(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の前記ダンパは、前記物品の上面と前記天井との間に取り付けられた状態で、前記天井側から前記物品の上面側に延びる軸線が線対称で延びていることを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。
複数の前記ダンパは、前記物品の上面と前記天井との間に取り付けられた状態で、前記天井側から前記物品の上面側に延びる軸線が点対称で延びていることを特徴とする請求項1記載の転倒防止装置。
前記物品の上面又は前記天井に面接触する当接面を有し、前記当接面に対して前記ダンパの軸線を傾斜させて前記ダンパの一端を連結したベース部を備えていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の転倒防止装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の転倒防止装置は、壁面側係止具を壁面に連結するものであるため、壁面の近くに設置された家具にしか取り付けることができない。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、家具等の物品が設置される場所に関わらず取り付けることができ、地震の揺れ等による物品の転倒を防止する転倒防止装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の転倒防止装置は、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられる複数のダンパを備えている。これらダンパは、伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さいもの(以下、「圧効きダンパ」という。)、又は大きいもの(以下、「伸効きダンパ」という。)のいずれか一種類のみである。また、これらダンパは、物品の上面と天井との間に取り付けられた状態で、天井側から物品の上面側に延びる軸線が下り傾斜し、上方から見た平面視において複数方向に延びている。
【0007】
この転倒防止装置は、地震の揺れ等によって、物品が傾くと、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられた複数のダンパが、伸長又は収縮のどちらか一方で減衰力を発生し、物品の傾く力を減衰するため、物品の傾き量が抑制されて物品の転倒を防止することができる。このように、この転倒防止装置は設置面から鉛直に立ち上がった壁面の近くに設置されていない物品に対しても取り付けることができ、物品の転倒を防止することができる。
【0008】
したがって、第1発明の転倒防止装置は物品が設置される場所に関わらず取り付けることができ、地震の揺れ等による物品の転倒を防止することができる。
【0009】
第2発明の転倒防止装置は、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられる複数のダンパを備えている。これらダンパは、圧効きダンパと伸効きダンパとが混在している。また、これらダンパは、物品の上面と天井との間に取り付けられた状態で、天井側から物品の上面側に延びる軸線が下り傾斜し、上方から見た平面視において同じ方向に延びている。
【0010】
この転倒防止装置も、地震の揺れ等によって、物品が傾くと、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられた複数のダンパが、それぞれ伸縮して減衰力を発生し、物品の傾く力を減衰するため、物品の傾き量が抑制されて物品の転倒を防止することができる。このように、この転倒防止装置は設置面から鉛直に立ち上がった壁面の近くに設置されていない物品に対しても取り付けることができ、物品の転倒を防止することができる。
【0011】
したがって、第2発明の転倒防止装置も物品が設置される場所に関わらず取り付けることができ、地震の揺れ等による物品の転倒を防止することができる。
【0012】
第3発明の転倒防止装置は、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられる複数のダンパを備えている。これらダンパは、伸長動作時及び伸縮動作時に発生する減衰力が等しいもの(以下、「両効きダンパ」という。)である。また、これらダンパは、物品の上面と天井との間に取り付けられた状態で、天井側から物品の上面側に延びる軸線が下り傾斜して延びている。
【0013】
