特許第5863989号(P5863989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5863989蓄圧器チャージポンプエア抜き法、及び、蓄液器の蓄圧器チャージポンプエア抜き装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5863989
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】蓄圧器チャージポンプエア抜き法、及び、蓄液器の蓄圧器チャージポンプエア抜き装置
(51)【国際特許分類】
   B60T 17/00 20060101AFI20160204BHJP
   B60T 13/14 20060101ALI20160204BHJP
   B60T 13/68 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
   B60T17/00 A
   B60T13/14
   B60T13/68
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-546370(P2014-546370)
(86)(22)【出願日】2012年10月16日
(65)【公表番号】特表2015-505770(P2015-505770A)
(43)【公表日】2015年2月26日
(86)【国際出願番号】EP2012070449
(87)【国際公開番号】WO2013087258
(87)【国際公開日】20130620
【審査請求日】2014年6月13日
(31)【優先権主張番号】102011088803.9
(32)【優先日】2011年12月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】501125231
【氏名又は名称】ローベルト ボッシュ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】フランツ・ハンシェック
(72)【発明者】
【氏名】ベルトホールド・ケフェルシュタイン
(72)【発明者】
【氏名】ハラルド・ヘルマン
【審査官】 杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−502594(JP,A)
【文献】 特表2004−538209(JP,A)
【文献】 特表2004−513841(JP,A)
【文献】 特表2002−502774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 17/00 − 17/22
B60T 13/00 − 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄圧器チャージポンプ(10)を使って充填できる液器(14)を、この液器(14)を使って充填できる充填ヴォリューム(22)と結合させている少なくとも1つの入口弁(28)を開にする工程(S1)、及び、
前記充填ヴォリューム(22)を前記蓄圧器チャージポンプ(10)の吸込側と結合させている少なくとも1つの出口弁(42)を開にする工程(S2)
を持つ、蓄圧器チャージポンプ(10)をエア抜きする方法であって、
前記少なくとも1つの入口弁(28)と前記少なくとも1つの出口弁(42)を開にする前に少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量を求め、少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量及び/又は少なくとも1つの所与の最小チャージ状態変化量と比較し、ここで、前記少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量が前記少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量を下回り、及び/又は、前記少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量が前記少なくとも1つの所与の最小チャージ状態変化量を下回る場合、前記少なくとも1つの入口弁(28)と前記少なくとも1つの出口弁(42)を開にすることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記蓄圧器チャージポンプ(10)の吸込側で動圧が形成されるように、前記液器(14)からの液体を前記少なくとも1つの開いた入口弁(28)と前記少なくとも1つの開いた出口弁(42)を通して移送する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの入口弁(28)及び/又は前記少なくとも1つの出口弁(42)を開にする時に脈動的に開状態に入るよう制御する請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの入口弁(28)が閉状態にある間に前記少なくとも1つの出口弁(42)を開にし、前記少なくとも1つの出口弁(42)を開にした後、前記少なくとも1つの入口弁(28)を開にする請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの入口弁(28)及び前記少なくとも1つの出口弁(42)を開にする時に所与の位相差をもって脈動的に開状態に入るよう制御する請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの入口弁(28)としての第1の入口弁(28)を開にした後、そして、前記少なくとも1つの出口弁(42)としての第1の出口弁(42)を開にした後、減少する蓄圧器圧力及び/又は増大する動圧に関する少なくとも1つの圧力量を求め、少なくとも1つの比較基準量と比較する請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの圧力量が前記少なくとも1つの比較基準量を下回る場合、前記液器(14)を前記充填ヴォリューム(22)と結合させている少なくとも1つの第2の入口弁(28)、及び/又は、前記充填ヴォリューム(22)を前記蓄圧器チャージポンプ(10)の吸込側と結合させている少なくとも1つの第2の出口弁(42)を開にする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記充填ヴォリュームとしてのブレーキ倍力装置の貯留室(22)の内圧を高めるために液器(14)の蓄圧器チャージポンプ(10)をエア抜きする請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記蓄圧器チャージポンプのエア抜きを、前記ブレーキ倍力装置を備えた車両の車速が所与の最高速度以下の時に実行し、車速が前記所与の最高速度を超える時は、前記蓄圧器チャージポンプ(10)のエア抜きを少なくとも所与の時間にわたって中止する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記蓄圧器チャージポンプ(10)のエア抜きを、前記ブレーキ倍力装置を備えた車両の停止時に実行し、車速がゼロに等しくない時、前記蓄圧器チャージポンプ(10)のエア抜きを少なくとも所与の時間にわたって中止する請求項9に記載の方法。
