特許第5863967号(P5863967)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863967
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】調節可能なセーフティブレーキ
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/22 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
   B66B5/22 Z
【請求項の数】15
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-522801(P2014-522801)
(86)(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公表番号】特表2014-521574(P2014-521574A)
(43)【公表日】2014年8月28日
(86)【国際出願番号】US2011045927
(87)【国際公開番号】WO2013019183
(87)【国際公開日】20130207
【審査請求日】2014年3月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】591020353
【氏名又は名称】オーチス エレベータ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ウェイ
【審査官】 日下部 由泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−303014(JP,A)
【文献】 特開2002−220173(JP,A)
【文献】 特開昭62−222990(JP,A)
【文献】 特開昭62−051585(JP,A)
【文献】 再公表特許第2006/064555(JP,A1)
【文献】 再公表特許第2004/050525(JP,A1)
【文献】 特表2003−535791(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00 − 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック部材と、
前記ブロック部材に固定されたくさびである、ガイドレールに制動力を付与するための第1のブレーキ部材と、
前記第1のブレーキ部材に対してスライド可能なくさびである、前記ガイドレールに制動力を付与するための第2のブレーキ部材と、
少なくとも1つの調節部材と、
を備え
前記少なくとも1つの調節部材は、前記第1のブレーキ部材と前記ブロック部材との間でかつ前記第1のブレーキ部材の少なくとも1つの溝内に配置されており、前記第1のブレーキ部材と前記ブロック部材との間の間隔を調節するように、少なくとも部分的に前記溝外に移動可能となっていることを特徴とするブレーキ装置。
【請求項2】
前記ブレーキ装置が非対称な安全装置であることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項3】
前記調節部材の移動を制御する少なくとも1つの調節制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載のブレーキ装置。
【請求項4】
前記調節制御装置は、信号を受け、該信号に基づいて前記調節部材の移動を制御することを特徴とする請求項に記載のブレーキ装置。
【請求項5】
前記信号は荷重に応じたものであることを特徴とする請求項に記載のブレーキ装置。
【請求項6】
コントローラをさらに備え、
前記コントローラは、荷重を示す信号を受け、該荷重に応じて前記調節制御装置へと信号を送信することを特徴とする請求項に記載のブレーキ装置。
【請求項7】
ロック部材と、該ブロック部材に固定されたくさびである、ガイドレールに制動力を付与するための第1のブレーキ部材と、を有するブレーキ装置の制動力を調節する方法であって、
荷重に応じた信号を受けるステップと、
前記第1のブレーキ部材と前記ブロック部材との間における調節部材の位置を調節するステップと、を含み、
前記調節部材は、前記第1のブレーキ部材と前記ブロック部材との間でかつ前記第1のブレーキ部材の溝内に配置されており、前記第1のブレーキ部材と前記ブロック部材との間の間隔を調節するように、少なくとも部分的に前記溝外に移動可能となっていることを特徴とする方法。
【請求項8】
荷重を判断するステップをさらに含むことを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記荷重を判断するステップは、エレベータシステムの各走行の前に実行されることを特徴とする請求項に記載の方法。
【請求項10】
ブロックと、
前記ブロックに固定され、ガイドレールに制動力を付与するくさびと、
少なくとも1つの調節部材と、
を備え、
前記少なくとも1つの調節部材は、前記くさびと前記ブロックとの間でかつ前記くさびの少なくとも1つの溝内に配置されており、前記ブロックに対する前記くさびの位置を制御するように、少なくとも部分的に前記溝外に移動可能となっていることを特徴とするエレベータ安全装置。
【請求項11】
記くさびに対する調節部材の位置を変える少なくとも1つの調節制御装置を備えることを特徴とする請求項10に記載のエレベータ安全装置。
【請求項12】
前記ブロックに対する前記くさびの位置を調節する第2の調節制御装置を備えることを特徴とする請求項11に記載のエレベータ安全装置。
【請求項13】
前記調節制御装置は、信号を受け、これに応じて調節部材の位置を調節することを特徴とする請求項11に記載のエレベータ安全装置。
【請求項14】
