(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載の光線路監視システムでは、複数の光ファイバ線路の各々に光カプラを設け、この光カプラから、光ファイバ線路にパルス試験光を入力する構成となっている。
【0007】
概して、光カプラは、その挿入損失が比較的大きいため、特許文献1に記載の光線路監視システムでは、特に光ファイバ線路長が長くなる程、後方散乱光の強度を十分に得られなくなり、光ファイバ線路における故障位置を正確に判定することができなくなる虞がある。
【0008】
また、上記特許文献2に開示されている光パルス試験器のように、従来の光パルス試験器では、光ファイバ線路に対してパルス試験光を複数回送出することによって、後方散乱光の強度の測定を複数回行い、これら複数の測定結果を平均化することにより、ノイズ変動分がキャンセルされた測定データを求め、この測定データに基づいて、光ファイバ線路における障害箇所を特定するようになっている。
【0009】
このため、従来の光パルス試験器では、障害を検出するための処理を短いサイクルで連続して行うことができず、光ファイバ線路において障害が発生した場合、その障害を迅速に検出することができない。
【0010】
このように、従来の光線路監視システムでは、光ファイバ線路において障害が発生した場合、その障害を迅速かつ正確に検出することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、光線路の障害を迅速かつ正確に検出することが可能な光線路監視システムを実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明に係る光線路監視システムは、複数の光線路を監視する光線路監視システムであって、複数の監視用光線路であって、各々が前記複数の光線路の各々に併設された複数の監視用光線路と、前記複数の監視用光線路の各々の一端に設けられた反射手段と、前記複数の監視用光線路の各々について、当該監視用光線路に対して第1の監視光を送出し、前記反射手段で反射された前記第1の監視光である反射光の強度を測定する第1の測定手段と、前記第1の測定手段によって測定された前記強度に基づいて、障害の発生した監視用光線路を特定する第1の特定手段と、前記障害の発生した監視用光線路に対して第2の監視光を送出し、当該障害の発生した監視用光線路の各所で生じた、前記第2の監視光の後方散乱光の強度を測定する第2の測定手段と、前記第2の測定手段によって測定された前記強度に基づいて、障害の発生した位置を特定する第2の特定手段とを備え、前記複数の監視用光線路の各々について、当該監視用光線路の接続先を、前記第1の監視光が送出されてくる光線路と、前記第2の監視光が送出されてくる光線路とで切り替える光スイッチをさらに備えていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、障害の発生した光線路を特定するための処理を複数の光線路に対して一斉に行い、これにより特定された障害の発生した光線路に対してのみ、障害の発生した位置を特定するための処理を行うため、障害の発生した光線路および位置を短時間で特定することができる。
【0014】
また、本発明によれば、監視専用の光線路(監視用光線路)を利用するため、データ通信用の光線路に影響を及ぼすことなく、光線路を監視することができる。
【0015】
特に、本発明によれば、監視光を監視用光線路に入力する際に、光カプラによる挿入損失が生じないため、光カプラを用いて監視光を入力する従来の構成と比べて、光線路の障害の検出精度を高めることができる。
【0016】
また、本発明に係る光線路監視システムは、複数の光線路を監視する光線路監視システムであって、複数の監視用光線路であって、各々が前記複数の光線路の各々に併設された複数の監視用光線路と、前記複数の監視用光線路の各々の一端に設けられた反射手段と、前記複数の監視用光線路の各々について、当該監視用光線路に対して第1の監視光を送出し、前記反射手段で反射された前記第1の監視光である反射光の強度を測定する第1の測定手段と、前記第1の測定手段によって測定された前記強度に基づいて、障害の発生した監視用光線路を特定する第1の特定手段と、前記障害の発生した監視用光線路に対して第2の監視光を送出し、当該障害の発生した監視用光線路の各所で生じた、前記第2の監視光の後方散乱光の強度を測定する第2の測定手段と、前記第2の測定手段によって測定された前記強度に基づいて、障害の発生した位置を特定する第2の特定手段とを備え、前記複数の監視用光線路の各々は、前記第1の監視光が送出されてくる光線路と接続された第1の光線路と、前記第2の監視光が送出されてくる光線路と接続された第2の光線路とを有することを特徴とする。
【0017】
本発明によっても、上記光線路監視システムと同様の効果を奏することができる。
【0018】
上記光線路監視システムにおいて、前記第1の特定手段は、前記第1の測定手段による1回の測定で得られた前記強度に基づいて、障害の発生した監視用光線路を特定し、前記第2の特定手段は、前記第2の測定手段による複数回の測定結果を平均化することによって得られた前記強度に基づいて、障害の発生した位置を特定することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、障害の発生した監視用光線路を特定する際には、従来のように複数回の測定結果の平均化処理を行う必要がないため、光線路の障害を短時間に検出することができる。特に、反射光の強度の測定値に基づいて、光線路の障害の検出を行っているため、上記平均化を行う必要なく、1回の測定データから正確に光線路の障害を検出することができる。
【0020】
上記光線路監視システムにおいて、前記第1の測定手段は、第1の測定装置に備えられ、前記第2の測定手段は、第2の測定装置に備えられ、前記第1の測定手段による測定処理と、前記第2の測定手段による測定処理とが、互いに並行して実行可能であることが好ましい。
【0021】
この構成によれば、一方の測定手段による測定処理が行われている途中であっても、監視用光線路に監視光を送出できる状態であれば、他方の測定手段による測定処理を開始することができるので、各測定処理の処理間隔を短くすることができる。
【0022】
上記光線路監視システムにおいて、前記第1の測定手段によって測定された前記強度を基準データとして登録する基準データ登録手段をさらに備え、前記第1の特定手段は、前記基準データ登録手段による登録が行われた後に前記第1の測定手段によって測定された前記強度と、前記基準データとして登録されている前記強度とを比較することにより、障害の発生した監視用光線路を特定することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、測定データと基準データと比較するといった簡素な処理にもかかわらず、測定データおよび基準データの精度が高いため、光線路の障害を高い精度で検出することができる。特に、基準データとして、予め測定しておいた測定データを用いているために、ユーザによる事前設定の手間を軽減することができる。
【0024】
また、上記光線路監視システムにおいて、前記特定手段によって特定された障害をユーザに通知する通知手段をさらに備え、当該通知手段は、前記障害が検出されてから、前記障害が検出されなくなるまでの期間を、障害情報としてユーザに通知することが好ましい。
