特許第5864103号(P5864103)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5864103増大したレベルの有益な脂肪酸を含む肉製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864103
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】増大したレベルの有益な脂肪酸を含む肉製品
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/00 20160101AFI20160204BHJP
   A23L 13/40 20160101ALI20160204BHJP
   A23L 13/60 20160101ALI20160204BHJP
   A23L 13/70 20160101ALI20160204BHJP
【FI】
   A23L1/31 Z
   A23L1/314
   A23L1/317 A
   A23L1/317 Z
   A23L1/318
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2010-536073(P2010-536073)
(86)(22)【出願日】2008年11月21日
(65)【公表番号】特表2011-505138(P2011-505138A)
(43)【公表日】2011年2月24日
(86)【国際出願番号】US2008084291
(87)【国際公開番号】WO2009073397
(87)【国際公開日】20090611
【審査請求日】2011年11月18日
【審判番号】不服2013-23815(P2013-23815/J1)
【審判請求日】2013年12月4日
(31)【優先権主張番号】61/004,758
(32)【優先日】2007年11月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100126789
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 裕子
(72)【発明者】
【氏名】ニック・ニッシング
(72)【発明者】
【氏名】リチャード・エス・ウィルクス
【合議体】
【審判長】 紀本 孝
【審判官】 窪田 治彦
【審判官】 千壽 哲郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−242895(JP,A)
【文献】 特開平8−205832(JP,A)
【文献】 特開2006−305569(JP,A)
【文献】 特表2002−517255(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/021761(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L1/31-1/333
C11B7/00
C12N15/00
A23D7/00-9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスジェニック・ダイズからの内生的な油を含む肉製品であって、
該トランスジェニック・ダイズからの内生的な油は、ステアリドン酸(SDA)、アルファ−リノレン酸(ALA)およびガンマ−リノレン酸(GLA)を含み、
肉製品が、アラキドン酸(AA)、ステアリドン酸(SDA)、アルファ−リノレン酸(ALA)およびガンマ−リノレン酸(GLA)を含み、ここで、
該肉製品中に含まれるSDA/AAの濃度比は少なくとも0.1であり、SDA/ALAの濃度比は少なくとも1.0であり、
肉製品は、該肉製品100グラム当たり少なくとも0.1グラムのSDAを含み、および
肉製品は、魚油および魚油に由来する成分のいずれも含まない、
肉製品
【請求項2】
該SDA/AAの濃度比が、少なくとも0.3である、請求項1記載の肉製品
【請求項3】
該SDA/AAの濃度比が、少なくとも1.0である、請求項1記載の肉製品
【請求項4】
少なくとも2.0のSDA/GLAの濃度比を含む、請求項1記載の肉製品
【請求項5】
少なくとも2.5のSDA/GLAの濃度比を含む、請求項4記載の肉製品
【請求項6】
6−シス,9−シス,12−シス,15−トランス−オクタデカテトラエン酸をさらに含む、請求項1記載の肉製品
【請求項7】
9−シス,12−シス,15−トランス−アルファリノレン酸をさらに含む、請求項1記載の肉製品
【請求項8】
6,9−オクタデカジエン酸をさらに含む、請求項1記載の肉製品
【請求項9】
トコフェロールをさらに含む、請求項1記載の肉製品
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、その書類全体を参照することによって本明細書に取り込む、米国仮特許出願番号61/004,758(2007年11月29日出願)から優先権を主張する。
【0002】
本発明の形態は、ステアリドン酸(SDA)のような有益な脂肪酸の取込みを介して肉製品における望ましい特徴を高めることに関する。種々の形態は、肉製品および関連する食品の製造方法および加工方法に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明の形態は、植物由来のステアリドン酸(「SDA」)の利用を介した食材の改良方法に指向される。より詳細には、本発明者らは、栄養品質および味のよさを改善する肉製品に植物由来のSDAを利用する技術および方法を提供する。
【0004】
過去の食餌療法においては、脂肪は価値のないまたは有害な食餌成分であるとさえ考えられてきた。多くの研究により、食餌脂肪と肥満症およびアテローム性動脈硬化症のような他の病理との間に生理学的な連鎖が作成された。低栄養価のこの認識により、脂肪の消費は医療施設の多くによって反対されている。
【0005】
しかしながら、最近の研究により、その比較的単純な生物学的構造にもかかわらず、幾つかの方法で身体機能を改善するようであり、事実、ある種の生理学的プロセスに必須となり得る幾つかの型の脂肪が存在することが決定されている。脂肪分子のより広いクラスには、脂肪酸、イソプレノール、ステロイド、他の脂質および油溶性ビタミンが含まれる。これらの中には脂肪酸が存在する。脂肪酸は、その炭化水素構造に種々の数の不飽和部位を含むかまたは含まない、その「骨格」に2ないし26の炭素を有するカルボン酸である。それは一般的に約4.5の解離定数(pKa)を有し、このことは正常な身体条件(7.4の生理pH)においては大部分が解離した形態で存在することを示している。
【0006】
脂肪、特に脂肪酸についての栄養水準における改善をもって、食品産業における多くは食品製造のための新たな焦点として脂肪酸および脂質技術に焦点を合わせ始めた。この焦点は、オメガ−3脂肪酸の製造およびその食餌への取込みに特に強く行われている。オメガ−3脂肪酸は、3番目の炭素原子で始まる第1の二重結合(「不飽和」)を有する長鎖のポリ不飽和脂肪酸(鎖長で18-22炭素原子)である。それらの分子はその炭化水素鎖中に2またはそれを超える二重結合「不飽和」を有するため、「ポリ不飽和」と呼ばれている。それらの炭素骨格は少なくとも18の炭素原子を有するため、それらは「長鎖」脂肪酸と命名されている。ステアリドン酸「SDA」に加えて、脂肪酸のオメガ−3ファミリーには、アルファ−リノレン酸(「ALA」)、エイコサペンタエン酸(「EPA」)およびドコサヘキサエン酸(「DHA」)が含まれる。ALAは「基本的」オメガ−3脂肪酸であり、それからEPAおよびDHAがSDAの生成を含む一連の酵素反応を介して身体中で作られる。大部分の栄養学者は、最も生理学的に重要なオメガ−3脂肪酸としてDHAおよびEPAを挙げる。ALAからのこの合成プロセスは「伸長」(新たな炭素原子を取り込むことによって分子が長くなる)および「脱飽和」(新たな二重結合が生成する)と各々呼ばれる。天然においては、ALAはある種の植物種子(例えば、アマ)に主に見出され、一方でEPAおよびDHAは寒流捕食魚(例えば、マグロ、マス、サーディンおよびサケ)の組織中、およびそれらの餌となる海藻または微生物に大部分が生じる。
【0007】
健康的な食餌における重要な成分として必須の脂肪および油を開発する食品企業の動きに沿って、政府は食餌におけるPUFAの適用を後押しする規則を発展させ始めている。これらの要望を供給することの困難性は、成長する市場の需要と協調して、オメガ-3の大きく十分な供給を開発することが不可能となっている。すでに言及したように、オメガ-3脂肪酸は最も高い価値があるとみなされており、EPAおよびDHAも時間に関して非常に迅速に化学的に分解し、市場アクセスを限定する。重要なことには、EPAおよびDHA酸化の迅速なプロセスの間にこれらの長鎖脂肪酸は悪臭または単純に不満足な感覚特性を発し、それらは商業上の受入れ見通しから多くの食材にそれらを入れることを困難もしくは不可能にしている。また、オメガ-3脂肪酸に対する増大した需要により、すでに涸渇した地球上の魚ストックはオメガ-3に対する将来のヒトの栄養要求におけるいずれの重大な成長にも合致し得ないことに気付いてきた。供給、安定性および入手源に対するこれらの制限は、コストを大幅に増大し、それに対応して食餌療法オメガ-3の入手可能性を制限する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、商業上入手可能な方法で食品処方にEPAおよびDHAまたは重要な前駆体を受け渡す消費者が許容し得る手段を提供する必要性が存在する。本発明は、オメガ-3脂肪酸を供給してきた魚または微生物のこの代替法を提供し、トランスジェニック植物由来の、中性の味、コスト的に有利な生産および豊富な供給を提供する供給源として比較的に化学的に安定なオメガ-3脂肪酸、SDAをそのように利用する。SDAはα-リノール酸(「ALA」)の中間代謝産物であり、一旦身体中に入ると容易にEPAに代謝される。需要を供給し得るであろう植物群に具体的に含まれる植物種は:ダイズ、トウモロコシおよびキャノーラであるが、必要な場合は他の植物も含まれ得る。一旦生成したら、本発明のSDAを用いて、非常に多くの種々の食品の健康特徴を改善し得る。この生成は必要に応じて大規模化することもでき、野生の魚ストックを収穫することおよび水産養殖作業用の必須脂肪酸成分を提供することの必要の両方を減少し、各々、世界中の水産業に対する圧力を和らげる。
