(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明の他の見地や特徴点や利点は、添付図面を参照しつつ、本発明を何ら限定するものではなく単なる例示としての好ましい実施形態に関する以下の詳細な説明を読むことにより、明瞭となるであろう。
【0040】
添付図面は、本発明の様々な実施形態の理解を容易なものとする。
【0041】
図1〜
図5Bは、呼吸用マスクアセンブリ(10)を示している。このアセンブリ(10)は、フレーム(12)と、クッション(14)と、を備えている。クッション(14)は、フレーム(12)に対して、恒久的に連結することも、また、着脱可能に連結することも、できる。額支持部材(16)は、フレーム(12)の上部に対して、着脱可能に取り付けられている。ヘッドギアアセンブリ(図示せず)は、フレーム(12)に対して着脱可能に取り付けることができ、フレーム(12)とクッション(14)とを、患者の顔面上において、所望に調節された位置に維持することができる。例えば、ヘッドギアアセンブリは、一対をなす上ストラップおよび下ストラップを備えることができる。この場合、上ストラップは、額支持部材(16)上に設けられたクリップ構造(18)に対して着脱可能に連結され、一方、下ストラップは、フレーム(12)上に設けられたクリップ構造(20)に対して着脱可能に連結される。しかしながら、ヘッドギアアセンブリおよびフレーム(12)は、任意の適切な方法で互いに着脱可能に連結することができる。
【0042】
図示の実施形態においては、マスクアセンブリ(10)は、患者の鼻に対して、呼吸可能なガスを供給するための鼻用のマスク構造である。しかしながら、マスクアセンブリ(10)は、鼻と口とに対するマスクすることができる、すなわち、フルフェイス型のマスクとすることができる。
【0043】
旋回可能なエルボーアセンブリ(22)が、フレーム(12)の前方部分に対して着脱可能に取り付けられている。このエルボーアセンブリ(22)は、加圧供給源に対して連結された導管に対して連結可能であるように、構成されている。加圧供給源は、導管およのびエルボーアセンブリ(22)を介してクッション(14)内へと、呼吸可能なガスを供給し、これにより、患者は、呼吸を行うことができる。
【0044】
図1〜
図9Bに示すように、クッション(14)は、フレーム(12)に対して連結され得るよう構成された顔面非接触部分(24)(
図6および6C)と、患者の顔面に対して係合し得るよう構成された顔面接触部分(26)と、顔面非接触部分(24)および顔面接触部分(26)を相互連結させる中間部分(28)と、を備えている。クッション(14)のシール形成部分(68)(
図10B参照)は、患者の顔面上においてシールを形成し得るよう構成されている。クッション(14)は、詳細に後述するように、シール形成部分(68)に沿って接触力を印加することにより、シールを達成する。1つの態様においては、シール形成部分(68)は、面積を有したストリップである。例えば、患者の顔面に対して接触するストリップ(68)は、
図10Bにおいて2本の破線で囲まれた面積を有することができる。患者の顔面上の敏感な領域に対して印加された接触力を、最小化することができる。患者の顔面のいくつかの部分は、快適性とシールとのバランスを達成するためには、特別の注意が必要である。
【0045】
図示の実施形態においては、クッション(14)の顔面非接触部分(24)は、フレーム(12)に対して着脱可能に取り付けられる。例えば、
図3、3B、6、6C、15に示すように、顔面非接触部分(24)は、ショルダ(30)とフランジ(32)と、を備えている。クッションクリップ(34)(
図2、2B、3、3B参照)は、フレーム(12)に対して着脱可能に係合する。これにより、ショルダ(30)が、クリップ(34)とフレーム(12)の間に配置され、これにより、フレーム(12)に対してクッション(14)を取り付けることができる。これに関しては、例えば、本出願人による出願であるとともに現在係属中の、2002年9月6日付けで出願された米国特許予備出願シリアル番号第10/235,846号明細書を参照されたい。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。さらに、フランジ(32)は、シールを提供し得るようにして、配置される。代替的には、クッション(14)の顔面非接触部分(24)は、当該技術分野においては公知であるように、ストラップや、摩擦係合や、タングとグルーブとを備えた構成や、これらの組合せを使用することにより、フレーム(12)に対して着脱可能に取り付けることができる。しかしながら、クッション(14)の顔面非接触部分(24)は、例えば接着剤や機械的固定手段を使用して、フレーム(12)に対して恒久的に取り付けることもできる。
【0046】
図6、6C、14〜33に示すように、クッション(14)の好ましい顔面接触部分(26)は、側壁(36)と、この側壁(36)から離間する向きに延出されたリム(38)と、実質的にリム(38)を囲むようにして設けられたメンブラン(40)と、を備えている。例えば、Kwok氏他による米国特許第6,112,746号明細書や、2002年8月12日付けで出願された米国特許予備出願シリアル番号第60/402,509号明細書を参照されたい。これら文献の記載内容は、参考のため、ここに組み込まれる。リム(38)および側壁(36)は、顔面接触部分(26)のための支持構造を提供し、また、メンブラン(40)は、顔面接触部分(26)に対するシール構造を提供する。
【0047】
メンブラン(40)は、大きな実効的ロールオーバー部分(大きな半径)を提供し、これにより、マスクアセンブリ(10)は、患者の顔面に対しての、ある程度の移動や回転が可能とされ、なおかつ、メンブランの先端エッジが、患者の顔面を刺激することを防止する。さらに、メンブラン(40)は、リム(38)のエッジを超えてさらに延出されており、これにより、リム(38)が刺激の原因となることを防止している。
【0048】
リム(38)は、クッション(14)の鼻腔の内部へと内方に湾曲するような湾曲形状を有している。メンブラン(40)がリム(38)より薄いことは望ましいけれども、それらは、互いに同じ厚さとすることができる。
【0049】
メンブラン(40)の内表面は、リム(38)の外表面から離間している。これにより、患者に対してソフトなシールを形成することができる。ソフトなシールという用語は、メンブラン(40)が、不適切な力をもたらすことなく患者の顔面特徴物や鼻特徴物の形状に関しての小さな変化を許容し得ること、および、使用時には、有効なシールを維持しつつも、患者に対してのマスクのわずかな移動を許容し得ること、を意味している。リム(38)とメンブラン(40)との間の間隔は、患者の顔面上の様々な場所において互いに異なるものとすることができる。
【0050】