この転倒防止装置も、地震の揺れ等によって、物品が傾くと、設置面上に設置された物品の上面と天井との間に取り付けられたダンパが、伸縮して減衰力を発生し、物品の傾く力を減衰するため、物品の傾き量が抑制されて物品の転倒を防止することができる。このように、この転倒防止装置は設置面から鉛直に立ち上がった壁面の近くに設置されていない物品に対しても取り付けることができ、物品の転倒を防止することができる。ここで、ダンパの伸長動作時及び収縮動作時に発生する減衰力が等しいとは、必ずしも完全に等しい場合を意味するのではなく、略等しいものも含む。
【0014】
したがって、第3発明の転倒防止装置も物品が設置される場所に関わらず取り付けることができ、地震の揺れ等による物品の転倒を防止することができる。
【0015】
第1発明の転倒防止装置において、複数のダンパは天井側から物品の上面側に延びる軸線が線対称で延び得る。この場合、対称線を中心にしてダンパの軸線が延びている方向に物品が傾くと、ダンパが伸縮して減衰力を発生し、物品の傾く力を減衰するため、物品の傾き量が抑制されて物品の転倒を防止することができる。
【0016】
また、第1発明の転倒防止装置において、複数のダンパは天井側から物品の上面側に延びる軸線が点対称で延び得る。この場合、対称点を中心としてダンパの軸線が延びている方向に物品が傾くと、ダンパが伸縮して減衰力を発生し、物品の傾く力を減衰するため、物品の傾き量が抑制されて物品の転倒を防止することができる。
【0017】
第1〜第3発明の転倒防止装置において、物品の上面又は天井に面接触する当接面を有し、この当接面に対してダンパの軸線を傾斜させてダンパの一端を連結したベース部を備え得る。この場合、この転倒防止装置は、ダンパの軸線が傾斜した状態となるように物品の上面と天井との間に容易に取り付けることができる。
【0018】
ここで、物品は、家具、複数の寝台を上下方向に連結したベッド、大型テレビ、冷蔵庫、書棚、ショーケース、サーバーラック等、地震の揺れ等によって転倒するおそれのあるものが含まれる。設置面は、建物内の床面のみならず、建物外で物品を設置する基礎面等が含まれる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1〜第3発明の転倒防止装置を具体化した実施形態1及び2について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
<実施形態1>
実施形態1の転倒防止装置20は、
図1及び
図2に示すように、床面F上に設置された家具10の上面と天井Cとの間に取り付けられ、地震の揺れ等による家具10の転倒を防止する。家具10は、直方体形状であり、正面に図示しない扉や引き出し等を有し、内部に衣類や装身具等を収納することができる。家具10は、水平断面形状が左右方向(
図1において奥行き方向、
図2において上下方向、以下同じ。)に長い長方形状である。この家具10は、転倒防止装置20が取り付けられていない場合、地震の揺れ等によって、前後方向(
図1及び
図2において左右方向、以下同じ。)に傾いて転倒するおそれがある。
【0022】
転倒防止装置20は2個の圧効きダンパ30Aを1組にして構成されている。圧効きダンパ30Aは、
図3に示すように、シリンダ31、ピストン32、ロッド33、ロッドガイド34を有している。シリンダ31は有底筒状である。ロッドガイド34はシリンダ31の開口部を封鎖している。ピストン32はシリンダ31内に摺動自在に挿入されている。ロッド33は、基端部がピストン32に連結され、ロッドガイド34を挿通して先端側がシリンダ31の外部へ突出している。シリンダ31は作動油AとガスBが封入されている。
【0023】
圧効きダンパ30Aは伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さい。ここで、圧効きダンパ30Aの伸長動作とは、シリンダ31からロッド33の突出長さ及び圧効きダンパ30Aの全長が長くなっていく動作を意味する。また、圧効きダンパ30Aの収縮動作とは、シリンダ31からロッド33の突出長さ及び圧効きダンパ30Aの全長が短くなっていく動作を意味する。
【0024】
圧効きダンパ30Aの減衰力が発生するメカニズムを説明する。シリンダ31は内部がピストン32によって、ロッド33の基端部が収納されているロッド側圧力室35と、反ロッド側圧力室36とに仕切られている。ピストン32は両圧力室35,36間を連通させる絞り弁であるオリフィス37が形成されている。オリフィス37は、圧効きダンパ30Aの伸縮動作に伴うロッド側圧力室35と反ロッド側圧力室36との間の作動油Aの流れに抵抗を付与して減衰力を発生する減衰力発生部として機能する。また、ピストン32は逆止弁38Aを介して両圧力室35,36間を連通する連通路38が形成されている。逆止弁38Aは、ロッド側圧力室35から反ロッド側圧力室36への作動油Aの流れを許容し、その逆の流れを阻止する。このため、圧効きダンパ30Aは、伸長動作時、ロッド側圧力室35から反ロッド側圧力室36への作動油Aの流路経路が、オリフィス37と連通路38の2経路になる。一方、圧効きダンパ30Aは、収縮動作時、反ロッド側圧力室36からロッド側圧力室35への作動油Aの流路経路がオリフィス37のみとなる。このため、圧効きダンパ30Aは伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さくなる。