【0009】
理論によって拘束されることを望まないが、合理的な範囲の濃度または消費内で食物組成物に処方化した場合に、アルファ−リノレン酸を含む食品組成物がEPAに効果的に変換されないことが考えられる。生理学的に適当な量のEPAまたはDHAを得る典型的な手段には、不快な臭いおよび低い安定性のマイナスの寄与を有する魚油または藻油の添加が含まれる。身体中で生理学的に有意な濃度のEPAおよびDHAにつながるALAの濃度を含めるためには、過剰量のALAが必要であり、これは食品を処方化することにおける困難につながる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
驚くべきことに、本発明者らは、生理学的に有意である食品に必要とされるトランスジェニック植物起源からのSDAの濃度が、典型的な食品について許容し得る十分な範囲内にあることを見出した。魚油のようなDHAを含有する油の直接的な添加のような同様の利点を得る他の手段と比較して高められた風味および安定というさらなる利点を見出した。典型的なオメガ3脂肪酸とは異なり、SDAは健康および安定な食物組成物の両方のための唯一好適である。
【0011】
肉製品へのオメガ3を含む油を取り込むことは、例えば米国特許第5,116,629号のように当該技術分野で記載されている。しかしながら、現存する方法は、貯蔵寿命および香味の問題に通じ得る非常に不安定なEPAまたはDHAの添加を含み;あるいは、消費者の健康に対する実質的な価値に関して十分に効率よく有益な形態に変換されることはないALAのような典型的なオメガ3供給源の取込みを含む。栄養学的な研究は、アルファ−リノレン酸と比較して、SDAはイン・ビボ(in vivo)においてEPAに約5倍多く効率よく変換されることを示した。
【0012】
肉および肉製品は、組織を得た種、分析される組織のタイプ、および動物に与えられた飼料に依存して種々の脂肪酸組成を有し得る。しかしながら、肉および肉製品は、通常、過剰な飽和脂肪酸およびSDA、EPAおよびDPAのような有益な脂肪酸の欠乏によって特徴付けられる。したがって、肉製品における飽和脂肪酸に対する有益な脂肪酸の相対比を増大することが好ましい。
【0013】
飼料組成物を変化して動物組織の脂肪酸プロフィールを改善する方法は、例えば出典明示して本明細書の一部とみなす国際公開第06031132(A1)号、米国特許出願公開第2007/04678(A1)号、米国特許出願公開第2004/001876(A1)号および米国特許第6716460号のように当該技術分野において知られている。しかしながら、これらの鍵となる脂肪酸を取り込む方法は、不十分であり、最大濃度は種の基本的な生理学によって著しく制限され−例えば、有益な脂肪酸のパーセントは動物の天然脂肪含量によって制限される。さらに、飼料の脂肪酸プロフィールは、動物内の正常な生理学的プロセスによって著しく変化し、これはさらに得られる食品の脂肪酸プロフィールを特別につくる能力を制限する。残念ながら、望ましい脂肪酸のかなりの部分は家畜動物の組織に取り込まれない。
【0014】
今日、多くの肉製品は種々の化合物で修飾されてその香味およびテクスチャが増大されている。この修飾は、肉をコーティングする(例えば、マリナード)、肉を浸出する(すなわち、「ポンプド」肉)または機械的取込み(例えば、ソーセージ、ランチョンミート)あるいは有益な脂肪酸の単純な注入のような当該技術分野において知られている種々の形態をとり得る。多くの場合、これらの化合物は、肉の天然の脂肪含量を低下させることによって不都合に影響される肉製品の特性を改善することを意図している。例えば、肉を軟らかくする加工方法および/または添加物がしばしば用いられて、低脂肪豚肉のテクスチャが改善されている。一般的により高い脂肪製品ほど、より良好な味覚およびテクスチャを有するが、一般的に、消費者にはあまり健康的でないと知覚されている。
【0015】
ヒトが消費するために肉製品の特徴を改変する膨大な方法が当該技術分野に存在する。これらの方法の多くは、香味改善剤、テクスチャ改善剤、軟化剤または水を含む種々の添加物の注入を介して肉の化学的含有量を改変することに基づいている。加工技術を介して肉の特徴を修飾するさらなるアプローチには、機械的操作(例えば、肉を軟らかくする)または植物タンパク質、乳製品ホエータンパク質または他のタンパク質源のような別のタンパク質源の添加が含まれ得る。
【0016】
肉製品の特徴を改変する方法を記載している参考文献の例には、各々出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第6,955,830号、第6,869,631号、第6,763,760号、第6,632,463号、第6,405,646号、第6,386,099号、第6,319,527号、第6,165,528号、第5,071,666号、第5,881,640号、第5,307,737号、第5,053,237号、第3,556,809号、第5,460,842および米国特許第5,116,629号が含まれる。
【0017】
ソーセージ、薄切り冷肉とチーズの盛合わせ、挽肉製品、復元肉製品および他の加工肉の場合においては、添加物も用いて製品の品質を改変し得る。これらの添加物を混合の時点で添加して、少なくともある程度の均質性を有する最終肉製品を作ることができる。このタイプの製品では、種々の品質、供給源および脂質含量のものを含む種々の肉を混合し得る。
【0018】
幾つかの肉製品は加工して肉製品の動物脂肪含有量を低減している。例えば、各々出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第6,099,891号、第5,468,510号、第5,382,444号、第5,688,549号、第5,460,842号、第5,116,629号およびPCT出願の国際公開第05034652(A1)号、国際公開第05094617(A1)号を参照されたい。肉製品の脂肪含量を改善するいくつかの方法には、製品を加熱して固相動物脂肪を除去することが含まれる。例えば、米国特許第5,116,633号は、不飽和油中で肉製品を加熱して天然脂肪を抽出し、不飽和脂肪およびコレステロールの含量を増加する方法が記載されている。もう1の例である米国特許第5,460,842号には、冷却ニードルを用いて脂肪を抜き取り、脂肪を除去するのに有用な生肉の「霜降り脂肪」を注入することによって肉の脂肪含量を改変する飽和脂肪と不飽和脂肪とを交換するのに有用な方法が記載されている。
【0019】
加工における動物肉の修飾には、ウシ、ブタ、ニワトリ、魚類または他の供給源からの食用部分組織が含まれ得る。1の詳細な例は、豚肉産業において見出し得る。数年間にわたり、豚肉産業は表現型育種の方法を介して最終製品において脂肪含量を減少することを強調している。より最近では、マーカー支援選抜および最新育種の他の方法を用いて、改変した肉品質特徴を有する動物が作られている。育種を介したブタ組織の脂肪含量を低下する長期の効果は、消費者にとってより健康的なより低脂肪の肉製品であると考えられる。しかしながら、一般的により低脂肪の製品は香味およびテクスチャを犠牲にするマイナスの影響を生じる。より低い飽和脂肪の健康の利益およびより高い脂肪含量と関係する改善された香味およびテクスチャの両方を同一の製品に有することが望ましい。
【0020】
肉の品質と関係するマーカー支援選抜およびマーカーの方法は、当該技術分野で知られている。例には以下のものが含まれる:各々出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第6,803,190号、米国特許出願公開第20040261138(A1)号、米国特許出願公開第20060288433(A1)号、米国特許出願公開第20040018511(A1)号、米国特許第6,569,629号、第6,803,190号、第6,919,177号、第6,458,531号、第6,492,142号、第6,919,177号、第7,074,562号および米国特許出願公開第20030186299(A1)。遺伝子マーカーを用いて、望ましい表現型に基づいた育種または屠殺用の動物をより効率的に選抜し得る。特に、食用部分脂肪、肉の品質、肉の柔らかさおよび肉の色のような生きている動物において測定することが困難である特性について選抜する場合には、マーカー支援選抜が伝統的な育種方法よりもより効率的である。
【0021】
本発明の形態は、増大したレベルの有益な脂肪酸を有する肉製品を包含する。好ましい形態は、ステアリドン酸(18:4ω3)を含む。別の本発明の形態は、これらの有益な脂肪酸の取込みを介して肉製品の味のよさおよび/または末端消費者の健康を改善し得る。本発明の詳細な形態において、トランスジェニック・ダイズからのステアリドン酸を含む油を肉製品に取り込ませる。
【0022】
十分な量のSDAに富むダイズを生育させて、かなりのSDA成分を含むダイズ油の受け渡しを許容する。この「SDA油」は伝統的なオメガ3代替物に対して、初期のさっぱりした香味、より長い貯蔵寿命安定性および高い栄養品質を提供する。本発明の形態は、生理学上重要なポリ不飽和脂肪酸の改善された特徴および改善された組成を有する肉製品を含み得る。
【0023】
本発明の形態によれば、SDA油を肉製品に取り込む方法を開示する。取込みのこれらの方法には、注入、物理的混合、表面接触または当該技術分野で知られているいずれか他の方法が含まれ得る。