図2、2B、10〜11Bに示すように、クッション(14)の顔面接触部分(26)は、好ましくは、全体的に三角形状とされ、患者の鼻のブリッジ領域と頬領域とおよび唇領域とに対して接触し得るよう構成されている。しかしながら、顔面接触部分(26)は、他の任意の適切な形状とすることができる。例えば、全体的に台形形状とすることもできる。図示の実施形態においては、クッション(14)は、頬と鼻側面との間の皺のところにおいてシールを形成するための一対をなす頬領域(44)と;患者の鼻の下部と上唇の上部とのところにおいてシールを形成するための提供するための唇領域(46)と;鼻ブリッジ領域(42)と;を備えている。鼻ブリッジ領域(42)は、ブリッジを横切って延在しているとともに、ブリッジの側面に沿って傾斜しており、頬と鼻側面との間に形成された皺と交差している。唇領域(46)と各頬領域(44)との間の遷移領域は、鼻の底部の回りで鼻の側面に向けてクッション(14)が回転し始める場所である。鼻ブリッジ領域(42)と各頬領域(44)との間の遷移領域は、各頬領域(44)が鼻のブリッジに向けて上向きに曲がる場所である。言い換えれば、鼻ブリッジ領域(42)は、頬領域(44)が上向きに角度を変え始めるところから、スタートする。
図40に示すように、メンブラン(40)は、患者の鼻のブリッジ領域(42)のところに、予成形されたノッチ(48)を備えることができる。このノッチ(48)は、患者の鼻のブリッジ領域の典型的な形状に全体的に適合する。
【0051】
クッション(14)は、ガセット部分(50)を備えるものであって、顔面の湾曲度合いに全体的に適合し得るように湾曲している。
図4〜5B、7〜9Bを、参照されたい。上記構成の利点は、高さが低減されていること、安定性が増大されていること、患者の顔面への適合度合いがより良好であること、および、視覚的なインパクトが低減されていること、である。他の利点は、フレーム(12)の側面においてヘッドギアクリップの突出度合いが低減されていることである。従来技術においては、ヘッドギアクリップが突出している。他の利点は、シリコーンの重量および容積が低減されていること、および、デッドスペースが低減されていること、および、ガセット部分が硬いものとされていてガセット部分の形状維持性能が良好なこと、である。
【0052】
図示の実施形態においては、メンブラン(40)は、患者の鼻のブリッジ領域の上部に対して接触し得るよう構成されている。しかしながら、メンブラン(40)は、鼻のブリッジ領域よりも下の部分に対して接触することができる。例えば、2002年8月12日付けで出願された米国特許予備出願シリアル番号第60/402,509号明細書を参照されたい。この文献の記載内容は、参考のため、その全体がここに組み込まれる。
【0053】
図示の実施形態においては、クッション(14)の顔面接触部分(26)は、二重壁構成とされている。例えば、1つのメンブラン(40)と、1つのリム(38)と、を備えている。しかしながら、クッション(14)は、単一壁構成や、三重壁構成や、さらなる多重壁構成、とすることができる。例えば、メンブランおよびリムと組み合わされたクッションを提供することができる。例えば、単一壁構成とすることができる。これとは異なり、リムによる支持機能は、単一のメンブランの支持に関して、2つ以上の支持リムを使用して達成することができる。あるいは、1つのリムに対して、2つ以上のメンブランを設けることができる。他の代替可能な例においては、リムによる支持機能と、メンブランによるシール機能とは、2つの個別の部材へと分割することができる。これら部材は、互いに異なる材料から形成することができる。例えば、一方の部材を、発泡体から形成することができる。他の実施形態においては、ゲルメンブランを使用することができる。
【0054】
クッション(14)の中間部分(28)は、ガセット部分(50)を備えている。このガセット部分(50)は、顔面非接触部分(24)および顔面接触部分(26)に対して、径方向外向きに延出されている。ガセット部分(50)は、顔面接触部分(26)をガセット部分(50)に対して移動させることができる。さらに、ガセット部分(50)は顔面接触部分(26)と比較して、より大きな投影面積を有している(例えば、
図10は、ガセット部分(50)が患者の顔面に重ねられた様子を示しており、これにより、ガセット部分(50)によって追加的にもたらされた面積を図示している)。ガセット部分(50)の付加的な投影面積は、患者の顔面上に接触力をもたらし、メンブラン(40)を介して、シールストリップ(68)(
図10B)上に作用する。これにより、後述するように、クッション(14)のシール効率を増大させる。
【0055】
図6、6C、15に示すように、ガセット部分(50)は、顔面接触部分(26)の側壁(36)から外向きに延出されており、顔面非接触部分(24)のフランジ(32)の中へと内向きに湾曲している。特に、ガセット部分(50)は、顔面接触部分(26)の側壁(36)から外向きに延出されている第1側壁(52)と;顔面非接触部分(24)のフランジ(32)から外向きに延出されている第2側壁(54)と;これら第1および第2側壁(52,54)を相互に連結するアーチ形状壁(56)と;を備えている。ガセット部分(50)の壁(52,54,56)は、これらの間にスペース(57)を形成する。したがって、ガセット部分(50)は、平面視において、患者の顔面の輪郭に適合するように曲げられる。
図39に示すように、例えば、ガセット部分は、80〜120mmという範囲の、好ましくは95〜105mmという範囲の、曲率半径を有している。
【0056】
ガセット部分(50)は、内方エッジ(58)と、外方エッジ(60)と、を備えている。内方エッジ(58)は、側壁(36)の外方エッジに対応し、また、外方エッジ(60)は、ガセット部分(50)のアーチ形状壁(56)の頂点に対応する。
図6および
図10に示すように、内方エッジ(58)と外方エッジ(60)との間には、垂直距離(d)が形成される。この距離(d)は、患者の顔面上においてクッション(14)によって印加された圧力を変更し得るよう、変更することができる。
図10Bに示すように、外方エッジ(60)と、顔面上におけるクッション接触ライン(61)と、の間の垂直距離として、距離(d
2 )が定義される。接触ライン(61)は、シール形成部分(68)の外周縁である。すなわち、クッション(14)のシールストリップである。接触ライン(61)と外方エッジ(60)との間の追加面積は、メンブラン(40)に対して付加的な力をもたらす。患者の顔面上への接触力は、マスクキャビティ内における圧力と、ガセット部分(50)の投影面積と、に比例する。したがって、ガセット部分(50)の付加的面積は、例えば距離(d)を変えることにより、変更することができる。これにより、患者の顔面に対して印加される接触力を変更することができる。
【0057】