【0025】
転倒防止装置20は、2個の圧効きダンパ30Aと、1個の第1ベース部40と、2個の第2ベース部50とを備えている。第1ベース部40は、天井Cに面接触する当接面41Aを有する平板状の第1基部41と、第1基部41の当接面41Aとは反対側の面に対して直交し、間隔を空けて平行に延びた平板状の一対の第1連結部42とを有している。一対の第1連結部42は同一直線上の中央部に2個の圧効きダンパ30Aの各シリンダ31の基端部を連結した第1軸部43を有している。各圧効きダンパ30Aは、第1連結部42が延びている方向に沿って、軸線が第1基部41から離れるように当接面41Aに対して所定の角度で傾斜して延びている。また、1個の第1ベース部40の一対の第1連結部42の夫々に連結された圧効きダンパ30Aは反対方向に傾斜した状態で連結されている。つまり、第1ベース部40は、当接面41Aに対して2個の各圧効きダンパ30Aの軸線を傾斜させた状態でシリンダ31の基端部を連結している。
【0026】
各第2ベース部50は、家具10の上面10Aに面接触する当接面51Aを有する平板状の第2基部51と、第2基部51の当接面51Aとは反対側の面に対して直交して延びた平板状の第2連結部52とを有している。圧効きダンパ30Aのロッド33の先端部と第2連結部52とは第1軸部43と平行な第2軸部53によって相対的に回動自在に連結されている。
【0027】
転倒防止装置20は、床面F上に設置された家具10が、地震の揺れ等によって傾く方向、つまり、家具10の前後方向の中央付近の上方に第1ベース部40の第1軸部43が位置するように第1ベース部40の第1基部41の当接面41Aを天井Cに面接触させて固定する。このように第1ベース部40を天井Cに固定すると、第1ベース部40から軸線が下り傾斜し、家具10の前後方向にそれぞれ延びた各圧効きダンパ30Aのロッド33の先端部に連結された第2ベース部50の第2基部51の当接面51Aが家具10の前縁部及び後縁部の上面に当接する。この位置(家具10の前縁部及び後縁部)に第2ベース部を固定する。このようにして、家具10の上面10Aと天井Cとの間に3個の転倒防止装置20が、家具10の左右方向に等間隔に取り付けられている(
図2参照)。つまり、各転倒防止装置20は、第1ベース部40が第1基部41の当接面41Aを天井Cに面接触させた状態で、第1基部41の当接面41Aに対して圧効きダンパ30Aの軸線が家具10の上面10Aに向けて下り傾斜し(天井C側から家具10の上面10A側に延びる圧効きダンパ30Aの軸線が下り傾斜し)、上方から見た平面視において反対方向(二方向)に延びている。
【0028】
このように転倒防止装置20が取り付けられた家具10が、地震の揺れ等によって、前後方向に揺動して前方向に傾いた際、天井Cに面接触した第1ベース部40から家具10の後縁部に向けて延びた3個の圧効きダンパ30Aが収縮動作し、減衰力を発揮する。このため、家具10は、これら圧効きダンパ30Aによって前方向へ傾く力が減衰され、前方向への傾き量が抑制される。一方、家具10が、地震の揺れ等によって、前後方向に揺動して後方向に傾いた際、天井Cに面接触した第1ベース部40から家具10の前縁部に向けて延びた3個の圧効きダンパ30Aが収縮動作し、減衰力を発揮する。このため、家具10は、これら圧効きダンパ30Aによって後方向へ傾く力が減衰され、後方向への傾き量が抑制される。
【0029】
このように、この転倒防止装置20は、地震の揺れ等によって、圧効きダンパ30Aの軸線が延びている方向、すなわち家具10の前後方向に家具10が傾くと、床面F上に設置された家具10の上面10Aと天井Cとの間に取り付けられた圧効きダンパ30Aが収縮動作して減衰力を発生し、家具10の傾く力を減衰するため、家具10の傾き量が抑制されて家具10の転倒を防止することができる。また、この転倒防止装置20は床面Fから鉛直に立ち上がった壁面の近くに設置されていない家具10に対しても取り付けることができ、家具10の転倒を防止することができる。
【0030】
したがって、第1実施形態の転倒防止装置20は家具10が設置される場所に関わらず取り付けることができ、地震の揺れ等による家具10の転倒を防止することができる。