【0025】
この構成によれば、光線路において発生した障害の継続時間をユーザに知らせることができ、ユーザは、この継続時間から障害発生事由を推定することが可能になる。
【0026】
また、本発明に係る光線路監視方法は、複数の光線路を監視する光線路監視方法であって、各々が前記複数の光線路の各々に併設された複数の監視用光線路の各々について、当該監視用光線路に対して第1の監視光を送出し、当該監視用光線路の一端に設けられた反射手段で反射された前記第1の監視光である反射光の強度を測定する第1の測定工程と、前記第1の測定工程で測定された前記強度に基づいて、障害の発生した監視用光線路を特定する第1の特定工程と、前記障害の発生した監視用光線路に対して第2の監視光を送出し、当該障害の発生した監視用光線路の各所で生じた、前記第2の監視光の後方散乱光の強度を測定する第2の測定工程と、前記第2の測定工程で測定された前記強度に基づいて、障害の発生した位置を特定する第2の特定工程とを含み、前記複数の監視用光線路の各々について、当該監視用光線路の接続先を、前記第1の監視光が送出されてくる光線路と、前記第2の監視光が送出されてくる光線路とで切り替える切替工程をさらに含むことを特徴とする。
【0027】
本発明によっても、上記光線路監視システムと同様の効果を奏することができる。
【0028】
また、本発明に係る光線路監視方法は、複数の光線路を監視する光線路監視方法であって、各々が前記複数の光線路の各々に併設された複数の監視用光線路の各々について、当該監視用光線路に対して第1の監視光を送出し、当該監視用光線路の一端に設けられた反射手段で反射された前記第1の監視光である反射光の強度を測定する第1の測定工程と、前記第1の測定工程で測定された前記強度に基づいて、障害の発生した監視用光線路を特定する第1の特定工程と、前記障害の発生した監視用光線路に対して第2の監視光を送出し、当該障害の発生した監視用光線路の各所で生じた、前記第2の監視光の後方散乱光の強度を測定する第2の測定工程と、前記第2の測定工程で測定された前記強度に基づいて、障害の発生した位置を特定する第2の特定工程とを含み、前記複数の監視用光線路の各々は、前記第1の監視光が送出されてくる光線路と接続された第1の光線路と、前記第2の監視光が送出されてくる光線路と接続された第2の光線路とを有することを特徴とする光線路監視方法。
【0029】
本発明によっても、上記光線路監視システムと同様の効果を奏することができる。
【0030】
また、本発明に係る試験装置は、上記光線路監視システムに用いられる試験装置であって、上記第1の特定手段および上記第2の特定手段を備えたことを特徴とする。
【0031】
本発明によっても、上記光線路監視システムと同様の効果を奏することができる。
【0032】
また、本発明に係るプログラムは、コンピュータを上記試験装置として機能させるためのプログラムであって、上記コンピュータを上記試験装置が備える前記各手段として機能させるプログラムである。
【0033】
本発明によれば、コンピュータが当該プログラムを実行することにより、このコンピュータは、上記試験装置と同様の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、監視光を監視用光線路に入力するため光カプラが必要なく、かつ障害の発生した監視用光線路に対してのみ、障害の発生位置を特定するための処理を行うので、光線路の障害を迅速かつ正確に検出することが可能な光線路監視システムを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
〔実施形態1〕
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明に係る光線路監視システムの実施形態1について説明する。
【0037】
(光線路監視システムの概要)
まず、実施形態1に係る光線路監視システム10の概要について説明する。
図1は、実施形態1に係る光線路監視システム10の全体構成を示す図である。
図1に示すように、光線路監視システム10は、試験装置100、監視用光線路105、OTDR110、光ファイバセレクタ115、光スプリッタ120、光スイッチ125、およびフィルタ130を備えて構成されている。
【0038】
この光線路監視システム10は、少なくとも1本(1心)の光線路20が敷設されている任意の伝送装置間の区間を監視対象の区間(以下、「監視区間」と記す。)として監視するものである。監視区間は、光線路の一部の区間ともなり得るし、光線路の全部の区間ともなり得る。特に、光線路監視システム10は、複数の光線路の各々の監視対象区間を監視することが可能となっている。
【0039】
(光線路)
光線路20は、インターネットやCATV等の通信ネットワークに組み込まれ、このような通信ネットワークにおいて、各種データの伝送機能を担うものである。光線路20においては、各種データにより変調された信号光が伝送される。このため、光線路20として、光ファイバが用いられている。
【0040】
光線路20では、伝送装置30Aから伝送装置30Bに信号光(以下、「下り信号光」と記載)を伝送することが可能である。反対に、伝送装置30Bから伝送装置30Aに信号光(以下、「上り信号光」と記載)を伝送することも可能である。すなわち、この光線路20では、双方向通信を行うことが可能である。
【0041】
例えば、下り信号光としては、波長が1490nmの信号光が用いられ、上り信号光としては、波長が1310nmの信号光が用いられる。このように、下り信号光と上り信号光とで波長を異ならせることにより、1本の光線路20で下り信号光と上り信号光とを同時に伝送することが可能となる。
【0042】
(監視用光線路105)
監視用光線路105は、各光線路における障害を検出するため、複数の光線路の各々に設けられている。本実施形態では、監視用光線路105には、一心の光ファイバが用いられており、上記光線路において、光線路20と並設されている。監視用光線路105は、光線路20とともに1本の光ファイバケーブル内に並設されている場合もある。したがって、既設の光ファイバケーブル内に1本の空心線(いわゆるダークファイバ)が存在すれば、これを監視用光線路105として利用することができる。このように、監視用光線路105と光線路20と並設されているため、光線路20に異常が発生すれば、並設されている監視用光線路105にもほとんどにおいて異常が発生する。そのため、監視用光線路105の異常を検出することにより、光線路20の異常を検出することができる。
【0043】
(OTDR110)
OTDR110は、監視光を光線路20に対して送出するとともに、この監視光が光線路20において散乱または反射されることによって生じる戻り光の強度を測定する、いわゆる光パルス試験器である。
【0044】
OTDR110は、レーザダイオード等の光源を備えており、この光源から発せられた監視光を、入出力ポートから出力する。監視光としては、信号光(下り信号光と上り信号光)とは波長が異なる光を用いることができる。本実施形態では、監視光として、波長が1650nmのパルス光が用いられる。但し、本実施形態では、監視光が伝送される監視用光線路105を、信号光が伝送される光線路20とは別の光線路としているため、監視光として信号光(下り信号光と上り信号光)と波長が同じ光を用いることもできる。