【請求項11】
蓄液器(14)の蓄圧器チャージポンプ(10)のためのエア抜き装置(100)であって、
評価装置(102)を具備し、これを使って、前記評価装置(102)に提供された少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量(104)を少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量及び/又は最小チャージ状態変化量(106)と比較することができ、少なくとも、前記少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量(104)が前記少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量(106)を下回り、及び/又は、前記少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量(104)が前記少なくとも1つの所与の最小チャージ状態変化量(106)を下回る場合、相応の評価信号(110)が出力可能であり、また、
制御装置(112)を具備し、これを使って、前記評価信号(110)を考慮した上で少なくとも1つの制御信号(114)が、蓄圧器チャージポンプ(10)を使って充填できる前記液器(14)を、この液器(14)を使って充填できる充填ヴォリューム(22)と結合させている少なくとも1つの入口弁(28)に向けて、かつ、前記充填ヴォリューム(22)を前記蓄圧器チャージポンプ(10)の吸込側と結合させている少なくとも1つの出口弁(42)に向けて出力可能、それも、前記少なくとも1つの入口弁(28)と前記少なくとも1つの出口弁(42)がそれぞれ開状態に入るよう制御できるように出力可能であり、ここで、前記少なくとも1つの入口弁(28)と前記少なくとも1つの出口弁(42)が同時に開状態に入るよう制御でき、又は、前記少なくとも1つの入口弁(28)が閉状態にある間に前記少なくとも1つの出口弁(42)が開にされ、前記少なくとも1つの出口弁(42)の開状態の続く間に前記少なくとも1つの入口弁(28)が開にされるように開状態に入るよう制御できる
エア抜き装置。
【請求項12】
請求項11に記載のエア抜き装置(100)、
前記少なくとも1つの入口弁(28)を介して前記充填ヴォリューム(22)としてのブレーキ倍力装置の貯留室(22)と結合していて、前記貯留室(22)の内圧を増大できるようにする前記液器(14)、及び、
吸込側が前記少なくとも1つの出口弁(42)を介してブレーキ倍力装置の貯留室(22)と結合していて、ブレーキ液リザーバ(40)からの液体を前記蓄液器(14)の中に汲出しできるようにする前記蓄圧器チャージポンプ(10)
を具備するブレーキ倍力装置。
【請求項13】
請求項12に記載のブレーキ倍力装置を具備するブレーキシステム。
【請求項14】
請求項11に記載のエア抜き装置(100)、
前記少なくとも1つの入口弁(28)を介して、液器(14)を使って充填できるブレーキシステムの前記充填ヴォリューム(22)と結合していて、前記充填ヴォリューム(22)の内圧を増大できるようにする前記液器(14)、及び、
吸込側が前記少なくとも1つの出口弁(42)を介して前記充填ヴォリューム(22)と結合していて、ブレーキ液リザーバ(40)からの液体を前記蓄液器(14)の中に汲出しできるようにする前記蓄圧器チャージポンプ(10)
を具備するブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄圧器チャージポンプをエア抜きする方法に関する。更に、本発明は、液器の蓄圧器チャージポンプ、ブレーキ倍力装置及びブレーキシステムのためのエア抜き装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1が、車両におけるコンポーネントを起動制御する、特に蓄圧器を装填/充填するポンプを起動制御する方法及び装置について述べている。特許文献2においても、電気液圧式ブレーキ装置の蓄圧器チャージポンプを起動制御する方法が述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許第19935371A1号公報
【特許文献2】独国特許第10215392A1号公報
【発明の概要】
【0004】
本発明は、請求項1の特徴を有する蓄圧器チャージポンプをエア抜きする方法、請求項12の特徴を有する蓄液器の蓄圧器チャージポンプのためのエア抜き装置、請求項13の特徴を有するブレーキ倍力装置、請求項14の特徴を有するブレーキシステム、及び、請求項15の特徴を有するブレーキシステムを提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、蓄液器を装填する蓄圧器チャージポンプをエア抜きするについて有利な可能性を提供する。本発明の有利な形態として、蓄圧器チャージポンプをエア抜きする洗浄方法も、蓄液器の蓄圧器チャージポンプのための洗浄装置も挙げることができる。後述の通り、本発明は、蓄液器の蓄圧器チャージポンプをエア抜きするについてほとんど手間をかけずに、ないしは僅かなエネルギー消費で実現できる低コストの形態を提供する。
【0006】
本発明をもってすれば、吸込まれたブレーキ液中の空気に対する蓄圧器チャージポンプの感度が比較的高いという頻発する問題点が容易かつ確実に解消できる。ここで、空気が、蓄圧器チャージポンプを使って汲出された液体、例えばブレーキ液からの脱気(等圧冷却)又は劣悪なエア抜きによって生じさせられたものか否かは問題でない。
【0007】
従来の仕方では、フィードポンプへの空気巻込みがいわゆるフィードストップにつながるケースがしばしばあるのに対し、本発明によれば、フィードポンプに巻込まれた空気を迅速かつ確実に除去することができる。このことは、特に永続的自己吸込運転の中で制御される蓄圧器チャージポンプがしばしば自動的に自らの機能を再開できなくなる先行技術と比べて本質的に有利である。従って、本発明によれば、蓄圧器チャージポンプの有用性は拡大可能である。これと共に、本発明は、空気巻込みにも拘らず蓄圧器チャージポンプの機能の全能力を迅速に回復させることを保証する。