本発明の一見地は、接触力を、患者の顔面上にわたって制御可能に分散させるということである。圧力および力は、クッションによるシールを維持しつつ、分散されるべきである。患者の顔面の敏感な領域に沿った局所的な圧力ポイントの形成を避けることが望ましい。例えば、局所的に接触力が集中したポイントは、鼻のブリッジ領域においては避けるべきである。これにより、患者に対する快適性を増大させることができる。
【0058】
本発明の他の見地は、クッションによるシールを維持しつつ接触力を再分散され得るだけでなく、目の周囲におけるガセット面積を再成形することにより患者の視界を最適化することもできる。例えば、
図12Cに示すように、ガセット部分(50)は、目の周囲において切欠部分(51)を備えており、これにより、患者の視界を改善することができる。
【0059】
患者の顔面に対して印加された接触力がガセット部分(50)の投影面積に比例することにより、ガセット部分(50)の様々な場所において距離(d)を変更することにより、患者の顔面の異なる領域に対して印加される力を変更することができる。例えば、
図12は、2つの可能な外方エッジを有したガセット部分(50)を示している。実線で示されている第1外方エッジ(60)においては、内方エッジ(58)と外方エッジ(60)との間における距離(d)が、ほぼ一定である。対照的に、破線で示されている第2外方エッジ(260)は、頬領域と比較して、唇領域および鼻のブリッジ領域において、より小さな距離(d’)を有している。
【0060】
ガセット部分(50)は、顔面の選択された領域だけに設けることができ、その他の領域には設けないことができる。クッションの全周縁に沿って設ける必要はない。例えば、ガセット部分(50)は、唇部分だけに沿って設けることができる。
【0061】
したがって、破線で示されている第2外方エッジ(260)を有したガセット部分(50)は、実線で示された第1外方エッジ(60)を有したガセット部分(50)と比較して、患者の顔面の鼻ブリッジ領域および唇領域に対して、より小さな接触力を印加する。このようにして、患者の顔面に対して印加される接触力は、患者の顔面の敏感な領域からは遠ざかるように再分散することができる。例えば、鼻のブリッジ領域および唇領域からは遠ざかるように再分散することができる。そして、患者の顔面のより鈍感な領域に対して印加することができる。例えば、頬領域に対して印加することができる。患者の顔面の鼻のブリッジ領域が特に敏感であることにより、鼻ブリッジ領域(42)における面積が低減されているようなガセット部分(50)は、患者にとって、より快適なものとなる。しかしながら、距離(d)は、ガセット部分(50)の任意の領域に合わせて調整することができる。これにより、患者の顔面の各領域に対して印加される力を調整することができ、最大の快適性を与えることができる。これは、理想的な力とクッション回りの特別注文面積との双方を得るための特別注文に基づいて行うことができる。
【0062】
図12Bは、2つの可能な外方エッジを有したガセット部分(50)の他の実施形態を示している。実線で示されている第1外方エッジ(60)は、頬領域と比較して、唇領域および鼻ブリッジ領域において、外方エッジ(260)と内方エッジ(図示せず)との間の距離が、より小さなものとされている。対照的に、破線で示されている第2外方エッジ(260)は、外方エッジ(60)と内方エッジとの間において、ほぼ一定の距離を有している。
【0063】
患者の顔面上の接触ラインに対して印加される接触力は、
図6、6C、13A〜13Cに示されているように、ガセット部分のアーチ形状壁(56)の厚さを調節することにより、さらに調整することができる。アーチ形状壁(56)は、スプリング構造として作用し、メンブラン(40)を介して患者の顔面上へと接触力の一成分を提供する。アーチ形状壁(56’)は、一様な壁厚さを有したものとすることができる。あるいは、
図13Aに示すように、薄い断面を有したものとすることができる。あるいは、アーチ形状壁(56”)は、
図13Bに示すように、厚い断面を有したものとことができる。より薄いアーチ形状壁(56’)は、より厚いアーチ形状壁(56”)と比較して、より小さな力成分を提供する。アーチ形状壁(56,56’,56”)の断面積は、ガセット部分(50)の周囲回りにおいて場所ごとに異なるものとすることができる。例えば、ガセット部分は、患者の鼻のブリッジ領域においては、薄い壁のアーチ形状壁を有し、なおかつ、患者の頬領域においては、より厚い壁のアーチ形状壁を有することができる。さらに、アーチ形状壁は、距離(d)の変更に伴って変更することができる。例えば、距離(d)を低減させ、かつ、アーチ形状壁の厚さを増大させることができる。
【0064】
これに代えて、ガセット部分(50)の全体を、テーパー形状とすることができる。ただし、アーチ形状壁の形状は、そのままとされる。
【0065】
患者の顔面上の接触ラインに対して印加される接触力は、ガセット部分(50)のところに
図13Cに示すような内部係止構造(59)の設置することにより、さらに調整することができる。このような係止構造(59)のサイズや形状や幾何学的形態は、ガセット部分(50)の様々な領域において硬さを変更し得るように構成することができる。例えば、鼻のブリッジ領域においては、あまり硬くないものとし、かつ、頬領域においては、より硬いものとすることで、要求された快適性と、要求されたシールレベルと、を提供することができる。
【0066】
他の態様においては、患者の顔面上の接触ラインに対して印加される接触力は、ガセット部分(50)にスプリング(例えば、スチールスプリング)を挿入することにより、調整することができる。このスプリングは、スプリングによって印加される力の成分を調節し得るよう構成されているようなばね定数を備えている。
【0067】
これらの手法により、顔面の接触ライン上の接触力は、マスク圧力だけの関数ではなく、例えば、ガセット部分(50)内のスプリング部材の関数ともなる。これは、圧力の不安定さを改善し、高圧でのシール圧力を低減し、ガセット部分の視覚的なインパクトを低減する。
【0068】
図示の実施形態においては、ガセット部分(50)と、クッション(14)の顔面非接触部分(24)および顔面接触部分(26)とは、全体的に三角形状とされている。しかしながら、ガセット部分(50)と、クッション(14)の顔面非接触部分(24)および顔面接触部分(26)とは、任意の適切な形状のものとすることができる。例えば、三角形状以外の形状のものとすることができる。さらに、ガセット部分(50)と顔面非接触部分(24)と顔面接触部分(26)との形状は、互いに同様のものとすることができる、あるいは、互いに異なるものとすることができる。例えば、ガセット部分を、三角形状とし、なおかつ、顔面非接触部分および顔面接触部分を、全体的に台形形状とすることができる。
【0069】