【0045】
また、OTDR110は、フォトダイオード等の受光素子を備えており、この受光素子によって、入出力ポートから入力された戻り光を受光し、その強度に応じた値を有する電気信号を生成する。そして、OTDR110は、この電気信号をサンプリングすることによって、各時刻における戻り光の強度を示す時系列データを生成し、この時系列データを外部(試験装置100)に出力する。
【0046】
光線路監視システム10においては、以下に説明するように、OTDR110から出力された監視光を複数の監視用光線路105の各々に対して送出することが可能となっている。これに応じて、OTDR110は、複数の監視用光線路105の各々で生じた戻り光(すなわち、反射光や後方散乱光)の強度を測定することが可能となっている。
【0047】
なお、
図1において、細い実線で示された接続線は、光線路20を示し、太い実線で示された接続線は、監視光の伝送経路を示し、矢印で示された接続線は、制御信号の伝送経路を示す。
【0048】
また、実際には、光線路20上や監視用光線路105上には、成端箱等の中継装置が設けられている場合がある。
【0049】
(光スプリッタ120、光ファイバセレクタ115、光スイッチ125)
特に、光線路監視システム10では、OTDR110から出力された監視光(第1の監視光)を、光スプリッタ120を介して、複数の監視用光線路105の各々に対して送出することが可能となっている。
【0050】
具体的には、OTDR110から出力された監視光は、光スプリッタ120へ送出される。光スプリッタ120は、この監視光を多分岐する。これによって生成された複数の監視光のうちの1つは、監視区間Aの監視用光線路105へ伝送され、もう1つは、監視区間Bの監視用光線路105へ伝送される。
【0051】
また、光線路監視システム10では、OTDR110から出力された監視光(第2の監視光)を、光ファイバセレクタ115を介して、いずれかの監視用光線路105に対して選択的に送出することも可能となっている。
【0052】
具体的には、OTDR110から出力された監視光は、光ファイバセレクタ115へ送出される。光ファイバセレクタ115は、外部からの制御によりいずれかの監視用光線路105が出力先として選択されている。これにより、光ファイバセレクタ115は、OTDR110から出力された監視光を選択されている監視用光線路105に出力する。
【0053】
すなわち、各監視用光線路105へは、光スプリッタ120から監視光が送出されてくる場合と、光ファイバセレクタ115から監視光が送出されてくる場合とがある。この監視光の入力経路の切り替えは、光スイッチ125によって実現されている。
【0054】
(フィルタ130)
フィルタ130は、複数の監視用光線路105の各々の終端に設けられている。フィルタ130は、監視用光線路105から送信されてきた監視光をカットおよび反射するように構成されている。
【0055】
本実施形態では、監視光を反射する反射手段の一例として、フィルタ130を用いている。特に、フィルタ130として、監視光(1650nm)をカットし、かつこの監視光(1650nm)を高反射するファイバーブラッググレーティング(Fiber Bragg Grating:FBG)を用いている。これに限らず、反射手段としては、フィルタ130と同様の機能を有するものであれば、誘電体多層膜フィルタ等、フィルタ130以外のものも採用し得る。なお、本実施形態では、監視光が伝送される監視用光線路105を、信号光が伝送される光線路20とは別の光線路としているため、反射手段として、信号光を透過する機能を有さないもの(例えば、金属ミラー等)を用いることもできる。
【0056】
上記したとおり、監視光は、複数の監視用光線路105の各々の終端に向けて送出される。このため、複数の監視用光線路105の各々において、フィルタ130による監視光の反射光が生じることとなる。
【0057】
ここで、光スプリッタ120からの、複数の監視用光線路105の各々の終端まで(すなわち、フィルタ130まで)の光路長は、最低限OTDR110の分解能により識別可能な程度に互いに異なっている。例えば、監視用光線路105の終端までの光路長は、少なくとも30cm〜1m程度、複数の監視用光線路105で互いに異なっていればよい。
【0058】
(OTDR110による測定)
OTDR110は、監視光の戻り光を受光する。そして、OTDR110は、受光した戻り光の強度を示す測定データを生成し、この測定データを試験装置100に対して出力する。
【0059】
OTDR110は、複数の監視用光線路105の各々の戻り光の強度を測定することができる。以降の説明では、OTDR110によるこの測定処理を、「第1の測定処理」と記す。
【0060】
また、OTDR110は、障害の発生した光線路における監視用光線路105の戻り光の強度を測定することができる。以降の説明では、OTDR110によるこの測定処理を、「第2の測定処理」と記す。
【0061】
第1の測定処理では、OTDR110は、複数の監視用光線路105の各々に対して監視光を送出する。そして、OTDR110は、複数の監視用光線路105の各々から、戻り光を受光する。複数の監視用光線路105の各々の上記戻り光は、光スプリッタ120を介してOTDR110に届く。このため、複数の監視用光線路105の各々の上記戻り光は、光スプリッタ120によって合波されることとなる。OTDR110は、この合波された戻り光を受光することによって、その強度を示す測定データを生成し、この測定データを試験装置100に対して出力することとなる。
【0062】
一方、第2の測定処理では、OTDR110は、障害の生じた監視用光線路105に対して監視光を送出する。そして、OTDR110は、障害の生じた監視用光線路105から、監視光の戻り光を受光する。そして、OTDR110は、この戻り光の強度を示す測定データを生成し、この測定データを試験装置100に対して出力することとなる。
【0063】
従来、OTDR110を用いて光線路の戻り光の強度を測定する場合、後方散乱の光強度の時間的な揺らぎなどを考慮し、後方散乱光だけでなく反射光を測定する場合においても、処理方法を変えずに複数の測定結果を用いて平均化処理を行っていた。しかしながら、フィルタ130などにより反射強度をフレネル反射より十分に大きくした状態では、この反射強度の時間的なばらつきは非常に小さく、平均化処理を行う必要がないことを発明者は見出した。よって、OTDR110は、第1の測定処理においては、監視光を1回だけ送出することによって、監視光の戻り光の強度の測定を1回だけ行い、この測定結果を示す測定データを出力する。
【0064】
これに対し、光線路における障害発生箇所の検出は、主に、光線路の戻り光に含まれる後方散乱光の強度に基づいて行われる。このため、OTDR110は、第2の測定処理においては、監視光を複数回送出することによって、監視光の戻り光の強度の測定を複数回行い、これら複数の測定結果を用いてノイズ平均化処理を行うことにより、ノイズ変動分が平均化された測定データを生成することが好ましい。または、これら複数の測定結果を試験装置100へ出力して、ノイズ平均化処理を試験装置100に行わせることにより、ノイズ変動分が平均化された測定データを試験装置100に生成させることが好ましい。