【0008】
本発明は、特に、空気ポンプがそのデッドスペース及び/又は出口弁の開放圧のゆえに装備できない蓄圧器チャージポンプにおいて有用であることを示唆しておく。また、本発明によれば、蓄圧器チャージポンプにおいて空気ポンプなしで済ませることができる。特に、本発明は、蓄圧器チャージポンプエア抜き用に形作られた空気ポンプより低いコストで実現可能である。
【0009】
本発明はまた、蓄圧器チャージポンプが吸込側で直接ライン(吸込ライン)を介して、例えば大気圧程度の比較的僅かな圧力を使用する液体タンクにつながっているシステムに有利に適用できる。比較的低い圧力を使用するこのような液体タンクは、例えばブレーキ液タンクであってよい。従来の仕方では、蓄圧器チャージポンプをこのように配置した場合、蓄圧器チャージポンプ運転中にこの蓄圧器チャージポンプの吸込側で形成されたフィード圧を使ってそこから空気を除去することが不可能である。従って、本発明は、例えばブレーキシステムなど多数のシステムに有利に適用できる。
【0010】
従って、本発明によれば、多くの状況において、また、多くの流体システムにおいて、蓄圧器チャージポンプの機能障害、特に蓄圧器チャージポンプのフィードストップなどを迅速かつ確実に取除くことができる。こうして、蓄圧器チャージポンプの吐出効率も高められる。本発明をブレーキシステムに採用すれば、蓄圧器チャージポンプの機能の全能力がより確実に保証されることにより、そのブレーキシステムを備えた車両の運転者にとってより高い快適性が実現できる。特に、本発明による方法での蓄圧器チャージポンプの(自動)エア抜きにより、運転者は、蓄圧器チャージポンプのエア抜きのために工場を探す必要がないので、時間的にもコスト的にも負担を軽減することができる。
【0011】
有利な一実施形態では、蓄圧器チャージポンプの吸込側で動圧が形成されるように、蓄液器からの液体を少なくとも1つの開いた入口弁と少なくとも1つの開いた出口弁を通して移送する。その動圧を使って、蓄圧器チャージポンプのエア抜きを迅速かつ確実に行うことができる。
【0012】
また、少なくとも1つの入口弁と少なくとも1つの出口弁を開にする前に少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量を求めることができる。少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量は、続いて、少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量及び/又は少なくとも1つの所与の最小チャージ状態変化量と比較することができる。少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量が少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量を下回り、及び/又は、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量が少なくとも1つの所与の最小チャージ状態変化量を下回る場合は、少なくとも1つの入口弁と少なくとも1つの出口弁を開にすることができる。これが有利であるのは、例えば蓄圧器チャージポンプ運転中にも拘らず蓄液器における圧力形成の遅れが確認された場合、空気が蓄圧器チャージポンプに巻込まれたと高い確率で推測できるからである。これに対し、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量が少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量を上回り、及び/又は、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量が少なくとも1つの所与の最小チャージ状態変化量を上回ることが確認された場合は、蓄圧器チャージポンプのエア抜きが必要でないと確実に推断することができる。これで、こうした状況の時に少なくとも1つの入口弁と少なくとも1つの出口弁を開にする無駄を省くことができる。
【0013】
例えば、少なくとも1つの入口弁及び/又は少なくとも1つの出口弁を開にする時に脈動的に開状態に入るよう制御することができる。少なくとも1つの入口弁又は少なくとも1つの出口弁を開状態に入るよう脈動的に制御するというのは、固定した所与の開時期と閉時期をもって、ないしは固定した所与のクロック周波数をもってそれぞれの弁を交互に開閉することと解してよい。開時期と閉時期を有利に固定することにより、蓄圧器チャージポンプの吸込側で好ましい動圧を設定することができる。
【0014】
本発明の更なる有利な一形態では、少なくとも1つの入口弁が閉状態にある間に少なくとも1つの出口弁を開にする。少なくとも1つの出口弁を開にした後、今度は少なくとも1つの入口弁を開にする。こうすることにより、少なくとも1つの蓄圧器チャージポンプの吸込側で形成される動圧の上昇の度合いは小さくなることが保証される。特に、形成される動圧の急激な増大を阻止できる。また、こうして動圧を減じることが可能になる。
【0015】
更に進んだ有利な一形態では、少なくとも1つの入口弁及び/又は少なくとも1つの出口弁を開にする時に所与の位相差をもって脈動的に開状態に入るよう制御することができる。ここでは、有利な位相差とこれに対応する有利な開時期と閉時期のもとで、少なくとも1つの出口弁が開状態にある間、少なくとも1つの入口弁が閉状態にあり、少なくとも1つの出口弁を開にした後、少なくとも1つの入口弁を開にすることが自動的に行われる。
【0016】
更なる有利な一実施形態では、少なくとも1つの入口弁としての第1の入口弁を開にした後、そして、少なくとも1つの出口弁としての第1の出口弁を開にした後、減少する蓄圧器圧力及び/又は増大する動圧に関する少なくとも1つの圧力量を求め、少なくとも1つの比較基準量と比較することができる。こうして、蓄圧器チャージポンプのエア抜きに必要な動圧を形成するためには入口弁だけ又は出口弁だけ開にすれば足りるかどうか確認できる。
【0017】
更に進んだ一形態では、少なくとも1つの圧力量が少なくとも1つの比較基準量を下回る場合、蓄液器を充填ヴォリュームと結合させている少なくとも1つの第2の入口弁、及び/又は、充填ヴォリュームを蓄圧器チャージポンプの吸込側と結合させている少なくとも1つの第2の出口弁を開にすることができる。これで、蓄圧器チャージポンプの吸込側で過小の動圧が確認された後、これを増大させることができる。同様に、少なくとも1つの圧力量が少なくとも1つの比較基準量を上回る場合、第2の入口弁及び第2の出口弁を開にするのを止めてよい。こうして、蓄液器における不要な減圧を阻止できる。