【0031】
また、第1ベース部40を天井Cに固定すると、圧効きダンパ30Aの軸線が傾斜した状態になるため、転倒防止装置20を家具10の上面と天井Cとの間に圧効きダンパ30Aの軸線が傾斜した状態に容易に取り付けることができる。
【0032】
<実施形態2>
実施形態2の転倒防止装置120も、
図4及び
図5に示すように、床面F上に設置された家具10の上面10Aと天井Cとの間に取り付けられ、地震の揺れ等による家具10の転倒を防止する。実施例1と同様な構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0033】
この転倒防止装置120は複数個のダンパ装置60A,60A,60Bを1組にして構成されている。つまり、実施形態2では、家具10の上面10Aと天井Cとの間に別々に取り付けられた3個のダンパ装置60A,60A,60Bによって、転倒防止装置120が構成されている。
【0034】
各ダンパ装置60A,60A,60Bは、1個のダンパ30A,30Nと、1個の第1ベース部140と、1個の第2ベース部50とを備えている。ダンパ装置60A,60A,60Bに組み込まれたダンパは圧効きダンパ30A又は伸効きダンパ30Nである。実施例2では、家具10の左右縁部に取り付けられた2個のダンパ装置60Aに圧効きダンパ30Aが組み込まれており、家具10の左右中央に取り付けられた1個のダンパ装置60Bに伸効きダンパ30Nが組み込まれている。
【0035】
伸効きダンパ30Nも、
図6に示すように、シリンダ31、ピストン132、ロッド33、ロッドガイド34を有している。シリンダ31は有底筒状である。ロッドガイド34はシリンダ31の開口部を封鎖している。ピストン132はシリンダ31内に摺動自在に挿入されている。ロッド33は、基端部がピストン132に連結され、ロッドガイド34を挿通して先端側がシリンダ31の外部へ突出している。シリンダ31は作動油AとガスBが封入されている。
【0036】
伸効きダンパ30Nの減衰力が発生するメカニズムを説明する。シリンダ31は内部がピストン132によって、ロッド33の基端部が収納されているロッド側圧力室35と、反ロッド側圧力室36とに仕切られている。ピストン132は両圧力室35,36間を連通させるオリフィス37が形成されている。オリフィス37は、伸効きダンパ30Nの伸縮動作に伴うロッド側圧力室35と反ロッド側圧力室36との間の作動油Aの流れに抵抗を付与して減衰力を発生する減衰力発生部として機能する。また、ピストン132は逆止弁138Aを介して両圧力室35,36間を連通する連通路138が形成されている。逆止弁138Aは、反ロッド側圧力室36からロッド側圧力室35への作動油Aの流れを許容し、その逆の流れを阻止する。このため、伸効きダンパ30Nは、収縮動作時、反ロッド側圧力室36からロッド側圧力室35への作動油Aの流路経路が、オリフィス37と連通路138の2経路になる。一方、伸効きダンパ30Nは、伸長動作時、ロッド側圧力室35から反ロッド側圧力室36への作動油Aの流路経路がオリフィス37のみとなる。このため、伸効きダンパ30Nは伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも大きくなる。
【0037】
第1ベース部140は、
図4及び
図5に示すように、天井Cに面接触する当接面41Aを有する平板状の第1基部41と、第1基部41の当接面41Aとは反対側の面に対して直交した平板状の第1連結部42とを有している。各ダンパ30A,30Nのシリンダ31の基端部と第1連結部42とは第1軸部43によって連結されている。各ダンパ30A,30Nは、第1連結部42が延びている方向に沿って、軸線が第1基部41から離れるように当接面41Aに対して所定の角度で傾斜して延びている。
【0038】
第2ベース部50は、家具10の上面10Aに面接触する当接面51Aを有する平板状の第2基部51と、第2基部51の当接面51Aとは反対側の面に対して直交して延びた平板状の第2連結部52とを有している。各ダンパ30A,30Nのロッド33の先端部と第2連結部52とは第1軸部43と平行な第2軸部53によって相対的に回動自在に連結されている。
【0039】
転倒防止装置120は、上述したように、家具10の左右縁部の上面10Aと天井Cとの間に取り付けられた圧効きダンパ30Aが組み込まれた2個のダンパ装置60A,60Aと、家具10の左右中央部の上面10Aと天井Cとの間に取り付けられた伸効きダンパ30Nが組み込まれた1個のダンパ装置60Bによって構成されている。
【0040】