【0024】
さらに、SDA油を含み、飽和脂肪酸が比較的少ない肉製品を製造する方法を開示する。肉製品を製造するこれらの方法は、例えば、マーカー支援選抜を用いてブタの食用部分間脂肪を減少するような、育種技術を取り入れて肉製品の組成を改変する。これらの方法は、さらに、SDA油を肉製品に添加して有益な脂質含量を増大し、それによって、得られる肉製品の健康プロフィールを改善しつつ製品の味覚および味のよさを改善することを含あむ。
【0025】
肉製品を製造する方法には、SDAを添加して肉の有益な脂肪酸含量を増大するとともに、機械的または化学的手段を介して家畜動物から組織を収穫した後に飽和脂肪含量を低下することも含み得る。
【0026】
肉製品を製造する方法は、低温で肉製品を加工することおよび/または高温加工工程の後にSDAを添加することも含み得る。
【0027】
本発明のいくつかの別の形態において、本明細書に記載する組成物および/または方法に係る肉製品は、例えば、ピザ、予め包装した肉、スープ、直ぐに食べられる肉、または他の食品のような実質的な二次成分を有する食品に取り込まれる。
【0028】
本発明の他の特徴および利点は、添付する図面に参照して、本発明の好ましい形態の以下の詳細な説明で明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
以下の定義は、本発明の完全な範囲を当業者がより容易に理解および認識することを支援するために提供する。それにもかかわらず、以下に提供する定義に示すように、提供する定義はそのように指摘しない限りは排他的であることを意図するものではない。むしろ、本発明の種々の説明形態に当業者を集中させるよう提供する好ましい定義である。
【0030】
本明細書中で用いる用語「肉の色」とは、屠殺した動物から得た肉の色の測定値をいう。
【0031】
本明細書中で用いる用語「肉の品質」とは、屠殺した動物からの肉の味のよさおよび/または摂食品質(例えば、霜降り、テクスチャおよび柔らかさ)の測定値をいう。例えば、肉の品質を定量化することは、限定するものではないが:肉汁流出量(%);パージ損失(%);腰肉またはハムのpH;腰肉中の水分含量(%);NPPC固さ品質スコア(1−5);Werner−Bratzler剪断力(kg);食用部分脂肪含量(%)および調理損失(%)を含む表現型を測定することによって行い得る。
【0032】
本明細書中で用いる用語「肉の組成」とは、限定するものではないが:超音波を用いて屠体でまたは生きている動物で測定した平均背脂肪厚(例えば、インチまたはセンチメートルの);超音波を用いて屠体でまたは生きている動物で測定した腰部食用部分(目)面積(例えば、平方インチ);産業標準装置(例えば、Fat-O-Meter)を用いた屠殺後にオンラインで測定した脂肪の厚み、腰肉の厚み(ミリメートル)および屠体重量(ポンド);背脂肪厚、腰肉食用部分の厚みまたは面積、ならびに体重または屠体重量から算出した予想赤身パーセント(%);屠体長(例えばインチの);National Pork Producers Council(NPPC)霜降り品質スコア(すなわち、1-5);腰肉の食用部分脂肪含量(%);屠体重量のパーセントとしてのプライマルカット(腰肉、肩肉、腹肉ほか);生体重のパーセントとしての屠体収量(%)を含む多くの表現型をいう。
【0033】
本明細書中で用いる用語「肉製品」とは、ウシ、ブタおよび家禽のような家畜の肉を含む食品をいう。
【0034】
本明細書中で用いる用語「遺伝子マーカー」とは、単一ヌクレオチド多型(SNP)、マイクロサテライト、RFLPマーカー、またはいずれか他の同定可能な遺伝子マーカーのようなユニークな特徴によって同定し得るDNA配列をいう。
【0035】
本明細書中で用いる用語「混合肉製品」とは、機械的混合のプロセスを介して複数の食用部分を同一の肉製品に取り入れる製品をいう。かかる製品には、例えば、ソーセージ、ホットドッグ、ハンバーガー、加工肉、ボローニャソーセージ、サラミ、復元肉製品などが含まれる。混合肉製品は、1種類の動物からの肉のみまたは1種類を超える動物からの肉を含み得る。混合肉製品は、例えばダイズタンパク質のような非−肉供給源からのタンパク質も含み得る。
【0036】
本明細書中で用いる用語「復元肉製品」には、一緒に塊にした複数の肉片を含む肉製品が含まれる。復元肉製品は、植物または植物製品を含む他の供給源からの他の肉のようなさらなるタンパク質源、例えば、ダイズタンパク質を含み、バインダー、充填剤、フラボラント(flavorant)および保存剤のようなさらなる成分を含み得る。
【0037】
本明細書中で用いる用語「食品」とは、ヒトが消費するための食用製品をいう。
【0038】
発明の詳細な説明
本発明の形態には、ステアリドン酸(SDA)およびガンマリノレン酸(GLA)を含むヒト消費用の食用の肉製品が含まれ:ここに、SDA濃度は肉製品の総脂肪酸含量の少なくとも約0.01%であり;GLA濃度は肉製品の総脂肪酸含量の少なくとも約0.01%であり;SDA/GLA濃度の比は少なくとも約2である。好ましい形態は、肉製品の総脂肪酸含量の少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、または少なくとも約1.0%であるSDA濃度を有し得る。別の形態は、少なくとも約2.0であるSDA/GLA濃度の比を有し得る。別の形態は、さらにALAを含み得、少なくとも約1.0であるSDA/ALA濃度の比を有し得る。本発明の形態は、トランスジェニック植物からの内生的な油、好ましくはトランスジェニック・ダイズ油を含み得る。
【0039】
本発明の形態は、トコフェロール、好ましくは少なくとも50ppm、より好ましくは少なくとも約100ppmのトコフェロールも含み得る。好ましくは、形態は約1:1よりも大きい、肉製品のオメガ−6に対するオメガ−3の脂肪酸比を有する。本発明の別の形態は、さらに、6−シス,9−シス,12−シス,15−トランス−オクタデカテトラエン酸を含み得る。本発明の別の形態は、さらに、9−シス,12−シス,15−トランス−アルファリノレン酸を含み得る。本発明の別の形態は、さらに、6,9−オクタデカジエン酸を含み得る。本発明の形態は、ダイズタンパク質も含み得る。
【0040】
本発明の形態は、ポンプド(pumped)肉製品、機械的混合肉製品、復元肉製品およびコート肉製品を含む種々の形態の肉製品を含む。
【0041】
本発明の形態は、さらに、肉製品と一緒に使用する香味料、軟化剤、安定剤、乳化剤、抗酸化剤および/または加工助剤のような当該技術分野で知られているいずれかの添加物を含み得る。添加物には、限定されるものではないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、トコフェロール、砂糖、トリポリリン酸ナトリウム、アスコルビン酸、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、乳酸カリウム、二酢酸ナトリウム、酢酸、アスコルビン酸ナトリウム、スモーク香味料、レシチン、水、メチルセルロース、ブイヨン、ビネガー、着色料、ビタミン、保存料、ピックリング剤、スパイス、バインダー、ダイズタンパク質および/または乳化剤が含まれ得る。
【0042】
さらに、本発明の形態は、本明細書に記載する肉製品で製造した食品を含む。かかる食品は、肉製品を含むいずれの食用組成物も含み得、ピザ、スープ、直ぐに食べられる肉、調理済み料理などのような食べ物が含まれる。
【0043】
本発明の形態は、動物を試験して遺伝子情報を得;該遺伝子情報に従って育種について該動物を選抜し;該動物を育種して子孫を生成し;該子孫の少なくとも1から肉組織を収集し;該肉組織を植物油と接触させることを含み、ここに該植物油が少なくとも約0.01%のステアリドン酸を含む、肉製品を製造する方法も含む。本発明の好ましい形態において、動物は、予想肉品質、食用部分内脂肪、またはpH、肉の色、または肉の組成に基づいて選抜する。特に好ましい形態において、動物は、食用部分脂肪含量に基づいて選抜する。とりわけ好ましい形態において、該選抜は低い脂肪含量を有する肉を生じる。幾つかの形態において、SNPのような遺伝子マーカーを該予想を作成するのに使用する。好ましい形態において、マーカー支援選抜を用いて育種用の該動物を選抜する。
【0044】
本発明の形態は、ステアリドン酸の供給源を提供し;水性液体を提供し;少なくとも1の肉成分を提供し;該ステアリドン酸供給源を該水性液体および該肉成分と接触させて補充した肉製品を製造することを含み、ここに、該ステアリドン酸供給源がトランスジェニック植物油を含む、ヒト消費用の食品を製造する方法も含む。
【0045】
本発明の形態は、ステアリドン酸(SDA)の供給源を提供し;動物肉組織を提供し;該動物肉組織を加熱し;ついで、該SDAの供給源と該動物組織とを合することを含む、ヒト消費用の食品を製造する方法も含む。本発明の好ましい形態には、該SDAの供給源と合する前に該肉組織を加熱する、食品を製造する方法も含む。別の形態は、該肉製品を加熱して、該SDAの供給源と合する前に動物脂肪の一部分を除去することを含む。好ましい形態には、使用する温度を最小限化して、該SDA供給源と合した後に該肉を加工することを含む。
【0046】
本発明の形態は、アラキドン酸(AA)およびステアリドン酸(SDA)を含む食品をも含み、ここにSDA/AAの濃度の比は少なくとも約0.1であり、該食品は食品100グラム当たり少なくとも約0.1グラムのSDAを含む。本発明の好ましい形態において、SDA/AAの濃度の比は少なくとも約0.2、少なくとも約0.3、少なくとも約0.5、少なくとも約1.0、および少なくとも約2.0である。本発明の形態は、さらに、ガンマ−リノレン酸(GLA)を含み得る。好ましくは、本発明の形態は、少なくとも約2.0のSDA/GLAの比を含み得る。
【0047】
