(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年のエレクトロニクスの発展に伴い、メモリや集積回路といった半導体の需要が急激に増大している。
これらの半導体は、きわめて純度の高い半導体基板に不純物をドープして電気的性質を与えたり、エッチングにより半導体基板上に微細な回路を形成したりなどして製造される。
【0003】
そして、これらの作業は空気中の塵等による影響を避けるため高真空状態のチャンバ内で行われる必要がある。このチャンバの排気には、一般に真空ポンプが用いられているが、特に残留ガスが少なく、保守が容易等の点から真空ポンプの中の一つであるターボ分子ポンプが多用されている。
【0004】
また、半導体の製造工程では、さまざまなプロセスガスを半導体の基板に作用させる工程が数多くあり、ターボ分子ポンプはチャンバ内を真空にするのみならず、これらのプロセスガスをチャンバ内から排気するのにも使用される。このターボ分子ポンプの縦断面図を
図7に示す(ターボ分子ポンプの構成例としては他に特許文献1、2を参照)。
【0005】
図7において、ターボ分子ポンプ100は、円筒状の外筒127の上端に吸気口101が形成されている。外筒127の内方には、ガスを吸引排気するためのタービンブレードによる複数の回転翼102a、102b、102c・・・をハブ99の周部に放射状かつ多段に形成した回転体103を備える。
【0006】
この回転体103の中心にはロータ軸113が取り付けられており、このロータ軸113は、例えば、いわゆる5軸制御の磁気軸受により空中に浮上支持かつ位置制御されている。
【0007】
上側径方向電磁石104は、4個の電磁石が、ロータ軸113の径方向の座標軸であって互いに直交するX軸とY軸とに対をなして配置されている。この上側径方向電磁石104に近接かつ対応されて4個の電磁石からなる上側径方向センサ107が備えられている。この上側径方向センサ107は回転体103の径方向変位を検出し、図示せぬ制御装置に送るように構成されている。
【0008】
制御装置においては、上側径方向センサ107が検出した変位信号に基づき、PID調節機能を有する補償回路を介して上側径方向電磁石104の励磁を制御し、ロータ軸113の上側の径方向位置を調整する。
【0009】
ロータ軸113は、高透磁率材(鉄など)などにより形成され、上側径方向電磁石104の磁力により吸引されるようになっている。かかる調整は、X軸方向とY軸方向とにそれぞれ独立して行われる。
【0010】
また、下側径方向電磁石105及び下側径方向センサ108が、上側径方向電磁石104及び上側径方向センサ107と同様に配置され、ロータ軸113の下側の径方向位置を上側の径方向位置と同様に調整している。
【0011】
更に、軸方向電磁石106A、106Bが、ロータ軸113の下部に備えた円板状の金属ディスク111を上下に挟んで配置されている。金属ディスク111は、鉄などの高透磁率材で構成されている。ロータ軸113の軸方向変位を検出するために軸方向センサ109が備えられ、その軸方向変位信号が制御装置に送られるように構成されている。
【0012】
そして、軸方向電磁石106A、106Bは、この軸方向変位信号に基づき制御装置のPID調節機能を有する補償回路を介して励磁制御されるようになっている。軸方向電磁石106Aと軸方向電磁石106Bは、磁力により金属ディスク111をそれぞれ上方と下方する。
【0013】
このように、制御装置は、この軸方向電磁石106A、106Bが金属ディスク111に及ぼす磁力を適当に調節し、ロータ軸113を軸方向に磁気浮上させ、空間に非接触で保持するようになっている。
【0014】
モータ121は、ロータ軸113を取り囲むように周状に配置された複数の磁極を備えている。各磁極は、ロータ軸113との間に作用する電磁力を介してロータ軸113を回転駆動するように、制御装置によって制御されている。
【0015】
更に、例えば下側径方向センサ108近傍に、図示しない位相センサが取り付けてあり、ロータ軸113の回転の位相を検出するようになっている。
【0016】
