(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5864258
(24)【登録日】2016年1月8日
(45)【発行日】2016年2月17日
(54)【発明の名称】スペクトル光コヒーレンス断層映像法を用いて構造データを収集する方法および装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20160204BHJP
A61B 3/10 20060101ALI20160204BHJP
A61B 3/12 20060101ALI20160204BHJP
【FI】
G01N21/17 630
A61B3/10 R
A61B3/10 Z
A61B3/12 E
【請求項の数】12
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-537893(P2011-537893)
(86)(22)【出願日】2009年11月27日
(65)【公表番号】特表2012-510610(P2012-510610A)
(43)【公表日】2012年5月10日
(86)【国際出願番号】EP2009008473
(87)【国際公開番号】WO2010063416
(87)【国際公開日】20100610
【審査請求日】2011年8月3日
【審判番号】不服2014-21388(P2014-21388/J1)
【審判請求日】2014年10月22日
(31)【優先権主張番号】08020881.2
(32)【優先日】2008年12月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511007211
【氏名又は名称】キヤノン・オプサルミック・テクノロジーズ・スプウカ・ジ・オグラニチョノン・オドポヴィエドニアウノシツィオン
【氏名又は名称原語表記】Canon Ophthalmic Technologies Sp. z o. o.
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100100479
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 三喜夫
(72)【発明者】
【氏名】トマス・バイラセヴスキー
(72)【発明者】
【氏名】パヴェル・ダラシンキ
(72)【発明者】
【氏名】ヤロスラフ・ヤロンスキー
【合議体】
【審判長】
郡山 順
【審判官】
藤田 年彦
【審判官】
松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】
特表2009−523563(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0055543(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2005/0018133(US,A1)
【文献】
国際公開第2007/084748(WO,A2)
【文献】
国際公開第2007/066465(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
A61B 3/00-3/16
A61B 9/00-10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
最大反射率ポイントを有するサンプル(12)から、スペクトル光コヒーレンス断層映像法を用いて構造データを収集する方法であって、
a)少なくとも2本の走査線(20a、20b、21a、21b、22a、22b)に沿って1組の少なくとも2つのBスキャンを実施するステップであって、走査線(20a、20b、21a、21b、22a、22b)は交差点で交差しているステップと、
b)前記走査線(20a、20b、21a、21b、22a、22b)に沿って光強度の最大値を特定するステップと、
c)前記交差点からの前記最大値のオフセットを決定するステップと、
d)前記走査線(20a、20b、21a、21b、22a、22b)の少なくとも1つの位置を変更して交差点をステップc)の結果に応じて調整した状態で、ステップa)からc)を再実施し、その結果、構造データの収集中にサンプルの動きにより生じる外乱が抑制されるようにしたステップとを含む方法。
【請求項2】
再実施するステップc)は、走査線(20a、20b、21a、21b、22a、22b)の少なくとも2つの位置が変化することを含むことを特徴とする請求項1記載の構造データを収集する方法。
【請求項3】
両走査線(20a、20b、21a、21b、22a、22b)間の角度は、70°〜120°の範囲内にあることを特徴とする請求項1記載の構造データを収集する方法。
【請求項4】
両走査線(20a、20b、21a、21b、22a、22b)間の角度は、90°であることを特徴とする請求項1記載の構造データを収集する方法。
【請求項5】
特定ステップb)に従って光強度の最大値を特定することは、サンプル(12)からの戻り光を、スペクトル光コヒーレンス断層映像法に使用する第1部分と、光強度の検出に使用する第2部分に分割することを含むことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の構造データを収集する方法。
