(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
変速比を無段階に変更することのできるバリエータと、前記バリエータの出力側に接続され複数の摩擦要素の締結状態を変更することで変速段を切り換える副変速機構とを備えた無段変速機であって、
前記副変速機構を変速させる際に前記バリエータの変速比を前記副変速機構の変速比変化方向と逆の方向に変化させる協調変速を行う協調変速手段と、
前記協調変速を行う場合に、前記副変速機構の変速が、アクセルペダルが踏み込まれたことによるパワーONダウンシフトであるかを判定するパワーONダウンシフト判定手段と、
前記副変速機構の変速がパワーONダウンシフトであると判定された場合に、前記副変速機構の解放される摩擦要素の容量を前記副変速機構の目標入力回転速度と実入力回転速度との差による回転速度フィードバック補正量に応じて制御するフィードバック制御手段と、
前記副変速機構の入力回転速度が停滞しているか判定する回転停滞判定手段と、
前記入力回転速度が停滞していると判定された場合に、前記副変速機構の目標入力回転速度変化率と実入力回転速度変化率との差による回転速度変化率フィードバック補正量を前記回転速度フィードバック補正量に加算する加算手段と、
を備えた無段変速機。
変速比を無段階に変更することのできるバリエータと、前記バリエータの出力側に接続され複数の摩擦要素の締結状態を変更することで変速段を切り換える副変速機構とを備えた無段変速機の制御方法であって、
前記副変速機構を変速させる際に前記バリエータの変速比を前記副変速機構の変速比変化方向と逆の方向に変化させる協調変速を行い、
前記協調変速を行う場合に、前記副変速機構の変速が、アクセルペダルが踏み込まれたことによるパワーONダウンシフトであるかを判定し、
前記副変速機構の変速がパワーONダウンシフトであると判定された場合に、前記副変速機構の解放される摩擦要素の容量を前記副変速機構の目標入力回転速度と実入力回転速度との差による回転速度フィードバック補正量に応じて制御し、
前記副変速機構の入力回転速度が停滞しているか判定し、
前記入力回転速度が停滞していると判定された場合に、前記副変速機構の目標入力回転速度変化率と実入力回転速度変化率との差による回転速度変化率フィードバック補正量を前記回転速度フィードバック補正量に加算する、
無段変速機の制御方法。
【発明の概要】
【0004】
上記協調変速において、副変速機構のイナーシャフェーズに合わせてバリエータを変速させ、かつ、副変速機構の実変速比をバリエータの変速比変化に合わせて連続的に変化させると、全体の変速比変化が小さくなり、上記変速ショックをより一層抑えることができる。
【0005】
副変速機構の実変速比をこのように変化させるには、副変速機構の入力回転速度がバリエータの変速比変化に応じて設定される目標回転速度となるように、目標入力回転速度と実入力回転速度との偏差に応じて副変速機構の解放側摩擦要素又は締結側摩擦要素の容量を補正すればよい(回転速度フィードバック制御)。
【0006】
しかしながら、かかる回転速度フィードバック制御では、協調変速における副変速機構の変速が、アクセルペダルが踏み込まれたことを受けたいわゆるパワーONダウンシフトである場合に、副変速機構の入力回転速度がなかなか上昇せず、変速が遅れる場合が生じる。
【0007】
これは、パワーONダウンシフトでは、副変速機構の入力回転速度を上昇させる必要があるが、副変速機構への入力トルクが小さい状況において実入力回転速度が上昇して目標入力回転速度と実入力回転速度との偏差が小さくなると、上記回転速度フィードバック制御では摩擦要素の容量の補正量も小さくなって解放側摩擦要素の解放が促進されず、副変速機構の入力回転速度が上昇しにくくなるからである。この問題は、副変速機構の変速前後の入力回転速度の変化幅が大きい高車速域ほど顕著となる。
【0008】
本発明の目的は、協調変速における副変速機構のダウンシフトがパワーONダウンシフトである場合の副変速機構の変速遅れを低減することである。
【0009】