【0065】
(試験装置100)
試験装置100は、OTDR110から出力された時系列データに基づいて光線路20を試験する装置である。例えば、試験装置100には、PCやサーバ等のいわゆるコンピュータ装置が用いられる。
【0066】
試験装置100は、OTDR110と接続されており、OTDR110と互いに通信することができる。試験装置100は、この通信を行うことにより、上述した測定の実行をOTDR110に指示したり、OTDR110から出力された時系列データを受信したりすることができる。
【0067】
試験装置100は、光線路20における障害を検出する(障害の有無を判定する)障害検出処理と、光線路20における障害を検出した場合に、その発生箇所を特定する障害箇所特定処理とを実行することができる。
【0068】
例えば、OTDR110が第1の測定処理を行った場合、試験装置100は、OTDR110から受信した測定データに基づいて、障害検出処理を行う。
【0069】
具体的には、受信した測定データには、フィルタ130まで(すなわち、監視区間の終端まで)の光路長に応じた時刻に、反射光の強度のピークが生じる。特に、上記測定データには、複数の監視用光線路105の反射光が合波されているから、複数の反射光の各々の強度のピークが生じる。
【0070】
フィルタ130までの区間において、伝送路断などの障害が発生した場合、フィルタ130によって生じる反射光の強度が弱まるため、当然、測定データにおいても、その反射光の強度のピーク値が弱まることとなる。すなわち、障害の発生に応じて、測定データにおける反射光の強度のピーク値に時間変化が生じる。
【0071】
そこで、本実施形態の試験装置100は、測定データにおける各反射光の強度のピーク値の時間変化を監視することにより、各光線路における障害を検出することが可能となっている。
【0072】
一方、OTDR110が第2の測定処理を行った場合、試験装置100は、OTDR110から受信した測定データに基づいて、障害箇所特定処理を行う。
【0073】
具体的には、監視用光線路105の途中に、障害が発生していなければ、フィルタ130によって反射光が生じるため、上記測定データには、フィルタ130までの光路長に応じた時刻に、反射光の強度のピークが生じる。
【0074】
しかしながら、監視用光線路105の途中に、障害が発生していれば、その障害の発生位置において反射等の異常現象が生じるため、上記測定データには、この障害の発生位置までの光路長に応じた時刻に、反射ピーク等の異常特性が生じることとなる。
【0075】
そこで、本実施形態の試験装置100は、上記測定データにおける異常特性の発生時刻に基づいて、光線路における障害位置を検出することが可能となっている。
【0076】
上記のとおり、試験装置100は、障害の発生した光線路を特定することができる。以降の説明では、試験装置100によるこの特定処理を、「障害検出処理」と記す。
【0077】
また、試験装置100は、障害の発生した光線路における障害の発生位置を特定することができる。以降の説明では、試験装置100によるこの特定処理を、「障害箇所特定処理」と記す。
【0078】
なお、試験装置100は、ディスプレイやスピーカ等の出力デバイスに接続されている。これにより、試験装置100は、光線路20の障害を検出した場合、この障害をユーザに通知することが可能となっている。これにより、試験装置100は、光線路20の障害を検出した場合、この障害をユーザに通知することが可能となっている。
【0079】
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る試験装置100の機能構成について説明する。
図2は、実施形態1に係る試験装置100の機能構成を示すブロック図である。試験装置100は、制御部210、測定データ取得部212、基準データ登録部214、記憶部216、障害検出部230、および通知部220を備えている。
【0080】
(制御部210)
制御部210は、試験装置100の各部を制御するとともに、OTDR110との通信を介してOTDR110を制御する。例えば、制御部210は、測定の実行を指示する制御信号を、OTDR110に対して送信する。
【0081】
また、制御部210は、光ファイバセレクタ115に対して制御信号を送信することにより、光ファイバセレクタ115の出力先を、任意の出力先に切り替えることができる。
【0082】
また、制御部210は、任意の光スイッチ125に対して制御信号を送信することにより、その光スイッチ125の接続先を切り替えることができる。
【0083】
(測定データ取得部212)
測定データ取得部212は、初期設定処理、障害検出処理、および障害箇所特定処理において、OTDR110から出力された時系列データを取得する。この時系列データのことを、以下では、「測定データ」と記載する。また、1つの測定データには、監視光を構成する1つのパルスにより生じた戻り光の強度の時系列が含まれているものとする。
【0084】
(基準データ登録部214)
基準データ登録部214は、初期設定処理において、測定データ取得部212が取得した測定データを利用して、反射ピークが生じる時刻tA,tBと反射ピークの強度hA,hBとを特定する。そして、特定した時刻tA,tBと強度hA,hBとを、基準データとして記憶部216に格納する。なお、基準データ登録部214により特定された反射ピークが生じる時刻tA,tBのことを、以下、「測定ポイント」とも記載する。
【0085】
本実施形態においては、反射ピークが生じる時刻tA,tBと反射ピークの強度hA,hBとを特定する方法として、測定データを波形としてディスプレイに表示し、時刻tA,tBと強度hA,hBとユーザに指定させる方法を採用する。但し、公知のピーク検出アルゴリズム等を用いて、反射ピークが生じる時刻tA,tBと反射ピークの強度hA,hBとを、測定データから自動的に特定する方法を採用してもよい。
【0086】
(障害検出部230)
障害検出部230は、第1特定部232および第2特定部234を有する。
【0087】
第1特定部232は、障害検出処理において、測定データ取得部212が取得した測定データの時刻tA,tBにおける値hA’,hB’を、基準データとして記憶部216に格納された反射ピークの強度hA,hBと比較することによって、光線路20における障害の有無を判定する。
【0088】
第2特定部234は、障害箇所特定処理において、測定データ取得部212が取得した測定データにおける反射ピーク等の異常特性の時刻に基づいて、光線路20における障害の発生箇所を特定する。
【0089】
(通知部220)
通知部220は、障害検出処理において、障害検出部230によって検出された障害に関する障害情報を出力することにより、光線路20において障害が発生したことをユーザに通知する。例えば、通知部220は、この障害情報をディスプレイに表示する。さらに、通知部220は、警告音をスピーカから発したり、障害情報を電子メール等により所定の端末へ送信したりすることもできる。
【0090】
次に、
図3を参照して、試験装置100による初期設定処理および障害検出処理の手順を説明する。
図3は、試験装置100による初期設定処理および障害検出処理の手順を示すフローチャートである。
【0091】
(初期設定処理)