各ダンパ装置60A,60A,60Bは、床面F上に設置された家具10が、地震の揺れ等によって傾く方向、つまり、家具10の前後方向の中央付近の上方に第1ベース部140の第1軸部43が位置するように第1ベース部140の第1基部41の当接面41Aを天井Cに面接触させて固定する。このように第1ベース部140を天井Cに固定すると、第1ベース部140から軸線が下り傾斜し、家具10の後方向に延びた各ダンパ30A,30Nのロッド33の先端部に連結された第2ベース部50の第2基部51の当接面51Aが家具10の後縁部の上面10Aに当接する。第2ベース部50は家具10の後縁部に固定される。このようにして、家具10の上面10Aと天井Cとの間に3個のダンパ装置60A,60A,60Bが取り付けられている。つまり、転倒防止装置120を構成するダンパ装置60A,60A,60Bは、第1ベース部140が第1基部41の当接面41Aを天井Cに面接触させた状態で、第1基部41の当接面41Aに対して各ダンパ30A,30Nの軸線が家具10の上面10Aに向けて下り傾斜し(天井C側から家具10の上面10A側に延びる各ダンパ30A,30Nの軸線が下り傾斜し)、上方から見た平面視において同じ方向に延びている。
【0041】
このように転倒防止装置120が取り付けられた家具10が、地震の揺れ等によって、前後方向に揺動して前方向に傾いた際、各ダンパ30A,30Nは収縮動作する。このため、家具10の左右縁部に取り付けられたダンパ装置60A,60Aに組み込まれた圧効きダンパ30Aが減衰力を発揮して家具10が前方向へ傾く力を減衰し、前方向への傾き量が抑制される。一方、家具10が、地震の揺れ等によって、前後方向に揺動して後方向に傾いた際、各ダンパ30A,30Nは伸長動作する。このため、家具10の左右中央部に取り付けられたダンパ装置60Bに組み込まれた伸効きダンパ30Nが減衰力を発揮して家具10が後方向へ傾く力を減衰し、後方向への傾き量が抑制される。
【0042】
このように、この転倒防止装置は、地震の揺れ等によって、各ダンパ30A,30Nの軸線が延びている方向、すなわち家具10の前後方向に家具10が傾くと、床面F上に設置された家具10の上面10Aと天井Cとの間に取り付けられた各ダンパ30A,30Nが、伸縮して減衰力を発生し、家具10の傾く力を減衰するため、家具10の傾き量が抑制されて家具10の転倒を防止することができる。このように、この転倒防止装置120は床面Fから鉛直に立ち上がった壁面の近くに設置されていない家具10に対しても取り付けることができ、家具10の転倒を防止することができる。
【0043】
したがって、第2実施形態の転倒防止装置120も家具10が設置される場所に関わらず取り付けることができ、地震の揺れ等による物品の転倒を防止することができる。
【0044】
また、第1ベース部140を天井Cに固定すると、各ダンパ30A,30Nの軸線が傾斜した状態になるため、転倒防止装置120を家具10の上面10Aと天井Cとの間に容易に取り付けることができる。
【0045】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1及び2では、圧効きダンパ50A又は伸効きダンパ50Nを転倒防止装置20,120に組み込んだが、
図7に示す両効きダンパ30Rを組み込んでもよい。両効きダンパ30Rは、ピストン37にオリフィス37が形成されており、逆止弁を介した連通路が形成されていない。他の構成は圧効きダンパ30A及び伸効きダンパ30Nと同様である(実施形態1及び2と同様な構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。)。このため、両効きダンパ30Rは伸長動作時及び収縮動作時に発生する減衰力が略等しい。この場合、両効きダンパ30Rは伸縮時のどちらにも減衰力を発生する、このため、各両効きダンパ30Rが、家具(物品)の前後方向に傾く力を減衰するため、家具(物品)の傾き量が抑制されて家具(物品)の転倒を防止することができる。また、この転倒装置も床面から鉛直に立ち上がった壁面の近くに設置されていない家具(物品)に対しても取り付けることができ、家具(物品)の転倒を防止することができる。
【0046】
(2)実施形態1では圧効きダンパ30Aを転倒防止装置20に組み込んだが、伸効きダンパ30Nを組み込んでもよい。この場合、家具(物品)が前方向に傾いた際、天井に面接触した第1基部から家具(物品)の前縁部に向けて延びた3個の伸効きダンパが伸長動作し、減衰力を発揮する。これによって、家具(物品)は前方向へ傾く力が減衰され、前方向への傾き量が抑制される。一方、家具(物品)が後ろ方向に傾いた際、天井に面接触した第1基部から家具(物品)の後縁部に向けて延びた3個の伸効きダンパが伸長動作し、減衰力を発揮する。これによって、家具(物品)は後ろ方向へ傾く力が減衰され、後方向への傾き量が抑制される。このように伸効きダンパの減衰力が作用し、家具(物品)の転倒を防止することができる。