本発明のある態様によれば、変速比を無段階に変更することのできるバリエータと、前記バリエータの出力側に接続され複数の摩擦要素の締結状態を変更することで変速段を切り換える副変速機構とを備えた無段変速機であって、前記副変速機構を変速させる際に前記バリエータの変速比を前記副変速機構の変速比変化方向と逆の方向に変化させる協調変速を行う協調変速部と、前記協調変速を行う場合に、前記副変速機構の変速が、アクセルペダルが踏み込まれたことによるパワーONダウンシフトであるかを判定するパワーONダウンシフト判定部と、前記副変速機構の変速がパワーONダウンシフトであると判定された場合に、前記副変速機構の解放される摩擦要素の容量を前記副変速機構の目標入力回転速度と実入力回転速度との差による回転速度フィードバック補正量に応じて制御するフィードバック制御部と、前記副変速機構の入力回転速度が停滞しているか判定する回転停滞判定部と、前記入力回転速度が停滞していると判定された場合に、前記副変速機構の目標入力回転速度変化率と実入力回転速度変化率との差による回転速度変化率フィードバック補正量を前記回転速度フィードバック補正量に加算する加算部と、を備えた無段変速機、及び、これに対応する制御方法が提供される。
【0010】
上記態様によれば、協調変速における副変速機構のダウンシフトがパワーONダウンシフトである場合に副変速機構の入力回転速度が停滞すると、回転速度フィードバック補正量に回転速度変化率フィードバック補正量が加算されてフィードバック制御が行われるので、副変速機構の変速が促進され、副変速機構の変速遅れを低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、ある変速機構の「変速比」は、当該変速機構の入力回転速度を当該変速機構の出力回転速度で割って得られる値である。また、「最Low変速比」は当該変速機構の最大変速比、「最High変速比」は当該変速機構の最小変速比である。
【0013】
図1は本発明の実施形態に係る無段変速機を搭載した車両の概略構成図である。この車両は動力源としてエンジン1を備える。エンジン1の出力回転は、トルクコンバータ2、第1ギヤ列3、変速機4、第2ギヤ列5、差動装置6を介して駆動輪7へと伝達される。第2ギヤ列5には駐車時に変速機4の出力軸を機械的に回転不能にロックするパーキング機構8が設けられている。
【0014】
トルクコンバータ2は、ロックアップクラッチ2aを備える。ロックアップクラッチ2aが締結されると、トルクコンバータ2における滑りがなくなり、トルクコンバータ2の伝達効率が向上する。
【0015】
また、車両には、エンジン1の動力の一部を利用して駆動されるオイルポンプ10と、オイルポンプ10からの油圧を調圧して変速機4の各部位に供給する油圧制御回路11と、油圧制御回路11を制御する変速機コントローラ12とが設けられている。
【0016】
変速機4は、バリエータ20と、バリエータ20に直列に設けられる副変速機構30とを備えた無段変速機である。「直列に設けられる」とはエンジン1から駆動輪7に至るまでの動力伝達経路においてバリエータ20と副変速機構30とが直列に設けられるという意味である。副変速機構30は、この例のようにバリエータ20の出力軸に直接接続されていてもよいし、その他の変速ないし動力伝達機構(例えば、ギヤ列)を介して接続されていてもよい。
【0017】
バリエータ20は、プライマリプーリ21と、セカンダリプーリ22と、プーリ21、22の間に掛け回されるVベルト23とを備えた無段変速機構である。プーリ21、22は、それぞれ固定円錐板と、この固定円錐板に対してシーブ面を対向させた状態で配置され固定円錐板との間にV溝を形成する可動円錐板と、この可動円錐板の背面に設けられて可動円錐板を軸方向に変位させる油圧シリンダ23a、23bとを備える。油圧シリンダ23a、23bに供給される油圧を調整すると、V溝の幅が変化してVベルト23と各プーリ21、22との接触半径が変化し、バリエータ20の変速比が無段階に変化する。
【0018】
副変速機構30は前進2段・後進1段の変速機構である。副変速機構30は、2つの遊星歯車のキャリアを連結したラビニョウ型遊星歯車機構31と、ラビニョウ型遊星歯車機構31を構成する複数の回転要素に接続され、それらの連係状態を変更する複数の摩擦要素(Lowブレーキ32、Highクラッチ33、Revブレーキ34)とを備える。摩擦要素32〜34への供給油圧を調整し、摩擦要素32〜34の締結状態を変更することによって、副変速機構30の変速段が変更される。
【0019】
具体的には、Lowブレーキ32を締結し、Highクラッチ33とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速となる。Highクラッチ33を締結し、Lowブレーキ32とRevブレーキ34を解放すれば副変速機構30の変速段は1速よりも変速比が小さな2速となる。また、Revブレーキ34を締結し、Lowブレーキ32とHighクラッチ33を解放すれば副変速機構30の変速段は後進となる。なお、以下の説明では、副変速機構30の変速段が1速であるとき「変速機4が低速モードである」と表現し、2速であるとき「変速機4が高速モードである」と表現する。
