潤大気中で固体基板上へ組成物をそのまま堆積した後、エラストマーへの硬化のプロセスが生じることが観察される。
【0095】
本発明による組成物は、複数の用途、例えば、建設産業における目地仕上、ほとんどの多様な材料(金属、プラスチック、天然ゴムおよび合成ゴム、木材、厚紙、陶器、れんが、セラミック、ガラス、石、コンクリート、石積ユニット)の組み立て、導電体の絶縁、電気回路のコーティング、または合成樹脂もしくはフォームからなる製品のために用いられる型の調製に使用されてもよい。
【0096】
本発明に従って得られる組成物および/またはエラストマーは、複数の用途、例えば、建設産業または輸送産業(例えば、自動車、航空宇宙、鉄道、海運および航空産業)における目地仕上げおよび/または接合、ほとんどの多様な材料(金属、プラスチック、天然ゴムおよび合成ゴム、木材、厚紙、ポリカーボネート、陶器、れんが、セラミック、ガラス、石、コンクリート、石積ユニット)の組み立て、導電体の絶縁、電気回路のコーティング、または合成樹脂もしくはフォームからなる製品のために用いられる型の調製に使用されてもよい。
【0097】
本発明によるエラストマー前駆体組成物は、特に、剥離コーティングであり、かつ/または撥水性であるコーティング製造のためのコーティングベースとして、またはドレッシングまたはパッチの製造のために使用可能である。
【0098】
本発明のもう1つの目的は、上記で定義された本発明による前駆体組成物Xを架橋または硬化させることによって得られるエラストマーである。
【0099】
本発明のもう1つの目的は、重縮合反応を介して重合可能または架橋可能であり、かつ25℃で10mPa・s〜1.5×10
6mPa・sの動的粘度を有する油またはガムCを含んでなるシリコーンベースからのシリコーンエラストマーの合成のための上記で定義された少なくとも1種の本発明による触媒組成物Y’の使用からなる。
【0100】
したがって、本発明は、以下の工程a)、b)およびc):
a)上記で定義されたシリコーンをベースとするエラストマー前駆体組成物Xが調製される工程と、
b)次いで、上記シリコーンをベースとするエラストマー前駆体組成物Xを、織物、紙、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエチレン、ポリウレタン、不織ガラス繊維布またはポリエチレンテレフタレートから製造されていてよい可撓性支持体上に連続的に、またはバッチ様式で堆積させる工程と、
c)任意に40℃〜130℃の温度での加熱によって、上記組成物Xを硬化させ、上記組成物Xを架橋させ、そのようにしてコーティングされた支持体Yを得る工程と
を含んでなる、コーティングされた支持体Yの調製方法にも関する。
【0101】
有利には、そのような方法において、組成物Xは、
−(i)重縮合反応を介して架橋可能であり、かつ(ii)25℃で10mPa・s〜1.5×10
6mPa・sの動的粘度を有する少なくとも1種のポリオルガノシロキサン油またはガムCと、
−ヒドロキシル官能基重量含量が0.1%〜20重量%であるシリコーン樹脂である架橋剤D
とを含んでなる。
【0102】
この方法に従って、5本ロールコーティングヘッド、エアナイフシステムまたはイクオライジングバーシステムなどの可撓性支持体または材料に紙をコーティングするための工業用機械において使用されるデバイスによって、組成物を塗布し、次いで、例えば40〜130℃、例えば100〜110℃の温度に加熱されたトンネルオーブンを通して移動させることによって硬化することができる。
【0103】
上記組成物を、様々な種類の紙(特別光沢、コーティングされた、グラシン紙)、ボール紙、セルロースシート、金属シート、プラスチックフィルム(ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などのいずれかの可撓性材料または基材上に堆積することができる。
【0104】
堆積させる組成物の量は、処理される面積1m
2あたり0.5〜2gであり、これは0.5〜2μmの層の堆積に相当する。
【0105】
そのようにしてコーティングされた材料または支持体は、その後、いずれかの感圧ゴム、アクリルまたは他の接着材料と接触させることができる。次いで、接着材料は、上記支持体または材料から容易に分離できる。
【0106】
シリコーンフィルムによってコーティングされた可撓性支持体は、例えば、
−内部表面が感圧接着剤層によってコーティングされ、外部表面がシリコーンコーティングを含んでなる粘着テープ、