クッション(14)は、例えばシリコーンといったようなソフトでありかつフレキシブルな皮膚適合性材料から形成される。クッション(14)は、当該技術分野において公知なように、例えば、1回の射出成形プロセスで形成することができる。しかしながら、クッション(14)は、任意の適切な材料が形成することができ、任意の適切なプロセスによって形成することができる。例えば、クッション(14)の顔面接触部分(26)は、よりソフトなグレードの材料から形成することができ、ガセット部分は、スプリング部材としての硬さを提供し得るよう、より硬いグレードの材料から形成することができる。顔面非接触部分(24)は、より硬いグレードの材料から形成することができる。このため、クッションクリップを使用することなくフレームに対する直接的な組立を可能とすることができる。
【0070】
クッション(14)は、従来技術におけるクッションと比較して、改善されたシールの安定性および快適性を提供する。特に、クッション(14)の湾曲度合いは、マスクアセンブリの安定性を全体的に改善する。また、ガセット部分は、シールの安定性を改善する。患者の顔面の様々な場所においてガセット部分の距離(d,d
2 )を変更することにより、患者快適性レベルを改良することができる。
【0071】
図14〜
図33は、クッション(14)の様々な断面を示している。これら様々な断面は、患者の顔面の様々な領域において、リムとメンブランとの間の距離が様々なものとされていることを図示している。さらに、様々な断面は、患者の顔面の様々な領域において、ガセット部分(50)が様々な構成とされていることおよびガセット部分(50)の距離(d)が様々なものとされていることを、図示している。
【0072】
図34〜
図42は、クッション(14)の一実施形態に関する構造的詳細および様々な寸法を示している。例えば、クッション(14)は、42〜62mmという範囲の長さを有しており、好ましくは52mmという長さを有しており、90〜110mmという範囲の高さを有しており、好ましくは100.5mmという高さを有しており、95〜115mmという範囲の幅を有しており、好ましくは103.2mmという幅を有している。クッション(14)の一実施形態においては、
図34〜
図42の中で図示された寸法は、±62%あるいは100%にわたって変更することができる。
【0073】
図6Bは、本発明の代替可能な実施形態を示しており、この実施形態においては、ガセット部分(50)と、クッション(14)の顔面接触部分(26)と、の間に、補強リング(64)を備えている。1つの態様においては、補強リング(64)は、シリコーンの肉厚ビードから形成され、クッション(14)に対して成型される。補強リング(64)は、補強フープとして機能し、クッション(14)が圧力ポイントのところで膨張する傾向を低減させる。他の態様においては、補強リング(64)は、ポリカーボネートで作られており、オーバーモールドされるかあるいは押込係合される。
【0074】
クッション(14)の顔面接触部分(26)は、0°〜360°にわたる値をとって角度位置を表す少なくとも1つのパラメータ(p)の関数によって規定され得るような表面を備えている。鼻に関しては、0°という位置は、鼻のブリッジの中央として定義することができ、鼻の隔壁は、180°という角度で現れることとなる。
図15〜
図22および
図24〜
図33は、様々な角度位置での一連の断面を示しており、すなわち、パラメータ(p)の様々な値を示している。
【0075】
マスクアセンブリ(10)の利点は、接触ストリップによって作用する接触力を調節することができ、これにより、過度に大きな高マスク圧力ではなく低マスク圧力でもって、許容可能なシールを提供することができるということである。例えば、スプリング構造を有していないガセット部分を備えたマスクアセンブリにおいては、接触力は、低マスク圧力においては、小さすぎるものであり、そのため、シールをもたらすためにはガセット面積を増大させなければならない。この付加的なガセット面積は、高マスク圧力をもたらして、接触力を過度に大きなものとしてしまう。ガセット部分に対してスプリング構造を組み合わせることは、低いマスク圧力であっても、ガセット部分をを大きく必要なく、接触力を、スプリング構造によって、もたらし得ることを意味している。高マスク圧力においては、ガセット部分によってもたらされる接触力は、スプリング構造によってもたらされる接触力と比較して、はるかに大きなものとすることができる。したがって、マスクアセンブリ(10)は、様々な圧力範囲にわたって、マスクシステムの接触力を調整することができる。
【0076】
本発明の他の態様においては、ヘッドギアの伸張可能性が、変更可能とされている。例えば、比較的伸張不可能なヘッドギアを、低マスク圧力において使用することができる。一方、より伸張可能なヘッドギアを、例えば20cmH
2O といったような高マスク圧力において使用することができる。1つの態様においては、これは、ヘッドギア内において二重のストラップを備えることにより、達成される。その場合、一方のストラップは、拡張可能なものとされ、他方のストラップは、比較的拡張不可能なものとされる。低圧においては、両方のストラップが使用される。正味の効果は、ヘッドギアが、比較的拡張不可能なものであることである。高圧においては、拡張不可能なストラップの係合が解除され、その結果、ヘッドギアは、全体的に比較的拡張性のものとなる。
【0077】
図43は、例えば膨張といったような固定的延出状態で保持された少なくとも1つのガセット部分を備えたマスクマスクに関し、患者の顔面上の接触力を示している。x軸は、マスク内部の圧力である。y軸は、患者の顔面上における接触力である。快適性とシールとが両立している領域(Z)は、以下によって定義される。(a)4〜20cmH
2O という典型的な動作圧力範囲。(b)患者の顔面上におけるシールを維持するために必要とされる最小の接触力。この接触力は、マスク内部圧力の増加関数として定義される。(c)快適な接触力の最大値。
【0078】
本発明の一実施形態においては、クッションは、ガセット部分およびスプリング構造を備えて構成されており、クッションによって印加される接触力が、快適性とシールとが両立している領域(Z)内に維持する。
【0079】
図43は、少なくとも1つのガセット部分を備えた3つ仮想的クッションに関する3つのラインを示している。一般に、第1近似においては、接触力は、ガセット部分によってもたらされた付加的投影面積の結果として、マスク圧力につれて直線的に増大する。
【0080】
第1ライン(L1)は、A1という付加的投影面積を有しておりかつスプリング構造を有していないガセット部分を備えたクッションを、表している。図示のように、接触力は、約7cmH
2O よりもマスク圧力が小さい場合には、シールを形成するのに必要な最小の接触力を下回っている。ライン(L1)によって表わされるクッションは、快適性とシールとが両立している領域(Z)の外部となる。より高い圧力(例えば、約7cmH
2O よりも大きなマスク圧力)については、ガセット部分からの接触力が、シールを維持するのに十分である。
【0081】