回転翼102a、102b、102c・・・とわずかの空隙を隔てて複数枚の固定翼123a、123b、123c・・・が配設されている。回転翼102a、102b、102c・・・は、それぞれ排気ガスの分子を衝突により下方向に移送するため、ロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成されている。
【0017】
また、固定翼123も、同様にロータ軸113の軸線に垂直な平面から所定の角度だけ傾斜して形成され、かつ外筒127の内方に向けて回転翼102の段と互い違いに配設されている。
そして、固定翼123の一端は、複数の段積みされた固定翼スペーサ125a、125b、125c・・・の間に嵌挿された状態で支持されている。
【0018】
固定翼スペーサ125はリング状の部材であり、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス、銅などの金属、又はこれらの金属を成分として含む合金などの金属によって構成されている。
【0019】
固定翼スペーサ125の外周には、わずかの空隙を隔てて外筒127が固定されている。外筒127の底部にはベース部129が配設され、固定翼スペーサ125の下部とベース部129の間にはネジ付きスペーサ131が配設されている。そして、ベース部129中のネジ付きスペーサ131の下部には排気口133が形成され、外部に連通されている。
【0020】
ネジ付きスペーサ131は、アルミニウム、銅、ステンレス、鉄、又はこれらの金属を成分とする合金などの金属によって構成された円筒状の部材であり、その内周面に螺旋状のネジ溝131aが複数条刻設されている。
ネジ溝131aの螺旋の方向は、回転体103の回転方向に排気ガスの分子が移動したときに、この分子が排気口133の方へ移送される方向である。
【0021】
回転体103のハブ99の下端には径方向かつ水平に張り出し部88が形成され、この張り出し部88の周端より回転翼102dが垂下されている。この回転翼102dの外周面は、円筒状で、かつネジ付きスペーサ131の内周面と所定の隙間を隔てて近接されている。
【0022】
ベース部129は、ターボ分子ポンプ100の基底部を構成する円盤状の部材であり、一般には鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属によって構成されている。
【0023】
ベース部129はターボ分子ポンプ100を物理的に保持すると共に、熱の伝導路の機能も兼ね備えているので、鉄、アルミニウムや銅などの剛性があり、熱伝導率も高い金属が使用されるのが望ましい。
なお、上記では、ネジ付きスペーサ131は回転翼102dの外周に配設し、ネジ付きスペーサ131の内周面にネジ溝131aが刻設されているとして説明した。しかしながら、これとは逆に回転翼102dの外周面にネジ溝が刻設され、その周囲に円筒状の内周面を有するスペーサが配置される場合もある。
【0024】
また、吸気口101から吸引されたガスがモータ121、下側径方向電磁石105、下側径方向センサ108、上側径方向電磁石104、上側径方向センサ107などで構成される電装部側に侵入することのないよう、電装部は周囲をステータコラム122で覆われ、この電装部内はパージガスにて所定圧に保たれている。回転体103の張り出し部88に対峙するステータコラム122の膨出境界点97より下側半分は上側半分に比べて径が大きく形成されている。
【0025】
かかる構成において、回転翼102がモータ121により駆動されてロータ軸113と共に回転すると、回転翼102と固定翼123の作用により、吸気口101を通じてチャンバからの排気ガスが吸気される。
【0026】
吸気口101から吸気された排気ガスは、回転翼102と固定翼123の間を通り、ベース部129へ移送される。このとき、排気ガスが回転翼102に接触又は衝突する際に生ずる摩擦熱や、モータ121で発生した熱の伝導や輻射などにより、回転翼102の温度は上昇するが、この熱は、輻射又は排気ガスの気体分子などによる伝導により固定翼123側に伝達される。
【0027】
固定翼スペーサ125は、外周部で互いに接合しており、固定翼123が回転翼102から受け取った熱や排気ガスが固定翼123に接触又は衝突する際に生ずる摩擦熱などを外筒127やネジ付きスペーサ131へと伝達する。