本発明の形態は、動物組織を提供し;該動物組織の飽和脂肪酸含量を減少し;該動物組織と植物油とを接触させることを含み、ここに該肉製品の不飽和脂肪酸含量を増加させ、該肉製品が少なくとも約0.1%のSDAを含む、肉製品を製造する方法も含む。本発明の形態は、さらに、該肉製品を製造する間に該動物組織を加熱することを含み得る。本発明の好ましい形態において、植物油は、内生ダイズ油を含む。本発明のさらに好ましい形態において、植物油は、さらに、ガンマ−リノレン酸(GLA)を含む。本発明の好ましい形態において、植物油は、少なくとも約2.0のSDA/GLAの比を有する。本発明の別の形態は、さらに、アラキドン酸(AA)を含み得る。好ましい形態は、少なくとも約0.1、少なくとも約0.2、少なくとも約0.3、少なくとも約0.4、少なくとも約0.5、少なくとも約1.0、少なくとも約2.0のSDA/AA濃度比を有し得る。本発明の製造方法の形態は、植物油および肉組織を物理的に混合し、該植物油を該肉組織に注入し、または、該肉組織の外表面を植物油と接触させることを含み得る。
【0048】
SDAの製造
本発明の形態は、ステアリドン酸の植物ベースの製造およびヒトの健康を改善するための努力においてヒトおよび家畜の食餌にそれを取り込むための改善された方法のシステムに関する。この製造は、食品への商業的取込みを許容するように十分な高収量でSDAを産生するよう設計したトランスジェニック植物の利用を介して可能になる。本発明の目的のため、脂肪酸の酸および塩形態、例えば、酪酸と酪酸塩もしくは酪酸エステル、アラキドン酸とアラキドン酸塩もしくはアラキドン酸エステルは相互交換可能な化学形であると考えられる。
【0049】
すべての高等植物は、主要な18炭素PUFA、LAおよびALA、および場合によってはSDA(C18:4n3、SDA)を合成する能力を有するが、これらをさらに伸長および脱飽和してアラキドン酸(AA)、EPAまたはDHAを生成し得るものはほとんど存在しない。したがって、高等植物におけるEPAおよび/またはDHAの合成には、LAをAAに、またはALAをEPAおよびDHAに変換するために必要な生合成酵素のすべてをコードする幾つかの遺伝子を導入する必要がある。ヒトの健康におけるPUFAの重要性を考慮した場合、本発明によるトランスジェニック脂肪種子におけるPUFA(とりわけ、n-3クラス)の首尾よい製造は、食餌使用のためのこれらの必須脂肪酸の持続可能な供給源を提供することができる。大部分のPUFA−合成真核生物において作動している「従来の」好気性経路は、LAおよびALAのΔ6脱飽和で出発してγ−リノレン酸(GLA、18:3n6)およびSDAを得る。
【0050】
表1を参照して、「標準の」範囲の油組成物を構成するもののベース−対−本発明の油組成物を提供することは重要である。表1は、全体の油のパーセンテージとして表した食品に一般的に使用する種々の油の脂肪酸含量の例を提供している。
【表1-1】
【表1-2】

出典:CODEX STANDARD FOR NAMED VEGETABLE OILS, CODEX-STAN 210 (Amended 2003, 2005)
【0051】
より最近では、トランスジェニック植物からの油が創り出されている。本発明の幾つかの形態は、トランスジェニック・ダイズ油のようなトランスジェニック植物の産物を取込み得る。トランスジェニック植物およびかかるトランスジェニック植物を作製する方法は、文献に見出し得る。例えば、国際公開第2005/021761(A1)号を参照されたい。表2に示すように、トランスジェニック・ダイズ油の組成は、ダイズ油について認められた標準のものとは実質的に異なる。
【表2】
【0052】
本発明の形態によれば、組換え油種子植物中で産生したSDAリッチなダイズ油は、食品製造に以前に利用されていない組成を提供する。また、DHAを含む油が魚類または藻類供給源に由来する場合には従来の安定性に関する懸念なしに、これらの組成の使用が可能となる。
【0053】
幾つかの形態におけるステアリドン酸の好ましい供給源は、高レベルのステアリドン酸を産生するように設計されたトランスジェニック・ダイズである。ダイズは油加工設備で加工し、油は出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許出願公開第2006/0111578(A1)号、第2006/0110521(A1)号および第2006/0111254(A1)号に記載されている方法と一致して抽出し得る。
【0054】
種々の肉製品の脂肪酸組成は当該技術分野で知られている。例えば、Droulezら(2006)、Ruleら(2002)およびUSDA Composition of Foods-Raw, Processed, Prepared; USDA Human Nutrition Information Service Agriculture Handbookを参照されたい。膨大な肉製品の脂肪酸組成は、インターネット上でも入手可能である。例えば、www.nal.usda.gov/fnic/foodcomp/search/のUSDA Agricultural Research Service Nutrient Data Laboratoryを参照されたい。例示的な目的のため、表3は、Ruleら(Comparison of muscle fatty acid profiles and cholesterol concentrations of bison, beef cattle, elk and chicken, J Anim Sci. 80:1202-1211, 2002)から抜粋した脂肪酸プロフィールを含むが、SDA/14:0、SDA/15:0、SDA/18:0およびSDA/20:4の比を加えた。
【表3-1】
【表3-2】
【0055】
幾つかの形態において、本発明は動物組織およびステアリドン酸の両方を含む肉および肉製品を含む。特に、ステアリドン酸の添加は、アラキドン酸(AA)のようなオメガ−6脂肪酸のようなあまり望ましくない脂肪酸に対して比率において有益な脂肪酸の量を改善する。本発明の幾つかの形態において、アラキドン酸(20:4n-6)に対するSDAの濃度の比は、少なくとも約0.1、少なくとも約0.2、少なくとも約0.3、少なくとも約0.5、少なくとも約1.0、および少なくとも約2.0である。
【0056】
育種の方法:
表現型情報を用いた育種の伝統的な方法が数世紀にわたって使用されてきた。より最近には、育種の進歩により、遺伝子ツールを適用して育種の効率および有効性を高めることが可能になった。特に、望ましい特性は特定の遺伝内容と関連し、それによって、表現型および/または歴史的な情報のみを用いるよりも遙かに効率的に将来の性能を予想し得る。
【0057】
ゲノム技術は、遺伝的変異を説明し、より直接的かつ正確な選抜に使用し得る遺伝子、すなわち遺伝子に連結される遺伝子マーカーの発見を介して、家畜生産の特性および肉の品質の特性においてより大きな改善に関する可能性を提示する。肉生産および品質の特性と関連する多数のマーカーが報告されている(RothschildおよびPlastow, 1999を参照されたい;特にpp1-8を参照されたい)。
【0058】
例えば、世界中で豚肉のために収穫されるブタは、典型的には、母性生産(meternal productivity)、成長効率および肉の品質について別個の特性を有する閉鎖育種集団を交雑することによって生産される。これらの閉鎖された集団は、典型的には低レベルの同系交配を有しており、ゲノムスキャンにより選抜のための集団を跨いで使用し得るマーカーを与える。これらの結果として得られる連結されるマーカーを、マーカーに関する様々な方法または全ゲノム選択(Meuwissenら, 2001)を含むマーカー支援選抜に用いて、これらの特性についての集合体の遺伝的長所およびブタ生産鎖で創り出される価値を改善し得る。
【0059】
本発明のいくつかの形態は、さらなる加工の前に、動物のゲノム中の1またはそれを超える部位でその動物の遺伝子型をMASに関して評価する方法を提供する。これらの形態の幾つかの態様において、動物の遺伝子型は、例えば単一ヌクレオチド多型(SNP)またはマイクロサテライトマーカーのような少なくとも1つの遺伝子マーカーを含むDNAセグメント(対立遺伝子)内の部位で評価される。
【0060】
本発明の幾つかの形態において、マーカー遺伝子座のゲノム配列は本発明の形態に適合する多くの手段により決定され得る。適切な手段は当業者には周知であり、限定されるものではないが、直接的な配列決定、合成による配列決定、プライマー伸長、マトリクス支援レーザー脱離/イオン化−飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析、ポリメラーゼ連鎖反応−制限断片長多型、マイクロアレイ/多重アレイ・システム(例えばAffymetrix, Santa Clara, Californiaから入手可能なシステム)、および対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーションが含まれる。
【0061】
SNPと関連し得る表現型特性は、限定されるものではないが、成長特性、身体および/または屠殺体の組成、肉の品質、食用部分脂肪、pHおよび肉の色が含まれる。好ましくは、MASを用いてこれらの表現型特性を改変し、ステアリドン酸などの添加される有益な脂肪酸を含む製品についての生産性および製品品質要求に、より効率のよく対処する。
【0062】
本発明のこの形態の好ましい態様によれば、望ましい表現型と関連するSNP対立遺伝子を有すると同定された動物は、その表現型に見合った使用に割り当てられる(例えば、改善された成長とプラスに関連する表現型に基づく育種に割り当てられる)。あるいは、望ましい表現型と正に相関するSNP遺伝型を有していない(または、その表現型と負に相関するSNP対立遺伝子を有する)動物は、その特性と正の相関のあるものと同じ使用に割り当てられることはない。