第2ライン(L2)は、A1という付加的投影面積を有しかつスプリング構造を有しているガセット部分を備えた、本発明の一実施形態に基づくクッションを表している。スプリング構造の効果は、ガセット部分の効果では最小のシール力を提供するのに不十分な場合に、低いマスク圧力で、付加的な接触力を提供することである。その結果、クッションは、動作圧力範囲にわたってシールを維持する。さらに、ライン(L2)によって表されたクッションは、動作圧力の全体にわたって、快適性とシールとが両立している領域(Z)に位置している。
【0082】
第3のライン(L3)は、A1の2倍という付加的投影面積を有しておりかつスプリング構造を有していないガセット部分を備えたクッションを、表している。過剰の投影面積(L1とL2によって表されているクッションの2倍)のために、クッションの接触力が、4cmH
2O という低いマスク圧力においてシールを維持するのに十分なものとなる。しかしながら、約10cmH
2O よりも大きなマスク圧力に関しては、接触力は、快適な接触力の最大値を超えている。したがって、ライン(L3)によって表されるクッションは、快適性とシールとが両立している領域(Z)の外側となる。
【0083】
したがって、クッション内において、ガセット部分にスプリング構造を組み合わせることにより、製造者は、すべての動作圧力範囲内にわたって快適性とシールとが両立している領域(Z)の内部に位置しているようにして、クッションの接触力を調整することができる。同じ原理は、異なる圧力範囲に対しても適用することができる。
【0084】
さらに、領域(Z)のサイズは、患者の顔面の特定の領域に依存して、変わり得るものである(例えば、快適な接触力の最大値が変わることによって)。例えば、快適な接触力の最大値は、顔面の鼻のブリッジ領域においては、低減することとなる。その結果、クッションは、そのような特定部位に関しては、動作圧力の全体にわたって快適性とシールとが両立している領域(Z)の内部に位置するように、調節することができる。
【0085】
図44は、一定のマスク圧力において、患者の顔面に対して印加された合計力に関してのスプリング構造の効果を示している。F
maskは、国際公開第01/97893号パンフレット(Frater氏他)において定義されるように、患者の顔面上におけるマスクの合計力である。マスクがガセット部分を備えていることにより、クッションの2つの側面は、互いに移動することができる。ガセット部分の拡張または膨張が0mmである場合、クッションの2つの側面は、互いに当接する。ガセット部分の拡張が50mmである場合、クッションの2つの側面は、50mm間隔となる。クッションの2つの側面が互いに接近すればするほど、F
maskの値は、大きくなる。
【0086】
図44は、4個の異なるクッションを表わす4つのラインを示している。第1ライン(L1)は、スプリング構造を有しておらずかつA1という付加的投影面積を有したガセット部分を備えたクッションに関するものである。第2ライン(L2)は、スプリング構造を有しておりかつA1の62%という付加的投影面積を有したガセット部分を備えた本発明の一実施形態によるクッションに関するものである。第3ライン(L3)は、スプリング構造を有しておらずかつA1の85%という付加的投影面積を有したガセット部分を備えたクッションに関するものである。第4ライン(L4)は、スプリング構造を有しておらずかつA1の62%という付加的投影面積を有したガセット部分を備えたクッションに関するものである。
【0087】
図示されているように、ガセット部分を備えているクッションに対してのスプリング構造の追加は、ガセット膨張の全範囲にわたってF
maskを増大させる。その結果、クッションは、シールを維持するための十分なF
maskをもたらすに際し、従来技術の場合よりも、より小さな投影面積を有したガセット部分を備えたものとして、構成することができる。
【0088】
さらに、F
maskに対するスプリングの効果は、様々なマスク圧力に関して決定することができる。これにより、クッションは、患者の顔面の特定の領域に応じて調節することができる。
【0089】
『弾性カフ』
図45〜49は、上述のまたは後述の実施形態と組み合わせて使用し得るような、本発明の代替可能な実施形態を示している。
図45に示すように、マスクアセンブリ(100)は、マスクフレーム(112)と、クッション(114)と、ストラップ(116)と、を備えている。それらのすべては、上述した実施形態と同様にして組み立てられる。
【0090】
フレームは、加圧状態とされたエアまたは呼吸可能ガスの供給源と連通している入口(122)を備えている。好ましくは、入口は、旋回可能なエルボーに対して連結され、このエルボーは、エア供給チューブに対して連結される。
【0091】
上述したように、クッション(114)は、マスクフレーム(112)に設けられた顔面非接触部分(124)を備えている。クッション(114)は、さらに、顔面接触部分(126)と、顔面非接触部分(124)および顔面接触部分(126)の間に位置した中間部分(128)と、を備えている。上述したように、顔面接触部分(126)は、メンブラン(140)とリム(138)とを有してなる顔面接触シール形成部分(168)を備えている。
【0092】
中間部分(128)には、弾性的に膨張可能とし得る少なくとも1つのカフ(170)を設けることができる。カフ(170)は、単にフレキシブルであるのとは違って弾性的に引き伸ばし得るような壁を有している。ストラップ(116)が締め付けられるにつれて、メンブラン(140)とリム(138)とが、顔面に対して押し付けられる。この操作により、メンブラン(140)とリム(138)と顔面接触部分(126)とに対して力が印加され、顔面接触部分(126)は、顔面非接触部分(124)の方向に変位することとなる。顔面接触部分(126)および関連する力の変位によって、カフ(170)が外向きに膨張する。力は、ストラップの締め付け度合いと、カフ(170)の硬さ(力と変位との相関関係)と、カフ(170)の初期的膨張は、バルブ(175)を介して得ることができる。バルブ(175)は、マスクアセンブリ(100)の呼吸チャンバ(171)に対して加圧エアを供給するのと同じ供給源に対して接続することができる、あるいは、呼吸チャンバ(171)に対して加圧状態の呼吸可能ガスを供給するための供給源とは個別の供給源に対して接続することができる。弾性カフ(170)は、クッション(114)と一緒に単一部材として形成することができる。これに代えて、弾性カフ(170)は、クッション(114)とは個別部材として形成することができ、その後、例えば接着剤や機械的固定部材や類似物等を使用して、取り付けることができる。
【0093】