【請求項6】
最大反射率ポイントを有するサンプル(12)から、スペクトル光コヒーレンス断層映像法を用いて構造データを収集する装置であって、
光源(1)と、
干渉計であって、光源(1)から光を受光するように構成され、プローブビームがサンプル(12)に向けられるサンプル経路、
参照経路、および
干渉計に入る光を分割し、前記光の一部分をサンプル経路に、前記光の一部分を参照経路に向け、サンプル経路から出射する光と参照経路から出射する光を再結合し、それを再結合した光の出力に向けるための手段(5)を含む干渉計と、
前記干渉計の再結合した光の前記出力から出射する光のスペクトル分析のために設計されたスペクトル分析手段と、
サンプルを横切る2次元のプローブビームの走査位置をシフトさせるように設計された走査手段(10)と、
プローブビームの走査位置が所定の走査パターンに従うように走査手段(10)を調整するよう構成された走査制御手段(19)とを備え、
前記走査制御手段(19)は、前記装置が請求項1〜5において規定された方法のいずれかに従って構造データを収集するような連続走査パターンを決定する、ように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項7】
サンプル(12)からの戻り光強度を測定し、光強度を表す信号を前記走査制御手段(19)に伝送するように構成された光強度検出器(18)を更に備えることを特徴とする請求項6記載の構造データを収集する装置。
【請求項8】
前記光強度検出器(18)は、サンプル経路から出射する光と、参照経路から出射する光を再結合するための前記手段(5)によって再結合した光の強度を測定するように構成されていることを特徴とする請求項7記載の構造データを収集する装置。
【請求項9】
サンプル経路から出射する光と、参照経路から出射する光を再結合する手段(5)が光カプラであって、その第1ポートは前記スペクトル分析手段に接続され、その第2ポートは前記光強度検出器(12)に接続されていることを特徴とする請求項8記載の構造データを収集する装置。
【請求項10】
前記走査手段(10)が搭載されたホルダ(26)と、プローブビームに対して垂直に前記ホルダ(26)を並進するように設計された駆動手段とを更に備えることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の装置。
【請求項11】
前記駆動手段は、プローブビームに対して垂直に、2次元で前記ホルダ(26)を並進するように構成されていることを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】
前記制御手段(19)は、ステップc)によって決定する小さいオフセットの場合は、走査手段(10)でオフセットを調整することによって、およびステップc)によって決定するより大きいオフセットの場合は、前記ホルダ(26)を並進することによって走査線(20a、20b、21a、21b、22a、22b)の位置を変更するように構成されていることを特徴とする請求項10または11に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最大反射率ポイントを有するサンプルからスペクトル光コヒーレンス断層映像法を用いて構造データを収集するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光コヒーレンス断層映像法(OCT)は、部分的に透明な物質から成るサンプル調査のための干渉テクニックである。このテクニックによって、低コヒーレント光が少なくとも2つの部分に分割される。一部分は、サンプル光として使用され、サンプル経路を通過して調査対象のサンプルを照射する。2番目の部分は、参照光として使用され、参照経路に入ってサンプルからの後方散乱光と再結合ポイントで再結合する。再結合した光は、サンプルの内部構造に関する情報を運搬する干渉信号を含む。
【0003】
OCTは、ファンら(huang et al., Science, vol, 254, 1991, p. 1178 to 1181)によって最初に提案されたもので、参照経路において走査可能な光路遅延(OPD)を使用した。OPDは、振動の態様で走査される。干渉縞は、参照経路の光路長がサンプルからの後方散乱光の光路長と一致する位置でのみ生じる。これらの縞およびそれが生じるOPDの評価は、サンプル中の後方散乱構造の特定およびそれらの相対的距離の決定を可能にする。このテクニックの時間依存性により、それは一般に「時間領域光コヒーレンス断層映像法」(TdOCT)と呼ばれる。
【0004】
本発明は、代替OCTの撮画方法(modality)を扱う。それは、「スペクトル光コヒーレンス断層映像法」(SOCT)として知られ、再結合した光のスペクトル分析をベースとする。再結合した光のスペクトルデータI(k)、即ち該光のスペクトル成分に関する光強度の分布は、分光計を用いて取得される(論文:"Spectral Coherence Tomography", SOCT; Szkulmowska et al., Journal of Physics D: Applied Physics, Vol. 38, 2005, 2606 - 2611)。スペクトルデータI(k)は、例えばフーリエ変換または高速フーリエ変換(FFT)によって、サンプル内部の後方散乱構造の反射率および相対距離を表す関数S(z)に変換される。(例えばドイツ公報第4309056B4号)