【0063】
さらに、ある動物が見込みのある親動物として用いられ得るかどうかの決定およびそのやり方の決定は、1またはそれを超える、10またはそれを超える、25またはそれを超える、50またはそれを超える、あるいは100またはそれを超える遺伝子マーカーの遺伝子型に基づき得る。これらの形態の他の態様は、1またはそれを超えるSNPの分析が他のいずれかの望ましいゲノム分析または表現型分析(例えば、本発明で開示される遺伝子カーカーに勝るいずれかの遺伝子マーカーの分析)と組み合わされる方法を提供する。また、分析されたSNP(または複数のSNP)は、成長とのみ、または組成とのみ、または肉の色とのみ、または肉の品質とのみ関連するものからすべて選択し得る。逆にいうと、分析は、これらの特性または他の特性のいずれかの望ましい組合せから選択したSNPについて行われ得る。
【0064】
本発明の幾つかの形態の目的のために、例えば、食用部分脂肪(IMF)含量または全脂肪含量のような肉の組成に基づいて動物を選抜することが特に望ましい場合がある。好ましい形態において、動物は、比較的低いIMF含量と関連するマーカーに基づいて育種について選抜される。これらの動物からの肉は、屠殺後に、ステアリドン酸のような有益な脂肪酸を含む油を取り込み、それによって肉製品における低い飽和脂肪および高いSDA含量の二重の健康上の恩恵を維持しながら最終製品の全脂質含量を上昇させることによってさらに修飾される。
【0065】
肉のIMF%を定量化することは当該技術分野で一般的に知られている。特に、家畜の種によって測定方法に相違点が存在する。しかしながら、当業者であれば、適当な表現型パラメータを定量化する方法を容易に確認できる。例えば、ブタ測定IMGは、限定されるものではないが:longissimus dorsi(腰肉)の第10/第11のリブ交切の全国豚肉生産者協議会(National Pork Producers Council:NPPC)霜降り標準ガイドライン(1.0-10.0)を含む表現型を測定することによって行い得;あるいは、全脂質パーセントは、longissimus dorsiの第10/第11のリブ交切近くで収集した乳化腰肉飼料の化学的脂肪抽出を介して決定し得(Folch, J., M.LeesおよびG.H.Sloan-Stanley.1957, A simple method for the isolation and purification of total lipids from animal tissues. J. BIOL. CHEM. 226:497-509.)、あるいは、マイクロ波/NMR技術(CEM Corporation, Matthews, NC, USA)の使用を介して行い得る。
【0066】
選択した特性について集団の平均的な遺伝的長所を改善するために、その特性と強く関連する1またはそれを超えるマーカーを育種動物の選抜に使用し得る。各々の発見した遺伝子座の場合、好ましいQTL対立遺伝子を有する集団の広さのLDにおけるマーカー対立遺伝子(または、複数のマーカー対立遺伝子のハプロタイプ)を有する動物を使用することは、育種に用いる動物の育種価値を高め、経時的な集団中のQTL対立遺伝子の頻度を増大し、それによって、その特性について集団の平均的な遺伝的長所を高める。この高められた遺伝的長所は、価値の完全な認識のために商業的集団に広め得る。
【0067】
例えば、ブタの閉鎖遺伝的核(GN)集団を維持して、市場の飼いブタの商業的生産に使用するために雄ブタを生産し得る。200頭の雌ブタのGN群れは、典型的には週ごとの育種および分娩スケジュールに従って、1年当たりほぼ4000頭の子孫(一年当たり2000頭の雄ブタ子孫)を生産することが予想される。300,000頭の商業的な雌ブタの群れは、一年当たり6,000,000頭を超える市場ブタを生産することが予想され、1,500頭の雄ブタの目録を有する雄ブタ株を維持して300,000頭の雌ブタに種付けし得る。したがって、200頭の雌ブタのGNの群れは、6ヶ月ごとに500頭の雄ブタを商業的雄ブタ株に送り出すことで、商業的生産にかかる300,000頭の雌ブタのための雄ブタの入れ替えを維持し得た(商業的雄ブタの目録は1.5年ごとに回転すると仮定すると、このGNからの雄ブタ候補の上半分が商業的育種に選抜される)。
【0068】
GNでの育種価値および選抜の評価にSNPを用いる際の第一の工程は、GNの種畜としての又は他の商業的集団の種畜としての選抜の候補となり得る全子孫(この例では、毎年このGNで生産される4,000頭の子孫)からのDNAの収集である。1つの方法は、分娩後すぐに各仔ブタからの僅かな尾組織を標識(バーコード)付きの試験管に採取することである。この組織から抽出されたDNAを用いて、本質的には無制限の数のSNPマーカーを検定することができ、その結果は動物が育種適齢期に達する前の選抜決定に含まれ得る。
【0069】
価値のあるQTL対立遺伝子を有する集団−野生LD中にあると決定されたマーカー(またはマーカーハプロタイプ)を選抜決定に取り込む1つの方法(実施例1を参照されたい)は、古典的な量的遺伝学および選抜指数理論(FalconerおよびMackay, 1996; DekkersおよびChakraborty, 2001)に基づく。選抜を目標とした集団でのマーカーの効果を評価するために、目的の特性についての表現型測定法(phenotypic measurements)を用いた動物の無作為試料は、固定効果としてまたは共変量(対立遺伝子コピー数に対する表現型の回帰)としてフィットされたマーカーを有する混合動物モデル(mixed animal model)を用いて分析することができる。マーカー効果をフィットするいずれかの方法による結果を用いて、対立遺伝子置換効果を導出し得、次にそのマーカーの育種価を導き出し得る:
【数1】
【0070】
[式中、α1およびα2はそれぞれ対立遺伝子1および2の平均の効果であり;αは対立遺伝子置換の平均の効果であり;pおよびqはそれぞれ対立遺伝子1および2の集団における頻度であり;aおよびdはそれぞれ相加効果および優性効果であり;gA1A1、gA1A2およびgA2A2はそれぞれマーカー遺伝子型A1A1、A1A2およびA2A2を有する動物の(マーカー)育種価である。]
動物の特性育種価の総計は考察した各マーカー(ハプロタイプ)についての育種価と残りの多型遺伝子の育種価との合計である:
【数2】
【0071】
[式中、EBVijはi番目の動物についての評価した特性育種価(Estimated Trait Breeding Value)であり、
はj=1 〜 n(ここでnは検討するマーカー(ハプロタイプ)の総数である)を合計したマーカー育種価であり、
はマーカー遺伝子型(複数の遺伝子型)をフィッティングした後のi番目の動物の多遺伝子性の育種価である。]
【0072】
これらの方法は容易に拡張され、選抜指標理論および各特性の相対的な重要性を設定する具体的な育種目標の状況の範囲内にあるすべての複数の特性に関する選抜候補の育種価を評価でき、各特性の育種価は複数マーカー(ハプロタイプ)からの情報を含む。複数の特性に関する育種価の評価においてマーカー情報を最適化するための他の方法もまた存在し、これは、マーカーとQTLとの間の組み換え(例えば、FernandoおよびGrossman, 1989)、全ゲノム選抜での全ての発見されたマーカー情報の潜在的な包含(Meuwissenら、2001)を説明する無作為モデルを含む。これらの方法のいずれかを介して、価値のあるQTL対立遺伝子を有する集団−野生LD中にあると決定された本明細書中で報告されるマーカーを用いて、より高い精度での選抜、より高い割合での遺伝子的な改良、およびブタ生産鎖でのより価値のある蓄積を提供することができる。
【0073】
本発明の好ましい形態において、肉製品はMASを用いて選抜した動物からの肉を用いて製造する。好ましくは、これらの動物を選抜して肉の組成または品質を改善する。例えば、MASを用いて、SDA油を肉製品に取り込む前に、ブタにおいて食用部分脂肪を低減する。
【0074】
ブタ、ウシ、魚類、甲殻類および家禽のような家畜動物の肉の品質、生産性および/または肉組成特性に関連して育種に使用し得るマーカーおよび関連する方法の具体的な例には、出典明示して本明細書の一部とみなす以下のものが含まれる:米国特許第5944652号、米国特許第6458531号、米国特許第6696253号、米国特許第6716972号、米国特許第6803190号、米国特許第6919177号、米国特許第7244564号、米国特許出願公開第2002051989(A1)号、米国特許出願公開第2003017470(A1)号、米国特許出願公開第2003129610(A1)号、米国特許出願公開第2003186299(A1)号、米国特許出願公開第2004018511(A1)号、米国特許出願公開第2004029145(A1)号、米国特許出願公開第2004048267(A1)号、米国特許出願公開第2004055029(A1)号、米国特許出願公開第2004235030(A1)号、米国特許出願公開第2004259127(A1)号、米国特許出願公開第2004261138(A1)号、米国特許出願公開第2005202484(A1)号、米国特許出願公開第2005208551(A1)号、米国特許出願公開第2005214814(A1)号、米国特許出願公開第2006037090(A1)号、米国特許出願公開第2006211006(A1)号、米国特許出願公開第2006223058(A1)号、米国特許出願公開第2006275793(A1)号、米国特許出願公開第2006288433(A1)号、米国特許出願公開第2007003956(A1)号、米国特許出願公開第2007006333(A1)号、米国特許出願公開第2007092909(A1)号、国際公開第0006777(A2)号、国際公開第0034476(A2)号、国際公開第0036143(A2)号、国際公開第0146406(A2)号、国際公開第0175161(A2)号、国際公開第0220850(A2)号、国際公開第03060151(A2)号、国際公開第03071865(A2)号、国際公開第03076573(A2)号、国際公開第03078651(A2)号、国際公開第03104492(A1)号、国際公開第04063386(A2)号、国際公開第04081194(A2)号、国際公開第05001032(A2)号、国際公開第05001032(A3)号、国際公開第05015989(A1)号、国際公開第05017204(A2)号、国際公開第05078133(A2)号、国際公開第05112544(A2)号、国際公開第06090136(A2)号、国際公開第06096427(A2)号、国際公開第06097787(A1)号、国際公開第06101623(A2)号、国際公開第06128116(A2)号、国際公開第06128117(A2)号、国際公開第9721835(A2)号および国際公開第27012119(A1)号。