まず、制御部210が、OTDR110に対し、測定の実行を指示する(ステップS302)。この指示に従い、OTDR110は、監視光の送出と、戻り光の測定とを行い、試験装置100に対し、その測定結果を示す測定データを出力する。そして、測定データ取得部212が、OTDR110から出力された測定データを取得する(ステップS304)。
【0092】
測定データ取得部212は、取得した測定データを、基準データ登録部214に渡す。基準データ登録部214は、この測定データを波形としてディスプレイに表示し(ステップS305)、反射ピークが生じる時刻tA,tBと反射ピークの強度hA,hBとをユーザに指定させる。時刻tA,tBと強度hA,hBとがユーザにより指定されると、基準データ登録部214は、ユーザにより指定された時刻tA,tBと強度hA,hBとを、基準データとして記憶部216に格納(以下、「登録」と記載)する(ステップS306)。
【0093】
(障害検出処理)
初期設定処理が完了すると、試験装置100は、OTDR110に対し、測定の実行を指示する(ステップS308)。この指示に従い、OTDR110は、監視光の送出と、戻り光の測定とを繰り返し行い、試験装置100に対し、各測定によって得られた測定データを順次出力する。障害検出処理は、以下のステップを繰り返し実行することにより実現される。
【0094】
まず、測定データ取得部212が、OTDR110から出力された測定データを取得する(ステップS310)。測定データ取得部212は、取得した測定データを、障害検出部230に渡す。
【0095】
障害検出部230は、ステップS310において取得した測定データから、ステップS306において登録した時刻tA,tBにおける値hA’,hB’を抽出する。そして、抽出した値hA’を、ステップS306において登録した強度hAと比較し(ステップS312)、その差hA−hA’が予め定められた閾値Th以上であるか否かを判定する(ステップS314)。同様に抽出した値hB’を、ステップS306において登録したhBと比較し(ステップS312)、その差hB−hB’が予め定められた閾値Th以上であるか否かを判定する(ステップS314)。
【0096】
ステップS314において、差hA−hA’が閾値Th以上であると判定された場合、試験装置100は、時刻tA(測定ポイント)と差hA−hA’(レベル変化量)とを障害情報としてディスプレイに表示し(ステップS315)、ステップS316へ処理を進める。同様に、ステップS314において、差hB−hB’が閾値Th以上であると判定された場合、試験装置100は、時刻tBと差hB−hB’とを障害情報としてディスプレイに表示し(ステップS315)、ステップS316へ処理を進める。一方、ステップS314において、差hA−hA’が閾値Th未満であり、かつ、差hB−hB’が閾値Th未満であると判定された場合(ステップS314:No)、試験装置100は、ステップS310へ処理を戻す。
【0097】
ステップS316では、測定データ取得部212が、OTDR110から出力された新たな測定データを取得する。測定データ取得部212は、取得した新たな測定データを、障害検出部230に渡す。障害検出部214は、新たな測定データに基づいて、光線路20における障害の有無を判定する(ステップS318,S320)。
【0098】
ステップS318における比較、および、ステップS320における判定は、それぞれ、ステップ312における比較、および、ステップ314における判定と同様のものである。但し、ステップ314において、差hA−hA’のみが閾値Th以上であると判定された場合、ステップ320における判定は、差hA−hA’についてのみ行えばよい。同様に、ステップ314において、差hB−hB’のみが閾値Th以上であると判定された場合、ステップ320における判定は、差hB−hB’についてのみ行えばよい。
【0099】
ステップS314において、差hA−hA’が閾値Th以上であると判定され(障害発生)、ステップS320において、差hA−hA’が閾値Th未満であると判定された場合(障害復旧)、試験装置100は、時刻tA(測定ポイント)と差hA−hA’(レベル変化量)とに加え、障害発生から障害復旧までの時間を障害情報としてディスプレイに表示し(ステップS328)、ステップ310へ処理を戻す。同様に、ステップS314において、差hB−hB’が閾値Th以上であると判定され、ステップS320において、差hB−hB’が閾値Th未満であると判定された場合、試験装置100は、時刻tBと差hB−hB’とに加えて、障害発生から障害復旧までの時間を障害情報としてディスプレイに表示し(ステップS328)、ステップS310へ処理を戻す。
【0100】
(測定データの一例)
次に、
図4を参照して、測定データの一例について説明する。
図4は、OTDR110から出力された測定データの一例を示すグラフである。
図4において、横軸は、時刻(監視光を送出してからの経過時間)を表し、縦軸は、戻り光の強度を表す。
【0101】
図4において、点線で示された測定データ402は、初期設定処理において得られる正常な測定データの例であり、実線で示された測定データ404は、障害検出処理において得られる異常な測定データの例である。
【0102】
ここで、複数の監視用光線路105の戻り光は光スプリッタ120によって合波されるため、各測定データは、この合波された戻り光の強度を示すものとなっている。しかしながら、光線路監視システム10では、各監視用光線路105の光路長を異ならせているため、各測定データにおいては、反射光のピークが、互いに異なる時刻に現れる。
【0103】
例えば、
図4に示す例では、測定データ402,404のいずれにおいても、監視区間Aの監視用光線路105の光路長に応じた時刻tAに、監視区間Aの監視用光線路105に生じた反射光のピークが現れており、監視区間Bの監視用光線路105の光路長に応じた時刻tBに、監視区間Bの監視用光線路105に生じた反射光のピークが現れている。
【0104】
既に説明したとおり、試験装置100は、初期設定処理において得られた測定データ402における反射ピークの強度hA,hBと、障害検出処理において得られた測定データ404の時刻tA,tBにおける値hA’,hB’とを比較することにより、光線路20における障害を検出する。
【0105】
図4に示す例において、測定データ404の時刻tAにおける値hA’は、測定データ402における反射ピークの強度hAと略同一である。このことから、試験装置100は、監視区間Aの光線路20において、“障害が発生していない”と判断することができる。
【0106】
一方、
図4に示す例において、測定データ404の時刻tBにおける値hB’は、測定データ402における反射ピークの強度hBよりも小さい。両者の差をd=hB−hB’とし、予め定められた閾値Thを1dBとすると、試験装置100は、差dが1dB以上である場合、監視区間Bの光線路20において、“障害が発生している”と判断することができる。
【0107】
このように、光線路監視システム10における障害検出処理は、予め設定された時刻tA,tBにおける戻り光の強度hA’,hB’を、予め設定された反射ピークの強度hA,hBと比較することにより実現される。この際、時刻tA,tBにおける戻り光の強度hA’,hB’は、上述したように、1つの測定データから特定される。このため、各障害検出処理は、ごく短時間で完了する。これにより、障害検出処理を短い間隔で繰り返し実行することができるので、光線路20のリアルタイムな監視を実現することが可能になる。