【0018】
上の段落で述べた実施形態は、充填ヴォリュームとしてのブレーキ倍力装置の貯留室の内圧を高めるために蓄液器の蓄圧器チャージポンプをエア抜きする時でも実施可能である。そこでは、上で述べた効果も実現可能である。
【0019】
更に進んだ有利な一形態では、蓄圧器チャージポンプのエア抜きの前にブレーキ倍力装置を備えた車両の車速を求める。好ましくは、蓄圧器チャージポンプのエア抜きを、ブレーキ倍力装置を備えた車両の車速が所与の最高速度以下の時だけ実行する。これに対し、車速が所与の最高速度より高い時は、蓄圧器チャージポンプのエア抜きを少なくとも所与の時間にわたって中止することが好ましい。所与の時間の経過後、改めてブレーキ倍力装置を備えた車両の(現実の)車速を所与の最高速度と比較することができる。
【0020】
好ましくは、ブレーキ倍力装置を備えた車両の停止している時だけ蓄圧器チャージポンプのエア抜きを実行し、ここで、車速がゼロに等しくない時、蓄圧器チャージポンプのエア抜きを少なくとも所与の時間にわたって中止する。こうして、少なくとも1つの入口弁を開にすることによって貯留室の内圧が高められ、それで、ブレーキ倍力装置によって車両が制動されるのを阻止できる。従って、運転中の運転者を苛立たせる車両減速を阻止できる。
【0021】
上で列挙した利点は、蓄液器の蓄圧器チャージポンプのために相応のエア抜き装置が設けられている場合でも保証されている。
【0022】
相応のエア抜き装置を備えたブレーキ倍力装置も、上で挙げた利点をもたらす。
【0023】
同様に、上で列挙した利点は、その種のブレーキ倍力装置を備えたブレーキシステムにより実現可能である。
【0024】
更に、挙げた利点は、ブレーキシステムにその種のエア抜き装置を備え付けることで実現できる。
【0025】
以下、本発明の更なる特徴と利点を図面に則して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】蓄圧器チャージポンプをエア抜きする方法の第1の実施形態を図解するフローチャートである。
図2】蓄圧器チャージポンプをエア抜きする方法の第2の実施形態を図解するブレーキシステム概略図である。
図3】蓄液器の蓄圧器チャージポンプのためのエア抜き装置の実施形態の図解的概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、蓄圧器チャージポンプをエア抜きする方法の第1の実施形態を図解するフローチャートを示す。
【0028】
図1に概略的に再現された方法では、工程S1において、蓄圧器チャージポンプを使って充填できる蓄液器を、この蓄液器を使って充填できる充填ヴォリュームと結合させている少なくとも1つの入口弁を開にする。同様に工程S2において、蓄液器を使って充填できる充填ヴォリュームを蓄圧器チャージポンプの吸込側と結合させている少なくとも1つの出口弁を開にする。蓄液器を使って充填できる充填ヴォリュームは、特に例えば、その体積の大きさが充填/吐出しにより変えられるチャンバ(貯留室)であってよい。下になお、蓄液器を使って充填できる好適な充填ヴォリュームの例を挙げる。
【0029】
工程S1及びS2の実行により、蓄圧器チャージポンプの吸込側で動圧が形成されるように、蓄液器からの液体が少なくとも1つの開いた入口弁と少なくとも1つの開いた出口弁を通して移送される。その形成された動圧を使って、蓄圧器チャージポンプに巻込まれた空気を押出すことができる。こうして、蓄圧器チャージポンプの迅速かつ確実なエア抜きが実行でき、これにより、空気の巻込みに起因する蓄圧器チャージポンプの機能障害を除去又は阻止することができる。
【0030】
更に進んだ有利な一形態では、本方法は、少なくとも1つの入口弁と少なくとも1つの出口弁を開にする前、ないしは、工程S1及びS2の前に実行される任意の工程S3を含むことができる。この工程S3では、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量を求める。求められた蓄圧器チャージ状態量は、例えば蓄液器の液面位、蓄液器に注入された液体の量、及び/又は、蓄液器の内圧であってよい。これに対応して、求められた蓄圧器チャージ状態変化量は、例えば蓄液器の液面位増分、及び/又は、特定時間内及び/又は蓄圧器チャージポンプのポンピング実行の間の蓄圧器圧力変化量を包含してよい。但し、求めうる蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量は、ここに列挙した例だけに限られるものでない。
【0031】
求められた蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量は、続いて、少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量及び/又は最小チャージ状態変化量と比較することができる。少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量が少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量を下回り、及び/又は、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量が少なくとも1つの最小チャージ状態変化量を下回る場合、少なくとも1つの入口弁と少なくとも1つの出口弁を開にする。これは、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量が少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量を下回り、及び/又は、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量が少なくとも1つの最小チャージ状態変化量を下回る場合、工程S1及びS2を実行すると書き換えることもできる。
【0032】