肉の品質および組成を改変する方法およびブタにおいて関連するマーカーは、出典明示して本明細書の一部とみなす「Genetic Markers and Methods for Improving Swine Genetics」(Clutterら)という標題で2006年8月22日に出願した同時係属出願US 60/839404号に詳細に記載されている。同定したQTLおよび分子マーカーを含むさらなる育種資源は、例えば、www.ncbi.nlm.nih.gov and www.animalgenome.orgのようなインターネットならびに科学刊行物で公衆に入手可能である。
【0075】
肉の加工:
動物の肉を肉製品に加工するための、当該技術分野で知られている多数のプロセスが存在する。これらのプロセスは、ハム、ステーキおよびチョップのような全肉の大きなカットにカッティングすること;ソーセージ、ハンバーガーおよびホットドッグのようなもののために肉を機械的に剪断および混合すること;より小さな部分をボローニャソーセージ、サラミのような加工肉に再形成すること;水、ブイヨン、香味料またはブラインを注入して香味および官能特性を高めることなど、を含む。
【0076】
肉加工方法の例には、出典明示して本明細書の一部とみなす以下の米国特許および米国特許出願が含まれる:米国特許第3556809号、米国特許第3916777号、米国特許第4463027号、米国特許第4584204号、米国特許第4778682号、米国特許第4867986号、米国特許第4904496号、米国特許第4980185号、米国特許第5053237号、米国特許第5082678号、米国特許第5106639号、米国特許第5116629号、米国特許第5116633号、米国特許第5211976号、米国特許第5213829号、米国特許第5250006号、米国特許第5256433号、米国特許第5380545号、米国特許第5382444号、米国特許第5415883号、米国特許第5460842号、米国特許第5468510号、米国特許第5472725号、米国特許第5474790号、米国特許第5484625号、米国特許第5489443号、米国特許第5492711号、米国特許第5514396号、米国特許第5523102号、米国特許第5556662号、米国特許第5631035号、米国特許第5674550号、米国特許第5688549号、米国特許第5698255号、米国特許第5807598号、米国特許第5895674号、米国特許第5965191号、米国特許第5989601号、米国特許第6014926号、米国特許第6054147号、米国特許第6099891号、米国特許第6103276号、米国特許第6248381号、米国特許第6613364号、米国特許第6613369号、米国特許第6716460号、米国特許第6749884号、米国特許第6763760号、米国特許第6976421号、米国特許第7022360号、米国特許第7026007号、米国特許第7169421号、米国特許出願公開第2003049364(A1)号、米国特許出願公開第2003198730(A1)号、米国特許出願公開第2004001876(A1)号、米国特許出願公開第2004047948(A1)号、米国特許出願公開第2004166212(A1)号、米国特許出願公開第2005142278(A1)号、米国特許出願公開第20060068077(A1)号、米国特許出願公開第20060088651(A1)号、米国特許出願公開第2006068077(A1)号、米国特許出願公開第2006286273(A1)号、米国特許出願公開第2007004678(A1)号、国際公開第02065860(A1)号、国際公開第04082403(A1)号、国際公開第05034652(A1)号および国際公開第05094617(A1)号。
【0077】
本発明の好ましい形態において、ステアリドン酸は、例えばトランスジェニック・ダイズ油中のように液体植物油の形態で肉製品に取り込ませる。この流体は、肉に注入し得、肉と機械的に混合し得、またはそれを用いて肉の外部をコートし得る。本発明の別の形態において、油はエマルションを形成するために最初に乳化し得る。好ましくは、エマルションはSDAを含む油および水性液体を含む。
【0078】
本発明の幾つかの形態において、最初の肉中の脂肪の量は、マーカー支援選抜のような精巧な育種方法を介して改変される。しかしながら、本発明の幾つかの形態は、脂肪含量を減らすために肉のいずれかの部位を予め調理すること、より低い脂肪含量を有することが知られている種からの肉、例えばニワトリの胸肉などを取り込むこと、および当該技術分野で知られているようないずれか他の抽出技術などの肉の脂肪含量を低下させる別の手段もまた取り込み得る。
【0079】
本発明の形態での適用に好適であり得る様々な注入メカニズムが当該技術分野で知られている。例えば、幾つかの装置は肉中に挿入される多数のニードルを利用する。そのニードルを抜くと、液体がその注入ニードルにより形成された空間に入り込む。別の方法では、高圧液体(例えば、注入液)と多数のノズルを用い、圧力差を用いて強制的に肉の中に注入する。
【0080】
注入液を水浴中で約110°F〜約160°Fの温度に加熱し、注入液を許容される温度範囲に維持し得る。肉は注入器のノズルの下に様々な距離(最も近くて0.1インチから最も遠くて10インチ)に配置することができる。液体注入液の流れは、ノズルから高速で0.1秒〜10秒、好ましくは0.5秒〜5秒継続する発射により放たれ得る。液体は、高速の注射液流を得るために1平方インチあたり約200ポンド(「psi」)〜約8,500psiに加圧される。肉は好ましくは複数箇所で注入される。注入部位の間の距離は、具体的な柔軟さ、湿度および脂肪パーセンテージの特徴を達成するために可変した。
【0081】
肉の事前調理を避けるためにおよび注射液の油分(例えば、SDA)のいずれかの劣化を最小限にするために、注射液は様々な油、水およびバインダーを含んでいてよく、好ましくは120°F以下で維持される。より好ましくは、注射液は100°F以下で維持される。液体の組み込みに加えて、機械的な柔軟化もまた注入過程に起因し得る。
【0082】
本発明の幾つかの形態において、SDA油の空間分布はあらかじめ決定される。好ましく方向づけられた場合、その注入液の流れのエネルギーは注入液の経路に沿って使い果たされる。結果として、注射液の流れの一部分は散開し、流れの経路に沿って肉の細部に進む。あるいは、注入液は肉全体に比較的均一に分配され得る。好ましくは、この手順は肉組織の内部まで油、水および香味料の分配をもたらす結果となる。
【0083】
あらかじめ決定された空間的な方向づけは、油、エマルションまたは結合した組織を分解することが知られているコラゲナーゼのような酵素でさえ注入するための優れた技術を提供し得る。本発明の幾つかの形態において、コラゲナーゼを注入することが迅速で且つ効果的な柔軟化をもたらす結果となる傾向があり得るのは、その注入液が強固な結合組織に沿って肉全体に進むためである。従って、コラゲナーゼはそれが作用する組織付近に直接配置される。
【0084】
注入された肉のみずみずしさおよび風味を高めるために、バインダーを注入液の流れに加える。そのようなバインダーは、注入液全体の約0.1%〜約2.5%の量のゲル形成剤および乳化剤を含み得る。バインダーはゴム、増粘剤、塩およびその組み合わせを含み得る。
【0085】
肉の中にもしくは肉上に取り入れられる任意の材料は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、トコフェロール、砂糖、トリポリリン酸ナトリウム、アスコルビン酸、亜硝酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、乳酸カリウム、二酢酸ナトリウム、酢酸、アスコルビン酸ナトリウム、スモーク香味料、レシチン、水、メチルセルロース、ブイヨン、ビネガー、着色料、ビタミン、保存料、ピックリング剤、スパイス、バインダー、および/または乳化剤のような様々な付加的な成分がさらに含まれ得る。
【0086】
特に重要なものについて、安定剤および抗酸化剤は肉および油の両方の風味および官能特性を維持するために用いられ得る。例えば、トコフェロールのようなトコクロマノール(tocochromanol)を油および/または肉製品に取り込ませることができる。付加的な安定剤は、ブチルヒドロキノン(TBHQ)、ブチル化ヒドロキシアニソール(butylated hydroxyamisole)、ブチル化ヒドロキシトルエンおよびクエン酸を含み得る。
【0087】