【0108】
さらに、時刻tA,tBにおける戻り光の強度hA’,hB’は、上述したように、測定の度に変化することがない。したがって、各障害検出処理は、ごく短時間で完了するにも関わらず、正確である。
【0109】
(障害情報の出力例)
図5は、試験装置100による障害情報の出力例を示す。
図5に示す画面500は、試験装置100に接続されたディスプレイに表示された画面であり、光線路における障害をユーザに通知するための画面である。この画面500は、測定データ表示欄510および障害情報通知欄520が設けられている。
【0110】
測定データ表示欄510には、初期設定処理において取得した測定データと、障害検出処理において取得した測定データとが、波形として表示される。ここで、障害検出処理において取得した測定データは、順次(例えば、試験装置100が測定データを取得する毎に)更新される。障害情報通知欄520には、障害検出処理において生成された障害情報が表示される。ここで、障害情報は、新たな障害が検出される度に追記される。この画面500により、ユーザは、光線路20における障害の発生状況を、リアルタイムに把握することが可能となっている。
【0111】
なお、
図5に示す例では、初期設定処理において取得した測定データが点線により表示され、障害検出処理において取得した測定データが実線により表示されているが、これらは、互いに異なる色で表示されてもよい。これにより、ユーザは、各反射ピークの低下具合を、視覚的に容易に把握することが可能となっている。
【0112】
また、
図5に示す例では、測定データ表示欄510に、縮小表示欄512と拡大表示欄514とが設けられている。縮小表示欄512には、広域(2km域)の測定データが縮小表示され、拡大表示欄514には、狭域(13m域)の測定データが拡大表示される。ユーザは、縮小表示欄512により、光線路20の概況を把握することができ、拡大表示欄514により、各反射ピークの低下具合を把握することができる。また、ユーザは、マウスやキーボード等の入力デバイスを操作することにより、拡大表示欄515に表示させる領域を、自由に移動させることができる。
【0113】
また、
図5に示す例では、障害情報通知欄520に、障害情報として、障害を検出した年月日(「Alarm Date」)、反射ピークが生じる時刻tA,tBのうち、強度が低下した反射ピークに対応する方の時刻を距離に換算したもの(「Alarm Distance(m)」)、障害の内容を示すメッセージ(「Message」)が示されている。障害情報通知欄520には、障害が発生する毎に、このような障害情報が1行ずつ追記されていく。また、上記メッセージには、障害発生から障害復旧までの時間(例えば、1行目における「2739ms」)が含まれている。これにより、ユーザは、障害事由を推定することができる。例えば、障害発生から障害復旧までの時間が数秒の場合には光コネクタの一時的な挿抜があったと推定し、1秒以下の場合にはファイバへの一時的な過屈曲があったと推定することができる。
【0114】
図5に示す例では、障害情報には、上記障害発生位置の識別情報として、光線路長が用いられているが、もちろん、この障害発生位置の名称や、光線路の識別情報等、ユーザが障害発生位置を特定しやすい情報を用いることも可能である。
【0115】
試験装置100は、光線路20の障害を検出した場合、このような障害情報の表示に加えて、アラート音をスピーカから発したり、このような障害情報を各種通信回線(インターネット回線、電話回線、専用回線等)を介して他の端末装置へ送信したりすることが可能となっている。
【0116】
(障害箇所特定処理)
次に、
図6を参照して、試験装置100による障害箇所特定処理の手順について説明する。
図6は、試験装置100による障害箇所特定処理の手順を示すフローチャートである。
【0117】
まず、制御部210が、光ファイバセレクタ115の出力先を、障害検出処理で障害が発生したと特定された光線路の監視用光線路105に切り替える(ステップS602)。また、制御部210は、この監視用光線路105に接続された光スイッチ125の入力を、光スプリッタ120から光ファイバセレクタ115へ切り替える(ステップS604)。
【0118】
次に、制御部210が、OTDR110に対し、第2の測定処理を行うように指示する(ステップS606)。この指示に従い、OTDR110は、第2の測定処理を行い、その測定結果を示す測定データを出力する。これに応じて、測定データ取得部212が、OTDR110から出力された測定データを取得する(ステップS608)。
【0119】
この際、OTDR110は第2の測定処理を繰り返し行い、各測定にて得られた測定データを出力することが好ましい。この場合、測定データ取得部212は、OTDR110から各測定にて得られた測定データを取得し、これらの測定データを平均化した平均測定データを生成する。
【0120】
障害検出部230は、ステップS310において取得した測定データにおける反射ピーク等の異常特性の時刻に基づいて、障害の発生した光線路における障害の発生位置を特定する(ステップS610)。
【0121】
なお、ステップS606における制御部210からの指示に対し、OTDR110が第2の測定処理を繰り返し行う場合、障害検出部230は、測定データ取得部212により生成された平均測定データにおける反射ピーク等の異常特性の時刻に基づいて、障害の発生した光線路における障害の発生位置を特定することが好ましい。
【0122】
さらに、試験装置100は、ステップS610において障害の発生位置を特定できたか否かを判断する(ステップS612)。
【0123】
ステップS612において、“障害の発生位置を特定できた”と判断された場合(ステップS612:Yes)、通知部220が、障害情報を出力して(ステップS614)、試験装置100は、障害箇所特定処理を終了する。
【0124】
一方、ステップS612において、“障害の発生位置を特定できなかった”と判断された場合(ステップS612:No)、通知部220が、障害の発生位置を特定できなかった旨のメッセージを出力して(ステップS616)、試験装置100は、障害箇所特定処理を終了する。
【0125】
図7は、実施形態1に係る光線路監視システム10において、障害箇所特定処理が行われるときの、光ファイバセレクタ115および光スイッチ125の状態を示す。この例では、障害検出処理により、監視区間Bの光線路20において、障害が発生したと特定されている。
【0126】
このため、
図7に示す状態(障害箇所特定処理が行われるときの状態)の光線路監視システム10においては、
図1に示した状態(障害検出処理が行われるときの状態)から、光ファイバセレクタ115の出力先が、監視区間Bの監視用光線路105に切り替えられている。また、この監視用光線路105に接続された光スイッチ125の入力が、光スプリッタ120から光ファイバセレクタ115へ切り替えられている。
【0127】
これにより、光線路監視システム10においては、
図1に示した状態では、OTDR110から出力された監視光(第1の監視光)は、光ファイバセレクタ115および光スプリッタ120を介して、各監視用光線路105に送信されるが、