現在のマスクシステムにおいては、比較的大きな弾性率を有した材料から形成されて比較的硬い膨張可能なカフを使用している。これに対し、本発明の各実施形態によるカフ(170)は、比較的小さな硬さを有するように構成されている。これは、例えば、比較的小さな力であっても引き伸ばされ得る壁を有したカフ(170)を使用することによって、達成される。この特性を備えた壁は、典型的には、比較的小さな弾性係数を有した材料から形成される。例えば、弾性カフをなす材料の弾性係数は、ベンチ試験によって測定した場合、0.15MPa〜0.6MPaという範囲にある。弾性係数の好ましい値は、0.25MPa〜0.45MPaという範囲である。一例においては、弾性係数は、約0.35MPaである。比較すれば、上述のガセット部分は、0.40MPa〜0.80MPaという弾性係数を有している。好ましくは、約0.60MPaという弾性係数を有している。ガセットおよび弾性カフ(170)の双方に関する弾性係数は、上述した値とすることができる、あるいは、供給されたマスク圧力やヘッドギアの張力やストラップの変位に関連した適切な伸張特性をもたらし得るように修正することができる。
【0094】
上記各実施形態においては、例えば
図1に関しては、マスクシステムと、ガセット付きのクッションとは、多くの利点をもたらす。例えば、フレームが少々不安定であっても、クッションシールを維持することができ、また、シール維持のために顔面に向けてクッション圧力を印加するのに必要なヘッドギアストラップに関して必要な位置調整が少々ずれていたにしても、クッションシールを維持することができる。
図45に示すような弾性カフ(170)を有したクッションは、また、上記各実施形態と同様の結果を示す。しかしながら、弾性カフによる力は、流体供給源からの供給エアとは、独立的である。
【0095】
従来技術におけるマスクは、膨張可能な(verses elastic)カフや、気圧シールや、シールリング、を使用している。これら膨張可能なカフは、典型的には、PVCから形成されている。PVCは、比較的大きな弾性係数を有していて、比較的硬いものである。PVC材料に対するベンチ試験により、弾性係数が約5.2MPaであることがわかった。PVCは、ある程度のフレキシブルさを有してはいるものの、
図45に示されている弾性カフ(170)のようには、弾性的に膨張可能なものではない。比較的大きな弾性係数を有した膨張可能なカフの例は、Toffolon氏による米国特許第4,971,051号明細書に開示されているとともに、King Systems社により麻酔用マスクとして入手可能である。
【0096】
1)
図46は、ガセットを有した上記実施形態(ResMed社のActiva(登録商標)マスク)に関しての、力と位置ズレ(硬さ)との関係を示すグラフであり;2)
図47は、従来技術に関しての、力と位置ズレ(硬さ)との関係を示すグラフであり;3)
図48は、
図45に示す弾性カフに関しての、力と位置ズレ(硬さ)との関係を示すグラフである。記号‘d’で示された横軸は、
図45(上述)および
図47Aにおける寸法‘d’を表していることに、注意されたい。
図47Aは、ストラップ(310)および膨張可能カフ(320)を備えた従来技術によるマスクフレーム(300)を示している。
図46に示すように、Activa(登録商標)マスクの場合の平坦領域は、マスクシステムに対して、顔面に対するクッションシールによる比較的一定な押圧力を維持するに際しての、ストラップ張力とマスク不安定性とに関するより大きな許容範囲を、もたらす。
図46におけるポイントX−X間のラインを参照されたい。
【0097】
対照的に、
図47のグラフは、比較的大きな弾性係数を有した材料から形成されている従来技術における膨張可能カフが、力と位置ズレとの特性がより線形であって、より硬いことを、示している。したがって、顔面に対してのマスクまたはクッションのわずかの変化であっても、すなわち、寸法‘d’がわずかに変化しただけであっても、顔面に対して印加されるシール力は、比較的大きく変化することとなる。したがって、この従来技術によるマスクシステムは、位置ズレが大きい場合には(不安定性のために)、良好なシールを維持することができない。ストラップの張力は、快適性に関する許容可能レベルを維持するのに批判的である。
【0098】
したがって、この実施形態の1つの見地は、伸縮性のあるバルーンのように、弾力係数が比較的小さい材料から弾性カフを形成することである。弾性カフ材料は、この用途において経験する標準的なストラップ張力の下で、伸張能力を有している。
【0099】
マスクが適合していない状態では、膨張可能なカフは、必ずしも圧力を印加する必要はない。適正に適合した状態では、カフは、ストラップが締め付けられるほどに、圧縮される。弾性カフ材料の小さな弾性係数が与えられたときには、カフは、
図45において仮想線で示すように、カフが引き伸ばされるにつれて、伸張し得るようにまた膨らみ得るように膨れ得るようにまた膨出し得るように構成されている。
【0100】
クッションシールに対して印加される力は、カフ壁の硬さを調節することにより、微調整することができる。例えば、弾性係数を増減させることにより、微調整することができる。あるいは、この例においてはバルブを介することにより弾性カフ(170)を事前に加圧しておくことにより、クッションが位置ズレしたりあるいは適合したりあるいはストラップの張力が増大されたときには、クッションによるシール力を増大させる。
【0101】
図48に示すように、弾性カフ(170)は、
図46に示されている平坦ラインと同様の平坦ラインを生成し得るような小さな弾性係数を有した材料から形成される。しかしながら、このグラフは、
図46と比較すると、わずかに傾斜している。それでもなお、
図47のグラフよりは、平坦性が大きい。理想は、
図46と
図48の中間の平坦角度を有していることである。
【0102】
より大きな弾性係数を有した材料から形成されたような、より硬いカフは、
図48に示されているグラフと比較して、より右下がりの傾斜が大きくなるであろう。従来技術における膨張可能なカフの場合には、比較的非常に高い硬さが、ごくわずかの位置ズレに対しても、クッションによるシール力の非常に大きな変化をもたらす。このことは、顔面のシールの損失となり得る。わずかの位置ズレをもたらす原因には、例えば、ストラップの張力を変化させてしまうような夜行性の動作や、ヒトの顔面の流体の減少や、下顎の弛緩、等がある。
【0103】
さらなる実施形態においては、弾性カフ(170)は、任意の圧縮可能流体によって、あるいは、任意の非圧縮性流体によって、あるいは、それらのある種の組合せによって、充填することができる。流体は、例えば、エアや、流動性の液体や、流動性または半流動性のゲル、とすることができる。エアの場合には、張力状態のカフ壁は、カフ内部のエアを圧縮し、クッションシールを顔面に向けて外へと向かせる。気体であることのために、エアにはいくらかの圧縮性がある。液体で充填されている場合には、クッションシール上のすべての力は、圧縮性ガスの影響なしで、カフ壁の張力だけによって作用する。
【0104】
クッションの振舞いの変化は、弾性係数や、弾性カフの幾何形状や、材料選択(例えば、弾性係数の選択)や、初期的流体重量(取付前の流体重量)、のいずれによっても、また、それらの組合せによっても、達成することができる。
