特許第5864206号(P5864206)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5864206鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864206
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム
(51)【国際特許分類】
   G01V 1/28 20060101AFI20160204BHJP
【FI】
   G01V1/28
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-232834(P2011-232834)
(22)【出願日】2011年10月24日
(65)【公開番号】特開2013-92387(P2013-92387A)
(43)【公開日】2013年5月16日
【審査請求日】2014年2月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100089635
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 守
(74)【代理人】
【識別番号】100096426
【弁理士】
【氏名又は名称】川合 誠
(72)【発明者】
【氏名】岩田 直泰
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊六
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−027445(JP,A)
【文献】 特開2007−047894(JP,A)
【文献】 特開2005−128642(JP,A)
【文献】 特開2004−212331(JP,A)
【文献】 特開平10−040493(JP,A)
【文献】 特開2001−174242(JP,A)
【文献】 特開2009−180687(JP,A)
【文献】 特表2008−522140(JP,A)
【文献】 特開2009−168509(JP,A)
【文献】 特開2001−336972(JP,A)
【文献】 特開2009−115629(JP,A)
【文献】 佐藤新二他,早期地震検知手法の汎用的な評価システムの開発,鉄道総研報告,日本,2005年10月 5日,第19巻第10号,第17−20頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00−99/00
G01H 1/00−17/00
G01V 1/00−15/00
G08B 19/00−21/24
G08G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)鉄道や道路の地震計測エリアの近傍に設置される地震計と、
(b)前記地震計測エリアに設置されるノイズ要因検知装置と、
(c)該ノイズ要因検知装置により検知されたノイズを格納するとともに該ノイズの生成要因毎に予め検知したノイズデータを基準データとして格納するノイズデータ格納部と、
(d)前記地震計の地震動データとともに、前記ノイズ要因検知装置の検知結果に基づいて前記地震動データに前記ノイズデータが含まれているか否かを表示する、地震波とノイズの有無の表示部とを具備することを特徴とする鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う圧力を検知する圧力計であることを特徴とする鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム。
【請求項3】
請求項1記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う騒音を検知する騒音計であることを特徴とする鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム。
【請求項4】
請求項1記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う歪みを計測する床盤等に設置される歪み計であることを特徴とする鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム。
【請求項5】
請求項1記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う気圧の変化を計測する気圧計であることを特徴とする鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム。
【請求項6】
請求項1記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う風速を検出する風速計であることを特徴とする鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム。
【請求項7】
請求項1記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両を検知するレーザー干渉計であることを特徴とする鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム。
【請求項8】
請求項1記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両を検知する撮像装置であることを特徴とする鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地震発生時には、主に鉄道や道路の沿線に置されている地震計からの情報により、列車の運転規制や道路の通行規制の判断が行われている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】佐藤 新二,中村 洋光,「早期地震検知手法の汎用的な評価システムの開発」,RTRI REPORT Vol.19,No.10,2005.10,pp17−20
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鉄道や道路への地震動による影響をより正確に把握しようとした場合、上記したように地震計を鉄道や道路の近傍に設置することが望ましい。
【0005】
しかしながら、近傍に設置すると、その地震計は地震検知にとってノイズとなる鉄道や道路の交通振動の影響を受けやすくなってしまうといった問題があった(上記非特許文献1参照)。
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みて、鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、鉄道や道路の地震計測エリアの近傍に設置される地震計と、前記地震計測エリアに置されるノイズ要因検知装置と、このノイズ要因検知装置により検知されたノイズを格納するとともにこのノイズの生成要因毎に予め検知したノイズデータを基準データとして格納するノイズデータ格納部と、前記地震計の地震動データとともに、前記ノイズ要因検知装置の検知結果に基づいて前記地震動データに前記ノイズデータが含まれているか否かを表示する、地震波とノイズの有無の表示部とを具備することを特徴とする。
【0008】
〔2〕上記〔1〕記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う圧力を検知する圧力計であることを特徴とする。
【0009】
〔3〕上記〔1〕記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う騒音を検知する騒音計であることを特徴とする。
【0010】
〔4〕上記〔1〕記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う歪みを計測する床盤等に設置される歪み計であることを特徴とする。
【0011】
〔5〕上記〔1〕記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う気圧の変化を計測する気圧計であることを特徴とする。