【0020】
各変速段で締結される摩擦要素によって伝達することのできるトルク(以下、「容量」という。)は、油圧制御回路11から各摩擦要素32〜34に供給される油圧によって決定される。
【0021】
変速機コントローラ12は、
図2に示すように、CPU121と、RAM・ROMからなる記憶装置122と、入力インターフェース123と、出力インターフェース124と、これらを相互に接続するバス125とから構成される。
【0022】
入力インターフェース123には、アクセルペダルの操作量を表すアクセル開度APOを検出するアクセル開度センサ41の出力信号、変速機4の入力回転速度(=プライマリプーリ21の回転速度、以下、「プライマリ回転速度Npri」という。)を検出する回転速度センサ42の出力信号、車速VSPを検出する車速センサ43の出力信号、変速機4の油温TMPを検出する油温センサ44の出力信号、セレクトレバーの位置を検出するインヒビタスイッチ45の出力信号、セカンダリプーリ22の回転速度(=副変速機構30の入力回転速度)を検出する回転速度センサ46の出力信号などが入力される。
【0023】
記憶装置122には、変速機4の変速制御プログラム(
図6)、この変速制御プログラムで用いる変速マップ(
図3)が格納されている。CPU121は、記憶装置122に格納されている変速制御プログラムを読み出して実行し、入力インターフェース123を介して入力される各種信号に対して各種演算処理を施して変速制御信号を生成し、生成した変速制御信号を出力インターフェース124を介して油圧制御回路11に出力する。CPU121が演算処理で使用する各種値、その演算結果は記憶装置122に適宜格納される。
【0024】
油圧制御回路11は複数の流路、複数の油圧制御弁で構成される。油圧制御回路11は、変速機コントローラ12からの変速制御信号に基づき、複数の油圧制御弁を制御して油圧の供給経路を切り換えるとともにオイルポンプ10で発生した油圧から必要な油圧を調製し、これを変速機4の各部位に供給する。これにより、バリエータ20の変速、副変速機構30の変速段の変更、各摩擦要素32〜34の容量制御、ロックアップクラッチ2aの締結・解放が行われる。
【0025】
図3は記憶装置122に格納される変速マップを示している。変速機コントローラ12は、この変速マップを参照しながら、車両の運転状態(この実施形態では車速VSP、プライマリ回転速度Npri、アクセル開度APO)に応じて、バリエータ20、副変速機構30、及び、ロックアップクラッチ2aを制御する。
【0026】
この変速マップでは、変速機4の動作点が車速VSPとプライマリ回転速度Npriとにより定義される。変速機4の動作点と変速マップ左下隅の零点とを結ぶ線の傾きが変速機4の変速比(バリエータ20の変速比に副変速機構30の変速比を掛けて得られる全体の変速比、以下、「スルー変速比」という。)に対応する。変速マップには、従来のベルト式無段変速機の変速マップと同様に、アクセル開度APO毎に変速線が設定されており、変速機4の変速はアクセル開度APOに応じて選択される変速線に従って行われる。
【0027】
変速機4が低速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比を最Low変速比にして得られる低速モード最Low線とバリエータ20の変速比を最High変速比にして得られる低速モード最High線の間(図中A、B領域)で変速することができる。一方、変速機4が高速モードのときは、変速機4はバリエータ20の変速比を最Low変速比にして得られる高速モード最Low線とバリエータ20の変速比を最High変速比にして得られる高速モード最High線の間(図中B、C領域)で変速することができる。
【0028】
また、この変速マップ上には、変速機4のモードを切り換えるモード切換線が低速モード最High線上に重なるように設定されている。
【0029】
変速機4の動作点がモード切換線をB領域側からC領域側に横切った場合は、変速機コントローラ12は、副変速機構30を1速から2速にアップシフトさせる。逆に、変速機4の動作点がモード切換線をC領域側からB領域側に横切った場合は、変速機コントローラ12は、副変速機構30を2速から1速にダウンシフトさせる。
【0030】
なお、
図3に示したモード切換線の設定方法は一例であり、アップシフトとダウンシフトとで異なる切換線を設定することも可能である。また、変速頻度を抑えるために、要求駆動力が大きくなった場合のみ副変速機構30のダウンシフトを許可するようにしてもよい。