【0105】
流体の初期的重量は、バルブによって、手動であるいは自動的に、調節することができる(カフ圧力および/またはCPAP治療圧力に関連する外部と内部との間の制御も含めて)。
図45においては、弾性カフが、クッションアセンブリから離間していることがわかる。すなわち、クッションのうちの、顔面に接触してシールをもたらす部分から離間していることがわかる。したがって、変位可能量が最小とされ、弾性的でも弾力的でもない、単なるフレキシブルな気圧式シールがもたらされる。
【0106】
図45においては、膨張可能な/収縮性の弾性カフ(170)は、クッションシールに組み込まれる。
【0107】
他の実施形態においては、弾性カフは、手動ポンプ(180)を使用して加圧することができる。これにより、弾性カフ(170)内の流体の初期的重量を微調整することができる。例えば、
図49を参照されたい。
【0108】
他の実施形態においては、供給された処理圧力に対して同期させ得るようにしておよび/またはリークに応答させ得るようにしておよび/または不快さの検出に応答させ得るようにして、カフの流体重量を自動的に制御することができる。
【0109】
チャンバあるいは弾性カフ(170)の形成に際しては、任意の弾性材料を使用することができる。ラテックス製バルーンの使用は、使用可能な材料の1つである。また、小さなデュロメーター硬さおよび/または小さな弾性係数を有したシリコーンゴムを、使用することもできる。あるいは、それらの組合せを使用することもできる。カフは、構造的一体性を提供し得るよう、剛直なまたは半剛直な細部を有することができる。
【0110】
カフ(170)は、周縁全体を囲む必要はない。例えば、鼻のブリッジの付近には、設けなくても良い。これにより、受領されるクッションシール力を修正することができる。本明細書において開示した弾性カフ(170)は、従来技術におけるマスクシステム内に組み込むことができあるいは従来技術によるマスクシステムと一緒に使用することができ、これにより、新規な改良された製品を形成することができる。例えば、Respironics 社は、“Profile Lite”(登録商標)ゲルクッションを製造した。このクッションは、弾性カフ(170)を組み込むことができる。この場合、弾性カフは、一体的に形成することも、また、フレームとシールインターフェースとの間に取り付けることも、できる。弾性カフは、例えばエアやゲルやあるいはこれらの任意の組合せといったような圧縮性のまたは非圧縮性の流体によって充填することができる。
【0111】
他の例においては、弾性カフ(170)は、Toffolon氏による米国特許第4,971,051号明細書に開示されている見地と組み合わせることができる。弾性カフは、クッションアセンブリの一部として組み込むことができる。これにより、クッションシール内に力をもたらし得るとともに、マスクフレームに対してのクッションシールの移動/変位に対して独立的なものとすることができる。
【0112】
鼻用マスクが、好ましい実施形態として例示されているけれども、本発明の原理は、フルフェイス型のマスクや口マスクに対しても、適用することができる。さらに、本発明の原理は、鼻孔の近くをシールする非常に狭いシール領域を有した鼻用マスクに対しても、適用することができる。
【0113】
『ブーメラン』シール
図50〜
図56は、最初の実施形態と一緒に使用可能であるような本発明の他の実施形態を示している。
図50は、フルフェイス型の呼吸用マスク(10)を示す斜視図であって、着用者の頭に固定した状態で図示されている。マスク(10)は、クッション(14)を支持するフレーム(12)を備えている。マスク(10)は、ヘッドギアによって、着用者の鼻と口との領域上に固定されている。ヘッドギアは、着用者の頭回りにおいて調節可能とされた固定用ストラップ(16)を備えている。
【0114】
フレーム(12)は、好ましくは、サドルの態様とされているとともに、着用者の鼻上において適合し得るようあるいは少なくとも着用者の鼻孔上において適合し得るよう、全体的に三角形形状または台形形状とされている。フレーム(12)は、口の両サイドから顎に向けて下向きに延在している。フレーム(12)は、ポート(18)を備えている。このポート(18)は、旋回可能エルボーアセンブリ(22)を介して、呼吸可能ガスの供給源(20)に対して連結されている。ガス供給源(20)は、加圧ガスの供給源とすることができ、着用者の鼻および口を受領するマスク(10)内のチャンバに対して呼吸可能ガスを供給する。
【0115】
フレーム(12)は、さらに、ベント穴(24)を備えている。このベント穴(24)を通すことによって、吐出ガスが排出されるようになっている。ヘッドギアのストラップ(16)を固定するために、ファスナー(26)が設けられている。このファスナー(26)は、ヘッドギアの選択的な調節を可能としている。この場合、ファスナー(26)は、フレーム(12)に形成されたスロットとされ、このスロット内に、ストラップ(16)を適用するようになっている。当然のことながら、任意の適切なファスナーを使用することができる。所望によっては、額支持部材も併用することができる。額支持部材とは、額に向けて上向きに、フレームから延出される支持部材である。
【0116】
フレーム(12)は、
図51において、クッション(14)と合わせて示されている。呼吸用マスクの当業者であれば理解されるように、クッション(14)は、様々な手法によって、フレーム(12)上のフランジ(28)に対して固定することができる。クッション(14)は、フランジ(28)と一体的に形成することができる。あるいは、クッション(14)は、フランジ(28)に対して取り付けることができる。あるいは、クッション(14)は、フランジ(28)に対して着脱可能にクリップ止めすることができる。他の取付手法としては、ストラップ止めや、摩擦係合や、干渉係合や、タング・グルーブ係合、を使用することができる。
【0117】
図52においては、クッション(14)は、フレーム(12)から取り外されており、
図51を背面側から見た図となっており、クッション(14)の顔面接触部分を図示している。クッション(14)は、フレーム(12)に対する連結のためのフランジ(30)と;フレーム(12)の内部チャンバに対する開口(34)を規定する内周リム(32)と;フランジ(30)と内周リム(32)との間に配置されたシール部分(36)と;を備えている。
【0118】
好ましくは、クッション(14)は、例えばシリコーンといったようなソフトでありかつフレキシブルな皮膚適合性材料から形成される。適切な1つの材料は、Dow Corning 社によって製造されたシリコンエラストマーであるSILASTIC(登録商標)である。クッションは、例えば、当該技術分野において公知なように、1回の射出成形プロセスで形成することができる。クッション(14)をなす様々な部分は、様々な厚さで、あるいは様々な材料からさえも、形成することができる。これにより、例えば、硬さと弾性とに影響を及ぼすことができる。また、クッション(14)を、全体的にあるいは部分的に、発泡体材料またはゲル材料から形成することも、想定される。クッション(14)は、上記のプロセスおよび材料の組合せに基づいて形成することができる。