【0012】
〔6〕上記〔1〕記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う風速を検出する風速計であることを特徴とする。
【0013】
〔7〕上記〔1〕記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両を検知するレーザー干渉計であることを特徴とする。
【0014】
〔8〕上記〔1〕記載の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムにおいて、前記ノイズ要因検知装置が、前記鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両を検知する撮像装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、鉄道や道路の地震計測エリアに設置した地震計に含まれるノイズの併存の有無をも報知し、警報の精度の向上を図ることができる。つまり、地震計とノイズを生成するノイズ要因検知装置との協働により、地震計の警報情報の信頼性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施例を示す鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムの構成図である。
図2】本発明の実施例を示す報知装置の表示部におけるノイズ併存ありの場合の表示例を示す図である。
図3】本発明の実施例を示す報知装置の表示部におけるノイズ併存無しの場合の表示例を示す図である。
図4】本発明の実施例を示す鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムの動作フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムは、鉄道や道路の地震計測エリアの近傍に設置される地震計と、前記地震計測エリアに設置されるノイズ要因検知装置と、このノイズ要因検知装置により検知されたノイズを格納するとともにこのノイズの生成要因毎に予め検知したノイズデータを基準データとして格納するノイズデータ格納部と、前記地震計の地震動データとともに、前記ノイズ要因検知装置の検知結果に基づいて前記地震動データに前記ノイズデータが含まれているか否かを表示する、地震波とノイズの有無の表示部とを具備する。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明の実施例を示す鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムの構成図である。
【0020】
この図において、1は鉄道や道路の地震計測エリア、2はこの地震計測エリア1の近傍に設置される地震計、3は地震計測エリア1に設置されるノイズ要因検知装置、4はデータ処理装置であり、4Aは地震計2からの地震波を記録する地震波記録部、4Bはノイズの生成要因を特定するための基準データが格納されるとともにノイズ要因検知装置3で検知されたノイズデータを記録するノイズデータ格納部、4Cは地震波とノイズの有無の表示部、5はデータ処理装置4からのデータに基づいて必要に応じた警報を発生する警報装置である。
【0021】
地震計2は地震計測エリア1の近傍に設置されるため、計測されるデータには地震波とノイズ(交通振動)の両方が含まれている可能性がある。ノイズ要因検知装置3は、地震計測エリア1におけるノイズの生成要因の有無とそれが何であるかを検知するための装置であり、例えば、列車や自動車などの通行を検知するためのセンサーである。かかるセンサーとしては、例えば、
(1)鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う圧力を検知する圧力計
(2)鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う騒音を検知する騒音計
(3)鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う歪みを計測する床盤等に設置される歪み計
(4)鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う気圧の変化を計測する気圧計
(5)鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両の通過に伴う風速を検出する風速計
(6)鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両を検知するレーザー干渉計
(7)鉄道及び道路を通行する列車や自動車などの交通車両を検知する撮像装置
などが挙げられる。なお、上記したセンサーは、単体でも組み合わせで用いられてもよい。
【0022】
そこで、地震波とノイズの有無の表示部4Cにおけるノイズの有無とノイズ要因の表示について説明する。
【0023】
図2及び図3は本発明の実施例を示す報知装置の表示部の表示例を示す図である。
【0024】
図2に示すように、地震波にノイズが併存する場合には、ノイズの併存「有」のマーカが点灯するとともに、そのノイズ要因の種類、例えば、鉄道車両を示すマーカが点灯する。
【0025】
また、図3に示すように、地震波にノイズが併存しない場合には、ノイズの併存「無」のマーカが点灯し、ノイズ要因の種類についてのマーカは点灯しない。
【0026】
このように、地震波とノイズの有無の表示部4Cにおいて地震波がノイズを含むものであるか否か、またノイズ要因の種類が何であるかを見分けることができる。
【0027】
すなわち、列車や自動車などの交通車両が通過する際の、ノイズ要因検知装置3としての各センサーにおける検知結果とノイズ要因の判断基準となる基準データとを照合することにより、地震計2で得られた地震波がノイズを含むものであるか否かを判断・報知することができる。
【0028】
図4は本発明の実施例を示す鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムの動作フローチャートである。
【0029】
(1)地震計により地震計測エリアの地震動の計測及びノイズ要因検知装置(センサー)により鉄道又は道路における交通の検知を行う(ステップS1)。
【0030】
(2)次に、地震計による地震動とノイズ要因検知装置(センサー)による交通の検知が同時に発生したか否かをチェックする(ステップS2)。
【0031】
(3)上記ステップS2において、交通の検知ありの場合、ノイズ要因検知装置による検知結果をノイズデータ格納部の基準データと照合し、交通の種類を特定する(ステップS3)。
【0032】
(4)上記ステップS3で特定された交通の種類に従い、地震波とノイズの有無の表示部4Cにおいて、地震波とノイズの有無、ノイズ要因を表示する(ステップS4)。
【0033】
(5)次に、その地震波とノイズの有無に基づいて地震計測エリアにおける交通規制の必要があるか否かをチェックする(ステップS5)。
【0034】
(6)上記ステップS5において、警報の必要がある場合には警報を報知する(ステップS6)。
【0035】
上記したように、地震計測エリアの実状に応じた種々のノイズ要因検知装置を選択することにより、地震のみによる地震動か、列車や自動車などの交通車両によるノイズ(交通振動)を含むものであるか否かを識別することができる。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の鉄道及び道路の近傍に設置される地震計のノイズ識別システムは、鉄道及び道路の近傍における地震計の地震動データとともに、ノイズの有無を併せて表示し、鉄道及び道路の近傍に設置される地震計の警報情報の信頼性を高めることができる地震動識別システムとして利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 鉄道や道路の地震計測エリア
2 地震計
3 ノイズ要因検知装置
4 データ処理装置
4A 地震波記録部
4B ノイズデータ格納部
4C 地震波とノイズの有無の表示部
5 警報装置
図1
図2
図3
図4