ネジ付きスペーサ131に移送されてきた排気ガスは、ネジ溝131aに案内されつつ排気口133へと送られる。
【0028】
この際には、回転翼102dにより気体分子に回転翼102dに対し接線方向の運動量が与えられる。
ネジ溝131aの斜面に衝突した分子は、排気口133方向に優位に反射される。
【0029】
この作用により、回転翼102dとネジ付きスペーサ131との間を通過する分子の拡散率が排気方向に優位になるのでポンプ作用が発生する。そして、回転体103の回転速度は分子に排気方向に優位な運動量を与えるために、その外周速は分子の運動速度に達する。
【0030】
この高速回転を達成するために、回転翼102dの材料には軽量かつ剛性の高い(=比強度の高い)、アルミ合金(ジュラルミン)が一般的に使われている。
また、回転翼102dにおいては、より軽量化を図るために、アルミ合金よりも更に比強度の高い繊維強化プラスチック(例えば、AFRP(アライド繊維強化プラスチック)、BFRP(ボロン繊維強化プラスチック)、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)等)が用いられることがある。
【0031】
このように回転翼102dに繊維強化プラスチックを用いた例を
図8に示す。
図8において、ステータコラム122の膨出境界点97付近において、ハブ99より径方向に突出した環状張出部98の周端には回転翼保持部96が下方に向けて突設されている。
【0032】
そして、この回転翼保持部96の周囲には繊維強化プラスチックからなる円筒状の厚みの薄い回転翼94が固着されている。このように回転翼94に対して繊維強化プラスチックを用いると回転体103を軽量化できる以外に次の利点がある。
【0033】
即ち、回転体103を回転可能に支持する軸受の容量や仕様を下げてコストダウンが可能になる。
また、特に支持方法が磁気軸受である場合、浮上電力を低減できるため、ポンプの稼働にかかる電力を低減できる。
【0034】
更に、このように繊維強化プラスチックを用いると以下に述べるようなポンプの不具合時にも有効である。
例えば回転翼102と相対する固定部である固定翼123や固定翼スペーサ125との間に異物が侵入・付着して、回転翼102と固定翼123や固定翼スペーサ125が焼きついたりする場合がある。
【0035】
そして、最悪の場合、その焼きついた箇所から回転翼102が急速に破壊することがある。運転中の回転翼102は高速回転しているため、大きな回転エネルギーを持つので、かかる現象により急速に固定翼123や固定翼スペーサ125にロックされるとポンプ外装部に大きな回転エネルギーが伝わるため、ポンプ本体に大きな回転モーメントが発生する。この回転翼102の急停止による大きな回転モーメントはターボ分子ポンプ100を取り付けている装置に大きなダメージを与える。
【0036】
しかしながら、繊維強化プラスチックを用いたことで回転翼102の軽量化が図られているので、かかる不具合時においても発生しうるモーメントを低減できる。
更に、繊維強化プラスチックを用いると強度を増すことができるので回転翼94の直径を拡大できる。このため、回転翼94の周速が大きくなり、気体分子により大きな運動量を与えることができるので、排気性能が向上する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0038】
ところで、回転翼94に繊維強化プラスチックを用いると、アルミ合金より一体成型された回転体103に比べ次の変化が起こる。
(1)回転翼94の軽量化により回転体の質量分布が変化するので重心位置がタービン側に移動する。
【0039】
回転体103を支持する軸受のうち、タービン側を支持している軸受である上側径方向電磁石104により大きな荷量がかかる。回転翼94に比べてタービン部の質量が著しく大きい場合、回転体103の重心位置が上側径方向電磁石104よりも外側になる。即ち、軸受に対して重心位置がオーバハングになる。
【0040】
この状態では、タービン側を指示している上側径方向電磁石104に更に大きな荷重がかかり、より大きな容量の上側径方向電磁石104が必要となるためコストが増大する。