肉の特定のカットに関して、製品は添加物を含まずに販売されてもよいし、あるいは風味、テクスチャおよび/または製品の見た目を高めるために添加物が例えばブライン液(brine)の注入によりまたはマリネードを用いてコーティングすることにより用いら得る。肉の中に溶液を注入する方法は、肉にニードルを用いて孔を設け、液体を圧力下で肉の内部に注入させることを含む(例えば、出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第5,071,666号、第5,142,971号、第5,176,071号、第6,165,528号および第6,497,176号)。好ましい形態において、ステアリドン酸を含むダイズ油が肉製品中に注入される。SDAを含む油は、伝統的なブライン添加物をさらに含み得る。さらに、SDAを含む油は、乳化剤をさらに含み得、エマルションの形態で注入され得る。
【0088】
機械的混合肉製品については、広範囲の肉供給源および添加剤を同一の製品に用いることができる。くず肉、機械的分離肉(mechanically separated meat)、回収技術を介して得られた肉および/または肉アナログ(meat analog)のような様々な肉供給源を含む動物の様々な部位からの肉を合し得る。タンパク質の別の供給源には、他の動物種からの肉またはダイズタンパク質のような植物ベースのタンパク質でさえ加えることができる(例えば、出典明示して本明細書の一部とみなす米国特許第6,797,288号を参照されたい)。
【0089】
本発明の幾つかの形態において、増量剤、充填剤またはバインダーは、例えば挽肉および/またはコールドカットに加工される復元肉などの再形成肉製品に特に用いられ得る。そのような充填剤には、ダイズ粉、ダイズタンパク質濃縮物、単離されたダイズタンパク質、コムギ、コメ、トウモロコシ、オオムギ、植物デンプン、植物の粉、脱脂粉乳、スキムミルクおよび粉ミルクが含まれ得る。増量剤、充填剤およびバインダーは典型的には肉製品全体の約4%未満で含まれる。
【0090】
本発明の幾つかの形態において、機械的混合製品は、ソーセージ、ローフ、パティ、リンク、シリンダー、または他の形状のような二次的な形に形成され得る。このプロセスは、押し出し成形、ケーシングへの注入または圧力下での成形を含み得る。
【0091】
本発明の幾つかの形態において、肉製品は消費者への販売前に、加熱および/または少なくとも部分的に調理されてもよい。幾つかの場合には、肉製品は、SDAを含むトランスジェニック・ダイズ油のようなSDAを含む組成物の添加前に加熱および/または少なくとも部分的に調理されてよい。幾つかの形態において、肉製品の少なくともいずれかの部分はSDAの添加前に実質的に調理されている。好ましくは、完成したSDAを含む肉製品は、消費者に届けられる前に長時間高温に曝されない。幾つかの場合において、高温は短時間であれば許容され得る。
【0092】
本発明の別の形態において、本明細書に記載の組成および/または方法に従う肉製品は、かなりの二次的な成分を含む食品、例えばピザ、特別料理、冷凍ディナー、スープ、サンドウィッチ、ハンバーガー、直ぐに食べられる肉などの中に組み入れられる。
【0093】
発明の例示的な形態
以下の実施例は、本発明の一般的な形態を実際に示すために含められる。当業者であれば、後の実施例で開示される技術は本発明の実施に際して良好に機能するために発明者らにより見出された技術を提示するものであることを認識するであろう、従ってその実施に好ましい様式を構成すると考えることができる。しかしながら、当業者であれば本開示内容を踏まえて、多くの変更を開示された具体的な形態において成すことができ、さらに本発明から逸脱することなく同様もしくは類似の結果を得ることができることを認識するであろう。
【0094】
以下の実施例は、当分野で既知の修飾、置換、構成または器具を用いて、ウシ、ブタ、家禽および水産養殖を含む供給源からの肉に適用し得る。
【0095】
実施例1:SDA油を含むハンバーガー
商業的なウシの挽肉を地元のスーパーマーケットから購入した。0.5ポンドの牛肉を取り出し、ミキシングボウルに移した。2.34グラムのSDAダイズ油をウシの挽肉と混ぜ、完全に混ぜ合わせた。SDAダイズ油は、ダイズ油の脂肪酸全体の百分率としておよそ20%のSDAを含んだ。4分の2ポンドのパティを牛肉から作った(それぞれおよそ135g)。
【0096】
2つのパティをフライパンに置き、そのフライパンを家庭用のストーブに置いた。パティはよく焼けるまで炒めた。各パティは肉の焦げ付きを避けるために回した。よく焼けてから(目視での検査に基づく)、パティを加熱から外し、外気を用いて冷ました。後の官能試験および分析試験のために、パティを容器に詰めた。対照は、SDAを含まない商業的なダイズ油を用いたことを除いて上記と同じやり方で作製した。対照のハンバーガーおよびSDAを含むハンバーガーの官能評価は、テクスチャまたは風味に有意な変化を示さなかった。
【表4】
【0097】
実施例2:SDA油を取り入れるマリネした肉製品
ブタの全食用部分または全食用部分の一部を、あらかじめ調理した食用部分の重量の10%未満で液体混合物中にてコートした。マリネード溶液は、マリネード溶液に含まれる重量あたりのパーセントとして列挙した以下の成分を含むであろう:66%のSDAダイズ油、26%のワイン(白)、5%の砂糖、および3%の黒コショウ。レモン汁および刻んだニンニクが、好みによりマリネード溶液に加えられてもよい。
【0098】
マリネード溶液は、あらかじめ調理された全食用部分のカットを覆ってコートし、調理前に8〜12時間冷蔵されるべきである。このマリネード溶液はまた、包装前に食品加工機に用いることができた。
【0099】
実施例3:SDAエマルションを含むシチメンチョウ肉製品の製造。
第一の形態の実施において、シチメンチョウに由来する全体の一部である単一食用部分は、食用部分重量当たりおよそ15%の量で、塩、砂糖および乳化剤も含む、トランスジェニックSDAを含有するダイズ油(15%のSDA)と水のエマルションを注入する。次いで、主要部を柔らかくし、1.5×104 Paの圧力にて40分間6rpmで回転操作に付した。次いでその一部をトレイに移し、一般的な長方形の形に適合させ、その部分が機械的に強固となる条件下のマイナス18℃の温度にまで凍結した。次に、その部分を凍結することで産生したブロックをトレイから取り出し、袋詰めにし、そしてさらなる使用に望まれるまで冷凍保存した。
【0100】
このように提供された部分的に形成された部分を高圧成形器に置き、その部分を500〜10,000p.s.i.の間、好ましくは1,000〜5,000p.s.i.の間の高圧にて低温に保ちながら約7.5秒間最終的な所望の形に形成する。高圧がその部分にかけられている間に、その肉製品は食用部分組織のいずれの大きな破壊もなく成形装置の形に適合する。
【0101】
押圧操作の結果、そのブロックを高圧成形装置から取り出し、次いでスライシング操作にかけ、その間にブロックをスライスして、比較的均一な切片を有し且つカット厚により決まる厚みを有する肉部分を産生する。
【0102】
スライシング操作は成形操作を行う約−18℃よりも幾分か高い温度で実施し得るが、スライシングは温度にいずれの有意な上昇も伴わず行われることが好ましい。
【0103】
次に、そのスライスを個別の包装内に真空密封し、この製品は消費者により調理されるまで冷却または冷凍状態で維持する。
【0104】
あるいは、肉はスライスされた後に個別の包装内に存在しながら、連続オーブン中でまたは水浴中で直接調理され得、そして再び凍結もしくは冷却され消費される前に再加熱され得る。
【0105】
好ましくは、肉はSDAの添加前に調理し、添加した油のいずれの劣化をも最小限にする。
【0106】
実施例4:SDA油を含むシチメンチョウ肉
全食用部分のシチメンチョウ肉の一部に、最初にその元の重量のおよそ12%のマリネード溶液を、重量当たり78.5%の水、6%の塩、7%のトランスジェニック・ダイズ油、7%のシチメンチョウ香味料(塩、コムギデンプン、ニワトリ脂、牛肉エキスおよびアルファ・トコフェロール)および1.5%のカゼイン酸ナトリウムを含むブライン組成物と一緒に注入する。SDAを含有するダイズ油は、約28%のSDA濃度を有する。差込み型のテンダライジング・ニードル(tenderizing needle)を備えた注入器を用いて、肉を柔らかくする。
【0107】
注入/柔軟化部分を1.5×104 Paの低圧下でひっくり返すか、またはより減じて5時間6rpmでひっくり返す。ひっくり返した部分を分けて、様々な重量カテゴリーに等級分けし、様々なサイズの成形器に適合させる。
【0108】
等級分けした部分を、その部分の細部の調整を確実にするために慎重に形成器にぴったりとはめ込んで形成器を満す。複数のはめ込んだ成形アセンブルをプレート−フリーザー23に移し、1〜5p.s.i.の比較的低い圧力をかけて、その部分を食用部分組織のいずれの重大な破壊を引き起こすことなくコンパートメントの形に適合させ、そしてプレート−フリーザーにより温度を約4時間かけて約−18℃の温度にまで下げる。
【0109】
実施例2記載の部分的に形成した一部分を高圧成形器に移し、その低温でかつ約7.5秒の間500〜10,000p.s.i.(3.45×106〜6.9×107 Pa)の間、好ましくは約3,000p.s.i.の圧力で維持しながら、それらを最終的な所望の形に形成する(図6)。
【0110】
高圧形成する間に、特に食用部分組織の接触面で液体が解凍し、これは食用部分組織が相対的に互いに滑ることを許容し、その部分が最終的な所望の形に変形される。しかしながら、望ましい最終的な形成は最初に形成された形から相対的に小さい移動範囲(例えば、5mm未満)だけを伴うことが認められ、そうでなければ肉の品質に損傷を与え得る食用部分組織の破壊が発生し得る。
【0111】
押圧操作の結果、そのブロックを高圧成形装置から取り出し、次いでスライシング操作にかけ、その間にブロックをスライスして、比較的均一な切片を有し且つカット厚により決まる厚みを有する肉部分を産生する。
【0112】
スライシング操作は成形操作を行う約−18℃よりも幾分か高い温度で実施し得るが、スライシングは温度にいずれの有意な上昇も伴わず行われることが好ましい。
【0113】
