特許第5864151号(P5864151)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864151
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】ボルト支持構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/16 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
   H02G3/16
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-165617(P2011-165617)
(22)【出願日】2011年7月28日
(65)【公開番号】特開2013-31293(P2013-31293A)
(43)【公開日】2013年2月7日
【審査請求日】2014年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】李 承石
(72)【発明者】
【氏名】山田 広明
【審査官】 福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−313521(JP,A)
【文献】 特開2011−097707(JP,A)
【文献】 特開2011−223777(JP,A)
【文献】 特開2011−234427(JP,A)
【文献】 特開2011−148466(JP,A)
【文献】 特開平08−182156(JP,A)
【文献】 実開平05−062124(JP,U)
【文献】 特開2001−224116(JP,A)
【文献】 特開2000−059952(JP,A)
【文献】 米国特許第07784857(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部及び軸部を有するボルトと、前記頭部を取り付ける取付部と、を備え、前記頭部が前記取付部に取り付けられた状態で前記軸部にナットが螺合され、前記頭部と前記ナットとの間にバスバ及び端子金具が挟まれるボルト支持構造において、
前記頭部が、大径部及び小径部で構成され、前記取付部に対して前記軸部の軸方向に移動可能なように、前記取付部に取り付けられ、前記軸部に前記ナットが螺合されることにより前記バスバ又は前記端子金具に接触し、
前記取付部には、底板と、該底板との間に前記大径部の外縁部を位置付ける上板と、開口部と、が設けられ、
前記上板には、前記開口部側に開口する切り欠きと、前記開口部の近傍に設けられ前記切り欠きの内縁部から互いに近づく側に突出した一対の突起と、が設けられており、
前記一対の突起間の間隔が、前記小径部の直径よりも小さく形成されており、
前記軸部及び前記小径部が、前記開口部及び前記切り欠きを通されている
ことを特徴とするボルト支持構造。
【請求項2】
記底板と前記上板との間隔が、前記大径部の外縁部の厚みよりも大きく形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のボルト支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バスバと端子金具とを共締めして電気接続するためのボルトを電気接続箱のフレーム等に取り付けるボルト支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7〜10は、従来の電気接続箱に設けられた「ボルト支持構造」を示す断面図である。また、前記電気接続箱は、自動車に搭載されて、該自動車に搭載された電子機器に対して電力供給及び信号伝達を行うものである。
【0003】
上記ボルト支持構造201は、図7に示すように、頭部220及び軸部223を有するボルト202と、頭部220を取り付けた取付部203と、を備えている。ボルト202は、図8に示すように、バスバ4に設けられた接続部40と、電源線の端末に接続された端子金具に設けられた接続部50と、を共締めして電気接続するためのボルトである。取付部203は、合成樹脂で構成されており、電気接続箱のフレーム211に一体または別体で設けられている。
【0004】
上記ボルト202は、頭部220が取付部203の樹脂中に埋め込まれており、軸部223が取付部203の外表面から突出している。また、ボルト202は、取付部203に対して軸部223の軸方向に移動不能に、取付部203に取り付けられている。
【0005】
上記バスバ4は、金属板にプレス加工が施されて得られるものである。バスバ4には、ヒューズ等の電子部品と電気接続される図示しない複数の接続部と、上記端子金具の接続部50と電気接続される接続部40と、が設けられている。この接続部40は、バスバ4の端部が直角に曲げられて形成されており、ボルト202の軸部223が通される貫通孔41が設けられている。
【0006】
上記端子金具の接続部50は、平板状に形成され、ボルト202の軸部223が通される貫通孔50aが設けられている。
【0007】