【0041】
(2)慣性モーメントが変化する。
ロータ軸113周りの慣性モーメント(=Iz)は、直径の大きいタービン部の方が回転翼94よりも大きく支配的であるため、回転翼94を繊維強化プラスチック化しても変化が小さい。
【0042】
一方、重心より離れた位置に存在する回転翼94の質量が減少すると、重心よりロータ軸直角周りのモーメント(=Ir)は大幅に減少する。
よって、ロータ軸113周りの慣性モーメント(=Iz)と重心よりロータ軸直角周りの慣性モーメント(=Ir)との比率である慣性モーメント比(Iz/Ir)の値が大きくなる。
【0043】
Iz/Irの値が大きくなると、回転体の歳差運動による固有振動数(=ωc)が高い周波数に変化する(回転機械の力学 山本敏男著 株式会社コロナ社 初版のP.23、
図2.13固有振動線図を参照)。
この現象により回転周波数と歳差運動(=ωc)による固有振動数との共振点上昇という問題が発生する。
【0044】
共振点を通過する際には、回転体103のアンバランスに起因する振れまわりが大きくなるので、振れまわりを抑えるために軸受の容量を増加させたり、磁気軸受においては電磁石に大きな電流を流して回転体103の振れまわりを抑制している。
【0045】
所定のアンバランスモーメントIdにより発生するアンバランス外力Fdは、回転数の二乗に比例して大きくなるため、共振点が上昇すると、大きな容量の軸受が必要になり、コスト及び軸受のサイズが増大する。
【0046】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、回転翼を軽量化することに伴い生ずる重心位置変動及び慣性モーメント比の変動を調整することの可能な回転体及び該回転体を搭載した真空ポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0047】
このため本発明(請求項1)は、ロータ軸と、該ロータ軸により貫通支持されたハブと、該ハブより径方向に向け突出形成された環状張出部と、該環状張出部に対し周状かつ前記ロータ軸に沿う方向に取り付けられた前記ハブの材料よりも比重の軽い材料からなる回転翼と、該回転翼の内側の前記環状張出部より前記ロータ軸に沿って垂下され
、排気経路とは異なる位置に設けられた重量調整部材とを備えて構成した。
【0048】
従来の回転翼に比べて比重の軽い材料からなる回転翼を取り付けた場合には回転体の質量分布が変化するので重心位置が移動する。また、慣性モーメント分布も変化する。しかしながら、重量調整部材を備えることで重心位置の移動や慣性モーメント分布の変化を極力抑えることができる。
【0049】
以上により、軸受にかかる荷重が軽減するため、製造コストを低減できる。
また、重量調整部材の設計を変更することにより回転体パラメータを変更できるので、回転体のバリエーションに対して軸受の種類を増やす必要がなく、製造コストを低減できる。
【0050】
また、本発明(請求項2)は、前記重量調整部材が、前記環状張出部より前記ロータ軸に沿って垂下された延長部材と、該延長部材の先端又は周囲に形成された重り部とを有することを特徴とする。
【0051】
慣性モーメント(=Iz)は、ハブの部分の方が支配的である。従って、重り部を配設したとしても余り変わらない。これに対して延長部材を垂下させたことで、重心よりロータ軸直角周りのモーメント(=Ir)の値を大きくできる。従って、慣性モーメント比(Iz/Ir)の値を小さくできる。このことにより、回転体の歳差運動による固有振動数を定格回転数以下にでき振れまわりも抑えることができる。
【0052】
更に、本発明(請求項3)は、前記延長部材が前記ハブに対して別部材で構成され、及び/又は、前記重り部が前記延長部材に対して別部材で構成されたことを特徴とする。
【0053】
更に、本発明(請求項4)は、前記重り部が前記ハブの材料よりも比重の重い材料からなることを特徴とする。
【0054】
このことにより、ポンプ室内のように限られた容積の空間内であっても慣性モーメント比(Iz/Ir)の値を効率良く小さくできる。
【0055】
更に、本発明(請求項5)は、前記延長部材が前記ハブの材料よりも比重の軽い材料からなることを特徴とする。