図7に示した状態では、OTDR110から出力された監視光(第2の監視光)は、光ファイバセレクタ115および光スイッチ125を介して、監視区間Bの監視用光線路105のみに送信されることとなる。
【0128】
(測定データの一例)
次に、
図8を参照して、測定データの一例について説明する。
図8は、OTDR110から出力された測定データの一例を示すグラフである。
図8において、横軸は、時刻(監視光を送出してからの経過時間)を表し、縦軸は、戻り光の強度を表す。
【0129】
図8において、実線で示された測定データ802は、障害箇所特定処理において得られる正常な測定データの例であり、点線で示された測定データ804は、障害箇所特定処理において得られる異常な測定データの例である。
【0130】
図8において、実線で示された測定データ802は、この監視用光線路105において障害が生じていないときに得られる測定データを示し、点線で示された測定データ804は、この監視用光線路105において障害が生じているときに得られる測定データを示す。
【0131】
監視用光線路105において障害が生じていない場合には、監視光の殆どが監視用光線路105の終端で反射されるため、測定データにおいて、この監視用光線路105からの反射光のピークは、監視用光線路105の終端までの光路長に応じた時刻に現れることとなる。
【0132】
監視用光線路105において障害が生じている場合には、監視光の殆どがその障害位置で反射または損失するため、測定データにおいては、この監視用光線路105からの戻り光の異常特性が、障害位置までの光路長に応じた時刻に現れることとなる。
【0133】
例えば、
図8に示す例では、監視用光線路105において障害が生じていない場合には、測定データ802において、この監視用光線路105からの反射光のピークが、監視用光線路105の終端までの光路長に応じた時刻t2に現れている。
【0134】
一方、監視用光線路105において障害が生じている場合には、測定データ804において、この監視用光線路105からの反射光のピークは、障害位置までの光路長に応じた時刻t1に現れている。
【0135】
試験装置100は、監視光を送出した時刻から反射光のピークが生じた時刻までの時間と、監視光の伝搬速度(すなわち、光速)とに基づいて、障害位置を容易に求めることができる。
【0136】
なお、監視用光線路105において障害が生じている場合、測定データにおいて、障害位置までの光路長に応じた時刻には、反射ピークに限らず、それ以外の異常変化(例えば、急降下)が生じる場合もある。試験装置100は、各異常変化の波形パターンを予め記憶しておくことで、このように戻り光の強度の異常変化が測定データに現れた場合であっても、これを障害として認識し、その発生時刻に基づいて、障害位置を求めることができる。
図8に示す例では、各測定データにおいては、時刻t2よりも早い時刻に反射ピーク812および反射ピーク814が生じているが、反射ピーク812は、光ファイバセレクタ115のコネクタ反射によるものであり、反射ピーク814は、監視光の伝送経路上に設けられた成端箱(図示を省略する)のコネクタ反射によるものである。よって、反射ピーク812および反射ピーク814は、障害の発生の有無に関わらず、常に測定データに表れることとなるが、試験装置100は、これらの波形パターンや、これらの発生時刻、または測定データ802等を予め記憶しておくことにより、これらを障害の発生箇所として誤って認識することはない。
【0137】
このように、本実施形態の光線路監視システム10は、障害の発生した光線路を特定するための処理を複数の光線路に対して一斉に行い、これにより特定された障害の発生した光線路に対してのみ、障害の発生した位置を特定するための処理を行うため、障害の発生した光線路および位置を短時間で特定することができる。
【0138】
また、本実施形態の光線路監視システム10によれば、監視専用の光線路(監視用光線路)を利用するため、通信用の光線路に影響を及ぼすことなく、光線路を監視することができる。
【0139】
特に、本実施形態の光線路監視システム10によれば、監視光を監視用光線路に入力する際に、光カプラによる挿入損失が生じないため、光カプラを用いて監視光を入力する従来の構成と比べて、監視光の利用効率を高めることができる。
【0140】
また、本実施形態の光線路監視システム10は、各反射光のピーク値を基準データと比較するといった簡単な処理により、障害を検出することができるので、1回の処理に係る時間を短時間化することができる。これにより、複数回の測定を短い間隔で連続して行うことができるので、複数の光線路のリアルタイムな監視を実現することができる。
【0141】
また、本実施形態の光線路監視システム10は、監視区間の終端(すなわち、フィルタ130)までの光路長を、複数の光線路で互いに異ならせているので、互いに異なる時刻に、上記各ピークを生じさせ、各光線路の障害の判定を容易に行うことが可能となっている。
【0142】
また、本実施形態の光線路監視システム10は、その強度が測定毎に殆ど変化しないフィルタ130によって生じた監視光の反射光に基づいて、障害の判定を行っているため、より高い精度でその判定を行うことができる。
【0143】
〔実施形態2〕
以下、本発明に係る光線路監視システムの実施形態2について説明する。実施形態2では、光線路監視システム10(実施形態1)とは構成が異なる光線路監視システム12により、複数の光線路を監視する例を説明する。
【0144】
実施形態2で説明する光線路監視システム12のうち、以下に説明する点以外の点については、これまでに説明した光線路監視システム10と同様であるため、説明を省略する。以下、これまでに説明した光線路監視システム10との相違点について説明する。
【0145】
図9は、実施形態2に係る光線路監視システム12の全体構成を示す図である。
【0146】
実施形態1の光線路監視システム10では、
図1に示すように、1台のOTDR110を備えた構成となっていた。これに対し、実施形態2の光線路監視システム12は、
図9に示すように、2台のOTDR110(OTDR110AおよびOTDR110B)を備えた構成となっている。
【0147】
実施形態2では、OTDR110Bが、第1の測定処理を行い、OTDR110Aが、第2の測定処理を行う。
【0148】
すなわち、OTDR110Bは、全ての光線路に対して監視光(第1の監視光)を送出し、その戻り光の強度を測定することにより、第1の測定手段として機能する。
【0149】
一方、OTDR110Aは、障害の発生した光線路に対して監視光(第2の監視光)を送出し、その戻り光の強度を測定することにより、第2の測定手段として機能する。
【0150】
これに応じて、試験装置100の制御部210は、障害検出処理を行う場合には、OTDR110Bに対して、第1の測定処理を行うように指示する。当然、試験装置100の測定データ取得部212は、OTDR110Bから第1の測定処理の測定結果を示す測定データを取得することとなる。
【0151】
また、障害箇所特定処理を行う場合には、OTDR110Aに対して、第2の測定処理を行うように指示する。当然、試験装置100の測定データ取得部212は、OTDR110Aから第2の測定処理の測定結果を示す測定データを取得することとなる。
【0152】