【0047】
(3)実施形態1では圧効きダンパ30Aの天井C側から家具10の上面10A側に延びる軸線が上方から見た平面視において反対方向(二方向)に延びていたが、
図8に示すように、ダンパ30(圧効きダンパ30A、伸効きダンパ30N、又は両効きダンパ30R)の軸線を線対称でそれぞれが異なる方向に延びるようにしてもよい。この場合、対称線Sを中心にしてダンパ30Aの軸線が延びている方向に家具110(物品)が傾くと、ダンパ30が伸縮して減衰力を発生し、家具110(物品)の傾く力を減衰するため、家具110(物品)の傾き量が抑制されて家具110(物品)の転倒を防止することができる。このように軸線が線対称でそれぞれが異なる方向に延びるように複数のダンパ30を取り付けると、水平断面形状が楕円形等の家具110(転倒し得る方向が複数方向である物品)の転倒を良好に防止することができる。
【0048】
(4)実施形態1では圧効きダンパ30Aの天井C側から家具10の上面10A側に延びる軸線が上方から見た平面視において反対方向(二方向)に延びていたが、
図9及び
図10に示すように、ダンパ30(圧効きダンパ30A、伸効きダンパ30N、又は両効きダンパ30R)の軸線を点対称でそれぞれが異なる方向に延びるようにしてもよい。この場合、対称点を中心にしてダンパ30の軸線が延びている方向に家具210(物品)が傾くと、ダンパ30が伸縮して減衰力を発生し、家具210(物品)の傾く力を減衰するため、家具210(物品)の傾き量が抑制されて家具210(物品)の転倒を防止することができる。このように軸線が点対称でそれぞれが異なる方向に延びるように複数のダンパ30を取り付けると、水平断面形状が正方形等の物品210(転倒し得る方向が複数方向である物品)の転倒を良好に防止することができる。
【0049】
(5)実施形態1では1個の第1ベース部40が第1基部41と平行に延びた一対の第1連結部41とを有し、2個の圧効きダンパ30Aを連結していたが、
図11に示すように、1個のダンパ30(圧効きダンパ30A、伸効きダンパ30N、又は両効きダンパ30R)が連結されたベース板240を複数個連結して転倒防止装置220を構成してもよい。ベース板240は、長方形状の平板であって、両側の長辺部の2カ所に離れて設けられた先端部が広がった台形状の凸部241と、この凸部241と外形が同じ形状の凹部242とを有している。ダンパ30は、軸線がベース板240から離れる方向に所定の角度で傾斜させて取り付けられている。複数のベース板240の凸部241と凹部242とを嵌合して、複数のダンパ30を備えた転倒防止装置220を構成することができる。この場合、ダンパ30の軸線が延びる方向を上方から見た平面視において反対方向に延びるようにベース板240を組み合わせてもよく、同じ方向に延びるようにベース板を組み合わせてもよい。
【0050】
(6)実施形態1及び2では、第1ベース部40の天井Cに面接触する当接面41Aに対してダンパ30A,30Nの軸線を傾斜させて第1ベース部40にダンパ30A,30Nのシリンダ31の基端部を連結しているが、第2ベース部50の家具10の上面10Aに面接触する当接面51Aに対してダンパ30A,30Nの軸線を傾斜させて第2ベース部50にダンパ30A,30Nのロッド33の先端部を連結してもよい。
【0051】
(7)実施形態1では、1個の第1ベース部40に2個の圧効きダンパ30Aのシリンダの基端部を連結し、逆方向に伸びた各圧効きダンパ30Aのロッド部の端部を別々の第2ベース部50に連結していたが、
図12に示すように、1個の第1ベース部340に2個のダンパ30(圧効きダンパ30A、伸効きダンパ30N、又は両効きダンパ30Rのいずれか1種類)を連結して、左右方向から見て交差するように逆方向に傾斜して伸びた各ダンパ30のロッド部の先端部を1個の第2ベース部350に連結してもよい。この場合、各ダンパ30を所定の角度で傾斜した状態に家具10(物品)の上面と天井Cとの間に取り付けることができる。
【0052】
(8)実施形態2では、3個のダンパ装置60A,60A,60Bに別々の第1ベース部140を備えていたが、これら第1ベース部140を一体にしてもよい。
【解決手段】転倒防止装置20は、床面F上に設置された家具10の上面10Aと天井Cとの間に取り付けられる複数のダンパ30Aを備えている。これらダンパ30Aは、伸長動作時に発生する減衰力が収縮動作時に発生する減衰力よりも小さい圧効きダンパである。また、これらダンパ30Aは、家具10の上面10Aと天井Cとの間に取り付けられた状態で、天井C側から家具10の上面10A側に延びる軸線が下り傾斜し、上方から見た平面視において複数方向に延びている。