【0056】
このことにより、ポンプ室内のように限られた容積の空間内であっても慣性モーメント比(Iz/Ir)の値をより一層効率良く小さくできる。
【0057】
更に、本発明(請求項6)は、前記ハブの径方向の厚みよりも前記延長部材の径方向の厚みの方が薄く形成されたことを特徴とする。
【0058】
このことにより、ポンプ室内のように限られた容積の空間内であっても慣性モーメント比(Iz/Ir)の値をより一層効率良く小さくできる。
【0059】
更に、本発明(請求項7)は、前記重量調整部材が、前記環状張出部より前記ロータ軸に沿って垂下された延長部材と、該延長部材の先端又は周囲に形成された重り部とを有し、前記延長部材が前記ハブに対して別部材で構成され、及び/又は、前記重り部が前記延長部材に対して別部材で構成されたことを特徴とする。
更に、本発明(請求項8)は、前記重量調整部材が、前記環状張出部より前記ロータ軸に沿って垂下された延長部材と、該延長部材の先端又は周囲に形成された重り部とを有し、前記重り部が前記ハブの材料よりも比重の重い材料からなることを特徴とする。
更に、本発明(請求項9)は、前記重量調整部材が、前記環状張出部より前記ロータ軸に沿って垂下された延長部材を有し、前記延長部材が前記ハブの材料よりも比重の軽い材料からなることを特徴とする。
更に、本発明(請求項10)は、前記重量調整部材が、前記環状張出部より前記ロータ軸に沿って垂下された延長部材を有し、前記ハブの径方向の厚みよりも前記延長部材の径方向の厚みの方が薄く形成されたことを特徴とする。
更に、本発明(請求項
11)は、請求項1乃至請求項
10のいずれか一項に記載の回転体が真空ポンプに搭載されたことを特徴とする。
【0060】
軸受に対して回転体重心位置がオーバハングになることを抑制して、軸受容量が小さくとも支持できるようになり、コスト低減が図れる。また、真空ポンプに磁気軸受を採用している場合には、ランニングにかかる電力を低減できる。
【発明の効果】
【0061】
以上説明したように本発明によれば、回転翼の内側の環状張出部よりロータ軸に沿って垂下された重量調整部材を備えて構成したので、重心位置の移動や慣性モーメント分布の変化を極力抑えることができる。従って、軸受にかかる荷重が軽減するため、製造コストを低減できる。
【0062】
また、重量調整部材の設計を変更することにより回転体パラメータを変更できるので、回転体のバリエーションに対して軸受の種類を増やす必要がなく、製造コストを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0064】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の第1実施形態の構成図を
図1に示す。
図1には、回転体103の環状張出部98及び繊維強化プラスチック等の軽量部材からなる回転翼94回りの部分構成図を示す。
【0065】
図1において、回転体103のハブ99の下端で、かつ環状張出部98の内周端には下方に向けて重量調整部材に相当する円筒状の延長部材201が突出されている。この延長部材201の内側面上部はステータコラム122の膨出境界点97付近の形状に沿うように窪んで形成されている。
なお、
図8と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
【0066】
次に、本発明の第1実施形態の動作を説明する。
繊維強化プラスチック等の軽量部材からなる回転翼94を配設したことで、前述したように回転体103の質量分布が変化するので重心位置がタービン側に移動したり慣性モーメント分布が変化する。
【0067】
かかる弊害を防止するため、回転体103の重心位置と慣性モーメント比とを調整するための重量調整部材を配設する。即ち、この重量調整部材としての延長部材201をハブ99の下端で、かつ環状張出部98の内周端に対し環状に下方に向けて突出させる。このことにより、繊維強化プラスチック等からなる回転翼94を採用した場合に回転翼94の軽量化に伴い重心位置がタービン側に移動していたのを上側径方向電磁石104より下方側に戻すことができる。
【0068】