【0005】
すべてのOCTの応用において、入射光ビームに平行な軸は通常z軸と呼ばれ、この軸に沿ったデータの取得は「Aスキャン」と呼ばれる。Aスキャンが、サンプル内部の構造から1次元「画像」のためのデータを出力する。z軸に垂直な軸は、x軸およびy軸と呼ばれる。2次元または3次元画像を取得するために、多くのOCT装置は、これらの軸の1つまたは両方に沿った光ビームの走査を可能にする走査手段を備える。z軸に垂直な直線に沿って記録される1組のAスキャンは「Bスキャン」と呼ばれる。z軸に垂直な複数の直線に沿って取り込まれる1組のBスキャンは、サンプルの3次元画像を提供する。本発明は、SOCTを使用してそのような3次元画像化を扱う。
【0006】
走査手段がxy平面に垂直に光ビームをシフトさせることは必須でない。特に、比較的簡素な旋回可能ミラー光学系を走査光学系に採用した場合、光ビームは、横方向にシフトする代わりに旋回してもよい。その場合、z軸の正確な向きは、規定の問題であり、入射ビームの変化傾斜を評価において考慮してもよい。
【0007】
OCTは、非侵襲的な診療法として、臨床生体内の応用、特に眼科学への応用において有益である。しかしながら、特にこの分野の使用におけるそれの主要な欠点は、調査対象のサンプル、特に人間の眼球運動に対する感度である。そのような眼球運動は、2次元画像化に対して問題をもたらさない。2次元画像は、眼球運動の影響を抑えるのに充分速い数十ミリ秒内で生じるためである。しかしながら、3次元画像化は、数秒に達する長い時間を要し、その間に眼球運動が生じ、画像形成を阻害する。
【0008】
網膜(retinal)OCTにおける眼球運動の問題に対処するために、ファーガソンらは、OCTシステムをハードウェアベースの網膜トラッカと結合させた(論文:OPTICS LETTERS 2004, 2139-2141)。しかしながら、追加のトラッキングビームおよびステアリングミラーは、システムの複雑性を増加させる。適度に複雑な形態を有する身体上の標識が必要とされるので、網膜OCTへの適用性は制限される。
【0009】
米国公開公報(第2008/0055543Al号)は、前眼房(anterior chamber)OCT間の眼球運動のソフトウェア補償を開示する。このシステムはトラッキングを提供しないので、訂正能力は、一度取得した画像データ内の調整に限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、ハードウェアトラッキングによる3次元画像化のためのデータ収集の際、追加のトラッキングビームを必要としないでサンプルの動きによる外乱を抑制することである。本発明は、最大反射率ポイントを有するサンプルに適用可能である。それは、請求項1および請求項7の構成要件により、外乱の抑制を達成する。更なる請求項は、本発明の改良点を規定する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
最大反射率ポイントは、サンプルに入射するビームに垂直な平面内のどのポイントでもよく、その場所でサンプルからの後方散乱光は、その平面内のどの他のポイントよりも再現性よく明るい。例えば、サンプルが凹状または凸状の界面を有する場合、そのような界面の頂点は、最大反射率ポイントであろう。眼科学において人間または動物の眼を調査する場合、角膜の頂点は、そのような最大反射率ポイントであり、強い角膜反射を引き起こす。この効果は、眼科学への応用に対して通常有害であるが、本発明は、意図的に固定ポイントとしてそれを利用する。この固定ポイントは、サンプルとともに移動するので、サンプルの移動を補償する走査パターンの調整に利用できる。「界面」という用語は、これに関してサンプルの表面も同様に含む。同様に、「ポイント」という用語は、これに関して固定ポイントとしての役目を果たすのに充分小さい領域も包含する。
【0012】
主要な請求項で言及される走査線は、好ましくは、必須でないが直線である。請求項1のステップd)の位置変化は、線の向きのみの変化、もしくは線の平行シフトのみ、または両方の組み合わせを包含する。好ましいことに、2本の走査線を採用することで、本発明は比較的高速に作動する。走査パターン、即ち走査線の数、形状、位置変化の特定の選択は、特定の応用に依存して選択してもよい。請求項1の方法に対する終了条件は、特定の走査パターンが達成されることであってもよい。
【0013】
好都合なことに、請求項1の再実施ステップc)は、走査線の少なくとも2本の位置が変化することを含む。そのような走査パターンは、高速測定を可能にする。この場合、再実施ステップc)が、両走査線間の角度が不変であることを含むことは、更なる利点である。これにより、Bスキャンは、均等な方法でサンプルをカバーする。この場合、両走査線間の角度は、70°〜120°の範囲内にあり、好ましくは80°〜110°の範囲内にあり、より好ましくは90°であることは、更なる利点である。これは、請求項1のステップb)における最大値の特定を比較的簡素にする。特に、2本の走査線が直線である場合、それらは殆どまたは正確にデカルト形状を有し、座標としての役目を果たす。その結果、請求項1のステップd)における調整の計算が極めて簡素になり、計算時間を節約する。