この実施形態2では、2台のOTDR110が独立して測定処理を行うため、例えば、OTDR110Aが第2の測定処理を行っている途中であっても、OTDR110Bは、次の第1の測定処理を開始することができる。特に、光スイッチ125によって、複数の監視用光線路105の各々の入力を個別に切り替えることができるので、例えば、OTDR110Bが次の第1の測定処理を行う際に、第2の測定処理が終了していない監視用光線路105に対して、監視光が送出されないようにすることができる。
【0153】
〔実施形態3〕
以下、本発明に係る光線路監視システムの実施形態3について説明する。実施形態3では、光線路監視システム10(実施形態1)および光線路監視システム12(実施形態2)とは構成が異なる光線路監視システム14により、複数の光線路を監視する例を説明する。
【0154】
実施形態3で説明する光線路監視システム14のうち、以下に説明する点以外の点については、実施形態1で説明した光線路監視システム10と同様であるため、説明を省略する。以下、実施形態1で説明した光線路監視システム10との相違点について説明する。
【0155】
図10は、実施形態3に係る光線路監視システム14の全体構成を示す図である。
【0156】
実施形態1の光線路監視システム10では、
図1に示すように、1つの監視用光線路105は、1本(1心)の光線路で構成されていた。これに対し、実施形態3の光線路監視システム14は、
図10に示すように、1つの監視用光線路105が、2本(2心)の光線路(光線路105a(第1の光線路)および光線路105b(第2の光線路))によって構成されている。
【0157】
2本の光線路のうち、光線路105bは、第1の測定処理に利用され、光線路105aは、第2の測定処理に利用される。これに応じて、光スプリッタ120には、複数の監視用光線路105の各々の光線路105bが接続され、光ファイバセレクタ115には、複数の監視用光線路105の各々の光線路105aが接続されている。また、本実施形態では、監視用光線路105において、各光線路105bの方にフィルタ130が設けられている。
【0158】
したがって、OTDR110が第1の測定処理を行う場合、OTDR110から出力された監視光は、光スプリッタ120を介して各光線路105bへ送出され、OTDR110は、監視光の戻り光を各光線路105bから光スプリッタ120を介して受け取ることとなる。
【0159】
また、OTDR110が第2の測定処理を行う場合、OTDR110から出力された監視光は、光ファイバセレクタ115を介して障害の発生した光線路の光線路105aに対して監視光が送出され、OTDR110は監視光の後方散乱光をその光線路105aから光ファイバセレクタ115を介して受け取ることとなる。
【0160】
この実施形態3では、第1の測定処理および第2の測定処理のそれぞれに専用の光線路が設けられているため、光スイッチ125を設ける必要が無い。これにより、光スイッチ125の挿入損失が生じることもない。当然、試験装置100は、光スイッチ125の切り替え制御を行う必要はない。既設の光ファイバケーブル内に1本ではなく複数本の空心線が存在することが多い。よって、監視用光線路105として2本の光ファイバが使用できる場合には、光スイッチ125が必要無いこの実施形態3の構成が有効となる。
【0161】
この実施形態3では、実施形態2と同様に、第1の測定処理および第2の測定処理のそれぞれに専用のOTDR110を設ける構成とすることもできる。この場合、2台のOTDR110により、第1の測定処理と第2の測定処理とを並行して行うことができる。
【0162】
(プログラム、記憶媒体)
上記各実施形態で説明した試験装置100の各機能は、集積回路(ICチップ)上に形成された論理回路によってハードウェア的に実現してもよいし、CPU(Central Processing Unit)を用いてソフトウェア的に実現してもよい。
【0163】
例えば、試験装置100は、各機能を実現するプログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM、上記プログラムを展開するRAM、上記プログラム及び各種データを格納する各種記憶装置(記録媒体)を備えている。そして、上記CPUが、上記各種記憶装置に格納されているプログラムを読み出し、このプログラムを実行することによって、試験装置100の各機能を実現することができる。
【0164】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ類、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク類、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード類、マスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ類、あるいはPLD(Programmable logic device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の論理回路類等を用いることができる。
【0165】
なお、上記プログラムは、通信ネットワークを介して試験装置100に供給されてもよい。この通信ネットワークは、少なくとも上記プログラムを試験装置100に伝送可能であればよく、その種類はどのようなものであっても良い。例えば、通信ネットワークとしては、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(Virtual Private Network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。
【0166】
また、上記プログラムを試験装置100に供給するための伝送媒体としても、どのような種類のものを利用しても良い。例えば、伝送媒体として、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)回線等の有線によるものを利用しても良い。また、伝送媒体として、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE80211無線、HDR(High Data Rate)、NFC(Near Field Communication)、DLNA、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線によるものを利用しても良い。
【0167】
(補足事項)
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0168】
例えば、実施形態では、OTDR110と試験装置100とが、互いに異なる装置を用いているが、この代わりに、例えば、試験装置100の機能を備えたOTDR110を用いてもよい。この場合、例えば、2台のOTDR110を設けた実施形態では、一方のOTDR110により、第1の測定処理を行い、これと並行して、他方のOTDR110により、第2の測定処理を行うこともできる。
【0169】
また、各実施形態では、2つの光線路(監視区間)を監視する例を説明したが、3つ以上の光線路(監視区間)を監視することもできる。3つ以上の光線路(監視区間)を監視する場合、各実施形態と同様に、各光線路(監視区間)に対して監視用光線路105を設ければよい。