空気が高い確率で蓄圧器チャージポンプに巻込まれていることが(上記の比較により)確実に確認できる時だけ蓄圧器チャージポンプのエア抜きを実行することは、工程S3を使って保証できる。これに対し、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量が少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量を上回り、及び/又は、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態変化量が少なくとも1つの最小チャージ状態変化量を上回る場合、本方法は中断できる。これで、蓄圧器チャージポンプの中に存在しない空気を除去する無駄な手間は省かれる。しかしながら、工程S1及びS2は、工程S3なしであっても、事前に蓄圧器チャージポンプ10の中の空気の存在を確認することなく、所与の時間の経過後に自動的にルーチンで実行できる。
【0033】
工程S1及びS2は同時に実行することができる。その場合、少なくとも1つの入口弁と少なくとも1つの出口弁を1つの比較的長い開段階において開状態に入るように制御することができる。あるいはその代わりとして、少なくとも1つの入口弁及び/又は少なくとも1つの出口弁を開にする時に脈動的に開状態に入るよう制御することができる。少なくとも1つの入口弁又は少なくとも1つの出口弁を脈動的に開にするというのは、特定の開時期及び/又は閉時期に対して所与の周波数及び/又は周期時間をもってそれぞれの弁を開閉するように制御することと解してよい。これは、それぞれの弁をタイミング制御により開にすることと書き換えることもできる。少なくとも1つの入口弁又は少なくとも1つの出口弁を脈動的に開にすることは、例えば電気切換式の弁に周期的な電流信号を通すことによって簡単に実行できる。ここでは、周波数、開時期及び/又は閉時期について有利な値を定めることにより、蓄圧器チャージポンプの吸込側で形成される動圧を好ましい値に設定することができる。
【0034】
工程S1及びS2は、しかしながら、順次実行することも、部分的に交差する形で実行することもできる。例えば、工程S1の開始前に工程S2を開始することもできる。これは、少なくとも1つの入口弁が閉状態にある間に少なくとも1つの出口弁を開にすると書き換えることもできる。この場合、少なくとも1つの入口弁は、少なくとも1つの出口弁を開にした後に開にされる。こうして、蓄圧器チャージポンプの吸込側における急激な圧力増大を阻止できる。
【0035】
特に、少なくとも1つの入口弁と少なくとも1つの出口弁を開にする時に所与の位相差をもって脈動的に開状態に入るよう制御することができる。こうして、適当な位相差の選択により、少なくとも1つの出口弁を開にした後に、すなわち、少なくとも1つの出口弁の開状態の続く間に少なくとも1つの入口弁を開にすることが保証できる。これで、フィードポンプの吸込側における急激な圧力増大が阻止される。
【0036】
本方法の更に進んだ有利な一形態では、少なくとも1つの入口弁としての第1の入口弁を開にした後、そして、少なくとも1つの出口弁としての第1の出口弁を開にした後、減少する蓄圧器圧力及び/又は増大する動圧に関する少なくとも1つの圧力量を求めることができる。この少なくとも1つの量を、続いて、少なくとも1つの比較基準量と比較することができる。少なくとも1つの圧力量が少なくとも1つの比較基準量を下回る場合、蓄液器を、この蓄液器を使って充填できる充填ヴォリュームと結合させている少なくとも1つの第2の入口弁、及び/又は、充填ヴォリュームを蓄圧器チャージポンプの吸込側と結合させている少なくとも1つの第2の出口弁を開にすることができる。これで、少なくとも1つの蓄圧器チャージポンプをエア抜きするのに不十分な動圧を、少なくとも1つの第2の入口弁又は少なくとも1つの第2の出口弁を開にすることによって増大できる。しかしながら、少なくとも1つの圧力量が少なくとも1つの比較基準量を上回る場合は、第2の入口弁及び/又は第2の出口弁を開にするのを止めてよい。これで、蓄液器からは、所望の動圧を形成するのに必要な液体量だけが排出される。同時に、蓄液器から過大量の液体が少なくとも1つの第2の開いた入口弁を経由して蓄液器を使って充填できる充填ヴォリュームの中に移動することにより充填ヴォリュームにおいて望ましくない圧力形成が行われることは、阻止できる。
【0037】
ここで述べた方法を使って形成された動圧の高さは、周囲温度に左右されることがある。この動圧は通例、温度が高い時より温度が低い時の方が(はるかに)高い。弁28及び42を脈動的に開にすることにより、及び/又は、減少する蓄圧器圧力及び/又は増大する動圧に関する少なくとも1つの圧力量を求め、開いた弁28及び42の数が増える前に上記圧力量を比較基準量と比較することにより、動圧は、温度に左右されるにしても、好ましい値に設定することができる。
【0038】
上の段落で述べた方法は、特に、ブレーキ倍力装置(充填ヴォリュームとしての)の貯留室の内圧を高めるために蓄液器の蓄圧器チャージポンプをエア抜きするために適用することができる。但し、本方法の実施可能性は、ブレーキ倍力装置と協働する蓄液器の蓄圧器チャージポンプのエア抜きだけに局限されるものでないことを示唆しておく。同様に、方法の実施可能性は、ブレーキシステムに組入れられた蓄圧器チャージポンプのエア抜きだけに制限されていない。
【0039】
図2は、蓄圧器チャージポンプをエア抜きする方法の第2の実施形態を図解するブレーキシステム概略図を示す。
【0040】
図2に描かれたブレーキシステムについての以下の記述を単なる例示と解釈すべきであることを示唆しておく。更に述べる通り、ブレーキ倍力装置の可変的なヴォリューム/チャンバ(貯留室)の内圧を高めるために蓄液器の蓄圧器チャージポンプをエア抜きする本方法の実施可能性は、この種のブレーキシステムだけに局限されるものでない。
【0041】
概略的に再現されたブレーキシステムは、蓄圧器14の内圧を高めることのできるモータ12を付けた蓄圧器チャージポンプ10を具備する。これは、蓄圧器14が蓄圧器チャージポンプ10を使って装填/充填できると書き換えることもできる。蓄圧器14は、特に高圧蓄圧器として形作られていてよい。但し、更に述べる本方法は、この種の圧力センサ14の装填だけに局限されるものでない。同様に、蓄圧器チャージポンプ10を3ピストンポンプとして形作ることは、単なる例示と理解すべきである。
【0042】
ブレーキシステムにおいて、蓄圧器14は、ブレーキシステムのブレーキ倍力装置16/ブレーキマスタシリンダ18と液圧結合している、それも、ブレーキ倍力装置16/ブレーキマスタシリンダ18の少なくとも1つの貯留室20の内圧が、蓄圧器14の中に形成された圧力を使って高められるように液圧結合している。ブレーキマスタシリンダ18は、タンデム形ブレーキマスタシリンダとして形作られていてよい。但し、更に述べる本方法は、この種のブレーキマスタシリンダ18だけに局限されるものでない。
【0043】