【0014】
それとは別に、請求項1のステップb)の特定に係る光強度の最大値を特定することが、サンプルからの戻り光を、スペクトル光コヒーレンス断層映像法に使用する第1部分と、光強度を検出するために使用する第2部分に分割することを含むことは好都合である。SOCTの評価においてスペクトル分析に使用する部分から分離した光の部分を使用することで、本発明の速度および感度が増加する。一般的なSOCT装置は、スペクトル分析の間、スペクトル成分の強度測定のためのCCDアレイを典型的に採用する。そのようなセンサで発生する信号から光強度全体を決定することは、幾分煩雑で遅い。ステップb)に対して光の分離部分を使用することで、SOCT測定速度の減少なしで本発明を実施可能である。このような理由で、本発明に係る装置が、好都合には、サンプルからの戻り光強度を測定し、光強度を表す信号を前記走査制御手段へ伝達するように設計された光強度検出器を備える。
【0015】
後者の場合において、前記光強度検出器が、サンプル経路から出射する光と、参照経路から出射する光を再結合する前記手段によって再結合した光強度を測定するように構成されることは更に好都合である。強度測定のために、再結合した光を使用することは、その場合、本発明がSOCT測定の感度に何ら影響を与えないため、好都合である。サンプル経路から出射する光と、参照経路から出射する光を再結合する前記手段が、その第1ポートが前記スペクトル分析手段と接続し、第2ポートが前記光強度検出器と接続する光カプラであることは、この場合更に好都合である。これにより、本発明の装置設計が簡素になり、光カプラは再結合手段として使用するため、光学部品の数が減少する。
【0016】
それとは別に、本発明に係る装置は、前記走査手段が搭載されたホルダと、プローブビームに対して垂直に前記ホルダを並進するように構成された駆動手段とを更に備えることは好都合である。これらの構成要素は、該走査手段でのオフセットを調整することによって補償するには大きすぎるサンプルの動きの補償に役立つ。この場合、前記駆動手段は、プローブビームに対して垂直に2次元で前記ホルダを並進するように構成されており、全方向での補償が可能であることは更に好都合である。前記走査制御手段が、ステップc)で決定するオフセットが小さい場合は、該走査手段でのオフセットを調整することによって、およびステップc)で決定するオフセットがより大きい場合は、前記ホルダを並進することによって走査線の位置を変更するよう構成されることは更に好都合である。その場合、該装置は、動作が最適化するように好ましい補償モードを選択してもよい。微細な変位は、該走査手段内で補償されるが、より大きい調整は走査手段全体を並進することで行われる。
【0017】
光源は、SOCTに対して充分なコヒーレンス特性を備えた、600nm〜1700nmの範囲内の任意の電磁波光源、例えばスーパールミネセントダイオードでもよい。用語「光」「光学の」および「光学系」は、本発明の意味の範囲内では、各要素またはステップがそのような電磁波に影響を与え、または影響を受けることを意味する。例えば、「光強度検出器」は、前述の範囲内にある電磁波の光強度を測定する検出器である。そのような光強度検出器の特性は、調査対象のサンプルに適合してもよい。例えば、最大反射率ポイントが小さいスペクトル範囲で確実に検出される場合、光強度検出器は、特にこの範囲で感度を有するべきであり、他の波長に対する感度は低くても、または0であってもよい。
【0018】
以下、本発明の例示の実施態様について、図面とともにより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る装置を示す概略ブロック図である。
【
図2】サンプルの動きが生じない場合、本発明に係る走査パターンを図示する。
【
図3】図の上部分は、走査線の交差点から変位し、強い中央反射を示す球面状界面を備えたサンプルの正面図であり、図の下部分は、後方散乱光の強度分布を示す。
【
図4】サンプルの動きが生じた場合、本発明に係る走査パターンを図示する。
【
図5】本発明に係る装置の並進可能な走査手段の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
光源1が、光を光ファイバシステム2に照射する。光は、戻り光が光源1を損傷するのを防止する光アイソレータ3を通過する。光はその後、第1光カプラ4に到達する。光カプラ4の機能は、戻り光の処理を説明する際に明確になるであろう。光は、第1光カプラ4の反対側ポートの1つに沿って伝搬し、ファイバ光学系マイケルソン干渉計のためのビームスプリッタとして機能する第2光カプラ5に至る。この干渉計の参照経路は、第2光カプラ5の1つのポートから光ファイバシステム2の終端に沿って延びており、レンズ6、7によってコリメートされ、参照ミラー6に集光される。サンプル経路は、第2光カプラ5の他方のポートから、光ファイバシステム2の終端および走査手段に沿ってサンプル12まで、本例においては人間の眼まで延びる。前記走査手段は、コリメートレンズ9と、ミラー光学系10と、集光レンズ11とを備える。ミラー光学系10は、光ビームの光軸に垂直な二次元内で該光ビームをシフトすることを可能にする1つ、2つ、または多重のミラーシステムにできる。簡略化のため、1つのミラーを、