上記ボルト支持構造201が設けられた電気接続箱においては、図8に示すように、ボルト202の頭部220が取付部203に取り付けられた状態で、軸部223が、バスバ4の貫通孔41、端子金具の貫通孔50a、ワッシャー7、を順に通され、該軸部223にナット8が螺合されることでバスバ4の接続部40と端子金具の接続部50とが共締めされて電気接続される(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−276648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記ボルト支持構造201が設けられた電気接続箱においては、以下に示す問題があった。すなわち、電気接続箱のフレーム211に装着されたバスバ4は、設計上は接続部40が取付部203の外表面に接触するようになっているが、実際には図9に示すように、接続部40が取付部203の外表面から浮き上がってしまうことがあった。そして、図9に示す状態の接続部40に端子金具の接続部50を重ねて軸部223にナット8を螺合させた場合、図10に示すように、接続部40が曲がって折り曲げ箇所Fに応力が集中してしまうという問題があった。また、このように接続部40が曲がって折り曲げ箇所Fに応力が集中すると、バスバ4の破損や、ボルト202とナット8の不完全締結の原因となり好ましくなかった。
【0010】
したがって、本発明は、バスバの位置ずれを吸収することができ、ボルト締結時にバスバが曲がることを防止できるボルト支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、頭部及び軸部を有するボルトと、前記頭部を取り付ける取付部と、を備え、前記頭部が前記取付部に取り付けられた状態で前記軸部にナットが螺合され、前記頭部と前記ナットとの間にバスバ及び端子金具が挟まれるボルト支持構造において、前記頭部が、大径部及び小径部で構成され、前記取付部に対して前記軸部の軸方向に移動可能なように、前記取付部に取り付けられ、前記軸部に前記ナットが螺合されることにより前記バスバ又は前記端子金具に接触し、前記取付部には、底板と、該底板との間に前記大径部の外縁部を位置付ける上板と、開口部と、が設けられ、前記上板には、前記開口部側に開口する切り欠きと、前記開口部の近傍に設けられ前記切り欠きの内縁部から互いに近づく側に突出した一対の突起と、が設けられており、前記一対の突起間の間隔が、前記小径部の直径よりも小さく形成されており、前記軸部及び前記小径部が、前記開口部及び前記切り欠きを通されていることを特徴とするボルト支持構造である。
【0012】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記底板と前記上板との間隔が、前記大径部の外縁部の厚みよりも大きく形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、前記頭部が、前記取付部に対して前記軸部の軸方向に移動可能なように、前記取付部に取り付けられているので、バスバの位置ずれを吸収することができ、ボルト締結時にバスバが曲がることを防止できるボルト支持構造を提供することができる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、前記頭部が、大径部及び小径部で構成され、前記取付部には、底板と、該底板との間に前記大径部の外縁部を位置付ける上板と、が設けられ、前記軸部及び前記小径部が前記上板に設けられた切り欠きを通されており、前記底板と前記上板との間隔が、前記大径部の外縁部の厚みよりも大きく形成されているので、バスバの位置ずれを吸収することができ、ボルト締結時にバスバが曲がることを防止できるボルト支持構造を提供することができる。また、ボルト締結時に締結用治具によりボルト軸方向上側から掛かる力を底板により受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施の形態にかかるボルト支持構造が適用された電気接続箱を示す斜視図である。
図2図1中のA部の構成を説明する説明図である。
図3図2中のC−C線に沿った断面図である。
図4図2中のD−D線に沿った断面図である。
図5図4に示されたカセットブロックにバスバが取り付けられた状態を示す断面図である。
図6図5に示されたバスバがボルト及びナットによって端子金具と電気接続された状態を示す断面図である。
図7】従来のボルト支持構造を示す断面図である。
図8図7に示されたバスバがボルト及びナットによって端子金具と電気接続された状態を示す断面図である。
図9図7に示されたバスバに位置ずれが生じた状態を示す断面図である。
図10図9に示されたバスバがボルト及びナットによって端子金具と電気接続された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の一実施の形態にかかる「ボルト支持構造1」を図1〜6を参照して説明する。図1に示すように、「ボルト支持構造1」は、電気接続箱10に適用される。電気接続箱10は、自動車に搭載されて、該自動車に搭載された電子機器に対して電力供給及び信号伝達を行うものである。また、本発明では、ジャンクションブロック(ジャンクションボックスとも言う。)、ヒューズブロック(ヒューズボックスとも言う。)、リレーブロック(リレーボックスとも言う。)を、総称して以下電気接続箱と呼ぶ。
【0017】
上記電気接続箱10は、複数の電子部品16,17,18と、配線部材である複数のバスバ4と、これら電子部品16,17,18及びバスバ4が装着される合成樹脂製のカセットブロック11,12と、カセットブロック11,12を収容する本体ケース13と、本体ケース13の上面を覆う図示しないアッパカバーと、本体ケース13内に引き込まれる電源線6の外周に取り付けられて本体ケース13を防水するグロメット14と、本体ケース13外に導出される図示しないワイヤハーネスの電線束の外周に取り付けられて本体ケース13を防水するグロメット15と、カセットブロック11に一体に設けられた取付部3に取り付けられるボルト2と、を備えている。
【0018】