信号はエレベータかごにおける荷重に応じたものであることを特徴とする請求項13に記載のエレベータ安全装置。
【請求項15】
コントローラをさらに備え、
前記コントローラは、荷重を示す信号を受け、該荷重に応じて前記調節制御装置へと信号を送信することを特徴とする請求項14に記載のエレベータ安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調節可能なセーフティブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータシステムは、エレベータかごの移動時における制御を維持する種々の制御装置を備えている。エレベータかごはモータにより所望のように移動して、乗客を目的階へと移動させる。モータに付随するブレーキにより、例えば、乗客が要求した乗場にエレベータかごが停止したときに、エレベータかごの移動が抑制される。モータに付随するブレーキは、多くの条件下においてエレベータかごの移動又は速度を制限するために用いられる。
【0003】
エレベータかご又はカウンタウエイトは、所望の速度よりも速い速度で移動し得る。エレベータシステムは、エレベータかごが所望の速度よりも速い速度で移動している場合に、エレベータかごを停止させる補助ブレーキ(安全装置(セーフティ)とも呼ぶ)を備える。エレベータ安全装置は、通常、かごが全荷重状態であるとの仮定のもとに、所定の減速度でもってエレベータかごを停止させるように設計されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
安全装置が係合し、かご内に僅かな乗客しかいない場合、かごは全荷重状態よりもずっと軽量であるため、かごの減速度はより一層大きくなる。このより高い減速度により、かご内の乗客に不快感を与えたり、急停止が生じたりすることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ブレーキ装置の調節に関する。本発明の一態様によれば、ブレーキ装置は、ブロック部材と、互いに対して移動可能な第1のブレーキ部材及び第2のブレーキ部材と、を備える。第1のブレーキ部材はブロック部材に固定されており、ブロック部材と第1のブレーキ部材との間に調節部材を挿入することにより、第1のブレーキ部材に対するブロック部材の位置を調節することができる。
【0006】
また、本発明の本態様又は他の態様によれば、ブレーキ装置は、エレベータシステム等に使用される非対称な安全装置とし得る。
【0007】
本発明の本態様又は他の態様によれば、第1のブレーキ部材は固定されたくさびとし得る。
【0008】
また、本発明の本態様又は他の態様によれば、ブレーキ装置は、第1のブレーキ部材に対する調節部材の移動を制御する調節制御装置をさらに備える。
【0009】
本発明の本態様又は他の態様によれば、調節制御装置は、信号を受け、該信号に基づいて調節部材の移動を制御する。
【0010】
また、本発明の本態様又は他の態様によれば、調節制御装置に送信される信号は荷重に応じたものとし得る。
【0011】
さらに本発明の他の態様によれば、第1のブレーキ部材及びブロック部材を有するブレーキ装置の制動力を調節する方法は、荷重に応じた信号を受けるステップと、第1のブレーキ部材とブロック部材との間において調節部材の位置を調節するステップと、を含む。
【0012】
また本発明の本態様又は他の態様によれば、前記方法は荷重を判断するステップを含む。さらに、前記荷重を判断するステップは、エレベータシステムの各走行の前に実行される。
【0013】
さらに本発明の他の態様によれば、ブレーキ装置はエレベータの安全装置であり、該安全装置は、固定されたくさびと、ブロックと、固定されたくさびとブロックとの間に配置された少なくとも1つの調節部材と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ブレーキシステムを有するエレベータシステムの一部を示す概略図。
図2】本発明の一実施例である例示的なブレーキ装置のA−A線に沿った断面図。
図3】例示的なブレーキ装置の中間調節における断面図。
図4】例示的な第1のブレーキ部材及び調節部材の上面図。
図5】かごの荷重に基づいて調節された例示的なブレーキ装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、エレベータかご22を有する例示的なエレベータシステム20を概略的に示している。エレベータかご22は、ロープ32を用いて周知の方法でガイドレール24に沿って移動する。ガバナ装置30により、エレベータかご22が最高速度を超えることが防止される。例示的なガバナ装置30は、エレベータかご22とともに移動するガバナロープ32を有する。ガバナシーブ34及びテンションシーブ(張り車)36は、ガバナロープ32により形成されるループの対向する端部にそれぞれ位置している。
【0016】
図示したガバナ装置30は、周知のように作動する。エレベータかご22の移動が速すぎる場合、ガバナ装置30が作動して、ガバナシーブ34に制動力を伝え、これにより、ガバナロープ32が機械的なリンク機構38を引き上げ、エレベータかご22に支持されたブレーキ装置40を作動させる。ブレーキ装置40は、エレベータかご22のさらなる移動を防ぐため、ガイドレール24に制動力を付加する。
【0017】