【0031】
さらに、変速機コントローラ12は、副変速機構30を変速させる際、バリエータ20の変速比を副変速機構30の変速比が変化する方向と逆の方向に変更する協調変速を行う。具体的には、変速機コントローラ12は、副変速機構30のイナーシャフェーズに合わせてバリエータ20を変速させ、かつ、イナーシャフェーズ中、副変速機構30の締結側摩擦要素又は解放側摩擦要素(Lowブレーキ32又はHighクラッチ33)の容量を制御し、副変速機構30の入力回転速度(副変速機構30の実変速比に対応)をバリエータ20の変速比変化に合わせて連続的に変化させる。これにより、協調変速中、実スルー変速比Ratioに段差が生じないようにする。
【0032】
副変速機構30の入力回転速度をこのように変化させるには、バリエータ20の変速比変化に合わせた目標入力回転速度を設定し、目標入力回転速度と実入力回転速度との偏差に応じて締結側摩擦要素又は解放側摩擦要素の容量を補正し、実入力回転速度を目標入力回転速度に近づける回転速度フィードバックを行えばよい。
【0033】
しかしながら、副変速機構30の入力回転速度を回転速度フィードバックのみで制御した場合、協調変速における副変速機構30の変速が、アクセルペダルが踏み込まれたことを受けたパワーONダウンシフトである場合に、発明が解決しようとする課題の欄で説明したように、副変速機構30の入力回転速度がなかなか上昇せず、変速が遅れる場合がある。
【0034】
そこで、変速機コントローラ12は、以下に説明するように、協調変速における副変速機構30のダウンシフトがパワーONダウンシフトである場合は、必要に応じて回転速度フィードバック制御に加え回転速度変化率フィードバック制御も行うようにし、副変速機構30の上記変速遅れを防止する。
【0035】
図4は変速機コントローラ12の記憶装置122に格納される本実施形態における変速制御プログラムの内容を示している。当該変速制御プログラムは、変速機4の動作点がモード切換線を横切り、協調変速が行われる場合に繰り返し実行されるプログラムである。以下、これについて説明する。
【0036】
S11では、変速機コントローラ12は、協調変速における副変速機構30の変速がパワーONダウンシフトか判定する。アクセルペダルが踏み込まれたことによって変速機4の動作点がモード切換線をC領域側からB領域側に横切った場合は、協調変速における副変速機構30の変速がパワーONダウンシフトであると判定される。パワーONダウンシフトであると判定された場合は処理がS12に進む。
【0037】
S12では、変速機コントローラ12は、副変速機構30の目標入力回転速度と実入力回転速度との間に偏差が発生しているか判定する。副変速機構30の目標入力回転速度は、副変速機構30の変速比がバリエータ20の変速比変化に合わせて連続的に変化するように設定され、例えば、協調変速前後でスルー変速比が変化しないように設定される。偏差が発生していると判定された場合は、処理がS13に進む。
【0038】
なお、S11、S12で否定的な判定がなされた場合は、処理がS21に進み、通常の協調変速制御(例えば、JP5−79554Aに開示されるような従来公知の協調変速制御)が実行される。
【0039】
S13では、変速機コントローラ12は、副変速機構30に回転停滞が発生しているか判定する。具体的には、副変速機構30の実入力回転速度の時間変化率である実入力回転速度変化率を演算し、実入力回転速度変化率が停滞判定しきい値よりも小さいか判定する。停滞判定しきい値はゼロに近い値であり、副変速機構30の実入力回転速度が殆ど変化していないことを判定するためのしきい値である。否定的な判定がなされた場合は処理がS14に進み、肯定的な判定がなされた場合は処理がS15に進む。
【0040】
S14、S15では、変速機コントローラ12は、副変速機構30の目標入力回転速度から実入力回転速度を引いて得られる回転速度偏差(
図5参照)に基づき回転速度フィードバック量を演算する。回転速度フィードバック補正量は、回転速度偏差が正の場合は正の値、負の場合は負の値であり、回転速度偏差の絶対値が大きいほどその絶対値も大きくなる。
【0041】
S16では、変速機コントローラ12は、副変速機構30の変速後入力回転速度と実入力回転速度との差を残り差回転として演算し、残り差回転から判断される協調変速の進行度合いに応じて目標とする副変速機構30の目標入力回転速度変化率を設定する(
図6参照)。例えば、目標入力回転速度変化率は、