上記ボルト支持構造1は、図2に示すように、頭部20及び軸部23を有するボルト2と、頭部20を取り付けた取付部3と、を備えている。ボルト2は、バスバ4に設けられた接続部40と、電源線6の端末に接続された端子金具5に設けられた接続部50と、を共締めして電気接続するためのボルトである。また、図2中には、2つのボルト支持構造1が示されているが、このうち一方は、取付部3の構成を説明するためにバスバ4、端子金具5、電源線6、ワッシャー7、ナット8を不図示としている。
【0019】
上記バスバ4は、金属板にプレス加工が施されて得られるものである。バスバ4には、電子部品16,17,18と電気接続される図示しない複数の接続部と、端子金具5の接続部50と電気接続される接続部40と、が設けられている。この接続部40は、バスバ4の端部が直角に曲げられて形成されており、ボルト2の軸部23が通される貫通孔41が設けられている。
【0020】
上記端子金具5は、金属板にプレス加工が施されて得られるものである。図2に示すように、端子金具5には、電源線6の芯線61を圧着する一対の圧着片51と、電源線6の絶縁被覆62を圧着する一対の圧着片52と、上記接続部50と、が設けられている。接続部50は、平面視円形の平板状に形成され、ボルト2の軸部23が通される貫通孔50aが設けられている。
【0021】
上記ボルト2は、図2に示すように、頭部20が大径部21及び小径部22で構成されている。大径部21は、平面視略正方形の板状に形成されている。小径部22は、平面視円形の板状に形成されている。大径部21の外縁部一辺の長さは、小径部22の直径よりも大きく形成されている。また、小径部22は、大径部21と軸部23との間に配置されている。また、大径部21、小径部22、軸部23は、同軸上に配置されている。
【0022】
上記取付部3には、図2,3に示すように、底板30と、底板30の外縁部からコ字状に立設した側板34と、側板34に連なるとともに底板30と相対し、底板30との間に大径部21の外縁部を位置付ける上板31と、側板34が設けられていない所に形成された開口部35と、が設けられている。上板31には、軸部23及び小径部22が通される切り欠き32と、切り欠き32の内縁部から互いに近付く側に突出した一対の突起36と、が設けられている。切り欠き32は、開口部35側に開口している。一対の突起36は、開口部35の近傍に設けられている。また、一対の突起36間の間隔は、小径部22の直径よりも小さく形成されている。また、底板30と上板31との間隔は、大径部21の外縁部の厚みよりも大きく形成されている。
【0023】
ボルト2は、図2,4に示すように、バスバ4がカセットブロック11に装着されていない状態で、底板30上を図2中の矢印B方向にスライドされることによって、開口部35、一対の突起36間、切り欠き32、を通されて上記取付部3に取り付けられる。また、ボルト2は、一対の突起36間を通される際には突起36間の間隔が拡がるように取付部3を一時的に撓ませる。このようにして頭部20が取付部3に取り付けられたボルト2は、取付部3に対して軸部23の軸方向、すなわち図4中の矢印E方向、に移動可能となっている。なお、矢印B方向と逆方向には、一対の突起36によって小径部22の抜け止めがされていることによって移動不能となっている。また、バスバ4は、ボルト2の頭部20が取付部3に取り付けられた後にカセットブロック11に装着される。この際に、バスバ4の貫通孔41にボルト2の軸部23が通される。
【0024】
上記ボルト支持構造1が設けられた電気接続箱10においては、ボルト2の頭部20が取付部3に取り付けられた状態で、軸部23が、バスバ4の貫通孔41、端子金具5の貫通孔50a、ワッシャー7、を順に通され、そして、該軸部23にナット8が螺合されることで、小径部22とナット8との間に接続部40、接続部50、ワッシャー7が挟まれてバスバ4と端子金具5とが電気接続される。
【0025】
また、電気接続箱10においては、設計上はバスバ4の接続部40が図3に示すように上板31の外表面に接触するようになっているが、実際には図5に示すように接続部40が上板31の外表面から浮き上がってしまうことがあった。
【0026】
このように、接続部40が上板31の外表面から浮き上がっている場合は、軸部23にナット8を螺合させることによって、図6に示すようにボルト2が矢印Y方向に移動して、小径部22が接続部40に当接する。そして、この小径部22とナット8との間に接続部40、接続部50、ワッシャー7が挟まれてバスバ4と端子金具5とが電気接続される。
【0027】
このように、本発明では、頭部20が取付部3に対して軸部23の軸方向に移動可能なように取付部3に取り付けられ、小径部22が上板31の外表面から突没自在とされ、小径部22とナット8との間に上板31が挟まれない構成とされている。よって、バスバ4が正規位置に位置付けられて接続部40が上板31の外表面に接触している場合でも、バスバ4に位置ずれが生じて接続部40が上板31と間隔をあけている場合でも、バスバ4を曲げることなく小径部22とナット8との間に接続部40及び接続部50を挟んでこれらを電気接続することができる。
【0028】
また、本発明では、ボルト2とナット8の締結にワッシャー7を用いることは必須ではなく、必要に応じて適宜用いれば良い。
【0029】
また、本発明では、取付部3がカセットブロック11と別体で設けられ、接着、係止構造等によってカセットブロック11に組み付けられる構成であっても良い。
【0030】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0031】
1 ボルト支持構造
2 ボルト
3 取付部
4 バスバ
5 端子金具
8 ナット
20 頭部
23 軸部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10