−または自己接着剤または感圧接着剤成分の接着表面を保護するための紙またはポリマーフィルム、
−またはポリ塩化ビニル(PVC)、ポリプロピレン、ポリエチレンまたはポリエチレンテレフタレート型のポリマーフィルム
であってよい。
【0107】
1つの具体的な実施形態において、コーティングされた支持体Yはドレッシングである。
【0108】
本発明による組成物は、塗料の剥離コーティング、電気および電子機器部品の被包、ならびに織物のコーティングの分野において、そのうえ、光ファイバーの被覆の分野においても有用である。
【0109】
本発明の目的は、上記で定義された本発明による組成物Xを架橋および/または重合させることによって得られるいずれかのコーティングである。これらのコーティングは、ニス、接着剤コーティング、剥離コーティングおよび/またはインク型であってよい。
【0110】
また本発明は、
−少なくとも1表面が上記熱重合および/または架橋された組成物Xによってコーティングされた固体材料からなるいずれかの物品、
−ならびに上記組成物Xを架橋することによって得られた架橋シリコーンフォーム
にも関する。
【0111】
本発明の他の利点および特徴は、例示によって示され、かつ決して限定されない以下の実施例を読めば明らかになるであろう。
【実施例】
【0112】
1)N−複素環式カルベン(NHC)によって触媒された脱アルコキシ重縮合および室温におけるスズ塩との比較
単一成分組成物に関するRTV1試験:官能化触媒としての水酸化リチウムの存在下で100mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油およびビニルトリメトキシシラン(VTMO)から調製された各末端においてビニルジメトキシシリル単位でブロック化されたポリジメチルシロキサン油を、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)、またはメタノール中30重量%の溶液のカルベンNHC−tBu(1,3−ジ−tert−ブチルイミダゾリニリデン)から形成された本発明による触媒組成物のいずれかである重縮合触媒と混合する。
【0113】
2成分組成物に関するRTV2試験:100mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油を、ケイ酸エチル(Si(OEt)
4/OHモル比=1)または同重量の予め縮合したケイ酸エチルと、そして重縮合触媒として、ジラウリン酸ジブチルスズ(DBTDL)、またはメタノール中30重量%の溶液のカルベンNHC−tBuを含んでなる本発明による触媒組成物のいずれかと混合する。
【0114】
試験で使用されるDBTDLの量は、油から提供されるOH1モルあたり0.5モルの触媒、すなわち、1グラムあたり0.55mmolのOHを含有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油4.5gに対して、1.24mmolのDBTDLである。
【0115】
本発明による触媒組成物の場合、OH1モルあたり0.02、0.1および0.2モルのカルベンを用いた試験が実行された。
【0116】
表1に、各試験で同程度の脱アルコキシ重縮合を得るために必要とされる反応時間を示す。
【0117】
【表1】
【0118】
これらの試験によって、本発明による触媒組成物(メタノール中30重量%の溶液のカルベンNHC−tBu)は、OH1モルあたり0.1モルのカルベンによって、OH1モルあたり0.5モルのスズ触媒を用いた場合に1時間10分で得られるものに匹敵する変換度が3分で得られるため、RTV2において非常に良好な触媒であることが示される。
【0119】
RTV1試験に関しては、OH1モルあたり0.5モルのスズ触媒から、OH1モルあたり0.2モルのカルベン触媒に向かう場合(触媒のモル数は60%減少する)、同変換度を得るために必要とされる時間は約60%増加する。したがって、それらは匹敵する活性を有する。
【0120】
2)室温で、シリコーン油、予め縮合したケイ酸エチルおよび溶液中NHCカルベンの存在下におけるエラストマーの製造
試験5−a:14000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油50gを、0.38gの予め縮合したケイ酸エチルと、1kgあたり14モルのOEtで(すなわち、OEt/OHモル比=2.92)、OH1モルあたり0.09モルのカルベン触媒に相当する、メタノール中30重量%の溶液のカルベン触媒NHC−tBu0.21mmolによって形成された本発明による触媒組成物と混合する。混合の直後にゲルが得られ、粘着性のペースト状エラストマーが生じる。