好ましくは、蓄圧器14はブレーキマスタシリンダ18の前室22と液圧結合している。前室22とは、ブレーキマスタシリンダ18の内部ヴォリュームであると解してよく、ここで、ブレーキマスタシリンダ18の可変容量形コンポーネント24が前室22を少なくとも1つの貯留室20から仕切っている、それも、前室22と少なくとも1つの貯留室20からの液体の全体積が可変容量形コンポーネント24の容量調節時でも一定に留まるように仕切っている。これで、前室22のヴォリューム増大が、少なくとも1つの貯留室20を圧縮し、これに応じて少なくとも1つの貯留室20の内圧を高める結果をもたらす。これに対応して、前室22のヴォリューム減少が、少なくとも1つの貯留室20のヴォリュームを増大させ、そこで、少なくとも1つの貯留室20の内圧を下げる結果をもたらし得る。
【0044】
ここで述べた実施形態では、従って、蓄圧器14はブレーキシステムのブレーキ倍力装置として機能する。(これは、ブレーキシステムにおいてブレーキ倍力装置が、蓄圧器チャージポンプ10と蓄圧器14を包含する液圧装置により実現させられると書き換えることもできる。)下でより厳密に述べる通り、液圧装置を付けた図示のブレーキシステムは、例えばハイブリッド車又は電気自動車に使用することができる。再現されたブレーキシステムは、それゆえ、HAS−hev (Hydraulic Actuation System for hybride electrical vehicles)と呼ぶことができる。
【0045】
蓄圧器チャージポンプ10と蓄圧器14は、ライン26を介して前室22と液圧結合している。ここでは、少なくとも1つの入口弁28/昇圧弁が蓄圧器14と前室22の間の液圧ラインの中に配置されている、それも、蓄圧器14からのブレーキ液体積が少なくとも1つの開いた入口弁28を通して前室22の中に移送できるように配置されている。特に、複数の入口弁28が、ライン26の中に形作られた分岐点30と更なるライン32の中に形作られた分岐点34を介して蓄圧器チャージポンプ10の吐出側及び圧力センサ14と結合していてよい。蓄圧器チャージポンプ10を3ピストンポンプとして形作る場合は、3つの入口弁28を使用することが有利である。但し、更に述べるブレーキシステムは、特定の数の入口弁28だけに局限されるものでない。
【0046】
蓄圧器チャージポンプ10の吸込側が、リターンライン36/リザーバラインの中に形作られた少なくとも1つの分岐点38を介してブレーキ液リザーバ40と結合している。ブレーキ液リザーバ40は、少なくとも1つの通流口41を介してブレーキマスタシリンダ18の少なくとも1つの貯留室20と結合していてよい。
【0047】
好ましくは、蓄圧器チャージポンプ10の吸込側は、少なくとも1つの出口弁42/降圧弁を介して前室22とも結合している。この場合、少なくとも1つの出口弁42を開にした後、前室22からのブレーキ液体積が、少なくとも1つの開いた出口弁42を通して蓄圧器チャージポンプ10により蓄圧器14に送り込まれる。その結果、前室22のヴォリュームが速やかに減じられ、これで、ブレーキマスタシリンダ18の少なくとも1つの貯留室20の内圧が速やかに下げられる。例えば複数の出口弁42、特に3つの出口弁42が、入側でそれぞれライン26の中に形作られた分岐点44と、出側でリターンライン36の中に形作られた分岐点46と結合していてよい。
【0048】
蓄圧器チャージポンプ10と蓄圧器14から作られたブレーキ倍力装置は、少なくとも1つのセンサ48又はセンサ50を使って制御することができる。例えば、圧力センサとしての第1のセンサ48が、蓄圧器チャージポンプ10の吐出側と蓄圧器14に配置されていてよい。圧力センサとして形作られていてもよい第2のセンサ50が、この場合、好ましくはライン26に接続されている。
【0049】
好ましくは、少なくとも1つのセンサ48又は50の準備されたセンサ信号を考慮した上で、弁28及び42を開閉することにより、少なくとも1つの貯留室20において内圧が、自動速度制御システム(ACC)及び/又は自動非常ブレーキシステムによりプリセットされた目標減速に応じてアクティブに設定されるように前室22のヴォリュームを設定することができる。これで、蓄圧器チャージポンプ10と蓄圧器14を自動速度制御システム及び/又は自動非常ブレーキシステムを備えたブレーキシステムにおいて使用することができる。
【0050】
同様に、車速の減速のためにブレーキ作動エレメント52を作動させる時、運転者を蓄圧器チャージポンプ10と蓄圧器14で支援することができる。例えば、少なくとも1つの作動センサ54を使って、ブレーキセンサを使って、及び/又は、ブレーキストロークセンサを使って、運転者によりプリセットされた車速の目標減速を確認することができる。続いて、フィードライン56を介して少なくとも1つの貯留室20と液圧結合した少なくとも1つの(ここでは概略的にしか再現されていない)ブレーキ回路58に、ないしは、少なくとも1つのブレーキ回路58の少なくとも1つの(図解されていない)ホイールブレーキシリンダに所望のブレーキ圧が存在するように、蓄圧器チャージポンプ10、蓄圧器14及び弁28及び42を使って前室22のヴォリュームをアクティブに設定することができる。ここで再現されたブレーキシステムが、少なくとも1つのブレーキ回路58の特定の形態だけに限られるものでないことを示唆しておく。よって、少なくとも1つのブレーキ回路58についてのこれ以上詳細な記述を省略する。
【0051】
蓄圧器チャージポンプ10、圧力センサ14及び弁28及び42は、これで、ブレーキシステムの利用者にとってより優れたブレーキ快適性を保証する。特に、蓄圧器チャージポンプ10、蓄圧器14及び弁28及び42が有利な仕方で機能する中で、ブレーキ作動エレメント52に作用した運転者制動力の数倍の力を可変容量形コンポーネント24に働かせることができる。運転者は、従って、所望のブレーキ圧を形成するために働かされる全部の力をブレーキ作動エレメント52に自分で加えずに済む。
【0052】
図示されたブレーキシステムは、(図解されていない)ジェネレータと共に車両の制動に使用することもできる。この場合、蓄圧器チャージポンプ10、蓄圧器14及び弁28及び42を使って、ジェネレータブレーキトルクの増減を考慮した上で、少なくとも1つのブレーキ回路58の中にあるブレーキ圧を変えることができる。例えば、前室22からのブレーキ液体積を少なくとも1つの開いた出口弁42を介して汲出すことにより、少なくとも1つのブレーキ回路58の中にあるブレーキ圧をジェネレータブレーキトルクの一時的増大に応じて下げることができる。同様に、蓄圧器14からのブレーキ液体積を少なくとも1つの入口弁28を介して前室22に送り込むことにより、ジェネレータブレーキトルクの一時的増大が補正されるように少なくとも1つのブレーキ回路58の中のブレーキ圧を上げることができる。これで、蓄圧器チャージポンプ10、蓄圧器14及び弁28及び42を使ってジェネレータブレーキトルクを隠す有利なブラインド操作が実行可能である。