図2は、例示的なブレーキ装置40のA−A線に沿った断面図である。ブレーキ装置40は、第1のブレーキ部材44、ブロック部材42及び第2のブレーキ部材46を有する。本発明の一実施例では、エレベータブレーキ装置は、安全装置(セーフティ)であり、より具体的には、非対称の安全装置である。第1のブレーキ部材44は、固定されたウエッジであり、第2のブレーキ部材46はスライド可能なウエッジである。第2のブレーキ部材46は、少なくとも1つの付勢部材47を介して顎部62に固定されている。顎部62は、ハウジング64の傾斜したエッジにスライド可能に係合している。ブレーキ装置40はハウジング45を有し、該ハウジング45は、エレベータかご22に固定的に接続されるように構成されている(図1参照)。少なくとも1つの締め具54により、第1のブレーキ部材44がブロック部材42に対して固定される。締め具の例としては、ボルト、ピン、ウォームギア又は他の同様な手段がある。図示したように、第1のブレーキ部材44は、ブロック部材42の一の面43に対して平坦に延在している(同一平面上にある)。ブロック部材42の内側と第1のブレーキ部材44の溝部66との間には、少なくとも1つの調節部材50が配置されている。以下で説明するように、調節部材50により、安全装置40の制動力を調節するため、第1のブレーキ部材44がブロック部材42に対して異なる複数の位置に配置されるようになる。
【0018】
調節部材50は、スペーサ、シム又は他の間隔を確保するための手段とし得る。調節部材は、ブロック部材42に対する第1のブレーキ部材44の単一の調節を許容し得るし(例えば、調節部材50は均一の厚さを有する)、ブロック部材42に対する第1のブレーキ部材44の複数の調節を許容し得る。一実施例では、調節部材50は、複数の段差部(ステップ)60を有していてもよく、各段差部60は、第1のブレーキ部材44とガイドレール24との間に独特の間隔を形成する。他の実施例では、調節部材50は、前記ステップ60を用いる場合と比較して、種々の可能な間隔を形成するように、異なる(様々な)厚さを有していてもよい。例示的な調節制御装置52(図4参照)は、締め具54に力を加えることによって、第1のブレーキ部材44とブロック部材42とを離間させることができる。図3に示すように、この動きにより、第1のブレーキ部材44とブロック部材42との間に十分なスペースが形成され、前記部材44,42間に調節部材50が配置され得る。第2の調節制御装置52は、第1のブレーキ部材44とブロック部材42との間における所望の位置へと調節部材をシフト(移動)させる。第1のブレーキ部材44及び調節部材50を移動させる複数の調節制御装置52の各々は、ソレノイド、アクチュエータ又は他の電気機械式の装置としてもよい。
【0019】
図4は、例示的な第1のブレーキ部材44及び該第1のブレーキ部材の溝部66内に配置された調節部材50の上面図である。複数の調節部材50は、これらに共通するロッド56に接続されている。該ロッド56は、調節制御装置52によって制御されている。調節制御装置52は、第1のブレーキ部材44に対して調節部材50の位置を均一に調節するためロッド56を移動させる。調節部材50の一部分に第1のブレーキ部材44が接触している場合に、上記移動によって当該一部分が制御される。別の実施例として、複数の調節部材50はそれぞれ別個のものとしてもよく(すなわち、共通のロッド56がない)、1つまたは複数の固有の調節制御装置52を有していてもよい。
【0020】
図5に示すように、調節部材50が第1のブレーキ部材44とブロック部材42との間に位置しているとき、ガイドレール24と第1のブレーキ部材44との間の間隔つまりギャップは、第1のブレーキ部材44とブロック部材42の面43とが同一平面上にある(すなわち、調節部材50が溝66内に完全に位置している)場合に比べて、より小さくなっている。第1のブレーキ部材44とブロック部材42との間のギャップは、ブレーキ部材44,46によりレールに加わるばね法線力を最終的に決定する。このばね法線力によりかご22の移動が停止されるので、乗客により快適な停止を提供するため、第1のブレーキ部材44とブロック部材42との間の間隔は、かご22の実際の荷重(負荷)に基づいて、理想的なばね法線力をもたらすように調節され得る。また、複数の調節部材50を用いることにより、第1のブレーキ部材44とレール24との間の間隔は、より正確に調節され、したがって、ばね法線力はかご22における荷重に基づく理想的な力により近くなる。
【0021】
第1のブレーキ部材44とブロック部材42との間のギャップの調節を補助するために、例えば、かご22内の乗客にとって緊急停止をより穏やかなものとするように、システムは、最初に、各走行におけるかごの荷重を検出する。かごの荷重を検出する方法には、例えば、かごにおけるはかり装置(load weighing device)等を用いて直接的に荷重を計測すること、または、エレベータ張力部材の張力を測定すること等により非直接的に荷重を計測すること、が含まれるが、これに限定されない。コントローラ(図示せず)は、荷重情報を受け、この荷重情報に基づいて第1のブレーキ部材44とブロック部材42との間における適切なギャップを判断し、必要であれば、調節部材50を配置するため調節制御装置52に信号を送信する。コントローラを、別体のユニット又は既存のエレベータ構成要素に付加してもよい。調節制御装置52は、締め具54に力を加えて、第1のブレーキ部材44をガイドレール24に向けて移動させ、第1のブレーキ部材44とブロック部材42との間に間隔を形成し、該間隔における調節部材50の移動を許容する。第1のブレーキ部材44が調節部材50及びブロック部材42から離間されている場合、第2の調節制御装置52は、ブロック部材42と第1のブレーキ部材44との間に所望の間隔を形成するように、複数の調節部材50を所定の位置へと移動させる。次いで、調節制御装置52は、締め具54への圧力を解放し、これにより、ばね48が、ブロック部材42に隣接させて(可能であれば)又は調節部材50に隣接させて第1のブレーキ部材44を再配置することができ、ブロック部材42と第1のブレーキ部材44との間に調節部材50が挟まれる。その後、エレベータシステム20は走行することが可能となる。
図1
図2
図3
図4
図5