【0119】
内周リム(32)およびシール部分(36)は、
図56において、最も明瞭に示されている。
図56は、シール部分(36)がゆっくりと湾曲した形状を有しており、これにより、内周リム(32)を超えて延在しているリップを形成していることを示している。好ましくは、シール部分(36)は、内周リム(32)と比較して、よりフレキシブルなものとしてあるいはより薄いものとして形成される。これにより、着用者の顔面の輪郭に対して、より容易に適合することができる。シール部分(36)は、ソフトなシールを提供する。このソフトなシールは、着用者の顔面の形状における少しの変化を許容することができるとともに、有効なシールを維持しつつ、着用者に対してのマスクの少しの移動を可能とすることができる。マスク(10)に対して供給された固定力に応じて、クッション(14)は、内周リム(32)に対して当接するようになるまで、変形することができる。フランジ(30)は、フルフェイス型のクッション(14)の使用時における通常的な固定圧力に耐え得るよう十分な剛直さを有しており、その形状を維持する傾向があり、かつ、変形に対する抵抗性を有している。これにより、フランジ(30)は、支持構造として、機能する。
【0120】
ここに示す実施形態は、単一の内周リム(32)と単一のシール部分(36)とを備えている。これにより、二重壁構成を形成している。クッション(14)は、また、単一壁構成や、三重壁構成や、さらなる多重壁構成、とすることができる。さらに、内周リム(32)およびシール部分(36)は、互いに異なる材料から形成することができる。
【0121】
所望であれば、シール部分(36)は、顔面の湾曲度合いに追従するようにしてゆっくりと湾曲した拡大部分であるガセット部分を備えることができる。
【0122】
シール部分(36)は、着用者の顔面と接触し得るよう構成されているとともに、なおかつ、着用者の顔面に対してシールを形成し得るよう構成されている。これにより、フレーム(12)の内部チャンバに供給されたガスは、マスク(10)の外部へとリークすることはない。シール部分(36)は、鼻領域(38)を備えている。この鼻領域(38)は、鼻領域にわたって広がっており、鼻のブリッジを横切って着用者の鼻孔上に延在しており、
図52〜
図54に示すように、全体的に逆V字形状とされている。鼻領域(38)の両サイドににおいては、側面領域(40)が、着用者の口の両サイドの外側まで下向きに延出されており、全体的に逆V字形状を継続している。顎領域(42)が、側面領域(40)どうしの間にわたって延在している。これについては、詳細に後述する。
【0123】
平面視または底面視においては、クッション(14)の形状は、
図55に示すように、鼻端部および顎端部において1つの中央凹部と、頬部分において1つの凸部と、を備えている。これにより、着用者の顔面に適合することができる。すなわち、着用者の顔面に対して垂直な平面内においては、クッション(14)は、鼻および顎が突出しているというヒトの顔面の輪郭に追従し得るように、湾曲している。これは、呼吸用マスクの分野においては、公知である。
【0124】
図53および
図54に示すように、クッション(14)の顎領域(42)は、正面視および背面視において、従来技術による呼吸用マスクにはないような形状を有している。上述したように、従来技術によるマスクにおいては、クッションの顎領域は、着用者の顔面と全体的に平行な平面内において、直線状であるかあるいはU字形状である。従来技術における着想は、口の周辺において顎領域に対して緊密に適合させることである。しかしながら、本発明のこの実施形態においては、顎領域(42)は、そうではなく、顎の骨の輪郭に対して緊密に適合し得るような形状とされている。この領域における特徴的骨格は、オトガイ隆起と顎上の下歯との間にあり、眉間の皺に似たような、下向きに湾曲したかつ外向き湾曲した骨ラインを形成している。したがって、クッション(14)は、ブーメランあるいは逆U字形状のような形状とされた顎領域(42)を備えている。顎領域(42)は、下唇とオトガイ隆起との間に適合し得るように構成されている。
図54に示すように、シール形状は、W字形状を示すことができる。逆U字形状またはW形状をなすすべての部分は、着用者に適合し得るように形状を調節することができる。例えば、シール部分は、延展性を有したワイヤから形成することができる。これにより、ワイヤを曲げることによって、そのような調節可能性をもたらすことができ、着用者の顔面の輪郭に対してシール部分を適合させることができる。このような上向きに湾曲した形状すなわちアーチ形状は、
図51〜
図54に示されている。背面視においては、アーチ形状を有することができる。一方、正面視および/または側面視においては、フルフェイス型マスクの現在の形状を維持することができる。
【0125】
この形状により、側面領域(40)は、下顎に向けてさらに下方へと延出することができる。所望であれば、クッション(14)は、より安定的な支持をもたらし得るよう、下顎にまで延出したようなサイズとことができる。これによって、クッション(14)は、顔面のうちの、形状が変化しにくいような骨領域上に適合し、下唇や頬のような、よりソフトでありかつ脂肪的な領域と比較して、シールを向上させる。
【0126】
治療時に、圧力が着用者に対して印加されたときには、フレキシブルであるような唇は、わずかに強制的に開口させられる。よって、下唇は、外向きに移動しかつわずかに下向きに移動する。下唇がこのように移動したときには、アーチ形状クッション(14)に対しての緊密な接触が形成され、シール性能がさらに向上する。また、所望によっては、口を通してのリークを低減することができる。
【0127】
クッション(14)およびマスク(10)を、CPAPあるいは呼吸支援治療に関して説明したけれども、本発明が、ガスおよび/または霧化液体を気道入口に対して供給するような任意の用途に関して適用可能であることは、理解されるであろう。そのような用途には、噴霧器や、ガスマスクや、麻酔機械、がある。加えて、マスクは、口のみをカバーするような口だけのマスクに対しても、適用することができる。また、クッションは、顎を超えてさらに下方へと延出させることができ、これにより、クッションをさらに安定性させることができる。
【0128】
以上により、本発明の様々な見地が、完全にかつ効果的に達成されることは、理解されるであろう。上記のいくつかの特定の実施形態は、本発明のフレーム的原理および機能的原理を例示するためのものであって、本発明を何ら制限することを意図したものではない。それとは逆に、本発明においては、本発明の精神および範囲を逸脱していないすべての修正や変形や代替をも包含することが意図されている。