【0121】
試験5−b:14000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油50gを、0.38gの予め縮合したケイ酸エチルと、1kgあたり14モルのOEtで(すなわち、OEt/OHモル比=2.92)、メタノール中30重量%の溶液のカルベン触媒NHC−tBu0.043mmolと混合する。1〜2時間のポットライフを有するゲルが得られ、弾性、粘着性の透明なエラストマーが生じる。
【0122】
メタノール中30重量%の溶液のカルベンNHC−tBuが、同モル量のカルベンNHC−Cy(メタノール溶液中1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリリデン)に置き換えられた場合、同様の結果が得られる。
【0123】
非常に少量の本発明による触媒であっても、重縮合を触媒するため、そしてエラストマーを得るために十分である。
【0124】
初期OEt/OH比を1未満にさせるために架橋剤の量を減少させて他の試験を実行した。ポットライフは1〜2時間で同一であり、弾性はより高いが、全ての場合において、得られる材料は、透明、弾性、可撓性、粘着性のゲルであり、その特徴は2、3日後に安定する。
【0125】
試験5−c:14000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油50gを、0.27gの予め縮合したケイ酸エチルと、1kgあたり14モルのOEtで(OEt/OHモル比=0.9)、メタノール中30重量%の溶液のカルベン触媒NHC−tBu0.043mmolと混合する。1〜2時間のポットライフを有するゲルが得られ、弾性、粘着性の透明なエラストマーが生じる。
【0126】
試験5−d:14000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油50gを、0.095gの予め縮合したケイ酸エチルと、1kgあたり14モルのOEtで(OEt/OHモル比=0.73)、メタノール中30重量%の溶液のカルベン触媒NHC−tBu0.043mmolと混合する。1〜2時間のポットライフを有するゲルが得られ、弾性、粘着性の透明なエラストマーが生じる。
【0127】
3)室温においてN−複素環式カルベン(NHC)によって触媒される脱ヒドロ重縮合
以下:
−純粋な結晶形で、メタノール溶液中(30重量%)のN−複素環式カルベン−tBu(NHC−tBu)、および
−エタノール溶液(40重量%)またはメタノール溶液(31重量%)中のカルベンNHC−Cy
から2種の触媒組成物を調製した。
【0128】
試験6:100mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油および結晶形のカルベンNHC−tBu
100mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油を、室温で攪拌しながら0.5重量%の結晶形のNHC−tBu(油10gあたり0.28mmol)の存在下で配置し、脱ヒドロ重縮合反応を得た。媒体は撹拌から30分後に曇り、撹拌は1時間後に停止し(粘度が増加する)、そして24時間後、非常に高い粘度を有する(測定不可能であるが、200000mPa・sより高い)ガムが得られる。
【0129】
試験7:100mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油およびエタノール溶液中のカルベンNHC−Cy
触媒組成物を同モル量のエタノール溶液中のカルベンNHC−Cy(40重量%)で置き換えたことを除き、試験6と同一実験条件を使用する。室温で24時間攪拌後、116000mPa・sの粘度を有するガムが得られ、そして80℃で4時間攪拌後、非常に高い(200000mPa・sより高いが、測定不可能である)粘度を有するガムが得られる。
【0130】
以下の表2に、サイズ排除クロマトグラフィー(GPC)によって分析された、試験1および2によって得られたガムの特徴を示す。
【0131】
【表2】
【0132】
試験8:14000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油およびメタノール溶液中のカルベン