図6に示されるように、副変速機構30の入力回転速度がイナーシャフェーズ初期と終期は緩やかに変化するように小さな値に設定され、イナーシャフェーズ中盤は速やかに変化するようにイナーシャフェーズ初期と終期よりも大きな値に設定される。
【0042】
そして、変速機コントローラ12は、副変速機構30の実入力回転速度変化率を演算し、目標入力回転速度変化率から実入力回転速度変化率を引いて得られる回転速度変化率偏差に基づき回転速度変化率フィードバック補正量を演算する。回転速度変化率フィードバック補正量は、回転速度変化率偏差が正の場合は正の値、回転速度変化率偏差が負の場合は負の値であり、回転速度変化率偏差の絶対値が大きいほどその絶対値も大きくなる。
【0043】
S17では、変速機コントローラ12は、合計フィードバック補正量を演算する。合計フィードバック補正量は、処理がS13からS14に進んだ場合は、回転速度フィードバック補正量に等しく、処理がS13からS15、S16に進んだ場合は、回転速度フィードバック補正量と回転速度変化率フィードバック補正量との合計値となる。
【0044】
S18では、変速機コントローラ12は、副変速機構30をダウンシフトさせる場合の解放側摩擦要素であるHighクラッチ33の容量を補正前の容量から合計フィードバック補正量だけ減じた値に補正する。これにより、Highクラッチ33の容量が小側に補正される。
【0045】
S19では、変速機コントローラ12は、副変速機構30に回転停滞が発生しているか再び判定する。具体的には、副変速機構30の実入力回転速度変化率を再度演算し、実入力回転速度変化率が所定の停滞判定しきい値よりも小さいか再度判定する。否定的な判定がなされた場合は処理がS12に進み、肯定的な判定がなされた場合は処理がS20に進む。
【0046】
S20では、変速機コントローラ12は、バリエータ20をHigh側(変速比小側)に変速させることにより、副変速機構30の入力回転速度の上昇を促し、これによって、副変速機構30の変速を促進させる。
【0047】
続いて上記変速制御を行うことによる作用効果について説明する。
【0048】
本実施形態においては、副変速機構30の変速段を変更する際、副変速機構30の変速比変化方向と逆の方向にバリエータ20の変速比を変化させる協調変速が行われる。
【0049】
副変速機構30の変速がパワーONダウンシフトの場合に副変速機構30の入力回転速度を回転速度フィードバック制御のみで制御すると、副変速機構30に回転停滞が発生し、副変速機構30の変速が遅れる場合がある。変速が遅れると運転者が意図した駆動力が得られず、また、副変速機構30の変速が完了しない状態で締結側摩擦要素であるLowブレーキ32を締結し、副変速機構30の実入力回転速度を変速後入力回転速度まで強制的に上昇させると、ショックが発生する。
【0050】
しかしながら、本実施形態においては、このような回転停滞が発生すると、回転速度フィードバック補正量に回転速度変化率フィードバック補正量が加算されてフィードバック制御が行われる(S13:YES、S15〜S18)。副変速機構30の回転停滞が発生すると、副変速機構の入力回転速度変化率が小さくなって回転速度変化率偏差が大きくなるので、この制御によれば、副変速機構30の解放側摩擦要素であるHighクラッチ33の容量がより小側に補正される。
【0051】
したがって、回転速度フィードバック制御のみでは副変速機構30の回転停滞が生じるような状況でも、Highクラッチ33の容量を速やかに下げて、副変速機構30の入力回転速度の上昇、すなわち、副変速機構30の変速を促進することができ、副変速機構30の変速遅れを低減することができる。
【0052】
さらに、本実施形態によれば、回転速度変化率フィードバック制御によっても副変速機構30の回転停滞が解消しない場合(S19:YES)は、バリエータ20がHigh側(変速比小側)に変速されて副変速機構30の入力回転速度の上昇が促される。これにより、副変速機構30の変速遅れをより一層防止することができる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したものに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0054】
また、上記実施形態では、動力源がエンジン1であるが、動力源はエンジン1とモータを組み合わせたもの、又は、モータ単体であってもよい。
【0055】
本願は日本国特許庁に2012年9月27日に出願された特願2012−213943号に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。