従って、繊維強化プラスチック等からなる回転翼94を採用した場合であっても回転体の質量分布を従来と同様に維持でき、上側径方向電磁石104に対しても大きな荷重がかかり難くできる。
【0069】
また、ロータ軸113周りの慣性モーメント(=Iz)は、直径の大きいタービン部の方が回転翼94よりも大きく支配的であるため、重量調整部材としての延長部材201を環状張出部98の内周端に突出させても余り変わらない。これに対して重量調整部材としての延長部材201を突出させたことで、重心よりロータ軸直角周りのモーメント(=Ir)の値を大きくできる。従って、慣性モーメント比(Iz/Ir)の値を小さくできる。このことにより、回転体103の歳差運動による固有振動数を定格回転数以下にでき振れまわりも抑えることができる。
【0070】
なお、延長部材201の材質はハブ99や回転翼102と同様にアルミ合金で形成されてもよいが、より比重の重いステンレス合金等とされてもよい。
また、この重量調整部材に相当する延長部材201は
図2に示すように径方向外側に向けても延長されるようにしてもよい。この場合には延長部材201の径方向の厚みはより大きくなり、重量調整部材としての機能は増す。
【0071】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態の全体構成図を
図3に示す。
図3において、回転体103のハブ99の下端で、かつ環状張出部98の内周端には下方に向けて延長部材203が環状に突出されている。そして、この延長部材203の下端には、この延長部材203の厚みよりも径方向外側に向けて大きい厚みを有する環状の重り部205が形成されている。延長部材203及び重り部205は重量調整部材に相当する。
【0072】
かかる構成において、延長部材203及び重り部205はステータコラム122の形状に沿って回転体103の内側に突出されている。そして、重り部205は延長部材203の長さを経た分図示しない回転体103の重心位置から一層離隔して配設されている。
【0073】
このため、重心よりロータ軸直角周りのモーメント(=Ir)の値を第1実施形態に比べ一層大きくできる。従って、慣性モーメント比(Iz/Ir)の値を第1実施形態よりも一層小さくできる。このことにより、回転体103の歳差運動による固有振動数を定格回転数以下にでき振れまわりもより一層効率良く抑えることができる。
【0074】
なお、延長部材203及び重り部205の材質はハブ99や回転翼102と同様にアルミ合金で一体形成されてもよいが、
図4に示すように、この延長部材203及び重り部205部分を別部材としてより比重の重いステンレス合金等とされてもよい。ここに、別部材としての延長部材203及び重り部205は重量調整部材に相当する。
この場合には、延長部材203をハブ99の底部に対して接着、圧入、又は焼きバメ等により接合する。
【0075】
また、延長部材203及び重り部205の構成は、
図5に示すように、延長部材207の外周に環状の重り部209を別部材として接合されるようにしてもよい。ここに、延長部材207及び環状の重り部209は重量調整部材に相当する。
重り部209の材質はハブ99や回転翼102と同様にアルミ合金で一体形成されてもよいが、重り部209部分をより比重の重いステンレス合金等とされてもよい。
【0076】
更に、延長部材203及び重り部205の構成は、
図6に示すように、延長部材211と重り部213とを共に別部材として延長部材211をハブ99の底部に対して接合すると共に、重り部213を延長部材211の外周に接合されるようにしてもよい。この場合、延長部材211をアルミ合金よりも比重が軽い繊維強化プラスチック等で構成し、かつ、重り部213をより比重の重いステンレス合金等とされてもよい。ここに、延長部材211及び環状の重り部213は重量調整部材に相当する。
【0077】
以上により、軸受にかかる荷重が軽減するため、製造コストを低減できる。磁気軸受を採用している場合には、ランニングにかかる電力を低減できる。
【0078】
また、重量調整部材の設計を変更することにより回転体パラメータを変更できるので、回転体のバリエーションに対して軸受の種類を増やす必要がなく、製造コストを低減できる。