次に、そのスライスを個別の包装内に真空密封し、この製品は消費者により調理されるまで冷却または冷凍状態で維持する。
【0114】
あるいは、肉はスライスされた後に個別の包装内に存在しながら、連続オーブン中でまたは水浴中で直接調理され得、そして再び凍結もしくは冷却され、消費される前に再加熱され得る。
【0115】
好ましくは、肉はSDAの添加前に調理し、添加した油のいずれの劣化をも最小限にする。
【0116】
実施例5:SDA油を含む牛肉製品
すべて2.5〜2.7ポンド重量の牛肉のトップロイン(top loin)および肩ロース部分を柔軟化し、続いてブライン溶液を注入した。ブラインの組成は、81.5重量%の水、6%の塩、3%のデキストロース、1.5%のカゼイン酸ナトリウムおよび8%のダイズ油であった。次いでローストを26"Hg真空下6rpmで40分間ひっくり返す。次にこの部分を成形器に置き、5p.s.i.の比較的低い圧力下で、その成形器中でそれらが終始硬い状態になるまで-15℃の温度に曝しながら、成形器の形に一般的に形成する。硬く凍らせながら、その部分を高圧成形器に移し、1000p.s.i.で7秒間押圧し、その部分を高圧成形器の形に適合させた。次いで、この部分をスライスして、0.69インチ(15mm)の厚みのステーキとした。
【0117】
実施例6:SDAを含む新鮮なブタ肉ソーセージ
以下の調製例を用いて加工ブタ肉製品を製造し得る:ブタの生くず肉93%(75%赤み部分);塩1.5%;白コショウ:0.3%;砂糖:0.1%;メース:0.1%;ショウガ:0.02%;SDAを含有するダイズ油3%;ブドウ糖果糖液糖1.5%(90D.E.);各パーセンテージは重量に基づく。ダイズ油は、100ppmのTBHQ;1,000ppmのトコフェロールおよび30ppmのクエン酸もまた含んでいてよい。好ましくは、SDAを含有するダイズ油は、約28%のSDA濃度を有する。
【0118】
上記調製例の少量は、全ての乾燥材料を事前に混合したものおよび全ての水分を含む材料の第二の事前に混合したものを作製することにより調製される。その乾燥物の事前混合物を、水分を含む事前混合物と一緒にミキサー中で混ぜる。次にその混合物に油ベースの材料を加える。その後その組成物を高速剪断にてさらに混合し、安定なエマルションを形成させる。次いで、その安定なエマルションをソーセージ・ケーシングに注入し、袋詰めにして保存する。
【0119】
あるいは、類似のプロセスを用いて、ブタくず肉をSDAを含有するダイズ油と合する前に調理する事前に調理された製品を製造し得る。
【0120】
実施例7:SDAを含むポリッシュソーセージ
皮のないポリッシュソーセージは、以下の材料を用いて、実施例1記載の手順に従って調製する:ウシくず肉45%(80%赤み部分);ブタ頬肉20%;標準的なブタくず肉:25%;塩:2%;粉黒コショウ:0.15%;マジョラム:0.05%;亜硝酸ナトリウム0.02%;ニンニク:0.05%;SDAダイズ油6.5%;ブドウ糖果糖液糖1.5%。
【0121】
ダイズ油は、100ppmのTBHQ;1,000ppmのトコフェロールおよび30ppmのクエン酸もまた含んでいてよい。好ましくは、SDAを含有するダイズ油は、約20%のSDA濃度を有する。
【0122】
上記調製例の少量は、全ての乾燥材料を事前に混合したものおよび全ての水分を含む材料の第二の事前に混合したものを作製することにより調製される。この乾燥物の事前混合物を、水分を含む事前混合物と一緒にミキサー中で混ぜる。その混合物に油ベースの材料を加える。その後に、その組成物を高速剪断にてさらに混合し、安定なエマルションを形成させる。次いで、その安定なエマルションをソーセージ・ケーシングに注入し、袋詰めにして保存する。
【0123】
あるいは、類似のプロセスを用いて、ブタくず肉がSDAを含有するダイズ油と合する前に調理される事前に調理された製品を製造し得る。
【0124】
実施例8:SDAを含むハードサラミ
以下の材料を用いて、SDAを含むハードサラミ製品を調製し得る。その成分は、ウシ頬肉:40%;ブタ顎肉−40%;標準的なブタくず肉:20%;塩:3.2%;スクロース:1.5;白コショウ:0.2%;硝酸ナトリウム−0.1%;ニンニク粉末:0.1%;SDAダイズ油3%;抗酸化物質ブレンド:0.01%;ブドウ糖果糖液糖1%を含む。好ましくは、SDAを含有するダイズ油は約20%のSDA濃度を有する。
【0125】
上記の抗酸化物質ブレンドは、商標名CoviOX T70のもとHenkel Corporationから入手可能な60%のトコフェロール、商標名TENOX 20AのもとEastman Chemical Products Inc.から入手可能な(32%のグリセロールモノオレエート(glycerol monoleate)、30%のトウモロコシ油、20%のTBHQ、15%のプロピレングリコールおよび3%のクエン酸)の30%のTBHQ混合液、および商標名Durkex 100のもとDurkee Industrial Foodsから入手可能な、風味を保護することを助けるBHAを含む部分的に水素化された10%のダイズ油から成る。
【0126】
このソーセージは、まず1/8インチのプレートを通じた牛肉および1/4インチのプレートを通じたブタ肉を挽くことにより調製する。次に、全ての材料を、ミキサー中で5分間または赤身食用の肉と脂肪との良好な分配が明らかになるまで混合する。
【0127】
次いで、その混合物を、8〜10インチの深さのトレイ中で、そのエマルションを熟成させ、発酵させるために40°F〜45°Fで2〜4日間保存する。次に、熟成および発酵したエマルションをNo.5×22の繊維性ケーシングに詰め栓を縫いつけるか、または適切にサイズ分けしたコラーゲンケーシングに詰める。詰め込んだ製品は、40°Fで60%の相対湿度で9〜11日間乾燥させる。
【0128】
発酵および乾燥の両方の期間中の保持時間は、スタータカルチャーを用いる場合大幅に短縮することができる。
【0129】
実施例9:SDAを含む低脂肪ホットドック
ホットドックは、加工された低脂肪ブタを用いて製造される。連続運転の挽きブタを、Cozziniグラインダーを介して粉末状にした、その出口温度は65°Fであった。その結果得られた粉末化ブタは、スウィプトサーフェス熱交換器(swept surface heat exchanger)に通じ、その温度を上昇させ104°F〜106°Fの間で維持した。この温度でブタのフローをデカンタ型遠心分離機に送り込んだ。脂肪低減肉をヘラまたはリボンミキサー中で亜硝酸ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、塩およびリン酸ナトリウムと一緒に混合した。ホットドッグの形成に必要とされる水の4分の1を運転中のミキサーに加え、混合を30°F〜35°Fの温度で10分間続ける。混合し続けながら、ミルクプロテイン加水分解物を加え、続いてホットドッグの形成に必要とされる水の残り半分を加える。次いで、SDAを含有するダイズ油(28%のSDA)をおよそ重量当たり5%の割合で加える。次に、残りの水を、ライスゲル、予めゲル状にしたコメ粉、コーンシロップ、デキストロース、燻煙液および液体スパイスと一緒に混合し、35°F〜40°Fの温度で付加的に10分間混合を続けた。ヘラまたはリボンミキサー内での総混合時間は25分である。次いで、この脂肪低減ブタ製品を、65°F〜70°Fの温度にして真空で細かく刻み、セルロースケーシングに詰めた。各ホットドッグを加熱処理して155°F〜165°Fの温度にし、続いて40°F以下にまで冷却した。ホットドッグからセルロースケーシングを剥がし、真空包装した。
【0130】
実施例10:SDA油を含むハムの製造
まず初めに塩漬け溶液を混合容器に90%の水を加えて調製する。この水を2°Fにまで冷却し、順番に0.5%のトリポリリン酸ナトリウム、5% キログラムの塩化ナトリウム、0.6%の亜硝酸ナトリウム、5% Supro(登録商標)Systems M112、3% Proliant(商標)8610、1%のSDAを含有するダイズ油、1%のデキストロース、4%のマルトデキストリン、1%のカラギナン、0.2%のエリソルビン酸ナトリウム、および3%ジャガイモデンプンを加える。水和および溶解が完了したときに、SDA含量を有するブラインが形成される。ハムをこのブラインを用いて注入し、改善された脂肪酸含量を有する肉製品を得る。
【0131】
実施例11:SDA油を含む低飽和脂肪ハムの製造
ラージホワイト品種(Large White breed)のブタをMC4R遺伝子のマーカー支援選抜を用いて育種し、ブタで産生される脂肪量を低下させる。ハムにおける総脂肪含量は、およそ1%低下する。食肉処理後に、これらのハムには2%のSDA油を含む注入液を用いて注入するが、その他は上記の実施例10に記載のように注入した。その結果得られるハムは、実施例10記載の方法を用いて製造されるハムと比較して、低飽和脂肪含量、高い有益な脂肪酸含量、および等しい総脂肪含量を有する。
【0132】
本発明の形態の実施例を具体的な肉の種類または肉製品に関連して主として以上で記載するが、本発明が、ニワトリ、シチメンチョウ、魚類、ブタ、ヒツジ、ウシ、バッファロー、エビなどの様々な他の肉、またはそれらから製造される肉製品に対して類似の応用性を有することは当然ながら認められるべきである。
【0133】
本明細書中で開示され特許請求される組成物および方法はすべて、過度の実験を要することなく本明細書の開示内容を考慮して成すことおよび実施することができる。本発明の組成物および方法を好ましい形態の観点から記載したが、当業者であれば種々の変更が本発明の概念および範囲から逸脱することなく適用し得ることは認めることができよう。
【0134】
参考文献
本願で引用される上記および下記の両方の参考文献は、出典明示して明確に本明細書の一部とみなす。
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