14000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油を、メタノール溶液中(30重量%)のNHC−tBu0.1重量%から形成される触媒組成物の存在下で配置した。
【0133】
以下の表3に、試験8で得られる混合物の粘度(mPa・s)のモニタリングを示し、そして表4にサイズ排除クロマトグラフィー(GPC)による分析結果を示す。
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
試験9〜13:
各試験に関して、以下の表5に詳述される成分を、室温で、0.1重量%のカルベンNHC−Cy(メタノール溶液中31重量%)、すなわち、混合物100gあたり0.42mmolのNHC−Cyから形成される触媒組成物と混合した。
【0137】
表4の様々な成分は:
・「H750」と記載される、750mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油、
・「H14000」と記載される、0.0324mmolのOH/gを含有し、14000mPa・sの粘度を有するα,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油、
・「OH架橋剤A」と記載される、全体で0.547mmolのOH/gを含有し、そしてTOH/DOH比=7.72を有する、分枝鎖ヒドロキシル化シリコーン油
である。
【0138】
試験12は、H14000油のOHと架橋剤AのOHとの間の化学量論に相当し、そして試験13は、OH架橋剤AのTOHに対する(H14000油およびOH架橋剤Aに)存在する全てのDOHの化学量論に相当する。
【0139】
【表5】
【0140】
実行された試験9〜13の全てに関して、混合物のポットライフは2時間より長い。得られた様々なエラストマーの特徴を以下に詳述する。
【0141】
試験9:18時間で、ゲル状、弾性、非粘着性、次いで、硬質、脆性。
【0142】
試験10:18時間で、ゲル状、わずかに粘着性、3日で、堅固、非常に粘着性ではなく、7日で、硬質、非粘着性。
【0143】
試験11:18時間で、ゲル状、非常に粘着性および弾性、3日で、弾性、非常に粘着性、7日および14日で、硬質、粘着性。
【0144】
試験12および13:18時間で、ゲル状であるが、表面が油状であり、3日後、上部フィルムコーティングは未架橋であり、7日および14日で、非常に弾性および粘着性。
【0145】
試験9〜13の組成物のフラクションを灰吹皿で薄層に広げ、120℃にした。全ての試験に関して、非粘着性の架橋したエラストマーが5分未満で得られた。
【0146】
試験14〜19:
カルベンNHC−Cy(メタノール溶液中31重量%)とNHC−tBu(メタノール溶液中30重量%)の活性を比較するため、以下の表6に詳述される成分を、0.21mmolのカルベンと室温で混合した。表6の様々な成分は、上記「H14000」油、および1グラムあたり0.303mmolのOHを含有する「OH架橋剤B」と記載される水酸化樹脂である。試験16および17は、油と樹脂との間の化学量論である。
【0147】
【表6】
【0148】
様々な組成物で得られたポットライフは、1時間30分〜6時間の範囲である。得られた様々なエラストマーの特徴を以下に詳述する。
【0149】
試験14および16:3時間30分で粘着性ジェル、6時間30分で粘着性エラストマー、22時間で非粘着性。
【0150】
試験15および17:3時間30分で粘着性ジェル、22時間および14日で粘着性エラストマー。
【0151】
試験18および19:22時間で粘着性エラストマー。
【0152】
試験9〜13と同様の方法で、試験14〜19の組成物のフラクションを灰吹皿で薄層に広げ、120℃にした。全ての試験に関して、非粘着性の架橋したエラストマーが5分未満で得られた。
【0153】
これらの結果は、アルコール溶液中のカルベンは、DOHおよびTOHシロキシル単位を含んでなる樹脂、α,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油および上記2種の割合にかかわらず、120℃において数分で薄層のエラストマーを得るために、α,ω−ジヒドロキシル化ポリジメチルシロキサン油と、DOHおよびTOHのモチーフを含んでなる樹脂との反応を可能にすることを示す。
【0154】
DOHおよびTOHシロキシル単位において、ヒドロキシル基官能基以外の置換基はメチルである。