【0053】
ブレーキシステムの利用者にとって追加の操作快適性を保証するため、ブレーキ作動エレメント52とブレーキマスタシリンダ18の間に検知シリンダ60が設けられていてよい。例えば、(ここでは概略的にしか再現されていない)ブレーキ作動エレメント52が検知シリンダ60の可変容量形コンポーネント62と結合し、これが検知シリンダ60の内容積全体を前室64と貯留室66に区分していてよい。この場合、ブレーキマスタシリンダ18の可変容量形コンポーネント24は、少なくとも部分的に検知シリンダ60の貯留室66に突き入るピストン68と結合していてよい。好ましくは、以下でより厳密に述べる圧力調整器を介して貯留室の内圧を変えることができる。
【0054】
この種の検知シリンダ60を圧力調整器と共に使用することにより、ブレーキマスタシリンダ18の少なくとも1つの貯留室20の内圧から分離できる復元作用をブレーキ作動エレメント52に加えることができる。運転者は、この場合、ジェネレータブレーキトルクを隠すべく少なくとも1つのブレーキ回路58においてブレーキ圧を変えても、標準通りのブレーキ感覚(ペダル感覚)を感じ取る。同時に、運転者は、検知シリンダ60を介して制動力がアクティブにブレーキマスタシリンダ18に作用するよう介入することができる。
【0055】
検知シリンダ60の貯留室66は、ライン72を介して、リターンライン36の中に形作られた分岐点74と液圧結合していてよい。好ましくは、検知シリンダ60の貯留室66とライン72の間の液圧結合は、ブレーキ作動エレメント53を軽く作動させると閉じられる開口部として形作られている。これに対し、検知シリンダ60の貯留室66とばね76の間の液圧結合は、ブレーキ作動エレメント52を強く作動させても閉じられないように形作られていてよい。
【0056】
ライン82を介してばね76と、ライン84を介して貯留室66とそれぞれ結合した常時調節可能な弁80を介して、貯留室66の内圧を所望の値にアクティブに設定することができる。常時調節可能な弁80は、従って、シミュレータバルブと呼ぶこともできる。更なる常時調節可能な弁86が、ライン88を介して、ライン84の中に形作られた分岐点90と、ライン92を介して、ライン26の中に形作られた分岐点94とそれぞれ結合している。この常時調節可能な弁86も、検知シリンダ60の貯留室66の内圧を所望の値に設定するのに利用することができる。
【0057】
蓄圧器チャージポンプ10、蓄液器14、少なくとも1つの入口弁28及び少なくとも1つの出口弁42を含むブレーキシステムの上記コンポーネントが、更に述べる方法を実施可能にする上で必ずしも必要であるとは限らないことを、もう一度示唆しておく。
【0058】
任意には、本方法は、蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量を求めることも包含する。求めることのできる蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量の例は、すでに上で挙げた通りである。特にセンサ48はそのために使用可能である。こうして、特に、求められた蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量を所与の最小チャージ状態量及び/又は最小チャージ状態変化量と比較することにより、蓄圧器チャージの低減及び/又は不安定が生じているか否か確認することができる。これをチャージ勾配モニタリングと呼ぶこともできる。蓄液器のチャージ状態がその目標チャージ状態から外れていることが確認された場合、次に述べるエア抜きルーチンを実行することができる。但し、このエア抜きルーチンは、チャージ勾配モニタリングなしでも、蓄圧器チャージポンプ10の中に空気が存在することを事前に確認することなく、所与の時間の経過後に自動的にルーチン通り実行できる。
【0059】
また、このエア抜きルーチンは、ブレーキシステムを備えた車両の車速を考慮した上で開始又は遅延することができる。蓄圧器チャージポンプ10のエア抜きは、例えば車速が所与の最高速度以下である時だけ実行できる。これで、場合によって前室22の中で起こる圧力上昇の結果として車両が減速することを運転者が理解できずに戸惑ってしまう事態は回避される。これに対し、車速が所与の最高速度を超える時は、蓄圧器チャージポンプ10のエア抜きを少なくとも所与の時間にわたって中止することができる。その時間の経過後、改めて車速を検知することができる。
【0060】
好ましくは、蓄圧器チャージポンプ10のエア抜きは、停止時、すなわち、ブレーキ倍力装置を備えた車両の所与の“最高速度”がゼロに等しい時だけ実行される。ここで、車速がゼロに等しくない時、蓄圧器チャージポンプのエア抜きは少なくとも所与の時間にわたって中止される。これが有利であるのは、特に、少なくとも1つの蓄圧器充填レベル量を少なくとも1つの所与の最小充填レベル量と比較した時、蓄圧器チャージポンプ10の中に空気が存在するにも拘らず、蓄液器14が少なくともなお特定の最小充填レベル量まで充填可能であることが確認される場合である。この場合、蓄圧器チャージポンプ10のエア抜きと共に車両が停止するまで待つことが可能である。
【0061】
エア抜きルーチンでは、少なくとも1つの入口弁28/昇圧弁と少なくとも1つの出口弁42/降圧弁を開にすることにより、蓄液器14から開いた弁28及び42を介してリターンライン36に向かう体積流が作られる。弁28及び42を開にする所期の弁切換えが行われる時、本方法は、すでに上で述べた本方法の実施形態の通り、蓄圧器チャージポンプ10のエア抜きのために使用できる。その工程を使って、体積流は、蓄圧器チャージポンプ10の吸込側に限定された動圧が存在するように作ることができる。
【0062】
蓄圧器チャージポンプ10の吸込側に動圧が形成される時、ハウジングボア及び/又はリターンライン36のフィルタスクリーンの流れ抵抗が利用できる。リターンライン36の長さと管径に基づき、弁28及び42を開にすると、リターンポンプ10に所望の動圧が生じることになる。これで、本方法は、リターンライン36の特性を利用して、リターンポンプ10の吸込側に所望の動圧を作り出すのである。(これは、図2において記号98で再現されている。)
【0063】