図1に図示している。
【0021】
参照経路およびサンプル経路を通って進行する光部分は、第2光カプラ5に戻って再結合する。再結合した光の一部は、第2光カプラ5の一方のポートを出射し、光ファイバシステム2の終端まで伝搬する。この終端で光ファイバシステム2を出射した光は、コリメートレンズ13によってコリメートされ、回折格子14へ向けられ、そこで光はスペクトル分解される。スペクトル分解された光部分は、スペクトル分解された光部分の光強度測定のために、画素センサアレイ16上に集光レンズ15によって集光される。画素センサアレイ16は、強度を電気信号に変換し、サンプル12に入射するプローブビームに沿った後方散乱界面の相対的位置を数値計算するために、コンピュータ17に伝送される(Aスキャン)。
【0022】
第2光カプラ5によって再結合した光の他方の部分は、カプラ5の他方のポートを出射し、第1光カプラ4に戻る。ここから、一部分が、光源1には接続されず、スペクトル分解なしに光強度を測定するための強度検出器18に接続されているポートを出射する。前記第1光カプラ4の他のポートは、光源1に接続されており、このポートを通過する光部分は、光アイソレータ3によって光源に入ることを防止される。
【0023】
本例において、強度検出器18は、走査手段と電気的に通信するハードウェア走査制御手段19の一部である。強度検出器18は、代わりにハードウェア走査制御手段19と同じ機能を実施するソフトウェアを実装したコンピュータ17に接続してもよい。
【0024】
走査制御手段19は、走査手段のミラー光学系10を制御し、その結果、サンプル12に入射するプローブビームは、走査制御手段19によって決定する走査パターンに従う(Bスキャン)。データ収集の際、サンプル12の動きが生じない場合、本例での走査パターンは、
図2のものである。第1に、2つのBスキャンが、2つの垂直な点線の走査線20a、20bに沿って実施される。走査方向は、矢印で表しているが、任意に選択してもよい。点線の走査線20a、20bの交差点は、好都合には、サンプル12の最大反射率ポイントでオペレータによって配置してもよい。これらの第1の2つのBスキャンが完了した後、第2の2つのBスキャンは、第1の走査線20a、20bに関して角度αで傾斜した2つの垂直な破線の走査線21a、21bに沿って実施されるが、同じ交差点を共有する。同様に、第3の2つのBスキャンは、前述の走査線21a、21bに対して同じ角度αで傾く実線の走査線22a、22bに沿って実施される。サンプル12のいかなる動きもない場合、この走査パターンは、Bスキャンがサンプル12の興味ある表面全体をカバーするまで、類似の方法での更なるBスキャンによって完結してもよい。
【0025】
しかしながら、サンプル12の動きが測定時に生じる場合、この状況は、
図3で示すものになる。一点鎖線23は、線形独立した交差する走査線を有する2つの連続したBスキャンの交差点を表す。点の集積24は、強い中央角膜反射を表すものであり、本例のようにサンプル12が人間の眼である場合、最大反射率ポイントであろう。サンプル12の動きは、この最大反射ポイントの交差点からの変位Δを生じさせる。この変位は、次のBスキャンでは補償する必要があり、Bスキャン間の正確な空間関係を維持することになる。
【0026】
こうした補償を達成するために、サンプルからの戻り光の光強度は、前記強度検出器18を用いて各Aスキャンごとに測定される。
図3中の実線25は、走査線に沿って取り込まれる光強度の値を表す。中央角膜反射は、強度の急峻な上昇を引き起こし、その位置および変位Δは、走査制御手段19によって位置合わせされる。少なくとも1つの走査線についての変位Δが0でない場合、該走査制御手段19によって、該走査手段は、
図4に図示すように、次のBスキャンのために、走査線の交差点をシフトさせる。変位Δ(≠0)が検出されたBスキャンは、廃棄され、角度αを変化させないで再実施され、もしくは単に廃棄され、または、特定の応用において好まれるように、変位は更なる数値計算で考慮されてもよい。
【0027】
小さい変位Δは、ミラー光学系10における角度オフセットを単に調整することによって補償してもよい。変位が、ミラー光学系10における角度のオフセットによって補償されるには大きすぎる場合、
図5に図示するように、走査手段全体を並進させることによって補償可能である。サンプル経路のファイバ光学系システム2は、レンズ9、11およびミラー光学系10を囲うケース26に接続される。ケース全体は、矢印XおよびYで表される2つの垂直な方向に並進してもよい。このように、走査線20a、20bは、大きな距離に沿ってシフトしてもよく、大きな変位を補償する。並進のための駆動装置(不図示)は、リニアモータまたは当業者に理解されるであろう他の手段であってもよい。