蓄圧器チャージポンプ10をエア抜きすべく弁28及び42を起動制御する間、蓄圧器チャージポンプ10のモータ12は、蓄圧器チャージポンプ10を駆動するアクティブ状態に入るよう制御される。これは、弁28及び42が比較的長い開段階に入るよう起動制御されるのか、比較的短い開時間と閉時間をもって脈動的に起動制御されるのかに関係なく行われる。これは、蓄圧器チャージポンプ10を駆動するためのモータ12の運転が、弁28及び42が開いている間又は部分流を通す間に行われると書き換えることもできる。蓄圧器チャージポンプ10の吸込側にある、フィード圧とも呼ぶことのできる動圧により、蓄圧器チャージポンプ10は強制的に充填される。こうして、(場合によって)蓄圧器チャージポンプ10の中に存在する空気は押し出され、その結果、エア抜きされた蓄圧器チャージポンプ10の機能の全能力が再び保証される。加えて、この時、蓄液器14の中にある貯留圧力の減少につれて蓄圧器チャージポンプ10の少なくとも1つの出口弁の開圧力も減少するという特性を利用することができ、そのことが蓄圧器チャージポンプ10のエア抜きを促進する。
【0064】
動圧を形成すべく蓄圧器チャージポンプ10の吸込側に送られた液体は再び完全にブレーキ液リザーバ40の中に戻されることを示唆しておく。これで、蓄圧器チャージポンプ10のエア抜きの後、動圧の速やかな降下が保証される。
【0065】
図3は、蓄液器の蓄圧器チャージポンプのためのエア抜き装置の実施形態の図解的概略図を示す。
【0066】
図3に図解的に再現されたエア抜き装置100は、例えば、すでに述べたブレーキシステムにおいて使用することができる。但し、このエア抜き装置100の可能な用途はこのブレーキシステムだけに限られるものでないことを示唆しておく。
【0067】
例えば、エア抜き装置100は、上で挙げたコンポーネントのうちの一部、少なくとも1つの入口弁28を介して充填ヴォリュームと結合していて、この充填ヴォリュームの内圧を増大できるようにする蓄液器14と、吸込側が少なくとも1つの出口弁42を介して充填ヴォリュームと結合していて、ブレーキ液リザーバ40からの液体を蓄液器14の中に汲出しできるようにする蓄圧器チャージポンプ10だけを包含するシステムにおいても使用することができる。エア抜き装置100は、従って、様々に形作られた多数のシステムにおいて使用可能である。
【0068】
特に、エア抜き装置100は、蓄液器14と蓄圧器チャージポンプ10を具備するいかなるブレーキシステムにおいても有利に使用できる。そこでは、一方で、蓄液器14が少なくとも1つの入口弁28を介してブレーキシステムの充填ヴォリュームと結合していて、蓄圧器14を使って充填ヴォリュームの内圧を形成できるようになっていて、他方で、蓄圧器チャージポンプ10の吸込側が少なくとも1つの出口弁42を介して充填ヴォリュームと結合していて、蓄圧器チャージポンプ10を使ってブレーキ液リザーバ40からの液体を蓄液器14の中に汲出しできるようになっていれば、十分に足りる。従って、充填ヴォリュームをブレーキ倍力装置の貯留室として有利に形作ることは、単なる例示と解釈すべきである。図3に描かれた更なるコンポーネントは、エア抜き装置100と協働するブレーキシステムの構造において省略できる。
【0069】
エア抜き装置100は評価装置102を具備し、これを使って、評価装置102に提供された少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量104を少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量及び/又は最小チャージ状態変化量106と比較することができる。少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量104の例は、すでに上で挙げた通りである。少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量104は、例えばセンサ48から評価装置102に提供することができる。少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量及び/又は最小チャージ状態変化量106は、内蔵のメモリユニット108を使って評価装置102に向けて出力可能である。少なくとも、少なくとも1つの蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量104が少なくとも1つの所与の最小チャージ状態量及び/又は最小チャージ状態変化量106を下回る場合は、相応の評価信号110が評価装置102を使って出力可能である。
【0070】
エア抜き装置100は制御装置112も具備する。制御装置112は、評価信号110を考慮すべく少なくとも1つの制御信号114を少なくとも1つの入口弁28と少なくとも1つの出口弁42に向けて出力する、それも、少なくとも1つの入口弁28と少なくとも1つの出口弁42がそれぞれその開状態で制御できるように出力する形に設計されている。少なくとも1つの制御信号114は、例えばアナログ電流信号又は脈動電流信号であってよい。
【0071】
エア抜き装置100は、特に、蓄圧器チャージポンプ10をエア抜きする方法の、すでに上で述べた工程を実行する形に設計されていてよい。この工程を改めて説明することは、ここでは省略する。
【0072】
エア抜き装置100を使用する時、蓄圧器チャージポンプ10の吸込ラインがリターンライン36と統合されていることが活用される。蓄圧器チャージポンプ10の吸込側における所望の動圧の確実な形成を追加的に保証するため、リターンライン36は、比較的大きい長さ、及び/又は、相対的に小さい管径を持つ形に作られていてよい。但し、ここで述べたリターンライン36の特性は単なる任意の一例にすぎないことを示唆しておく。
【符号の説明】
【0073】
10 蓄圧器チャージポンプ
14 蓄圧器ないしは蓄液器
16 ブレーキ倍力装置
18 ブレーキマスタシリンダ
20 貯留室
22 充填ヴォリュームないしは前室
24 可変容量形コンポーネント
26 ライン
28 入口弁
30 分岐点
32 ライン
34 分岐点
36 リターンライン
38 分岐点
40 ブレーキ液リザーバ
42 出口弁
44 分岐点
46 分岐点
48 センサ
50 センサ
52 ブレーキ作動エレメント
54 作動センサ
56 フィードライン
58 ブレーキ回路
60 検知シリンダ
62 可変容量形コンポーネント
64 前室
66 貯留室
72 ライン
74 分岐点
76 ばね
80 常時調節可能な弁
82 ライン
84 ライン
86 常時調節可能な弁
100 エア抜き装置
102 評価装置
104 蓄圧器チャージ状態量及び/又は蓄圧器チャージ状態変化量
106 最小チャージ状態量及び/又は最小チャージ状態変化量
108 メモリユニット
110 評価信号
112 制御装置
114 制御信号
図1
図2
図3